デンマークのにぎやかな公共図書館 : 平等・共有・セルフヘルプを実現する場所 / 吉田右子 (新評論 , 2012)
![デンマークのにぎやかな公共図書館−平等・共有・セルフヘルプを実現する場所 [単行本] / 吉田右子 (著); 新評論 (刊) デンマークのにぎやかな公共図書館−平等・共有・セルフヘルプを実現する場所 [単行本] / 吉田右子 (著); 新評論 (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51rb6C5kBFL._SL160_.jpg)
●序章 私が北欧の図書館をめぐる旅に出た理由
・「私が北欧の図書館に興味をもちはじめることになったきっかけは、12年ほど前に、図書館関係の雑誌
『カレントアウェアネス』に小さく紹介されていたフィンランドの小さな街の図書館のことを知ったからである。」
・(before)調査当初、サービスは想像していたものよりは普通。日本も多様なサービスを展開し、差はない。→【北欧ショック】→(after)どの街にも居心地良い図書館があり専門職が配置。基本的なサービス。館長の信念。家具。建物・資料・司書の3要素がそろうサービスの実現は簡単なことではないし、アメリカでも不足はたくさんあるのに、北欧の図書館にはどこへいっても3要素が満たされている。
・北欧でもっとも成熟した図書館システムをもつ国・デンマーク。
・アメリカ近代式運営が図書館に持ち込まれ、国内全土の図書館間ネットワークをいち早く整備した。
・図書館間ネットワークの整備には、平坦で狭いデンマークの国土が幸いした。
・1920年図書館法制定。1964年の改正で全行政区域の設置が義務づけられた。支出は公的財源が法的に裏付けられている。
●第1章 デンマークの公共図書館サービスの基盤
・整備された図書館間ネットワーク。資料が国内のどの図書館にあってもカンタンに入手できる。国立図書館(デンマーク王立・オーフスの2つ)−中央図書館(国内6つ)−地域の図書館。
・国内の書誌情報作成は、
デンマーク書誌センターが一手に引き受けている。→bibliotek.dkの構築。
・2007の行政改革でかなりの数が閉館した。
・開館時間が短縮傾向にある。2008年には1週間14時間を割り込んだ(!?)。
・1964図書館法改正で、「すべての行政区域に図書館設置が義務づけられる」と同時に
「国内すべての図書館を、すべての国民が自由に利用できる」ことになった。
・2000図書館法改正で、公共図書館だけでなく国立・大学・研究図書館も対象になった。
・2000図書館法改正で、館長は司書資格を必要としなくなった。外部との折衝や関係構築にかかわるスキルが要求されるため。(#いや、それ=司書資格不問、はなんだか・・・><)
・「司書を予約しよう」サービス(2008)
・デンマーク王立情報学アカデミー(司書養成機関)
・デンマーク自体は、公的事業・サービスに住民が参加する仕組みが整っている。にもかかわらず、図書館については、運営に住民が参加する仕組みはない。住民委員会、友の会、ボランティア、どれもごくまれな例。
●第2章 デンマークの公共図書館サービスの実際
・デンマークの人びとは、学校図書館を幼い頃から利用していて、図書館をとても身近な存在としている。
・旅行者でもパスポートなどのIDで臨時の図書館カードを発行してもらえる。
・図書館サービスの支払時にクレジットカード利用可。
・ILLで他館から図書を取り寄せる場合、デンマーク国内はもちろん、ノルウェー・スウェーデンからの取り寄せであれば、料金は掛からない。
・分館では司書と利用者が親しく言葉を交わしている場面によく遭遇する。
・
国立図書館と大学図書館は誰でも利用が可能。専門図書館も多くが公開。
・
フィンランドやノルウェーの図書館建築に個性的なものが多いのに対し、デンマークはどれも似通っていて個性がない。
・行政サービスコーナー設置の広がり。
・公共図書館と学校図書館の複合施設の広がり。
●第3章 デンマークの公共図書館をめぐる旅
・北欧ではセルフサービスが行き渡っているので、図書館でのセルフサービスにも違和感がないのでは。
・利用者と図書館のかかわりはどんな形でもいい。お茶を飲みに来るだけでもいい。利用者が自分のスタイルで利用すればいい。ただし、
図書館側としては、図書館でさまざまな発見を利用者にしてもらえるよう、いろいろな仕掛けを埋め込んでいく。・図書館と郵便局の複合施設では、司書が郵便業務を代行。
・電車が1時間に1本しかないローカルな終着駅のミニ図書館であっても、利用者は途切れることがなかった。
・コミュニティプロジェクトとしての図書館サービス。ゲレロプ図書館・ハスレ図書館。2004年にビルゲイツ財団の学習へのアクセス賞を受賞した、オーフース図書館の分館。移民・難民居住区の分館・地域サービス。生活上の困難な問題を抱えるマイノリティを総合的に支援する役割を話した。言語サービス。住民情報サービス。法律行政、就職、IT相談。常駐医師による医療健康相談。
●第4章 デンマークの読書事情
・
利用者を知りたい、という章。インタビューによる。
・すべての住民が均等に図書館を利用するわけではない。むしろ、
図書館利用は、人生のある特定の時期に集中する傾向があり、かつ、いつ集中するかは個人のライフサイクルによって異なる。だから大切なのは、コミュニティに安定して図書館が存在していること。
・デンマークの年間出版点数は13000点(2005)で、人口の割には多いのでは。
・デンマークの公共貸与権導入は、1946年(世界で最も早かった)。デンマーク語は少数話者によって成り立つ言語であり、その知的生産物を保護する必要があるため。
。コペンハーゲン大学のメインキャンパス近くにある書店「アカデミック・ブックス」はコペンハーゲン大のビジネススクールの学生が設立した。(#早朝から店内で授業みたいなことをしてるのが窓越しに見えたけど、ここのことか?)
・マンガやコンピュータゲームを公共図書館で扱うことに、否定的な回答が司書からくることはほとんどなかった。理由のひとつは、「子どもたちの間で広く人気があるものなのに、手に入れることができない子どもがいるのは、不公平だから」。
●第5章 北欧の図書館をめぐる風景
・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド
・ストックホルム市立中央図書館
●第6章 北欧の公共図書館を支える理念
・図書館の存在が”あたりまえすぎる”のが悩みの種。
・学習の場としての図書館をもっとも必要としているのは、”組織”に属していない人びと。
・住民が、自己学習によって、力をつけて(エンパワーメント)、社会に働きかける。そのための場。(ただしもちろん、その学びのスタイルは多様である。)
・マイノリティとマジョリティとの接触の場としての公共図書館。
●おわりに
・「私が本書を通じて描きたかったのは、北欧のごく普通の図書館がそこに住む人びとによってどのように使われているのかということだった」
・北欧の図書館は、レベルの高いサービスや制度という意味でかけはなれた存在、ではない。
・図書館の資料は常に利用者ひとりひとりに開かれたものでなければならない、という原則を淡々と守り続けている。目に見える成果や大きな成功ばかりではないが、
「人は誰しも自分と社会を変えていく力があるということを一冊一冊の資料を通じて示すことが図書館の本質的な役割である」。
posted by egamiday3 at 11:08|
日記
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