「JAL プロジェクト2016のご案内」
http://www.momat.go.jp/am/visit/library/jal2016/ 海外で日本美術を担当している司書・研究者・キュレーターなどの専門家たちを、日本に招いて研修とワークショップをおこなう、という事業(通称「JALプロジェクト」)がありまして、2014、2015、そして今年2016が3年計画の最終年ということで、11月末から12月初旬の2週間くらいでおこなわれていました。
(概要)
・文化庁の補助金による事業
・2014-2016の3年計画
・東京国立近代美術館さんがメイン
・今年の参加者は9人
・東京+関西の各種機関見学と、研修、グループワークなど
その最終日におこなわれた公開ワークショップ(「日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための提言III」)が東京国立近代美術館(2016.12.9)でおこなわれまして、なにやらコメンテーターなるお役目を仰せつかったこともあり、わりとがっつりめに参加してきました、ていうのの記録です。
たぶんですが、3部構成になる予定。
JAL2016・その1 ワークショップの内容メモ
JAL2016・その2 コメンテーターとしての自分のまとめとコメント
JAL2016・その3 この類の研修とか提言とかそのものについて、自分なりに考えたこと
以下、その1 ワークショップの内容メモです。
前半にハイライトをまとめてあります、後半が生メモ全文です。
(註)<e>はegamidayのコメントです。
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■egamidayなりのハイライト
・
西洋の研究者たちがよく利用する日本美術のデジタルアーカイブは、例えばニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンの大英博物館による日本美術作品のデジタルアーカイブ。海外の機関だから日本に比べて情報量は貧弱だが、それでも、日本語が読めない研究者にとって使いやすいデジタルアーカイブは、海外発のほう。
・例えばケンブリッジ大学など海外の機関で日本資料のデジタル画像を公開しているが、日本のユーザは日本資料を探すために海外サイトを見ることはないだろう。デジタルアーカイブのポータルがあれば、その可視化も可能になる。
・Korean Foundation(韓国国際交流財団)は、海外図書館でも韓国のデータベースや資料にアクセスできるよう経済的援助をおこなっている。(<e>詳しく知りたい)。
・ロンドン大学SOASのwebサイトに掲載されている、利用できる契約ものデータベースのリストを比べると、中国のデータベースと日本のデータベースではそのリストに約3倍の開きがある。
・(ディスカバリーシステムに限らず)ネットで日本情報を検索しても、中国のサイトがヒットする。
・日本研究・学習に何語の資料を使うかのアンケート@ルーマニア。英語が2/3(一番手に入りやすい)、ルーマニア語が1/3、日本語は1/6。ほぼ全員が「資料が手に入らない、足りない」が問題。手にとって調べられない、新しい本がない、日本語原書がない、英訳しかない、逆にルーマニア語翻訳がない。
・ブルガリア人はロシア語ができるので、ロシア語の日本関係図書を使うことができる、というアドバンテージがある。
・資金が問題。さらに、資金があっても買った本を置くスペースがない。収書のためのカタログ等の参考ツールがない。
・ソフィア大学で、バルカン半島日本語サマーキャンプ、国立民族学博物館での日本展示、子どもへの日本文化クラス、伊勢物語翻訳プロジェクト。
これらのエネルギー源は、資金ではなく、学生の熱意であり、次の世代を育てることが重要。
・学生になぜ日本語を勉強をしているのかを聞くと、就職とかそういうことではなく、文化を知ることで人間として豊かになれるから、という強い動機がある。日本に興味を持ってくれた学生を失いたくない。
・デジタル・ネイティブな若い世代には、スマホのアプリでの発信も重要
・特に若い世代の人々は自分の将来のことを考えると、デジタルが整備されるのを何年も待ってはいられない。
当座の対応やつなぎでもいいから、”速さ”も必要。
・谷口さん提言の「比較的早く着手できそうな課題」
・候補となる日本美術専門家を探し見つけて、招聘のためにアプローチをしても、参加してもらえなかった人・機関も多かった。(<e>費用全部持ちで、日本語条件を緩和して、参加を個別に働きかけても、こうであると。)
・セミナー(一方的に教える)、より、情報交換ワークショップ(対等に教え合う)。
・リンク集やツールなど、日本人だけで作るとガラパゴス化してしまう。
海外の関係者の協力を得るべき。(<e>これはデジタルアーカイブ構築や研修事業等も、だろう)
・JACプロジェクト(Japan Art Catalog 日本の展示図録をアメリカ等の拠点図書館に寄贈し所蔵してもらうプロジェクト)について、当のアメリカのユーザにも知られていないおそれがある。(?)
・ピーターセンさんの著書(所蔵和古書目録)『Catalogue of Japanese Manuscripts and rare books』(2015)には、
同じ本が早稲田のデジタルコレクションにあることなどを注記。
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■生メモ全文
●基調報告(水谷長志)
・なぜこのJALプロジェクトを?について。図情大時代に、藤野先生のローマ国立中央図書館所蔵和古書カタログや北京日本学研究センター図書館支援などを経験。また、アメリカ滞在研修などが、企画の原点。
・目的5点。研修、日本側の理解、日本と受講者の交流、受講者間の交流、日本側が現状を再考する。
・1年目は、ほぼ日本人ばかりだったので予断・油断があった。
・2年目・3年目から、初対面同士でのグループワークを実施。
・3年間の総括。
・@
日本美術専門家は、どこにいるのか?・招聘候補者を探し発見するのが大変だった。(<e>ライブラリー? ミュージアム? ユニバーシティ? 東アジアくくり? オリエンタルくくり? 国は?)
・また候補を見つけても、招聘のためにアプローチをしたものの参加してもらえなかったところも多かった。(<e>費用全部持ちで、日本語条件を緩和して、参加を個別に働きかけても、こうであると。)
・A東アジア内で単独で日本担当というのは少なく、CJKくくりが主。その中でもJの相対的低下が目立つ。
・孔子学院・韓国国際交流財団(Korean Foundation)の積極的な支援活動に比べ、日本は特に政府・公的支援がジリ貧で、企業支援も大きくない。
・某大学の孔子学院看板のでかでかとしたこと・・・。
・B日本研究の低減化。
・北米大学では、特に学部生はネットワーク資源のアクセシビリティからCJK専攻を選ぶ傾向にある。画像のオープンアクセス、英文テキストがネットにあるかないかで、専攻を決める。
・デジタルの不備は結果として日本研究者を減らす。
●「ピッツバーグ大学でのJAL出張セミナー開講の試み」(谷口)
・JAL2016の一環として、実行委員のうち3名でピッツバーグ大学に出向き、そこで出張セミナー&ディスカッションを実施した。(ケーススタディであり、試みとして小規模に)
・これまでの参加者からの声「日本側が海外でセミナーをおこなってはどうか」による。
・また、JALプロジェクトは今後どうしていくのか、の模索でもある。
・セミナー+ディスカッション。講師・日本側3名、参加者・司書+博士課程学生(日本美術)計5名。
・北米学生はすでに紙媒体書籍をあまり使わなくなっており、書籍は郊外書庫へ。
・博士課程学生の研究内容はかなり専門分化が進んでいる。
・学生からの要望。画像のデジタル入手、展覧会カタログ、研究論文の公開、ポータルがほしい。
・
JACプロジェクト(Japan Art Catalog 日本の展示図録をアメリカ等の拠点図書館に寄贈し所蔵してもらうプロジェクト)について、当のアメリカのユーザにも
知られていないおそれがある。(<e>? 本当ならかなり気になる話ではある。)
・課題の中でも、比較的早く着手できそうなものについて
・@(海外向け)日本美術研究のポータルの立ち上げ
・どこか、誰かがやったとして、その長期的な維持管理が課題。
・海外日本研究者と協力すること。
日本人だけで作るとガラパゴス化してしまう。また、日本の日本美術研究と海外の日本美術研究に違いがある(美術研究と言うより、美術を通した社会文化文明の研究、等)。海外の日本美術関係者の協力を得るべき。(<e>これはおっしゃるとおり、日本研究リンクやツール作成、それだけでなくデジタルアーカイブやデータベース構築、支援活動や研修事業に、先方の協力を得ない手はないはず。)
・A日本美術及び日本学研究を専門とする大学教員、司書に対する定期的な情報提供。
・日本にとっての定番データベースが、なぜか学生に知られていない。理由は、大学教員が学生に教えないから。教えれば学生はそれを頼るようになる。なので、大学教員に情報提供するのが良いのでは、とのこと。
・B美術館出版物のリポジトリを立ち上げる。
・権利の都合でたとえ挿図がカットされていても、文章だけでもないよりはマシ。
・出張セミナーを終えて
・複数の大学や国でおこなわなければサンプルが少なすぎる。
・
セミナー(一方的に教える)、より、情報交換ワークショップ(対等に教え合う)のようなかたちがよいのでは。
・日本研究の空洞化問題に真剣に向き合う必要性がある。
・紀要だけでなく、商業誌のオンライン化が必要。
・「海外発信」における”戦略”がいる。発信自体が目的の安易な事業になってしまっていないか。そのためには国内者だけで検討せずに海外者と協力すべき。
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●●受講者たちの自己紹介+機関紹介
●マルタ・ボスコロ・マルチ/ヴェネツィア国立東洋美術館長
・北斎展2013、広重展2014など。
・アーカイブ15000点のうち、デジタル化が進んでいるのは3000弱くらい。
・700枚の一枚物、300の冊子を、2013年に赤間先生(立命館ARC)がデジタル化。
・2016年に日本文化に関する講演等の催しを16回やって、500人弱の参加者を得ている。
●メレッテ・ピーターセン/コペンハーゲン大学図書館司書
「日本における視覚資料と私」
・コペンハーゲン大学人文学部図書館の新しい建物内に、アジア図書館がある。
・NIAS Asia Portalはアジア研究のための北欧学術情報資源ポータルサイト。
・王立図書館のDigital National Library。日本関係のデジタル化資料は少ない。(多くがデンマーク・西洋のもの)
・ピーターセンさんの著書に、所蔵和古書目録あり。『Catalogue of Japanese Manuscripts and rare books』(2015)。詳細な解題にくわえて、たとえば
同じ本が早稲田のデジタルコレクションにあることなどを注記(!)。
・編纂時によくつかったイメージデータベースのリスト。(<e>これが統合検索できたら、ってことだよね・・・)
●クリスティン・ウィリアムズ/ケンブリッジ大学図書館司書
「ケンブリッジ日本語コレクション」
・2016年からケンブリッジ大学図書館勤務。それまではボストン、ハーバード大学等。
・丸井グループの青井氏寄贈による青井パビリオンが本巻にある。
・本館青井パビリオンのほかに、アジア中近東学部図書館にも日本語資料あり(学部生用?)
・アジア中近東学部図書館の司書は、電子ジャーナル・データベースのリンク集を編纂。(webサイト「e-resource for Japanese Studies」)
・ケンブリッジ大学の本館には、日本文学の英訳と英語で書かれた日本研究書が、”納本”で収集される。
・今年の9月から学内ディカバリーシステムで日本語も検索可能になった。
●テロ・サロマ/北海道大学ヘルシンキ事務所副所長
・美術品だけでなく、美術品のストーリーに興味がある。
・ラムスデットコレクション(<e>要調査)
・「Tracing for uncatalogued Japanese artifacts in Finland」
http://eajrs.net/sites/default/files/uploads/salomaa_tero_16.pdf・フィンランドにある日本美術品の所在、経緯履歴をまとめてデータベース化したい。その実現に向けて、今回のJAL研修でコネクションができた。
●ヴァレンティナ・フォルミサノ/ラファエレ・セレンターノ・アートギャラリー(ソレント)のキュレーター
・ナポリ東洋大学で日本近現代美術を専攻(イタリアの未来派芸術運動の日本への影響)
・東郷青児に関する新聞記事や雑誌等、イタリアの市立図書館にある資料で、日本とイタリアの芸術運動に関する関係がわかる。
・大原美術館に神原泰文庫として神原泰の資料あり。大原美術館の未来派に関する資料の収集について。
・2016年より現職。このアートギャラリーは日本美術の専門機関ではないが、今後は日本美術関連イベントを催して、日本文化交流につなげたい。
●グッド長橋広行/ピッツバーグ大学図書館司書
「ピッツバーグ大学図書館の日本美術コレクション」
・Barry Rosensteel Japanese Print Collection。
・デジタル化して公開したが、重複(日本公開済み)があとからみつかった。デジタル化作業が重複しないよう、日米での協力体制が必要。
●ウェイン・アンドリュー・クロザース/オーストラリア国立ビクトリア美術館(NGV) キュレーター
・NGV設立(1861)後まもなく、1880・1888にメルボルンで万博が開かれ、その日本美術展をきっかけとして収集が始まる。
・Hokusai Manga Multimedia。若い人にも人気な北斎漫画をデジタル化してタッチスクリーンで自由に閲覧できるようにした。
・タブレットで鎧(若い人に人気)を、360度+拡大+Xレイで見ることができる。
・2017年7月北斎展の予定。その後、大正昭和のモダニズム作品を収集・展示する予定。
●ゲルガナ・ペトコヴァ/ソフィア大学日本現代文化研究センター所長・准教授
・ソフィア大学は1888年創立。日本学専攻は1990年設立、修士博士課程まであり。
・美術品のコレクションはブルガリア国内には少ない。認知度も低い。が、日本文化への関心は高い。最近はポップカルチャーが人気。ソフィア大学の日本学専攻への希望者は150人いて、うち26人が入学できた。(<e>なんという高倍率)
・ソフィア大学現代日本研究センター、2016年に設立。
・
バルカン半島日本語サマーキャンプを、JF支援で、ソフィア大学が主催。バルカン半島地域の日本語を学ぶ学生たちが集まり、交流。・2014年、ブルガリアの国立民族学博物館で日本学科との協力で日本関係の展示がおこなわれた。
・2014年から、子どもへの日本文化クラスが日本学科の協力で実施されている。
・伊勢物語翻訳プロジェクト。
・これらのプロジェクトをセンターでおこなうにあたって、
もっとも重要なエネルギー源は、資金ではなくて、学生の熱意です。次の世代を育てることが重要。
●アウローラ・カネパーリ/国立キヨッソーネ日本美術館
・National Civil ServiceによるVolunteers。(<e>詳しく知りたい)
・イタリアにおける日本美術コレクションとしては最大。
・1年間のプロジェクトとして、ミュージアムコレクションのプロモーション。ガイドツアー、ギャラリートーク、子どもワークショップ。企画展の準備。
・International Digital Archiving Project (2016.8)
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●基調講演(フォクシェネアヌ・アンカ/ブカレスト大学教授)
「東欧における日本研究の情報・資料収集の問題 : 博士課程の事例を中心に」
・2016年11月日本語学科の学部3年生、修士、約30人を対象にアンケート調査。
・授業の調べ物は? インターネットが2/3、図書室が1/3
・
何語の資料を使う? 英語が2/3、一番手に入りやすい。ルーマニア語が1/3。日本語は1/6。・困っていることは? ほぼ全員が「資料が手に入らない、足りない」。ルーマニアの中ではまず手に入らない。手にとって調べるということがまずできない、司書を通してリクエストして始めて手に取れる。新しい本がない。日本語原書がない、英訳しかない。逆に、ルーマニア語翻訳がない。買うと非常に高い。どれも大きな問題。
・東欧の日本研究概観
・2000年以降、修士・博士課程が整備されるようになってきた。
・ただしPhDのための指導者が足りない。(博士学位取得のためには、日本に行く?)
・資料が足りない。←→研究分野が限られる、という悪循環
・国を越えてコミュニティに参加すること(会議、協会への参加など)をあまりしていない。
・東欧でメジャーな研究分野は、日本語・言語学、文学・文学史、歴史・文化史。一部に、美術・芸術、宗教・思想、その他。経済や現代社会、ポップカルチャーはまだ少ない存在っぽい。
・スロベニアに、比較図書館学史(日本)という分野の講座があるらしい。(<e>要調査)
・メジャーな研究分野が、指導教官を左右し、博士課程学生のトピックを限定することになる。
・資料入手の問題。
・英語が中心で一番多い。日本語の資料は少ない。母国語も少ない。
・一般向けの本が多く、専門分野・学術書は少ない。
・日本について書かれている本も少なく、それが学問的なものはもっとすくない。なので、日本関連書を扱う本屋(Takumi)の品揃えも大学で学ぶ者の役に立つわけではない。
・図書館には、古い本しかない。
・日本大使館、JFブダペスト、大学内の日本語学科の小さい図書室、日本文化協会のようなところの図書室、などにあるという感じ。(大学学習向けとは限らない)
・ブルガリア人はロシア語ができるので、ロシア語の日本関係図書を使うことができる、というアドバンテージがある。
・司書の待遇・ステータスが低い。
・日本語学科の教員が図書室の管理をする。
・ヨーロッパ美術の専門家であるキュレーターが、片手間に日本美術を扱う。
・資金が問題。
・資金があっても買った本を置く場所がない。(スペースの問題)
・収書のための参考ツールがない(カタログ等)
・東欧の若い人たちのための研修(日本に行きたくても行きにくいので、東欧での実施を望む)
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●●グループ・プレゼン「日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための提言」
●グッド・ピーターセン・ボスコロ班
「日本から海外へ : 日本におけるデジタル化資料をいかにして外国人研究者に伝えるか」
・Googleからたどり着けるデータベースであってほしい。
・日本語以外のGoogleからアクセスが困難なものがある。(<e>? 要確認)
・英語・ローマ字での検索・表示が必須。それができないため日本資料の可視性が低い。全文・完全な英語化は無理でも、英文のアブストラクト・メタデータがほしい
・これらは他分野・他地域の(日本が専門ではない)研究者に有益。
・国文研の歴史的典籍事業では、英語あるいはローマ字での検索精度の向上やデータベースの多言語化について取り組まれている。(<e>要確認)
・CiNiiではローマ字/英語で検索ができる。(注:CiNii Articlesの英語画面でこの説明がされたが、これはレコード内にローマ字・英語データが含まれているものがヒットしていると思われる。CiNii Booksには「ローマ字をカナに変換」機能がある。)
・
西洋の研究者たちがよく利用する日本美術のデジタルアーカイブは、例えばニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンの大英博物館による日本美術作品のデジタルアーカイブ。海外の機関だから日本に比べて情報量は貧弱だが、それでも、日本語が読めない研究者にとって使いやすいデジタルアーカイブは、海外発のほう。
・例:Ukiyo-e.org なども非常に利用度が高い。日本からは江戸東京博物館、早稲田大学演劇博物館、立命館大学等が参加。(<e>
正直、江上自身も浮世絵でまず使うのはUkiyo-e.orgのほう。こっちのがよっぽど探せる。)
・内部のみ・館内のみ公開のデータベースは困る。せめてメタデータだけでもいいからオープンアクセスにしてほしい。これについては、日本のユーザだって困るはず。
・統合検索システム(主要なポータル)が必要。散在しているDBの統合検索により効率よい検索ができるように。また、小規模な機関(自前でオープン化しがたい)の資料の可視化を高めることもできる。
・ICOM2019京都は日本のデジタルアーカイブを海外にプロモーションするいいきっかけになるのでは。こういうところで積極的に情報発信してほしい。
・AAS、CEAL、EAJRS、EAJSなどの国際会議に参加して、ブースで広報したり、ワークショップやパネルを開くなどしてほしい。(国文研は古典籍事業の説明会を複数回設けてくれた)
・AASなら、グッドさんが申請書の作成からお手伝いしてくれるそうです。
●サロマ・ペトコヴァ・フォルミサノ班
「アートは世界の遺産」
・海外の研究者も、日本の美術と図書館のデータベースにアクセスする必要がある。特に、大学に所属していない個人研究者はアクセスが難しい。
・海外からの資料・情報へのアクセスについて、韓国・中国は協力的。
・Korean Foundation(韓国国際交流財団)は、海外図書館でも韓国のデータベースや資料にアクセスできるよう経済的援助をおこなっている。(<e>詳しく知りたい)。
・ロンドン大学SOASのwebサイトに掲載されている、利用できる契約ものデータベースのリストを比べると、中国のデータベースと日本のデータベースではそのリストに約3倍の開きがある。
・著作権切れ資料はオープンアクセス化を。全文が無理でもメタデータ、アブストラクトの公開、またはリンクによる情報提供を。
・
もっと日本人研究者と直接コンタクトを持つ機会やネットワークが欲しい。
・現在の研究は”共同研究”が重要。
・
研究者情報、研究者の著作・研究成果に関する情報。国際的プロジェクト、ワークショップに関する情報。日本にある美術作品の所在や展示のためのスポンサーに関する情報。これらが、オープンにかつ英語で探しやすくあってほしい。
・
将来への展開としての、若い世代へのアプローチ。
・デジタル・ネイティブな若い世代は、スマホで日本資料にアクセスできないと、日本研究から離れてしまう(中国・韓国研究や、サブカルチャーへ転向)
・(スマホ対応という意味では)アプリでの発信も重要。くずし字アプリのようなものについて、美術品や美術文献アプリもあるとよい。
・立命館ARCでは学生をプロジェクトに参加させている。
・プラットフォームを集約してほしい。各機関のデータベースが散在していてバラバラで、様子がわからない。
・複雑なインタフェースの使用はユーザをあきらめさせる。ユーザフレンドリーなインタフェースにすれば、海外にも普及する。
・例:Tokyo Art Beat は、ポータルサイトとしての機能を持つ。
・フィードバックは大事。2015年のJALプロジェクトでのコメントがきっかけで、奈良国立博物館仏教美術資料研究センターのインターフェースが改善された、とのこと。(<e>要確認)
・Kahlil Gibran ハリール・ジブラーンの詩
「On Children」(子どもについて)
「あなたの子どもはあなたの子どもではない。
子どもは「生命の渇望」の子どもである。
子どもはあなたを通ってくるのであって あなたからくるのではない。
子どもはあなたと共にあるが 子どもはあなたのものではない。」
●ウィリアムズ・カネパーリ・クロザース班
「日本の文化資源を広めるための協力」
・多くの研究機関のデータベースがまとめて検索できるようになってほしい。個別に検索しなければならない現状では、日本語ネイティブではない海外ユーザには壁になる。
・人間文化研究機構のnihuINT、NDLサーチなどのコンセプトがよいが、集約し切れていないので改善の余地あり。
・例えばケンブリッジ大学など海外の機関で日本資料のデジタル画像を公開しているが、日本のユーザは日本資料を探すために海外サイトを見ることはないだろう。ポータルサイトがあれば、その可視化も可能になる。
・そのために必要なのは、海外との連携・協力(例:メタデータの標準化など)。
・敷地内/来館者のみ、国内のみ、という問題。海外からもアクセス可能にしてください。
・日本語を知らないが、日本資料・情報を求めるユーザは、日本を世界に伝える架け橋になる。
・英語/ローマ字による検索・表示。ローマ字と英語の両方の表記があれば、日本語の苦手なユーザも、有用なキーワードが何かをさらに学ぶことができる。
・サムネイル画像の重要性。本や論文の表紙、画像そのもののサムネイル画像。これがあれば、日本語ができるできないにかかわらず、検索がスピーディーになる。
・<e>サムネイル画像は、羅列された情報を直感的/瞬間的に評価できるという意味で、日本人にも効果大。
・今回のJALプロジェクトでの研修が、学生時代にほしかった。若い学生にもニーズがあると思う。日本から海外に出向いてこのような研修を実施しに行ってみてはどうか。
・文化政策による公的資金は、どの国でも不足/削減の傾向にある。
・私企業や個人からの資金調達が必要になる。
・資料収集や、デジタル化事業について、私企業等からの資金調達を検討すべきだろう。
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●ディスカッション
・内閣府知的財産本部による、デジタルアーカイブのポータルの実現についての検討が進行中。
・国立博物館の統合検索システムも開発中。
・有料のe-resourceは情報がよく届くが、フリーのそれについて情報が来ない、という問題がある。
・学生になぜ日本語を勉強をしているのかを聞くと、就職とかそういうことではなく、文化を知ることで人間として豊かになれるから、という強い動機がある。日本に興味を持ってくれた学生を失いたくないんだ、と。
・解決に時間がかかるのはわかるが、一方で、特に若い世代の人々は自分の将来のことを考えると、そんなに何年も待ってはいられない。環境整備に時間がかかると見ると、あきらめざるを得ない。待たせるだけでなく、
当座の対応やつなぎでもいいから、”速さ”も必要ではないか。
・その方法のひとつとして、JALプロジェクト受講生・関係者・来場者によるメーリングリストをつくって、情報交換をするのはどうか。
・
実行委員会で、提言内容の実施に向けての働きかけまでをするべきでは。
・日本でポータルができないのは、著作権のせいではないですよね、著作権ならイギリスのほうがもっと厳しいはずです。
・電子版でジャーナルを刊行してほしい。世界に共有してほしい。
・若い世代はネットの情報を頼りにしている。ところが
(ディスカバリーシステムに限らず)ネットで日本情報を検索しても、中国のサイトがヒットする。たくさんヒットしてくれれば若い人に情報が届くようになる。