開始から1年ちょっとが経ったNDLさんの図書館送信サービスですが。
先日(2015年3月20日)、国会図書館さん主催で「デジタル化資料活用セミナー 〜図書館送信の利用の実際と活用法〜」が開催されました。
デジタル化資料活用セミナー〜図書館送信の利用の実際と活用法〜
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/20150320digi_info.html デジタル化資料活用セミナー:図書館送信の利用の実際と活用法 2015.3.20 国立国会図書館 #NDL送信 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/797311 ディスカッションのパートでコーディネータをさせていただきました関係で、このサービスにまつわるいろいろな話題・コメント・質問・実情などなどにたくさん触れまして、また自分であらためていろいろ考えたこともあり、そのあれこれを記録としてまとめておきます。
●全体像
・NDLデジタルコレクションの図書館送信サービスについて、参加館にしろ未参加館にしろ、どういうことが主な疑問点や悩み点になっているかというと、だいたいざっくりと以下のような感じにまとめられるみたいです。
−利用の実態(利用者層・利用者像、利用頻度、資料の傾向)
−具体的な活用事例
−広報・PRのしかた
−端末の具体的な運用(端末の確保、場所、自館ルール)
−複写(自館ルール、手順、画質)
−複写における著作権判断
・これ以外になると、今度は逆に”個別事情”にもとづく個々の質問・悩み・要望という感じになってくる。そういう性格のサービスであるなということ。
・もうただひたすら
「お気軽に相談して下さい」ということ。これを当事者でないあたしがあまり言うのも気がひけるんだけど、最終これを言うしかない、どんなことでも相談してみたらいいと。
●参加館数が増えない
・いまやっと456くらい。
・県立レベルでも数カ所未導入。
・後述するあれこれ総じて、このサービスは「やってみなければわからない」し「ふとしたことで役に立つ」ものではあるけど、だからといって「やってみなはれ!」((c)鴨居の大将)で導入できるほど敷居が低いとはちょっと言えないという、手続&利用条件的に。
●ユーザ像
・未導入館にとっては、どんなユーザがどんなふうに使いにくるんだろう(頻度とか)、というのが関心事っぽい。まあ心配事にはなるよな、というのはわかる。
・ただ、北大さんの統計数字なんか見てもまさにそうなんだけど、一部のヘビーユーザによって数字が大きく左右する、というような感じがいまのところの大方なんだろうなと思うので、どうなるかはわからないという意味では心配してもしょうがないというのはあるかも。(例:複写枚数が総数4300で、一人の最多枚数が1200とか)
・ただ、「30分未満」の短時間と「60分以上の長時間との”二極分化”的傾向はおおむね言えそうな気がする。
●活用するには
・結局何に使えるの?/何に使ったらいいの?というのが、おおかたの悩みみたい。
・実際どんなふうに利用されますかとコメント求めると、まあたいていが、レファレンスの過程でとかILLの過程でその中にあるってのがわかって、そこへ案内する、というパターンですよね、このサービス・仕組みありきというあれではない。
・自分的には、このサービス自体には訴求力がそれほどあると言えるわけじゃなくて、
資料自体のほうで惹きつける、資料に語らせるほうがいいだろうなって思います。こんなおもろい資料がある、我が町に関する資料、話題のトピックに関する資料、懐かしのあの人の記事、で、それはこのサービスで、っていう。
・だって、ふつーに岩波文庫・新書の古いのが読めるっていうだけでも、充分すごくないですか。筒井康隆の小説が初出誌で読めるとか。
・あと婦人雑誌とか映画雑誌も入ってるし、ゆったらちゃらちゃらしたエンタメ路線でもいいです、例えば「吉永小百合」「男はつらいよ」で検索したらまあまあヒットする、30年前の吉永小百合のインタビュー記事があちこちに掲載されてるのが読めるとか。
・資料目線で、っていうコメントは参加者からもあって、「地域に関する資料をあらかじめリストアップして置いて、レファレンスに利用したい」と。
・あと
岡崎市立中央図書館ではホームページで実際そういうことをやってる、という紹介とか。
http://www.library.okazaki.aichi.jp/?page_id=293 これは近代デジタルライブラリーの例なんですけど、近デジの中に収録されてる岡崎地域関係の資料を簡易目録化して載せてるという。
・こういうのって、従来から図書館員がやってきたような情報編纂スキルの格好の発揮場所だと思うんで、例えば「地域」だけでなく、「時事のトピック」「人物」「分野別パスファインダー」に含めるなどなど、この視点からだけでも活用すべきやり方はいくらもあると思うんですよね。
・例えば単純に言って、自館所蔵資料で、近デジやデジコレで見れるものリストとか、OPACからのリンクとか。
・
自館OPACに送信対象資料のデータを搭載したい、というコメントもあって、NDLサーチのAPIを使ったらそれもできるっぽい、あたしではちょっとちゃんとはわかんないんだけど、いつかわかれるようになりますように、リンクは下記。
「外部提供インタフェース(API)」(NDLサーチ)
http://iss.ndl.go.jp/information/api/ 「オープンデータセット」(NDL)
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/standards/opendataset.html●複写・複製
・複写についてのポイントは、
−運用
−画質
−著作権
の3本柱。
・うちとこの事情を記録しておくと、送信サービス初めて1年での複写実績は、申し込み件数が750件、枚数なら万はこえてるでしょう(北大さんの倍・・・)。かといってNDLさんへの複写依頼が劇的に減っているというわけではない、通常の変動範囲程度な感じです。
・大阪府でカラープリンタ導入。ただし現段階で統計見る限りでは、数ヶ月に1件程度か。
・著作権の話はもうあれですね、話し始めると止まんないし終わんないしそして結局わかんない、っていう。
・ただ、著作権の判断は各図書館で、とのことで、例えば
自館で独自に調査した結果「この資料はもう著作権切れてる」って判明したんだったらそれでいいよ、という感じ。あと、自力で著作権者に許諾とれたんだったら、NDLさんからの許諾はいらないとか。
・直接来館しないでの複写依頼で、複写していいか、という問題。これについてはNDLさん的には「参加館で複写物を手渡しならいい」とのこと。だから、導入館・県立図書館さんが非導入館・市立図書館さんの求めに応じて複写物を送ってあげる、というのはできない。市立図書館さん、導入してください、ということになると。NDLさん的には。
・ていうか「図書館送信」以前に、「インターネット公開」であっても、「著作権保護期間満了」だからインターネット公開してるものは複写できるけど、「著作権者許諾」とか「文化庁長官裁定」とかでインターネット公開してるものは図書館が複写しちゃいけない、だってあれはおたくの図書館の所蔵資料じゃないでしょ(31条的に)、ていうことみたい。
・あと
著作権法31条1項3の「他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合」は、マジでもっと周知されてください。
・もうひとつ、参加館にとってわりと切実なのが、実際の送信サービス画面をチラシとかポスターとかに写真で載せて広報しまっせ!というのが、複製的にアウトだという話ですね。それって困るでしょうと。例えば今回のセミナーでのプレゼンで画面を映すにあたって、その写真載せたりやっぱするでしょう、と。でもそれってダメなんですかね。
・と、思ってたら、このセミナーでのNDLさんのパワポ&配付資料をよくよく見てみると、事例写真として使われてるデジタル資料の画面というのが、インターネット公開(著作権切れ)かそうでなければ自館出版資料(著作権じぶんとこ)で、送信サービス対象の資料の写真は使ってなかったという。ガチだった。軽く戦慄が走った。
●その他もろもろ
・例:大阪府立図書館さんは既存の利用要綱を改訂して送信サービス利用をこの中で可能にさせたとのこと。
大阪府立中央図書館データベース・CD-ROM端末利用要綱
https://www.library.pref.osaka.jp/site/kisoku/lib-dbyoko-c.html・端末の利用について。おそらく参加者が静かにざわついたのが、大阪府の「自動ログインツール」。これはマジ。
・このサービスを利用できる図書館とはについて。このサービスを利用可能な「著作権法第31条第1項が適用できる施設」として、「文化庁長官指定施設」があり、その例として「国際交流基金図書館」が挙がっている。
・登録利用者とは誰ですか?問題。考え方としては「各館が特定の条件を設けて登録している人」ということで、学外者も利用登録するんだったら対象にできますけど、まあ個別に相談してくださいとのこと。ちなみにうちとこは「こういう規則なんですけど」って相談したら「OKです」って言われたです。
●余録
・福井の人は関西館会場に来てはったけど、富山の人は東京会場にいてはった。北陸新幹線・・・。
posted by egamiday3 at 15:36|
日記
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