2012年06月23日

「質疑応答」の設計しなおしをやってみれないか、と思った。


 前々から、もしかしたらどうも、いわゆる「質疑応答」のシステムっていうのは設計ミスってるんじゃないか、と思ってたりして。

 質疑応答、ってゆったら、世に広く普及しているやり方としては、発表とかプレゼントか講演とかがあって(スピーカー)、そのあとにオーディエンスの人たちの中で、何か質問したい、何かコメントしたい、ていう人が挙手をして、その中から例えば司会の人がいればその人が選んで、選ばれてあてられた人が、質問したりコメントしたりっていう感じですよね。たぶん国や分野や業種にかかわらず、広く広く、あたりまえのようにそのやり方がとられることがほとんどじゃないかなって。
 そしてまた、あまりいいやり方にならなかったり、よくない結果になったり、なんかいまいちどうなんだろう的な感じになったり、ていうことも、少なからず何度も目撃や経験してきたですよね。
 それで、このやり方ってもしかして設計ミスってるんじゃないのかな、って。

 どのへんがミスってるかを考えてみたら、こんな感じ。
 誰にどうあてるかがランダム。よほどメンバーが限られてたり、司会が相手のことを知ってたりするのでなければ、仕組みとしてはランダム。
 そして、あてて、その人が発言するまで、その人が何を言うのかわからない。だから、たまにとんでもないこと言い出したり、関係ない自己主張や感想を長々と披露したり、質問の難易度がガタガタのふぞろいになったりする。会場がどん引きになったりする。ランダムにあてて会場どん引きって、それただのスシアンルーレットじゃないか、と。司会者やスピーカー側のコントロール下に置かれてないじゃないか、と。

 仮にそういうトラブルがなかったとしても。時間の都合なりなんなりで挙手者全員にあたるわけじゃないから、埋もれた質問やコメントはたくさんある。それらはのちに個々のコンタクト的なことがない限りは、スピーカーにフィードバックされることがない。よくあるのが、講演後にオーディエンス同士が、あそこってああだったよね、あれについてはこんなこともうちょっとききたかったんだけどね、なんかあの人たちの質問の流れだとそれはぶつけづらかったね、って道々言い合いながら帰る、っていう。
 あと、挙手して言うまでもないけど、なんとなく気になるレベルの質問・コメントとか。まあ恥ずかしくて大勢の前では言えないよね的なこととかももちろんある。全部、埋もれる。なんか、もったいないなあって。
 もちろん、ここで「アンケート」というこれまた広く普及したシステムがある。でも、このアンケートで得られたフィードバックに対し、スピーカーから回答・リアクションがその人に届く、ということは、まあそうそうない。受けとっただけ。それに質疑応答は、別に個対個のやりとりのためだけなわけではなくて、それをその場にいるみんなが目撃できている、というところにやっぱり意味があるんだと思うし。
 
 あと、分野の決まってるようなところでよくあるのが、いつも同じようなメンバーばかりが挙手して質疑応答してる、っていうパターン。ああ、ありますね。関西の図書館系だと、誰それさん、誰それさん、誰それさんのコンボ、で質疑応答の時間が終わっちゃうっていうw。いや、それはいいんですよ、確かにその人たちの質問も目のつけどころも優れてるから、聞けてよかったなってなるのはもちろんなんだけど、んーでも、他の人の質問やコメントが聞ける余地がなくなっちゃうっていうのは、あんまよろしくないんじゃないかなあって。もっといろんな人のダイバーシティなのがたたかわされる場にならないかなって。まあ、ぶっちゃけ”誰それさん”にあたし自身があてはまってないわけじゃないので、言えたあれじゃないんですけどw。

 というようなことを、じゃあ、解消するような「質疑応答」の仕組みがとれないだろうかな、って、なんとなく考えたです。

 見たことある事例その1。2011年に京都で催された図書館総合展的講演会で、司会の先生がとった方法としては、言いたいことがある人に挙手させてあてる、のではなく、司会自らが会場内にいる既知のキーパーソンを指名して、誰それさん、これこれこういうお立場から見てどうでしたか?的に水を向けて、話をさせる、という。なるほどこれなら、ある程度どんな人がどんなことを言うだろうかということが、その司会者にはわかってるから指名できるわけだし、パーソナリティもわかってる相手ならわさび入り寿司的な爆弾な質問・コメントは避けられるなあ、ていう。
 ただ、これだと、ほかに聞けたかも知れないいい質問・コメントが埋もれることに変わりはないし。それに、ある程度限られた分野内で、司会者なりスピーカーがそのキーパーソンやその人の度量・パーソナリティ的なのを、わりとがっつり把握できてるっていうんじゃなかったら、そんな指名なんてもちろんできそうにない。あと、話題がコントロールされすぎるかたちになって、質疑応答というよりは講演第2部的な感じになっちゃう。

 事例その2。講演前に質問票を配って、休憩時間中に回収して、質疑応答はその質問票の中から司会者やスピーカーが自分で選んで、その場で回答する、という。これならなるほど、いろんな人からの多様な質問・コメントを受けることができた上で、トラブルを回避するべくコントロールもできる。たんにそれを読み上げるだけの一方向がつまんないんだったら、司会者のまわしかたによっては、採用した質問・コメントの主にその場で発言してもらってディスカッションにつなげてもいい。
 あたしはこれかなりいいんじゃないかなって思うんだけど、でもただ、”残念ながらすべてを紹介することはできませんでしたが”問題は残る。

 すなわち、
 ・質問・コメントを事前に把握したい。
 ・誰のどんな質問・コメントを、その場に披露するかどうか、回答するかどうか、を偶然性にまかせるのではなく、コントロールしたい。
 ・質問・コメントの内容やその主が、かたよったものにならないよう、バランスや多様性がほしい。
 ・一方的な紹介・回答(下手したら読み上げ)に終わるのではなく、その場での双方向なディスカッションにつながったほうがいい。
 ・いろんな人からのたくさんの質問・コメントを、埋もれさせず、もれなく受けとりたい。
 ・発言する・披露されるのが恥ずかしい、というタイプの人のフィードバックだって、できれば受けとりたい。
 ・それらをスピーカーだけでなくオーディエンスにもフィードバックしたい。質問ならちゃんと回答したい。
 ・ていうか、そもそもその場で質問されたからといって、その場ですぐ答えられるような質問ばかりなわけじゃないので、ちゃんとじっくり調べたり考えたりして答える時間だってほしい。

 すべてを紹介できないのはあたりまえ?
 そんなことないでしょう。いまはブログもツイッターもあるんだし。

 というようなことを考えて、その”設計しなおし”の試みをしてみようと思って、先日の第149回京大勉強会「読まなくてもわかる『本棚の中のニッポン』」で登壇させていただいた際に、「コミュニケーション・シート」なるものをつくって配ってみたですよ。

 こんなの。

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コミュニケーション・シート

【 名前 (ID等でも可) 】

【本書『本棚の中のニッポン』へのご質問・ご意見を自由にお書きください。】






【確認(1)】
 このシートは、今日の会の途中で回収し、後半のディスカッションに使用します。
 ・今日の会で、名前を  □読まれてもいい  □読まれたくない
【確認(2)】
 今日の会で紹介・回答できなかった質問等は、後日、「本棚の中のニッポンblog」やtwitter等で紹介・回答することがあります。
 ・blog等で   □紹介されてもいい  □紹介されたくない
 ・その際は名前やID等を  □出されてもいい  □出されたくない

【アンケート】
・本書を  □既読 □読書中 □未読
・海外の図書館に行ったことが  □ある □ない
・今日の話が わかった 10 + + + + 5 + + + + 0 わからなかった
・今日の話に 納得   10 + + + + 5 + + + + 0 不満
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 これを最初に配って、途中で回収して、後半の”ディスカッション”時に選び選び使用する、という。そして、紹介・回答できなかったor不十分だったところは、「本棚の中のニッポン」ブログ(http://jbsblog.seesaa.net/)やtwitterなんかで報告しますよ、っていう。

 やってみました。
 結果。

 ・「質問や感想を書いて」って書いたら、多くの人が「感想」だけ書いてた。できれば質問がほしいので、「質問を書いて」欄と「感想を書いて」欄を分けるべき。そもそも、「質問」か「感想」かの別がわかりにくくて、「質問」を拾い集めるのに苦労した。
 ・名前を書く欄がわかりにくかったせいか、読まれることを回避するためか、無記名の人が多かった。
 ・文章では質問の意図がわかりにくい場合は、その場で当人にきけるので、吉。
 ・なんか、いただいた質問を読み上げて、あたしが回答をしゃべって、終わる、みたいな感じになることが多くて、ディスカッションに流れていかなかった。ラジオ番組の普通のお便りだった。あたしのまわし方が悪い説と、ディスカッション志向な面子じゃなかった説と、やっぱこの設計もおかしい説とがある。
 ・後日ブログに掲載がどう出るかは、まだ出してないのでわかんない。

 んー、あんまわかんないけど、もうちょっとやってみたいと思います。

posted by egamiday3 at 14:09| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする