2017年9月9日・10日におこなわれた、アーカイブサミット2017 in 京都についての、ふりかえり記事です。
とはいえ、江上はこの催しに司会&運営、いわゆる”中の人”サイドでかかわっていました関係上、内容のことに触れることはほぼありません。準備期間から当日まで、具体的な内容にがっつり手を染める余裕はほぼ持てなかったし、そうするつもりもなかった(立場上ある程度距離を置いてた)かなという。
おおむね、”中の人”による外枠的なことのふりかえりと感想、考えたこと、という感じです。
●各種リンク
事務局によるオフィシャルな報告書や当日録画が、追ってオフィシャルサイトでオフィシャルに公開されることになると思いますが、まあ零細グループがほそぼそと活動してるあれなので気長にお待ちいただければという感じで、いまのところ下記のものがあるかなっていう。
○公式
・アーカイブサミット2017 in 京都 | 文化資源戦略会議
http://archivesj.net/summit2017top/○Togetter
・#アーカイブサミット 2017 in Kyoto 9/9(土) 1日目 〜ファシグラ、ジャパンサーチ、トレンド〜 - Togetterまとめ
https://togetter.com/li/1149122・#アーカイブサミット 2017 in Kyoto 9/10(日) 2日目 〜ユーザとクリエイターの間で〜 - Togetterまとめ
https://togetter.com/li/1149479○参加者のレポート
下記3点、もうほぼ公式記録でもいいんじゃないかっていう。
・アーカイブサミット2017に参加しました(前編:1日目)
http://www.gojo-partners.com/column-ps/2252/・アーカイブサミット2017に参加しました(後編:2日目)
http://www.gojo-partners.com/column-ps/2275/・[DHM074]人文情報学月報 イベントレポート「アーカイブサミット2017 初日参加記」
http://archives.mag2.com/0001316391/ (なおおそらくこのURLは後日別の記事に書き換わる)
ていうかあれなんですよ、自分が”中の人”サイドであることの一番の難点は、自分自身でツイートしたり記録したりブログ書いたりほぼできないっていうことで、こんなおもろいイベント自分らで企画しといて自分でツイートできないのつらい・・・。
○京都新聞の記事
・(開催前)「眠る文化資源、連携でネット検索容易に 京都、9月サミット開催」
http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20170826000035・(開催後)「活用できるアーカイブへ 京都でサミット」
https://twitter.com/archivist_kyoto/status/909663198390841344○録画
これは参加者さんによる私的録画の投稿です。
事務局によるオフィシャルな録画の公開も近日中にアップロードされるはずです、たぶん。
https://www.facebook.com/michiko.yamakawa.737/videos/1345817035537460/https://www.facebook.com/michiko.yamakawa.737/videos/vb.100003275296119/1343356822450148/https://www.facebook.com/michiko.yamakawa.737/videos/vb.100003275296119/1344163752369455/○グラフィックレコード
1日目セッション(分科会)の各議論をリアルタイムで図示していくというもの、一見の価値あり。
これも事務局によるオフィシャルな画像は追って。
http://twitter.com/egamiday/status/906408195941216257http://twitter.com/egamiday/status/906408441253552128http://twitter.com/egamiday/status/906408876559392768http://twitter.com/egamiday/status/906409146479607808http://twitter.com/egamiday/status/906409263521685504http://twitter.com/egamiday/status/906504322199851010http://twitter.com/egamiday/status/906504765114163205http://twitter.com/egamiday/status/906505037051920394●この催しの趣旨的なこと
この催し(アーカイブサミット)は過去2回東京でおこなわれていたものを、今年は京都でやろうということになったとかで、あたしはその過去2回に参加したわけでもかかわったわけでもなくYoutubeの録画をふんわり見たくらいなので、たいしてその趣旨的なことを理解しているわけでもないです。
ないですが、少なくとも
「わざわざ京都でやる」と言ってこちらにお鉢が回ってくるからにはそれなりの意義というものを設定してしかるべきだと思うんで、それは決して、東京でやってたのをなんとなく場所を変えてみたとか、河岸を変えてみたとか、誰それが言ったからとかいう以上のことは無いとおかしかろう、と。それは単に、古都だから古い資料がのこされている、というような意味にとどまらず、多業種多分野の専門家・専門組織が顔を突き合わせているところであり、国内外各地のハブ的な位置づけであり、大学と寺社と町衆と産業と現場の実践と理論とが入り混じって隣り合わさってるような装いの土地柄で、そういう人たちがフラットに集まってフラットに話し合えたらなんかいいよね、っていう感じがするなって。
古い資料がのこされてるから、イコール、アーカイブ、というわけではなく、なんというか、アーカイブやデジタルアーカイブの話を議論するっていうことは、中身自体の話をするというよりかは、ツールや仕組みを議論するっていうことなわけで。(余談ですが、7月岐阜のデジタルアーカイブ学会に参加したある人が「何をする集まりなのかよくわからなかった」という感想を言ってたという話をきいたんですが、その反応はある意味正しくて、それ自体が何であるかが重要なのではなく、それによって各業種各分野に何がどうもたらされるかのほうが重要な、そういう位置づけだろうと。) なんで、
ツールや仕組みの議論が有効にはたらくには、やっぱり多業種多分野の人たちの、多角的横断的な口出しが、遠慮会釈なくフラットに飛び交うようでないとあかんと思うので、それはたとえて言うならば、近畿地区MALUIの”名刺交換会”が”ひと言もの申し交換会”みたいになるような、そういう議論と共有のためのひとつの「広場」が提供できればいいんじゃないかな、って、これあくまで極々私的にですが、そう思ってました。(過去2回がそうだったかどうかは知らないです、ていうかたぶん違うんでしょう、もしそうなら”サミット”って名称にはならないんじゃないかな)
●状況レビュー(1日目)
ウォーミングアップですよね。特に古賀先生の現場的具体例のヒットパレード的なのが、吉見/生貝の話を強力に繋ぎ止める綱のようで、頼もしかったなという印象です。
●セッション(1日目)
6つの分科会(3併行×2ターン)では、
ファシリテーション・グラフィックとかグラフィック・レコーディングとか呼ばれるものを導入しました。
議論の様子をリアルタイムで、下記のように模造紙に図示していく、というものです。
http://twitter.com/egamiday/status/906408195941216257http://twitter.com/egamiday/status/906408441253552128http://twitter.com/egamiday/status/906408876559392768http://twitter.com/egamiday/status/906409146479607808http://twitter.com/egamiday/status/906409263521685504http://twitter.com/egamiday/status/906504322199851010http://twitter.com/egamiday/status/906504765114163205http://twitter.com/egamiday/status/906505037051920394 こういうことを専門にやってくれる人(グラフィッカー)がいらっしゃるというので、どこからか探し出してきて、お金払ってやってもらう、ていうことをしたわけです。
しかも今回はそのリアルタイムで描くのを、教室の壇上の黒板で、参加者全員の目の前で見えるようにやってもらいました。グラフィッカーの人たちに聴いたところによると、ふだんは参加者の見えるような場所で描くということはほとんどやらないらしく、だいたいは会場の脇のほうで気付かれるか気付かれないかみたいな雰囲気でやることが多い(場合によってはふわっとスルーされる感じ)とかで、いやでもそれっておかしくないか、参加者がリアルタイムに図示を目の当たりにできてこそ、議論がさらに進むという相乗効果が期待できるって感じのシステムなんじゃないの、って思うんで、いやこれは、多少スペース的に無理が生じたとしても教室前方で衆人環視のもとでやってもらいましょうとお願いし、グラフィッカーの人たちもふだんそんなふうに見られながら描くことないから緊張する、みたいに言ってはりましたけど、それでよかったし成功だったと思いますね。
ただ意外だったというか勘違いしてたのが、でっかい模造紙1枚に収まるように描く、のかと思ってたら、中くらいの模造紙に何枚も連続して描く、という感じで、スペース的にも事前準備的にもちょっと無理させてしまったなという感じでしたので、これよそさんで導入する時は事前の打ち合わせはあったほうがいいよなって思いました、今回は結果オーライでしたが、養生テープの可不可とかあると思うんで。(ペンの裏写りは、「まったく大丈夫」らしいです)
あと、さすがにジャパンサーチや情報技術のような話題は相当苦労してはったように思います、内容的にも事前打ち合わせが必要なのは、同時通訳と同じですね。
●セッション・レビュー(1日目)
少人数で密な議論ができる仕組みの「分科会」というものに、かねがね不満があったとするならば、その会に参加しなかった人たちに共有されない、ということで、それはそもそもの趣旨に合ってないだろう、という意味で、もう一回集まり直してのこういうレビューはいい仕組みだなあって思いました。しかもその共有がスムーズに可能なツールとしてのグラフィックレコードであり、それがあるから各分科会のコーディネーターによるふりかえりが容易になり、壇上で掛け合いをかますという意味で、視覚的な効果が生まれてたな、という感じです。
つまり1日目午後は、状況レビュー+セッション+セッション・レビューの3構成がしっかり連結してこそ意味のある催しだったな、といまとなっては思います。
●懇親会(1日目)
片付けしてたのであんま参加してないのですが、考えたこと。
・いやほんとは、この会場にグラフィックレコードを掲示できればよかった。
・ここでもっとじっくり協賛・展示企業さんにスポットが当たればよかった。
・ここでいろんな企業の専門家さんとお話しすると、お酒の勢いもあってかすごく饒舌にいろんなことをしゃべらはるんだけど、翌日のシンポでそれ発言してもらえませんかと水を向けると、おおむねすうっと引かれるのがちょっと残念だった。いや、それごもっともだから、もっとたくさんの人に伝えましょうよ、って思うんですけど、そういう文化な業界とそうでない業界とあるのかな、とちょっと思いました。(ただ、実際にはシンポジウムで時間がなくなってしまい、コメントしていただけなかったみなさんには本当に申し訳ありませんでした、と)
●ミニシンポ(2日目)
ほとんど目撃せず、進行役・登壇者・スタッフのみなさんにおまかせしてました。
後日録画で確認します(そんな状態)。
●挨拶〜基調講演(2日目)
壇上で進行してはいましたが、まあ形式通りにやってたという感じで、あまりこれといった印象はなく。
ただ、御厨先生のようにスライド(視覚情報)なしで言葉一本で人を惹きつけるような噺ができるまでには、まだまだ修行が足りないなと思たです。
●シンポジウム(2日目)
当日直前打ち合わせを、やるやらない、どのようにやる、を直前まで明確に決めきれていなかったのが一番の反省点。打ち合わせじゃなくて顔合わせでいい、適当な駄弁りで構わないから、ウォーミングアップとして大事。
コメント募集について。挙手はもってのほか(あれは危険)。紙のコメント票回収は、スタッフ数が足りなくてできそうにない。で、前からやりたかった「Twitter・LINE・メールで受け取り」を実現しました。ただ、どうだろう、あのやり方でコメント引き出すの難しかったのかもしれないですね。ほんとは、参加者リストからの指名、が一番やりたかったディスカッションのかたちなのですが、時間の問題で実現せずじまいという。
自分自身による2日間のレビューについて、ここでもやっぱりファシリテーション・グラフィックが役に立ちました。あれがなかったら一晩でパワポなんて作れなかったですよねという。
進行としては、1人10分発話×4人、で、あとはフロアとのディスカッションを1時間弱、という心づもりだったのですが。難しいもんですね、前の講演が10分押し、自分の冒頭レビューが10分押し、みなさんの発話を聴きつつフロアからのコメント反応を見ているうちに、あ、これはもうパネリストのみなさんたちにたっぷりしゃべってもらうほうに需要がありそうだな、と判断し、そちらの方針に切り替えました。なので、先述のように本来はフロアにたんまりといる各分野各業界の専門家のみなさんにもの申してもらいたかったのですが、今回はそれがほぼ実現せず、という感じです。そのかわり竹宮先生のお話をみなさんしっかり堪能してくださったようで、それでよかったのだな、とも思いますし、うん、だからこそ、ディスカッションもっと欲しかったなとも思うんです。二兎は追えないものですね。
なお、少しの時間ではありましたが設けることのできたディスカッションのターンについて。司会の立場としてその場でいろいろ進行していた、ように見えていたかと思いますが、実はパネリストの回答についてはほとんど自分の耳には入ってきませんでした。というよりそもそも各パネリストの発話自体も、話半分どころか1割くらいしか把握してなかったと思います。白状すると、意識的にそうしてたという感じです。各者の主張内容そのものを”自分ごと”として理解しようとする、その距離まで近づこうとすると、司会進行としてはおそらくパニクって何もできなくなる。あくまである程度の距離をとって、壇上のパネリストとフロアのオーディエンスのどちらの立場に立つわけでもなく、会場全体(賛同者もいれば反対者もいるし理解できてない人や興味ない人もいる場所)を俯瞰するところに立っておかないと、その後の進行ってたぶんできなくなるので、できるだけ
”他人ごと”として捉える、主張内容を理解するのではなく流れや雰囲気を理解する、賛同か否定かではなくポジティブかネガティブかを、言葉ではなくベクトルを、議論ではなく反応を、因果関係や論理構成ではなく時間の流れと話の切れ目を意識する、というような感じで、どうかすると
あの会場内でいっちばん話を聴いてなかったのは自分じゃないかな、って思ってます。えっと、後日公開されたら録画を見ます(笑)。
●全体を通して
シンポジウムの最後に、質問コメントをほとんど紹介できなくてすみませんでした的なエクスキューズをしつつ、この続きはみなさんが各業界各職場に帰ってからそれぞれの同僚のみなさんと議論してくださいとお願いしました。この類の催しの真の”本番”は、そこにあると思います。このお祭りで、多業種多分野からの多角的横断的な議論と刺激が共有された、そのあとは、
おのおのの現場で日常的にそれをどう反映していくのか、実践していけるのか、ていうかそのためにこそこういうことをやってるわけなんで。
そういった意味でTwitterを拝見しててありがたかったのが、最初のうち #アーカイブサミット のハッシュタグを付けていろいろコメントしてはった人たちが、そのうちすうっと、ハッシュタグをはずしながら自分自身の考えや思いめぐらしをつぶやく、という流れに展開していってくれてはるという様子を目にしたことで、うん、そういうのが増えるのがほんとの成功、タグがはずれてからが本番、だなと思いました。
だから、2日目のシンポジウムにしろ1日目のセッションにしろ、議論に結論を出す必要はないし、シャンシャンと手を打つような終わり方をするつもりも毛頭なかったし、何をする集まりなのかがわからなくていっこうにかまわない、ただただ引っかき回して終わったところでかまわない、そのもやもやこそが翌日からの現場の日常をまわしていく栄養分となるんだったらそれでいいんじゃないかな、って思います。
そういう、もやもや製造広場、みたいなところを”中の人”としては”場”として提供しただけなのですが、みなさんがそこに熱意と協力意識と知見とをたんまりと持ち寄り、好き勝手議論して交流してくださって帰っていってくださったの、なんか奇跡みたいな催しだったな、っていまとなっては思います。
惜しむらくは、司会業としての自分がそういう場で具体的に言いたいことも言えず、歯噛みすることも多いのですが、そのかわり自分の伝えたいことをパネリストやフロア参加者にかわって言わせる、という芸当ができるのもこの立場ならではなので、まあそれはそれでいいかな、っていうふうに呑み込んでます。
●その他
・一度は言ってみたかった、「許可のない写真撮影・録音・録画は、すべて自由です」。
・参加者リストを見てたら、まだ会ったことのないけど名前は存じ上げてるたくさんの人がいたんだけど、ばたばたしててほとんどご挨拶もできなかったのが、とても残念でした。よかったらまたぜひお声掛けください。
・とにかく全体を通して「ジャパンサーチ」への熱が冷めやらずという状態で、容赦なく降り注ぐ矢を臆することなく受け止めに向かうNDL・Tさんの勇姿を見れたのがひとつのハイライトだったんじゃないかと思いますね。
・セッション2-2でスケッチブック大喜利をやってはったのですが、ほんとは2日目シンポジウムでもそれがやりたかったのだな。
・議論の様子について「京都ならではの関係性」に言及してるコメントがありましたが、これについては思わなくはないものの、即断は避けます、中に身を置いていると客観的には考えられそうにないので。
・こういう催しをやってて
コーヒー&スイーツを提供できていないのは、やっぱりかなり痛いという気がする。デジタルアーカイブ学会ではそれをちゃんとやってて、企業展示フロアにコーヒー持ち込んでたから、こちらでもやるべきだった。
とりあえずはこんな感じです。オフィシャルな記録が公開されれば追記するかもです。
おつかれちゃん。