2012年07月26日
問題:5万冊の蔵書で書架は満杯、そこへ100冊追加、どうする?
某いまでがわ寄席で最後に出題したクイズが、こんな問題。
【課題:蔵書管理】
あなたが勤める図書館は、市立の公共図書館で、蔵書5万冊です。
現在、館内の書架はすでに満杯で、どの本棚にも1冊も入れる隙間がありません。
そこへ、新たに100冊の本が追加されることになりました。
どのように対応しますか?
資料のことをみっちりしゃべることが多い寄席だったのですが、こないだちらっとハーバードの日本史講義実践的なのを読んで、ああ、やっぱもっとちゃんとアクティブなのもやっとくべきだったな(やらなくはなかったけど)と反省して、急遽、やるつもりだった別のレジュメを破棄して、グループワーク的な課題を設計しなおした、という感じで。
アクティブと呼ぶのもはばかれるような、めっちゃ一合目レベルでしかない簡単なやつですけど、まあこれまで授業で触れてきたこと、語ってきたことをふまえて、総合的に活用するような”知恵”の部分をみんなで活動させてみましょうよ、という意味合いでのクイズです。
流れは以下のような感じで。
問題を出題して、これをまずは自分ひとりで考えて用紙に書いてみる。約5-10分。
↓
次に、3人1グループで班をつくって、グループワークに移行。
-最初にひとりで考えて、あとからそれを持ち寄ったほうが、いきなりグループになるよりもディスカッションがしやすい。
-5人以上だと何も言わない人が出てくる。3人か、まあ4人まで。
-グループ分けは、配った解答用紙にあらかじめ手書きでアルファベットをふっておく。
↓
グループワークは約20分。
まず互いに自分が考えた案を発表し合う。
それから、適当に話をし合って、グループでひとつの案をまとめる。
-グループ案は、個人案よりももっと具体的なものに深める方向で。
-理由とか。方法とか。予算や場所をどう確保するか。(除籍するなら)何を基準にどう選ぶか。など。
-ディスカッション中に机間巡視して、迷ってそうなところ、足りてなさそうなところを助言。
↓
各グループで代表者を決めて、発表する。
↓
発表結果を聞きながら、その内容を板書する。
(このとき、「だいたいこういう感じの案が出揃うだろうし、それらは全体としてこういうふうに分類整理できそうだな」という俯瞰のイメージを、事前の自分ブレストやTwitterでの反応うかがいによってある程度まで描くことができていたので、その俯瞰図を黒板上全体を使って再現するかのように、板書していく。だから「A班・------」「B班・------」ていう書き方にはならない。発表内容が上下左右に散らばって書かれ、それが繰り返されていくうちに、黒板全体がジグソーパズルみたいに埋まっていく感じになる。)
↓
最終こんな感じになる。
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・除籍して、スペースを確保する
(何を基準に選ぶか)
-館内での重複本
-近隣他館との重複本
-利用頻度の低い本
-傷みの激しい本
-IT本・資格本などで古いもの
-収書方針・除籍方針
(除籍した本をどうするか)
-市民・利用者に売る・譲る
-廃棄する
-他所へ寄贈する・ひきとってもらう(→)
・・他所へ寄贈する・ひきとってもらう
-市内等の近隣他館・分館
-県立図書館
-大学図書館
-小学校
-博物館
(廃棄した本への利用はどう保証するか)
-ILLを活用する
-デジタル化する
-別のメディアを調達する(→)
・・別のメディアを調達する
×新聞原紙・縮刷版
→○データベース・CD-ROM・マイクロフィルム
・貸出を増やして、スペースを確保する
-公民館・病院などへの一括貸出
・書架を増やす
-廊下・通路を狭くする (#車いすが通れない、防災上などの問題あり)
-臨時・簡易の本棚を作る (段ボールなどで手製のもの)
-館内に新規書架を増設する
・スペースを増やす
-倉庫
-市内の公共施設の空きスペース
-市内ほか近隣他館との共同書庫の設置
-新館
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考えるポイントはいくつかあると思いますが、
・除籍する/除籍しない
・・除籍する図書をどう選ぶか
・・除籍した図書へのアクセスをどう保証するか
・書架・設備で解決する
・サービスで解決する
・図書館協力で解決する
・100冊を短期的に解決する/将来の増加にも長期的に対応する
が、おおむねこの俯瞰図の範疇かと思います。
ちなみに模範解答は、下記。
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@tsundokulib
解答:(1)自治体設置なら市長か議会の重鎮が頭の上がらない地元名士にもう千冊ばかり寄付させて個人文庫コーナをねじこみ、はみ出し分にプレハブでもなんでも仮置き場を認めさせ、どさくさ紛れに1万冊分くらい別置空間をせしめる。
https://twitter.com/tsundokulib/status/227341021397258240
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そしてわたし自身の第一印象的な答えは、
「5万冊規模の書架なら、棚板を組みかえれば100冊分くらいは捻出できる」
でした。
もっとGJな奇策が産まれてたかもしれませんが、グループワークの段階である程度淘汰されているかもしれませんね。
2012年07月08日
メモ:ライデン大学図書館の日本古典籍資料 #kul150
詳しくはこちら。
第150回ku-librarians勉強会 : ライデン大学図書館の日本古典籍資料と向き合って - 勉強会の予定・記録 - ku-librarians: 図書系職員勉強会 http://kulibrarians.g.hatena.ne.jp/kulibrarians/20120706/1340681455
第150回ku-librarians勉強会 : ライデン大学図書館の日本古典籍資料と向き合って - Togetter
http://togetter.com/li/333728
CA1764 - ライデン大学図書館特別コレクション室における研究促進とデジタル化 / 奥田倫子 | カレントアウェアネス・ポータル http://current.ndl.go.jp/ca1764
以下、自分のためのメモ、自分の考えたことなど。
・どんなものであれ研修は、研修後に明確な成果を発表することが求められた方がいいという考え方もあるだろうし、よくないという考え方もあるだろうし、どっちがいいかは、1年の在外研修を体験した自分にもちょっとよくわからない。
・ライデン大学図書館本館所蔵の『和漢三才図会』はいますぐデジタル化公開すべき。
・ライデンという街とライデン大学の経緯・履歴をもっとちゃんと知るべき。知らなきゃダメだ。>自分
・ホフマンにしろその他の東洋学者にしろ、そういう西洋人たちに日本の書物を売り渡していた日本の書物屋(須原屋茂兵衛とか)たちは、どんなふうに、どんな意図で、売り渡す書物をセレクトしていたんだろうか?という問い。
・「狂歌百人一首」やその他を、文学やその他の本来の用途としてではなく、人名辞典のようなレファレンス・ツールとして使っていたっぽい、という話。海外の日本研究者にとっての”レファレンス・ツール”の存在、重要性について。
・この問題意識はすげえ重要。> 日本資料のデジタル化であったとしても、オランダ側にとってそれがどう有効な資料なのか、プロジェクトなのか、がなければ、現地で根付かない。日本人研究者や日本研究者のため”だけ”の日本資料のデジタル化では、拡がらない。
・こういった資料研究・書誌研究を日本の図書館員が、個々人の興味・研究としてだけしかやってなくて、職務として戦略込み(組織・機関としても)でやっていないこと、が問題なんじゃないか。だから(個人ベースで)「それが大事なんやで」て言われても、そりゃ「?」ってなるしかない。
・京大の勉強会の第1回が、オランダとイギリスの電子図書館事業。そして10年以上経ってちょうど150回目で、またオランダの電子図書館事業に触れられているのは、実に感慨深いと思ったよ。だからその、オランダのこと、もっとちゃんと知らなきゃダメだ自分。
2012年07月01日
団体活動の作法的なこと (メモ:saveMLAK報告会2012@大阪)
2012.7.1
「saveMLAK報告会2012 〜社会教育・文化施設の救援・復興支援〜 」
大阪会場のセッション
http://www.ustream.tv/recorded/23686596
会場に参加したわけではなく、一部をUstreamで拝聴しただけではあるのですが、その中で、A(Archives)から報告なさった京都府立総合資料館の福島さんによるいくつかの提言が、なるほどなと非常にうなづける話でした。ふだん親しくしてる人の言うことという贔屓目があるかもしれないにもしろ、それを大幅にさっぴいてもなるほどと、これは専門家集団が行なう団体活動一般に言える話であって、「忘れるな自分」タグがつくなというあれだったので、ここにメモしておきます。
ほんとは全文テキスト起こししてもいいくらいだったんですけど、なんか、文字で見るとよくわかんなくなっちゃって、耳で聴いて理解してもらったほうがいいので、ぜひ↑上記URLのアーカイブ動画をごらんになってください。
・saveMLAKは「施設」(社会教育・文化施設)に集中するという役割分担も、ありだとは思うが、「文化資源」(図書資料も自然史標本も含む)にひろがらない構造をどう克服していくか。
・各参加者が、自分に向いていることに集中すること。また、他所・他団体が得意なことはそちらに任せること。(選択と集中)
・戦線の縮小。やれることの限界はある。みんなが疲弊しないことが大事。できる範囲でやれることがあるだろう。どの活動団体でも同じことだが、継続自体が自己目的化しないことが大事。
・どのような着地の仕方をするのかをそろそろ見据え始めるべき。
・これから先も災害リスクは抱えていくことになるし、かつ、かつてのような経済成長は望めない。その中で、それぞれの持ち場で、文化資源をどのように守っていくのか。社会教育文化施設としての活動をどう行なっていくのか。次に起こるであろう大規模災害(自分が現役のうちに1-2度は起こるだろう)を見据えてどうするのか。100%とはいかないまでも、教訓を活かせるように。