「アクセスの再定義 : 日本におけるアクセス、アーカイブ、著作権をめぐる諸問題」
2015.6.13
明治学院大学
主催: 明治学院大学文学部芸術学科、ハーバード大学
協力: ハーバード大学ライシャワー日本研究所、北米日本研究図書館資料調整協議会(NCC)
(このメモはあくまでegamidayの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での話であり、当日はかなりの知的刺激の嵐のため脳みそが”おもろしんどい”状態になってたので、メモがかなり朦朧としており誤解や手前勝手解釈の類も相当多いと思います。それはあたしが悪いのです。なので、内容の信頼度や整合性につきましては過度な期待はなさらないよう、それでもどの断片がこの大きな問題の解決のヒントになるかはわからないので、メモっとくという感じで。)
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◆オープニング
●ローランド・ドメーニグ(明治学院大学)
・様々な分野の専門家(研究者、ライブラリアン、アーキビストなど)が3つのパネルをひとつの場で議論する催し。
●アレクサンダー・ザルテン(ハーバード大学東アジア言語・文明学部(メディアスタディ))
・2016年にボストン・ケンブリッジで開催する予定だったが、TPPの折からいまこの時期にやるべきだろうと、開催に至った。
・新しい問題というわけではない。これまでもさまざまに議論されてきた問題として。
・日本で作成された資料情報コンテンツへのアクセスについて、日本だけの問題ではなく、研究者・専門家だけでもなく、一般の人びとの日常に影響ある問題として。
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◆パネル1 「アクセス否定? : 日本におけるアーカイブ・アクセス・著作権文化との経験・実践」
●司会:アンドルー・ゴードン(ハーバード大学)
・アーカイブ・サミット(2015年1月)は重要なイベントだった。その想いを継承したい。
●森川嘉一郎(明治大学)
・コミケ・同人誌のアーカイブと提供をおこなっている。
・百聞は一見にしかず、コミケに一度足を運ぶとよい。
・コミケには二次創作もあれば創作もあり、それがメインストリームに環流していっているというのが現状。
・コミックマーケット準備会が同人誌の見本誌を収集・保存している。その数200万点。ちなみにNDL所蔵のマンガ(単行・雑誌)30万点。点数では商業冊子より多い、という規模。
・「東京国際マンガミュージアム(図書館)」構想。ここで保存することを構想している。
・現在の”記念館”では、実験的に、最近1年間(約4万点)の同人誌を閲覧提供している。
・対象とすべきものには、絵コンテ、セル画などの資料。またアニメはおもちゃの広告塔として作成されたのが多いので、そのおもちゃも保存しないと文化的背景がわからなくなる。お菓子も対象。コンピュータ、アーケードゲーム、パチンコなど。
・海外との連携。例:北京大学にマンガ図書館(2014年11月)、ここには複本を提供するなど。
・ものはある。土地もある。あとは建物のための資金。ご賛同を。
●柳与志夫(東京文化資源会議事務局長/元NDL)
・・アーカイブの概念の混乱について
・従来の”公文書”以外の理論的研究はされていないのでは。
・この5年くらいでアーカイブという言葉が一般にもひろまるようになった。(意味はともかく)
・理屈と実際の乖離はあるのでは。例:「・・・その「アーカイブ」の使い方は気に入らない」という人もいる。
・MLAとは言っても、図書館関係者でもまだアーカイブという言葉に反応が鈍い人も多い。
・デジタル・コレクションとデジタル・アーカイブはちがう、というのはほぼ共通認識。図書館の所蔵資料をデジタル化したものはデジタル・コレクションであって、提供・活用の仕組みが整備されてはじめてデジタル・アーカイブと言える。
・概念や言葉が錯綜しているが、それは悪いことではないと思っている。
・・アーカイブの現状
・一般に認知されてきたように思える。ただ、ネガティブな印象(倉庫的、死蔵的な感覚)も根強い。
・「NHKアーカイブス」はその印象を払拭した功績がある。(用語の混乱はあるが)
・各業種分野の関係者に制度・仕組みとしてのアーカイブが必要という共通認識が醸成されてきた、これは大きな成果であろう。
・一方でこれぞ日本のアーカイブだというような好例というのが現れていない。
・アーカイブ・サミット(2015年1月)で多くの問題を洗い出せたのでは。
・・制度的対応の必要性
・アーカイブ促進のための制度的根拠が欠けているのでは。アーカイブの基本法(図書館にとっての図書館法のような)
・ボーンデジタルな資料のアーカイブ化が問題、こっちのほうが消えやすいので、制度的対応が必要。
・混乱するくらい周知されたのはいいことだが、そろそろ整理と統一イメージは必要だろう。それが前提となって、制度整備ができる。
●大場利康(NDL)
「デジタル化を進めるもの、阻むもの」
・デジタル化の壁として、デジタル化のコスト、システム構築のコスト、著作権処理のコストがある。人材と予算の問題。
・利活用の壁として、検索で出てこない(ヒットしない)、どう使えるのか分からない、どれが何だか分からない(何があるのか?ほしいものがあるのか?)。使っていいのか、お金は誰に払えばいいのか。
・ポータル、メタデータ、ライセンス整備が不足。
・・文化審議会著作権分科会(第41回)(2015.3)←
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/bunkakai/41/index.html
・貴重資料や,絶版等の入手困難な資料について,損傷等が始まる前の良好な状態で複製することは,第31条第1項第2号により認められる。
・記録技術・媒体の旧式化により閲覧が不可能となる場合,新しい媒体への移替えのために複製を行うことが認められる
・「図書館等」の主体を適切な範囲に限定して拡充する。
・国立国会図書館以外の図書館等がデジタル化した絶版等資料を,国立国会図書館の行う図書館送信サービスにより、他の図書館等に送信する。→現行法上可能である。
・外国の図書館等へデジタル化した絶版資料の送信サービスを提供する。→国立国会図書館の役割や業務の位置づけ等を踏まえ検討を行うことが適当である。
・・知的財産戦略本部(第11回)(2015.4)
・アーカイブの利活用
・統合ポータルの構築
・協議会の設置
●マクヴェイ山田久仁子 (ハーバード・イェンチン図書館司書、NCC議長)
・ハーバードでの日本資料の利用例
・例:学部生向け日本佛教の授業で、攻殻機動隊の映画を見て、ロボットの本を読んで勉強する
・多岐に亘る映像資料が授業や研究で使われるが、難点がある。
・パッケージ(DVD)が圧倒的、ストリーミングはまれであるというのが現状。
・DVDの寿命の問題があるので、媒体変換のコストがかかる。
・英語字幕付きが少ない→グレーなのを使わざるを得ない。
・テレビ番組は有効な教材になり得るのに、現状ではほぼ不可能に近い。
・例:NHKのドキュメンタリーDVD(英語付き)が、北米の図書館で購入させてもらえない、という例。
・例:クローズアップ現代は数年分アーカイブされている。こういうのが理想的(英語字幕はない)。
・例:韓国の国立フィルムアーカイブ(KOFA)は積極的にアーカイブ化して公開している。著作権のあるものも政府がクリア・補償する。多様なプラットフォームに対応させる(YouTubeなど)。ペイパービューや定額契約が図書館でもできる。
・例:Alexsander Street Press。映画は日本語で流れるが、同ページ中に英語のスクリプトを併記するなどの加工ができる。いろいろなプラットフォームに対応させることの利点。
・日本でもストリーミング等の動きが活性化しつつあるか?
●ディスカッション
・・(江上)コストをどこが負担するか。利点をどう理解してもらうか。
(大場)
・経済効果を言うと、間接効果になってしまう。
・BL「1ポンド投資すると5ポンドの経済効果」
(森川)
・1、受益者負担。2、永続的維持が可能なのか。
・フットワークの軽さが必要な場合、税金では難しい。すでに価値が認知されているような資料でないといけないので。そういうときは税金ではなく、という、ケースバイケースが現実的か。
・一般に周知させるには、MLA連携。すなわち、アーカイブ単体ではなくそこにライブラリーやミュージアムの機能を併設することで、わかってもらいやすくするという方法。
(柳)
・「資料」とせずに「資源」とした。
・資料=そのものに価値があるかどうかという考え方になるが、資源=活用することに意義がある、デジタル化して別の価値を生む、再構成できる。
・使えるものにする、その結果、生活を豊かにする。インフラにする。
・資源を活用し、コストを回収するサイクルに載せられる。
・地域コミュニティの中でもスモールビジネスとして文化資源を活用することをやっていくといい。
・国レベルの方策と、そうでないレベルで考えをわける。
・例:日本語の新刊書籍の書誌情報を英訳する。(官レベル)
→その中からニーズをとらえて本文の英訳を数千点する。(官民協力)
(山田)
・アクセスできるコンテンツを増やそうとすると、金銭的コストだけではなく、制度整備が必要。すでにいまあるコンテンツへのアクセスができるように。
・・公共図書館の整備について
・柳さんの話にあった、地域の中で文化資源を活用していく活動・仕組みの中に、地域の図書館・博物館がどうかかわるか。そのノウハウを国会図書館からどう提供していけるか。
・・(永崎)デジタルアーカイブとユーザの間に立って媒介する媒介者が必要。戦略はあるか。
(森川)
・「図書館」という言葉のイメージに”良書”的なものがある。一方アーカイブはそれは問わず活用できるもの。
・当初「東京国際マンガ図書館」だったのを「ミュージアム」に変えようとしている。保存の意義を伝えるために”ミュージアム”機能が必要。資料の価値はあとあとになって発見されることが多いものなので。
(ゴードン)
・法制度を変えないとお金があってもできないことがたくさんある。デジタル化したのに国会図書館に足を運ばないと見られないものがある、とか、どうしてNHKの番組はすべてがクローズアップ現代のようにならないか、など。
・技術はある。問題はお金+法律・制度だろう。
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◆パネル2: 「アクセスの理論 : 所有権の問題」
●司会 アレクサンダー・ザルテン(ハーバード大学東アジア言語・文明学部)
・今パネルでは、抽象的にアクセスとはどういう概念なのかについて考える。
●北野圭介(立命館大学映像学部)
・立命館大学映像学部では、映画、ビデオゲーム、CGなど対象をひろげている。
・スマホではほとんどがアプリを使われている。インターネットではない。アプリ経由のスモールアーカイブへのアクセス。(ストリーミング含め) 2010年代はもしかしたらアプリ(アプリケーション)の時代では。
・サーキュレーションから→コンテンツへ
・アーカイブはミュージアム機能をもつことによって、アーカイブからユーザに近づいていく。
・映画作品を単体で作るのではなく、ワールドビルディング=世界観を先に構築して監督達がそれぞれ作品をつくっていく。
・監視社会から制御社会へ。
・ボトムアップでアプリケーションがユーザを制御する、その制御が不可視的に存在する。
・例:いいねの仕組みにみなが集まらざるを得なくなる。
・アルゴリズム化とメタコントロール
・例:カメラがとらえた画像を認識する(例:自動車のオートブレーキのためのカメラ)→オブジェクトに人が介在しない状態になる。
・例:自分の写真をアップロードすると、Facebookが勝手にアルバム化・別コンテンツ化してくれる
・その”作り替え”が人間の問題ではなくテクノロジーの問題になる。しかも不可視。
●イアン・コンドリー(MIT)
・いまの著作権はゾンビかサイボーグか
・ゾンビ=過去が将来を食らう、もう死んでる、でも死んでることがわかってない
・サイボーグ=ネットワークと共生
・音楽シーンでは資本主義的なエコノミックバリューよりも、ソーシャルバリューとそれを支えるコミュニティのほうが大事である。
・アニメや同人誌の世界でも同じ。
・キャラクターがプラットフォームになっている。(例:初音ミク)
・ニコニコ動画+初音ミクでは、コンテンツにコメントを載せる、コミュニティがうまれる。
・そこから、ファンによるプロダクトがうまれる。例えば新しいビデオゲームが作成される、ライブコンサートが開催される。
・peer productionが認められたキャラクター(ファンサークルや非商業の利用OK、同人作成物がサークル運営レベルなら利用OK、もうけが出るならバックが欲しい、の3段階)
・コミュニティを認めて、そのあとビジネスがうまれてくる、という状態。
・『The Eureka Myth』(2014)
・創作のきっかけは何か。ビジネスでお金になるという回答はほぼない、創りたい・見てもらいたいが最初。
・トップダウンの力でメディアをコントロールする時代、著作権がゾンビだった時代は終わる。
・コミュニティがクリエイティブであるという状態の中からイノベーションはうまれる。
●上崎千(慶應義塾大学アートセンター)
・printed ephemeral
・ゾンビ的にサバイバルしてきた資料(チケット、パンフ、招待状など)
・何が残るのか、何が残らないのか、残らないものはどうなるのか。
・アーカイブと抽象芸術は似ている。これに価値があると考える。芸術か非芸術かなんてことは言わない。資料の山でドキュメントとしか言えないようなもの。それは抽象芸術のようなもの。
・杉浦康平ともやしの話。(
・この時代の表現は”コレクティブ”集団的であった。案内状をデザインした人、もやしを付けた人。それをとっておいた人もいる。(コレクティブな表現というのは、いまどきのコラボレーションとはまたちがう)
●ディスカッション
(北野)
・ゼロ年代のサーチエンジンはまだオープンだったが、アプリだとそうならない。
・デモクラティックなプラットフォームを構築していく必要があるのでは。
(くさか)
・ユーザ側の「誰がつくった作品か」の認識が多様化している?
・アクセスコントロールを誰が行うべきなのか?
(コンドリー)
・ほとんどは裁判にならないはずだから、みんな無視していいんじゃないか。
(上崎)
・小火がたくさん起こった方が事例がたくさんでていいんじゃないか。
・著作権に対して、大丈夫なの?、萎縮、疑心暗鬼、草の根警察が問題である。不活性化につながってしまう。大丈夫だよ、と言えばいい。
(上崎)
・デジタルアーカイブの検索結果自体が歴史記述にならないかと考えている。
(北野)
・最初にアーカイブありきではなくて、エキシビジョンの試み、ユーザの意見集約、トライ&エラーなどによって蓄積していくということもひとつかなと。
(ゴードン)
・東日本大震災アーカイブはサイボーグなアーカイブ。参加型アーカイブを目指している。
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◆パネル3: 「アクセスの未来における可能性」
●司会: テッド・ベスター(ハーバード大学・ライシャワー日本研究所所長)
●福井健策
「TPP知財条項と知の創造・アクセス」
・・保護期間の延長について
・70年への延長
・日本での反対論
「国際収支を害する」(著作権使用料は年8000億の赤字(日本の貿易地赤字の6-7%))
「延長したところで遺族の収入は増えず」
「権利処理が困難になる」
「使えなくなって、忘れられるリスクが高まる」
・青空文庫:テキストデータなので読み上げソフトにつかえる、電子書籍化できる
・NDLデジタルコレクション
・期間を延長するとこういったデジタルアーカイブの活動が狭まる懸念がある
・・孤児著作物
・デジタルアーカイブを大規模におこなおうとすると、著作権処理のコストが大幅に高くなる。
・孤児著作物がべらぼうに多い。アメリカでは学術著作物の50%がそれに当たると言われる。保護期間が延長されるとこれが大幅に増える
・LC著作権局長が「未登録著作物は50年に戻そう」と提案したほど。
・・非親告罪化
・文化活動・経済活動が萎縮してしまう
・二次創作という創作活動のありかた
・フェアユースもない、裁判も身近でない
・第3者の通報→警察が動かざるをえない→それを事前におそれてデジタル化の現場が萎縮する
・・日本モデルの模索
・延長は登録作品のみに
・非親告罪化は累犯のみに 等
●植野淳子(株式会社アーイメージ)
・アニメーションのアーカイブ構築
・アーカイブとして何を選び何を残すのかが重要な課題。
・所蔵館での保管状況(「メディア芸術デジタルアーカイブ事業委託業務成果報告書H23」)
・メディアの寿命という問題(媒体変換のコスト、技術者がいない、再生機器が消える)
・アニメーションでは、原画動画背景絵コンテ設定で多ければ1話8000枚の紙が生じる。これらのうちの何をどのように作品に紐付けて保存していくのか。
・アニメーション埋蔵文化をつくらない。埋もれてしまうと、発掘にコストがかかってしまう。
・デジタル化したらしたで、それもまた埋蔵文化財をつくらないということ。
・ボーンデジタルの消失を防がなければならないということ
・それらを生きた文化財として。
・構想:日本アニメーションアーカイブスマネジメントセンターを中心とした、日本アニメーションアーカイブスプロジェクトにおける連携。
・オープンにすべきところとクローズにしなければならないところの仕分け、有償/無償の切り分けなどが課題。
●小塚荘一カ(学習院大学法学部)
「アクセスの未来における可能性」
・例えばコンビニの棚のどこに何を陳列するのかなど、アクセスはコントロールされている。
・アクセスは、産業構造と結びつく。商店街がコンビニに置き換わるというようなことが、コンテンツ業界の産業構造に影響することも起こる。
・じゃあその産業構造のコントロールを誰が握るのか、ということ。
・iPhoneでAppleは何をやっているのか? iPhone、メーカー、キャリア(日本3事業者)、iTunes、これら全体をコンセプトとしてつなげたのがAppleのやったこと。
・電子書籍でも同じ事がおこる?
・Amazonが電子書籍において、価格を決定する、露出を決定する、評価を決定する。そういった”メタデータ”をコントロールする。そこへの危機感が日本の出版業界にある。
・プロパティのコントロール---プライバシーのコントロール---情報利用の自由
●ディスカッション
(小塚)
・著作権使用料の赤字の原因は?
(福井)
・多くはソフトウェアではないか。スタンダードを握られているから。
・プーさん1点でJASRACに相当する。
(以下、著作権一般の質疑)
・(大場さん発表の)第31条1項について(解釈の明確化)
・文化庁長官裁定のハードルを下げる
・拡大集中管理=集中管理を民間委託などする
・所有権と著作権の関係
・TPP合意後の動きについて
・映画の委員会式の製作は危険
(植野)
・所蔵機関によってルールがちがうので、ユーザにとってもコンテンツ提供側にとっても不便。共通ルールで同様に持つことができるようにしたい。
・アーカイブのフォーマットをどうしたらよいかの検討、ルールの整備。
(福井)
・各国で著作権法がちがう。それをあわせようとしたのがTPP。しかも強い方に。
・共通ルールをつくると、自由度がうばわれる。共通化しなくて不都合がないのなら、共通化が余計なのではないか。
(福井)
・フェアユースは、自由にやって裁判で決めようという考え方。日本人に使いこなせるかどうか。
・TPP後、日本でもフェアユースを(カウンターバランスとして)入れるしかないという議論が起こるかもしれない。それを先にやったのが韓国。
●クロージング・ディスカッション
司会:ローランド・ドメーニグ(明治学院大学)
(ドメーニグ)
・教育機関とデジタルアーカイブについて
(植野)
・アニメーションのアーカイブ構築を考えるのに、教育機関を中心的存在に据えている。
・アーカイブを支えるには産業界だけでは難しい。
(上崎)
・授業でアーカイブ関連の授業をしている。使う側としてだけでなく、完成していない進行中のアーカイブに学生が関与するのは意義のあること。人文系の研究が応用発展的研究に流れて、基礎的研究がおろそかになりがちだが、そういうことも大事。
(ドメーニグ)
・ハーバードサイドから
(山田)
・ユーザから見れば、MLAどこにあろうとその資料は必要な資料なのだから、見つけやすくするべき。HOLLISプラスはそれを可能にしたディスカバリシステム。ファインダビリティは克服されつつある。
(ゴードン)
・ここ20年で図書館の大学内での意味合いがかわった。場所としての図書館と、バーチャルで網羅的にカバーする役割の両方。重要性は増しているのでは。ただ、本が図書館にあるわけではないという状態が増えつつある(郊外書庫)。
(山田)
・それをデジタルスキャンで届けるサービスがある。
(ドメーニグ)
・作り手と送り手と受け手。かつて一方的だったのが、プラットフォーム・ネットワーク化でその境目があいまいになりつつあるのではないか。
(コンドリー)
・企業と、ファンコミュニティのアーカイブとが、どのように関係をつくることができるかどうか。
(ザルテン)
・いまは企業は商品を作ることはしない。商品が存在する”世界”をつくる。そこでユーザ・ファンが商品をつくることで、企業が収益を得る。そういう仕組み。
(福井)
・いま著作権は長い後退戦を戦っている状態。コンテンツ産業は下降しており、コピーライトをコントロールして希少性を確保することでは収益を得られない。これからその新しいルールの作り手が、国家から、巨大なプラットフォームというルールメーカーに手放されようとしているのではないか。流通のあり方をコントロールしようとしている新しいプラットフォームとどう切り結んでいくか。
(司会)
・北野先生の言及した「不可視化」
(フロア)
・コンテンツ自体の入手の問題とは別に、検索可能化・ファインダビリティ・インタフェースの問題でもあるのでは。
(小塚)
・本質はコンテンツへのアクセスの問題より、検索できるかどうかというメタデータのコントロールやアルゴリズムの問題であろうと考える。
(福井)
・プラットフォームサイドの肝は、著作権よりも、情報へのアクセスのコントロール。アルゴリズムやサジェスチョンは民主化されておらず、公開されておらず、ユーザのコントロールは及ばない。ヒットしない/順位が低い結果はないのと同じになってしまっている。
(大場)
・国会図書館のデジタルアーカイブは資料自体へのアクセスを保証しようとするもの。それへの検索可能化についてもNDLサーチにて取り組んでいる。ただこれだけでも足りない。そういう仕組み(アルゴリズムやロジック)を”みんな”が作れるようにするのが必要。
(くさか)
・パブリックにアクセスできるかという問題と、それを自由にオープンに利用できるかという問題。
・情報流通においては「何が”フェア”なのか」が大事なんじゃないか。
・権利を持っている自分の論文をどのように使って欲しいと考えているか? 本当に使っていいようにライセンシングしているかという問題。
(山田)
・ハーバードではリポジトリでのオープンアクセスを専門部署(ダッシュ?)においてかなりすすめている。
(ゴードン)
・たくさんアクセスされたと報告を受けるととても喜ばしく思う。コンドリー氏の言う創作するファン心理と同じでは。
(ベスター)
・いや、あまりすすんでいないと思う。手続きが難しい。アカデミア.comなどで発表する人が多い。
(上崎)
・プラットフォームが複数の小さいものになっていき制限されていくと、アクセスメリットがさがるんじゃないか。作成・発信側としても、表現自体はコンパクトになり、多様性が失われるのじゃないか。
(植野)
・海賊版でないものを確実に提供するためには、ビジネス・課金の仕組みが必要。
(福井)
・例えば、論文は自由により多く見てもらって、そして、仕事を多く受けようとする。
・ビジネスを支える収益の獲得は必要。その獲得を、今後は”どのモデル”でやっていくのか、という問題では。
・例えば、コンテンツ産業の中でも、ライブイベント、コンサートの類いは収益を伸ばしている(15年で3倍)。容易に手に入れらない”臨在感”にお金を払うようになっている。
(司会)
・来年(2016)ハーバードで続きのイベントをやるつもりであるとのこと。
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・もう”おもろしんどく”て脳みその糖分メーターがどんどん減っていく感じ。途中でチョコ投入。(ブラウニー買っといたらよかった・・・)
・海外からの日本へのアクセス、という視点の話題が少数だった。ハーバードの先生サイドの話をもっと聞きたかった感はある。
・こういう話題のシンポジウムこそストリーミング中継してほしい。
・広く多様にヒットするインターネット・サーチエンジンよりも、小さくコントロールされたアプリが使われるようになったのは、ひとつには、前者では効率的な情報入手が望めない、後者のほうがほしい情報が見つかる、とユーザが評価したあらわれなのか。だとしたら、ユーザは「コントロールされたがってる」ふしもあるんじゃないか。良し悪し別にして。まあねえ、コントロールされてるほうが楽だもんねえ、良し悪し別にして。
・とりあえず、議論しつづけることだけが生きてることだなという感じだった。寝てる怪獣の背中を棒でガンガン突きつづけなければ。(いい意味で)