大学図書館で、資料(古典籍かそれに準ずるような古めの資料、特殊資料等)を、持参したデジカメで、コピー代わりに、撮影する、ということを認めている、そしてそれをwebでちゃんと書いている、ところの例。
但し、文献複写サービスの延長の範囲を超えて、明らかに「貴重な文物を、高性能な機材で、高画質・高品質で撮影・複製し、出版・放映等を前提とする」ようなものについては、今回のトピックの対象外としてます。その例なら、別に珍しくなくもっと多いっぽいので。
でも、下に挙げた例が、その例かもしれません。そのへん、ボーダーレスだからよくわかんない。
●一橋大学附属図書館
http://www.lib.hit-u.ac.jp/guide/faq/reproduction.html
「電子複写(マイクロ資料を含む)が出来ない資料について、調査研究目的で、今後の二次利用を予定しない場合、カメラ等で撮影することができます。」
「撮影をする場合には、以下に記入し、事前に末尾の連絡先までご連絡ください。 」
「(撮影許可願)1 撮影は指定された場所で、係員の立合いのもとで行うこと。また、資料の取り扱いについて係員の指示に従うこと。」
「複写、撮影以外の複製についても、上記に準じます。」←ここ意外と重要。
●筑波大学大塚図書館
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/otsuka/forms/
「自分で持ち込んだ機材(デジタルカメラ等)で文献を撮影したい」
「(撮影申込書) 撮影は、指定の場所で係員の指示に従って行うこと」
申請書に記入してカウンターに提出
●東北大学附属図書館
http://www.library.tohoku.ac.jp/guide/gakunaifaq.html
古典籍資料を複写したい場合
「マイクロフィルム化されてない場合、原則としてカメラを持ち込んで撮影していただくか、業者による撮影となります」
「事前に申請書を提出していただく必要があります」
●北海道大学附属図書館 北方資料室
http://www.lib.hokudai.ac.jp/modules/tinyd42/index.php
「資料の保存状態の悪化を防ぐため、複写を禁止している資料が多数存在しています。ただし、複写を禁止している資料の中でも、カメラ撮影が可能な資料もあります。」
●国文学研究資料館
http://www.nijl.ac.jp/contents/library/honkoku-2010.html
「直接複写できず、またフィルム化されていない資料(史料・和古書・明治期資料)はカメラ等で撮影することができます」
「来館時に「資料撮影申込書」に記入して申し込んでください」
●明治学院大学図書館貴重資料室
http://www.meijigakuin.ac.jp/mgda/content_riyo.html
「コピーやスキャナーの利用はできません。また図書館員による点検と立合いがあります」
「理由がはっきりしており、許可を受ければ「閲覧メモ」としてデジタルカメラを係員立合いの下で使用できます」
「ただし辞書に圧迫を加えるなどしての平面性確保はできません」
●梅花女子大学図書館
http://www.baika.ac.jp/~lib/library05.html
「デジタルカメラ等の館内での使用については、必ず事前にカウンターで確認を受けてください」
以下、web等の利用案内には明言されていないが、問い合わせるとこのような対応が、おそらく定まった運用として、なされる、という例。
■R大
事前に予約し、認められた日と時間の間に、職員立ち会いの下、撮影が可能。という説明が、こちらからの問い合わせへの返答に添付される。
■H大
問い合わせへの返答に「カメラを持参することを検討してください」という推奨?がある。
■O大
持参デジカメで撮影した場合、カット数×単価で料金を請求される。
以下は、私見ですけど。
自分は資料の保全が第一、特に、コピーできないからデジカメで撮りたいというリクエストが出やすいタイプの、古め・弱め・特殊めな資料の場合には、ていう考えなんですけども、そこから考えて、どういうときにこれはデジカメで撮ってもらうのが適、とか、どういうときに不適、とか、どういう方法なら適、とかいうのは、下手に基準を決めてしまうのはすっごい危ない、という思いがあります。で、たぶん、上の例の各所さんもそういう思いがあるから、結構幅広く解釈できる書き方をしてはる、ような気がします、気がするだけですけど。
これはすっごい難しくて、傷みがきてるからこそデジカメが適、という場合もあれば、傷みがきてるからこそこれでデジカメは不適、という場合もある。しかも、この「デジカメ」の部分が、場合によって「スキャナ/コピー/業者撮影」に入れ替わる。そして、この入れ替わりに法則性なんかない。あるわきゃない。てか、なかったもの。
傷みだけじゃない、背表紙の具合、開き方、紙の強弱。保存状態だけじゃない。大きい小さい、薄い厚い、軽い重い。文字の大きい小さい。写りよい写り悪い、明るい暗い。ご本人の持ってきはった機材がどんだけのものか、こっちの提供できるグッズ(書見台や撮影台)がどんだけのものか。撮ろうとしてはる数量の多い少ない、多ければ業者撮影のほうがいいと言えるけど、少なければ業者撮影のほうが資料にかかる負担が大きい。
ご本人のスキルというか慣れもかなり大きくて、もうすでにあちこちで似たようなことをしていて慣れてますよ、という方もいれば、見るからに手元が危なっかしい方もいる。このへんは、率直にご本人とゆっくり相談させていただくことが多い。特に、こういう古め・特殊めな資料をわざわざうちら山奥まで見に来はる方は、うちらなんかよりよっぽどその資料のことをわかってらっしゃる場合がほとんどなので、胸を借りて勉強させていただくノリで、率直に、こうではどうでしょうかね、みたいに密にご相談したい。
そのうえでの、判断。
で、そんなこと、ローテーションな異動でルーティーンな仕事をしてる職員ばかりのような大学図書館でおいそれとできるわきゃあないので、だから、「一律禁止」になっちゃってるところがほとんどだ、ていうのも、まあ気持ちとしてはわからない話ではないですよ。わかりたくはないけど。
(追記1)
忘れてた。大事な2リンク。
▼ E1027 - OCLC,閲覧室でのデジタルカメラの使用に関する報告書を発表
カレントアウェアネス-E No.167 2010.03.10
http://current.ndl.go.jp/e1027
▼ 大学図書館における著作権問題Q&A(第7版)
「Q3:利用者から資料の一部をメモする代わりに、デジタルカメラで撮影したいと申出がありましたが、認めても問題はないでしょうか。」
http://wwwsoc.nii.ac.jp/anul/j/documents/coop/copyrightQA_v7.pdf
(追記2)
デジカメで撮るののやばいところのひとつは、片手がふさがるから、資料を扱うのが片手になっちゃうところ。
資料の状態がよくないので、両手で優しくかつ確実にホールドしてもらわないとやばいのを、じゃあデジカメを片手に、もう片手だけで危なっかしく、ていうのの危なっかしさは、どうもやっぱ危なっかしい。
なので、たとえば例に挙げた図書館さんの中の「職員立ち会い」のパターンっていうのは、監視とかなんとかと同等以上に、必要に応じて手をお貸しすることで資料をお守りする、ていうことなんじゃなかろうか、とか勝手に想像してましたよ。