2015年02月05日

(メモ)博士学位論文の公聴会


 博士学位論文の公聴会の類の、異なるいくつかに続けてうかがって、いろいろお話を聞いていたら勉強になったので、そのメモ。特定を避けて内容には触れず、研究と論文と発表と質疑のあり方みたいなのについて、主に。


●その1
・自然科学がらみの社会学系
・主査1人、副査2人、タイムキーパー1人、オーディエンス3人。
・発表30分。質疑30分。
・時間によってベルが鳴る。時間はおおむね守られる。
・主査の司会的役割が大きい。

(プレゼンとして)
・こういうときに主査・副査・オーディエンスへの配付資料の準備は、必要か不要か。
・パワポを使う。
・パワポのデザインが決してわかりやすい・伝わりやすいというようなものではなく、いたって事務的なもの。わかってる人むけのプレゼンだからということか。
・それでも、飛び込みで聴きに来た分野外のいい加減な自分にもある程度わかるような説明の仕方。
・すごいスラスラとしゃべってはるから、それなりに練習したのか、あるいはそういう人なのか。
・時間が足りず、ベルがちんちん鳴らされるけど、ふつーにしゃべってはる感じ。

(研究内容)
・何章かあって、各章はおおむね個々の論文として発表されており、査読あり論文誌等に掲載されている。それらが合わさって学位論文として構築されている、というパターンのやつ。
・統計に次ぐ統計。数式に次ぐ数式。
・実態調査の分析と机上の推計とを比較する。自分の分析の正当性を、別の観点から証明・主張する、みたいな感じ。
・現状の問題点を指摘する。
・これとこれを使ってこれの実態を探る、という考え方の説明をする。
・今後の研究の方向性。

(質疑応答)
・本人の発表→主査の受け→副査の質問・コメントへ。
・個々の章(論文)の質は充分だけども、章同士の関連性や、全体の整合性が薄いのでは、という指摘。・方法について、新規性はあるが、唐突ではないか、という指摘。
・発表者のこたえるターンでは、副査の指摘や疑問点に対して、特に何かを見ながら確認するでなくスラスラと、しかも長めにこたえはるので、ちゃんと全部わかってるってことなんだなあと。
・「元になった論文誌の査読で、こういう指摘を受けた」。
・この学位論文が伝えようとしているメッセージは何か、について。
・これこれこういう修正をして、ここを延長して、それで学位論文として認めてよいですか、よいです、で終わる感じ。

(感想)
・こんなにたくさん前向きなダメ出ししてもらえて、うらやましいなあという感じ。


●その2
・実務よりの社会学系
・主査1人、副査2人、タイムキーパー1人、オーディエンス3人。
・発表30分。質疑30分。
・時間によってベルが鳴る。時間はおおむね守られる。
・パワポ配付あり。

(プレゼンとして)
・まず結論を言う。

(研究内容)
・この背景と、この先行研究と、この既存の理論をふまえ、仮説を立てる。
・その仮説は図・モデルで示すと、こういうことである。
・論理・学説を示す。←→それについてのなじみのある風景(事例・実情)を示す。
・研究方法は、半構造化インタビューと質問紙調査。これを統計的に分析して、仮説を証明する、という。
・インタビューは、インタビュー+作業(被験者?に作業をさせる)
・これこれのことを測定するのに、こういうアンケート質問によって調査する。このやり方が正しいかどうかの検証のため、他の視点からの調査も同時におこなって妥当かどうかをチェックする。
・結果を分析して、モデル図を描いて、有意に違いがあったところを指摘する。
・そしてやっぱり統計。
・この研究の問題点は、測定の尺度・客観性をどうするか。

(質疑応答)
・客観的な尺度について。
・定義が文脈で揺れるのではという指摘。
・この研究と提言の、意義について。具体的にどうするのかについて。
・インタビューやアンケート結果について、想定外だったり解釈が難しかったりという件について。

(感想)
・その1もそうだったけど、問われるのは「自分の研究をいかに客観視できるか」かなあ、という感じ。


●その3
・人文系、哲学。
・主査1人、副査2人(全員学内から)。オーディエンス10数人。
・発表30分、質疑90分の予定。実際には質疑がさらに30分延長。
・タイムキーパーなどいない。「時間なので」と言いつつ、さらに質問やコメントが続く感じ。
・レジュメあり。

(研究)
・研究にいたった個人的事情と想い。それをふまえての研究テーマの設定。
・先行研究をふまえて、これまでは充分でなかったこれこれの考察・こういうアプローチを、批判し、補完し、検討する。それはこのテーマの研究にこういうふうに貢献できる。
・対象となる著作・文献を分析する。
・その対象の受容・研究を分析・評価して、モデル化して、不足・不十分を指摘する。
・その対象を歴史的文脈を踏まえたうえで分析する。
・自分の分析と、先行の受容・指摘とを比較・評価する。
・対象をよりよく考察・検討するためのモデルを、構築する。

(質疑応答)
・文献を深く読み込んでいるかどうか。文献に広く目を配っているかどうか。
・あれは読んだか。これは読んだか。
・この考え方は、すでに誰々のこの論にある。
・これを読めば、こういう考え方ができるようになる。
・基本的にこれの応酬>「この件については、自分はこう考える。なぜなら・・・」。(根拠として、対象、著作、その受容・先行研究、歴史的文脈・影響関係)
・考察の対象とするものを、狭く特定しすぎていないか。深く読み込みすぎていないか。
・こういう考え方ができるのではないか。こういうふうに発展させてはどうか。
・この論は、研究者としてか哲学者としてか、どういう立場でのものか。
・自分をもっと出してはどうか。
・「とりあえず今回の博士論文のテーマにしぼって考えれば」(←これをちょいちょい言わないといけないくらい、議論が広がる)

(感想)
・学問の道に終わりなどないとは、このことか。という感じ。

posted by egamiday3 at 21:22| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする