2018年08月23日

(注:ネタバレ部分を公開しました)「サマータイムマシン・ブルース」「ワンスモア」観劇メモ -- 2001、2003、2005、そして2018 #ヨーロッパ企画


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■以下、2018年8月23日に公開した、ネタバレのない本文
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 注:
  オープンにしている部分の記事にはネタバレは(たぶん)ありません。
  ネタバレ記事は末尾にパスワードをかけて置いてあります。


 「サマータイムマシン・ブルース」。
 京都を拠点にマルチに活躍する劇団・ヨーロッパ企画の、初期を飾る代表作。
 SFものであり、タイムマシンものであり、ゆるい会話劇コメディであり、つまりはヨーロッパ企画っぽさと言えばこれだろうというわかりやすさであり、という代表作。
 再演回数がもっとも多く、本広克行監督により瑛太・上野樹里・真木よう子・ムロツヨシらによる映画化もされた、やっぱり代表作。

サマータイム・マシン・ブルース
サマータイム・マシン・ブルース

 それが、劇団旗揚げ20周年のこの年、13年ぶりの再演、という。
 しかも、その「ブルース」の15年後を描く新作「サマータイムマシン・ワンスモア」も、交互上演という。

 ・・・リアルに、生きててよかった、という感想が出ますよね。
 ほんとに、生きてこの作品に出会えたこと、目撃できたことを、神に感謝せざるを得ない。健康第一だなと、長生きはするもんだなと。

 2001年の初演を三条御幸町のアーコンで観たときが、自分にとってのヨーロッパ企画初観劇で、タイムマシンネタ全部のせの作品はいまと変わらずながらも、まだ学生演劇感が満載だった、そう、このときは松田さんが出てたんですよね。
 2003年に再演するというんで大阪に観に行ったら、でっかい劇場のお客を何度も揺らすように爆笑させて、拍手させて、完成度も高いしいろんな意味ででっかくなってて、自分にとっての「ブルース」はこの「2003」がベースで、DVDがほんとに擦り切れるんじゃないかというくらい再生し、なんか耳寂しいなというときはかけ流すように再生し、再生し尽くし続けて15年、いまでもなお笑いどころではどうしてもまた笑ってしまう、もう落語じゃないですかねこれ。
 2005になるともう横綱相撲というかプロの所業になってるし、あとのことはもうふりかえるまでもないだろうと思うんですが、それでももう13年経ってるのか、すごいな。

 というような「ブルース」が再演だと、かつ続編「ワンスモア」が新作上演だと、いうのを今年の正月にイベントで発表された時には、リアルに「ひぇっ!?」とへんな悲鳴が出るわけです。

 というような前置きを踏まえ、2作交互上演だから結果的に倍率が2倍近くなる、そんな抽選をなんとかのりこえて、栗東と京都で、「ブルース2018」と「ワンスモア」を観劇してきました、ていうメモです。

 「ワンスモア」は「観てしまった」「感謝してる」などの感嘆しか出ない、壮大な大河ドラマを目撃した、という印象。キャストもセリフも小道具も小ネタも時代性も辻褄も伏線回収もオチもシビれるほどで、客席から何度か悲鳴のようなリアクションがあがるくらい。そりゃもちろん「ブルース」だっておもろいんだけど、難易度・高度・カオス度がぶ厚く、そう、層が折り重なって厚くなってたという感じ。ライターの吉永さんの記事に「これまでが職人レベルだったとすると、今回は魔術師……いやもう魔王の領域」とあったのもうなずけるです。2度目によくよく注意しながら観たら、伏線が、辻褄が、そのためのピースが細部に、つまりは”神が細部に宿ってた”状態。そのピースがでっかいパズルとして組み上がり、全体として“最高”、ていう。
 ていうかね、なんとかしてこう、まだ観てない状態に戻ってもう一回観れないかな、っていう(笑)。

 もちろん「ブルース2018」も観ました。2001、2003、2005、映画、DVD、繰り返し繰り返し観ても、それでも、どうしても“あのシーン”では手を叩いて笑ってしまうという、至福の時間でした。

 というような美辞麗句を手を変え品を変えして言いつのってるというのも、何をどう言ってもネタバレになってしまうから他に言いようがないせいであって、というわけで、以降はネタバレ込みのテキストを、パスワードかけて下に置いておきます。観終わった方はどうぞ。全公演終了したら公開します。
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https://eplus2.up.seesaa.net/hidden/stmb2018stmo.txt
ID: europe
PW: kikaku
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■以下、2018年12月27日に公開した、ネタバレのある本文
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●「ワンスモア」という皆得な感動
・「ワンスモア」の開始シーン、何から始まるんだろう?が最大級ワクワク点のひとつ。あのシーンから始まってああなるの、大いに納得。
・笑い疲れ切ったころに思い出す、もうひとつの最大級ワクワク点、どういうオチで終わるんだろう。そして、あのオチ。栗東会場は、暗転するや否やの大拍手。週刊ヨーロッパ2で上田氏が「続くかもしれないのに」とおっしゃってましたが、いや、あれはもう、この作品においてあれ以上のものはあり得ない”完璧なオチ”だと、あの会場のお客のほとんどが納得した、その結果なんだと思いますね。
・このできあがった壮大なタイムマシン大河ドラマは、広瀬正のあの作品にも通じるなという感があって、そう、上田氏は広瀬正になったのだ。いつかタイムマシンに乗ってどこかへ旅立つのだろう(妄言)。


●上田脚本が仕掛けて解くパズル、そのどたばたと辻褄
・上田氏がヨロッパ通信その他で、過去の自分との対戦だ、的なことを言ってるのを踏まえるとしたら。「ブルース2018」を見たところ、ほとんどが2005と設定も辻褄も同じで変わってなかったように思われ、これはすなわち、「ワンスモア」のパズルを盛り上げるためにだとか、わかりやすくするためにだとかで、「ブルース」に改変を加えることも十分できたはずなのに、それをあえてせず、ただただ2005の設定と辻褄というピースをストイックに維持して、「ワンスモア」というパズルを組み立てたということになるんじゃないか。例えば、「ブルース2018」でヒルタニの名前なりなんなりをぽろっと出しててもおかしくないはずなのに、記憶の限りそれもしてなかったと思う。そういうストイックなパズル脚本。
・4号機出現のころから、もう初見では脳がついていけないレベルアップ感。何せ、仕切り役がなぜかヒルタニに移って、これまでさばいてくれてたはずの頼りになる小暮が置いてかれてるから、見る側がよけいに不安でついていけない感になる。
・ヨーロッパ企画さんの醍醐味である”無駄話”が、重要な”伏線”であったりする一方で、やっぱりただの”無駄話”だったりもする、そのへんの絶妙な取り紛れさせ感が、解けそうで解けないでも最後には解けるパズルをおもしろくしてるんだな、と。「撮り鉄の部員が最近活動していない」ネタとか伏線かなと思ったら無駄話で、まさか「タップダンス場」がピークに効いてくるとは思ってない、ていう。
・曽我を今度は天狗にしてしまう力技。
・伊藤「伝わったー」
・自力で帰ってくる(来ざるを得ない)パターンのが、2週間→半年→15年とだんだんステップアップしていくのの、おもしろさとわかりやすさ。(でもまあ、「半年働いてきた」ていうのが一番笑ったけどなw)
・そういう意味では、「任天堂スイッチが2つある」「いま(城築)が3人同時にいる」ていうのとかが、最後の「1台のタイムマシンが3台同時に存在している」へ向かうまでのステップというかレッスンになってるんだな、という感じ。ダンデライオン。
・1・2・3のトリック。なんか字が不自然だと思った(笑)。

●20周年おめでとう
・「野良ドローン」「ディセンシー」「タイムパトロール、航時法」などなどの、過去作品とのふんわりしたリンク。
・「ブルース」で小暮が冷蔵庫の小泉にツッコむのに、いままでの小暮にはあまりなかった「そうしてるの?」という強めのツッコミをしてるあたりが、「ワンスモア」でかなり気の強めのキャラで事態をさばいていくのを、自然に見せてる、気がする。で、いまとなっては後者の酒井くんのほうが自然だしなと。
・にっしゃん伊藤が、2005下級生→2018同級生、なの。

●会場の反応
・栗東での観劇が(もちろん初日補正入ってたとして)よかったのが、会場の盛り上がり感。よく考えれば、わざわざ栗東まで、しかも「ブルース」無しでいきなり「ワンスモア」見に来るお客は、そりゃおおむね「(2005以前の)ブルース済み派」であろうし、続編待ちかねてた、いよっ待ってましたっ、というような濃い反応にならざるを得んだろうという。みんなで盛り上がりながら見れた気がして、栗東、当選してよかった(わりとあぶなかった)。
・その反応のわかりやすいのが、「歌舞伎のようだった」と週刊ヨーロッパ2でも言われてた「栗東での田村登場時の会場の拍手」で、確かにあんなところで拍手が出てしまうのはかなり意外ながらも、でも納得して拍手してしまう。少なくとも自然に出てた拍手だったと、あの場にいた身としては思う。京都ではちょっと不自然だった。
・終盤で(城築)が「田村です」と名乗ったときの、会場の不穏などよめきと、そういえばこいつの名前まだ誰も聞いてなかったというぞわぞわ感。京都より栗東の反応のほうが濃かったように思うのは、やっぱり「ブルース済み派」が多かったからか。あのぞわぞわはブルース済みか済みじゃないかでだいぶちがう。
・ヒルタニの”タイムスリップ未遂”で会場から変な悲鳴が出る。
・栗東では、子供がケタケタ笑う声。幸せな空間。

●2回見るとわかる裏演技や伏線
・タイムマシンの2号機3号機の登場時に、腕時計を見ている小暮。なるほど。
・現役生ミノワ登場時に、「あんな子いた」と発言するメンバーあり。なるほど。
・現役生を前にしての思い出話の中で、メンバーから「田村」の名前が出たときに、ミノワと(城築)が口パク裏演技で「タムラ?」と言ってたの。
・田村登場時にまわりが盛り上がってる中での、柴田のこそこそと逃げ回る感、プラス、田村のかきわけてきょろきょろ探してる感。
・2018年の田村と柴田が「やっと入籍できる(戸籍の関係で)」という話は、栗東ではなかったような気がする。加わった?

●極私的に好きなところ
・タイムマシンの出し入れのトラブルあり。まあ、あるよねw
・タイムマシンと再会して「ずっと使い方考えてた」という、積年の後悔とリベンジチャンスの興奮。よくわかる。
・柴田と田村の親子げんか全般。ここでしか見られない最高の掛け合い漫才だと思った、ずっと見てたい。
・レポート出しに過去に行く許可が出て、文字通り欣喜雀躍するミノワのバネ。そのレポートを、どうでもいいと投げ捨てる時の捨て方。
・(トラブルについて)あとは祈るしかない、と言われて、祈るミノワ。
・ビジネスマンのプレゼンVS研究者のくだり。
・「しろうとが飲食に手を出すな」

●極私的に、のこってる謎
・ニコンを調べたことあると言う(城築)。

●結局、柴田だけ一度も乗ってない件
・一度もタイムマシンに乗ってないのに、人生にもっともタイムマシンの影響を受けていると思われる、柴田。
・2018年から来た小泉たちに対する、2003の柴田の拒絶反応も、そう思うとなんとなくわかる気がする。
・がんばれ柴田。2028年まであと10年。

●2018、の次?
・「ブルース2018」と「ワンスモア」はどういう作品だったか。宣伝番組で上田氏は「いま封印を解かないと本当の封印になってしまう」と、まあ冗談めかしながらおっしゃってましたけど、もしかしたら今回でわりと”マジ封印”のつもりなんじゃないかという気はする。それは、以下のようなところから。
・「ブルース」と「ワンスモア」が、ペア扱いされながらも実は根本的に性格の異なる作品だというところがひとつあって、”時代”というローカルさの、まったく無いの(ブルース)と、めちゃくちゃ有るの(ワンスモア)。「ブルース」が2001でも2003でも2005でも2018でも上演されて特に不自然じゃない(演者の年齢を無視するものとする)のに対して、「ワンスモア」は各時代の具体的なアイテムが洪水のように出現した、そして絶対に2018年の現在しか上演できない作品になってる。インスタ、任天堂スイッチ、フリクション、酷暑、2018年問題、うなぎといった現代の”ローカルネタ”に加えて、過去も、クロックス、お札が変わった、狂牛病、倍返しだのなんだのと、枚挙にいとまが無い。絶対にいましかできないのが「平成の次の元号」ネタで、あれなんか世の動きによっては本公演ツアー中にネタとして成り立たなくなる事態すら起こりえるんじゃないかと、ちょっとドキドキしている。そういう、各時代の具体的なアイテムが洪水のように出現、という意味でかなり「続・時かけ」が見ててオーバーラップしたし、ちょいちょい聞く、「来てけつかる」や「トロンプルイユ」からの流れだな、というふうにも思う。
・となると、これ、少なくとも「ワンスモア」は再演はありえないわけで、「ブルース」と一緒に封印なのでは?
・・・・でもやっぱり、2028、を期待してしまう?

 2028年、ってことになったら、あたしなんかわりとリアルに「がんばって生き延びよう」と思い始めるあれなんですが。













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2018年08月14日

「ハンザという市の女王」@リューベック(201806euドイツ3日目その1)


 3日目(6/11 Mon)の朝です。
 やっぱりあまり長時間は眠れてませんが、朝から起き出して旅行事務してました。

 今日の予定です。
  @北の町・リューベックを町歩き
  Aリューベックから、北ドイツあたりの鉄道を乗り継いで、ベルリンにたどり着く
  Bベルリンで過ごす

 というわけで、(やっと)ハンブルクをおさらばして、バルト海方面・北東に向かって鉄道で1時間くらい、リューベックという町に向かいます。

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 説明しよう、リューベックとは。
 いまでこそだいぶ小ぶりのお上品な古都っぽいたたずまいではあるものの、ハンザ同盟当時は同盟の”盟主”であり”最大”であって、ハンブルクやブレーメンなんかとともに隆盛をほこった港町で、とはいえ、港町とは言っても海に直面してるわけでなくやっぱりここも”河”っていうパターンなんですけど。例えば、内陸のほうで採れた岩塩がここをとおって、バルト海沿岸から北欧・ロシアまで流通してた、とか、ここの商人はノルウェーの北の町・ベルゲン(注:お、去年の旅行とつながった→http://egamiday3.seesaa.net/article/454729149.html)から鱈を流通させてもうけたとか、鰊でもうけたとか、そういう景気よさそうな昔話がいくつなりとあるハンザ商人たちの自由都市なわけですね。

 ちなみに、さっきからリューベック、リューベックて言うてますけど、なんと正式名称を「ハンザ都市リューベック(Die Hansestadt Lubeck)」と言うらしく、マジか、その接頭語が付いてるとだいぶ”ハンザ”おしの強さが際立って見えますから、それくらい昔はすごかった的な町なんでしょう。
 もともと「雪の女王」という名前だった童話に、「アナと雪の女王」と接頭語をつけることでだいぶアナ主役感が出るみたいな。

 無理くり「女王」に結びつけましたが、リューベックは別名「ハンザの女王」とも呼ばれているらしい、それくらい町並みが美しい世界遺産都市っていうことです。
 土地的には、バルト海に流れ出る河と河とにまぁるくはさまれたような感じで、その中に旧市街がぎゅっと凝縮されてる感じ。歩くと意外と高低差あって、丘っぽくなってるのかな。その凝縮されてる旧市街に、ハンザ同盟時代の商人たちによる当時の立派な建物が豊富に建ち並び、かつ、ハンザ衰退後は栄えることがなかったので、逆に当時の趣きが開発で蹴散らされずにのこってくれてる、

 そんな経緯で雰囲気ある町並みがのこされた、小ぶりで歩きやすい町。
 小旅行にはうってつけじゃないですかね。
 というわけで、午前中はここで過ごす算段です。

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 この車両は、リューベック方面行きです。07:04ハンブルク発、07:48リューベック着。21.75ユーロ。

 ちなみに、昨日からジャーマンレイルパスを使い始めており、地道に元をとりつつあるのですが、オンライン購入&プリントアウトして持ってきたPDFのチケットを検札の車掌さんに見せると、QRコードのところに折り目が出てしまってるせいか、検札用ハンディターミナルを片手に悪戦苦闘の車掌さん、結局読み取れず、という事案が発生。その後、予備のプリントアウトを注意深く折り直してみたものの、それでも読み取られることはなく、そのまま最終日までたぶん一度もまともにスキャンできなかったんじゃないかな。みんなあきらめて、パンチで穴開けたり、時刻スタンプしたりしてた。

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 瞬殺で、リューベック駅着。
 駅舎からもうちゃんと麗しさを出してくれるハンザの女王。

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 なお、旅の荷物は全部ここに預けて身軽にして行きます。
 ドイツは、このあとだいたいどこへ行っても駅にコインロッカーがちゃんと整備されてくれていて、彷徨型の旅がはかどること限りなしなのです。(ほんと、なぜいままでまともに来てなかったのか・・・)

 バスもあるっぽいですが、地図を見る限りほんとに小ぶりの町なので、とりあえず歩きます。

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 町外れの駅(注:ヨーロッパの鉄道駅はだいたい町外れ)近くはまだぜんぜん古都っぽくないですが、なんとなく若者が多いという印象で、かつ自転車も多く、そこへきてこうやって川を渡ると、なんとなくライデンっぽさあるなと思うわけです。
 ちなみに、あたしが「ライデンっぽい」などと言い出すということは、おおむね「気に入ってる」という意味です。

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 町の入口にそびえる、ホルステン門。この堂々さと、それでも失われないレンガの麗しさという感じがして、ん、女王ってこの人ですよね、ってまずまっさきに思う。
 ちなみに、マルク時代の紙幣にデザインされてるくらい有名なんだそうで、ということは、平等院鳳凰堂的な立ち位置なんだねと。

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 旧市街に入ってしばらくぷらぷら歩いてるうちに、まだ30分も経たないタイミングで、あ、住むならここだな、という宣言が出てます。
 古都だといっても歴史観光地なだけでなく、ちゃんと現役の町で、それなりに市民のにぎわいがあり、商店や交通も生活に便利な感じで整ってるし、にしてはコンパクトで、中心部は車通りの心配が少なく、で、やっぱり古都の雰囲気もある。どっちのバランスも過不足なくてちょうどいい感がするんですよね。

 ちなみにこの朝、Twitterの感想がほぼ1時間で、
 「なんか好き」
 →「かなり好き」
 →「住むならここ」
 →「好きすぎてつらい」
 へと変化しています。 
 ちょろい観光客ですね、コロッといっちゃってる(笑)。

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 市庁舎やその周辺。

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 町の中心にある、セントマリアン教会。正面から見上げると顔がすごく凜々しく見える。
 これも女王だな。
 ていうか、女王いっぱいおるな。

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 あと、あっちにも塔あったけど、なんかこっちにも塔あるな、みたいに思ってたんですが。
 ものの本によれば、この町には5つの教会に7つの塔があるらしく、「7つの塔の町」という別名を持つらしい。
 なんだ、また別名があるの? 「Frozen」?
 ていうか、それだけたくさん教会や塔を建てることができたくらい、裕福な商人の町だった、ということらしいですが。

 さて、この町には「ガング(gang)」と呼ばれる建築というか町の造り的なものがあるらしく、それを実際に現地で見てみよう、というのがリューベック訪問の大きな目的のひとつでありました。
 説明しよう、「ガング(gang)」とは。

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 gangはドイツ語で通り道をさすわけですが、ハンザ都市時代、町には労働者人口が増えて、賃貸住宅が足りなくなってくる。そこで商人は、自分とこの邸宅の裏庭スペースを有効利用して長屋を建てる。その裏庭長屋へ通り抜けられるように、邸宅の脇に抜け道が設けられて、これをガング(gang)と呼ぶ、とのこと。これは基本的にパブリックな通路なので、開いてさえいれば(注:門が施錠してあるところもあった)通り抜けられる。構造で言うと、
  表通り→通りに面した母屋→脇にガングの入口→裏庭に小ぶりの民家が並ぶ→ガングの出口→反対側の母屋→別の表通り
 道のこっち側の入口から入ると、裏庭のような通路を通り抜けると確かに小洒落た民家が何軒も並んでて、そのうち反対側の道へ出る。うん、経緯は別にして、これは西陣や山鉾町あたりでよく見るやつですよね、という感じです。

 というわけで、こういうのが大好物のegamidayさん、リューベックの細道を網の目を縫うように歩き回るの図。

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 ほら来た、これ、実にすばらしい。
 人気なく、つゆ音なうものなく、自分の靴の音だけが響き、たまに鳥が鳴く。
 生活感がほどよくあるようで、ないようで、どちらにしろすばらしく小洒落た、裏路地巡り。
 無理してでも来てよかったでしょ、この町。
 なんなら全行程中のハイライトその1だろう、くらいの勢いで。

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 それにしても、いくら”よその人も通っていいことになってる”とガイドブックに書いてあったとは言え、こんな裏路地を興味本位でうろうろするのって、やっぱりちょっと気がひけるところもあるにはあるんですが。
 と思いながら歩いてると、向こうのほうから三輪車に乗ったちっちゃな男の子とそのお母さんが、こっちに向かって歩いてくるわけです。
 あ、住人さんだ。どうしよう、観光気分でふらふら歩いちゃってるの、やっぱり嫌がられるかしら、でもこんな狭い路地だとどうしたって近距離ですれちがわざるを得ないよな。
 と、神妙な表情をして伏し目がちに、すぅっとすれちがおうとすると。
 お母さん、めっちゃフレンドリーでウェルカムに、にこっとスマイルしてくれはる。
 ・・・なんと、ほんとに”パブリックな通路”なんですね。

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 そしてただいま9時半。
 街歩きの最後に、聖ペトリ教会へやってきました。
 ここはエレベーターで塔のてっぺんまで上がって、町を見渡せるらしいのです。

 展望室に足を踏み入れたとたん。
 ああ、やられたあ、と悲鳴が上がるような美しい町並みが。

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 この町を選んでやってきたの、大正解でしたね。
 さすが、女王。

posted by egamiday3 at 18:13| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月13日

(メモ)『未来の社会学』を読んだメモ


未来の社会学 (河出ブックス)
未来の社会学 (河出ブックス)

 おおむね読み飛ばしてたけど、「カーゴ・カルトの神話」のとこだけグッと来た。
 19C後〜20C半のメラネシアで、ヨーロッパ人が本国から船で運ばれた豊富な物資を受けとるのを、現地住民が”特に生産労働していないやつらが簡単に手に入れている”と見て、自分たちのところにも世界の終末に救世主がやってきて、そういう豊富な物資をもたらしてくれるにちがいないから、と言って、到着することなどない荷物のための倉庫を建設したり、あるいは労働を放棄したり、というの。

 そして、それがなんだかんだ言って、じゃあ先進国のやってる「万国博覧会」も結局違わないんじゃないの、的な。あるいは「未来都市想像図」的な。
 しかも上海とかドバイとか、だいぶその未来都市に到達してるし、っていう現実。
 その一方で、逆に、そんな「未来想像図」のようなものすら夢想できなくなったのが、いまの日本で言うところの「失われた○○年」なんだな、と。
 乱暴に、そういう理解。

 そりゃ、地方消失とか撤退社会とかいう流れも現実問題としてはわかるんだけど、あたしらの世代だったらそういう「未来想像図」とか「科学万博」みたいに”未来を想像する”時代を多少なりとも一回ちゃんと通過した記憶があるから、じゃあこれからのネガティブな流れも甘んじて受けてもしゃあないかなというあれはあるかもしんないけど、もっとのちの世代の”失われた”という形容詞の時代しか通過してない人らにも「それが現実だから受け止めなさい」っていうのズルくないかな、って思うから、ネガティブな現実の流れと併行して、併走して、ポジティブな流れをつくるのを夢想したりそれにもとづいて活動したりっていうのだって、みんなでちゃんとやってかなきゃいけないんじゃないかなあ、って思うんだけど。

 地に足のついた、倉庫建設を。

posted by egamiday3 at 18:47| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

(メモ)『メディアの中の読者』を読んだメモ

メディアの中の読者―読書論の現在 (未発選書)
メディアの中の読者―読書論の現在 (未発選書)

 ざっと読んだ。
 『読書の歴史を問う 書物と読者の近代』(笠間書院)の原点なんだなと思いながら読んだ。

読書の歴史を問う: 書物と読者の近代
読書の歴史を問う: 書物と読者の近代

 以下、メモ。

・第4章「読書と地域リテラシー」をちゃんと読んだ。ここはまた読み返すと良い>将来の自分。
・一番ブックマークしたかったところ→https://twitter.com/egamiday/status/1027479142067986432
「信濃海外協会にこそ責任があるとか、行政の長が責任をとるべきだというような、特定の「点」に単純に責任を集約するために行ってきたのではないということだ。ここで問いたいのは、まさにそのように特定の書き手、指導者という「点」に責任を帰することで見えなくなってしまう技術、プロセスであり、それを考えない限り決して読み手に対して働いた「力」は見えてこないということ」「それは単にすべてのものに責任を分散させることで問題の所在を曖昧にすることになってはならない。その責任は、こうした技術、プロセスがいかに機能し、それに人々がどうかかわり、支えてきたのかという不断の問いかけとして、私たちが引き受けるべきもの」
・あと、そりゃそうだなあ、”本を読むことを読書という”というような閉鎖的な世界の中で我々暮らしてるわけじゃないもんな、という感想を持った。そういう考えを忘れずにいよう。
・IT・データベース化のあたりや幻灯資料のアーカイブズのあたりの、テクニカルな問題の議論あたりが、出版された当時の時代やその他の環境的なことの今との違いに気づかされる。ので、こういう議論自体の変遷や関係を俯瞰で見て考察する、みたいなのもおもしろいんじゃないかなって思いました。

posted by egamiday3 at 18:26| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月05日

「この世界のかたちをミニに」@ハンブルク(201806euドイツ2日目その4)


 秀作だ、ありがとう
 この世界のかたちをミニに
 家(うち)を造ってくれて


 ハンブルクに戻り、まだ夜7時半。
 せっかくなのでこれから、もうひとミュージアム稼ごう、と。

 Googleマップとにらめっこして、英語が軒並みアウトなバスドライバーと、無理くり対話しながら無理くりバスに乗って、ていうかなぜ同じバス停から逆向きのバスが出るんだ、などと毒づき(注:たぶん駅前終点だからややこしい)ながらも、やっぱバス乗りこなせる方が街歩きははかどるんですよね。

 ということの末にやってきたのが、こちら。

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 この建物の中に「ミニチュア・ワンダーランド」なる私設ミュージアムがあるらしいのです。「世界最大」というふれこみの鉄道&建物ジオラマ館で、2000年頃から現在にいたるまでなお建設進行中とのこと。
 あまり情報がなくて、文化施設なんだろうかお子様向けなんだろうかというのもよくわかんないまま、ふわっと入ってみると、受付の軽くチャラい娘さんが怪訝そうな顔でこっちに何か言ってくる。
 「あと1時間で閉館ですけど?」
 いや、1時間もありゃ充分だろう、オッケーアイノーアイノーと応じると、にこやかに受け入れてくれはる。
 うん、じゃあ、閉館も近いみたいなんで、さくっと見てきますかね。

 と、入ってみると。

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 ・・・あ、これは「あと1時間」警告受けるわ(笑)
 とんでもないフロアの広さ、とんでもない部屋数、そこにとんでもない縮尺でかつとんでもない数量の、土地、自然物、建造物、都市そのもの、鉄道、そして人や家屋や調度類。
 そのスケールのでかさと、造り込みの細やかさ。
 おそろしい執念をもって、惜しみなくリソースが注ぎ込まれたにちがいない。
 これが私設ミュージアム?
 なんだこのエネルギー、どこから湧いて出る。

 展示は2フロア、10以上のセクションにわかれてて、「中部ドイツ」とか「イタリア」とか「アメリカ」「スカンジナビア」云々という感じで、例えば、

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 ↑あ、これはノイシュバンシュタイン城ですね。

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 ↑これが旅行者のあたしにでも「ハンブルク中央駅」だ!ってわかるからすごい。それくらいちゃんと特徴つかんで造られてるあたり、本物への愛を感じるわけです。

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 時間が経つと夕方や夜も部分的に訪れるという演出になってて、↑夜のラスベガスだったり、北欧だったりする。

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 ↑空港もあって、時折、飛行機の模型が離着陸するという演出。

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 壮大な自然や建造物だけでなく、この世界の片隅で生きている市井の人々の、街角での生活のワンシーンが切り取られていたりする。

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 ↑ヴェスビオス火山のふもとのポンペイでは現代と古代が入り混じったりする、なかなか凝った構成の創作。

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 いやもう、見所がわんこそばのように次々飛び込んでくるから、紹介も追っつかない。
 これはもうしょうがない、ぜひ現地でごらんください。
 ていうか、これ、造るの絶対楽しいやつやん。

 以下、心の琴線、中でも特に"都市""建築"のコードをわしづかみにかき鳴らされる、珠玉の逸品をいくつか。

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 おおっ、これすごい、↑アマルフィ海岸じゃないですか。

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 これもすごい、↑ローマのテルミニ駅だ。別にそこまで特徴ある駅舎ってわけでもないのに、テルミニ駅って見ただけですぐわかるように造られてるっていうのが、何よりすごいと思います。

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 ↑そしてヴェネッツィアーです。
 そう、これ見てわかるんですけど、「精緻に模造」してるわけでもないんですよね、特徴と見どころ・勘どころをしっかりつかんでくれてる。だから、見て「どこそこだ」ってわかるんですよね、それが嬉しいし楽しい。

 それからもうひとつ、別のセクションでは「ドイツの歴史」を時系列で描いたジオラマ群もあって。

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 ↑ドイツの街の、中世と近代であったり。

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 ↑ベルリンの壁が築かれてから、崩れるまで、であったりするわけです。

 いや素晴らしかった、秀作揃いで、造ってくれてる人らにありがとうの言葉しかないですね。
 もうひとつ素晴らしいのは、これらのジオラマ作品すべて、写真撮影自由&SNS投稿推奨、というところ。
 こんなん写真見たらぐっと引き込まれるし、しかも現地行かなあかんわってなるから、ガンガン撮らせてガンガンアップさせるに限りますね。

 思わず堪能してしまいましたが。
 やっとビール&食レポです。

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 あまり深探ししても時間とるだけだなと、駅前の有名老舗店っぽい「Nagel」という店へ。店のプロフィールはよく知りませんが、てかてかした木製の内装といい、いかにもなモノクロ写真の掲示といい、壁に造り付けの酒瓶棚といい、いかにも有名老舗然としてる。なんでも創業は1848年という。

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 朝市以降何も食べてないところにちょっと危険ではあったのですが、この店のハウス的なブロイがある(その名もNagel)っていうから、まあそれは注文せざるを得ないだろうと思って注文したら、見た目のこのいかにもどっしりしてそうなスタウト感からは一切想像できなかった、爽やかな甘みのビールでした。アルコールもそんなに強くなかった。
 ふわっと飲んだけど、もしかしたらこれがシュヴァルツビール(注:バイエルン発祥の黒ビールで、モルトをローストしてるけど、スタウトやポーターのようなエールではなく、ラガーなのですっきりもしている、とのこと)なのかもしれない。

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 一応シーフードのお店らしくはあってそっちも気になったのですが、ここはぜひ、ハンブルクの郷土料理と音に聞く「Labskaus(ラプスカウス)」なるものを経験しておきたくて、注文してみました。

 説明しよう、Labskaus(ラプスカウス)とは。
 ハンブルク他北ドイツの名物料理のひとつで、もともと船乗りの食べ物だったという。マッシュポテトにコンビーフを混ぜて目玉焼きをのせる、という謎の料理。素材の時点でなるほど船の上での保存食料理だなと思うのですが、実際食べてみるとコンビーフというよりふつーに挽肉がたっぷり入ってて、「コロッケの中身をあったかくして出したの」という(ネットでもよく見た)表現が一番しっくりくる。このあたり、自分のコンビーフ認識が狭いだけかもしれない。ていうか、味は、まあ、マッシュポテトとコンビーフを混ぜたらこういう味になるよな、ていう味。
 つけあわせはビーツのたいたん。ていうか本体のマッシュポテトの赤いのからしてビーツらしい。あと、なぜかのってるニシンの酢漬け、最初この店のオリジナルかとも思ったけど、定番らしい。漬かり過ぎたままかりみたいだったけど。

 余談ですが、サーブしてくれた店の兄ちゃん、終始フレンドリーだったんだけど、このラプスカウスを注文したときだけちょっと顔を曇らせるので、あれ、どうしたんだろうと思ってると、

 「えっとあのー、このラプスカウスっていうのはー、肉ではなくてマッシュポテトで、挽肉がどうとかこうとかで」

 うん、そうですよね、そう聞いてますけどそれが何か? 

 「ポーションとかでなく」

 あ、なるほど、かたまり肉のステーキのような、ちゃんとした肉料理と間違えて注文するかもしれない人のために、説明してくれてるわけか。
 まあ確かに、特に予習もなくぼんやりとこれを注文して、出てくるのがあの謎すぎる見た目の、ていうか言っちゃうと決して美味そうではない見た目で、味自体そこまで気分のあがるものでもない(注、結構、お塩振った(笑))このお皿が出てきたら、と思うと、これまでそこそこクレームも受けたりしたんだろうな、とちょっと気の毒には思いますね。
 そこは、郷土料理あるあるということで。

 郷土料理あるあるといえば、前の方の席にアジア系の個人客が来て、お店の人とわりと長くやりとりしてた末に、でっかいフライパンにシーフードはじめどっさり具材が入ったの(注:フライパンに盛り合わせで料理出すのもこちら流らしい)が来たの、一人で苦戦してたかもしんないけど、あれはあれでちょっと美味そうでうらやましかった。こっちのマッシュポテトよりは(略

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 最後、ホテルの近くで2軒目1杯。
 昨日の晩にグレーニンガーで飲んだあのこってりした”ピルスナー”がどうしても不審で、あのレベルがこちらの土地では普通なのかそれとも特殊なのか、確かめないとこの土地を離れることはできないとの想いから、ここはあえてふつーのチェーンっぽい飲み食い屋で、大手メーカーっぽいふつーのピルスナー樽生をもらってみた。
 そしたら、あ、ふつーのピルスナーなビールだった。

 ていうか「Konig Pilsener」って書いてある。
 これ多分、日本でも飲んだことあるな。

 やっぱあの”ピルスナー”は謎だった。


posted by egamiday3 at 11:07| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月03日

「今度こそは、デンマーク方面行きです」@デンマーク?(201806euドイツ2日目その3)


(前回までのあらすじ)
 国境越え&デンマーク入りを目前にしながら、失意のもとにバスを降りたegamiday氏。
 ドイツの果ての浜辺には、ただ生あたたかい風が吹くばかりであったという。


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 プットガルテンの港に降り立ってみたものの、ただ単に”国境いの浜辺”という以外に特に何かあるわけでもなく、防波堤と軽食を売る車と、あとはなまらでっかい免税ショップがあるばかり。そう、ここはどうやら、高税金のデンマークから酒やタバコやを大量に買い付けにドイツまで、わざわざ車&フェリーでやってくる、という人たちの目的地なわけですね。

 さて午後の予定が一気にカラになりましたので、これからどうしよう、ハンブルクに戻って市内観光でもするか、もともと明日行く予定だった北ドイツの街・リューベックに前倒しで行っちゃうか、ああだこうだと作戦会議を立てながら。
 とりあえずはとぼとぼと鉄道駅へ向かうべく、小ぶりなターミナルビルまで戻ってきました。

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 さて駅はどっちかしらと建物内をうろうろしてると。

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 なんか、この通路的なところからおっさんが一人、ふわっと出てきて、ふわっとどっか行ったわけです。
 あれ、おっさん出てきたな。STOPて書いてあるけどな。
 ・・・ていうか「mit *** ticket」て書いてあるということは、「with *** ticket」ってことよな、あとのドイツ語はわからんけど。

 と思いながら、あらためて周囲を注意深く観察してみると。

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 料金表?
 自販機?
 時刻表?「プリンセス」なんちゃらと書いてあるのは船の名前っぽい?

 問題:これらの手がかりから導き出される推論は?

 (Thinking Time......)

 ・・・・・・「自販機でこの料金のticketを買って、この通路を通れば、この時刻の船に乗れる」?
 
 問題:そしてその行き先は?

 「デンマーク」!
 おおっ!(笑)

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 なるほどなるほど、で、置いてあるこのパンフがその案内というわけか。
 そりゃそうだ、列車が載るフェリーというのは「列車”も”載る」というだけで、人だって単身で乗るでしょうよと。
 しかも時刻表とその船の名前を見れば、3隻でピストン輸送、往復でもそれほど時間かからなそう、というのがわかりますね。

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 というわけで急遽、「単独・徒歩でフェリーに乗り、デンマークまで無意味に往復しに行く旅」、1名様にて催行決定であります!
 よっしゃ、今度こそこのチケットでデンマークまで到達してやる!
 (注:なおチケットは免税店でのタバコ割引クーポン付き)

 ところで、自販機でチケットを買ってると、地元のおじいさんっぽい人が来て「買い方がわからない」的なことをこっちに訴えてくるんだけど、向こうもドイツ語しかわからないらしく、しょうがないからとりあえず身振り手振りで無理くり教えてチケット買わせる、なんてこともしてます。
 チケット買う人がいるということは、やっぱり乗れるんだよな、うん。

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 とは言いつつも、ここに10人20人でも他のお客がいれば安心できるんですが、長い長い通路に人っ子ひとりいない。係員もいない。
 その通路の端の端に、バーコードをかざして中に入れるようなゲートがあり、そのすぐ前にガラス扉があって、扉の向こうに警備スタッフがいる。
 なんだろう、三途の川→ゲート→閻魔さま、かな、っていうような雰囲気ある。

 まあいいや、とりあえず中に入れるかどうかやってみますね。
 まずバーコードをかざす。ゲートが開く。ゲートを通ると、ゲートが閉まる。
 よし、じゃあ次に目の前の扉を。
 ・・・・・・扉が開かない。
 開かない扉をガタンガタンとやってると、警備スタッフに気づかれ、大儀そうに「そこであと何十分待ってろ」的なことをおっしゃる。しまった、ことを急いてしまったのか。
 まあ、しかたがないので、ゲートと扉に挟まれたこの狭い空間でしばらく待ってます。
 というと。

 ・・・あ、さっきのおじいさん来た。
 あ、ゲートにバーコードかざそうとしてる。
 まだこの扉開かないから、そこで待ってたほうがいいですよ。

 (おじいさん)「***********」(バーコードをかざそうとする)

 いや、だからね、まだ早いの、ね、ウェイト、ゲートのそっち側にチェアあるじゃん、チェア、座って待ってたらいいって。

 (おじいさん)「***********」(バーコードを縦にしたり斜めにしたり)
 (ゲート)「ピッ」

 ・・・・・・入ってきちゃった。

 (おじいさん)「ガタンガタン」
 うん、だから開かないんだって。
 (おじいさん)「***********」
 うん、わかんないけど。

 というわけで、狭い空間でおじいさんとぼーっとふたりきりの図。
 なにこれ(笑)。

 で、このあと、ひょろっとした青年だの、缶ビールケース担いだ屈強なおっさんだのが続き、最終ベビーカー連れの若夫婦が来たところでなぜかほっとひと安心、ていう。

 そうこうしているうちに。

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 デンマーク側の港・ロービュから来たフェリーが到着しました。
 どうやらこいつに乗り込んで、そのまま折り返し、のようです。
 それほど待つことなく出港し始める様子をみると、だいぶ人気というかよく働いてる路線なんだな、と思います。徒歩組こそ10人未満でしたけど、乗用車で乗って来た組が船内で大勢はしゃいでましたので。

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 というわけで、出港。
 このプリンセス・ベネディクト号は、今度こそ、デンマーク方面行きです。
 待ってろよ、デンマーク!
 特に思い入れも目的も無いけど、その国境を飛び越えたるからな!

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 船は海峡をぐんぐん渡っていきます。
 ていうかこの海峡、貨物船がかなりひっきりなしに横切ってる。交通の要衝的な土地柄だなとわかります。
 ちなみに同じ路線のフェリー2隻ともすれちがいましたので、活用されてるルートなんだなとわかります。列車そのまま載せてでも走りたい気持ちはわかる。

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 ちなみに船内は免税天国でしたが、誰も買い物してる様子はありません。まあ、そりゃ、さっきまでドイツ本土でたんまり買い溜めしてきた人たちでしょうから。
 やることといったら、家族でインスタントなフードコートに座ってむしゃむしゃ飲み食いするくらい、みたい。 

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 そこまで長い船旅ではないので、しばらくすると対岸のデンマーク、フォルスター島がだんだん見えてきます。
 山らしい山など何もない真っ平らな土地柄のよう。

 で、iphoneが電波をキャッチするなどの段階を経て。


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 ついに着岸。
 この旅で3ヶ国目のデンマークに入国であります!
 自家用車組は待ちかねたぞとばかり、我れ先にと発進していきます。

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 徒歩組のこちらはといえば、示された通路を通って、なんとなあく入国です。シェンゲン協定内ですからもちろんパスポートコントロールもありません。

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 パスポートコントロールがない、というより、正味、何も無い。
 ドイツ側には公園や岬や免税ショッピングモールなどの”滞在の余地”があったのに対して、デンマーク側にあるのは駐車場とバス停だけ。いや、ほんとに車で通過するだけの港、閑散としてます。
 人がいない。
 いるとして、フェリー乗り場の建物でスタッフらしい人らが仕事の話してるだけ。あと、申し訳程度のスナックの自販機があるだけ。
 あと、ドイツ側のゲートにいたひょろっとした青年が、むこうのほうをぶらぶら歩いてるのが見えるだけ。

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 トリップアドバイザーによれば、ちょっと離れたところに近年の教会があるらしいんだけど、徒歩で行ける道があるかどうかもよくわかんないし、とにかく人がいなさすぎてうかつにここを離れるのが不安なレベル。

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 ただ、いまは一時的にでしょうが使われなくなっている、つまりまるで廃線かのようなロービュ港鉄道駅が、非常にワクワクする装いを見せていたことをここにご報告します。
 いやー、このたたずまいは萌える。
 ていうかヤバイな、”こっちの趣味”の扉も開いちゃうの、めんどくさくなるぞ、的な。

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 というわけで、特にこれと言ったtodoが何も無いので、入国から30分くらいしか経ってませんが、早くも帰りのフェリーに乗ろうとしてます。
 このドイッチェランド号は、1500発、ドイツ方面行きです。

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 (あっさりと)さようなら、デンマーク。
 デンマークっぽさは何も無かったけれども。

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 そういえばお昼も食べてなかった。

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 で、艱難辛苦(数十分の航海)を乗り越えて、遂に我々はドイツに帰還したのでありました。
 ただいま、ドイツ。
 デンマークはね、閑散としてたよ(風評)。

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 なお、帰りの鉄道まで待ち時間があったので、例の大型免税ショップを冷やかしに。酒とタバコとチョコレートその他が倉庫のように積んであり、それらを買うという行為しかできないように設計されている、欲望の館。一本通路を矢印に沿って歩く以外になく、その結果全フロアをくまなく連れ回され、出口ではレジを通るほかに脱出方法がないため、まあせっかくだから寝酒代わりにとウィスキーのミニ瓶を買ってきたのでした。なぜか「竹鶴」。

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 ・・・やっと帰れる。この車両はハンブルク方面行きです。
 帰りはローカル便なので2時間ちょっとかかる。
 車内で、明日の宿を探してネット予約、などとしてるうちに。

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 19時35分、ハンブルク到着。
 おつかれちゃん。

 ちなみに。
 行きのフェリーゲートで見かけたひょろっとした青年。デンマークの港でどこかへ歩いていった、かと思いきや、実は同じ帰りのハンブルク方面列車にも乗ってたんですよね。
 ・・・「無意味にデンマークまで往復の旅」は、どうやら催行人員2名だったらしい(笑)。

posted by egamiday3 at 06:13| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月02日

2018年7月のまとめ


■2018年7月のまとめ

●総評:
 酷暑で何もできない。

●まとめ
・「京都インディーズ・ジョーンズ」、第1回は「ミシマ社」
・図書館見学会
・ビデオミーティング
・呉のレッドIPA
・#なつのとも2018
・「学区」@警報
・エルディンガーのアルコールフリー・ヴァイス
・星野リゾート
・宵宵宵山イブ(7/13)@前祭。何も無い、これは萌える、これこそが萌えだ!
・「201806euドイツ」執筆開始
・別棟ネゴシエーション
・高野屋のニューヨークビール特集
・もう、ビール作りたい。
・中野劇団「代役」。尋常じゃなくおもろかった。
・この我が輩をして宵山をあきらめさせるほどの酷暑/こんなに暑い杉本家さんには来たことがない
・図書配架の段取りに苦心するおっさん@吹田。分類の判断が一番の作業コスト。
・アイスクリームスクープのおっさん@さつき会
・定例会@韓国料理屋
・図書配架の段取りに革命を起こすおっさん@茨木。配列が一番の作業コスト。
・ヘルメット、グローブ、マスク、ゴーグル
・宵宵宵山@後祭、鷹山が入るから残り基数が増える問題。
・自家製パン@バンガロー
・京都文化博物館「平安博物館回顧展 : 古代学協会と角田文衞の仕事」
・「サマータイムマシン・ブルース+ワンスモア」(公演前特番)
・森美術館「建築の日本展 : その遺伝子のもたらすもの」
・パウラーナーの生
・ゴーゼが日本で飲めるんですか!?
・ホワイトボード・ディスカッション@NII
・今季の寄席が終了
・ひと口ひと口が全部美味い、茄子のパスタ、オレキエッテ、ポレンタ、ドルチェ@岡崎
・ヨーロッパ企画「サマータイムマシン・ワンスモア」。生きてこの作品を見られたことに感謝している。
・「高嶺の花」
・桃

●7月+8月の夏テーマ
・ドイツまとめ (→進行中)
・秋期寄席のデザインし直し (→未着手)
・リトアニア準備+OCLCまとめ (→すこし進行中)

 なお、その他事務的todo多数。

posted by egamiday3 at 05:35| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする