2018年02月14日

「日本文学・国語学の学生のための Digital Humanities 勉強会」 #DH勉強会 を試聴したメモ


「日本文学・国語学の学生のための Digital Humanities 勉強会」
@大阪大学
2018年2月14日
講師:山本和明(国文学研究資料館)、永崎研宣(人文情報学研究所、なお何人目の永崎かは不明)
Ustream中継を視聴
http://nichibunkokugo.blog.fc2.com/blog-entry-48.html

 以下、聴いたことや考えたことのメモ。

・・国文研のターン
・(´-`).。oO(ところで対象は院生以上だったのかしら。学部生だと「卒業後も論文の参照が必要」にピンと来ない人もいるかも。
・(便宜的に言うと)旧目録DBと新DBとがあって、実はどちらも「IKDB」というデータベースが基盤にあり同じものからひっぱってきてるんだけど、新DBは画像を見せることがメインの造りなんだ、とのこと。(´-`).。oO(なるほど、やっとわかった。
・「リアルには並べて閲覧できない本同士を、画像を使ってならべ、比較検討というかたちで研究する」、からの、「デジタル公開されていない資料は今後研究対象にされなくなるのでは」、という流れよ。
・CC-BYについては、古典籍資料はパブリックドメインなだけでは原本へのトレーサビリティが保証できないのでBYが理想、とのこと。
・人文学研究を”検証可能”にするために、DOI。何を見て書いてるんだということを明確に宣言すること、マイクロや紙焼きならそう書けよ、DB見たならそのDB名書けよ、じゃなきゃフェアじゃないだろう、と。
・DB見たならDB名書けよ、は、信頼性と同時に、成果・効果の可視化の問題でもあるという。(´-`).。oO(そこは、それ以外の明確でわかりやすい評価指標がデザインできないか・・・)
・国文研の新DBは、2017年CiNiiで検索可能に。2018年にはジャパンナレッジから検索可能に。
・「誰が撮るのか 撮影機材の開発」。(´-`).。oO(さらっと紹介してはったけど、実務者には実はここが一番切実なテーマなんじゃないかという。
・デジタルアーカイブの維持のため、そして、研究成果の検証可能化のために、提示された利用条件は守りましょう、というような趣旨のことを言ってはった。(´-`).。oO(ここもっと掘りたい)

・・IIIFのターン
・IIIFは、ヨーロッパのリサーチライブラリーが取り組み始めた、デジタル化資料をもっと活用するには、という、図書館による研究支援のためのものなんだよ、ということ。
・同じJPEG画像を見てるはずなんだけど、使い勝手が機関・サイトによってまちまち、という問題を解決する。(´-`).。oO(まあ正直、とんがっててまちまち、っていうこと自体は、それはそれで大事なことだとあたしは思うんですが。それを無下に否定すると新しい芽を摘む感じになると思うので。
・IIIFは枯れた既存技術を使ってるところが、共通規格としての強み。有力機関が多く採用している。
・(´-`).。oO(そっか、IIIF自体がどうかというより、IIIFのための世界的な図書館・文化機関のコミュニティ形成のほうにこそ意味がある、って考えればいいのか。それがあれば”次”や”他”もあり得るってことやからなあ。技術や目前の便利さより、そっちのほうがめちゃめちゃ重要なんじゃないか。
・IIIF云々以前に、そもそもwebっていうのはこういうふうに、同じ規格を使いさえすればコンテンツを自由に参照・利用できる仕組みのはずなんだ、っていう。

 実習のターンは、配付資料も画面もよく見えなかったので、最終ぼーっと聞き流す感じでした。
 ただ、最後の方で学生さん?が講師の進行をさえぎるようにして、「ところでいまのこのツールは何をするために使うものなんですか?」みたいなことを質問してはって、なるほどという感じだった。 自分もぼーっと聞き流しながら、実際の研究シーンがイメージできないとなあ、と思ってた矢先だったので。いずれにしろ、情報を編集したり見せ方を工夫したりというためのツールなわけで、「これさえ使ってれば自然に目的地が見える」というようなものでは決してないのだから、そういう疑問も出るだろうっていう。しかも、そういう疑問を出せる人が、このツールを使いこなし始めた時こそが、(ツールにとってもその人にとっても)本領発揮なんだろうな、という気がします。

 そんな感じです。
 操作実習はtodoリスト行き。

posted by egamiday3 at 20:33| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

問「このレファレンスやりとりに、ダメ出しをしてください」

 
 寄席(という名の司書課程科目授業)にて、大喜利(という名の課題)をしょっちゅうやるのですが、ある時、「このレファレンスのやりとりにダメ出しをしてください」っていうお題を出したら、わりとひととおり言うべきことが出揃ったなという感じになったので、ここに書き残しておくというやつです。

 以下は長い但し書き。
 とはいえ答えをそのまま晒すようなことも憚られるので、こういう内容のダメ出しが出た、っていうのを大幅に自分の言葉で改稿したものです。
 さらに「このレファレンスのやりとり」も、実際にはとあるサイトに紹介記事として掲載されていたやりとりをそのまま見せて”教材”にしたのですが、それをここに、というのもまた憚られるし、ダメ出しの対象としてっていうのはなおさら憚られるので、これもまた流れだけだいたい似せて大幅に改稿したものです。そもそもその「やりとり紹介記事」も実査のやりとりと違いざっくり編集してるやつだろうなんで、それにダメ出しとか大きなお世話だろうとは思うんですが、そこはまあ学生のための教材という趣旨で呑み込んでいただければと。


問: 以下のレファレンスやりとりに、ダメ出しをしてください。

(中学3年生と学校図書館の司書の会話)
生徒「こどもの教育についての本を読みたいんですけど」
司書「こどもの教育ということは、保育士や学校の先生について?」
生徒「虐待の防止のこととかこどもの貧困のこととか、制度を知りたくて」
司書「そういうことなら、学校の図書館よりも市の図書館のほうにたくさんの本があると思いますよ」
(市の図書館のホームページを開く)
生徒「市の図書館の検索もここでできるんですか」
司書「県内の公立図書館の検索は全部できますよ」
生徒「すごいですね、知りませんでした」
司書「とりあえずキーワードを「幼児教育」にして検索してみると、これだけたくさんの本がヒットしますね。
 図書館に実際に行って、300番の棚を見るか、司書の人に尋ねてみてください。」
生徒「わかりました」

答:

・「保育士や学校の先生について?」というような、先走った決めつけるような聞き方はしない。「どんなことが知りたいのか」をきく。
・何について知りたいのかをもうちょっと詳しく質問していいのでは。
・差し支えない範囲で、目的を尋ねる。宿題や授業がらみなのか、自分の興味なのか、相談なのか、ちょっと知りたいだけなのか、どれくらい詳しく知りたいのか。それによって探し方も変わる。
・もしかしたら具体的に"虐待""貧困"で相談したいのかもしれず、場合によっては別の種類のフォローが必要になるかも。

・検索語を「幼児教育」だけしか選んでいない。それだと司書に相談するまでもなく思いつく範囲でしかない。もっと具体的な、あるいは生徒が思いつかない別のキーワードも提案するべき。
・なぜ「虐待」「貧困」というキーワードを使用しないのか。
・そもそも、最初に生徒の口から出た「こどもの教育」というキーワードが、本人の本来の求めと合っていなかったのでは? 自分でも気付いていない本当の要求は何か。
・どういうキーワードがふさわしいかを知るために、もっとインタビューをする。
・「虐待」と「貧困」と同時にキーワードが出るということは、本当は何が知りたいのか? むしろ社会保障などの制度が中心?
・「たくさんの本がヒット」した時点で、その中で具体的にどの本がよさそうかを選んでもらう。

・まず館内の資料の中で探して、なければ他館を頼るのが筋では。
・場合によっては今すぐほしいかも知れないし、ちょっと軽く知りたいだけかも知れない。まず館内の図書でまかなえるかどうかを見てもらうべき。
・まず、今いる学校図書館内の蔵書をブラウジング(またはリストアップ)して、どういう本が生徒のリクエストにもっとも近いか、そういう本にはどんな分類やキーワードでたどりつけるかなどを確認して、それから市立図書館の本を検索すればたどりつきやすいのではないか。またそのほうが、周辺知識や広いカテゴリの概念も理解することができる。
・県内図書館の検索ができるなら、したらよかったのでは。
・検索して結果を見せるより、検索方法を教えてはどうか。

・「300番の棚」という言い方で分かるのか?
・300番だけでは候補が多すぎてたどりつけない。その中でも、さらにどの分類?
・「300番の棚を見るか、司書の人に尋ねろ」という案内は不親切では。もう少し候補をしぼったり、具体的にタイトルをいくつか教えるべき。
・これから市の図書館に行こうとしているのだから、アクセス方法、開館時間、館内の配置図などを一緒に教えるほうがいい。
・市の図書館でのレファレンスの受け方をアドバイスするといい。
・図書の取り寄せを案内するべき。
・貸出中かも知れない。行く前に確認を。
・市の図書館の司書と連携して、このレファレンスを引き継いでもらう。
・生徒のこの反応から察するに、このあと本当に自分で市の図書館に行くだろうか? もうちょっとフォローを。

・「制度を知りたい」と言っているから、市/県/国のwebサイトの方が最新の情報を手に入れられる、と教えるべきでは。
・新聞や市の広報誌を調べる。
・ネット検索の指導もしたほうがいい。

posted by egamiday3 at 19:15| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月09日

極私的・2018年1月のまとめ

極私的・2018年1月のまとめ

●総評:
・風邪をひいて、終わった。それしか言いようがない。

●まとめ:
・後半出版
・ヨーロッパ企画カウントダウン
・「サマータイムマシン・ワンスモア」で変な声出る
・2018年明治の旅
・透明の監獄
・終わらないAS文字起こし
・突然の京都旅行
・兼好法師
・インフルエンザとは何か
・文献選びレビュー
・キレて今から花園大行く
・風呂凍る
・「保存と修理の文化史」
・「騙し絵の牙」
・「忘れられた人類学者(ジャパノロジスト) : エンブリー夫妻が見た〈日本の村〉」
・「不思議の日米関係史」
・絵馬暫定版を掲げる
・「anone」
・「海月姫」
・「わろてんか」昭和芸能史編
・「革命児たち」
・「サブジェクト・ライブラリアン」
・「ポプテピピック」
・「レイチェルのおいしい旅レシピ」
・「また来てマチ子の、恋はもうたくさんよ」

●月テーマ制
※そもそも月テーマ制を採るに至っていない

●2月の月テーマは
・JAL短信棚卸し
・デジタルアーカイブ
・いま忙しいから、忙しくなくなった後のことの準備をいまのうちにしとく
 の3本です。

posted by egamiday3 at 08:02| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月05日

『騙し絵の牙』を読んだメモ


 なんか大泉洋あて書きの小説だって言うから、エンタメ小説だろうなあ、まあ出版業界が題材っていうから適当にふわっと読んでみるかあ。
 と思って読んでみたら、ふわっとどころかかなりがっつり書き込まれた、ほぼリアルタイムの出版事情、ディスカッションに次ぐディスカッション、図書館の電子書籍プランから日本小説の海外販売まで、なにこれガチのやつやん、ってなったので、もはや大泉洋も笑福亭鶴瓶(非公式あて書き)もラストのどんでん返しすらもわりとどうでもいい、出版業界情報やメディア論のあたりをざっとメモしておく、というやつ。(順不同)


・速水は日経による英経済紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」買収の記事を思い出した。…購読者の三分の二以上が海外在住というこの新聞は、いち早く電子化に成功し、電子の部数が約七割を占める。日経と最後まで買収を争ったドイツのメディア企業「アクセル・シュプリンガー」もまた、電子化を軌道に乗せ自社の株価を大幅に上げた。
・「しかし娯楽施設としての図書館の充実は作家にとっては危険だと思うんですが 」「君だってエンタメ産業は時間の奪い合いだということは百も承知だろ。本に接する時間を増やさんことには未来はないぞ。…アメリカを見たまえ。本だけじゃなく、映像 、ゲーム何でも貸し出してるぞ」
・「キングは少年誌ですし、デバイスや課金の問題もあります。紙の読者が自動的にデジタルに移行するとは限りませんので」「いずれにせよ、コミックはデジタルとの親和性が高いんやから、将来性は認めてるよ。問題はやり方や。先手打っていかな、他社の出方を窺ってたら客が離れるで」
・「さっきの定額読み放題って話ですけど、一般書籍も音楽業界みたいにアーカイブ商売になっちゃうかもしれませんよ」…書店は在庫がなければ流れが止まるが、電子は常に売り続けられる。販売方法は複雑になるが、商売の機会が増えると捉えることもできる。
・電子図書館は、未だ閲覧できる書籍が限られているため普及していないが、一部の大手出版社や書店が協力する姿勢を見せている。「貸出が一定の冊数に達すると、いくらか著作権使用料が入るケースもあるそうですが……」「そんな薄利で本当に生きていけるのか? 家にいながらタダかそれ同然で本を借りられるんなら、誰が金出して本を買うんだ」  
・「日本の小説も十分海外に通用すると思ってるんです。今プロジェクトチームをつくって全国紙と組んだり、動画サイトに働きかけたり、少しずつ形にしてるんですが…」…「僕もポイントは翻訳だと思ってます。活字だけでなくいろんな展開を考えても」
・「海外です。日本のコンテンツの需要は十分あります。コミックやアニメは国境を越えやすい性質のものですが、私は何とか小説を売り込めないかと考えております。そこで 、原作の魅力をきちんと伝えられる、そんな優秀な翻訳家との契約を進めております」
・「コンテンツ産業として生まれ変わりたいと思ってます」…ネットが社会インフラとして盤石となる中、あらゆる産業が過渡期を迎えている。エンタメ業界も出版やテレビといった「ハコ」が絶対のものでなくなり、より視聴者や消費者に近いところでの創造が始まっている。
・優秀な編集者やPRのプロをかき集めれば、理論上は他業種の会社が全て自前で本づくりから販売までを賄うことができる。そしてそれは電子書籍を扱う「ウィルソン」(註:Amazon)のような業界内の話に留まらない。速水は「コンテンツ産業に生まれ変わりたい」と語っていた清川(註:パチンコ業界人)を思い出し地殻変動を実感した。
・「ブルーレイが売れれば一番いいんですけど、意外と何とかなるみたいです。海外配信ではアメリカがいいみたいですね。向こうは配信が百%で、ほぼ日本のアニメとタイムラグなく放送します。うまくいくものであれば、海外配信だけで元手も回収できます 。あと中国もいいですね」
・「テレビは影響力という点で強いんですが、コストが高すぎます。その点、ネット動画は独占配信権の販売という形で、無料どころかこちらがお金をもらいます」 「そりゃ、すごい違いだな」 「…ですから、アニメや映画制作は配信頼みになっています」



posted by egamiday3 at 22:01| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする