「渡り鳥コース(コペンハーゲン-ハンブルク)以外にもこういうのがあるんだ。」 -- kitone
http://b.hatena.ne.jp/entry/315182277/comment/kitone
↑これは、2016年11月のシチリア旅行を綴った本ブログ記事(http://egamiday3.seesaa.net/article/445665328.html)に、kitoneさんがつけたブックマークコメントです。イタリア本土とシチリア島間の海峡を鉄道で渡るのに、列車をそのままフェリーに載せて運ぶ、という旅程(アトラクション)があって、大はしゃぎしながら列車がフェリーに乗り込む様子を書いたやつなんですが、kitoneさんによればコペンハーゲン−ハンブルク間にも同じアトラクションがあるという。
へー、知らんかった。じゃあ行かねばだ。
というのが、そもそもハンブルクがこの旅のスタート地であるひとつの理由なわけです。
地図でいうと↓こう。

まず南端のハンブルクから反時計回りに、
コペンハーゲン
↑鉄橋でシェラン島に上陸
↑ロービュ(デンマーク側の港)
↑フェリーでフェーマルン海峡を渡る(国境越え)
↑プットガルテン(ドイツ側の港)
ハンブルク
デンマークはドイツの北方にあり、大小いくつかの島とユトランド半島から成ります。コペンハーゲンは、ドイツから最も離れたシェラン島の路の果てよりもなお奥つ方、北東の端にあります。ハンブルク−コペンハーゲン間にはいくつかの海峡と島があり、中でも国境いにあたるフェーマルン海峡(約20km)については、列車ごとフェリーに乗り込んで渡る、ということになります。
これを「渡り鳥」と称する、と。
一番詳しいのは『ペーターのドイツ鉄道旅行案内』だったので、これを参照。

ペーターのドイツ鉄道旅行案内 (平凡社新書)
で、せっかくなので帰りは別方向・ユトランド半島までへ渡って、陸の国境を越えてハンブルクに戻れば”ドイツ−デンマーク版大回り”。
コペンハーゲン
↓(鉄橋)
↓オーデンセ
↓(鉄橋)
↓ユトランド半島を南下(国境越え)
ハンブルク
出発9時台、帰着22時過ぎ、1日でコペンハーゲンまで行って帰ってくる、ただしコペンハーゲン滞在1時間程度、ハンブルク着は最終便なので途中で遅延が出たらアウト、というなかなかチャレンジングな旅程です。
しかも実際に予約してみると、この時期になにやら工事か何かをしているらしく、デンマーク側(ロービュ)へ渡ってからコペンハーゲンまでは代替バスになってしまうらしい。でもまあ、列車のままフェリーに乗るのに変わりないんだったら、それでもいいか、という感じでした。
そういう、つもり、だったんです。
とりあえず、ハンブルク中央駅です。




ていうかすでに駅だけで存分に堪能してます。
まず、駅舎のでかさと鉄骨具合を堪能。
ターミナル型の駅ではないので、やってきては出ていくという列車の流れを堪能。(これはわりといつまででも見てられる)
ヨーロッパでも場所によってはこんなんなんだね、というアジア風味な広告景観を堪能。(これってわりと景観を破壊してる雰囲気もあり、それが一周回って見物でもあり)
大都市中央駅を右往左往する人々の行き交いを堪能。



ドイツは駅内商店が充実しているとものの本にありましたが、ずっと気になってた小爪(爪の脇にできるトゲみたいの、常に悩まされる)処理のための爪切りをドラッグストアで買ったり、まったりできるカフェスペースを発見したりしてます。
旅先でお気にのカフェが出来たら、その旅はだいたい成功です。チェーン系でも、例えばレジと別フロアがあるだけで落ち着きが桁違いにちがう。



この車両は、コペンハーゲン方面行きです。
ハンブルク発09:28、EC33。
ていうかもうこの時点で「DSB」、つまりすでにデンマークの車両に乗ってるわけですね。
まずはハンブルクから北へ、ドイツ側国境の港にあたるプットガルテンへ向かい、この車両のままフェリーに乗り、デンマーク側のロービュ港で代替バスに乗り換える、はずです。



ハンブルク駅を出て20分もせずに、草原風景がひろがったりするので、これが北ドイツのあり方か...と感嘆してます。
そりゃいつまで経ってもビル街が終わらない東京圏の風景に、海外観光客が驚くのも無理ないな、と。



車窓はどの国のどこを走っても、なぜでしょう、飽きることがないですね。
草、森、草、たまに牛馬。
茶色で統一された民家の並び。
沿線にある菜園的なものも見えたりして、あれがドイツの「クライネガルデン」と呼ばれるものなんだろうかな、とか。19世紀以降・近代の市民による家庭菜園運動、的なのだそうです。
で、2時間もしないうちに最初の鉄橋を渡る。


ドイツ側の国境港・プットガルテンは、ドイツ本土からちょっと渡った小島・フェーマルン島にあるのですが。
その駅が近づくにつれ、車内アナウンスが流れるようになります。
残念ながらドイツ語オンリーなのですが、注意を促すかのように繰り返し、「プットガルテン」「ロービュ」がどうのこうのと。
でもまあ、とりあえずこの車両に乗ってればこのままフェリーに連れてってもらえるんでしょう、とのんきに構えていたら。
後方で鉄道職員らしき人と別のお客との英語での会話が漏れ聞こえてくるわけです。
「・・・・・・プットガルテンで降りる・・・」
ん? いったん降りるの?
「バスでシップにオンボード・・・・・・」
・・・・・・ちょっと待て、話がちがわないかそれ。


・・・プットガルテンの駅で降りるの?
線路は見た感じフェリー乗り場までぐんっと延びてる、ように見えはするのですが。

・・・・・・これに乗れ、とおっしゃる。
え、列車でフェリーに乗るっていう話はどこへ雲散霧消したんですかね(涙)。
いまとなっては、はじめからそういう旅程だったのか、何かの事情でそう変更されたのかはわからないのですが。
×「列車onフェリー→代替バス」
○「バス→フェリー→バス」
困ったな、これだともうただ単に”車移動”するだけの、つまんない旅になるわけなんですが。

しかも、アナウンスで「delay」だなんだという声が聞こえ、1時間近く待ってるものの一向にバスが動く気配がないし、隣のレーンの乗用車グループなんか、こりゃあかんわという様子で、車外に出てぶらぶらし始めてる。やばい、これハンブルクに戻る便に間に合わないんじゃないか。
さらには、車内がボケかと思うほど暑い。この時期のドイツが例年よりかなり高温な日が続いているらしく、1時間近く待ってるものの一向に冷房が効く気配がないし、隣のレーンの乗用車グループなんか、ひゃっはーという様子で、Tシャツ脱いで半裸ではしゃぎ始めてる。狭い車内に乗客がすし詰めで、やばい、これ熱中症でるんじゃないか、さっきからリアルに気持ち悪いんですけど。
・・・そこまでしてコペンハーゲン行きたいか?(注:すでに2回滞在経験あり)
というわけで、いろいろな予定外の末、このコペンハーゲン方面行き代替バスを降りることにしました。
うん、えっとね、ちゃんと鉄道路線が復活した時にまた来ます。(注:ただしトンネルが出来るという噂あり)
ちなみにあとで確認したところによると、この便を予約したドイツ鉄道からメールが届いていました。
(大意)「あなたの今日の旅程はうまく行かないです。どううまく行かないかはここでは書けません、現地で注意深く行動してください」
てめえドイツ鉄道、なんだこの「めざまし占い」みたいなふわっとした警告文、しかも発車30分前とかいう見るわけない時間に送ってきやがって、その分には捨て置かんぞ。



バスを降り、歩道をたどって、港から海岸へ出ます。
ちょっとした浜辺がひろがり、防波堤があり、いろんな人がのんびりと過ごしてはります。
生ぬるい海の風が、私の身体と心にせつなく吹きつけてきます。
・・・あ、あのバスを載せたフェリーが出航していきました。

さよなら、デンマーク。
さよなら、コペンハーゲン。
母は来ました、今日も来た。
私はなぜか、このドイツの端っこの浜辺に一人とりのこされ、遠いデンマークの地を想いながら立ち呆けています。

この人のように。
誰、この人。
(注:”Dieser Monch begrust Sie dort, wo sich der Pilgerweg "Via Scandinavica" und der Radfernweg "Monchsweg" kreuzen. Machen auch Sie sich auf den Weg.”)