2016年09月04日

(Q&A)「司書の心得は」「これからの図書館は」「実習にて」


 寄席の常連さんから質問を出してもらってそれに答える、という三題噺企画の、質問と答えの紹介です。一部改変入り。

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Q「図書館で働く者として、どういうことを心得ておくのが良いですか?」

 世の中のほとんどの人、大多数の人が、図書館というものに何の興味も関心も持ってない、ということを常に忘れないようにしておくことかな、と思います。

 忘れちゃうんですよね、こういう仕事してると。もちろん自分では、図書館のような施設なり仕組みなりというのは社会世界の役に立てるはずの、意義のあるものだというふうに考えてはいるんだけど、世の中のほとんどの人、住民、納税者の多くは、まあまずそんなことは考えてないし、なくてもまあまあ困らないと言う人が大多数だろうし、そして、そういう人たち、そういう社会世界を相手にして仕事してるんだっていうことは、常に意識してないとなって思いますね。
 それは、だから説明やアピールがあの手この手で不断に必要なんだ、ってことでもあるし、また逆に、「図書館大事だ」っていう自分の考えが果たして正しいのか?と常に自分自身に疑いをかけ続ける、検討検証し続ける、ってことでもあると思いますね。
 図書館関係なしに、自分で自分に疑いを持たずに仕事してると、だいたいヤバい、と思いますね。

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Q「ITが進んで、検索も蔵書管理も便利になっていくと、これからの図書館はどうなっていくでしょうか?」

 図書館って、検索ができて、本が読めたら、それで終わりでしょうか、っていうとそうじゃないと思いますね。 
 だから、ITが進んで検索も蔵書管理も便利になっていけばいくほど、やっと本当にやりたかったことができる余裕が生まれる、ていうことだろうと。残念ながらいままではコストのかけ方が偏ってたせいで、別のところへの注力を割愛しがちだったんだけど、それは注力する必要がなかったからしなかったのではなくてしたくてもできなかっただけだから、できるようになったらやったらいいんだ、ていうことを思い出したらいいんだと思いますね。
 関係ないかもしれないけど、図書・図書館史を学ぶ意義のひとつは、そういうことを思い出すってことなんじゃないかなとも思いますね。

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Q「来月、図書館実習として、実際にどこかの図書館に行って働くということをします。どういうことに気をつけたらいいでしょうか」

 そこでの仕事のやり方や、その図書館での資料・利用者に対する考え方、というのは極めてローカルなもので、まったく標準でもなんでもない、よそへ行けばガラッと変わる、ということはぜひ理解しておいてください。
 図書館の仕事は、目録規則とか分類とかサービスとかでかなり標準化されてる、という一面があるにはあるものの、やっぱりかなりの程度で閉じた職場という感があるところだと思います。なので、現場の日常業務的なところは基本的にローカルルールのかたまりでできてるという感じです。しかも、学生の実習生に体験させ任せることができるような種類のお仕事については、特にその傾向が強いんじゃないかなって気がしますね。
 なので、たまさか派遣された先の図書館での仕事が、ぜんぜん合わなかったから自分はこの仕事向いてないのかとか落ち込む必要はまったくないし、逆にそこで教わったり学んだしたことが他所でもそのまま通用するかというとそういうこともまったくないし、ということは忘れないでもらいたいなって思います。
posted by egamiday3 at 10:22| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする