人はなぜ、ってその主語のデカさはなんだという話ですが、司書科目として「図書館情報資源概論」をなぜ学ぶのか、何を学ぶのか、それはどういう意味を持つのか、ということを考えてまとめたものです。
●”情報資源”への覚悟
そもそも「図書館情報資源概論」で学ぶのであろう”図書館情報資源”とは何なのか、からですが、これは一応、文部科学省さんが出してる各科目の概説を見ると、こういうことがちゃんと書いてあるわけです。
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「図書館情報資源概論」
「印刷資料・非印刷資料・電子資料とネットワーク情報資源からなる図書館情報資源について、類型と特質、歴史、生産、流通、選択、収集、保存、図書館業務に必要な情報資源に関する知識等の基本を解説する」
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「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目一覧」(図書館法施行規則の一部を改正する省令及び博物館法施行規則の一部を改正する省令等(平成21年4月) 別添2)http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2009/05/13/1266312_8.pdf
曰く”図書館情報資源”っていうのは、印刷資料・非印刷資料・電子資料とネットワーク情報資源からなるらしいですよ。
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1.印刷資料 =アナログ
2.非印刷資料 =アナログ
3.電子資料 =デジタル(モノ)
4.ネットワーク情報源 =デジタル(ネット)
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印刷資料と非印刷資料はアナログな媒体の資料ですね、本とか紙ものとかフィルムとかのやつ。一方デジタルな媒体の資料のひとつが「電子資料」で、CD-ROMとかDVDのようにだいたいがパッケージ系で、物理的なモノとして存在するやつと思ってください。そうすると、1・2・3までは図書館が実際に自分とこで蔵書として所有できるやつってことになるんですけど、昔の図書館はここまででよかったんです。まあほんとはよくないんだけど、図書館が確保して利用者に提供できるものと言うからには、その資源である”資料”はモノとして扱える範囲の存在でほとんどよかった。だからかつてこの科目は「図書館資料論」という名前で呼ばれていたわけです。
ところが、インターネットが登場・普及して、ネットワークなりオンラインなりでどこかよそさんのサーバにアクセスして情報を得る(有料か無料かはさておき)、というような情報の使い方&提供の仕方というのが当たり前になってきたと。図書館も、モノとして所有している蔵書だけでは情報サービスはまかなえないから、そういう「ネットワーク情報資源」とでも呼び得るようなもの、それは”館内”にはなく”リアルなモノ”として所有も確保もしておらず、”よそさん”に存在するもしくは”ヴァーチャル”に存在している資源なんだけども、それをも利用者への提供対象とする、そんな情報サービスが当たり前になってきた御時世なわけです。
さてそうなると、物理的リアルさがないものを”資料”と呼ぶのもいかがなものかという理屈、プラス、ちょっとリニューアル感を出したかったぽさもあったんでしょう、たぶん。”資料”じゃないものも含めた表現として、”情報資源”とここでは呼んでるんだと、いうふうに考えてもらっていいと思います。
ですから、この理屈っぽい定義はともかく、理解しておいていただきたいことは、です。図書館が利用者に提供する”情報資源”というのは、1・2・3のように図書館自身が所有してある程度のコントロールが可能なやつらばかり、というわけではなくなったんだ、と。外部・ネットに存在していて、物理的な姿かたちもなくて、我々のコントロールなんか一切及びようのないやつらも、”情報資源”として利用者への情報サービスに供することになるんだ、ということです。
具体的に言えば、いつページをめくっても同じことが書いてある『広辞苑』だけでなく、常に書き換わり消えすらする「Wikipedia」も”情報資源”なんだ、と。そんなやつらのことまでをも学ぶのが、「図書館情報資源概論」という科目なんだ、と。そういう、ある種の覚悟が必要なんだということですね。
なんと、”図書館情報資源”というもってまわったフレーズから”覚悟”まで引き出す、っていう。
●厨房のお仕事
で、じゃあ”図書館情報資源”のことを学ぶんだというのはわかったとして、この”概論”という科目はどういうものなんだ、と。
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図書館情報資源概論 =基礎編(必須)
図書館情報資源特論 =応用編(選択)
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実は司書課程の科目にはもうひとつ、似たような名前の「図書館情報資源特論」というのがあります。”概論”と”特論”のちがいですから、なんとなくわかりますよね。ざっくり言えば、概論が基礎編で、特論が応用編です。特論がもうちょっとつっこんだり、特定のトピックを掘り下げたりする(であろう)のに対して、概論は基礎編ですから、仮にも司書を名乗ろうとおっしゃる人であったら前提として押さえておかなきゃっていうような基礎知識を、広く浅くカバーする、という感じです。
だから特論は選択で、概論は必須です。
司書資格を取得するためには「図書館情報資源概論」は必ず学ばなければならない、と。
必須、必須、と言ってるので、ここでいったん広めの話をしますけど、人が(日本で)司書資格を取得するには3つの方法があります。
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1. 大学等の卒業生が、司書講習を修了する。
2. 大学等で、司書資格取得に必要な科目を履修し卒業する。
3. 3年以上司書補としての勤務経験者が、司書講習を修了する。
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この1.と2.で言う「司書講習」とか「必要な科目を履修」とかで、じゃあどんなのを”必要な科目”としますか、っていうのを文部科学省さんが指定してはるのが、さっき引用のところで出典に出した「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目一覧」(図書館法施行規則の一部を改正する省令及び博物館法施行規則の一部を改正する省令等(平成21年4月) 別添2)であり、その科目の中に「図書館情報資源概論」も含まれてますよ、ということになります。
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(必須)
生涯学習概論
図書館概論
図書館情報技術論
図書館制度・経営論
図書館サービス概論
情報サービス論
情報サービス演習
児童サービス論
図書館情報資源概論
情報資源組織論
情報資源組織演習
(選択)
図書・図書館史
図書館施設論
図書館総合演習
図書館実習
図書館基礎特論
図書館サービス特論
図書館情報資源特論
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これが、司書資格取得のために学ぶ必要がある科目の一覧です。
「図書館情報資源概論」、ありますね。
で、これをちょっと並べ替えて、わかりやすくしてみます。

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左下の赤のエリアにある4科目、サービスという言葉が全部ついてますけども、これらがまあ”サービス系”の科目だと思ってください。図書館が資料・情報を提供するにあたって、利用者に接する・対応することを主眼に置いた科目のみなさんです。喫茶店で言うと、フロアでウェイターやウェイトレスがお客(=利用者)にどう対応するか、という話です。
一方、右下の青いエリアは、喫茶店で言えば厨房の仕事の話になります。つまりお客に出すための素材(=資料・情報資源)をどう扱って、どう管理して、どう準備するか、というバックヤードの話。”整理系”とか”管理系”とかって言われます。
で、喫茶店のフロアと厨房とをとりまとめて、全体の運営・マネジメント的な話をするのが、上のグレーのエリアの科目たちです。店長とかオーナー目線で図書館の仕事をするために必要な話ですよ、っていう。
なぜこんな分け方をしたかと言いますと、実際の図書館内での仕事の分担、係や課のような組織構成が、まあどこもだいたいこんな感じになってるんですよね。サービス課とか利用係とかいうような、対・利用者の仕事をやる部署。管理課とか整理係というような、対・資料(情報資源)の仕事をやる部署。総務課とか総務係とかいう名前でマネジメントから一般事務までやるようなところ。
で、「図書館情報資源概論」は青エリアにあります。素材としての資料(情報資源)のことをちゃんと知って、どう取り扱ったらいいか、どう管理していったらいいかを学ぶ。喫茶店で言えば、このコーヒー豆はどこ産で他の豆との違いはどうだとか、どう挽いたらどんな香りになるんだとか、どこから仕入れたらいいか、どこにしまうのか、容れ物や温度湿度は、というような。お客・利用者に向き合うというよりは、バックヤードとして資料に向き合うのに必要な科目です。
図書館のお仕事全体の中でいうと、そういうキャラ付けの科目なんだ、って理解してください。
●”ヨコのひろがり”と”タテの流れ”
じゃあ、コーヒー豆なら産地や香りのことを学ぶんでしょうけど、司書は図書館資料(情報資源)の”何”を学ばなきゃなのか、という話です。
再々ですが、文部科学省さんのおっしゃる定義を再掲します。
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「図書館情報資源概論」
「印刷資料・非印刷資料・電子資料とネットワーク情報資源からなる図書館情報資源について、類型と特質、歴史、生産、流通、選択、収集、保存、図書館業務に必要な情報資源に関する知識等の基本を解説する」
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資料(情報資源)についての、「類型と特質、歴史、生産、流通、選択、収集、保存、図書館業務に必要な情報資源に関する知識等」だそうです。
これをもうちょっと詳しめに、まるで「おまえらシラバスにこれ書けよ」とでも言ってるかのようにリストアップされてるのが、同文書の下記です。
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1) 印刷資料・非印刷資料の類型と特質(図書・雑誌・新聞、主要な一次・二次資料、資料の歴史を含む)
2) 電子資料、ネットワーク情報資源の類型と特質
3) 地域資料、行政資料(政府刊行物)、灰色文献
4) 情報資源の生産(出版)と流通(主な出版者に関する基本的知識を含む)
5) 図書館業務と情報資源に関する知識(主な著者に関する基本的知識を含む)
6) コレクション形成の理論(資料の選択・収集・評価)
7) コレクション形成の方法(選択ツールの利用、選定・評価)
8) 人文・社会科学分野の情報資源とその特性
9) 科学技術分野、生活分野の情報資源とその特性
10) 資料の受入・除籍・保存・管理(装備・補修・排架・展示・点検等を含む)
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うわー、なんか一気にドバッと言われた。よくわかんない。
よくわかんないので、これもまた、わかりやすくなるようにあたしなりに並び替えてみました。
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1. 資料・情報資源の類型と特質
i. 印刷資料・非印刷資料・電子資料ネットワーク情報資源
ii. 地域資料・行政資料(灰色文献)
iii. 学術資料(人文系・社会系・科学技術系)
2. 資料・情報資源の管理と取扱い
i. 生産・出版・流通
ii. 選択・収集・評価(蔵書構築)
iii. 保存
iv. 実務の基礎知識(装備・排架等)
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「図書館情報資源概論」では資料(情報資源)について学びますが、大きく分けて2種類あります。ひとつが資料(情報資源)そのものの「1. 類型と特質」(コーヒー豆で言うと産地や香りの話)について、もうひとつがその資料(情報資源)を我々はどう扱ったらいいのかという「2. 管理と取り扱い」(仕入れやしまい方の話)についてです。
さらにわかりやすいように、絵を描きます。

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図書館には、本があって、利用者に提供するわけですが、その間に司書がいて、サービスしたり準備・管理をしたりします。
で、図書館にあるのはまあふつうの本が一番多いんでしょうが、それだけではなくていろんな資料・情報資源がありますよ、と。紙に印刷されたアナログなものもあれば、CDやDVDやデジタルなものもある。古い時代の古典籍だとか、写真に撮って小さなフィルムに縮小したマイクロフィルムのようなものもある。で、ネット上にはwikipediaや有料データベースもある。そんなふうに、どんな種類(=類型)があってどんな特徴(=特質)があるのかを学ぶのが、「1.類型と特質」です。
ふつうの本にしたって、いろいろ種類がある。例えば、自治体がベースの公共図書館ではその地域ならではの「地域資料」というものを、地域の利用者(コミュニティ)に向けて届けるのが非常に重要な役割のひとつなので、じゃあその地域ならではの「地域資料」ってどんなもんなんだ、っていうのをちゃんとわかってなきゃいけない。一方、高等教育と学術研究がベースの大学図書館では、それ専門の「学術資料」というのがあって、その種類や特徴を相応に知ってないと、専門家の先生たちのサポートができない。
というような、とにかく多種多様な資料(情報資源)が世の中にはあって、図書館はその多様性を幅広くカバーする、その”ヨコのひろがり”と各々の個性を理解してこその、「1.類型と特質」だろうと思うわけです。

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一方「2. 管理と取り扱い」を、じゃあこっちは”タテの流れ”でイメージしてみると、資料をどんな手順で取り扱っていくのか、各段階でどんなふうに管理していくのか、という感じになります。
流れの上流から行くと、ふつうの本ならふつうの本で、まずどんなふうに出版・生産されるのか、そしてそれがどう流通して売られているのか。そしてそれを図書館はどういうポリシーで選ぶのか(選書)。欲しい本はどんなふうに買うのか、ていうか買えない(売ってない)本はどうやってゲットするのか。そして、ゲットした本を図書館内でモノとしてどう管理するのか、本棚にどう並べるのか。そこまで手順をふんできてやっと、利用者さんにハイどうぞって提供できるようになるわけですから、バックヤードとしての知識や実務スキルがなかったら、利用者さんへのサービスもろくにできない、ということになります。「2. 管理と取り扱い」で学ぶのはそういうことです。
●「図書館はなぜ本を持つのか?」
さて、文部科学省さんがおっしゃってるのはおおむねここまで、なんですが。
あたしとしては、いやちょっと待てと、これだけじゃちょっと理解が追いつかないんじゃないの、と思うわけです。まだちょっと断片的というか、寄りの眼でしか見えてないというか。
なので、ここで「1.類型と特質」「2.管理と取り扱い」に次ぐ第3のカテゴリとして、「3.資料提供の理念と実際」をオリジナルに提唱したいのです。
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3. 図書館による資料提供の理念と実際
i. 社会的役割(課題解決、公共財、図書館の自由)
ii. 図書館協力と資源共有
iii. ユーザとアウトリーチ
iv. 著作権
v. オープン化とデジタルアーカイブ
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この「3.資料提供」は、”ヨコのひろがり”と”タテの流れ”の2本をぐるっと包み込んで、一つの世界観にふくらませるような、より大きな概念を描きます。そういった意味では「3」というより「0. 資料提供」かも。
描いた世界観がとりあえずこんな感じです。

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そもそもこの”ふくらし粉”は、「図書館はなぜ本を持つのか?」という、図書館情報資源概論の科目で学ぼうとすること全体を根底から支える問いによって、できています。図書館には本があって当たり前? そんなの自明の理でもなんでもなく、社会からの[$]によって成り立ってるからには、それ相応にみなが納得するような社会的意義や役割があってしかるべしなわけです。
図書館は利用者に資料(情報資源)を提供する。利用者は資料(情報資源)を必要とする。それはなぜか。人(利用者)がなんらかの知的活動をおこなったり課題を解決したりする際に、”確かな情報源”に基づいた”賢明で公正な判断”が必要だからです。それがなかったら、印象/直感/主観/感情に基づいた愚行の繰り返しになってしまう。ていうか、その”確かな情報源”が欠けたり隠されたり書き換えられたりしてエライコッチャと大騒ぎになってる様子を、ねえ、我々いままさに目の当たりにしてるじゃないですか。
そのための確かな情報源を、一部の人に偏らせるのではなく民主的に公正に行き届かせるため、資料(情報資源)を”公共財”化すること。それが、図書館というところが本を持つひとつの重要な社会的役割です。加えて、資料(情報資源)の内容や届け方に偏りがないように「図書館の自由」という考え方があり、届け先(利用者)に偏りや障壁がないように「アウトリーチ」、ひいてはそもそも「ユーザ」と資料との関係とは、というところまで視界を広くとって考える必要がある。
そうやって図書館による「3. 資料提供」がスムーズに進むと、利用者が資料(情報資源)をゲットする、知的活動や課題解決がおこなわれる、その結果として新たな知識・情報が生産される、それが出版・流通され、図書館が収集・保存・公共財化して、次の利用者へ提供する。これが、(大言壮語すると)人類が有史以来脈々と続けてきた”知のサイクル”であり、その重要なピースとして「図書館が本を持つ」がある。そう理解すれば、「2.管理と取り扱い」の流れはかなり大幅にふくらまされたんじゃないですかね。
ちなみに、その流れがスムーズに行くかどうかに影響する要素として、ゲージのような働きの「著作権」、広場のような「オープン」、懐深い「デジタルアーカイブ」、背景としての「高度情報化社会」といったあたりがからんできます。
いまのはだいぶ「2. 管理と取り扱い」のふくらませに注力してた感がありましたけど、「1. 類型と特質」における”ヨコのひろがり”・多様性も実はもっとふくらませる必要がある。というのも、じゃあその利用者のみなさんの知的活動・課題解決を成就させるのに満足な資料(情報資源)というものが、果たして自分とこの図書館内だけで充分にまかなえますか?というと、それはまず無理だろう、と。例えば、日本では年間約8万点の新刊書が刊行されていますが、それ全部買い揃えるなんて1館ではとてもできないわけです。それを異なる図書館同士で互いに補いあいましょうというのが「図書館協力」「資源共有」であって、図書館は互いに協力しあってはじめて満足な資料提供ができるようになります。協力・連携先は図書館だけじゃなくて、博物館・美術館や文書館・資料館、その他各種の専門機関、企業、学校etc.といったところと資料(情報資源)その他のリソースを共有し合うことで、可能性はヨコに大幅にひろがります、というところまで理解していただきたい。
と、こんなふうにこの曼荼羅みたいなのを広く眺めてみると、「3.資料提供」というのが、「1.類型と特質」「2.管理と取り扱い」をつつみこんでふくらませる、だけにとどまらず、資料(情報資源)を軸にして”バックヤード”と”利用者サービス”と”マネジメント”とを断絶させずにつなぎとめてくれる、”とりもち”みたいな存在だな、と思えてきますね。些少の重複をおそれるよりも、この”とりもち”が科目や業務がセクショナリズムに陥ってしまうのを防いでくれるほうに、期待したいと思います。「図書館情報資源概論」を学ぶことの意味も、文脈や世界観を失わずに理解できるんじゃないかなと。
●わりと汎用性のある”武器”
最後に。
「図書館情報資源概論」は司書資格をとるための必須科目だよとたいそうに言ってましたが、一方でしかし、司書資格をとっても実際に図書館で司書として勤めることができる人というのが、人数的にとても少ないんだ、という現実があります。
じゃあ、司書として勤めないんだったらこの科目はムダなんですか?と。ていうか、この科目を資格無関係に単位取得のために取ろうという人だっていなくはないわけで、そういう人たちにはこの科目は実益無しですか?と。
いや、そうじゃないんですよ、という話です。
先ほどの世界図を再掲します。

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この図の真ん中あたりに「司書」がいますが、じゃあ司書にならなかった人はこの世界と無関係ですかと言ったら、そうじゃないですよね。司書にならなかった人もそのほとんどがみな、この図の上の方にたくさんいる「利用者」=社会の一員として存在するわけです。
この世界図の中においてみなさんは、一個人として、一社会人として、大から小までたくさんの”課題解決”にあたることになり、その時に”賢明で公正な判断”をするために”確かな情報源”が必要になるわけです。お買い得品を逃さないためにスーパーのチラシが、4限にまにあうように田辺に着くために近鉄の時刻表が、ハズレ企業に就職しないように経営業績や勤務実態が、病気を克服するために新薬の治験結果が、社会の未来のためにマニフェストや公文書や議会の議事録が、です。
その資料(情報資源)の入手・探索の出来不出来が、みなさんの”課題解決”のゆくえを左右する。それが高度情報化社会と呼ばれる現代の現実、だとしたら。ここに描かれているような、資料(情報資源)のヨコのひろがりやサイクル状の流れ、資料提供をいかに”受け取る”ことができるか、それを学び理解するというのは、かなり強力な”武器”(=リテラシー)になり得ると思うんですね。
特に、司書資格を取ろうかなと考えるようなタイプの人であれば、実際司書の職に就かないにしろ、出版業とかマスメディアとか、大学・学校のような教育関連とか、この図の中でもわりと足つっこんでるような立場の職種に就くことが多いと思うんですが、だとしたらなおさら、という感じです。
もちろんそれ以外のどんな職種であっても、現代人であれば何かしらの知的生産と問題解決にあたるということを、これからほぼ生涯続けていくことになるわけで、そういう意味で、どんな人でもこの科目で学ぶようなことはわりと汎用性のある”武器”になるんじゃないかな、って思ってます。
どんな人でも。
そう、つまりこのブログ記事のタイトル、「人はなぜ」っていう主語のデカさは、実はおおげさでもおふざけでもなかった、という話です。
・・・このボリュームで半期15回ですってよ。