2017年03月28日
国会図書館送信サービスの海外対応について、日本の図書館こそがパブコメ(3/29〆切)を送るべきちょっとした理由。
文化庁の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会によって公表されている中間まとめ(2017年2月24日)にて、いろいろな検討&コメントがなされてますがそのひとつとして、国立国会図書館の図書館送信サービスを海外図書館にも拡げたほうがいいんじゃないの、という言及がされています。これについてパブコメも募集中です。
このパブコメに、日本の図書館も、というか日本の図書館こそが、送ってください、そうしたほうがいい理由がちょっとありますよ、というお話です。
・「文化庁文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会、中間まとめを公表:パブリックコメントも募集中(-3/29)」. カレントアウェアネス. 2017.3.21.
http://current.ndl.go.jp/node/33686
・「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の実施について」. e-Gov. 2017.2.28.
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000892&Mode=0
※パブコメを送るときは章・ページとして「第4章著作物等のアーカイブの利用促進 第2節著作物等の活用に関わる著作権制度上の課題 1)国立国会図書館による資料送信サービスの拡充について(p. 123-124)」を記入する。
●国立国会図書館の図書館送信サービスとは何か?
国立国会図書館さんが「国立国会図書館デジタルコレクション」(http://dl.ndl.go.jp/)サイトで公開しているデジタル化資料には、大きくわけて3種類あります。
(1) 「インターネット公開」=”オープン”(著作権切れ・許諾済み等で、オープンに公開されている)
(2) 「図書館送信資料」=”半開き”(著作権が切れていないけど、絶版等。国内の図書館にあるパソコンまで行けばそこで見られる)
(3) 「国立国会図書館内限定」=”クローズ”(国会図書館まで行かないと見られない)
今回言及されているのは(2)「図書館送信資料」で、いま多くの国内図書館がこのサービスに参加しているので、わざわざ国会図書館まで行かなくても近所や所属大学の図書館で、デジタル化された絶版書を見ることができるのですね。これがいま約150万点あるって言うから、これが使えるのと使えないのとでは相当なレベルの差が出るという感じです。
●国会図書館送信サービスの”海外対応”とはどういうことか?
その(2)「図書館送信資料」ですが、いま現在このサービスに参加できるのは日本国内の図書館だけに限られています。これがサービス開始当初から国外の関係者に不評でした、せっかくデジタル化して、まあまあ著作権切れてないからフリーでオープンにできないのはもちろん仕方ないとしても、国内の図書館で受けられるサービスと同じことが海外でできない。海外にも日本のことを研究して日本について調査している人、資料の閲覧を求めている人は少なからずいますが、それらの海外ユーザにせっかくのデジタル150万点を提供できない、という状態にずっとあったわけです。
しかも悪いことに、ですが。国会図書館さんは「デジタル化が済んだ本は、ILL・現物貸借で図書館に貸し出さない(デジタルで見なさい)」という運用をとっている。でも海外図書館はデジタル送信に参加できない。結果どうなったかというと、この図書館送信サービス開始以降、デジタル化済み図書をデジタルで見ることもできないし、ILLで借り出すこともできないしで、資料へのアクセスがシャットダウンされてしまっている、という状態にあります。これ、明らかに設計ミスってるだろう、っていう。ていうか、この問題って早いうちから認識されていたはずなんですけど、これについてじゃあ海外にはデジタル化済みでも貸すことにしましょう、的な運用でカバーするような動きも特に見られなかったのって、なんだろうなって思いますが。
そんなこんなもあって、送信サービスに海外図書館も含めるということがずっと求められてて、で、今回の委員会でそれに言及されたので、みんなでパブコメ送ってこの件を実現させてもらいましょう、というところです。
本件についての反応記事いくつか。
・「パブリックコメントを」. 『忘却散人ブログ』.
http://bokyakusanjin.seesaa.net/article/448181654.html
・「国立国会図書館による資料送信サービスの拡充について」. 『ゴードン W. プランゲ文庫ブログ』.
https://prangecollectionjp.wordpress.com/2017/03/27/%e5%9b%bd%e7%ab%8b%e5%9b%bd%e4%bc%9a%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e8%b3%87%e6%96%99%e9%80%81%e4%bf%a1%e3%82%b5%e3%83%bc%e3%83%93%e3%82%b9%e3%81%ae%e6%8b%a1%e5%85%85%e3%81%ab/
ちなみに、海外(非日本語)の方がこのパブコメを送るための、簡単ガイド的なのが、こちらにあります。
https://pitt.app.box.com/s/e2l1karpa3d9pjgw9h0pjrxkpfn5up83
ていうか、あたしにも参考になってうれしいくらいの。
●国会図書館送信サービスの海外対応に、日本の図書館がパブコメ送ったほうがいい理由?
本題です。
海外対応するかどうかの話だから、海外図書館や海外ユーザがコメント送ったらいいんでしょう?みたいに他人事おっしゃらずに、日本の図書館業界のみなさんにもぜひ積極的に、この件で「海外にも対応を」的なコメントを送っていただきたいと思っています。
そうしていただきたいという理由が、2つあります。
1つは、大きな話になりますが、そうやって日本資料・日本情報を積極的に海外からアクセス可能にしていくこと、それがめぐりめぐって最終的には我々日本サイド自身に影響が及ぶ問題だからです、という話。海外に発信し使ってもらえれば、海外の日本研究が盛り上がる、そうでなければ盛り下がる、そういう問題ですということ、これはこのブログでも『本棚の中のニッポン』()でも再々言ってる、いつもの話ではあります。
それとは別にもう1つ、もうちょっと現実味を帯びた現場レベルの理由がありまして。
先ほど説明しましたように、国会図書館はデジタル化済みの絶版図書をILLとして海外図書館に貸し出してくれません。デジタルでも見れない、現物貸借としても借りられない、という本を必要とする海外図書館は、じゃあどうするかというと、同じ本を持っている日本の他の図書館にオーダーすることになるでしょうと。せっかく国会図書館さんが大枚はたいて作ってくれたデジタル画像があそこにあるのに、それにアクセスできさえすれば済む話なのに、それと同じ本を我々日本の(国会以外の)図書館が、コピーしたり発送作業したりをしなきゃいけなくなる。無駄な労働力がかかります、時間もかかります。対象図書は古い時代のが多いですから、コピーしたり発送したりするごとに傷みも増します。(注:うちは海外ILL対応してないよ、とおっしゃる場合は、そのこと自体をご検討し直していただければ幸いです)
そういった労働力や時間や傷みリスクを、国会以外の我々日本の図書館が背負わないといけないのは、無駄なんじゃないの、せっかくあそこにデジタルあるんだし。こういう理由については、日本側の図書館こそが申すべき、っていうか言っても罰あたんないんじゃないかな、っていう。
そういった意味も含めまして、3/29〆切のパブコメ送ってみてはどうでしょう。ていう話です。
・「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の実施について」. e-Gov. 2017.2.28.
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000892&Mode=0
2017年03月07日
英語/ローマ字 #2017年の本棚の中のニッポン
英語を整備しよう、ローマ字を整備しようというような話は、一見、はじめの第一歩的な議論かのように見えて、その実けっこうに本質的な問題と密接に関わることだと思います。
つまり、日本資料・日本情報のユーザ、届け先、想定対象者のことを、どのようにとらえているのかということ。ひいては、”日本研究とは”何なんだ、ということにつながるんだなっていう。
日本リテラシーの充分に高いガチガチの日本研究者・日本専門家であれば、別に英語の整備、ローマ字の整備はそこまで難しく考えるような話ではないです。確かに日本研究を専門にする人であっても、海外のOPACやデータベースはローマ字で日本資料・日本情報が収録されてることがほぼデフォルトですから、最初にどうしてもローマ字で検索しちゃって、この日本製データベースやデジタルアーカイブにはローマ字が収録されてないんだっていうことに気付かなかったりする、ということは往々にしてあるだろうですが、それでもその後日本語で検索・探索・閲覧できるようなユーザなんだったら、そこまで難しく考えることはない。
でも、そうじゃないユーザのこと、そうじゃないシステムを使うユーザのこと、そうじゃない世界環境の中での日本研究”らしき”もののことを考えるからこそ、英語/ローマ字の問題は真摯に考えるべき話になるんだと思うんですね。
というようなでっかい問題になりそうな話の流れをいったん断ち切って、英語/ローマ字対応の最近の事例から。
・「Humanities Links」. 国立国会図書館リサーチナビ
https://rnavi.ndl.go.jp/humanities/post-3.php
これはリサーチナビ「人文リンク集」の英訳版として作られたページで、「国立国会図書館の日本研究支援」(総務部支部図書館・協力課. 「国立国会図書館の日本研究支援」. 『国立国会図書館月報』. 2016, 664/665, p.15-17.)によれば、日本が非専門の司書がCJK全体を扱っていると日本語がわからないのでとか、そもそも国内に自分以外にそういう人がいないので、というようなことを海外の日本研究司書から助言受けて作らはったとのことです。
NDLさんはリサーチナビの英文コンテンツ作成にも乗り出していて、下記はその一例のようです。
・「Searching for Ukiyo-e Illustrations」. 国立国会図書館リサーチナビ
http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/searching-for-ukiyo-e-illustrations.php
下記は英語資料のメタデータ作成について。これはコラボレーションのbestpracticeとしても注目すべきかと。
・「文化財関係文献(統合試行版)」. 東京文化財研究所
http://www.tobunken.go.jp/archives/文化財関係文献(統合試行版)
『日本美術年鑑』所載文献、などの日本語文献・情報の統合データベースの中に、セインズベリー日本藝術研究所が採録・入力した英語の日本美術文献のメタデータ等(主に2013年以降)を収録しているもの。
・「セインズベリー日本藝術研究所との共同事業のスタート :: 東文研アーカイブデータベース」
2013年7月
http://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/120524.html
「この事業は、これまで東文研が日本国内で発表された日本語文献の情報を収録して公開してきた「美術関係文献データベース」を補完するものとして、SISJACが日本国外で発表された英語文献の情報を収録したデータベースを構築及び公開することにより、日本国内外における日本芸術研究の共通基盤を形成することを目指しています」
それから、システムによって英語対応しているという例。
これは大蔵経本文テキストを英語対応していなかったとしても、英語辞書と連携した機能を付加しておくことで対応する、というもの。フリーの仏教用語辞書を使用していると聞きます。
・「「大蔵経テキストデータベース」では何ができるのか」. 変更履歴はてな版
2014.12
http://d.hatena.ne.jp/digitalnagasaki/20141228/1419789429
「SAT大正新脩大藏經テキストデータベース」において、漢文よりも英語の方が得意なすべての人に役立つ機能として。本文閲覧時に本文をドラッグすると仏教語の英訳がポップアップされる、英語単語を検索窓に入力すると漢字仏教用語を候補から入力できる、等。
もうひとつシステムによる英語対応の例。
・奈良文化財研究所、全国遺跡報告総覧の英語自動検索機能を公開
Posted 2016年8月25日
http://current.ndl.go.jp/node/32393
英語の考古学用語で検索すると、それを日本語の考古学用語に自動変換して検索するとのこと。システム内部に日英対訳の考古学用語5,426語がある。
それから映画・動画の英語字幕というものが、どうやらわりとキーらしいなっていう。これは大学での学生向け教材としてのニーズが高いみたいで、”和本”コンテンツとして最近好評だった慶應・佐々木先生のMOOCs講義も、スピーチが日本語、字幕が英語/日本語、それが日本語学習者に教材として重宝されている(http://www.dhii.jp/DHM/dhm61-1)というような話は、めでたい話だなと思う反面、実際そういう動画のニーズがあるにも関わらずそれを満たすようなデジタルコンテンツが少ない、ことの現れなんだろうなと思いますね、ここはわりと切実具体的に取り組んだ方がいいのかもだなっていう。
取り組んだ方がいいというのは公的にも言われてて、2012年のCULCON(日米文化教育交流会議)では、日本語教育について、下記のように共同声明が出されています。
・「第25回日米文化教育交流会議(カルコン)合同会議」
https://www.jpf.go.jp/culcon/conference/dl/CULCON_Joint_statement_j.pdf
「カルコンは米国における日本語教育が強化されること、および利用料の軽減や削減も含め、米国の学生が日本語教材・資料にアクセスする機会が拡大することを要請する。また字幕付き日本語教材のさらなる開発を推奨する。」
ただ、2015年6月のシンポジウム「アクセスの再定義 : 日本におけるアクセス、アーカイブ、著作権をめぐる諸問題」でハーバードのマクヴェイ山田さんがその発表中で指摘してましたが、まだまだ少ないし、入手もできない、ネットにもない、グレーなのを使わざるを得ない、というあたりは、クールジャパン的な観点からも痛いなと思います。
それが痛いというのは関係者も重々わかっていて、あたしこれは正直、え?、とちょっと不自然さを覚えたくらい明確に言及されてたのが、「アーカイブ立国宣言」界隈ですね。
・「アーカイブ立国宣言」
http://archivesj.net/?page_id=163
ここで、国立デジタルアーカイブセンターが構想されている中で、そのやるべきこととして「国内・海外関係者との交流機能(字幕付与・多言語発信の支援機能を含む)」って書いてあって、メタデータとかアブストラクトとかいう言葉じゃなくて、「字幕」が「海外」や「多言語」と一緒に並んでるんだな、というのがちょっと印象深かったです。
これは福井先生の『誰が「知」を独占するのか : デジタルアーカイブ戦争』. 集英社新書でも同様です、こちらには「第6章 アーカイブ政策と日本を、どう変えて行くか」の中に「提案I 無料字幕化ラボの設置 (テキスト化、英語化・翻訳)」っていうのが1条立ってる、ていう。
という意味では、つい最近わりと話題になった下記のアニメーションサイトで、動画に英語字幕が付いてるの、すげえなって思いました。これは脱帽。
・「日本アニメーション映画クラシックス」
http://animation.filmarchives.jp/index.html
以上が英語対応の話。
それから、言語で解決するのではなくて別の方法で解決しますよ、という例が、まずサムネイルですね。データベースやデジタルアーカイブのサムネイル画像の有無というのは、メタデータやインタフェースの英語対応と同等かそれ以上くらいに、日本語が分からない/初学者の人にとっての分かりやすさを大きく左右するもので、羅列された情報を直感的・瞬間的に評価・選別できるという意味では日本人にも有益なことはまちがいない。CiNii ArticlesでオープンアクセスなPDFがあるときそのサムネイル画像が横に出るだけで、あ、PDFあるんだってすぐわかる、そのことだけでもその効用は充分分かると思います。
・池貝直人. 「デジタルアーカイブと法政策 : 統合ポータル, 著作権, 全文検索」. 大学図書館研究. 2016, p.11-18.
この論文の中で池貝さんは、平成26年度文化庁文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会で「アーカイブ機関において美術の著作物等の紹介を目的として当該著作物のサムネイルをインターネット送信すること」が言及されていることについて、「日本語を母語としない外国人等にとっての利便性」を指摘しておられます。某協議会でもサムネイル、です。
もうひとつ、がらっと変わってですが、「ねこあつめ」っていうアプリが日本どころか海外でも流行してしまった、っていう話題があったじゃないですか。
・「「ねこあつめ」に学ぶ(記事紹介)」
Posted 2015年6月16日
http://current.ndl.go.jp/node/28689
・「E1842 - デジタルコンテンツへのアクセス方法を多言語化する」
2016.09.15
http://current.ndl.go.jp/e1842
「メニュー等が日本語で表示されるにもかかわらず,日本語が理解できなくてもプレイできる非言語的なインターフェースも持っていることが話題となった」
この、非言語的な解決方法で言葉の壁(=アクセス全般の壁)を克服するという考え方は、ユーザ・ファーストの考え方のひとつとして常に持ってたいと思いますね。
そこまでいくと、え、日本語はわからないけどねこあつめで遊びたいっていうような人のことをユーザとして想定している話なのか、って問われるかもですが、それについては、はい、そうです、っていうことですよね。
このへんで最初に出た話に戻ると思うんですけど。
英語を整備しよう、ローマ字を整備しようというような話は、一見ごく初歩的というか第一歩的な議論かのように見えて、その実けっこうに本質的な問題と密接に関わることだと思います。
つまり、日本資料・日本情報のユーザ、届け先、想定対象者のことを、どのようにとらえているのかということ。ひいては、”日本研究とは”何なんだ、ということ。日本リテラシーの充分に高いガチガチの日本研究者・日本専門家で、そしてただ単に距離的に遠隔地=海外にいるからネットでアクセスしに来てるんだ、っていう人のこと、それももちろん重要なんだけど、それだけじゃなくて、そうじゃないユーザのこと、そうじゃないシステムを使うユーザのこと、そうじゃない世界環境の中での日本研究”らしき”もののことを考えるからこそ、英語/ローマ字の問題を真摯に考えることになるんだと思うんですね。
日本リテラシーがガチガチに高い人は層でいうと高層階のひと握り。
そこまで日本語に精通していない、あるいは、わかるにはわかるんだけど、そりゃやっぱり日本語より英語やネイティブ言語のほうが楽だしコストもストレスも低いよね、という人の層はもう少し厚い。
日本語を習いたての学部生・初学者というのは人数ももっともっと多く層も分厚い。
多文化教育・教養教育の一環として触れるように学ぶことになった、という人はさらにもっと。
そもそも日本や日本文化に興味関心があるからと言って、じゃあまず日本語を学ぶところから、ということをわざわざする人のほうが、考えてみれば少数派だろうということなんで、日本語ガン無視で日本や日本文化についての資料・情報を探す、そういう一般の人々こそ大勢いる。
↑いまこれは日本語(あるいは日本リテラシー)の高低という一本線で段階ならべましたけど、もちろんそういう単純な話でもなく、いろんな事情で、いろんなアプローチで、いろんな資料・情報を、得ようとしている人たちのことを考えます。
日本が専門ではないんだけども、他の分野・地域が専門の研究者で、何らかの理由で日本”も”必要となる人。理系の人とか。社会科学系の各分野の人でたまさか対象が日本だとか。
東アジア全般を俯瞰的に見て研究している、けど専門はどっちかというと中国や韓国で、日本語を学んでいるわけではないとか。そういう人たちと日本資料・日本情報をつなげようとすれば、そのあいだに英語/ローマ字のつなぎがないと無理だろうと思います。地域や分野を横断的/学際的/国際的に研究しようとすると、それはもうリテラシーの有無関係なく多言語対応/英語対応してくれてないと使いづらくてしゃあなかろうというのはわかる。
また、日本が主題であったとしても、研究の主戦場が英語だ、という場合。アウトプットは英語じゃないと評価されないんだ、とかもあるし、インプットもこの分野だと日本語書籍よりも英語学術書のほうがメインなんだ、という環境で研究してる人たちもいるだろうから、その場合も、リテラシー関係なく英語対応のほうがありがたい。
そもそも学部学生レベルだと、日本史でも英語メインで勉強してたりするらしいし、日本美術も日本語使わないこと多いみたいなので、人文系だからってぼんやりはしてられない。
あと、本人が日本語/日本リテラシー高くても、サポートする人や周囲環境が英語/ローマ字対応を求めてるっていうのはありますよね。
例えば北米だって、どの大学にも日本が専門のライブラリアンがいるわけではない、むしろいるの恵まれてる方。あるいは中国系韓国系のライブラリアンがCJK全体の中で日本もついでに対応している。国によっては、日本事情がわかるライブラリアンが国内に1人とか、いないとか。
それからその大学に日本専門ライブラリアンが仮にいたとしても、ILL担当者は別でしょう?日本語がわからないから資料入手に苦労する。システム担当者も経理担当者も別でしょう、ってなる。英文インタフェースやローマ字対応があればどれほどスムーズにことが運ぶか、っていう。
どんな端末やデバイスからでも日本語が自由に使えるか、というのは、最近はそういうの減ってきたと思いますけど、それでも文字化けや入力不可や設定面倒や日本版OSのみやという問題。
研究ツールとしての”日本語”にどこまでの価値があるか。
例えば、アメリカで中国学を研究しようとする人たちは、中国語だけではなく日本語も勉強するという話を、人づてではありますが複数の人から聞いたことがあります。中国研究が日本で進んでいるので、その研究成果を日本語で読むため、とか。
一方で、日本研究者や日本語学習者が、中国語も同時に学習するというケースが増えているという話も耳にします。なんとなれば、これからの時代、同じ東アジア地域で職を得る/ビジネスすることを狙うのであれば、それはやっぱり中国語習得してないと不利だよね、っていう。
さらに、これはどこまで実際なのかわからないのですが、中国における日本研究も英語による日本研究ももうだいぶあらかた成果として流通しているので、紙の日本語書籍を読めるような日本語学習を極めるよりはそんなのはスルーして、デジタルで読める英語・中国語の日本研究文献を読みに行ったほうがよっぽどスムーズだよ、っていう。・・・・・・おお、そうか、英語中国語を習得してればデジタルで日本分野の学術書がたくさん読めるじゃないか!
って思ったんですけど、日本語e-resource不足もそこまで至ってしまったら、もうこの国終わりだな、って思いますね。
というふうな具合で、日本語/日本リテラシーについて、あるいは英語/ローマ字について、あんなユーザもいる、こんな場合もある、こういう話も聞いた、ああいうことも考えられる、ってこう百花繚乱的なことぶぁーって書いてる感じになってますけど、要は、ユーザってそういう、ぶぁーっといろんな花が咲き乱れているようなものだと思うんですよ。
ある程度習熟した日本語力/日本リテラシーを持つ相手だけをユーザとして想定し構えていれば、”海外の日本研究”を支援できることになるかというと、そうではない、ということがこの英語/ローマ字問題でわかるんだと思います。単に、日本語ネイティブではないが日本を研究している人、ではなく、どんな事情でどんなアプローチでどんな言語環境をベースにしている人であろうが、日本語の、あるいは日本で生産された資料・情報を、そのユーザのもとへ届ける、つなげる。それが、他国・他地域・他言語・他分野と同じ国際的な土俵(プラットフォーム)の上で、フラットに流通する、アクセスできる。
それは最終、日本資料・情報を日本の文脈から解放すること。そしてそのユーザを日本研究の枠組みから外して理解すること。につながる、という意味では、デジタルヒューマニティーズもデジタルアーカイブも、研修もアジアも英語/ローマ字も、問題の所在は一緒だったんだな、ってなんとなく思いますね。
そして最後に簡単にですが、日本資料・情報を流通させるのにそこまで”英語/ローマ字”のことを気に揉まなきゃいけないのは、日本語と英語との間の”流通力”のようなもののバランスが決してフラットなわけではないからだ、そういう現実を呑み込んでおかないとこの問題は解決しないんだ、ということも付け足しておこうと思います。
2017年03月05日
アジア #2017年の本棚の中のニッポン
アジア地域における日本研究、および、アジア地域に所在する日本資料については、ここ最近ではNDL関西館のアジア情報課さんによるキュレーションが、意欲的に進んでます。
もう、基本文献中の基本文献です、ありがとうございます。
・・NDLアジア情報課
・湯野基生. 「台湾の図書館が所蔵する1945年以前刊行の日本語資料(レファレンスツール紹介19)」. 『アジア情報室通報』. 2010.6, 8(2).
・齊藤まや. 「台湾に所在する植民地期日本関係資料の現況と課題」. 『アジア情報室通報』. 2014.12, 12(4).
https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bulletin12-4-1.php
・福山潤三. 「韓国所在の植民地期日本関係資料 : デジタル化資料の利用方法を中心に」. 『アジア情報室通報』. 2016.3, 14(1).
・水流添真紀. 「中国で刊行された日本関係資料とアジア情報室における収集・所蔵」. 『アジア情報室通報』. 2016.6, 14(2).
https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bulletin14-2-2.php
・リサーチナビ 調べ方案内
「日本研究」(2017.2.17現在)
http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/cat2858/cat168/index.php
アジア地域の日本研究
中国の日本研究
台湾の日本研究
海外博士論文(人文社会)
韓国の日本研究
・「台湾所在の植民地期日本関係資料の調べ方」(更新日:2016年12月16日)
http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-116.php
・「アジア地域で刊行された日本関係図書リスト」(アジア諸国の情報をさがす)
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bojasia.php
アジアというキーワードを出すんであれば、やはりアジ歴さんで、”コラボレーション”の例で出した「E1630 - ウェブ展示「描かれた日清戦争」:アジ歴とBLの共同企画」(カレントアウェアネス-E 2014.11)のほかに、もうひとつこういう話も最近出たので載せておきます。
・「戦後のアジア公文書、ネット公開へ 外交文書が中心」(朝日新聞デジタル)
http://www.asahi.com/articles/ASJDP74GGJDPUTFK016.html
2016年12月23日
「アジア歴史資料センターは、近現代のアジア諸国との関係にまつわる公文書をネットで公開する対象をこれまでの明治〜戦前から戦後へ広げる方針を決めた」
これ出ると、日本研究のための資料の幅がぐっと拡がるな、っていう話ですよね、それは単に時代が拡大したというより、分野・対象者ががらっとかわり、研究手法や文脈もまたたぶんがらっと変わる。その変わり方はおそらく、「日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)会議」によるCJK Digital Library(http://current.ndl.go.jp/e1885)の比ではないんじゃないかと思います。
2016年11月、韓国の仁川で「東アジア日本研究者協議会」の第1回国際学術会議が開催されました。
・東アジア日本研究者協議会
http://www.eacjs.org/
中・韓・台・日の“日本研究”者が集まっての協議会ですが、これまで、例えばAASやEAJSのような大規模国際的な日本研究の集まりを、“東アジア”の人たちが集まってやるっていうことがあんまなかったと。そこもっと、東アジア地域内で互いに日本研究の学術交流やっていきましょうよねと。いうのでこの協議会が組まれたとのことです。webサイトには、日本研究の質的な向上(学際・融合)、各国での自国中心の日本研究からの脱却(多様な観点)、東アジアの安定と平和への寄与、が趣旨として述べられています。
発起人は、下記のような感じ。
「東アジア日本研究者協議会を立ち上げるため、その間協議を重ねてきた下記の5名を発起人とする。徐一平 (北京外国語大学北京日本学研究センター長)
小松和彦 (国際日本文化研究センター長)
徐興慶 (国立台湾大学日本研究センター長)
李康民 (漢陽大、日本学国際比較研究所長)
朴母、 (ソウル大学校国際大学院院長) 」
第2回は天津・南開大学とのことです。
約50のパネル・約300人の参加者の中に、図書館関係・情報学関係の専門家が多数参加していたというようなことはどうやらなかったようですが、例えば京都大学地域研究統合情報センターによる「日本学のためのデジタル・ヒューマニティーズ」というようなパネルもプログラムからは見てとれますので、今後は日・中・韓・台の図書館・情報学業界界隈もここを交流の場として使えるように乗っかれればなと思います。それには事前段階として、もっと日常的な交流の基礎固めをしないとなって思うのですが。ただ、例えば韓国のライブラリアンの方に話を聞くと、別に日本を専門にしているサブジェクトライブラリアンがいるというわけでもない、そんなコミュニティもない、という話なので、では日本資料ユーザと図書館・ライブラリアンとの関係は、日本資料の届け先はどこか、という話になってきますので、これはちょっとおいておきます。
AAS(北米のアジア学会)さんも最近は、年1ペースでのAAS in Asiaのアジア現地での開催を続けています。2014シンガポール、2015台北、2016京都、2017ソウル。
・AAS in Asia
http://www.asian-studies.org/Conferences/AAS-in-ASIA-Conferences/
・「AAS-in-Asia 2016 京都大会ラウンドテーブル「The Digital Resource Landscape for Japanese Studies」報告」
http://kasamashoin.jp/2016/08/aas-in-asia_2016_the_digital_r.html
AAS in AsiaもEAJS日本大会も、なんとなく、欧米の地域研究としての文脈の中での“アジア研究/日本研究”を、アジア地域の人からも参加しやすくする場を設けるというような意図だろうなので、それと、東アジア内で日本研究を云々する場を作ろう、という東アジア日本研究協議会とはまたちょっと違うんだろうな、とは思います、「日本における日本研究」とも「欧米における日本研究」ともまた別の、っていう。
東アジアにおける日本研究の例としては、「東アジアと同時代日本語文学フォーラム」とその雑誌『跨境』の創刊が目をひきます。
・日比嘉高. 「国際査読誌『跨境(こきょう) 日本語文学研究』の創刊、および少々の展望」. 『リポート笠間』. 2014, 57.
http://kasamashoin.jp/2014/12/57_15.html
2013年から「東アジアと同時代日本語文学フォーラム」を開始。韓国、中国、台湾、日本の近代日本文学研究者が連携で研究集会を開く。
2014年、雑誌『跨境 日本語文学研究』を創刊。編集・査読は韓中台日米欧の研究者からなる。
「国別、地域別、言語別に閉じたまま研究される傾向にある日本文学研究を、つなぐような試みができないか」
「創刊号では、第一回フォーラムが論じた「東アジアにおける日本語雑誌の流通と植民地日本語文学」が特集」「戦前の東アジア各地では、さまざまな日本語雑誌が刊行されていた。ただし研究は、旧満洲、朝鮮、台湾など地域ごとになされる傾向が強く、それらを突き合わせて検討する機会は少ない」
「本誌の「日本語文学」という表記は、日本語で書かれた文学であるということを基準とし、書き手の国籍や民族、書かれたり発表されたりした地域については制限しない、むしろその横断性や重層性を重視するという趣旨によっている」
「創刊する過程で議論に上ったのが、何語で研究を公表するかという問題である」・・・
戦前東アジアの日本語雑誌、というものを考えるだけでも、日本文学研究が東アジアの視点や文脈抜きに語ることができないし、そしてそれは、日本史研究が同じく東アジアやユーラシア・環太平洋等の文脈抜きに語れないのと同じであって、それはどの日本研究もそうだろう、というふうに考えていくと、これもまた、アジアどうこうを考えると言うよりも、いや、アジアを考えれば考えるほど、“日本研究とは?”という話になっちゃうと思うので、いったん離れます。
2017年03月04日
研修事業 #2017年の本棚の中のニッポン
海外の日本研究司書(ほか研究者等の日本専門家)を日本に招いて、日本資料・情報に関する研修をおこなう、という類の事業がいくつかあります。そのことをざっとまとめて、考えたことを書きます。
NDLさんがいまおこなっている「海外日本研究司書研修」。
・海外日本研究司書研修
http://www.ndl.go.jp/jp/library/training/guide/1211059_1485.html
これは、元をずっとずっとたどっていくと、最初におこなわれたのは1997年2月(H8年度)のことで、当時の名前は「日本研究上級司書研修」。当時はJFの招へい事業で、NDL、国際文化会館、NACSIS(当時)の協力によるという。それがその後、名前を「日本研究司書研修」、
日本研究情報専門家研修」、「日本専門家ワークショップ」などと名前を変え、主催者や共催者も、内容や対象ややり方や開催地も代々で変わっていき、今に至る、っということになるとこれはちょっと「おなじものをたどった」ということにしていいかどうかも迷う感じになりますね。
元プリンストンの牧野さんが、日本古書通信でしばらく連載してはった記事の中のひとつに、この研修の第1回の様子を書いたものがあります。
・牧野泰子. 「日本研究上級司書研修」. 『日本古書通信』. 2016.6, 81(6), p.15-17.
第1回研修の様子。内容は、JAPAN/MARC、J-BISC、NACSIS-IR、JICSTのJOISなど。開催に向けて小出さんが関係各所への交渉・調整に奔走した様子などもあり。
それから、天理大学・山中先生のご尽力による、古典籍ワークショップというのがあります。
・山中秀夫. 「「天理古典籍ワークショップ」及び公開シンポジウム「本の道」について(概報)」. 『ビブリア 天理図書館報』. 2007, 128, p.103-99.
・山中秀夫. 「「天理古典籍ワークショップ」及び公開シンポジウム「本の道」について(報告)」. 『ビブリア 天理図書館報』. 2008, 129, p.141-128.
・山中秀夫. 「「天理古典籍ワークショップ2008」及び公開シンポジウムについて(報告)」. 『ビブリア 天理図書館報』. 2008, 130, p.126-114.
・山中秀夫. 「和古書目録担当者研修について : 天理古典籍ワークショップを終えて」. 『ビブリア 天理図書館報』. 2010, 133, p.102-87.
・山中秀夫. 「天理古典籍ワークショップPhase2を終えて」. 『ビブリア. 天理図書館報』. 2013, 140, p.95-80.
海外の研究者・司書に和本の目録・取り扱いの実践的研修を行なうもので、1度目は2007-2009の3年連続、2年目は2013年。ビブリアの記事によれば、1度目実施後、受入体制や費用助成の問題から実現しなかったんだけども、2011年EAJRS総会で海外側実行委員会メンバーから要望が出され、2度目に至る、ということだそうです。
そうそもそもなんですが、この研修事業では、海外の司書等専門家からなる実行委員会と、日本側の事務局メンバーとが、コラボレーションで進めていたんだな、ということがわかります。主催は実行委員会でそのメンバーは、英2・米・独2・日2という構成。助成は、国際交流基金、Sasagawa Foundation(英)、図書館振興財団。
もうひとつ、研修後に受講者によって「在外日本古典籍研究会 OJAMASG」(http://www.jlgweb.org.uk/ojamasg/index.html)というグループが結成されまして、ディレクトリ的な情報サイトを構築、以降も継続的に活動しておられました。研修が、一過性の非日常で終わるのではなく、ちゃんと研修後もそれなりの継続性をもって、横のつながりが実際に機能して、日常の実益につながっていく、ていう例。
そして、2014年から3年間、東京国立近代美術館さんによっておこなわれていた、「海外日本美術資料専門家(司書)の招へい・研修・交流事業」、通称「JALプロジェクト」と呼ばれるものがありました。
・海外日本美術資料専門家(司書)研修(JALプロジェクト)
http://www.momat.go.jp/art-library/JAL/JAL2014.html
毎年ワークショップ「日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための提言」を最終日に開催している。
毎年10人前後の受講者が参加し、応募もそれなりに多かったみたいなんですが、それもこれも水谷さんの積極的な広報・勧誘・調整活動があってこそのことだったように、聞いていますし認識しています。ただ、そういう積極的な広報・勧誘があってもなお、途中で断られたり断念したりという例はあったみたいです。
そういう意味では、NDLさんで昨年度からやっている海外日本研究司書研修も、昨年度は10人近い受講があったものの、今年は4人にとどまっていました。
一方で、国際交流基金の関西国際センターさんの日本語研修、私がよくお目にかかるのは「文化・学術専門家日本語研修」のみなさんなんですけど、毎年約20人のかたがいらっしゃってて、にぎわっているのが楽しそうでいいなあっていつも思ってます。
・「文化・学術専門家日本語研修」(国際交流基金関西国際センター)
http://www.jfkc.jp/ja/training/culture-science.html
もちろんそれぞれで中身も対象も運営もぜんぜんちがうわけですから、ひとからげにして何かを言えるわけでもないし、ましてや主体で関わっているわけでもないのでたいそうなものを言えるわけでもないんですが、でもそういういくつかの例を見ていると、こういう研修のニーズってあるのかないのか、からはじまっていろんなことをぐだぐだと考えてしまうなっていう。
以降はそういうぐだぐだと考えたことをぐだぐだと書きます。
ニーズはあるんでしょうか。たぶんあるんでしょう。でも参加者集めが進んでいない例もある。
ニーズが多様化している説、っていうのはひとつあって、先の牧野さんによる第1回の様子(JAPAN/MARC、J-BISC、NACSIS-IR、JICSTのJOIS)を見ていると、まだインターネットが出始めの頃で本格的なデジタル化の前夜みたいな時って、教えるべき/教わるべきものがわりと定番的だったんだろうなっていうのがありますね。それがいまはインターネットや基礎的なデジタルシステムとかはある程度わかってて当然、そのうえで何か研修しようかと言っても、ツールが多様化してるわテーマが多様化してるわで、テーマを決めたりニーズを把握したりっていうのがすごく難しくなってるんじゃないかなっていう。20年前といまとではプログラム組む難しさがぜんぜん違うだろう、っていう。どういう話が聞きたいですか、っていうアンケートとったらアンケート結果の様相はたぶん20年前とだいぶちがってるだろう、っていう。
ニーズの多様化には解決法がひとつあるような気がして、いや、日本で日本の司書向けにやってる各種各テーマの研修に海外から参加してもらったらいいなっていう。そういう参加に、支援や助成をする、ということができるとだいぶいい感じじゃないかなと。
あと、かつてはデジタルであっても環境やサポートやシステム全体がオンライン化してたわけでもなく、なんやかんやでそれを学ぼうとしたら日本に来て教わらないとわからない、っていう無骨なデジタルが多かったんじゃないかと思うんですけど、いまはたぶんそんなことはなくて、スマートにweb経由でサポートされたり教わったりが出来るし、そもそももっとスマートで、別にわざわざ教わらなくてもなんとなく使える洗練されたデジタルがほとんどだろう、と思うので、わざわざ日本に来て研修受けなければという類のものがそうたくさんあるわけじゃないんじゃないか説。
そもそも、一方的な知識・技術の授受にいまどきの時代どこまで意味があるんだろう、ていう疑問は正直あって。
・E1728「英国・ドイツでの日本研究司書へのレファレンス研修を終えて」
No.291 2015.10.29
http://current.ndl.go.jp/e1728
JAL2016のワークショップでは、日本の美術司書がピッツバーグへ出向いていって研修的なことと情報交換的なことをしてきましたという報告があったんですけど、そこでも言われてたんですけど、「教えます」というスタンスのよりも、お互いにフラットな立場で情報交換・ワークショップ・ネットワークづくり的なことをしていく場/きっかけをつくったほうが、生産的じゃないかな、って思いますね。それをじゃあ「研修」と呼ぶのかどうかはわかんないけど、呼ぶのかどうかなんか関係ない、別に「研修をやること」そのものを目的としてるわけじゃないだろうと思うんで。
研修をやることそのものを目的としてるわけじゃないだろう、っていうんであればなんですけど、天理の古典籍ワークショップの例のように、海外側メンバーとともにこの類の研修事業を検討・議論・実施してまわしていくっていうコラボレーション活動をおこなうこと、それによってうまれる空気感みたいな成果。
プラス、これも天理の「在外日本古典籍研究会 OJAMASG」のように、研修が一過性の非日常で終わるのではなく、ちゃんと研修後もそれなりの継続性をもって、横のつながりが実際に機能して、日常につながっていく。
そういう、過程や準備、研修のアフター部分の継続性のような、議論・検討段階→準備→企画・募集→研修本体→研修後=提言フォロー+交流継続・次の活動+研修内製、そういう全体をひっくるめてグランドデザインしてかつ活動していく、っていうふうに考えれば、研修における知識技術の授受そのものはその大きくデザインされた中のひとコマだな、っていう感じになりますね。
そう考えれば、研修そのものの手法が、デジタルなのか対面式なのか、座学なのか実践なのか問題解決型なのか、派遣型なのかどうなのか、テーマをしぼるのかしぼらないのか、ていうのあたりは、あまり本質的な問題ではないんだろうなとも思います。
それよりは、研修というのは、「知識技術の習得」なのか? 「見聞・交流の機会、脱日常・脱ローカルの機会の提供」なのか? あるいは、研修事業自体が関係者間の連携・協力や活動活性化を促す「触媒」なのか? というのがもっと正面から問われてもいいような気がしますし、あたしとしては3番目推しかなと思いますね。
1番目の知識技術の習得ならネットでやったらいい、それこそコンテンツとして作り込めるなら佐々木先生@慶應・斯道文庫のMOOCs的なのがよっぽどコスパいいんだろうし。そして2番目も、これ多分コミュニティによってはいまどきはネットやSNSやで意外とまかなえてて、これオンリーで通用する相手ばかりでもないんじゃないか、ていう懸念はちょっとありますね。来日すれば/させればとりあえずなんとかなるだろう、それだけで価値あるだろう、ていうかそれを価値と思いなさい、では「来日搾取」みたいなことになりかねないので。
ただひとつ気になっていることがあって。
ゆくゆくは研修を現地で”内製化”する、っていうことがどれくらい意識されてるんだろうかな、っていう。
つまり、このさきずっと日本の機関が日本国内で提供する研修だけをもって”研修”だとするんじゃなくて、ある程度体力も人員もある国や地域やコミュニティであれば、研修を受け終わった人たちや充分なベテランの人たちが、まだ充分に習得できていない人たちや次の世代の人たちに、研修で得たものをその現地で伝えていく、そういうのをサイクルとしてまわしていく、っていうのがちゃんと意識されてないと、リソースの流れる向きがずっと日本→海外という一方向でしかないというのもキビシイんじゃないかっていう。
よく、ライブラリアンに世代交代が起こりつつあって、研鑽・育成を必要とする人たちもまだ多い、という話をよく耳にするんですけど、それはじゃあ、世代交代にどう備えよう、ていう話だと思うんですね。
という話で行くと、下記のような事例かなっていう。
・Tool kit for European NACSIS-CAT members
http://www.jlgweb.org.uk/nacsis/
イギリスの2人のライブラリアンが、ヨーロッパにおけるNACSIS-CATのトレーナーとなるべく、2011年にNIIでトレーニングを受講。2011年以降、実際にヨーロッパの各地・各機関でNACSIS-CATのトレーニングを実施している。
・Librarian Professional Development Working Group (LPDWG)
http://guides.nccjapan.org/lpdwg
・「Junior Japanese Studies Librarian Training Workshop: Overview & Survey Results」 Fabiano Takashi Rocha EAJRS – Berlin 19 September 2012
https://perswww.kuleuven.be/~u0008888/eajrs/happyo/Rocha_Fabiano_12.pdf
・「NCC、若手の日本研究図書館員を対象とした研修の資料・動画を公開」
Posted 2013年3月13日
http://current.ndl.go.jp/node/23072
2012年3月にトロント大学で開催された、“Junior Japanese Studies Librarian Training Workshop”。国際交流基金の支援による。北米、英国、スイス、オランダから24人の若手図書館員が受講。内容はレファレンス、蔵書構築、目録、情報リテラシー、アーカイブ資料など。
それと関連してもうひとつは、内製化できるところは内製化してもらいましょうよ、なぜなら日本側の研修をおこなうためのリソースにも限りがあるから、と。では、その限られたリソースは誰のために使うのか。つまり、この類の研修の対象者はどういう人たちであると我々は考えるのか、というターゲッティングの話ですね。
例えば、端的に言うと、そのリソースを向けるべき相手は、アジア地域(その他東欧、南米、中東などなど非欧米地域)で日本資料・情報の提供・利用に携わっている専門家の人たち、それがひとつ重要なんじゃないかなって思います。
それから、ライブラリアンじゃなく研究者や学生。結局ライブラリアンが専従でいるところというのはむしろ少数派で恵まれていて、ワンパーソンでがんばってはる研究者の人たちが結局は日本資料の管理メンテや入手提供をやってるところも多いだろうなので、そういう人たち。あるいは、今後そういうふうに育ってくれることを期待しての、学生相手っていう。
そしてもうひとつ、先の2012年トロント大学のワークショップでは「東アジア研究のライブラリアンのように日本語が専門でない人たちに対しての英語の研修が必要」と言われたみたいですけれど、そういう、日本を専門としないんだけども日本資料も扱うという他地域のライブラリアン、あるいは日本資料も必要とする研究者。そりゃそうです、北米だって、日本専門ライブラリアンがどこかしこにもいるわけじゃなくて、東アジア全体を担当する中国・韓国専門のライブラリアンに、じゃあ日本資料・日本情報はどう扱ってもらうのか、ていうことのほうがむしろ切実と言えば切実なわけで。
ただそうなってくると今度は、日本資料はこうですよ、日本のやり方というものはこういうものですよ、と日本から一方向的に伝えることが、「日本のお作法の輸出」=押し付けになってやしないか、という別の懸念が生まれてきますね。届けるのはお作法じゃなく、リソースやアカデミックな何かだろう、なんで。
これはもう、研修の話ではなく、「日本研究とは何か?」「日本資料・日本情報の届け先は誰か?」という大きな別の話になりつつあると思うので、ここらでやめます。
NDLさんがいまおこなっている「海外日本研究司書研修」。
・海外日本研究司書研修
http://www.ndl.go.jp/jp/library/training/guide/1211059_1485.html
これは、元をずっとずっとたどっていくと、最初におこなわれたのは1997年2月(H8年度)のことで、当時の名前は「日本研究上級司書研修」。当時はJFの招へい事業で、NDL、国際文化会館、NACSIS(当時)の協力によるという。それがその後、名前を「日本研究司書研修」、
日本研究情報専門家研修」、「日本専門家ワークショップ」などと名前を変え、主催者や共催者も、内容や対象ややり方や開催地も代々で変わっていき、今に至る、っということになるとこれはちょっと「おなじものをたどった」ということにしていいかどうかも迷う感じになりますね。
元プリンストンの牧野さんが、日本古書通信でしばらく連載してはった記事の中のひとつに、この研修の第1回の様子を書いたものがあります。
・牧野泰子. 「日本研究上級司書研修」. 『日本古書通信』. 2016.6, 81(6), p.15-17.
第1回研修の様子。内容は、JAPAN/MARC、J-BISC、NACSIS-IR、JICSTのJOISなど。開催に向けて小出さんが関係各所への交渉・調整に奔走した様子などもあり。
それから、天理大学・山中先生のご尽力による、古典籍ワークショップというのがあります。
・山中秀夫. 「「天理古典籍ワークショップ」及び公開シンポジウム「本の道」について(概報)」. 『ビブリア 天理図書館報』. 2007, 128, p.103-99.
・山中秀夫. 「「天理古典籍ワークショップ」及び公開シンポジウム「本の道」について(報告)」. 『ビブリア 天理図書館報』. 2008, 129, p.141-128.
・山中秀夫. 「「天理古典籍ワークショップ2008」及び公開シンポジウムについて(報告)」. 『ビブリア 天理図書館報』. 2008, 130, p.126-114.
・山中秀夫. 「和古書目録担当者研修について : 天理古典籍ワークショップを終えて」. 『ビブリア 天理図書館報』. 2010, 133, p.102-87.
・山中秀夫. 「天理古典籍ワークショップPhase2を終えて」. 『ビブリア. 天理図書館報』. 2013, 140, p.95-80.
海外の研究者・司書に和本の目録・取り扱いの実践的研修を行なうもので、1度目は2007-2009の3年連続、2年目は2013年。ビブリアの記事によれば、1度目実施後、受入体制や費用助成の問題から実現しなかったんだけども、2011年EAJRS総会で海外側実行委員会メンバーから要望が出され、2度目に至る、ということだそうです。
そうそもそもなんですが、この研修事業では、海外の司書等専門家からなる実行委員会と、日本側の事務局メンバーとが、コラボレーションで進めていたんだな、ということがわかります。主催は実行委員会でそのメンバーは、英2・米・独2・日2という構成。助成は、国際交流基金、Sasagawa Foundation(英)、図書館振興財団。
もうひとつ、研修後に受講者によって「在外日本古典籍研究会 OJAMASG」(http://www.jlgweb.org.uk/ojamasg/index.html)というグループが結成されまして、ディレクトリ的な情報サイトを構築、以降も継続的に活動しておられました。研修が、一過性の非日常で終わるのではなく、ちゃんと研修後もそれなりの継続性をもって、横のつながりが実際に機能して、日常の実益につながっていく、ていう例。
そして、2014年から3年間、東京国立近代美術館さんによっておこなわれていた、「海外日本美術資料専門家(司書)の招へい・研修・交流事業」、通称「JALプロジェクト」と呼ばれるものがありました。
・海外日本美術資料専門家(司書)研修(JALプロジェクト)
http://www.momat.go.jp/art-library/JAL/JAL2014.html
毎年ワークショップ「日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための提言」を最終日に開催している。
毎年10人前後の受講者が参加し、応募もそれなりに多かったみたいなんですが、それもこれも水谷さんの積極的な広報・勧誘・調整活動があってこそのことだったように、聞いていますし認識しています。ただ、そういう積極的な広報・勧誘があってもなお、途中で断られたり断念したりという例はあったみたいです。
そういう意味では、NDLさんで昨年度からやっている海外日本研究司書研修も、昨年度は10人近い受講があったものの、今年は4人にとどまっていました。
一方で、国際交流基金の関西国際センターさんの日本語研修、私がよくお目にかかるのは「文化・学術専門家日本語研修」のみなさんなんですけど、毎年約20人のかたがいらっしゃってて、にぎわっているのが楽しそうでいいなあっていつも思ってます。
・「文化・学術専門家日本語研修」(国際交流基金関西国際センター)
http://www.jfkc.jp/ja/training/culture-science.html
もちろんそれぞれで中身も対象も運営もぜんぜんちがうわけですから、ひとからげにして何かを言えるわけでもないし、ましてや主体で関わっているわけでもないのでたいそうなものを言えるわけでもないんですが、でもそういういくつかの例を見ていると、こういう研修のニーズってあるのかないのか、からはじまっていろんなことをぐだぐだと考えてしまうなっていう。
以降はそういうぐだぐだと考えたことをぐだぐだと書きます。
ニーズはあるんでしょうか。たぶんあるんでしょう。でも参加者集めが進んでいない例もある。
ニーズが多様化している説、っていうのはひとつあって、先の牧野さんによる第1回の様子(JAPAN/MARC、J-BISC、NACSIS-IR、JICSTのJOIS)を見ていると、まだインターネットが出始めの頃で本格的なデジタル化の前夜みたいな時って、教えるべき/教わるべきものがわりと定番的だったんだろうなっていうのがありますね。それがいまはインターネットや基礎的なデジタルシステムとかはある程度わかってて当然、そのうえで何か研修しようかと言っても、ツールが多様化してるわテーマが多様化してるわで、テーマを決めたりニーズを把握したりっていうのがすごく難しくなってるんじゃないかなっていう。20年前といまとではプログラム組む難しさがぜんぜん違うだろう、っていう。どういう話が聞きたいですか、っていうアンケートとったらアンケート結果の様相はたぶん20年前とだいぶちがってるだろう、っていう。
ニーズの多様化には解決法がひとつあるような気がして、いや、日本で日本の司書向けにやってる各種各テーマの研修に海外から参加してもらったらいいなっていう。そういう参加に、支援や助成をする、ということができるとだいぶいい感じじゃないかなと。
あと、かつてはデジタルであっても環境やサポートやシステム全体がオンライン化してたわけでもなく、なんやかんやでそれを学ぼうとしたら日本に来て教わらないとわからない、っていう無骨なデジタルが多かったんじゃないかと思うんですけど、いまはたぶんそんなことはなくて、スマートにweb経由でサポートされたり教わったりが出来るし、そもそももっとスマートで、別にわざわざ教わらなくてもなんとなく使える洗練されたデジタルがほとんどだろう、と思うので、わざわざ日本に来て研修受けなければという類のものがそうたくさんあるわけじゃないんじゃないか説。
そもそも、一方的な知識・技術の授受にいまどきの時代どこまで意味があるんだろう、ていう疑問は正直あって。
・E1728「英国・ドイツでの日本研究司書へのレファレンス研修を終えて」
No.291 2015.10.29
http://current.ndl.go.jp/e1728
JAL2016のワークショップでは、日本の美術司書がピッツバーグへ出向いていって研修的なことと情報交換的なことをしてきましたという報告があったんですけど、そこでも言われてたんですけど、「教えます」というスタンスのよりも、お互いにフラットな立場で情報交換・ワークショップ・ネットワークづくり的なことをしていく場/きっかけをつくったほうが、生産的じゃないかな、って思いますね。それをじゃあ「研修」と呼ぶのかどうかはわかんないけど、呼ぶのかどうかなんか関係ない、別に「研修をやること」そのものを目的としてるわけじゃないだろうと思うんで。
研修をやることそのものを目的としてるわけじゃないだろう、っていうんであればなんですけど、天理の古典籍ワークショップの例のように、海外側メンバーとともにこの類の研修事業を検討・議論・実施してまわしていくっていうコラボレーション活動をおこなうこと、それによってうまれる空気感みたいな成果。
プラス、これも天理の「在外日本古典籍研究会 OJAMASG」のように、研修が一過性の非日常で終わるのではなく、ちゃんと研修後もそれなりの継続性をもって、横のつながりが実際に機能して、日常につながっていく。
そういう、過程や準備、研修のアフター部分の継続性のような、議論・検討段階→準備→企画・募集→研修本体→研修後=提言フォロー+交流継続・次の活動+研修内製、そういう全体をひっくるめてグランドデザインしてかつ活動していく、っていうふうに考えれば、研修における知識技術の授受そのものはその大きくデザインされた中のひとコマだな、っていう感じになりますね。
そう考えれば、研修そのものの手法が、デジタルなのか対面式なのか、座学なのか実践なのか問題解決型なのか、派遣型なのかどうなのか、テーマをしぼるのかしぼらないのか、ていうのあたりは、あまり本質的な問題ではないんだろうなとも思います。
それよりは、研修というのは、「知識技術の習得」なのか? 「見聞・交流の機会、脱日常・脱ローカルの機会の提供」なのか? あるいは、研修事業自体が関係者間の連携・協力や活動活性化を促す「触媒」なのか? というのがもっと正面から問われてもいいような気がしますし、あたしとしては3番目推しかなと思いますね。
1番目の知識技術の習得ならネットでやったらいい、それこそコンテンツとして作り込めるなら佐々木先生@慶應・斯道文庫のMOOCs的なのがよっぽどコスパいいんだろうし。そして2番目も、これ多分コミュニティによってはいまどきはネットやSNSやで意外とまかなえてて、これオンリーで通用する相手ばかりでもないんじゃないか、ていう懸念はちょっとありますね。来日すれば/させればとりあえずなんとかなるだろう、それだけで価値あるだろう、ていうかそれを価値と思いなさい、では「来日搾取」みたいなことになりかねないので。
ただひとつ気になっていることがあって。
ゆくゆくは研修を現地で”内製化”する、っていうことがどれくらい意識されてるんだろうかな、っていう。
つまり、このさきずっと日本の機関が日本国内で提供する研修だけをもって”研修”だとするんじゃなくて、ある程度体力も人員もある国や地域やコミュニティであれば、研修を受け終わった人たちや充分なベテランの人たちが、まだ充分に習得できていない人たちや次の世代の人たちに、研修で得たものをその現地で伝えていく、そういうのをサイクルとしてまわしていく、っていうのがちゃんと意識されてないと、リソースの流れる向きがずっと日本→海外という一方向でしかないというのもキビシイんじゃないかっていう。
よく、ライブラリアンに世代交代が起こりつつあって、研鑽・育成を必要とする人たちもまだ多い、という話をよく耳にするんですけど、それはじゃあ、世代交代にどう備えよう、ていう話だと思うんですね。
という話で行くと、下記のような事例かなっていう。
・Tool kit for European NACSIS-CAT members
http://www.jlgweb.org.uk/nacsis/
イギリスの2人のライブラリアンが、ヨーロッパにおけるNACSIS-CATのトレーナーとなるべく、2011年にNIIでトレーニングを受講。2011年以降、実際にヨーロッパの各地・各機関でNACSIS-CATのトレーニングを実施している。
・Librarian Professional Development Working Group (LPDWG)
http://guides.nccjapan.org/lpdwg
・「Junior Japanese Studies Librarian Training Workshop: Overview & Survey Results」 Fabiano Takashi Rocha EAJRS – Berlin 19 September 2012
https://perswww.kuleuven.be/~u0008888/eajrs/happyo/Rocha_Fabiano_12.pdf
・「NCC、若手の日本研究図書館員を対象とした研修の資料・動画を公開」
Posted 2013年3月13日
http://current.ndl.go.jp/node/23072
2012年3月にトロント大学で開催された、“Junior Japanese Studies Librarian Training Workshop”。国際交流基金の支援による。北米、英国、スイス、オランダから24人の若手図書館員が受講。内容はレファレンス、蔵書構築、目録、情報リテラシー、アーカイブ資料など。
それと関連してもうひとつは、内製化できるところは内製化してもらいましょうよ、なぜなら日本側の研修をおこなうためのリソースにも限りがあるから、と。では、その限られたリソースは誰のために使うのか。つまり、この類の研修の対象者はどういう人たちであると我々は考えるのか、というターゲッティングの話ですね。
例えば、端的に言うと、そのリソースを向けるべき相手は、アジア地域(その他東欧、南米、中東などなど非欧米地域)で日本資料・情報の提供・利用に携わっている専門家の人たち、それがひとつ重要なんじゃないかなって思います。
それから、ライブラリアンじゃなく研究者や学生。結局ライブラリアンが専従でいるところというのはむしろ少数派で恵まれていて、ワンパーソンでがんばってはる研究者の人たちが結局は日本資料の管理メンテや入手提供をやってるところも多いだろうなので、そういう人たち。あるいは、今後そういうふうに育ってくれることを期待しての、学生相手っていう。
そしてもうひとつ、先の2012年トロント大学のワークショップでは「東アジア研究のライブラリアンのように日本語が専門でない人たちに対しての英語の研修が必要」と言われたみたいですけれど、そういう、日本を専門としないんだけども日本資料も扱うという他地域のライブラリアン、あるいは日本資料も必要とする研究者。そりゃそうです、北米だって、日本専門ライブラリアンがどこかしこにもいるわけじゃなくて、東アジア全体を担当する中国・韓国専門のライブラリアンに、じゃあ日本資料・日本情報はどう扱ってもらうのか、ていうことのほうがむしろ切実と言えば切実なわけで。
ただそうなってくると今度は、日本資料はこうですよ、日本のやり方というものはこういうものですよ、と日本から一方向的に伝えることが、「日本のお作法の輸出」=押し付けになってやしないか、という別の懸念が生まれてきますね。届けるのはお作法じゃなく、リソースやアカデミックな何かだろう、なんで。
これはもう、研修の話ではなく、「日本研究とは何か?」「日本資料・日本情報の届け先は誰か?」という大きな別の話になりつつあると思うので、ここらでやめます。
国際日本研究コンソーシアム(日文研) #2017年の本棚の中のニッポン
あともうひとつ、「国際日本研究コンソーシアム」っていう取り組みがあります。
これが、公開されているというかわかりやすい文書情報の類があまりないんで、書けることは限られるんですけど。
・機関拠点型基幹研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」(国際日本文化研究センター)
http://taishu-bunka.rspace.nichibun.ac.jp/
国際日本文化研究センターさんでは、これから先、人間文化研究機構の中においても特に「大衆文化」に焦点をあてて共同研究していこう、みたいにいまプロジェクト組んでます。それは、妖怪とか春画とか浪曲とかマンガアニメとかそういう感じ。
で、それはそれとして、ですが、その「第3期中期目標・中期計画において基幹研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」に重点的に取り組み、新たな日本文化研究の国際的研究拠点の構築を志向する。」というのがあってからの、さらに、「この事業を通じて、本来の最重要業務の一つである「海外の日本研究者への研究協力」をさらに充実させ、日本研究の国際的中核拠点としての機能を強化」するんだけども、その一環としてというか併行してというかで、「国内における「国際日本研究」コンソーシアムを形成する」と。
で、この国際日本研究コンソーシアムというのは、「国内の「国際日本研究」あるいは「国際日本学」を掲げる諸研究・教育機関との実際的な連携体制の確立」であると、さらりと書いてある(稲賀繁美. 「インターネット双方向的同窓会Nichibunken Interactive Alumni Network創設にむけての個人的提言」. 『Nichibunken Newsletter』. 2016.12, 94.)んですけど、その理由としては、「近年、国際交流の活発化に伴い、日本国内の大学において「国際日本学」や「国際日本研究」をかかげた研究所や学部・大学院の課程、コースの設置が相次いでいる。しかしその多くはいずれも個別に存立し、機関間の連携は未だ実現されていない。その現状を改善すべく」であるんだと、そのために、「本事業(大衆文化)の実施を通じて、こうした国内の各関連大学と提携し」ていくんだということです。
という感じで、実際に動いておられます。
とりあえずこのへんで。
これが、公開されているというかわかりやすい文書情報の類があまりないんで、書けることは限られるんですけど。
・機関拠点型基幹研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」(国際日本文化研究センター)
http://taishu-bunka.rspace.nichibun.ac.jp/
国際日本文化研究センターさんでは、これから先、人間文化研究機構の中においても特に「大衆文化」に焦点をあてて共同研究していこう、みたいにいまプロジェクト組んでます。それは、妖怪とか春画とか浪曲とかマンガアニメとかそういう感じ。
で、それはそれとして、ですが、その「第3期中期目標・中期計画において基幹研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」に重点的に取り組み、新たな日本文化研究の国際的研究拠点の構築を志向する。」というのがあってからの、さらに、「この事業を通じて、本来の最重要業務の一つである「海外の日本研究者への研究協力」をさらに充実させ、日本研究の国際的中核拠点としての機能を強化」するんだけども、その一環としてというか併行してというかで、「国内における「国際日本研究」コンソーシアムを形成する」と。
で、この国際日本研究コンソーシアムというのは、「国内の「国際日本研究」あるいは「国際日本学」を掲げる諸研究・教育機関との実際的な連携体制の確立」であると、さらりと書いてある(稲賀繁美. 「インターネット双方向的同窓会Nichibunken Interactive Alumni Network創設にむけての個人的提言」. 『Nichibunken Newsletter』. 2016.12, 94.)んですけど、その理由としては、「近年、国際交流の活発化に伴い、日本国内の大学において「国際日本学」や「国際日本研究」をかかげた研究所や学部・大学院の課程、コースの設置が相次いでいる。しかしその多くはいずれも個別に存立し、機関間の連携は未だ実現されていない。その現状を改善すべく」であるんだと、そのために、「本事業(大衆文化)の実施を通じて、こうした国内の各関連大学と提携し」ていくんだということです。
という感じで、実際に動いておられます。
とりあえずこのへんで。
立命館大学アートリサーチセンター(ARC) #2017年の本棚の中のニッポン
”在外資料””デジタルアーカイブ””コラボ”っていうと、立命館大学アートリサーチセンター(ARC)さんが思い浮かびますね。
・立命館大学アート・リサーチセンタ一
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/
・立命館大学大学院 文学研究科 行動文化情報学専攻「文化情報学専修」(2014年新設)
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/lib/gslbunkajyoho/
・赤間亮. 「立命館大学アート・リサーチセンタ一の古典籍デジタル化 : ARC国際モデルについて」. 『情報の科学と技術』. 2015.4, 65(4), p.181-186.
2002年のヴィクトリア&アルバート博物館での浮世絵コレクションデジタル化事業をきっかけとして、ARCでは海外の美術館・博物館・図書館などへ出向いては、そこで所蔵されている“在外資料”、日本美術・古典籍について、撮影・デジタル化・アーカイブ構築を進めていく、という活動を行なってはります。
それは単なるデジタル化工場として働いているというだけではなくて、資料のデジタル化に欠かせない機材・システムまわりのスキルとか、デジタルアーカイブの知見とか、資料に対する専門知識とか、資料の保存修復技術も必要になってくるわけなんで、そういう人材を育成していこうという。長年の活動で蓄積されてきた実践的・総合的なノウハウを、「ARCモデル」と称して、ワークショップなんかを国内外で開いては、レクチャーしていく。それを、たとえばデジタル化しに行った先の海外機関やそこに関わる学生さんなり若手研究者の人なりを集めて、共同研究なり共同プロジェクトとして、最初にレクチャーをすればあとはその流れでもって現地でデジタル化作業が進められる。そういうふうに学生や若手研究者をプロジェクトに巻き込むことが、若い世代の育成や知見の継承につながる、っていう意味での国際的なコラボレーションの理想的な事例だなって思いますね。
現在ARCさんのデジタルアーカイブですが、海外に在する資料も含め、浮世絵ポータルデータベースで49万件、古典籍ポータルデータベースで8.7万点だそうです。
・立命館大学アート・リサーチセンタ一
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/
・立命館大学大学院 文学研究科 行動文化情報学専攻「文化情報学専修」(2014年新設)
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/lib/gslbunkajyoho/
・赤間亮. 「立命館大学アート・リサーチセンタ一の古典籍デジタル化 : ARC国際モデルについて」. 『情報の科学と技術』. 2015.4, 65(4), p.181-186.
2002年のヴィクトリア&アルバート博物館での浮世絵コレクションデジタル化事業をきっかけとして、ARCでは海外の美術館・博物館・図書館などへ出向いては、そこで所蔵されている“在外資料”、日本美術・古典籍について、撮影・デジタル化・アーカイブ構築を進めていく、という活動を行なってはります。
それは単なるデジタル化工場として働いているというだけではなくて、資料のデジタル化に欠かせない機材・システムまわりのスキルとか、デジタルアーカイブの知見とか、資料に対する専門知識とか、資料の保存修復技術も必要になってくるわけなんで、そういう人材を育成していこうという。長年の活動で蓄積されてきた実践的・総合的なノウハウを、「ARCモデル」と称して、ワークショップなんかを国内外で開いては、レクチャーしていく。それを、たとえばデジタル化しに行った先の海外機関やそこに関わる学生さんなり若手研究者の人なりを集めて、共同研究なり共同プロジェクトとして、最初にレクチャーをすればあとはその流れでもって現地でデジタル化作業が進められる。そういうふうに学生や若手研究者をプロジェクトに巻き込むことが、若い世代の育成や知見の継承につながる、っていう意味での国際的なコラボレーションの理想的な事例だなって思いますね。
現在ARCさんのデジタルアーカイブですが、海外に在する資料も含め、浮世絵ポータルデータベースで49万件、古典籍ポータルデータベースで8.7万点だそうです。
コラボレーション #2017年の本棚の中のニッポン
これまでたびたび出てきてた”コラボレーション”というキー概念について。
”和本”のためのくずし字講座やくずし字学習アプリ開発もそうだし、「みんなで翻刻」もそう、”在外資料”のデジタル化もそうだし、それを使ったデジタルヒューマニティーズもそうだな、っていう流れで。
海外の日本専門家や日本司書を日本に招いて”研修”するという研修企画についても、たとえば、JAL2016のワークショップでは日本の美術司書がピッツバーグへ出向いていって研修的なことと情報交換的なことをしたんだけど、お互いにフラットな立場で情報交換したほうのほうがよさそうで、っていうことになってくると、それもう授受的な研修じゃなく相互なワークショップ・情報交換・ネットワークづくり、という意味の広義のコラボレーションのほうが良くね?ってなると思うので、そのへんはたぶん「研修」という別項が立つでしょう。
海外の日本研究や在外資料、そのデジタルアーカイブ構築やweb展示に関連して、ああこれいいな、best practiceだな、っていうコラボ的なプロジェクトをいくつか挙げると。
まず、琉球大学附属図書館とハワイ大学マノア校図書館による合同プロジェクト「ハワイ大学所蔵阪巻・宝玲文庫デジタル化プロジェクト事業」。翻刻・書誌調査、保存処置、デジタル化作業、英訳、コンテンツ・webサイト作成や広報など、様々な課題を、両大学の図書館司書や研究者・学生等が、インターナショナルにチームを組み、取り組んだ、というもの。
これについては、2016年6月AAS in Asia 2016京都で開催したラウンドテーブル「The Digital Resource Landscape for Japanese Studies」の中で、ハワイ大学マノア校図書館のバゼル山本登紀子が報告してくださいました。あと、2015年ライデンのEAJRSやカレントアウェアネスでも。
・Tokiko Yamamoto Bazzell(University of Hawaii at Manoa Library)
「The Digital Resource Landscape for Japanese Studies: Spaces for Change and Growth Collaboration & Collective Solutions @ the University of Hawaii at Manoa Library」
http://egamiday.sakura.ne.jp/MyFiles/pptBazzell.pdf
・「越境する沖縄研究と資料U−「阪巻・宝玲文庫」のデジタル化プロジェクトを通して−」
https://perswww.kuleuven.be/~u0008888/eajrs/happyo/Tomita_Chinatsu_15.pptx
・琉球大学附属図書館、ハワイ大学マノア校図書館所蔵の阪巻・宝玲文庫デジタル公開
http://current.ndl.go.jp/node/26924
Posted 2014年9月2日
「2014年9月1日、琉球大学附属図書館が、ハワイ大学マノア校図書館との連携事業により、マノア校ハミルトン図書館が所蔵する、阪巻・宝玲文庫(The Sakamaki/Hawley Collection)のデジタル公開を開始したことを発表しました。今回公開されたのは阪巻・宝玲文庫全902件の内、琉球・沖縄に関する古典籍・古文書その他110件とのことです。今年度中にはさらに110件の公開を予定しているとのことです。」
うん、やっぱカレントアウェアネスに記事がひとつあると、ペッと貼って紹介や説明がしやすいので、すごくいいんですよね。インフラですね。
もうひとつbest practice。アジ歴とBLのコラボ。
・E1630 - ウェブ展示「描かれた日清戦争」:アジ歴とBLの共同企画
http://current.ndl.go.jp/e1630
カレントアウェアネス-E
No.271 2014.11.27
BL所蔵版画コレクションと公文書のウェブ展示を日英版で同時制作するという共同企画。
2012年、自館資料を世に出したいと考えたBL日本部スタッフと、EAJRSでネットワークづくりをしていたアジ歴が、共同で企画。「歴史的資料の公開について専門的な知見を有する機関の協力が必要であり,近現代の公文書のデジタル公開とそれを用いたコンテンツ制作という実績を持つアジ歴は,BLにとって最適なパートナーとなった」。
https://www.jacar.go.jp/jacarbl-fsjwar-j/
http://eajrs.net/files-eajrs/ohtsuka.pdf
あと、「NDLとフランス国立図書館とで締結された包括的協力協定(2013)にもとづき、2014年両館による共同電子展示サイトが公開された」っていうのは、どこまで実際のコラボレーションがおこなわれているのかよくわかんないんですけど、とりあえず挙げておきます。
・フランス国立図書館の電子展示“France-Japon: Une rencontre, 1850-1914”が公開
http://current.ndl.go.jp/node/27638
Posted 2014年12月15日
BnFの“France-Japon: Une rencontre, 1850-1914”は、NDL「近代日本とフランス―憧れ、出会い、交流」と、相互補完的な機能を持つ。NDL側は日本がフランスに抱いている情熱を、BnF側はフランスから見た日本の魅力を、とのこと。
"France-Japon, une rencontre, 1850-1914"(BnF)
http://expositions.bnf.fr/france-japon/
近代日本とフランス―憧れ、出会い、交流(国立国会図書館)
http://www.ndl.go.jp/france/
そういう海外に日本研究や日本司書とのコラボレーションを志向するんだったら、日本の司書が積極的に海外に出かけていって、ていうことが必要になってくるので、そうしましょう、っていうことも良く言われています。
たとえば国際会議に参加してそこで何かしら発表・情報提供をすること。AASやCEALやEAJRSでパネルやワークショップを申し込んで開催したり、何なら同じ会場で別途部屋を借りて人を呼んでやったっていい、という考え方もあるので、っていうのをJAL2016ワークショップでグッドさんに教えてもらったので、企画力と人さえそろえばっていう感じですね。
それから、インターンなり在外研修・在外勤務なりで長期にわたる派遣を積極的にやるという活動。
例えば、最近ニュースになったワシントン大学の話。
・2017 Tateuchi Visiting Librarian Program
http://www.lib.washington.edu/east-asia/2017-tateuchi-visiting-librarian-program/view
・「ワシントン大学図書館、日本のライブラリアン招聘プログラムを開始、志願者募集」
Posted 2016年10月7日
http://current.ndl.go.jp/node/32697
研修者は、ワシントン大学東アジア図書館での6ヶ月のプログラム中に、プロジェクトもしくは自らの調査を完成させるなど。開始は2017年3月〜5月頃から。
これにどんだけ手が挙がってどんだけ定着してくれるかがすごくワクワクしますね。
こういう海外図書館への司書派遣は慶應さんがわりと積極的にやってはる印象があるなと思ってて、なんか海外出張とか行くとしょっちゅう慶應の人に会うんですよね、すげえなと思って。なんかこの件については中の人からもっと話をききたいです、あんまこのことが表に語られてるのを見ることがない気がする。
・イズミ・タイトラー. 「英国・欧州の日本研究図書館との関わりにおいて」. 『専門図書館』. 2014.11, 268, p.2-7.
JLG(Japan Library Group・英国内日本語資料コレクションのための学術図書館コンソーシアム)と慶應義塾大学による職員英国派遣プログラムがあって、日英交流強化のメリットがあった、と評価している。
・関秀行. 「慶應義塾大学メディアセンターにおける国際交流活動」(EAJRS2016)
http://eajrs.net/sites/default/files/uploads/seki_hideyuki_16.pdf
「国際的な視野を持つ人材を育成していく方法の一つとして、図書館員を欧米の図書館に長期派遣する制度の継続に力を入れている」
最初の派遣はハワイ大学へ1965年。1985年から継続的に。過去、シカゴ大学、UCLA、バークレーなど。現在は、トロント大学、シアトル大学、セインズベリーと継続中。
これによってコラボレーションが進むというのももちろんだし、そもそもこういうことができるのも先方のライブラリアンの人たちの尽力と日本側との連携があってこそだよな、って思いますね。
JAL2016のアンサーシンポジウムで、「日本のデータベースやデジタルアーカイブに関するリンク集やパスファインダーや解説集のようなものを、海外向けに、各主題の専門家同士の共同で作成できたらいいのではないか」というのが話題にあがりました。たぶんそれも、日本の人らだけでやるよりは海外の専門家・司書らとのコラボレーションでやっていくのがいいのだろうと思います。そういうのって、成果物としてのリンク集・パスファインダー・webサイトもそうなんだけど、そうやって寄り集まってコラボ活動している過程によってうまれる空気感の形成、みたいなところにこそ、本質的な意義があるんじゃないかなって思いますね。
ていうか、日本側で海外日本研究に関わっている機関や部署や人があちこちにあると思うんですけど、なんというか、その連携が目に見えてとれてないところがあるんじゃないかな、っていうのは思ってます。
2014年に試行版が、2015年に現在の版が公開されている、下記のリンク集を事例として挙げておきます。
・「日本研究と日本における人間文化研究情報の国際リンク集」
http://www-e.nihu.jp/sougou/kyoyuka/japan_links/index_ja.html
人間文化研究機構の資源共有化事業の一環として作成されたもの。日本研究と日本における人文系研究情報について、国内外を問わず、英語のリソース中心に、国際的に発信する目的で。
2017年03月03日
国文研・歴史的典籍NW事業 #2017年の本棚の中のニッポン
というわけで、”国文研さんのやつ”です。
”国文研さんのやつ”のまとめ再掲。
・”和本”という日本資料を、大量にデジタル化して、オープンに公開する。
・”在外資料”としての和本、つまり海外各大学・図書館・機関にあるものも、その対象の予定。
・古典籍総合目録その他のデータベースとともに、構築される”デジタルアーカイブ”が”和本”の”ポータル”となるであろう。
・”デジタルヒューマニティーズ”界隈のいろんなコラボやツールも活用されるであろう。
・デジタル化事業だけでなく、研究活動も含め事業全体が、国内外・多分野で、国際共同研究ネットワークを構築するという“コラボレーション”を目指している。
・「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画(略称:歴史的典籍NW事業)」
https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/
・増井ゆう子, 山本和明. 「国文学研究資料館・日本語の歴史的典籍のデータベース構築について」. 『情報の科学と技術』. 2015, 65(4), p.169-175.
-その名の通り、日本語の歴史的典籍をもって、国際的な共同研究ネットワークの構築を目指すプロジェクト。
-平成26年度から平成35年度までの10年間の予定。
-30万点の歴史的典籍のデジタルアーカイブ構築。『国書総目録』50万のうち30万。国文研所蔵だけでなく、複数の機関が所蔵する古典籍を含むポータル。
-拠点大学国内20大学、海外の大学・研究機関等と連携の予定。
(海外の連携相手には、欧米中韓の13機関が挙がっている。)
-人文社会科学分野として初めての大規模学術フロンティア事業。
ひと言で言えば、日本古典籍、和本のプラットフォーム、ポータルサイトが出来ると。
それも、単に和本をデジタル化しますよ、という話ではなく、国内外の大学・機関と連携して事業をおこなうこと。国内外・他国他地域との国際共同研究をおこなうこと。異分野融合であること。
そういうことがうたわれているので、海外関係者からの期待の視線も熱いです。トロントで開かれた2016年3月のNCCでも即席ミーティングが開かれるほど注目でしたし、EAJRSでもそう。そもそも、このプロジェクトの発端にあたる話、まだ目鼻もまったくついてなかったころにその話をあたしが初めてきいたのも、2011年イギリスでのEAJRS会議の時でした、正直、あまりにでかすぎる話で実感がわかなかったんですが、いまもうすでにやってるわけだからなあ、と。
・「拠点大学の画像公開について 【 2015(平成27)年度の拠点デジタル化資料 】
https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/database.html
この文章を書いているいまはまだ9大学分の公開みたいですが、2017年4月には新たな画像データベースが公開される計画です、ってこのページには書いてあるので、これもワクワクですね。
そして、画像、からの、オープンデータです。”デジタルヒューマニティーズ”です。
・「ホーム > 歴史的典籍に関する大型プロジェクト > オープンデータセット 」
http://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/data_set_list.html
2017年2月現在、日本古典籍データセット、日本古典籍字形データセット、江戸料理レシピデータセットを公開中。700点の画像データ約16万コマとその書誌データ。
・日本古典籍字形データセット
http://codh.rois.ac.jp/char-shape/
所蔵古典籍の文字座標データなど8点の資料に書かれた86000文字。
・日本古典籍データセット活用例
https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/data_set_use.html
和本カテゴリの第一党として期待しかしてないです。
和本 #2017年の本棚の中のニッポン
海外の日本研究・日本図書館の動向を見ていて、ある程度はもちろん以前からあったんだけど、それにしてもここ最近とみに、”和本”まわりのトピックスや盛り上がりが多いよな、っていう印象があります。
“和本”と“海外の日本研究”と“デジタル”と、これら3点セットで相性がいい、親和性が高い、という感じなんだろうなって思いますね。それは、これまでに挙げてきたデジタル関連のトピックスにも“和本”界隈の話題がしょっちゅう顔を出してた、っていうところからもわかると思います。
そもそも”和本”との接触が、特に西洋における日本研究の出発点だった、みたいなところも歴史をひもとけばあるんじゃないかと。
これは”在外資料”がらみの話題としてもですが。
・国文学研究資料館、「北米日本古典籍所蔵機関ディレクトリ」(日・英)を公開
Posted 2011年12月27日
http://current.ndl.go.jp/node/19825
・国文学研究資料館、北米日本古典籍所蔵機関ディレクトリに所蔵機関情報を追加し、「在外日本古典籍所蔵機関ディレクトリ」に改称
Posted 2014年3月20日
http://current.ndl.go.jp/node/25737
この話題で言うと国文研さんではもともと「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」(http://base1.nijl.ac.jp/~oushu/)を長年メンテ・提供してはって、web公開は2001年にさかのぼるという老舗なんですが、そこへ加えてディレクトリ、これは北米の東アジア図書館協議会(CEAL)の日本資料委員会・日本古典籍小委員会の調査によるものですが、これが国文研さんのサイトにのっかる、加えて欧州・オセアニアものっかる、という非常にありがたい基本的レファレンスツールになってます。
ていうか、”国文研”さんの名前を出すんだったらこの話題ではまちがいなくトップなのが、例の大規模事業なんですけども、それは別項で独立させる予定なのでいったん置いておきますね。ただ、エッセンスだけ言うと、
・”和本”という日本資料を、大量にデジタル化して、オープンに公開する。
・”在外資料”としての和本、つまり海外各大学・図書館・機関にあるものも、その対象の予定。
・古典籍総合目録その他のデータベースとともに、構築される”デジタルアーカイブ”が”和本”の”ポータル”となるであろう。
・”デジタルヒューマニティーズ”界隈のいろんなコラボやツールも活用されるであろう。
・デジタル化事業だけでなく、研究活動も含め事業全体が、国内外・多分野で、国際共同研究ネットワークを構築するという“コラボレーション”を目指している。
現状として、”在外資料”としての和本が海外のあちこちで公開されるようになってきたために、諸本比較は海外でもふつーにできます、という話も聞ける、分野種類によっては海外デジタルの方がやりやすい場合もあり得るだろう逆転現象も考えられますね。
あたしが下記の講演を聴きに行ったときにベルリンの方からうかがったことには、
・立命館大学大学院 文学研究科 行動文化情報学専攻 「文化情報学専修」設置準備企画連続講演会 第2回〈文化資源情報を考える〉
2013年6月28日
立命館大学アートリサーチセンター
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/lib/GCOE/info/2013/06/post-97.html
1.「早稲田大学古典籍総合データベースの場合」藤原秀之氏(早稲田大学図書館特別資料室調査役)
2.「古典籍画像データベースを利用して−併せて、ベルリン国立図書館のデジタル化の現状の報告−」クリスティアン・デュンケル氏(ベルリン国立図書館東アジア部日本担当司書)
3.「対談 日本古典籍デジタル化と日本研究の行方」(司会・赤間先生)
この方は都名所図会を40から50点ほどのレベルで比較研究したらしいのですね、それは、現物を来館閲覧なんてとてもできなくて、デジタル化された画像を利用したわけですから、海外でもこうやってデジタル画像を活用した和本研究が行なわれる、日本と海外の差がなく研究できるようになってるという一例です。
で、そうやって和本の電子化公開がどんどん進むようになって、どうなったか、っていうことについて面白い話を、ミシガンの横田さんがしてはります。
・「デジタル化と大学図書館の未来──横田氏講演の感想メモ - 日比嘉高研究室
http://hibi.hatenadiary.jp/entry/2016/03/24/085054
2016/3/22、名古屋大学にての講演「Digital Humanities と北米大学図書館の現在〜ミシガン大から見る」について。
「日本の古典籍の電子化が進んだことによって、海外でもそれを容易に読めるようになってきた。その結果何が起こったか。「くずし字」で資料を読まなければならないと考える古典研究者たちが海外に現れた、と横田さんは言った。これまでは活字化された資料をもとに主に研究してきたが、活字化されていない資料…にも取り組もうということである」
確かに海外でくずし字ワークショップがおこなわれましたっていうニュースは、昨今正直、枚挙にいとまがないくらいよく聞きます。たぶん多くは国文研さん。
・「「くずし字」解読に挑戦 日バチカン共同講座」
東京新聞 2017年2月10日
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017021001000877.html
国文研とバチカン図書館による“在外資料”調査事業「マレガ・プロジェクト」の一環で、バチカン図書館でくずし字共同講座。これも“コラボ“。
・「NIJL / EAJRS Kuzushiji workshop in Norwich」
http://eajrs.net/news/nijl-eajrs-kuzushiji-workshop-norwich
・国文学研究資料館のツイッター
https://twitter.com/nijlkokubunken/status/829255490270089216/photo/1
「当館と欧州の図書館司書組織EAJRSとの共催による第七回「くずし字講習会」が、2月1〜3日、英国の古い都市ノーリッチにある、セインズベリー日本芸術研究所で開催されました。英国はもとより、アメリカ、北欧、フランスから日本典籍担当司書が参加し、講師は当館の今西館長がつとめました」
最近『書物学』にケンブリッジのモレッティさんが寄稿してた「総合的和本リテラシー教育」の講座のやつは、ガチでマジだったので脱帽しましたけど。
・ラウラ・モレッティ. 「「総合的和本リテラシー教育」 : ケンブリッジ大学イマヌエル・カレッジの試み」. 『書物学』. 9, 2016.10, p.50-55.
-ケンブリッジ大学イマヌエル・カレッジで、二松学舎大学東アジア学術総合研究所との共催により、2014年から「総合的和本リテラシーを学ぶサマー・スクール」を開講。8月に2週間。Graduate Summer School。大学院生、研究者、司書、学芸員等を対象とする。毎年ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、日本等から20名参加。
-くずし字に限らず、「書体・文体・媒体(書籍形態)を総合的に」学ぶ。
-漢文訓読体担当の山邊進は、二松学舎大学21世紀COEプログラム「日本間文学研究の世界的拠点の構築」等で、「長年にわたり海外の大学院生を対象とした漢文訓読教育に携わってきた。そのため、日本人対象の従来の教育法とは異なった外国人に馴染みやすい教え方をマスターしている」
・他に、アメリカの研究者、ロンドンの書道家などと協力して実施。(“コラボ”)
そうか、みんなそんなにくずし字を勉強したいか。
というわけでの、アプリですよねと。
その1、早稲田×UCLAの”コラボ”によるアプリ
・「早稲田大学文学学術院、「変体仮名」をゲーム感覚で身につけられる無料スマートフォンアプリを公開」
Posted 2015年11月4日
http://current.ndl.go.jp/node/29862
・「源氏物語から蕎麦屋の看板までマスター 変体仮名あぷり・The Hentaigana App 早大・UCLAで共同開発」
Mon, 02 Nov 2015
https://www.waseda.jp/top/news/34162
-英語版は共同開発者のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)によって米国・ヨーロッパなどに向けて近日リリースされる予定です。
-早稲田・UCLAの「柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト(The Tadashi Yanai Initiative for Globalizing Japanese Humanities)」の一環として開発したもの。
その2、KuLA。
・「くずし字学習支援アプリ「KuLA」が公開開始」
Posted 2016年2月18日
http://current.ndl.go.jp/node/30780
「諸事情あってスマホを英語設定で使っているためにGoogle Playで同じく英語設定ユーザーのレビューが表示されるのですが、このappは英語ユーザーにも「くずし字の学習に最適」と大変な人気で、すごいです。」(https://twitter.com/MB13/status/796709350551195649)だそうです。
からの、「みんなで翻刻」につながりますね。
学習だけでなく、”デジタルヒューマニティーズ”的に文字を扱ってはる例としては、Unicodeで変体仮名が登録予定(高田智和, 矢田勉, 斎藤達哉. 「変体仮名のこれまでとこれから : 情報交換のための標準化」. 『情報管理』. 2015, 58(6), p.438-446.)と言うほかにも、こんなのがあります。
・山本純子, 大澤留次郎. 「古典籍翻刻の省力化 : くずし字を含む新方式OCR技術の開発」. 『情報管理』. 2016, 58(11), p.819-827.
-くずし字をOCRでテキストデータ化する実験と開発。
-凸版印刷,公立はこだて未来大学,国文学研究資料館の3者の協力の下,原理検証実験を実施し,特定の条件下ではあるが,精度80%以上で翻刻が可能であることを実証
・文字画像データセット(平仮名73文字版)を試験公開しました
2016/09/27
NDL Lab http://lab.ndl.go.jp/cms/hiragana73
NDLデジタルコレクションから平仮名の文字画像を切り出したデータセット、計8万画像。
そして、文字を読むだけでなく日本古典籍の書誌学をがっちり授業してくれるということで最近話題になったのが、慶應の佐々木先生のMOOCsのやつでした。
・「Japanese Culture Through Rare Books - Free online course」 (“FutureLearn”)
https://www.futurelearn.com/courses/japanese-rare-books-culture/
・「慶應義塾大学、英国のMOOCs“FutureLearn”で、講座(「Japanese Culture Through Rare Books」)を初提供」
Posted 2016年4月28日
http://current.ndl.go.jp/node/31472
-斯道文庫の佐々木孝浩教授と一戸渉准教授による講義
-7月18日公開、全3回。
-日本語+英語字幕。受講者同士でのディスカッションは英語。
第2弾は堀川先生。
・公開オンライン講座FutureLearnにて新コース「Sino-Japanese Interactions Through Rare Books」の受講登録を開始いたしました
2017/01/18
http://www.sido.keio.ac.jp/info/index.php#66
-開講期間:2017年3月6日(月)から3週間(予定)
-日本語+英語字幕、受講者同士のディスカッションは英語
-斯道文庫の堀川貴司教授(代表)、住吉朋彦教授、橋智教授.
-主に中国大陸から影響を受けた日本文化を、貴重書の側面から考察
デジタル動画だからこその強みであるのが”英語字幕“かなって思いますね。
コンテンツの安定したのと、デジタルの利点と、英語、っていうこの3点セットかなと、ここは。
コメント見るとわりと日本語学習者が見に来てるっていうのもあるらしいので。
それにこの日本古典籍英語MOOCs動画のもうひとついいのが、NDL研修に来てはったアメリカの司書の方に聞いたんですけど、あちらの大学でも特にレアブックのヒストリーの授業は学生に人気があるんだけど、そこで扱われているレアブックや歴史っていうのは主に欧米のそれがほとんどなので、そこに日本やアジアもがっつり含まれるようになってくれるとほんとはいいと思うんだよね、って言って、英語で和本を教えるのに適した本みたいなのをいろいろ調査してはる。そういう現状があるんだったら、そこへあのMOOCs動画が人気出るのもそりゃ当然だろうな、という感じです。
その佐々木先生は海外でも日本古典籍ワークショップを開いてはりますし、もうひとつ言うと、2016年6月に出版なさった『日本古典書誌学論』について、推薦文をプリンストン大学の日本研究司書の方が書いてはります。
・佐々木孝浩『日本古典書誌学論』(笠間書院)2016年6月刊行
推薦文
http://kasamashoin.jp/2016/07/pdf_19.html
「世界の研究者、司書に向けて書誌学の重要性を啓発
野口契子 アメリカ・プリンストン大学東アジア図書館日本研究司書
「北米に所在する日本の古典籍においても、近い将来デジタル化が進み、国際的なプロジェクトに繋がる可能性も高い」
「巻末に英文の目次と抄訳もある。国内はもとより、海外の研究者、司書にも推薦したい。」
1600年代初頭の古活字本の時代から、21世紀のデジタルヒューマニティーズの時代まで、脚光を浴びるのは、そう、「古典」なんだなって思い知った、春先の2017なのでした。
メディア変換と古典ってどんだけ相性いいんだよ、っていう。
#2017年の本棚の中のニッポン のindex
#2017年の本棚の中のニッポンは、「○○×海外の日本研究」という感じで、2017年3月時点でなんとなく自分に見えている風景をスケッチしてる、スケッチ集です。
近年の関連文献その他
http://egamiday3.seesaa.net/article/447466756.html
在外日本資料
http://egamiday3.seesaa.net/article/447469480.html
デジタルアーカイブ
http://egamiday3.seesaa.net/article/447479420.html
ポータル+情報発信
http://egamiday3.seesaa.net/article/447499819.html
デジタル(e-resource)不足
http://egamiday3.seesaa.net/article/447501063.html
ウェブ・スケール・ディスカバリー(WSD)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447516953.html
デジタルヒューマニティーズ
http://egamiday3.seesaa.net/article/447532162.html
和本
http://egamiday3.seesaa.net/article/447565661.html
国文研・歴史的典籍NW事業
http://egamiday3.seesaa.net/article/447566034.html
コラボレーション
http://egamiday3.seesaa.net/article/447581503.html
立命館大学アートリサーチセンター(ARC)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447582397.html
国際日本研究コンソーシアム(日文研)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447582639.html
研修事業
http://egamiday3.seesaa.net/article/447588883.html
アジア
http://egamiday3.seesaa.net/article/447611104.html
英語/ローマ字
http://egamiday3.seesaa.net/article/447686045.html
近年の関連文献その他
http://egamiday3.seesaa.net/article/447466756.html
在外日本資料
http://egamiday3.seesaa.net/article/447469480.html
デジタルアーカイブ
http://egamiday3.seesaa.net/article/447479420.html
ポータル+情報発信
http://egamiday3.seesaa.net/article/447499819.html
デジタル(e-resource)不足
http://egamiday3.seesaa.net/article/447501063.html
ウェブ・スケール・ディスカバリー(WSD)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447516953.html
デジタルヒューマニティーズ
http://egamiday3.seesaa.net/article/447532162.html
和本
http://egamiday3.seesaa.net/article/447565661.html
国文研・歴史的典籍NW事業
http://egamiday3.seesaa.net/article/447566034.html
コラボレーション
http://egamiday3.seesaa.net/article/447581503.html
立命館大学アートリサーチセンター(ARC)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447582397.html
国際日本研究コンソーシアム(日文研)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447582639.html
研修事業
http://egamiday3.seesaa.net/article/447588883.html
アジア
http://egamiday3.seesaa.net/article/447611104.html
英語/ローマ字
http://egamiday3.seesaa.net/article/447686045.html
2017年03月02日
デジタルヒューマニティーズ #2017年の本棚の中のニッポン
デジタルヒューマニティーズ×海外日本研究、のことです。
正直、いまどきの「デジタルヒューマニティーズ」という言葉が一過性のものになっていくのか、定着して不可欠な概念になっていくのかは、自分個人としてはまだわからずある程度の距離感で見てる感じではあるのですが、でも、それが持つ根本的な意義みたいなのはたぶん、流行ろうがすたろうが無関係に、がっつり見据えていくべきものだという確信はあります。
ありますっていうか、この記事書いている過程で、得ました。
Facebookの公開グループ「Digital Humanities in Japan」が立ち上がったのは、2015年。
・Digital Humanities in Japan
https://www.facebook.com/groups/758758500904522/
・「西洋史DHの動向とレビュー : 外国(史)研究者としてDHの情報にどのように触れるのか」
http://www.dhii.jp/DHM/dhm45-1/n2-weu_review/n1
NDLの菊池さんが、2015年3月シカゴでのCEAL・NCCから帰国後に作成した、と上記『人文情報学月報』045の記事には書いてあります。「日本でどのようなDHの研究者がおり、どのような研究が行われて、そしてどのような浸透を見せているのかあるいはいないのか」、「国内外の日本研究とDHの情報共有」という所期の目的の通り、国内外の様々な人たちによる情報交換が行われるばとなっていますので、”デジタルヒューマニティーズ”×”日本研究”を云々するならまずこれ言及しなきゃだなって思たです。
もうひとつの例、これは、「オープンサイエンス」という語で称されるものですが。
・「openscience.jp」
http://openscience.jp/
・オープンサイエンスに関する情報を海外へ発信するポータルサイト「openscience.jp」(記事紹介)
Posted 2016年3月30日
http://current.ndl.go.jp/node/31184
筑波の池内さんが立ち上げたポータルサイトで、2016年。「日本のオープンサイエンスの取組みや情報を海外に向けて発信する」とのことで、「研究データのオープン化,オープンアクセス(OA),リポジトリ,オープンエデュケーション・トレーニングなどに関する英語の情報を中心に」というんですが、印象深いのがブログ記事のほうで、
・「日本のオープンサイエンス情報ポータル”openscience.jp”公開」. IKEUCHI UI
2016/03/29
http://oui-oui.jp/2016/03/osjp/
「これまで,自身の研究は国にかかわらず研究データ共有やオープンサイエンス全般を対象としてきました・・・しかし,2016年3月に東京で開催された研究データ同盟(Research Data Alliance)第7回総会に参加してみて,もっと日本の情報を海外に伝えなければと感じたためサイトを作成しました」
日本から海外への”情報発信”について考えさせられるには充分なコメントだと思いました。それは1例目も2例目もマインドはざっくり同じことだと思います。
2例目にして人文学じゃないじゃん、って思われるかもしれませんが、正直、そこはどっちでもいいじゃないかしら、というくらいには”デジタルヒューマニティーズ”のことをあんまちゃんとわかって、文理はともかく、学術とデジタルが(単なる媒体変換をこえて)掛け合わさったときに、どうなの、どうなるの、どうするの、ひるむのか立ち向かうのか乗っかるのか一足飛びに飛躍するのかパラダイムシフトするのか、ていうことが問われてるんだろうな、っていう理解でいます。
・日本デジタル・ヒューマニティーズ学会論文誌
『デジタル・ヒューマニティーズ』に関する規定
http://www.jadh.org/jjdh
「1.発行の目的
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会論文誌『デジタル・ヒューマニティーズ』(以下、本論文誌)は、デジタル技術をはじめとする情報学の成果を活用することで人文学の知見をより深め、さらにはそれを通じて情報学そのものに貢献することをも視野に入れつつ、これを以て人類文化の発展に寄与することを目指す研究のための議論の場とする。」
デジタルヒューマニティーズとは。デジタル・情報学を活用して人文学を深める、からの、情報学へも貢献する、からの、世界人類のために寄与する、というのがたぶん教科書的な理解っぽいですが。
これも手前勝手な理解ですが、”デジタルヒューマニティーズ”を大きく分けて2方面(いや多分もっとあるだろうけどとりあえず2方面として)で言うと、ツールとして資料を開放するよっていうのと、研究のあり方そのものを開放するよっていうのの2方面、じゃないかなって思ってます。もちろん両者はつねに交わり合うですが。
デジタルがヒューマニティーズの資料を開放する例。
”在外資料”のデジタル化のところにもたくさんありましたが。
まず資料・データ編。
・Japanese.gr.jp
近藤みゆきほかによる。近藤みゆき. 『王朝和歌研究の方法』. 笠間書院, 2015.は、古典文学作品のテキストデータをコンピュータ処理で加工整理して立論するという文学研究を実践。その研究で使ったテキスト、論文、研究データ、ツールなどをサイトでオープンに公開して、”エビデンス”を示している、というオープンサイエンスな感じ。
・コーパス・データベース@国立国語研究所
https://www.ninjal.ac.jp/database/
収集した言語資料・音声資料をコーパスやデータベースとして整備し公開するもの
・NIIデータセット
http://www.nii.ac.jp/dsc/idr/datalist.html
・国文研オープンデータ
http://codh.rois.ac.jp/char-shape/
・日本古典籍データセット@国文研
https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/data_set_use.html
国文研の例はもちろん項をあらためることになるでしょう。
テクノロジー&標準化(交換可能化?)編。
・・Unicode
・高田智和, 矢田勉, 斎藤達哉. 「変体仮名のこれまでとこれから : 情報交換のための標準化」. 『情報管理』. 2015, 58(6), p.438-446.
Unicodeに変体仮名が登録される見込み。
・・TEI(Text Encoding Initiative)
・永崎研宣. 「デジタル文化資料の国際化に向けて : IIIFとTEI」. 『情報の科学と技術』. 2017, 67(2), p.61-66.
・『人文情報学月報』 http://www.dhii.jp/DHM/dhm62-2
テキスト資料を効果的に共有するためのルール、ガイドライン。1987年から欧米で、デファクトスタンダード。そのTEIコンソーシアムにEast Asian/Japanese分科会が2016年6月設置され、日本語によるテキスト資料をデファクトスタンダード下で共有できるようにすることを目指す。
・・IIIF(International Image Interoperability Framework)
・「仏教関連の図像データベースがIIIF対応で公開されました。」 - digitalnagasakiのブログ
http://digitalnagasaki.hatenablog.com/entry/2016/05/19/033403
大正新脩大藏經図像データベースをIIIF対応で公開。
・・Mirador(IIIF対応ビューワ@ハーバード)
・2016年6月、AASinAsia京都ラウンドテーブルで、マクヴェイ山田久仁子が「Mirador」実演。(古賀崇. 「日本におけるデジタルアーカイブのゆくえを探る:国際的動向を踏まえた,「より深い利用」に向けての展望」. 『情報の科学と技術』. 2016, 67(2), p.48-53.)
永崎さんによれば、「海外の機関から日本文化資料がIIIFに準拠して公開されている例は多く見ることができる」(永崎研宣. 「大学図書館とデジタル人文学」. 大学図書館研究. 2016, 104, p.1-10.)らしいので、矢印の向き方を問わずに資料を通わせ合えるデジタルヒューマニティーズって、いいね、って思いますね、その解放具合はやっぱり単なる媒体変換なだけでは起こらなかっただろうなと思うので。
で、日本から解放/開放されたデジタルな資料を使っての、日本研究@海外での活用編。
大量のかつ意味のあるテキストデータという意味では、青空文庫なんでしょうか。
・「Digital Japanese Literature: Aozora Bunko」
http://darthcrimson.org/digital-japanese-literature-aozora-bunko/
・「Aozora Search Site」
http://snort.uchicago.edu/philologic/aozora/
シカゴ大学のThe ARTFL Projectによる。
・イェール大学図書館Digital Humanities Lab
「The Kan'ichi Asakawa Epistolary Network Project」(朝河貫一書簡のデジタル化プロジェクト)
http://web.library.yale.edu/dhlab/asakawaproject
活用のされ方@海外日本研究、を見ていくにつれ、先ほどの2方面でいうところの「研究のあり方そのものを開放するよっていうの」のほうがだんだん視界開けてくるな、ていう感じになります。
その1、それはたぶん、デジタルが単なる媒体面での解放/開放なだけでなく、デジタルによって”コラボレーション”が可能/容易になっていく様子なんじゃないかなって思います。
・エモリー大学「Japanese Language Text Mining: Digital Methods for Japanese Studies」
http://history.emory.edu/RAVINA/JF_text_mining/Japan_text_workshop_CFP.htm
日本語テキストのテキストマイニングを、デジタルヒューマニティーズ&学際的な共同研究でやるよっていう企画。関わってくるのは、青空文庫、コーパス、ウェブツール、OCR、古典文学などなどという感じ。
・「イベントレポート(2) シンポジウム「Digital Humanities & The Futures of Japanese Studies」」. 『人文情報学月報』 http://www.dhii.jp/DHM/dhm44-2/n3-event/n2
・Symposium: Digital Humanities & The Futures of Japanese Studies
https://www.si.umich.edu/events/201503/symposium-digital-humanities-futures-japanese-studies
2015年3月にミシガン大学アナーバー校で開催されたシンポジウムで、デジタル・ヒューマニティーズが「日米間の国際的な共同研究の実現に寄与する可能性」を論じようというもの。
「日米間の“long-distance collaborative enterprise”の実現は、今後のデジタル・ヒューマニティーズ研究の主要課題となり得る」
「日米の日本文学研究者が、Web上に構築された何らかのプラットフォームを利用して、式亭三馬や上田秋成の作品解釈について意見を戦わせ、共同で研究を進める−そうした状況を形作るための情報環境の構築が今後求められる」
このミシガンのシンポジウムでも、立命館ARCの赤間先生がARCモデルを紹介してらしたみたいなんですが、”在外資料”のデジタル化事業もまたこの”デジタルヒューマニティーズ”×”コラボレーション”の申し子みたいなところのあるあれなんで、このへんはもう項というかキーワードがweb状にリンクし合いますね。(なのでほんとはこうやって項を分けつつ書いていくやりかた、正直むつかしいw)
そして”活用”や”コラボ”の例をざっと見てきましたけど、なんとなく通底しているものがあるよなっていううふうに思うのが、「研究のあり方そのものを開放」のその2、でして、デジタルヒューマニティーズは資料を媒体的に開放するだけでなく、コラボという意味でオープンにするだけでなく。日本研究を「日本における日本研究」という特有の文脈やお作法から解放して、研究手法や手続きや前提やそういったもののないフラットなところで研究可能なものにしてくれる、んじゃないかっていう。
これはたぶん、そのうち別項が立つ「日本研究とは」という問題そのものになるんだけど、でも繰り返しでもいいからこの流れでここにも書いちゃうんだけど。
日本における、日本の文脈とお作法に従った、日本研究。というものがあったんだとしたら、おそらくデジタルヒューマニティーズはそれを、デジタル方面やコラボ方面や海外方面からの攻めによって、ぶんぶんと解放してくれるんじゃないかっていう。
日本資料・日本情報がデジタル媒体になると、いろんなところに届く、その届き先のことをもはや、“日本研究”ってどっからどこまでですっけ?なんて線引きすることに意味はなくなる。たんに「遠隔地(海外)であるが日本研究」、ではなくて、どの分野どの地域のどのような研究手法・文脈であっても、日本語の/日本で生産された資料・情報が必要なところへ届き、日本の文脈とお作法とは関係のないところでそれを使った研究がおこなわれる、っていうかおこなうことが可能になる。
デジタルヒューマニティーズって、そういうことなんじゃないかな、って思います。思いますっていうか、「そうじゃないよ」ってたとえ言われたとしても、今後の自分はそういうことだと思うことにします宣言です。思うことにします会見です。
そこへいくと、さっき青空文庫を使った例がたくさんでてましたけど、国文研さんから古典籍のオープンデータが世界にガンガン出てったらいったいどんなロングシュートが決まるんだろう、ってすげえワクワクしてます、そこには期待しかない。
だって国文研さんのあの事業は、単なる資料の大規模デジタル化じゃなくて、「国際共同研究ネットワーク構築計画」、しかも多分野融合の、ですし。
最後に、永崎さんの論文より。
・永崎研宣. 「大学図書館とデジタル人文学」. 大学図書館研究. 2016, 104, p.1-10.
「特に米国ではデジタル人文学と図書館がかなり緊密に連携している」「これらの組織(NCC、CJM)が近年デジタル人文学に力を入れるようになってきており」「サブジェクト・ライブラリアンがデジタル人文学に取り組むという形は、日本研究においても徐々に広まりつつある」
ウェブ・スケール・ディスカバリー(WSD) #2017年の本棚の中のニッポン
いわゆるウェブ・スケール・ディスカバリー、これこそ、海外の研究者や学生のふだん目にしているところであり、ひとつの”ポータル”と考えてそこを介して”情報発信”することの意味の大きさ、みたいのはあると思うのですが、それはアメリカの下記の調査でもわかってて、
・「Ithaka S+R US Faculty Survey 2015」
http://www.sr.ithaka.org/publications/ithaka-sr-us-faculty-survey-2015/
研究者がどこから研究をスタートさせるかについて「図書館のサイトやカタログから」と答えている人の割合が、2015年にぐっと上昇してるという。
ところが、海外の学生・研究者のみなさんがいつも目にしているというそのウェブ・スケール・ディスカバリーにおいて、日本製のコンテンツがヒットしない、という話については、これはまるごと飯野さんにおまかせしますという感じで。
・飯野勝則. 「CA1827 - ウェブスケールディスカバリと日本語コンテンツをめぐる諸課題―海外における日本研究の支援を踏まえて」
No.321 2014年9月20日
http://current.ndl.go.jp/CA1827
・飯野勝則. 『図書館を変える! : ウェブスケールディスカバリー入門』. 出版ニュース社, 2016.
・飯野勝則. 「海外日本研究に忍び寄る危機:学術情報サービスの視点から」. 『リポート笠間』. 2016, 61, p.94-96.
2014年9月当時のカレントアウェアネスの記事においては、アリゾナ州立大学のWSDで「枕草子」を検索すると、上位を中国語コンテンツが占める。中国語コンテンツが76%、日本語コンテンツが13%。Googleで検索結果の上位にかからないことと同じ状況が、欧米のアカデミックな世界で起きている、と。
同様の指摘についてヨーロッパから。
・Kamiya Nobutake, Naomi Yabe Magnussen. 「Case study : CiNii's Japanese language bibliographies in Primo Discovery system : at Zurich and Oslo University Libraries」(EAJRS2015年次集会). 2015.9. https://perswww.kuleuven.be/~u0008888/eajrs/happyo/Magnussen_Naomi_Yabe_15.pdf
2015年チューリヒ大学では、「夏目漱石」で検索すると、中国の論文情報が上位にヒットする。同じく2015年オスロ大学では、「夏目漱石」で検索すると、日本の論文情報が上位にヒットする。
この手のお話は時々刻々と状況が変化していくものなので、飯野さんのアラートによって改善はしていってるものと思うのですが、基本的な考え方としての、WSDは日本の大学図書館に導入が進みつつあるものの、日本製コンテンツにかかわる発信についての理解が進んでいない、というのは、知識情報を輸入はするが輸出はしないという根本的な日本側の考え方を問われているようなあれです。
同志社のシンポジウムで北米ライブラリアンがあげた日本製の電子書籍プラットフォームは、EBSCO・NetLibrary、丸善eBook、JapanKnowledgeという感じで、数万冊近い電子書籍が入っていたりするようですが、”存在だけ”していてもどうやらダメなようで、メタデータやアブストラクトが弱かったり不足したりしているとディスカバリーで上位に表示されにくいとか、全文へのURLがあるのとないのとでは、強力な統合的e-resourceプラットフォームがあるのとないのとでは、存在はしていても流通が乏しい、目に触れない、的な話を聴いていると、これもうまんまSEOの話なんだな、っていう理解になるし、実際、「欧米を中心とした海外の出版社は、学術雑誌や図書、データベースの販促ツールとして、これらの項目を含んだ書誌レコードを熱心に作成する傾向にある」らしいので、もっと我々界隈こぞってSEO(Search Engine Optimization)ならぬWSDO(Web Scale Siscovery Optimization)を考えていかなあかんのだな、っていう理解になります。
再掲します。
・東京文化財研究所、展覧会カタログ情報をOCLCで提供 (2016年10月)
「第7回美術図書館の国際会議(7th International Conference of Art Libraries)への参加」
http://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/240626.html
・奈良文化財研究所、全国遺跡報告総覧とWorldCatのデータ連携開始 (2017年2月)
https://www.nabunken.go.jp/nabunkenblog/2017/02/worldcat.html
その他WSD対応関連。
・ディスカバリーサービスSummonに、JapanKnowledge搭載
(2013年6月7日)
・医中誌WebがSerials Solutions社のディスカバリサービスSummonで検索可能に(2012年10月30日 http://current.ndl.go.jp/node/22195)
・ジャパンナレッジのメタデータがEBSCO社のディスカバリサービス“EBSCO Discovery Service”に提供へ(2013年8月7日 http://current.ndl.go.jp/node/24109)
・Serials Solutions社、ディスカバリーサービスSummonの検索対象に丸善の日本語電子書籍コンテンツの追加を公表(2013年10月25日 http://current.ndl.go.jp/node/24675)
・EBSCO社、EBSCO Discovery Serviceに丸善の日本語電子書籍のメタデータの追加を発表(2014年2月19日 http://current.ndl.go.jp/node/25509)
2017年03月01日
デジタル(e-resource)不足 #2017年の本棚の中のニッポン
デジタル不足、特に、日本製e-resource(電子書籍・電子ジャーナル・データベース)の不足については、中国・韓国との対比で語られることが多いのですが。
・「北米大学図書館の日本研究司書の人たちの危機感を実感した話 - digitalnagasakiのブログ」(2016年1月)
digitalnagasaki.hatenablog.com/entry/2016/01/26/175249
台湾・中央研究院の学術書籍をデジタルで即座に入手できた経験から、「米国の研究者業界で、日本研究はおそらくそのような不利な状況におかれている」、と。
・川島真. 「新たなデジタル化時代の中国研究と日本」. 『東方』. 2016.4, 422, p.4-7.
「■情報へのアクセスと発信lまず日本語での発信を」
「中国のCNKIに相当するものを日本はもっているだろうか。CiNiiはもちろんあるが、そこで見られるコンテンツは限定的だ。英語での発信とか中国語での発信が問題になることが多いが、そもそも日本語でさえ情報発信ができておらず、日本国内の学術情報が「閉じた」空間に置かれていることがそもそもの問題で」
「海外の中国研究では、日本の研究が参照されなくなったと言う声を聴くことがあるが、その根本的な問題は日本の、日本語で書かれた中国研究の成果の利用の面で限界が有るからではないか」
「このままでは、日本の研究はそもそもウェブ空間に陳列さえされておらず、日本でも世界でも消賀されないまま検索エンジンにひっかからない空間に留まってしまう。そして、それどころかこちらから学術資源を提供しないということになり、海外の学術資源を得ていく機会をも喪失することにもつながろう」
デジタルで生産していない、発信していない、というだけでなく、購入もしていない、と。
・金文京. 「中国古典文学研究と漢籍データベース検索」. 『日本語学』. 35(10), 2-9, 2016-09
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020947860
「日本では、『中国基本古籍庫』を契約している大学は全国で数校にすぎず、大部分の研究者や学生はアクセスすることができないのである。現在の研究状況から言えば、これでは中国の研究者と同じ出発点にさえ立てないに等しい」
まず学術雑誌の電子化について言えば、紀要はかなり進んだものの、学会誌・協会誌が進んでいないという指摘。
・佐藤翔. 「ビジビリティの王国 : 人文社会系学術雑誌という秘境」. 『DHjp』. 2014, 4, p.18-24.
・佐藤翔他. 「日本の学協会誌掲載論文のオンライン入手環境」. 『情報管理』. 2016.3, 58(12), p. 908-918.
日本の学協会誌とその論文が電子化されていない、特に人文社会系のそれがオンラインで入手できない様を「秘境」と表現した佐藤さんたちが、実際に日本の学協会誌を調査したところ、日本の学協会誌掲載論文のうちオンラインで入手可能なものは人文科学で43.7%、社会科学で51.5%。まだまだだなと見るか、あ、意外と増えたな、と見るかは人によって分かれるかもしれませんが、例えばIthakaの調査を見ると。
・「Ithaka S+R US Faculty Survey 2015」
http://www.sr.ithaka.org/publications/ithaka-sr-us-faculty-survey-2015/
「電子ジャーナルがあったら紙はいりませんか?」の問いに、人文系でも6割近くがいらない、と答えてるくらいに整備されてるんだな、っていうことを考えると、その中にあって日本研究のためのリソースはこう、っていうのはやっぱり格差がかなりありそうだなという感じですね。
電子書籍について、直近では、『情報の科学と技術』に、
・グッド長橋広行他. 「米国大学図書館における電子書籍サービス」. 『情報の科学と技術』. 2017, 67(1), p.19-24.
この投稿論文はおおむね米国事情を伝えるものでしたが、最後の方に「日本の電子書籍への要望」とする章があって、読んでるとまあやっぱり、仕様とか、契約プランとか、内容云々において、売り手と買い手とがだいぶ噛み合ってないなという印象で、これたぶんどっちがどうというわけではなく、強いて言うなら日本の買い手側がきちんと買い手場所を耕せてないのが遠因だろうなと思うんですが、いずれにしろ満足には活用されていないなっていう様子がうかがえます。
他方で同論文中で紹介されている米国のDDA/PDA事情について、このグッドさんは2016年6月の同志社でおこなわれたシンポジウムで、「米国の蔵書担当ライブラリアンはDDA/PDAで選書の仕事がなくなり、かわりにインストラクション活動に時間を使えるようになった」とご紹介になり、一方で日本の本はまだまだ紙を選書せんならんのでそれに時間を使う、っていうことなので、ここにも格差ができつつあるというか、格差の連鎖が起こってるんだなと思いました。(ライブラリアンが選書しなくていいのかどうか?という話はまた別の問題ですが)
そのシンポでも先の論文でも言及されていましたが、日本の電子書籍をEBSCOでDDA導入してみたものの、年間で5冊しか購入実績がない、という。
これは永遠の卵と鶏みたいな話で、使われないから供給されないのか、売られないから導入されないのかですが、まあでも卵鶏言うてる暇あったらどっちかがアクション起こさない限りはどうしようもないので、同志社シンポの今度はアンサーシンポのほうで日本側司書から発言あったように、日本の電子書籍を日本の大学図書館が買わなかったらどうしようもない、そこを我々が耕せてないから、めぐりめぐって、海外の日本研究ユーザに魅力ある電子書籍も提供できてないってことなんじゃないかと思います。
これは丸善eBookでやった実験ですね。
・CA1874 - 大学図書館における電子書籍PDA実験報告〜千葉大学・お茶の水女子大学・横浜国立大学の三大学連携による取組み〜 / 山本和雄、杉田茂樹、大山努、森いづみ
http://current.ndl.go.jp/ca1874
さてじゃあこの電子書籍の利用を促進するのに一役買ってくれるのが、ウェブスケールディスカバリの類なんだろうな、という感じですけど、それはそれでまた項をあらためて。
学術書じゃないほうの一般的な電子書籍が海外に発信されていくかどうか、については、正直あまり詳しくは追えてないんですが、下記のニュース記事を追うだけでも、なんとなく、あ、これそろそろ時間の問題なんじゃないかな、っていう印象を持ちますね。
・メディアドゥ、OverDrive社と戦略的業務提携について基本合意(2014年5月)
http://current.ndl.go.jp/node/26119
「日本コンテンツをoverdrive経由で海外図書館に配信」
・「メディアドゥ、日本の様々な書物を英訳する官民連携のプロジェクト「JAPAN LIBRARY」で英訳された電子書籍を、米・OverDriveを通じて、海外の電子図書館へ」
Posted 2016年2月9日
http://current.ndl.go.jp/node/30690
・「株式会社メディアドゥ、米国OverDrive社と提携して実施している日本のデジタルコンテンツの海外電子図書館への配信について、配信館数が100館を突破」
Posted 2016年4月19日
http://current.ndl.go.jp/node/31386
「購入されたコンテンツの主なカテゴリーは、英語に翻訳されたマンガや日本語のマンガ、日本語の文学作品や、絵本とのことで、配信対象館としては、米国のロサンゼルス公共図書館、米国陸軍図書館、ハワイ州立公共図書館などのほか、カナダのカルガリー公共図書館やブリティッシュコロンビア図書館など」
・「メディアドゥ、海外電子図書館への日本コンテンツ輸出が加速。配信図書館数が100館を突破」(株式会社メディアドゥ, 2016/4/19)
http://www.mediado.jp/service/1340/
・「電子書籍取次のメディアドゥ、同業を買収 80億円で」
2017/2/28 0:01 日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13449860X20C17A2TI5000/
出版デジタル機構を買収。「取り扱う電子コンテンツの幅を広げる。海外に日本のコンテンツを配信する事業も強化したい考え」
・「講談社、ミリオンセラー無き増益 デジタルで稼ぐ」
2017/2/21 18:11 日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21HLH_R20C17A2000000/
「紙の不振をデジタルで補うという構図が鮮明になった講談社。だが、今回の決算で注目すべき点がもう一つある。海外版権ビジネスだ。売上高の絶対額こそ36億円と小さいが、前の期からの伸び率は16%に達した。」
「講談社は14年に米国に電子書籍の配信子会社「講談社アドバンストメディア」を設立した…「進撃の巨人」など日本でヒットした作品の英語版の配信」
ポータル+情報発信 #2017年の本棚の中のニッポン
日本のデジタルアーカイブについて海外の日本研究関係者からいつも定番のように指摘される、その代表的なののひとつが、たくさんあってあちこちに散らばっている、”ポータル”がない、というものです。日本に来て説明されてその存在をはじめて知ったと言われるのも、EuropeanaでJapanが検索されてるのも、日本の浮世絵を探すのに日本のサイトではなくUkiyo-e.orgやメトロポリタンがよく使われるのも、要はそれっていう。ポータルが待望されてる、日本版Europeanaが待望されているという。
これもやはり日本のユーザにとっても同じ問題ではありますが。
日本のデジタルアーカイブでその”ポータル”的な存在として知られているのが、NDLサーチさん、NihuINTさん、国文研さん、立命館ARCさん(浮世絵ポータルデータベース49万点(!)。古典籍ポータルデータベース8.7万点)、あたりでしょうか。CiNiiも入れていいですか、”デジタルアーカイブ”や”ポータル”の定義を取り立てて気にしなければいいですよね。
ポータル同士の連携の例。
・CiNii Books、国立国会図書館デジタルコレクションとの連携機能を追加
Posted 2016年12月1日
http://current.ndl.go.jp/node/33024
「国立国会図書館デジタルコレクションの電子リソースのうちCiNii Booksとひも付けられた約76万件のデータへのリンクがCiNii Booksの検索結果画面に表示される」
・CiNii Books、HathiTrust Digital Libraryとの連携機能を追加
Posted 2016年11月4日
http://current.ndl.go.jp/node/32867
「HathiTrust Digital Libraryの電子リソースのうち、CiNii Booksと紐づけられた約28万件のデータへのリンクがCiNii Booksの検索結果画面に表示」
それから、日中韓でポータル作ろうよ、ってまもなく(2017年9月)公開予定であるという国際連携なポータルがこれですと。
・E1885 - 第6回日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)会議<報告>
2017.02.09
http://current.ndl.go.jp/e1885
「メタデータ集約型の検索システムとして・・・3か国のデジタル化資料を統合的に検索可能とすることを目指している」「“CJK Digital Library”(β版)を2017年9月に正式公開する計画」
ただ、これまでEuropeanaほどの決定打はなかった。
というところへきて、いま現在具体的に検討が進められているのが、NDLサーチからの、ジャパンサーチ(仮)である、という感じです。
・デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会、実務者協議会及びメタデータのオープン化等検討ワーキンググループ(内閣府知的財産戦略本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/index.html
・「NDLサーチの歴史と今後」小澤 弘太
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/lff2016_forum_search1.pdf
2015年から、この長い名前の実務者協議会で、まあものすごおおおくざっくり言えば「日本版Europeana」の構築の検討が進められているわけなんですが、まあ現実的な解として、NDLサーチが国内のデジタルアーカイブの統合ポータルサイトとしての役割をしてね、それを「ジャパンサーチ」と呼ぼうね、と。「世界に向けて我が国のメタデータを流通・発信」と、「多様な分野のコンテンツへのアクセス、所蔵情報をわかりやすく伝える」と、そして2020年がめどですよと。言うことなんで、あれですね、もう「できます」でいいんですよね多分。
ただ、自分もここで何か話しろってお座敷がかかって、そのときに考えたことを言ったんですけど、
・「「野生のニッポンが飛び出してきた!」 -- デジタルアーカイブと海外の日本研究とをからめて考えたこと: egamiday 3」
http://egamiday3.seesaa.net/article/440674083.html
海外のユーザが日本の資料にアクセスするということを考えたときに、「ここが日本のポータルです、だからここに来て下さい」って言って、それで客が来るかっていったらそうは来ないと思います。もちろんポータルないのは問題だし、あってほしいし、あったら来る人がいるにはいるだろうけど、それで来るのはやっぱり「わかってる人たち」であって、それだといまの状態とあんまかわんない。
ひとつには、日本研究が退潮傾向とか日本経済と国際社会における存在感が低迷しつつあるとかジャパンパッシングだとかナッシングだとかの状態で、「ここが日本のポータルです」にそこまでの集客力があるとは思えない、それで、わーい日本だーっ、たのしーっ、って自分からわざわざそのサイトに足を運んでくれるフレンズは、世界の本当にごく一部の存在です。そこだけを相手にするの?という問題。
もうひとつは逆に、日本資料・日本情報を必要としているユーザ(もしくはまだ必要という意識はないけど見つけたらうれしいと思ってもらえるかもしれない潜在的なユーザ)は、決して日本専門家だけではないし、日本リテラシーが高いわけでもないし、意識が日本に向いているわけですらない、他分野・他地域・他業種のユーザ、初学者・入門者、一般ユーザ、潜在的ユーザ、そういう人たちに届けようと思ったら、「ここに来い」って言って来るのを待ってても、来たくても行きづらいかもしくは来るつもりがないわけなので、こっちから向こうの視界内に届けていく、飛び込んでいかないとっていう。
ポータルのデータを外にさらす。ユーザが目にするいつものところに送る。そのいつものところとは、Googleかもしれない、OCLC、Wikipedia、ウェブスケールディスカバリ、Amazon、各種SNSかもしれない、Europeanaその他の国際的なポータルかもしれない。そういうところに。
たぶんジャパンサーチみたいなポータルを作るときって、技術的にそういう仕組みももちろん考えてはるんだろうとは思うんですけど、なんかその印象が薄かった印象があったので、念のためにそこ重視でお願いしときました。
例えば、EuropeanaでJapanが4位とかHokusaiが6位とか言うじゃないですか。
・2013年にEuropeanaで最もよく検索された語の第4位に「Japan」
http://current.ndl.go.jp/node/25193
・2016年にEuropeanaでよく検索された語のランキング:第6位に“Hokusai”(葛飾北斎)
http://current.ndl.go.jp/node/33153
じゃあ、Europeanaさんに平身低頭してどうかひとつとお願いして、Europeanaで何か検索したらその結果表示画面の横っちょに小さく「このキーワードでのジャパンサーチのヒット数は○件」って表示させてもらう、とかやったらいいんじゃないかっていう。
これもJAL研修の提言で出てた話なんですけど、「Artstor」(http://www.artstor.org/)っていう美術教育のための国際的なポータルサイトがあって、大学さんとかで契約してると学生さんが検索して美術作品のイメージデータを見つけられるっていうシステムらしく、でもそこに載っている日本美術作品は日本の機関からの提供データじゃなくて大英博物館とかそういう海外の機関が所蔵する日本美術ばかり並んでるっていう話があって、届け先としてはそっちの方が先だなって、日本の美術作品を検索するときだけジャパンサーチのほうにわざわざ来いよ、っていうのはありえんよな、って思たです。
ポータルから少しづつ離れていきますけど、そういうことをしてはるところの事例。
・JapanKnowledgeとJK BooksのメタデータをWorldCatで提供へ
Posted 2014年3月31日
http://current.ndl.go.jp/node/25797
「OCLCはネットアドバンス社と提携し、JapanKnowledge(ジャパンナレッジ)とJK Books(ジャパンナレッジ電子書籍プラットフォーム)のメタデータをWorld Catに追加する」「メタデータは、3月末にリリースされる、“WorldCat Discovery Services”で利用できるようになる」
・全国遺跡報告総覧、ProQuest社のディスカバリサービスSummonに対応
Posted 2015年9月8日
http://current.ndl.go.jp/node/29385
・CiNii Books、全国遺跡報告総覧とデータ連携開始
Posted 2016年3月23日
http://current.ndl.go.jp/node/31083
・東京文化財研究所、展覧会カタログ情報をOCLCで提供 (2016年10月)
「第7回美術図書館の国際会議(7th International Conference of Art Libraries)への参加」
http://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/240626.html
「東京文化財研究所は、本年度このOCLCに、日本で開催された展覧会の図録に掲載される論文情報を提供することになっており、来年度にはこうした当研究所のもつ情報が世界最大の図書館共同目録「WorldCat」や、OCLCをパートナーとする「Art Discovery Group Catalogue」で検索することができるようになります」
・奈良文化財研究所、全国遺跡報告総覧とWorldCatのデータ連携開始 (2017年2月)
https://www.nabunken.go.jp/nabunkenblog/2017/02/worldcat.html
OCLCのセントラルインデクスに奈文研がデータを提供して、WorldCatで全国遺跡報告総覧の検索・リンクができる。
「WorldCatの検索結果画面から奈良文化財研究所の全国遺跡報告総覧に画面遷移し、収録する発掘調査報告書の PDF をダウンロードできる」
(「「全国遺跡報告総覧」は、埋蔵文化財の発掘調査報告書を全文電子化して、インターネット上で検索・閲覧できるようにした“電子書庫”です。「総覧」は、全国遺跡資料リポジトリ・プロジェクトによって構築された遺跡資料リポジトリ・システムとコンテンツを国立文化財機構 奈良文化財研究所が引き継ぎ、運用しているものです」)
最後の2つ、東文研と奈文研のOCLCとの連携の話なんかは、もっと大騒ぎに評価されてもいいのになって思いますね。best practice行きとして、うちとこもがんばらせていただきます。この流れ、来い、っていう。
最後に。
”在外日本資料”と”ポータル”を絡めて言うと、日本資料のポータルがあれば、海外にある日本資料を日本のユーザが探しやすく/気づきやすくなる、という利点もあるわけです。いまだとそれをわざわざそのサイトかあるいは海外のポータルに探しにいかなきゃいけないんだけど、日本のふつーのユーザが日本資料探すのに海外サイトに行ってみようって思うかというと、それはなかなかないだろう、でも日本資料ポータルがあれば、在外日本資料がそういうユーザの目にも触れるようになる。ていう。
デジタルアーカイブ #2017年の本棚の中のニッポン
と言いつつ、デジタルアーカイブの問題は全般的にひろく影響する話なので、各論で追々、むしろこのような単体の項目で触れるようなことはごく少ない感じ。
日本のデジタルアーカイブについて海外の日本研究関係者からいつも定番のように指摘されるのが、足りていない、わかりにくい、見つけにくい、たくさんあってあちこちに散らばっている、”ポータル”がない、”英語”がない、オープンでない(海外からアクセスできない)、云々。
その指摘のいくつかは、項をあらためつつ。
例えばEuropeanaの検索語ランキング記事を、どこまで真に受けるかは別として、こういうのを見る限り「需要はある」はずなので。
・2013年にEuropeanaで最もよく検索された語の第4位に「Japan」
http://current.ndl.go.jp/node/25193
・2016年にEuropeanaでよく検索された語のランキング:第6位に“Hokusai”(葛飾北斎)
http://current.ndl.go.jp/node/33153
それでもこれらの指摘っていうのは海外のユーザがどうっていうよりは、そもそも我々日本側だって不満は同じことのはず。
例えば、海外から日本研究関係者に来てもらって”研修”をする、というようなことをやってるところに立ち会うことがよくありますが、その時にみなさんがうれしそうに、「日本に来て、話をきいて、はじめて、こんな素晴らしい役に立つデジタルアーカイブがある、っていうことを知った」っておっしゃるんだけど、それどうなんだろう、という話ですよね。なぜいままで知られてなかったんだと。
一方で日本側には、デジタルアーカイブの紹介はもういつもやってるはずなので、これ以上何を話したらいいかわからない、と悩む方もいらっしゃる。
そういう意味では、Googleでヒットさせるという可視化はもちろんなんだけど、それだけではなく、生の資料そのものをアクセス可能化することに加えて、それがどういう資料で、どういう意味を持ってて、どういうシーンで意味を持つ・使えるものなのか、っていうのを解説・解題・キュレーションしないとなっていう。
・デジタルアーカイブの「Googleやさしい」は、実際どこまで効果ありなのか: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/446484829.html
それは、NDL研修受講者の人が「授業で使えるデジタルアーカイブがあるとわかったので、日本関係の授業で教えるときに使う」とおっしゃったのとか、同じく「研究者の人がなぜこれを作ったのかやこれを使うとこういうことがわかると説明してくれた」とおっしゃったのとか、JALアンサーシンポでフロアの方が「かみくだいたかたちでの発信が必要」とおっしゃったのとか、情報メディア学会のパネルで紹介された下記のシリーズ、
・“それいけ! デジコレ探索部「第1回 知られざる桃太郎」”. ITmedia eBook USER. http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1406/20/news037.html.
は、残念ながら終わっちゃってますけど、最近首都の大学のデジタルアーカイブな先生が、古写真を色づけするのを紹介するツイートを継続的にやってはって、
・「1945年3月19日の呉空襲。午前7時半ごろ、米軍機から撮影された複数の写真を合成しパノラマ化したもの。ニューラルネットワークによる自動色付け。元写真はこちらから。」
https://twitter.com/hwtnv/status/828730315656998912
資料の内容や魅力や意味を人の手や目や言葉を介して、初学者や学部学生のような立場の多くの人たちに向けて。こういうのが、ていうのがこういうのこそ、そもそも我々がこれまでやってきたことだし、やるべきことをちゃんとやるということじゃないかな、って思たです。
あと、がらっと話変わって、NDLの図書館向けデジタル送信サービスが海外向けにサービスできてないっていうのは、ちょっとづつ前進しつつあるらしい、っていうのが2017年2月末日現在の状態です。
・2/24開催「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(案)」でNDL送信サービスに「外国の施設を追加する法改正が求められる」と言及。
http://www.marumo.ne.jp/junk/culture_copyright_law_and_basic/2017_02_24_06th/04_doc02.pdf
その他の問題は、各論で追々。
日本のデジタルアーカイブについて海外の日本研究関係者からいつも定番のように指摘されるのが、足りていない、わかりにくい、見つけにくい、たくさんあってあちこちに散らばっている、”ポータル”がない、”英語”がない、オープンでない(海外からアクセスできない)、云々。
その指摘のいくつかは、項をあらためつつ。
例えばEuropeanaの検索語ランキング記事を、どこまで真に受けるかは別として、こういうのを見る限り「需要はある」はずなので。
・2013年にEuropeanaで最もよく検索された語の第4位に「Japan」
http://current.ndl.go.jp/node/25193
・2016年にEuropeanaでよく検索された語のランキング:第6位に“Hokusai”(葛飾北斎)
http://current.ndl.go.jp/node/33153
それでもこれらの指摘っていうのは海外のユーザがどうっていうよりは、そもそも我々日本側だって不満は同じことのはず。
例えば、海外から日本研究関係者に来てもらって”研修”をする、というようなことをやってるところに立ち会うことがよくありますが、その時にみなさんがうれしそうに、「日本に来て、話をきいて、はじめて、こんな素晴らしい役に立つデジタルアーカイブがある、っていうことを知った」っておっしゃるんだけど、それどうなんだろう、という話ですよね。なぜいままで知られてなかったんだと。
一方で日本側には、デジタルアーカイブの紹介はもういつもやってるはずなので、これ以上何を話したらいいかわからない、と悩む方もいらっしゃる。
そういう意味では、Googleでヒットさせるという可視化はもちろんなんだけど、それだけではなく、生の資料そのものをアクセス可能化することに加えて、それがどういう資料で、どういう意味を持ってて、どういうシーンで意味を持つ・使えるものなのか、っていうのを解説・解題・キュレーションしないとなっていう。
・デジタルアーカイブの「Googleやさしい」は、実際どこまで効果ありなのか: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/446484829.html
それは、NDL研修受講者の人が「授業で使えるデジタルアーカイブがあるとわかったので、日本関係の授業で教えるときに使う」とおっしゃったのとか、同じく「研究者の人がなぜこれを作ったのかやこれを使うとこういうことがわかると説明してくれた」とおっしゃったのとか、JALアンサーシンポでフロアの方が「かみくだいたかたちでの発信が必要」とおっしゃったのとか、情報メディア学会のパネルで紹介された下記のシリーズ、
・“それいけ! デジコレ探索部「第1回 知られざる桃太郎」”. ITmedia eBook USER. http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1406/20/news037.html.
は、残念ながら終わっちゃってますけど、最近首都の大学のデジタルアーカイブな先生が、古写真を色づけするのを紹介するツイートを継続的にやってはって、
・「1945年3月19日の呉空襲。午前7時半ごろ、米軍機から撮影された複数の写真を合成しパノラマ化したもの。ニューラルネットワークによる自動色付け。元写真はこちらから。」
https://twitter.com/hwtnv/status/828730315656998912
資料の内容や魅力や意味を人の手や目や言葉を介して、初学者や学部学生のような立場の多くの人たちに向けて。こういうのが、ていうのがこういうのこそ、そもそも我々がこれまでやってきたことだし、やるべきことをちゃんとやるということじゃないかな、って思たです。
あと、がらっと話変わって、NDLの図書館向けデジタル送信サービスが海外向けにサービスできてないっていうのは、ちょっとづつ前進しつつあるらしい、っていうのが2017年2月末日現在の状態です。
・2/24開催「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(案)」でNDL送信サービスに「外国の施設を追加する法改正が求められる」と言及。
http://www.marumo.ne.jp/junk/culture_copyright_law_and_basic/2017_02_24_06th/04_doc02.pdf
その他の問題は、各論で追々。