2010年08月08日
業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、本のない電子書籍図書館だったら」
※他意はありません。
※あと、このコントをごらんになった方は、こんなコントもごらんになってます。
「もしも図書館がマクドナルドみたいだったら」
http://egamiday3.seesaa.net/article/111499129.html
ピンポーン。
「いらっしゃいませ、幕土市立鳴門図書館へようこそー」
「やあ、どうも」
「あ、いつもありがとうございます」
「慣れてきましたよ、マクドナルドみたいな図書館。最初ここに来たときはかなり驚きましたけどね」
「おそれいります。本日は館内でご閲覧ですか?」
「いや、テイクアウトで。最近流行ってる、えーと、女子高生が野球部をマネジメントするっていう・・・」
「はい、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』、ですね」
「それそれ、さすが次世代OPACだね。それを借りていきたいんですよ」
「お客さま、実は当館、このほど大幅にリニューアルいたしまして」
「そうなの?」
「最近の電子書籍ブームにいち早く乗っかりまして、本を持たない電子書籍専門の図書館になりました」
「じゃあ紙の本はもうないの? でも電子書籍って読む機械がいるんじゃないかな。持ってないですよ」
「ご安心ください、当館ではこちらの専用読書端末”キンパッド”に入れて、端末ごとお客さまにお持ち帰りいただきます。こちら、「もしドラ」の電子書籍が入っておりますので、どうぞ」
「これ? 本当だ、読める。で、このキンパッドごと貸してくれるんだ。人気の小説だって聞いてたから、また何百人って予約待ちなんじゃないかって心配してたけど、さすが電子書籍は便利だね」
「ありがとうございます」
「じゃあせっかくだからもう1冊、最近アニメになったっていう、四畳半の・・・」
「『四畳半神話大系』ですね、少々お待ちください。・・・・・・どうぞ、こちらのキンパッドになります」
「・・・ちょっとまって、なんで同じのがもう1台来たの」
「こちらが「もしドラ」の入ったキンパッドで、こちらのほうが「四畳半」の入ったキンパッドになります。2台のお貸出でよろしかったでしょうか?」
「え、両方持って帰るの? じゃあもう1冊別の本も借りるときは?」
「それでしたら、あちらのほうにキンパッド書架が並んでいますので、よろしければこちらのOPACで検索していただいて、請求記号をメモして、配架されているキンパッドをこちらのカウンターまでお持ちいただければ、キンパッド裏のバーコードを読み取って、3台分のお貸出の手続きを・・・」
「いやいやいや、ちょっと待って」
「はい?」
「おかしくないですか、それ。本のない図書館って言ってたよね?」
「当館に紙の本は一切ありません。すべて電子書籍です」
「電子書籍、おたく何冊持ってんの?」
「5万冊分になります」
「で、あそこの本棚に並んでるキンパッドは?」
「5万台、ですね」
「おかしいだろそれ、1台で1冊分? じゃあ1冊読み終わったら使い道なくなるでしょう」
「そんなことありません、みなさん返却日ぎりぎりまで、このキンパッドでtwitterやネトゲやYoutubeを楽しんでおられます」
「いや、そいつらそっち目当てだろ絶対。これで「本がない」って言われてもなあ」
「でもご好評いただいているんですよ。ごらんください、あちらが新刊コーナーになります」
「ほんとだ、うわー、「もしドラ」のキンパッドが何台もこっち向いて並んでるね。あっちの隅にやけにぶ厚い機械あるけど、あれは?」
「あれは調べ物コーナーの、百科事典のキンパッドです」
「百科事典だとぶ厚くなるっていうのもおかしいけどね。向こうのほうにディスプレイされてるのは画面が大きいけど・・・あ、あの写真の女の子たちって、なんだっけ、人気投票したっていう秋葉原の」
「はい、AKB48さんの写真集ですね。タレントさんやジャニーズ系の方の写真集なんかは、やはり高精細で大画面のほうが好まれますので、ひとまわり大きい機械を使っています」
「へえ、あれもキンパッドなんだ」
「いえ、あの端末はキンパッドではなく、”アイドル”と言います」
「・・・あ、そう。いいけどね。でも電子書籍だと、たとえばコピーしたいっていう人がいたときに、いろいろ難しいんじゃないですか?」
「そうですねえ、やはり丸ごとコピーしていただくわけにはいきませんので、システム的に制限をかけて、数ページ単位ならコピーしていただけるようにしています」
「部分的にってことなんだ」
「はい、コピーできそうでコピーできない少しコピーできるキンパッドです」
「辛口なシステム作ったね。あれ、なんかあっちのほうにまた別の機械が並んでて、人がたくさん作業してるけど、コピー機ではないの?」
「あちらは自炊コーナーになります。お客さまご自身が本をお持ちいただいて、スキャナで電子書籍化したものをお持ち帰りいただけるサービスです」
「自分で作れちゃうんだ」
「自炊コーナーと言っても、ラー油は置いてませんよ。ふふふ」
「ん、なんか楽しそうなところ悪いけど、あれって著作権的にまずいんじゃないの? グレー、ていうか黒でしょう」
「お言葉ですがお客さま、当館はブラック企業ではございません。あくまでフェアユースと解釈させていただいております」
「でもたくさんの人がああやって好き勝手に・・・。あっ、もしかしてあれなんじゃない、お客でにぎわってると見せかけて、実は何人かここの職員さんが混じってて、ベストセラー本の電子書籍を自分たちでせっせと作ってる、とか」
「え・・・」
「あはは、ごめんごめん、冗談ですよ」
「・・・・・・お客さま、あの、どうぞこちらをお受け取りください」
「何? この角張ったの」
「極秘開発中の新型iPhone試作機です。これをさしあげますので、先ほどの件はどうかご内密に・・・」
「えっ、当たってたの!? あれ、おたくらの図書館で自炊!?」
「あくまで重複購入のかわりですよ。「もしドラ」とか」
「いや、新刊本はまずいでしょ。いまその辺ぴりぴりしてる時期なんじゃないの」
「こうでもいたしませんと、正規品だけでは追いつかないんです。失礼ですが、お客さまが予約待ちなしでベストセラー本をお借りになれるのも、ああした館内自炊があってこそでして」
「それにしたってさ、あんな見えるところでやらなくったって、せめて書庫の隅のほうに場所とってこっそりやるとか」
「書庫は5万台のキンパッドで埋まってて、もう場所がないんです」
「うん、やっぱりおかしいよね、それ。びっくりしたなあ。じゃあ一応、紙の本も買ってはいるんだ」
「ヤフオクで裁断済みのを買ってます」
「よくフェアユースがどうとか言えたな、それで」
「と申しますか、いまどき、コンテンツは買い叩かれる時代だということです」
「図書館がそれ言うか、おい。人に聴かれたらたいへんだよ」
「ですので、このiPhone試作機でご内密に」
「ていうか開発中のiPhoneなんか、なんでおたくらが持ってるの」
「うち、マックですから」
「いや、わかんないけど。じゃあ、おたくの蔵書は自炊混じり、ってことね」
「ご本家さまも”100%ビーフ”とおっしゃってますが・・・」
「おい、何を言い出すんだ、あんた」
「そういえば「四畳半」に”猫ラーメン”ってありましたね」
「やめなさいって、このタイミングでその発言するとややこしいから」
「そもそもですね、日本の著作権法や出版流通がもはや7周半遅れなんです」
「大きく出たね。いや、言いたいことはわかるけど」
「AmazonやGoogleやAppleが異国から攻め込もうとしゆうこの時代に、紙だ電子だ、薩摩だ長州だと、日本人同士で喧嘩しよる場合じゃないがぜよ!」
「誰?」
「当館は図書館海援隊として、日本の本と出版を洗濯したいと考えております。洗濯もしますから、自炊もします」
「どんな理屈だよ。だいたい海援隊どころか、あんたら作ってるの海賊版じゃないか」
「・・・え? いまの、なんですか?」
「聞き返すなよ、むかつくな、おい。まあいいや、結局ね、私らみたいな読者は本が読めさえすればなんでもいいんですよね。じゃあこの2台、借りていきますんで手続きを・・・」
プルルルルル
「あ、ちょっと失礼いたします。・・・もしもしカウンターです。・・・えっ!? はい、・・・そうですか。わかりました」
「あれ、どうしたんですか、深刻な顔で」
「たいへん申し訳ありません。突然ですが、当館はこれにて閉館させていただきます」
「えっ、じゃあ明日来たらいいのかな」
「いえ、当分開館できないのではないかと」
「何があったの?」
「実は先ほどのiPhone、うっかりタッチしてしまいまして、私とお客さまとの内密な会話がUstreamでダダ漏れでした」
「ネット怖い。だめだこりゃ」