2019年02月28日

「酢漬けものに慣れない私たち」@バンベルク(201806euドイツ6日目その2)


 引き続き、バンベルクからお届けしています。

 前の記事では18世紀の宮殿跡までやってきて、バラ庭園から美しい中世の町並みを一望できますよなどと、文字通りお花畑なことを書いてましたが、そんなとこにわざわざ足を運んだのにはちゃんと理由がありまして。

IMG_1428_201806eu.jpg

 ↑宮殿内に州立図書館(Staatsbibliothek Bamberg)があるのでした(だからわざわざ来た)。
 わりとがっつりした数量の稀覯書展示エリアがあって、あと閲覧室にも入れた。宮殿内に設けてあるから天井がバロック装飾だったりするんだけど、あとはまあ、ふつーの静かな大人向け(おそらく歴史系)図書館という感じで、参考図書類があって、書見台があったりマイクロリーダーがあったりオーバーヘッドスキャナがあったりという感じ。宮廷なり修道院なりの蔵書が資産として受け継がれてきて、ここで州立図書館として運用してるというパターンなんでしょう。
 そして、ここもやっぱり誰でもふらっと入れるんだね。さすがドイツ3B(bibliothek)。

 さらにもうひとつ。今度は駅に近いあたりまでだいぶ戻ったあたり、新市街エリアに↓市の公共図書館(Stadtbucherei Bamberg)もちゃんとありました。

IMG_1464_201806eu.jpg

 ここはもう、絵に描いたような市の公共図書館であり、明るくて入りやすくてデザインも調度もわりと新しく、開架に貸出用図書あり、児童書エリアあり、参考図書エリアや視聴覚資料ありといった見慣れた装いのところですが、縦に数フロアあって、人口7-8万人くらいだったと思うけどそれにしてはかなり充実してるほうなんじゃないかな、って思いました。リューベックも開架書庫に蔵書充実してたけど、やっぱ本には手厚いお国柄なのかしらと。

IMG_1460_201806eu.jpg

 ↑もうひとつ見つけたこれは・・・あ、ビールのbibliothek、でした(笑)。ドイツ3Bのうち2Bを兼ねる。

 それはさておき、その市立図書館の数軒お隣にあるのが、この町伝統のラオホビールを提供する2大老舗のもうひとつ「Brauerei Spezial」です。
 せっかくというかもうとっくにお昼時なので、昼食をここでいただくことにしました。

IMG_1293_201806eu.jpg
IMG_1295_201806eu.jpg
IMG_1296_201806eu.jpg
IMG_1297_201806eu.jpg

 創業1536年の老舗ブロイハウス。
 燻製のにおいと歴史的建造物の香りがしっかり漂う。

 昨夜の店「Schlenkerla」と似たサイズの食堂っぽいフロアに、木の長机が何本かぼてぼてと並んでます。まあ平日の昼間だからでしょうか、観光客っぽい人はあまりおらず、ジャージ姿のおっちゃんなどといったネイティブ感がだいぶ色濃い、ちょっとそわそわします。
 しかもと言うか、フロアのおばさんがつっけんどんで愛想無しのパターン。これどうしたらいいのかなとおたおたしてると、そばの机で昼から呑んでるおっちゃん(注:ていうか、みんな昼から呑んでますが)がドイツ語で(たぶん)「その辺に座れ」的なことを言ってくれる(註:ドイツではカフェでもビアハウスでもたいてい勝手に席についていい習わしになってる)ので、あ、そうすか、それじゃあ、とそのおっちゃんのはす向かいあたりに腰を下ろすと、今度はドイツ語で(たぶん)「そこには座るな」と、理不尽にも追い払おうとする。
 え、何、どうなってんのこの老舗。怖いんですけど。

 註。これ、あとから思い当たったのですが、ドイツにはStammtischという”常連席設定”が伝統的にあるらしく、地元のお客がいつでも好きなときに来ては顔見知り同士で酌み交わせるように、コミュニティ用のスペースを確保してる、というのを物の本で読んだことがあって、それがあの机だったんじゃないかな、という気がします。じゃあまあ、アカンって言われてもしゃあないのですが。

 そんなこととはつゆ知らず、別の席におたおたと腰かけて、とりあえずの注文はこちら。

IMG_1465_201806eu.jpg

 すばらしい、この、見た目は非常にどっしりとした紛うことなきヘーフェヴァイツェン(酵母無濾過の小麦ビール)。しかもお客さん、これでアルコールフリーなんですよ。さすがドイツ、さすがバンベルク、純粋令を先取りしてたビール王国、ビールの足腰がちがう、このアルコールフリーのヘーフェヴェイツェンがまともに”ビールとして美味い”わけです。これ日本でも頼みますよ、こういうのあれば休肝がはかどって、国民の健康維持につながる。
 本旅行での最大の学びのひとつ、「ドイツの美味いアルコールフリーは、美味い」。

 で、食事はとりあえず軽めに、しかもここへ来てさらにアスパラガスをということで、メニューからシュパーゲル(ホワイトアスパラガス)のサラダを注文しました。

 しかしやっぱりなんとなくそわそわして落ち着かない。フロアのおばさん(命名「愛想なし」)や理不尽なおっちゃん(命名「常連」)もそうなんだけど、今座ってる机のちょっと離れたところにいる若いご婦人、ひとりでビール呑んではるんですけど、あっちの客の様子見てはフフフと笑い、向こうの客の動きを見てはクスクスと笑い、こちらがスマホでビールの写真撮ったりすると、そりゃまあそんな日本人観光客の様子も確かにネイティブさんから見たらアレでしょうけど、クツクツと笑ってきては、だらだらとひとりでビール呑んではるので、えっと、とりあえず命名「笑い猫さん」でお願いします。
 ていうか、なんか登場人物がそろいもそろってちょっとづつしんどい、っていうドラマみたいになってる。

IMG_1466_201806eu.jpg

 ↑シュパーゲルのサラダ、こんなふうな装いで来ました。
 もっと野菜野菜してるかと思ったら、冷たいドレッシングソースにしゃぶしゃぶ漬かっててマリネっぽい感じでしたね。
 というのを実食。

 ・・・・・・酸っぺぇ〜。

 えっ、何これ、酢漬けなの? 
 シュパーゲルって、昨日のお昼にライプツィヒで食べたじゃないですか、ライプツィヒ風温野菜盛りみたいなの、あのシュパーゲルはふつーにゆでただけで素朴な野菜の甘みがあったと思いますよ。
 でも、このシュパーゲルにはそういう甘みみたいなんがない、わりとキンキンに冷えて、キンキンに酸っぱい感じ。

 んー、なんだろう、これはこういう料理ですっていうことなんだろうか、とも思うし。
 保存食的な加工として酸っぱくしてある、ってことかな?、とも思うし。
 いやこれ、もしかして、もしかしたら、缶詰か瓶詰めで酢漬けにしてあるやつを出してきとるってこともあり得るぞ、とも。疑惑の念。
 何にしても、酢漬けのつもりにしろマリネのつもりにしろ、この酸味にはちょっと慣れないかなあ、アスパラの味殺してるもんなあと、もそもそといただいておるわけです。物の本によれば、バンベルクって中世から美食で有名な町だったらしいんですけど、これは「?」だぞと。

 で、まあこんなもんかと、不機嫌に忙しそうな愛想無しおばさんを呼び止めて、お会計にしてもらおうとする。手書きのお代を見て、財布の手持ちから現金(註:ドイツではカード不可の店が存外に多い)を出す、キリのいい払い方をすると若干チップ多めの状態になっちゃうな、なんだかな、まあいいや、と、「じゃあ、これ全部どうぞ」と差し出すと。
 現金、ってのはこういうことを言いますね、愛想無しおばさんがくるっと「あら、どうも」と微笑んでくるわけです。なんだ、きみ笑えるじゃん、と。
 しかもさらに「どうでした、美味しかった?」とお愛想で問うてくる、そこまでかよ笑、と思いつつ、答え。
 「あー、良かったけど、リトルサワーかな」

 すると。
 まわりにいたネイティブなお客の人たち、愛想無しさんも笑い猫さんも含め、そろって「ふふふっ」と軽くなごやかに笑うわけです。
 ・・・え、なんだろう、このふわっとそよ風が吹き込んで来た感じ。

 すると、ちょうど新たに入店してきたばかりの一人の紳士が、近くの空いた席に座ろうとしながら、「あー、それはね」的にしゃべりかけてくるわけです。
 この新キャラの紳士、恰幅がよくて丸顔で髭面で、ビジネスマンか大学教授かのような出で立ち、ネクタイこそないけどクールビズ姿で、汗をぬぐいながら、暑い中やっとこの店まで来たぞという様子。えっと、極私的に「ウシ先生」と命名します。
 ウシ先生の解説によれば。
 「それはねー、ローカルフードなんだよー、この土地ではティピカルなんだよねー」と。
 あ、そういうことなんだ。
 そういえばメニューにFrankischer(=フランケン地方)と書いてあったかなと。
 (註:ここバンベルクは、ドイツ南部のバイエルン州の中でも、フランケン地方と呼ばれる地域にあります。)

 のちに調べました。日本語はおろか英語でも情報がなくてなかなか難渋しましたが、がんばってドイツ語で見つけました。
 この料理「Frankischer Spargelsalat」、すなわち「フランケン地方のホワイトアスパラガス・サラダ」という名前がついたもので、ネットにあがってるレシピをいくつか見てみると、多少の砂糖やバターも使ってはいるものの、基本は大さじ何杯かの酢とそれと同量のオイル。これにアスパラを漬けて冷やす、と。なるほど、そう聞くと納得いく料理だし、確かにああいう味になるよな。で、一度にたくさんつくって冷蔵庫で冷やして置いておけば、注文が入る都度出してこれるでしょう。そういえば、とある日本人の旅行ブログに「(別の店で食べた)アスパラガススープの具がやたら酸っぱかった」ことを書いてあったのですが、これも酢漬けのアスパラを刻んで具にしたと考えればうなづける話ではある。
 ていうか、缶詰瓶詰めじゃなかったんだね、疑ってごめんなさい。m(_ _)m

 ウシ先生、「どこから?」
 あ、日本です。
 「あーそう、バンベルクは初めて?」
 はい、いいところですね。でもこれからミュンヘンに行きます。
 「ミュンヘン行くの。僕はいまミュンヘンから来たところなんだよ。でもねー、ミュンヘンなんかよりバンベルクのほうがいいよー。断然バンベルクがいい。僕は好きだね」

 うん、そうですね。あたしもそう思います。
 常連さんも笑い猫さんもなんだかんだいっておもろかったし、ウシ先生がそうおっしゃるならいいところなんだろうなって思うし、トルコの兄ちゃんもそう言ってたし。実際もうちょっとゆっくりして町歩きしたりビール飲んだりもしたくなる町だな、って。
 でも、今日はこれからミュンヘンまで移動したうえで、もうひとつエクスカーションを稼がないといけないので、にわかに後ろ髪ひかれる感じになりつつもおいとましますね。

 さようなら、バンベルク。
 egamidayさんはバンベルクを愛しました。
 だいぶ小さな町だけど。
 あと行けてない醸造博物館もまた行かなきゃ。

IMG_1468_201806eu.jpg

 バンベルク発→ミュンヘン着。
 ていうか、もう当たり前のように遅延してるので、時刻書く意味もあんまない。だいたい13時前にバンベルクを出発して、14時半過ぎにミュンヘンに着いた感じです。

IMG_1472_201806eu.jpg
IMG_1473_201806eu.jpg

 というわけで、ついにラスボス、ビールの底無し沼・ミュンヘンに到着しました。
 ミュンヘンには2泊の予定です。

IMG_1474_201806eu.jpg

 駅近でキッチン付きの宿が安売りで予約できたので、遠慮無くビールが呑めます。
 そして、ここを拠点に今日・明日・明後日と動きます。

 で、15時半ですが、さっそくこれからまた別の町へお出かけします。
 次のビアライゼは、ヴァイエンシュテファンです。
posted by egamiday3 at 21:01| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月27日

あなたのデジタルアーカイブはどこから? @「私はメタデータから」 (その3)ジャパンサーチでメタデータさらさらのためのCC0/PD習慣


 デジタルアーカイブのメタデータのあり方を、大学図書館の現場で、ジャパンサーチに寄り添って考える(2018年12月現在)メモの第3弾。特に、メタデータを赤血球として血液さらさらに流したかったら、その成分自体をにらみつけてうんうん考えてばかりではなく、その流し方とかつながり方を考えたほうがいいよな、っていういくつかのメモです。要点は3つ、自由かつオープンに流れるようにすること(CC0/PD)、海外にも広く流れるようにすること、みずからが流れのハブになること(つなぎ役と”サブつなぎ役”)、です。

(その1)赤血球に2つの成分が効く http://egamiday3.seesaa.net/article/464235925.html
(その2)まだ見ぬ連携先に狙いを決めて http://egamiday3.seesaa.net/article/464274503.html


●利用条件

 註:コンテンツの利用条件ではなく、メタデータの利用条件のことです。
 (その1)で言及したように、『ガイドライン』ではメタデータが立派な赤血球になるための要件として、自由な二次利用を可能とすること、を示しています。CC0またはPDです。メタデータもサムネイルもどちらもです(コンテンツは別)。いくら立派なポータルが試験公開だ本番公開だとされたところで、データ自体に権利的なひっかかりがあると、あちこちで失速・滞留してとてもさらさらとは流れてくれない。広く流す、ということは、どこでどう使われるか想定不可、ということですから、限りなくゼロに近いフリーでないと流れてくれる保証がありません。
 もう一度言います。メタデータと、サムネイル/プレビューは、CC0/PDでお願いします。

 たぶんですが、ジャパンサーチというポータルを介して国内外に流通させよう、という時に流す側に必要なのは、うちから発信するデータが、どんな国のどんな分野のどんなシステムでどんな文脈でどんなユーザに見られいじられこねくりまわされることになろうと、いっこうにかまわない、というある種の覚悟じゃないかな、と思います。あなたの子供はあなたの所有物ではないし、あなたのところにある文化資源はあなたの専有物ではない、ましてやメタデータやサムネイル/プレビューなんか、いったん世に出ればCC0/PD、アウトオブコントロールです。
 …ということを、いや、図書館員であればまあ理解できると思うんです、いちいちメタデータに権利を主張するようなトンチンカンはまともな司書教育を受けてる中にはおらんだろう(と、思いたい)。
 問題は、デジタルアーカイブというしろものは図書館が単独でつくるようなものとは限らない、限らないというよりむしろそうでないことのほうが(図書館所蔵資料のデジタルアーカイブであっても)多いわけで、大学であれば学内の研究者や他部署の別職種関係者と、あるいは学外の専門家や関係者と連携・協働する。あるいは収録したコンテンツの出どころ・所蔵者自体がよそさんだったりする。そういう人たちと連携しあるいは協力を依頼してメタデータ、あるいは解題・記述の類を作成したときに、さあいざ流通さそうぜ、という段になって、いやサムネイルとは言え勝手に使わせるのはちょっととか、精魂込めて書いたディスクリプションをコピペさせるとはけしからんとか、そういうコテッとつまづくような世知辛さを言い出す人が出てこないとも限らない。あと、いまはやりの、クラウドなんとかイングでたくさんのユーザがデータつくってくれました、タグ付けしてくれました、みたいなのについてもじゃあ不特定多数の人による生成物を、どこへどう流通させたって文句言いっこなしですよね、っていうようなことはあらかじめ同意得ておくとか、そういう先手先手はいるだろうな、とも思います。


●海外ユーザのために

 そもそも「ジャパンサーチ」というネーミングセンス自体、日本のコンテンツを海外に届けよう、的な発想から醸し出されてるというにおいがぷんぷんします。”可視化のため”とさんざっぱら言ってますが、視せたいのは誰?かといえば、日本のコンテンツを自力でサーチできる日本リテラシーの高い日本人よりもむしろ、そうでない海外のユーザを想定するほうが、より”可視化”、”可視化”オブ”可視化”だろうと。そういうことは、『方向性』でも『ガイドライン』でも言ってるし、手前味噌ですがあたしがらみの参考文献(参考1:JALプロジェクト2016「海外日本美術資料専門家(司書)の招へい・研修・交流事業」実行委員会. 「日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための課題解決についての提案」. 2017.3.31. http://www.momat.go.jp/am/wp-content/uploads/sites/3/2017/04/J2016_520.pdf.)(参考2:江上敏哲. 海外における日本研究と図書館 : 概観および近年の動向・課題と展望. 情報の科学と技術. 2017, 67(6), p.284-289. http://doi.org/10.18919/jkg.67.6_284.)も参照いただければと思います。
 まっ先に思いつくのは「英語」や「ローマ字」をメタデータに含めること、だろうと思います。残念ながら、国内主要大学のデジタルアーカイブだけでなく、そもそもうちとこもその辺は決してちゃんとできてるわけではないですが、やはり「英語」「ローマ字」。国文研・新日本古典籍総合データベースの海外ユーザを対象とした調査(井原英恵. 「国際社会の中での日本のデジタルアーカイブ:新日本古典籍総合データベースの海外ユーザー調査から」. 日本図書館研究会情報組織化研究グループ. 2018.6.23発表. http://josoken.digick.jp/meeting/2018/201806.html.)というのがあって、それによれば、「回答者の63%が英語インターフェースを使用している」、「ローマ字で提供してほしいメタデータは、個々のタイトルと作者」等々、とのことです。例えばですが、「渋沢社史データベース」(公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター. 「渋沢社史データベース」. https://shashi.shibusawa.or.jp/.)のようにローマ字付与等をすでに実現している国内のサイトを参考にすると良いかなと思います。
 もちろん、英語以外の言語のことも考えないといけないよな、っていう問題もありますが、それは端的にユーザが英語話者とは限らないから、というだけの話ではないです。日本のコンテンツを求めて探している人が、日本だけをピンポイントにしているとは限らない、むしろ中国・韓国・台湾その他の東アジアやアジア全体をひっくるめて国際的・横断的な視野で研究してますよ、というパターンの方がいまどきは多いんじゃないですか、となったときに、じゃあ例えば孔子や論語は「孔子」「論語」だけでいいですかと、アリランやソウルはどうですかと、人の名前や土地の名前、海の名前や島の名前はどうしますかと。なのでメタデータの表記については単純に「英語・ローマ字」で終いにするのではなく、「多言語」としてオープンにしておいていただければと思います。
 なお、英語/多言語にしておきさえすればそのデータはどこに置いてあっても見つけてもらえる、なんてそんな甘っちょろい話は無いわけなんで、自分とこのメタデータを海外ユーザの目に触れさせたい、と思うんであれば、海外ユーザがふだん目にするところ=海外の各種ポータルサイトで発信できるような連携もしたらいいかと思います。国際的に利用の多い総合的な検索サイト、Google、OCLC、ウェブスケールディスカバリーといったものに加えて、「Ukiyo-e.org」「Artstor」「Getty Research Portal」のように各分野においてメインでインターナショナルなポータルサイトと積極的に連携していけばいいじゃないですかねっていう。例えば、東京文化財研究所さんの最近の活動はすごく参考になるやつばかりで、Getty Research Instituteと連携して、過去の刊行物600タイトル以上のデジタル版をGetty Research Portalから検索できるようにしてる(参照:「ゲッティ・リサーチ・ポータルへの東京文化財研究所刊行物の情報提供」. 東京文化財研究所. 2018.10. http://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/809721.html.)っていうのなんかもっとこの界隈で大騒ぎになっていいと思います。


●"サブつなぎ役"となるということ

 さて、この説明が大学図書館の人向けであることを、もう一度思い出します。
 各大学図書館というのは、ジャパンサーチを介してメタデータを流通させようという日本全体のエコシステムで言うと、

 ジャパンサーチ (すべての親玉)
 「つなぎ役」 (各業界を束ねる親玉)
 「各アーカイブ機関」

 3層構造のうちの末端・「各アーカイブ機関」になります。大学図書館の「つなぎ役」は国会図書館・NDLサーチであると想定されていますので、「NDL兄貴ぃ〜」っつってメタデータ類を納めにいくことになります。
 とは言え、です。自分たちを単なる3層構造の末端でしかないとする理解はいかがなものかと思います、このエコシステムは多分そんな単純じゃないし、単純に考える必要もない、もっとおもしろく、可能性潤沢に考えていいんじゃないかなって(ええように言えば)。
 中規模以上の大学の大学図書館さんであればよくおわかりかと思いますが、大学図書館は大学という機構組織の中にあって、なにかとまとめ役・調整役を担う(担わされる/担わざるをえない)シーンも多々あるかと思います。それはこのデジタルアーカイブについても同じことであって、学内の各部局がそれぞれにwebサイトにあげてみたりとか、学内のあちこちの研究者が科研費やらプロジェクト費やらなんやらで単独で構築してみたりとか、あちこちに生えたタケノコのようなデジタルアーカイブを、外部との間に立ってどうにかこうにか束ねあげ、NDLさんなりジャパンサーチさんへつなぐ窓口、”サブつなぎ役”としての役目を担う必要も出てくるんじゃないかと思います。というか大学図書館なんて、単独で完結するようなことなんかむしろ無くて、そういうつなぎ役で存在アピールしていかないとあれだろうっていう。
 それは、単なる学内調整役としての中間管理職、っていう意味にとどまるわけでは決してない、というのは、うまくやってるよそさんの事例を見ればわかると思います。文化学園大学の「服飾分野における機関横断型デジタルアーカイブ構築に向けて」(金井光代,中村弥生,田中直人,近藤尚子. 「[A43] 服飾分野における機関横断型デジタルアーカイブ構築に向けて」. 『デジタルアーカイブ学会誌』. 2018, 2(2), p.56-59. https://doi.org/10.24506/jsda.2.2_56.)はある専門分野におけるポータル/横断的デジタルアーカイブ、という意味では複数機関をまとめあげたつなぎ役になり得るし、多分似たような事例は探せば国内・国際であることでしょう。それから特に地方の国立大学は、地域のまとめ役みたいな役割を持つこともできるという強みがあって、例えば島根大学の島根大学附属図書館デジタル・アーカイブというのは、学内の所蔵資料に加えて、研究者が地域の資料調査なんかで掘り出してきた資料だとか、その地域の他機関が所蔵する資料だとかいうのもまるごと収録しているということらしいです。そういう、大きい意味だけでなく、それぞれの場所でそれぞれのサイズでのまとめ役・つなぎ役という立ち位置を、居場所を確保できる可能性があるんだったら、ジャパンサーチの文書・マニュアル類の「つなぎ役」のところにも目を通していろいろ発想してみるのも、ぜんぜんムダじゃないんじゃないかなって思いますね。

 以上、「あなたのデジタルアーカイブはどこから? @私はメタデータから」、でした。
 Aはどこからだろう、「人材育成」あたりかな?

posted by egamiday3 at 05:53| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月23日

あなたのデジタルアーカイブはどこから? @「私はメタデータから」(その2)まだ見ぬ連携先に狙いを決めて


 ひとつ前の記事はこちら↓。
 「あなたのデジタルアーカイブはどこから? @「私はメタデータから」(その1)赤血球に2つの成分が効く」
 http://egamiday3.seesaa.net/article/464235925.html

 メタデータは、ジャパンサーチを介してかけまわる赤血球のようなものであると。
 そのメタデータの主要な要素は5つ(タイトル、人物、時間、場所、管理番号(識別子))、最低限で2つ(管理番号とタイトル)あれば、ジャパンサーチに入れてもらえると。
 いうことまでわかりました。

 よっしゃ、じゃあやったろう、っつって突っ走れるかって言うと、そんなことができるようなら苦労はしない、それができないからわざわざこんなブログ読みに来てるんであって、とおっしゃる方を手ぶらで帰すわけにはいかないので、もうちょっと具体のところをうにょうにょと考えてみた、メモの続きです。

 念のため再度のエクスキューズですが、「大学図書館の現場人が実務上」「ジャパンサーチに寄り添うかたちで」「よそさん事例を参照しつつ」考える、2018年12月現在という感じで。

●方針

 その1で確認したように、ジャパンサーチというポータルはメタデータとコンテンツの可視化&オープン化を看板に掲げてる、ていうか、時代が、世界が我々にそれを求めている、というふうに理解すれば、各機関のメタデータにおかれましても、共有されやすいこと、相互運用性が高いことが肝要だな、っていうのはわかります。
 ただそれも端的に、そういうメタデータ項目を作り込む、というような話で終わっていいわけじゃない。そのメタデータを公開するのにオープンな条件を明示するとか、提供方法も機械可読性の高いテクノロジーを採用するとか、そのあたりに注力することで、活用者が(注:利用者じゃなく活用者と言うことにします)自身で入手・加工できるようにしよう、と。そういう話なんだと思います。
 じゃあそれは具体的にどうすることなんだっていうと、(これ、その時々でアップデートされてたら後継最新版に読み替えてほしいんですが)たぶんこれが参考になるんじゃないかなっていうのが、『第一次中間取りまとめ』(デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会・実務者協議会. 「第一次中間取りまとめ」. 2018.4. http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_suisiniinkai/jitumusya/2017/torimatome.pdf.)の中にある、「デジタルアーカイブアセスメントツール」っていう表。ここに書いてある「標準モデル」(初歩レベル)や先進モデル(中級レベル)に求められる要件がずらずらっと書いてあって、例えば「当該コミュニティのつなぎ役にメタデータを提供している、又はつなぎ役がいない場合は、直接ジャパンサーチ(仮称)と連携している。」とかそういう雰囲気のやつです。これ、「アセスメント」と書いてはあるんですが、なんならこれをセルフチェックリストがわりに使うとちょうどいいんじゃないかな、って思ったんですよね。あ、こことここ足りてないから、付け足そう、的な。

 ね、一気に話が具体に振れ始めましたね。


●基礎項目&全体設計

 すでに触れたように、ジャパンサーチさんにメタデータを流すには、究極「タイトルと管理番号のみ」が必須で、人物情報・時間情報・位置情報的なのは、あればつける、なければ不明、で良いと。
 良いとは言え、ちょっと気をつけたいのは「管理番号」、またの名を「識別子」、これはカンのいい図書館業界の方ならすんなり飲み込めると思いますが、長期的な安定と相互運用性を担保するためには、重複せずに一意的であることが求められる、と。まあ、そりゃそうですが、注意してください、図書館職員にはコモンなセンスでも、学内で研究者がぼんやりつくる個別デジタルアーカイブの類がこういうことわかってくれてなかったりする。
 良いとは言えその2。基礎以外の項目の取り扱いについて、ジャパンサーチさんでは「共通項目ラベル」というものを付与します、これはよそさんでもだいたいよく使われがちな”あるある系”の項目は共通でまとめちゃいます、というものです。だから言ってみれば”準・基礎項目”と思ったらいい。で、例えばどういう項目がそれにあたるんだというと、「タイトルのヨミ」「タイトルの英語名」「URL」「権利表示」等々といった、ちょっとホッと安心する具体的な項目名が、『第一次中間取りまとめ』表2に並んでます。

2019-02-23_09h06_41.png

 よかったねえ、全国1億2千万人の図書館業界人のみなさん、少なくともこの表に書いてあるメタデータつくったらいいんですよ。(なお表3はジャパンサーチがアウトプットするときの「利活用フォーマット」の項目なので、ここから逆算するのもいいかも)

 で、「基礎」「準・基礎」に加えてさらにその先は、っていうと、少なくともジャパンサーチさんは「その先はまるっと呑みこみます」と言うてはるんだから、お言葉に甘えて、各機関/対象資料/コレクションの特性を活かすようにオリジナルマインドで項目設計したらいいんじゃないかなって思いますね。
 もちろん、そうはいってもゼロから設計するよりはもうちょっと賢く、DC-NDLだのJPCOREだのっていう既存の標準を見まねしたり、同じ分野のよそさんのアーカイブを先行調査したりすればいい。『ガイドライン』の参考資料には各業界の「確認すべき標準・ガイドライン等」っていうのが収録されてます。あと、ちゃんと使ったことあるわけじゃないからわかんないですが、「Meta Bridge」(メタデータ基盤協議会. 「Meta Bridge」. https://www.metabridge.jp/infolib/metabridge/menu/.)っていうサイトがあって、これはいろんな業界が採用しているメタデータの枠組みを検索したりブラウジングしたりできるポータルらしいです。
 あと、もっと言えば、同じ分野や類縁機関で似た者同士のデジタルアーカイブつくってるところあったら、すんません、おたくのメタデータどんなんですか、と。うち、困ってるんですけど、おたくさん困ってませんか、なんならこれを機会にいっしょに検討しませんか。ってなったら最高じゃないですか、それ、メタデータ自体よりよっぽどうまくいく流れのやつですよ。

 補足として、そのメタデータをどうやってジャパンサーチさんに渡せばいいのか、ですが、これはTSVでもCSVでもエクセルでもXMLでもいいし、それを専用画面からアップロードしても、web公開しても、OAI-PMHでも何でもいいそうです。


●ジャパンサーチ以外の共有・連携

 ジャパンサーチさんはまるっと呑みこんでくれるかれいいかもしれない。似た者アーカイブ同士は参照しあえるかもしれない。じゃあ次は、それ以外のよそさんたちとの共有・連携は?という問題になる、と。ジャパンサーチさんだけ一択でもやってけなくはないかもしんないけど、赤血球をもっとさらさらに世にあまねく流そうとするのであれば、“可視化”という本来の趣旨から言えば、ジャパンサーチに限らずユーザにとっての情報のメインストリーム上にメタデータを流通させるべきだろう、と。で、その有効なメインストリームとしては、Googleさんほかのサーチエンジンなり、ウェブスケールディスカバリーなり、大学図書館さんで言えばJAIROやERDB-JP、その他、自分とこが属する業種や地域のポータル、あるいはそのデジタルアーカイブの分野のポータルがどれかっていうのはおわかりでしょうから、そういうところに流す努力もやってくことになる。その、よそに流すための努力をメタデータ上でやるとしたら、という話です。
 例えば、既出の話では、「管理番号」と呼ばれるものを一意・ユニークなものにする、ということ。あるいはその派生的な話だろうと思うのですが、URLを固定・パーマネントなものにすること。これが外部連携&安定的長期アクセスには必須だよということはよく耳にします。その代表格がDOIで、わかりやすくは国文研さんの新日本古典籍総合テータベースの例(参照:松原恵. 「古典籍画像を見るなら,新日本古典籍総合データベース!」. 『カレントアウェアネス-E』. 2018, E1992. http://current.ndl.go.jp/e1992.)があり、そうでなくてもどっかが何かにDOI付与したと言えばすぐカレントさんが嬉しげに取り上げてはるので、まあこれがニュースにならないくらいに浸透する頃からが本番なんだろうなと思いますね。
 あと日本の大学図書館さんにとっては特に、という話ですが、同じく国文研さんの新日本古典籍総合データベースはNCIDをキーにしてCiNii Booksと連携してる、というのが実際実現してるわけですから、自分とこが属する業界のポータルが何なのかがわかってれば、国内大学図書館さんにとってメタデータにNCIDを付与することはがっつり推奨されるべきだろうと思いますね。

 もちろんデジタルアーカイブのメタデータの可視化は、現時点で容易く想定可能な範囲での連携話に限るものではなく、もっと広く考えれば自分が属そうが属すまいが世界に広くあまねく共有されること、重ねて言えば、まだ見ぬ外部の存在と共有可能・連携可能なポテンシャルを持っていること(こういうの何て言うんだろう、シェアラビリティ?)が大いなる理想だと思うので、そのための重要な考え方として「機械可読性」が大事だよ、ってあちこちで言われてるんだろうと思います。
 それが例えば、メタデータにURIを識別子として付与すること、だとか、APIを設けること、だとか、APIは
OAI-PMHだのLinked DataだのOpenSearchだのOpenURLだのと複数用意できればまだ見ぬユーザにもやさしいだろうとか、そういうことなんだろうなと思うんですけど、ごめんなさい、正直あたしこのへんふんわりとしか理解できてないので、書いてることも上すべりしてる気がする。ていうか、そもそも”まだ見ぬ外部の存在”と連携するため、とかなんとかって、雲をつかむような虹をつかむような話しすぎて、それで整備しましょうってイメージ湧かなさ過ぎじゃないか、って正直思ってるのがこのへんの話題をあたしがふんわりとしか理解できてない原因なんだろうな、という自覚はある。
 と思ってたところに、あ、これならまだちょっとわかりやすいかも、っていう事例報告を見つけたので参考文献として紹介しておきます。東京大学の「平賀譲デジタルアーカイブ」っていうデータベースとそのプロジェクトなんですけど、参考文献(中村覚,大和裕幸,稗方和夫,満行泰河. 「[C04] Linked Dataを用いた平賀譲デジタルアーカイブの構築と活用」. 『デジタルアーカイブ学会誌』. 2017, 1( Pre), p.71-75. https://doi.org/10.24506/jsda.1.Pre_71)によれば、学内一プロジェクト内でLinked Dataを活用した、ということだそうです。つまり、平賀譲云々というひとつのデジタルアーカイブの中に、資料管理の目録データ、研究者の研究データ、一般向けの展示データっていう3つのグループがあって、それを図書館員だとか研究者だとか一般展観者目線の担当者だとかが別々につくったりメンテナンスしたりしつつ、それぞれをLinked Dataで連携させることによってひとつの平賀云々を築いている、と。大丈夫かな、理解あってるかな。でもこういう、近距離での実例を具体的に聞かされると、ああなるほどlinkedってそういうことね、と前よりはちょっとわかった気がする。
 あと、「平賀譲デジタルアーカイブ」では一般利用者のためにメタデータに入力する「キーワード」を、DBpediaのURIで記述する、ということをしてるそうです。こういうふうに、メタデータ内の人物情報やキーワードを記述するのに、例えばDBpediaやWeb NDL Authoritiesといった主要なデータベースのURIを典拠として採用したらいいよ。って、当時の自分は書いてるみたいなんだけど、これもまだちょっとふんわりしてるので保留、わかる人はわかればいい。

●メタデータのリッチ化

 で、これはあくまで余裕ができたらでいいんで、でも余裕ができたら是非、メタデータの内容をできるだけリッチにすることも思い出してください。
 神戸大学さんの震災文庫は、収録資料の目次情報をメタデータに含めているのでディスカバラビリティが高められリティだそうです。それどころか、位置情報(資料の取得場所とか写真の撮影場所とかそういうことかな?)も含めているから、地図からの検索が可能、と。あー、地図でのブラウジングはいいですねえ、ジャパンサーチさんも地図インデックス出すみたいだから、位置情報はあらまほしい。これも可視化。
 国文研さんの新日本古典籍総合データベースは、メタデータ検索だけでなく翻刻テキストを本文検索できるからそりゃヒットするだろう、と思うんですが、そのほかにも8万点の画像に挿絵キーワードや見出しなんかをタグとして付与してはって、それが26万件あるっていうから、ちょっとひくレベルなんですけど、それによって別に書名も専門用語も知らないユーザでも資料になんとなくアクセスできる(参照:松原恵. 「日本語の歴史的典籍のデジタル化とその公開」. 「平成 30 年度国立大学図書館協会シンポジウム : 大学図書館デジタルアーカイブの活用に向けて」. 2018.10.29発表.)っていう、これも可視化のひとつ。
 いろんなデジタルアーカイブをぼーっと見てると、たまに、リッチなコンテンツが生まれやすい環境っていうのがなんとなく想像できるところがあって、例えばそのひとつが、研究者による研究成果の一環としてできあがるようなパターンのデジタルアーカイブ。例えば「近代日本の身装文化」(国立民族学博物館. 「近代日本の身装文化」. http://shinsou.minpaku.ac.jp/.)はコメントが全文検索でヒットする。「怪異・妖怪伝承データベース」(国際日本文化研究センター. 「怪異・妖怪伝承データベース」. http://www.nichibun.ac.jp/youkaidb/.)は書誌データベースのひとつですが文献の要約が記載されていて、これも全文検索でヒットする。とりあえずコンテンツぶちこんどいて、まるっとヒットさせる、ていうのは意外と図書館関係者のみなさん嫌がる向きがあるっぽいんですけど、まあ別に図書館関係者のためにつくってるわけじゃないんでそんなんはほっといたらええ。けど、研究者が研究目的だけでつくると、図書館員なら容易にわかる不足どころがそのまま欠点としてのこされてしまってる(IDがないとか表記が揺れ揺れとか)、というパターンもまたあるあるなので、そういうのはもっと歩み寄らないとなって思います。
 あと、こういうメタデータをクラウドによるユーザ参加でつくる仕組みも、これはたぶん別のメモで触れることになるかと思うんですが、有用だよねとだけ記しておきます。

 もうちょっとだけ続く。
posted by egamiday3 at 11:09| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「マジカル・ランドスケープ」@バンベルク(201806euドイツ6日目その1)


 おはようございます。
 6日目(2018年6月14日)の朝です。

 ていうか、朝鳥がめっちゃうるさい・・・。

IMG_1260_201806eu.jpg
IMG_1258_201806eu.jpg

 自然あふれる風景もいいでしょう。古都然として汚されてない町並みもいいでしょう。
 それ以前に、この町の人たちはこの鳥の囀りの中、眠れてるのだろうか・・・

 ここで旅程を確認しておきます。 

2019-02-23_10h41_47.png

 ハンブルク(上の赤)を6月9日に出発。
 現在は6月14日、バンベルク(青のH)。
 帰国は、チューリッヒ(下の赤)から6月17日の朝なので、6月16日のうちにはチューリッヒに着いておきたい。

 というわけで、実働残り3日。
 明らかに旅も後半になってきましたが、全然足りない・・・つらい、帰りたくない・・・。

 今日の予定(もくろみ)です。
 @バンベルクを町歩き
 Aミュンヘンへ向かう
 Bヴァイエンシュテファンへ行く

IMG_1254_201806eu.jpg

 なお↑こちらが、この旅で唯一のホテル朝食。
 この朝食品揃えを見てると、あ、この宿って、Booking.comで直前安売りしてたのをポチったけど、ほんとはもっとお高いホテルだったんだろうな、というのがわかります。あたしが支払った宿代だけではたぶんサラミ止まりじゃないかな。できたてのネギとベーコンのスクランブルエッグまであって、特にネギがジェネリック日本食として身体に染みる。

 午前中は、バンベルク町歩きです。

 まずはコインロッカーに荷物を預けるため、駅へ向かいます。

IMG_1273_201806eu.jpg

 バスを待つ間に、ざっと予習しておきます。
 説明しよう、バンベルクとは。

 ドイツのやや南部、くびれた部分の腰骨にあたる位置にある、バンベルク。地域的にはバイエルン州で、さらにその中でもフランケン地方と呼ばれるあたりにあります。
 世界遺産に指定された古都で、中世からのさまざまな様式の建築物が、民家的なものといい教会的なものといい、街全体にのこっている、と。
 そう、のこってるんです。第二次世界大戦時の空襲被害をほとんど受けずに、のこってる。ドイツで観光地としてよく見る、たとえばローテンブルクだとかは、戦時中にそのほとんどを破壊され、そこからがんばって中世以来の町並みを復元してきた、そういうあり方のものらしいのですが、ここはその被害を受けていない、と。

 またここは司教がつかさどっていた宗教都市・カトリックの町だったとかで、教会建築もがっしりしてるし、修道院もたくさんあったと。なるほど、修道女姿の方を町でもちょいちょいお見かけした気がします。
 で、修道院といえばビール(註:間の理屈は省きます)、ということで、昨夜のシュレンケルラも元修道院の建物だったというし、町の中にはビール醸造博物館的なものもある。
 そもそもバイエルン州というのがビールの盛んな土地柄にあって、中でもフランケン地方が醸造所の多いところであり、バンベルクには19世紀初頭で65軒のビール醸造所があったと。いまでこそ町には10軒程度(それでも多い)ですが、近郊を含めればいまでも約60軒・300種類のビールを産するという、ラオホという強烈キャラがたとえ無かったとしてもここはハズせなかったビールどころなんだな、という感じです。ラオホじゃないビールだって充分楽しめたはずでは、と。(例:町の観光パンフにそれなりの量のビール記述があるものの、ラオホには特に触れていない)

IMG_1268_201806eu.jpg

 ↑「ピカチュウ、生中、アル中。」
 バス待ち中のやくたいもないツイート。

 あともうひとつ、気になるツイートをバスの中でしてます。「地名の感じがベルリンやハンブルクの時と違って見えるのは気のせいなんだろうか。初めてオーストリア行った時の感覚を思い出す」、と。これは保留。

 ともあれ、鉄道駅に荷物を預けて、バンベルク町歩き開始です。
 駅から旧市街へ向けて徒歩で戻ります。

IMG_1300_201806eu.jpg

 バンベルクの町には川が2本、並行するように流れています。
 町の構成がだいたい↓こんな感じになってる。

 西 宮殿・大聖堂←川(小)・旧市庁舎←新市庁舎←川(大)・新市街←駅 東

 特に「川(小)・旧市庁舎」あたりが町のホットスポットになるのかな。
 極私的に「水のある町は、よい町」の法則があるので、期待は高いです。

IMG_1305_201806eu.jpg
IMG_1306_201806eu.jpg
IMG_1316_201806eu.jpg

 新市庁舎から旧市街中心へ向かうあたり。
 このへんは、町として現役・現代的な使われ方をしつつも、町並みがやはり古都然として美しい、という意味では、休日なんかに時間かけて滞在するのに一番気持ちがいいあたり、になるのかもしれませんね。

IMG_1308_201806eu.jpg
IMG_1309_201806eu.jpg
IMG_1312_201806eu.jpg
IMG_1314_201806eu.jpg

 なにせ、こうやってマーケットが色とりどりに花開いてるの、一番好き。
 って言ってるそばからホワイトアスパラの束。

 で、ホットスポットたる「川(小)・旧市庁舎」付近へやってきました。
 川の名前をレグニッツ川と言います。

IMG_1357_201806eu.jpg
IMG_1364_201806eu.jpg

 ↑町一番のイケメン旧市庁舎、アルテス・ラトハウスです。
 なんかさ、ずるいもん。水の上にこんなふうに建ってたら、そりゃたいていの古建築はイケメンに見えるって。
 ていうかこうやって陽の当たる角度なんか、自分をイケメンに見せる術を知っとるなコイツ、と。
 しかも、この複合的な様式を合わせ持ちながらも、決してゴテゴテと下品に見せることなく、どの様式も実にさりげなく着こなしてる感。
 (註:最も古い部分は15世紀、木組みのあたりが17世紀)

IMG_1338_201806eu.jpg
IMG_1345_201806eu.jpg
IMG_1332_201806eu.jpg

 ↑というわけで、角度を変えて旧市庁舎の派手な部分に寄ると、こう。

IMG_1349_201806eu.jpg
IMG_1366_201806eu.jpgIMG_1328_201806eu.jpgIMG_1334_201806eu.jpgIMG_1329_201806eu.jpg

 ↑イケメンを取り囲む、やはりイケメンな水のある風景たち。
 イケメンの周囲にはやはりイケメンが集まり、しかも中心のイケメンをさらに引き立ててやまないのであります。キムタクのドラマは脇役が豪華の法則とおなじ。

 ↓ちなみにこのイケメンの夜の顔(昨夜)がこちら。

IMG_1244_201806eu.jpg
IMG_1243_201806eu.jpg

 この日、相当このイケメンの写真を撮ってます。しばらく立ち去りがたかったらしい。

IMG_1371_201806eu.jpg

 近くに↑ツーリストインフォメーションがあり、参考文献として日本語ガイドブック、自分用土産としてビール用栓抜き(愛用中)、そしてはかどる旅のアイテムとして、ちんまい肩掛けカバンでiPhoneを充電しながらいじれるちょうどいいやつ、を入手。
 また別の土産屋では、職場のカウンターに飾るためのラバーダック・バンベルク仕様(ビアジョッキを持ってる)を入手。

IMG_1379_201806eu.jpg

 昨晩訪れたシュレンケルラ。
 ていうかさ、昼夜問わず燻製のにおいがプンプンするんだもの(笑)。

IMG_1381_201806eu.jpg

 さて、先ほどのレグニッツ川をちょっと上がったところにある、↑この岸のあたり。川べりに軒を並べている昔ながらの民家風建築は、もともと漁師たちの住処だったそうで、川から直接舟でアクセスできる造りになってるのがわかります。
 ここを、水辺の美しさからか、「小ヴェネツィア」と呼ぶんだそうですが。

IMG_1388_201806eu.jpg
IMG_1393_201806eu.jpg
IMG_1389_201806eu.jpg
IMG_1391_201806eu.jpg

 いや、むしろ「小ヴェネツィア」とかいう言い方する必要ないと思いますよ、あたしはこれ、バンベルク固有の美しさだと思います。屋根、窓、花、バルコニー、舟付き場。すごく愛らしい眺め。
 あと、あの屋根のつくりが気になる、なんであんなに食い込みあってるんだろう。(ブラタモリならここで案内人が現れてくれるのに)

IMG_1394_201806eu.jpg

 ↑案内人はこちら。

 さらに丘をのぼる感じになって、宮殿・大聖堂エリアにさしかかります。

IMG_1408_201806eu.jpg
IMG_1410_201806eu.jpg
IMG_1412_201806eu.jpg

 ↑大聖堂。なんかちょっと引っかかる見た目だなと思ったら、13世紀、ロマネスクとゴシックの融合らしい。

IMG_1421_201806eu.jpg

 ↑近くに飾ってあった一連のレリーフ。この町の歴史を描いてるんだろうな、という気がする。左に1208と書いてある年号を物の本で確認すると「シュヴァーベン国王フィリップが結婚式宴会場で撲殺される」と書いてある、なにこれ。

IMG_1424_201806eu.jpg

 ↑新宮殿(18世紀)。

IMG_1433_201806eu.jpg
IMG_1438_201806eu.jpg
IMG_1449_201806eu.jpg

 ↑新宮殿に入るとバラの庭園があり、バンベルクの町を眺めることもできるのでした。


 ↓その他の、バンベルクの古都っぽい風景。

IMG_1407_201806eu.jpg
IMG_1375_201806eu.jpg
IMG_1403_201806eu.jpg
IMG_1215_201806eu.jpg
IMG_1304_201806eu.jpg
IMG_1377_201806eu.jpg

 ↓ドイツ名物、看板なのです。

IMG_1303_201806eu.jpg
IMG_1290_201806eu.jpg
IMG_1289_201806eu.jpg
IMG_1298_201806eu.jpg

 この看板もそうですが、いくら戦時被害をまぬがれた町とは言え、この町並みの全部が全部当時からのこされてるものというわけではないだろうし、ということは、この町にはおそらく「歴史的にのこされた」ランドスケープと、「現代がそれを希求したために復元された」ランドスケープと、「現役の暮らし営みのため」のランドスケープとが、肩肘張らずに同居してるんだな、と思いました。それがこの町の居心地の良さを醸してるんじゃないかな。歴史的スポットの案内板に英語がなくてドイツ語だけな様子も、なんか、落ち着いた感じすらする。

 いい町ですよ、バンベルク。
posted by egamiday3 at 10:53| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月20日

あなたのデジタルアーカイブはどこから? @「私はメタデータから」(その1)赤血球に2つの成分が効く


 あなたのデジタルアーカイブはどこから?
 IIIFから? CC-BY/PDから?
 「いいえ、私はメタデータから」
 そんなあなたに、効くかもしれないし、そうでないかもしれない。
 当座のブログ。

 さておき。
 デジタルアーカイブとはなかなか縁が切れなくてしょうがないんですけど、とあるところでとある経緯から、「デジタルアーカイブにおけるメタデータのあり方を考えてとりまとめて書く」みたいな重荷を背負わなきゃいけなくなって、だいぶ勉強し直さないとあれだったうえにちょうど風邪ひいて(私はノドから)倒れそうだった中、うんうん唸りながら唸らされながらやってたのの、メモみたいなもんです。

 といっても、「デジタルアーカイブにおけるメタデータ」なんて壮大なテーマ扱えるのお釈迦様ぐらいじゃないかと思うんですが、一応、↓こんくらいの文脈というか箱庭の中で書いたものとして、お目こぼしいただければ。

・”可視化のため”のメタデータのあり方、という身構えで書いたものだということ。デジタルアーカイブをネットで見つけやすくし、プレゼンスを上げ、海外からもどうのこうの、といういつもの感じでの、”可視化のため”。
・特に大学図書館における、現場担当職員が、実務上でどうしたらいいんだろう、ていうかルーティンな人事異動でひょっこりこんな仕事あてがわれてお困りお悩み考えあぐねてる人が、読む、という想定での。
・それを、よそさんの事例をあれこれ手広く参照することで、できるだけ具体的なイメージがわく議論ができるように、という示しかたで。
・しかも方針としては、ジャパンサーチさんにがっつり寄り添う感じでやってる。いやもう、可視化でメタデータつったら、向こう数年当面の現実解はこれだろう、っていう。

 なお、さらに言うと、2018年12月に書いたメモです、というエクスキューズ。


●メタデータはジャパンサーチにとって何なのか

 ジャパンサーチさんにがっつり寄り添う方針、ていうのも、別に極私的になんとなくそう志向しているわけではなくて、国大図協さんの『これからの学術情報システムに向けて』(註:国立大学図書館協会学術情報システム委員会. 「これからの学術情報システムに向けて : 現状・課題・当面の方向性に関するレポート」. 国立大学図書館協会. 2018.6. https://www.janul.jp/j/projects/sis/SIS_report_201806.pdf.)っていう文書でもなんかそれっぽいことが書いてあるはず、えっと、「「ガイドライン」をもとに」、「いずれ来る「ジャパンサーチ(仮称)」に備え」、「他のアーカイブとの連携が可能」となるようにして、「搭載データの視認性や発見性の向上」を云々と。

 じゃあその前提となるらしき『ガイドライン』だの「ジャパンサーチ」だのっていうのはそもそもどういう流れ図になってんだ、ということですよね。わかってる人はとっくにわかってるだろうけど、そうじゃない人にはさっぱりわからない。

↓ 『方向性』
↓ 「ガイドライン」
↓ 『第一次中間取りまとめ』
↓ ジャパンサーチ

 日本のデジタルアーカイブをなんとかしよう(結果として、ジャパンサーチを作ろう)、っつって、内閣府の知的財産戦略本部というところにいろんな人が集まって会議した結果、2017年4月の段階でひとまず、じゃあこういう方向性でやっていきましょうかという大筋を示したのが『方向性』(註:デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会・実務者協議会. 「我が国におけるデジタルアーカイブ推進の方向性」. 2017.4. http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/houkokusho.pdf.)、それについては各々で具体的にこうしましょうっていうもうちょっと具体的なのが『ガイドライン』(デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会・実務者協議会. 「デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン」. 2017.4. http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/guideline.pdf.)。その後、じゃあジャパンサーチをつくりましょうよねって具体的に検討したのの2018年4月現在の結果が『第一次中間取りまとめ』(デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会・実務者協議会. 「第一次中間取りまとめ」. 2018.4. http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_suisiniinkai/jitumusya/2017/torimatome.pdf.)であり、その流れの末にできあがりつつあるジャパンサーチの試行版が、そろそろ人目に触れるのかどうか、梅は咲いたか桜はまだかという状態。

 じゃあ、そのジャパンサーチさんはどういうつもりでつくられていて、その中でメタデータはどういう働きをする存在なのか。『方向性』によれば、ジャパンサーチ・・・日本のデジタルアーカイブを多分野多業種で横断するポータルサイト、は、こんな構造で運営されるものだとイメージされています。
 『方向性』のp.19、図4「デジタルアーカイブの共有と活用のために」からの図版の引用です。

図14.png

 要は、まず各館がコンテンツとメタデータを、日々地道に整備します。
 その各館のメタデータを、「つなぎ役」がまとめて吸い上げます。「つなぎ役」はざっくり言えば各業界の親玉的存在、図書館業界なら国会図書館さんです。(あと、”コンテンツを吸い上げる”のではないことに注意)
 で、「つなぎ役」は各館から吸い上げたメタデータをジャパンサーチにお納めします。
 あちこちのシマから納められたメタデータは、ジャパンサーチで一発検索・ネット配信がされるようになりますから、ファインダビリティもディスカバラビリティもヴィジビリティも向上ビリティになり、リンクをたどって各機関のコンテンツにたどりつき、活用してもらえるんじゃないか、という目論見になります。

 ということは、です。ジャパンサーチにしろ、各機関のデジタルアーカイブにしろ、それらをつなぐ間にしろ、この日本のあらゆるデジタルアーカイブを束ねる”エコシステム”全体にわたって、メタデータというものが縦横無尽に流通し、橋渡しされ、検索され、ヒット&リンク、リンクに次ぐリンク、それがデジタルアーカイブの利活用の大前提でしょう、と期待されているわけです。
 だからここにおいてメタデータは赤血球であると言っていい。良質なデータをたっぷり抱えて、身体中の隅から隅へと運搬し、活力の源流となってくれる存在。
 ですから、「どんなデータが」ももちろんですが、「いかに流通するか」も相当重要、なわけです。

 なおもう少し細かく言うと、『方向性』や『ガイドライン』は
  ・「コンテンツ」(例:画像本体)
  ・「サムネイル/プレビュー」(例:ヒットしたものを一覧できる縮小画像)
  ・「メタデータ」
 の3層を前提としており、「メタデータ」だけでなく「サムネイル」の流通も重要視してますので、以下、同様にとりあげますね。


●メタデータに求められる要件

 全体の仕組みはわかった。メタデータの役割もわかった。
 じゃあ各機関のメタデータは、どうすれば立派な赤血球になれるの?
 まあ、現場が知りたいのは結局そこですよね。

 どうすれば、を示しているのが『ガイドライン』です。
 いろいろ書いてあるのを甘々にざっくり言うと。
 その1。そのメタデータは、自由な二次利用が可能な条件で提供されててください、と。具体的にはCC0なりPDなりです。権利的にひっかかりがあるようではメタデータはさらさらと流通してくれませんので、ここは“制度的にオープン”であることが求められたい。
 その2。これは”技術的にオープン”であることです、つまりはイマドキのOAI-PMHやぁLinked Dataやぁ言うて、人さんがわざわざ泥臭く作業せんでもええように、ネット経由の機械可読でお願いします、と。
 その3。項目です。もう言っちゃいます、特に重要な項目は「タイトル(ラベル)」「作者(人物)」「日付(時代)」「場所」「管理番号(識別子)」、の5つ。

 ・・・え、終わり?ってなりますよね、たぶん「メタデータ、5つそろえよ」だけではおおかたの悩みは解決しない、そんなざっくりとした話でほんとにジャパンサーチさんと連携させてもらえるんだろうか、と。
 ところが驚いてください、その後の「第一次中間取りまとめ」を暗号解読したところ、ハードルはさらに低くなってます。
 曰く、「管理番号と名称/タイトルのみ、必須」と。

 ジャパンサーチさんは、各館から集めるメタデータについて「共通メタデータフォーマット」というのを提案しておられます。「共通メタデータフォーマット」には2種類あります。
 各機関から集める、インプットのための、「連携フォーマット」。
 ユーザに提供する、アウトプットのための、「利活用フォーマット」。
 今回我々が気にしなきゃいけないのはインプット用の「連携フォーマット」のほうでして、どうやらこちらでは各館の負担を軽減するようにいろいろと配慮くださってるようなんですが、「第一次中間取りまとめ」によれば、そのおおまかは以下の通りです。
 ・必須項目は、管理番号(識別子)と名称(タイトル)のみ。
 ・それ以外のフォーマットなんかは特に何も求めていません、各館のメタデータ項目をそのまま渡せばよろしい。
 ・とはいえ、そのありのままのメタデータ項目の中にも、いくつかはよそさんと共通するものがあるはずですよね、例えば”タイトルのヨミ”とか”タイトルの英語名”とか”最終更新日”とか”URL”とか、わりとどんなデジタルアーカイブにもありそうだし、だったら共通の項目としてまとめられたほうがいい。そういうのがもしあれば、これはよそさんと共通の項目ですよっていうのがわかるように「共通項目ラベル」が付与されます。もちろんそうじゃないのは、やはりありのままの姿かたちで吸い上げられます。
 『第一次中間取りまとめ』から引用の、図4「ジャパンサーチ(仮称)におけるデータ変遷のイメージ」です。

2019-02-20_21h15_41.png

 これによって、みんなちがってみんないい、ありのままの姿見せてくれれば、その項目がそのまま採用され、おかげで無理矢理よそさんと調整するコストをかける必要はなく、でも部分的になら横断検索もできなくはないという、ふわっとした連携ができる、みたいです。
 よく考えれば、そりゃそうか、と思います。ここで目指すポータルは、国内のありとあらゆる分野・業種のデジタルアーカイブをひっくるめようと言ってるわけなんで、ミュージアムだとかアーカイブだとか、放送とかメディア芸術とか、どんな由来のメタデータであろうとぶつかり合うこともひっかかることもないように、血液さらさらになるように、何も足さない何も引かない何も決めないくらいの勢いで受けいれられるような、そういう仕組み・規則でないとやってけないだろうな、と。

 ただ、です。
 図書館業界(そう思い出しました、このメモは大学図書館の現場人に向けたものを書いてます)の人にとっては、「何も決めない」ではちょっと具合が悪い、なにせメタデータ=目録についていえば、分厚い規則、厳格な区切り記号、執拗なまでのコーディングマニュアル、水も漏らさぬ世界規模の標準化、というエコシステムに100年近くどっぷり浸かってきた住人たち(注:表現が過度に滑りつつあります)なわけですから、何の規則も指針もない、「管理番号とタイトルだけあれば、好きにしていい」などという無限のサバンナにぽおんと放り出された日には、いったい何をどうすればいいのか途方に暮れるしかない、手足の動かし方すらわかんなくて泣きそうになるんじゃないかしら、と思うわけです。まあ気持ちはわかる。

 じゃあどうしよう、っていうところで続く。

posted by egamiday3 at 21:19| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ラオホ、ちょっと鼻につくビール」@バンベルク(201806euドイツ5日目その3)


IMG_1190_201806eu.jpg
IMG_1195_201806eu.jpg

 ドイツ5日目(2018年6月13日)の夕刻。
 ライプツィヒからICE(International City Express)で次の街・バンベルクへ向かっているところ、なんですが。

IMG_1196_201806eu.jpg

 さっきから列車がもう1時間半くらい止まってる・・・。
 しかもアナウンスがドイツ語しかない。
 これがドイツ鉄道の遅延か・・・。

 本来の時刻表だと、
 ICE1513 Leipzig 1548発 → Bamberg 1715着
 なんですが、いまやもう18時半近くです。
 そういえばベルリンの友人がよく忌々しそうに言ってました、ドイツの鉄道はとてつもなく遅れる、と。えー、そんなことないだろう、規則正しさがドイツさんのキャラなんじゃないの、と思ってたんですが、ドイツ鉄道が国有から民営化か何かした時から、わりと高確率で遅延するともっぱらの評判です。
 特にいま乗ってる路線、ベルリン−ミュンヘン間を拘束で結ぶICEで、言わば”東京−大阪間のぞみ”みたいなもの、便数も多ければ乗客も多く、ビジネスパーソンっぽい人らがたくさんで、立ち乗りも出てるほど。そこで1時間半待ちの発生ですから、うまいこと1席確保できててほんとよかった。

 とはいえ、こういう日に限って、バンベルクの宿が”修道院を改修して運営している”とかで、そしてチェックインデスクが早めに閉まるところ、ていうややこしそうなところ。ていうか、19時〆めでしょ、もうたぶんいまの時点でアウトですよ。
 そう思っておそるおそる、デッキで電話をかけて、ゆっくりめの英語で懸命に説明を。
 「えっと、私は今夜ルームを予約していて、でもトレインがディレイで、いまトレインの中で、私は20時くらいに到着するとアフレイドしている」
 返し、「それで電話?w はーい、わかりましたーw」
 あ、いまなんか、「そんなことでわざわざ電話してきた奴」感が・・・。

IMG_1287.JPG

 なんだかんだでバンベルク駅到着。

 チェックイン〆め時刻からすでに30分が過ぎていて、しかも宿は駅から2キロ以上、新市街も旧市街も抜けてさらに結構な坂のうえ。迷わず、駅前のタクシーに声をかけます。
 ドライバーは、若くてがたいの良い野球帽の兄ちゃん。お互いに英語不得意ながら、まあなんとなくな会話をぽつぽつとするわけです。
 バンベルク初めてー、はいー、仕事ー、いや観光ー。そー、バンベルクいいとこー。
 どっから来たー。日本ー。あーそー、日本、いいねー、好きー。どうもー。
 ・・・・・・。

 運「トーキ」。
 ん? なんて?
 あ、「東京か?」ってことかな。
 e「ノー、Do you know キョート」(「Do you know 札幌」のノリで)
 運「ンー。ミー、トーキ」
 あ、東京に来たことあるって言ってる? へー、観光?
 運「・・・・・・」
 
 兄ちゃん、だいぶ英語不慣れっぽいな。ドイツでタクシーやってたらもうちょっと英語できんかな。
 何を言いたかったんやろ。何の話してたっけ、あなたは日本から来た、で、私、トーキ。
 トーキ、トーキー。

 ・・・あ、ターキー Turkyか。自分はトルコ出身って言うてはるんや。

 e「あー、ターキー!」
 運「そうそう! 行ったことある?」
 e「自分はないけど、知人の女性がイスタンブールすごく良くて好きって言ってた」
 運「いや、それはウソだと思う」
 どないやねんw

 なんだかんだで、宿に到着。

IMG_1264_201806eu.jpg
IMG_1204_201806eu.jpg

 心配されていたチェックインデスクは、わりとまだ人が多くて特に問題なく済ますことができましたが、しばらく後に行ったらもう閉まってたのでまあまあヤバかった。

 ここまでが長い長い前置き。
 そんなドタバタはどうでもよろしい、あたしはこのバンベルクに、ビールを飲みに来たんです。

IMG_1208_201806eu.jpg
IMG_1213_201806eu.jpg

 ちょっと歩いただけでも古都風情をかなり濃く楽しめる、ここバンベルクは、ドイツのやや南部、腰骨あたりに位置する町で、ビールで有名・・・えっと、ドイツ国内に山ほどあるビールで有名な町のうちの、ひとつです。かつてはこのそう広くもない町にビール醸造所が60軒以上(19世紀初め)あったといい、いまでこそ減ったとは言えそれでも10軒あるっていうから、まあ相当のビールどころだということなんでしょう。
 しかも、そんなバンベルクならではの独自ローカルビールが、ラオホビール、というやつです。

 説明しよう、ラオホビールとは。
 別名・燻製ビールなどとも称されますが、もちろんビールを燻製にしたわけではなく、麦芽を燻したうえで醸造する、という独特のつくりかたをするもの。麦芽を燻すのに、ウィスキーは泥炭を使いますが、ラオホビールはブナの木で燻します。色は黒く、燻製と言えば燻製のようなスモーキーフレーバーのするビール。ここバンベルクの名産物で、その昔、市内の醸造所が火事に遭って麦芽が焦げてしまったときに、もったいないからそれでビールをつくってみたところ、こんな味と香りのするビールが・・・という逸話はまあ眉唾ものではありますが。
 で、現在でもバンベルクには昔ながらの作り方でラオホビールを飲ませる醸造所が2軒ある、という。

IMG_1216_201806eu.jpg
IMG_1236_201806eu.jpg
IMG_1233_201806eu.jpg

 そのうちの1軒↑、Schlenkerla(シュレンケルラ)にやってきました。(註:この明るさで夜8時過ぎ)

 ほほお、ここがシュレンケルラですか、予習時に物の本でさんざっぱら紹介されてたという。
 ていうか、さすが人気店らしく、みんなグラス持って路地で立ち飲みしながらやいやい騒いでるの、これを周囲の民家店舗が容認してるんだから相当の老舗なんだなと。
 なお店内は店内でそれなりに席も充分にあり、ここもかつては修道院の建物だったんだよと言われるとなんとなくうなずける(部屋割り構成が飲食店っぽくなく、軽く無理ある感)。
 外観(↑写真参照)も、木組みっぽさや、ビール処をあらわす吊るし看板が老舗っぽく、でもツーリスティックというよりはトラディショナル感のほうを感じるのは、なんだろう、この町自体が観光と古都のバランスをちゃんと保ってるという感じなのかな。

 というわけで。

IMG_1224_201806eu.jpg

 やっと、ラオホビールにたどりつきました。
 長かった・・・今日も一日歩いてた・・・。

 なお肝心のラオホビールのお味は。
 色はしっかり濃く黒いけども、ビールとしてはむしろあっさり感がある、そっかこの黒は燻し由来だから見た目から想像してしまうスタウト感があるわけじゃないんだなと。あと、やや甘め。そしてそこに煙の香りががっつり付いている。
 飲むときも、飲んだ後もずっと、というか、飲む前から、店に近づいた頃から、ずっと延々いつまでも燻製香がつきまとうので、正直、もうええわ、とは思う。まあ、鼻につく。
 ていうか、ぶっちゃけ言うと、そもそも燻製料理や燻製香の類がそこまで好きというわけではない、のですがそこはまあ、ドイツ3B(Beer)の旅なんで。

IMG_1218_201806eu.jpg

 そして夕食です。
 物の本によれば、この老舗店には料理にも名物があって、その名も「バンベルク風タマネギ」というらしい。丸ごとのタマネギ(Zwiebel)の中に挽肉が入ってる、と、なるほど肉詰めパターンのやつね、と思ってそれを注文。でもタマネギだけの夕食というのもあれなんで、じゃあソーセージを小皿でください、それなら軽く済ます感じでいけるでしょう、と。

 で、出てきた「バンベルクのタマネギ」が↓こちらになります。

IMG_1227_201806eu.jpg
IMG_1229_201806eu.jpg

 ・・・ちがう、これタマネギ料理やない、肉料理や。
 誰や、「タマネギの中に挽肉が入ってる」言うたやつ、「ゲンコツハンバーグをタマネギで巻いてる」て言え。ていうか、タマネギ薄っ、タマネギの味せえへん。しかもその上に豚バラベーコン乗っとるやないか。どんだけ、肉、肉、やねん。

IMG_1226_201806eu.jpg

 ・・・あー、ソーセージ来てもうた。屋上屋や。肉上肉や。しかも3本、”小皿”でソーセージ3本、あとご丁寧にパン。
 このボリューム、もはやワンパク者の晩ごはんやないか。

IMG_1230_201806eu.jpg

 ほんで、ソーセージの付け合わせにカリカリベーコンってなんやねん。

 ドイツ料理(ていうかドイツの”料理量”)をなめたらあかん、という教訓含みの夕食を、ワンパクにたいらげざるを得ない、タマネギなんかラオホビールソースでさらに燻製香ですが、そんなのも気にならないくらいの肉尽くし。
 とは言え、まあさすが伝統の人気店だけあってか、どれもこれもしっかり美味い。なんだかんだ言って食べてる。半ば観光地化してるような店なんだろうなとは思ってたんですが、安心してしっかり美味いから、歩き方本に書いてあるからといって忌避することなく、バンベルクに来たらこの店を訪ねると良いと思います。

IMG_1244_201806eu.jpg
IMG_1246_201806eu.jpg

 2軒目飲みに行く前に、腹ごなし酔い覚ましに歩いてるパターン。

IMG_1247_201806eu.jpg

 歩いているうち、川べりに建つビアバーにたどり着いた。トラディショナルなのもスモーキーなのもちょっと飽きたので、バンベルクながらもイマドキ風でこじゃれた感じの、Eckertsというお店。

IMG_1248_201806eu.jpg

 店の名前がついたビールということはたぶん自家醸造のやつだと思うんだけど、オレンジのすごくいい色で、甘くて濃くて苦くて、これひとつあればハズレなしで安心のやつでした。日本にも輸出して、近所で売ってほしい。
 あとよく見たら、モーニングもやってるらしい。ていうか、ホテル併設らしい。次はここで(次回申し送り)。

 なお、この日一番美味かったビールは、宿の置き売り冷蔵庫でもらったフランツィスカーナーのヴァイスビア・デュンケルのボトルであったことをご報告します。うん、えっと、近所のリカーマウンテンでも買えるやつではあるんだけど、やっぱなんだかんだ美味かった、それがこのビールの美味さか、輸出品と国内ものとの味の差なのか、旅先補正なのか、輸送小売者の品質管理の差なのか、はわからない。でも美味い、よかった。

posted by egamiday3 at 05:49| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月14日

「メフィストに叱られる」@ライプツィヒ(201806euドイツ5日目その2)

IMG_1083_201806eu.jpg
IMG_1085_201806eu.jpg
IMG_1088_201806eu.jpg

 ハレからライプツィヒに戻りました。
 ここからライプツィヒ巡りです。
 主なアクティビティはこちら。

 ・ドイチェ・ビュッフェライに行く
 ・中心街歩き
 ・昼食
 ・ライプツィヒ駅構内の鉄道現物展示を見る

 その1、ドイチェ・ビュッフェライに行く。

IMG_1089_201806eu.jpg
IMG_1092_201806eu.jpg

 中央駅から近郊鉄道で街の南の方に行くと、存外に郊外めいた立地のところに、ドイチェ・ビュッフェライ=ドイツ国立図書館@ライプツィヒ、がありました。

 ここでドイツの国立図書館事情を再掲します。

 1. ドイツ国立図書館(DNB)
   −★1.1 ドイチェ・ビュッフェライ(@ライプツィヒ)
   −1.2 ドイチェ・ビブリオテーク(@フランクフルト)
   −1.3 ドイツ音楽資料館(@ベルリン)
 2. ベルリン国立図書館(SBB)(@ベルリン byプロイセン文化財団)
   −2.1 ハウス1・古典資料(@ウンター・デン・リンデン通り(旧東ドイツ))
   −2.2 ハウス2・現代資料(@ポツダム通り(旧西ドイツ))
 3. バイエルン州立図書館(BSB)(@ミュンヘン)

 ライプツィヒというのはそもそも古くからの大学の街であり、古くからの出版産業の街でもある、というキャラで、国立図書館のひとつもある、それがドイチェ・ビュッフェライである、と。
 ドイチェ・ビュッフェライの創立は1912年、この頃というのはドイツの図書館業界的には、各領邦の宮廷図書館が国に移管されるようになってきたというご時世で、そうか、ここでまた領邦国家キャラが出てくるのか、そのせいで国レベルの図書館を設けるのがずいぶん遅れたということらしく、やっと1912年にできた(しかも当初は民間)のがライプツィヒのドイチェ・ビュッフェライで、ドイツ全国書誌はここから編纂されるようになった、あー、このへん学生時分に司書の科目で勉強した記憶あるわー、突然のノスタルジー。
 ただし、これも例によって東西分裂で”全国書誌”編纂機能が働かなくなったので、西側にできたのが1.2のドイチェ・ビブリオテーク@フランクフルト、とのこと。フランクフルトも出版の街、ていうか、ドイツなんてどこ行っても、出版の街か大学の街かビールの街かのどれかでしょうたぶん。
 もうひとつの特徴が音楽資料で、ライプツィヒで一括して数百万点を所蔵しているというので、さすがはドイツ3B、音楽の国(注:こちらが本来のドイツ3B)。

IMG_1095_201806eu.jpg

 というドイチェ・ビュッフェライへ、ふわっと入館してみました。
 随分あたらしい外観ですが、古い時代の石造り建物はこの反対側にあり、中でながーくつながってるという感じのようです。
 入ってすぐのパブリックなロビーは、さすが出版の国・ドイツの国立図書館だけあって、かなりたっぷりとした常設展示フロアになってまして、書籍史・出版史・メディア史・知識社会史的なストーリーで、マニュスクリプトなりインキュナブラなり、製本用具や印刷機械なり、近代の雑誌なり統計やグラフの発明的な展示なり、webサービスの東京路線図(参考:http://photoshopvip.net/1313)まである。まあドイツ語と英語しかなくてぼんやりとしかわかんなかったのは残念でしたが、もうひとつ残念なことには、観てる客が自分1人しかいない。あまりに誰もいないせいか、機械調整してる作業員が大音量でラジオかけながら仕事してるくらい。
 閲覧者誰もいないのか?と思ってましたが、展示フロアからさらに奥のほうへ進入していきますと、メディア閲覧室のようなものがあり、音楽資料展示室があり、からっぽの展示室があり、いつの間にか古い旧館につながっていて、おなじみなしつらえの木造・白壁な参考室兼閲覧室にはそれなりに人がおり、なんだかんだで反対側から退館、という、軽いダンジョン体験でした。 

IMG_1093_201806eu.jpgIMG_1100_201806eu.jpg

 ここの図書館もやっぱりふわっと入れるんだね、っていう。

 その2、ライプツィヒの中心街にもどって、街歩き。

IMG_1103_201806eu.jpg
IMG_1104_201806eu.jpg

 ↑マルクト広場。

IMG_1108_201806eu.jpg
IMG_1110_201806eu.jpg

 ↑ニコライ教会。
 教会だねえ、とだけで通り過ぎそうになるかと思いきや。
 1989年10月のある日、このライプツィヒのニコライ教会を中心に発生した7万人参加のデモ。当時の東ドイツですから言論その他の自由と民主化を求めて、一触即発になりそうになりながらもおこなわれたでっかいデモが、この後あっというまに東ドイツ全土に波及し、で、なんやかんやで1か月後にはベルリンの壁崩壊、翌年にはドイツ統一、その出発点となった場所だとのこと。
 路地の多い手狭な街ですけどね、そこで7万人デモが、と想像すると結構感慨深い

IMG_1122_201806eu.jpg

 ↑ゲーテ。

 ゲーテはライプツィヒ大学で学んでらしたとかで、その時の経験からかどうかはあれですが、『ファウスト』の冒頭部の舞台となる「Auerbachs Keller」というワインセラーがここライプツィヒにある、と。

IMG_1124_201806eu.jpg
 ↑
 このアーケードから入っていくと、地下店舗になってる「Auerbachs Keller」が実際にあって、いまも(観光地化しつつも)現役で営業しておられる。

IMG_1128_201806eu.jpg
IMG_1126_201806eu.jpg
IMG_1129_201806eu.jpg

 悪魔メフィストが主役ファウストを誘惑するのに、この酒場に連れてくると、酒浸りで享楽的な学生たちがくだを巻いてて、ワインがバーッと出て、なんやかんやドタバタして、ケンカふっかけてきた学生たちを、悪魔メフィストが「ぼーっと生きてんじゃねえよ!」とばかりに手玉に取る、という、その現場としての実在の酒場。
 まあ、ゲーテ本人がこの店に通ってたらしいし、ここで耳にした与太話が『ファウスト』の原型らしいので、それなりに愛着持って舞台にしはったんだろうなということくらいは、同じ酒飲みのよしみでなんとなくわかる

IMG_1112_201806eu.jpg
IMG_1116_201806eu.jpg

 ↑さて、ライプツィヒ街歩きのポイントのひとつが「パサージュ」とのことで。
 パサージュとは、建物のならぶ間の路地をアーケードにして通り抜けるようにした街のつくり、ですから、リューベック、ベルリンに続いて、egamidayさんの好物なやつです。ていうか、パサージュと言えばパリでありフランス語だと思ってたんですが、ドイツでも「パサージュ」というのかしら。

IMG_1119_201806eu.jpg
IMG_1131_201806eu.jpg

 で、ここライプツィヒの見どころのひとつがパサージュの多さ、らしいですが、ベルリンやリューベックに比べるとすっかりと現代ショッピングモール風で、あまり印象がない。

IMG_1134_201806eu.jpg
IMG_1135_201806eu.jpg
IMG_1136_201806eu.jpg

 ↑もうひとつは「ホーフ」と呼ばれるタイプのもので、こっちは建物に囲まれた中庭風のスペースになります。まあ結果として通り抜けができてれば、似たようなつくりになるのかな。

IMG_1141_201806eu.jpg
IMG_1143_201806eu.jpg

 ↑そのホーフの中にある小ぶりのガストハウスBarthels Hofというところで、遅い(14時過ぎ)昼食にしました。

 その3、昼食。
 
 いただいたのがこちら。

IMG_1142_201806eu.jpg

 なんかもう、とにかくみんながアスパラガスアスパラガス言うから、ここでもアスパラガスにしてみました。

 説明しよう、アスパラガスとは。
 とは、っていうか、アスパラガスなんですが、とにかくドイツでは5月6月の春の時期に、我も彼もという感じでホワイトアスパラガス(spargel)を食べる、自宅でも食べるしレストランでも食べる、しかもそのラストデイが6月24日と決まってるという、なんかこういう熱狂振りって少なからずどんな国にもあるもんだなあ、くらいだったらまだ微笑ましいんですが、その定番料理が「アスパラガスのステーキ添え」(メインでたくさんのアスパラガスを食べるのに、付け合わせがステーキ)だとまで言われると、さすがに「おい待て」とちょっと思いますね。

 で、↑この料理はLeipziger Allerleiという、ライプツィヒの名前がついた温野菜盛り合わせスタイルの料理らしいです。野菜のたいたん、みたいなのかしら。かつて税金逃れのために、盛った野菜の下に肉を隠して貧しく見せたのが由来らしい(注:Leipziger Allerleiの起源には諸説あります)
 この手の西洋料理に疎いのですが、かかってるのはいわゆるオランデーズソースかな。これも定番らしい。ていうか、オランデーズソースならこれもフランスじゃないかな。なんかよくわかんない。
 味は、まあ、アスパラガスですよ(適当)。太くてゆでてるからか、みずみずしい感じ。

 で、昼食をいただくともはや15時で、そろそろ次の街へ移動することも考えなければ、ということで駅へ向かいます。

 その4、ライプツィヒ駅構内の鉄道現物展示。

IMG_0911_201806eu.jpg

 ライプツィヒ駅の駅舎、ヨーロッパ最大級との呼び声もあるくらいで、とにかく横に長い、ホームが26とか28とかある。
 その余剰空間の豊富さをそれなりに活用してということか、右端のホームに歴代の鉄道車両の現物が置いてあって、ちょっとした展示スペースになってるという。

IMG_1155_201806eu.jpg

 ・・・・・・とはいえ、残念ながらegamidayさんは”車両”についてはたいして興味も知識もないので、ほほぉー、くらいの感じ。

IMG_1163_201806eu.jpg
IMG_1166_201806eu.jpg

 ↑でも、流線型&原色の組み合わせのダサかっこいいのはわかる。
 「Deutsche Reichsbahn」ていうのは、戦前のかな、東ドイツのかな。

IMG_1182_201806eu.jpg
IMG_1173_201806eu.jpg

IMG_1185_201806eu.jpg

 ↑そして、この駅からも収容所への移送列車が出ていたという。ホロコーストの犠牲者を悼むための記念碑。


 次は、バンベルクへ向かいます。

posted by egamiday3 at 08:14| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月10日

「レジュメをつくる」演習はこんな流れ index


『「レジュメをつくる」演習はこんな流れ』

●index

その1「全体」「テーマ設定」「文献探索」
http://egamiday3.seesaa.net/article/463998268.html

その2「要点」「要素抜き書き」「レジュメ解剖」
http://egamiday3.seesaa.net/article/464018466.html

その3「構成」「整理」「追加調査」
http://egamiday3.seesaa.net/article/464074043.html

その4「原稿完成」「レジュメの整形」(終)
http://egamiday3.seesaa.net/article/464078443.html


●全体の流れ
1. 「テーマ/トピックス」を決める。
2. 素材となる「参考文献」を探索する。(調査/入手/評価)
3. 参考文献を通読して、そのテーマ/トピックスをざっくりと理解する。
4. そのテーマ/トピックスの「要点」(伝えるべきこと)を決める。
5. 参考文献を精読して、そこに書かれている情報を「要素」として抜き出す。
6. 抜き出した要素を整理・配列して、全体を「構成」する。
7. 要素の「追加調査」「補強」をおこなう。
8. 「完成原稿」ができる。
9. レジュメ本体の形に整形する。
posted by egamiday3 at 10:26| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「レジュメをつくる」演習はこんな流れ:その4「原稿完成」「レジュメの整形」(終)


 ←ひとつ前の記事は、「その3「構成」「整理」「追加調査」」(http://egamiday3.seesaa.net/article/464074043.html

1. 「テーマ/トピックス」を決める。
2. 素材となる「参考文献」を探索する。(調査/入手/評価)
3. 参考文献を通読して、そのテーマ/トピックスをざっくりと理解する。
4. そのテーマ/トピックスの「要点」(伝えるべきこと)を決める。
5. 参考文献を精読して、そこに書かれている情報を「要素」として抜き出す。
課題: レジュメ事例を解剖する演習。
6. 抜き出した要素を整理・配列して、全体を「構成」する。
7. 要素の「追加調査」「補強」をおこなう。
   ↓
   ▲いまここ
   ↓
8. 「完成原稿」ができる。
9. レジュメ本体の形に整形する。


●ステップ8. 原稿の完成

 ていうか、ステップ6と7を繰り返しやってると、もうだいたいこのくらいかな、という潮時で、いま目の前にあるのが「完成原稿」でいいと思います。
 ここでいう完成原稿は、レジュメの一歩手前、という意味であり、人前で説明するための読み上げ文書、という意味ではないですので、そういうシナリオめいたものが欲しい人はそこから別途作業してください。


●ステップ9. レジュメの整形

 この完成原稿上にある情報を、レジュメという、人様に提示して見てもらう”よそいき”の姿に整形させます。
 フォーマットとして、wordでつくるパターンとパワポでつくるパターンとありますが、今回はパワポ版として話を進めます。
 手順としては、「全体像」→「本体」→「仕上げ」です。

 まずはできあがり時の「全体像」をイメージしてください。
 この時に、差し込み課題で見たあれやこれやのレジュメ事例が参考になると思います。他にも、例えば他の授業とかでパワポの配付資料なんか山ほど手に入ると思うんですけど、その中から、あ、これってなんかいいな、わかりやすいし見やすいな、というのがあったら、のちのちマネするために保存しておくとよいと思います。あたしはdropboxに「□_bestpractice(良いレポート・プレゼン事例コレクション)」ていうフォルダを作ってて、ひそかに貯めてます、なんかレジュメ作りに行き詰まったらこれを眺めて、発想のヒントをもらう。

 といっても、仮のイメージだから、あとからいくらでも変更することになるのはこれまでと同様です。
 この段階で言えるのは、デザインはできるだけシンプルにしましょう、くらい。(実際やってみると、凝ったデザインなんか邪魔でしかないことがわかると思います)

 全体像にそって、テンプレートを選んだら、本体をつくります。
 まああまり難しい話ではなく、最初はとにかく原稿をパワポに転記していく、くらいのノリで作業を始めることになるんじゃないかな。
 上手く完成原稿が作れてたら、すでに各要点ごとに、ナンバー、見出し、要素がまとまってるはずですので、その見出しと本文をパワポの各コマに落とす。

 で、このフェーズでメインになるのは「削る」作業です。

 自分が調べた情報をすべてレジュメに盛り込むのは、得策ではありません。情報が多過ぎると、聞く側にマイナスでしか伝わらないからです。レジュメに盛り込むべき要素は、取捨選択しましょう。ガシガシ捨てましょう。迷ったら捨てる方向で断捨離しましょう。こんまりしましょう。
 ・・・て言っても、捨てるのなんか心理的になかなか難しいですよね、せっかく苦労して追加調査までしたのに。

 ですので、すみません、言い換えます。
 「仕分け」しましょう。「レジュメ行き」と「口頭説明行き」と「質疑応答対策行き」の主に3レベルです。
 配付資料やパワポは、文字・視覚として、聞き手の手元に届ける情報です。めっちゃ精鋭レベルの情報、アルファ的存在。
 それと、まあそれを使いながら口頭で説明してるときに触れるよな、くらいの情報とを仕分けして、口頭説明用の情報はそれこそ自分の手持ち原稿に置いとけばいいわけです。しかもさらに言えば、手持ち原稿の情報にも、マストで言うべきことと、時間があれば触れてもいいくらいのレベルと、質疑応答の時にツッコまれた時の控えとして置いとくべき情報、というふうに意識していけば、まあレジュメ本体から削ることを躊躇するハードルが下がるんじゃないかなって思いますね。 

 さて、そうやって実際のパワポとして目の前に完成形が近づいてくると。
 あ、やっぱりここもうちょっと補強すべきやなとか、ここに1コマ補足のスライドがないとうまく説明ができんなとか、ここは2枚に分けよう、ここは3.1・3.2に分けよう、とかいうのが次々湧いて出てくるので、その都度ステップ5なり6なり7なりに戻ってください、もちろん、〆切とリソースと相談で。

 最後は、表紙(標題)、目次(構成)、参考文献(情報源・証拠)等を追加して、完成です。(そのつくりかたはレジュメ事例を見てください)


 ね、簡単でしょ? (ほんまか)

 あとは、実際に人前で発表したときに、その反応の良し悪しから反省して次に活かしたり、人さまのレジュメをたくさん見てヒントやアイデアを蓄積していったりしたらいいんじゃないですかね。
 そうやって、うまくいったり失敗したりしながら、繰り返し繰り返しこういうことをやってれば、だんだんこの手順が身体に馴染んできて、自分なりの定番レシピが暗黙知として築かれていって、まあ慣れてくると小さいトピックなら数時間で作れるようになる、かな?(ていうか、数時間で作らなきゃいけないような場面も出てくるのでは)

 この次に必要になってくるのが、論証とかオリジナリティとかだと思うんですけど、それはまあまた別立ての話(というか、あたしも教わりたいくらい)ということで。

 私からは以上です。


posted by egamiday3 at 10:21| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「レジュメをつくる」演習はこんな流れ:その3「構成」「整理」「追加調査」


 ←ひとつ前の記事は、「その2「要点」「要素抜き書き」「レジュメ解剖」」(http://egamiday3.seesaa.net/article/464018466.html


1. 「テーマ/トピックス」を決める。
2. 素材となる「参考文献」を探索する。(調査/入手/評価)
3. 参考文献を通読して、そのテーマ/トピックスをざっくりと理解する。
4. そのテーマ/トピックスの「要点」(伝えるべきこと)を決める。
5. 参考文献を精読して、そこに書かれている情報を「要素」として抜き出す。
課題: レジュメ事例を解剖する演習。
   ↓
   ▲いまここ
   ↓
6. 抜き出した要素を整理・配列して、全体を「構成」する。
7. 要素の「追加調査」「補強」をおこなう。
8. 「完成原稿」ができる。
9. レジュメ本体の形に整形する。

 作業手順的には、参考文献から情報を「要素」として抜き書きする、というところまでやりました。


●ステップ6. 要素の整理と構成


 ステップ6では、次の3つの手順を同時進行または往復しながら進めていくことになります。

 6.1 全体を「構成」する
 6.2 要素を「配列・整理」する
 6.3 要素の内容を「精査」する


○6.1 全体を「構成」する


 全体を構成する、平たく言い換えれば、目次をつくる作業です。

 まずはいったん目次をつくってみましょう。この段階ではまったくの(仮)でいいです、あとから何度も往復しては修正することになると思うので。ただ、(仮)でもこれが早いうちにないと、自分の中での情報整理の指針が無くてやりづらいので、えいやっ、で最初につくるのがラクだと思います。
 とは言ってもたいそうなことではなく、まずはステップ4で決めた「要点」に番号をふるだけで充分なわけです。

 1. NYPLにおける図書館と地域の関係 
 2. NYテロ後にどのような内容の地域情報を提供したか
 3. NYテロ後にどのような方法で地域情報を提供したか

 「連番」+「要点(=小見出し)」。
 これだけでもうそれっぽいじゃないですか。
 この要点=目次=構成にそって、情報を整理していけば、とりあえずはかたちになるわけです。
 あとはゆくゆくこれを、「2.1 事件直後」「2.2 数ヶ月後」みたいに分割してみたり、「(0.)NYPLとは」「4.まとめ」みたいに周辺的コマで肉付けしていったり、ということを、手順を進めるにしたがって追々やっていけばいいし、まあ別にやんなくてもいいし、くらいの感じです。その時には、差し込み課題で解剖した他の人のレジュメの構成を思い出してみるとよいと思います。


○6.2 要素を「配列・整理」する

 で、先述のように、この要点=目次=構成にそって情報を整理していきます。ここは、並べる作業です。

 抜き書きした要素を、これは1.のところで使う、これは2.で使う、と。
 しかもこれは2.1として、これは2.2として使う、というように内容によって分割したり括ったりしてみる。そうするとなんとなく順番=配列もできてくる。
 そうこうしているうちに、えっと、この要素はどの要点にも入らないんだけど、でもこれ説明しないといけない「前提情報」「周辺知識」なんだよな、ていうのが出てくる。これを「(0.)はじめに」「4.まとめ」みたいな章を別途立てて、全体の構成をふくらませたりする。あるいは、「1.」の中での付け足しとして処理してもいい。(もちろん、捨てる、という選択肢もあります)
 という意味でやっぱり、6.2と6.1は同時or往復になりますので、必要に応じて構成を変えることは躊躇しなくていいわけです。 

 あと、カンのいい人はわかると思いますが、この6.1・6.2の作業っていうのは、「5.要素の抜き書き」と同時進行でやっちゃえば仕舞いなわけです。というわけで、慣れたら、読みながら一気にパパッと整理できます。実際この演習をやってもらったときも、要領のいい人は最初っからそうしてました。
 ただまあ、手順をゆっくり説明してさらうとこういう感じになる、ということで。


○6.3 要素の内容を「精査」する

 さて、ここの並べる作業の時に、できればもうひとつ同時進行で作業したいことが、精査して、調査・補強すべきことを挙げる、です。(そう、この辺は同時や往復がけっこうきついので、慣れないとしょうがない一番の難所ではある)
 これは言わば「疑う・ツッコむ作業」です。いままでは参考文献に書いてあることをおおむね「ふむふむ」とうなづきながら処理してたかもしれませんが、そろそろ眉につばをつけながら精査することもやんないとマズイ。ステップ5のところでも「ソースは?」とか「主観?」とかメモをしながら、っていうのがあったと思うんですが、あれをもっと厳し目にやる、という感じです。
 やるべきことは、真偽不明・要裏取りな要素を、疑いの目で見つけ出す。
 それから、追加調査して補足・補強しないと頼りない情報を、見つけ出す。

 例えば、参考文献に「ニューヨーク市全体の図書館来館者数は年間約4100万人」と書いてあった。これを採用して紹介したい。というときに、これをどこまで「えっ、ちょっと待って」と思えるか、という問題ですが、まあ遠慮せずおもいっきりイケズになってやっちゃってください。

 ・年間、って、いつの年?
 ・この本書かれたのって確か2003年だけど、その数字いまそのまま紹介して意味ある?
 ・何をソースにその数字が出てるの?
 
 というふうに疑いだしたらそれを、この要素の末尾に、
 「・ニューヨーク市全体の図書館来館者数は年間約4100万人 (要裏取り、最新情報を調査)」
 みたいに付記していく。

 「要補強」とか「(?)」とか「採否保留」とか「誰々さんにいっぺんきいてみる」とか、自分用のメモなのでなんでもいいです。
 これをできるだけやっていく、わけなんですが、まあ本来はこれがどれだけ適切にできるかできないかが”リテラシー”の主な差であり、できる学生さんはもうしょっぱなの発表の時点でここまでやってきてくれてたりするから、リテラシーの差ってほんと個人差が大だなあって思うんですけど、さてじゃあそのリテラシーを上げるためには、どうしたらいいもんかなあ。繰り返し経験することでリテラシー上げてもらうしかないってことかなあ。少人数のゼミとか演習なら、対面で先生から指導してもらうことでそこも上がると思いますし、まあそれのマネゴト程度でもできればと思って、こういう課題を出して逐一発表してもらってるわけなんですけど。

 あと、えっ、メモするだけでいいの? 実際に調査もするんじゃないの? と思われるかもしれませんが、それは次のステップ「7.追加調査・補強」までいったん保留しています。なぜなら、いまはまだ構成にしたがって要素を並べてる段階であり、並べてる途中で毎度毎度立ち止まって調査しに行ってたんでは、せわしなくて整理もできないからです。あとでまとめて調査しに行くための、備忘のメモ、と思ってください。
 逆に、あとで調査するならいまわざわざ疑いの目で見なくてもいいのでは? と思われるかもしれませんが、まあそうかもしんないですが、構成にそって要素を整理するのと、その内容をじっくり吟味するのがタイミング的に同じかな、と思ってここに入れてます。そうじゃなかったら、自分のタイミングを見つけてもらったらいいです。


●7.追加調査・補強


 ちょっと長くなりますが、ここまでがひとかたまりの作業なので。実を言うと「ステップ6の中で3作業を同時or往復する」というのはウソで、このステップ7を含めた4作業を往復する、と思ってください。

 言っても抜き書きした要素はメインの参考文献からだけなので、まあ足りるわけがないのです。だから、構成にそって配列した要素のありさまを、こう引いた角度から眺めて、ああこのへんが薄いな、補強したいなというのを見つけて、その補強ができるような追加の参考文献を探しにいきます。これは「広い」目で見るほうの補強。
 そうして新しい文献を見つけて情報を補強にかかろうとする(注:もちろん典拠はこまめにメモ)と、まあ、要点や構成を変えたくなってくることだってそりゃザラにあります。そしたらステップを戻って、遠慮無く変えたらよろしい。

 一方、「ピンポイント」な追加調査・補強は、6.3で付記した「?」や「要」の数々をつぶしにかかる”裏付け捜査”です。

 ・・・と言ったところで、そんな手前勝手につけた疑問符の、全部が全部をつぶそうなんて、時間とリテラシーがいくらあってもまかないきれません。
 この「まかないきれない」とどう折り合いをつけるか、が、実はこのステップのメインな仕事だったりします。

 まず、ちゃんと調べてちゃんと補強する、ちゃんとしたパターン。
 このパターンでは、ちゃんと調べましょう。

 例えば、以下の例の場合、
 「・ニューヨーク市全体の図書館来館者数は年間約4100万人 (2003年? 要裏取り、最新情報を調査)」
 (a) 2003年の来館者数が4100万人だったことの裏取りをする
 (b) 2018年(もしくはできるだけ近年)の来館者数を追加調査する
 のいずれかかな。 

 調べ方もこれケースバイケースですが、一応ざっくり言うと、
  ・参考レベル: JapanKnowledge、参考図書
  ・当事者レベル: 当事者発信の文献・web、公式情報
  ・公レベル: 行政・公的団体・協会発信の文献・web、公的情報
  ・紙ベース: 書籍・論文(←DOORS・CiNiiで探す)
  ・ネットベース: Google、wikipedia等
 で、上の例の場合だと、有効なのは「当事者」つまりNYPLのwebサイトなりで統計を探す、じゃないでしょうかね。それで見つからなければ、当事者以外のレベルでできるだけ信用のおけそうな順に探すっていう。

 なお、追加調査・補強した時もちゃんとこまめに、得られた情報の「ソース」「情報源」を付記しておきます。特に、メインに据えてない参考文献から部分的に取ってきたんなら、なおさらです。「2018年? え、どこ情報?」ってこの話を聞いた人が混乱しないように、あとから検証可能にする、というフェアな態度です。

 そして、ここからがたぶん現実的な話なんですが、「まかないきれない時」の「あきらめるパターン」です。
 どんな課題にも〆切がありますし、どんな仕事にも「いついつまでに」「いつごろ発表」という納期やタイムリミットがあります。いっぽうで、リソースは有限で、しかも他の授業の課題もあるし、人には生活もある。これは、あきらめざるを得ない由来の、あきらめるパターン。
 あと、人前で説明するそもそもの目的、聞かせる相手、その後何につなげる説明なのか、テーマや情報の性質によっては、そこまで厳密な裏取りが必ずしも必要なわけではない、という判断もあり得る。これは、あきらめてもいい由来の、あきらめるパターン。
 そういう、重要性・現実味・リソース・〆切とのかねあいで、あきらめると判断したらあきらめることにそれほど躊躇する必要はないと思います。

 この例の場合だって、
 「・ニューヨーク市全体の図書館来館者数は年間約4100万人 (2003年? 要裏取り、最新情報を調査)」
 もちろん統計情報を探しに行ってもいいんだけど、その前に、えっとそもそも自分はこの情報で、聞いてくれる人に何を伝えたかったんだろう? と考え直してみたらどうですかね、っていう。
 この情報で、「ニューヨーク公共図書館はこんなにたくさんの人に使われてるんですよ」ってことを伝えたかった、としたら。そして今回の説明の要点が、「図書館間の来館者の比較」ではなく、「3.11時のNYPLの活動」にあるとしたら。うん、まあ、他の授業の課題に割く時間を削ってまで調べ直すようなことか? ってなるかな。
 だったら、この要素はこのまま”保留”でもいいんじゃないかなと思いますね。

 ただし、です。裏取りや追加調査はあきらめるでもいいんですけど、”フェア”であることはあきらめずにちゃんとしないと、ヤバイです。
 というわけで、保留については「但し書き」を付けて”フェア”精神を保ちましょう。

 「ニューヨーク市全体の図書館来館者数は年間約4100万人 (ただし、本書刊行は2003年)」とか。
 「ニューヨーク市全体の図書館来館者数は年間約4100万人 (「文献A」より)」とか。
 例えば、参考文献には「3.11から二日後にはNYPLのwebサイトにたくさんの情報が掲載されているのを目にすることができた」って書いてあるの、なかなか象徴的な情報ですけど、この「目にすることができた」っておそらく著者の個人的体験だから証明しようがないかなと。こういとき、InternetArchiveで当時のwebサイトを見に行ってみる、っていうアグレッシブな攻め方ももちろんありですけど、上手なあきらめ方としては「・・・というふうに著者は本書で書いてます」と、主語と出典を明記することで、そもそもの目的を果たせるんだったらそれでもいいんじゃないですかね。

 そういう、フェアな態度を保ったままで、上手にあきらめる
 この説明をしようとしてる本来の目的は何だったのかを見失ってなければ、そう難しいことではないと思います。


 そろそろ完成が近いです。


posted by egamiday3 at 00:51| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月07日

2019年1月のまとめ


●総評
 今年一年のための”助走”がうまくいった月ではあったので、よかったです。

●まとめ
・ヨーロッパ企画カウントダウン、ショートショートムービーフェスティバル
・ログ@スプレッドシート
・悪魔の食べ物
・杉能舎(雷山ボック、ペールエール)
・『ベルリンは晴れているか』
・『戦争と図書館―英国近代日本語コレクションの歴史』
・倉敷街歩き
・大量の揚げたて天ぷらをペロリアン
・京都醸造通い
・「いだてん」第1話
・「(メモ)レジュメ作り課題でのお悩みへの回答メモ」http://egamiday3.seesaa.net/article/463577258.html
・今年の抱負@業務:仕事は片付かないものとあきらめる
・レポートにダメ出し寄席
・HUB秘密会議(奈良方面)。同じ軸で少し離れた分野のことを伝えるということ。
・カスタマイズランキング
・書庫大片付け大会の日々
・『三文オペラ』
・「ブラタモリ」ローマ編
・梅原猛
・#古典は本当に必要なのか
・インフルエンザ禍
・安住の地「ポスト・トゥルースクレッシェンド・ポリコレパッショナートフィナーレ」@ロームシアター京都
・「ゾンビが来たから人生見つめ直した件」
・「かわらせくんの研究」ミンストレルズ @京都造形芸術大
・「ガスト・イン・トランスレーション」http://egamiday3.seesaa.net/article/463821713.html
・歯科、5年ぶり2度目。
・#タテカンの撤去は必要か @吉田寮
・タテカンは景観ではなくメディア、なのでこれはメディア規制の問題。物理的にタテカンが戻れば解決ではなく、本質はメッセージ発信のはず。メッセージは忘れられた時が死ぬ時なので、議論も署名集めも抗議もいつまでもネチネチとイケズに続けていくのが、無視してる奴らへのリベンジでは。
・ジャパンサーチ・ベータ版
・CRAFT HOUSE KYOTO@七条木屋町
・iPod Touch

●1月テーマの進捗
 1月テーマは設定していませんでしたが、
  ・1年の計 →だいたい立った
  ・書庫片付け →めどが立った
  ・休肝日 →10日実績
  ・書く →公私ともにそれなりにやってる

●2月の月テーマは
  ・健康第一
  ・1年の計を、身体になじませる
  ・初夏以降への布石
  の、3本です。

posted by egamiday3 at 07:08| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月06日

「レジュメをつくる」演習はこんな流れ:その2「要点」「要素抜き書き」「レジュメ解剖」


←ひとつ前の記事は、「その1「全体」「テーマ設定」「文献探索」 」(http://egamiday3.seesaa.net/article/463998268.html


1. 「テーマ/トピックス」を決める。
2. 素材となる「参考文献」を探索する。(調査/入手/評価)
   ↓
   ▲いまここ
   ↓
3. 参考文献を通読して、そのテーマ/トピックスをざっくりと理解する。
4. そのテーマ/トピックスの「要点」(伝えるべきこと)を決める。
5. 参考文献を精読して、そこに書かれている情報を「要素」として抜き出す。
6. 抜き出した要素を整理・配列して、全体を「構成」する。
7. 要素の「追加調査」「補強」をおこなう。
8. 「完成原稿」ができる。
9. レジュメ本体の形に整形する。
10. レジュメを完成させる。(目次・参考文献・その他)


●ステップ3. 文献通読&ざっくり理解

 まずは、メインとなる参考文献をさらっと通読して、そのテーマ/トピックスについてざっくりと理解します。
 ざっくりと理解することを目的としながら、次のようなことを考えつつ読みます。

●ステップ4. 要点を設定

 最初の通読で意識するのは、自分はこれからこのテーマを人に説明するにあたって、何に焦点をあてて伝えようか、という「要点」です。ふわーっと全体像を伝えるというパターンのやつも無くは無いんだけど、ふつーは、特に要点はこれとこれとこれです、って言える説明じゃないと、伝わりにくいし伝えにくいですね。
 ここで設定した「要点」が、自然とレジュメの「章立て」になります、のちのちのステップ6「構成」で使うことになる。
 要点は2つ3つ4つくらいがちょうどいいと思います。テーマの大小や尺の長短にかかわらずそのくらい。1つだと、もっと何かなかったの?って聞く側が物足りないし、7つ8つは多過ぎて聞く方だけじゃなく話す方もわちゃわちゃしてぶれる。どうしてもという場合は、これは「構成」の話になりますが、大要点−小要点(大見出し−小見出し)のように2段構えにすると、伝わりやすいし、ていうか自分自身で全体像をそういうふうに把握するのがよいと思います。(もしそれができないとしたら、あれ、このテーマってちょっとヘンじゃないかな?ていったん疑ってもいいかも)

 統一テーマで同じ文献を使ってレジュメをつくろうという演習でも、この要点の選択が人によってちがってくるので、最終的にできあがりも人によってちがうことになります。最初のほうで「自分を殺して正確に理解する」みたいなこと言ってはみたものの、そりゃ完全犯罪は無理です、心配しなくてもオリジナリティはどっかで必ず発現するものだと思います。

●ステップ5. 要素を抜き書き

 要点を設定できたら、今度はその要点を人に伝えるんだということを念頭に置きながら、参考文献を精読するフェーズに入ります。同じ文献を再読するわけですが、今度は、そこに書いてあるどの情報・データ・ことがらが、自分のどの要点を伝えるのに使えるだろうか、というようなことを吟味しながら読み進め、使うべき情報・データ・ことがらをピックアップして抜き書きします。この抜き書きするものを便宜上「要素」と呼んでます。
 
 要素は、以下のような目的を意識しながら拾っていきます。
  ・「要点」を説明するため
  ・要点の「背景/周辺/前提」を説明するため
  ・発表全体の「構成」をかたちづくるため
 つまり、要点そのもののためだけではないけど、なんか使えそうだなっていうのも取りこぼさないように、です。

 例えばですが、こんな感じになります。

-----------------------------------------------------
文献A:菅谷明子. 「評価を高めたテロ事件への対応」(第3章−1). 『未来をつくる図書館 : ニューヨークからの報告』. 岩波書店. 2003.

・ニューヨーク市5地区全体の図書館来館者数は年間約4100万人。[文献A p.92](いつ?)
・市民が必要とする情報を積極的に提供する。[文献A p.94]
・講座の例:○○○、○○○、○○○、・・・[文献A p.94]
・アメリカでは「引っ越したらまずは図書館へ」と言われる。[文献A p.96](ソース?)
・事件から二日後には情報満載のサイトを目にすることができた。[文献A p.96](著者個人の体験?)
・テロ後、メールで司書に問い合わせができる体制を整えた。[文献A p.97]
・「緊急電話番号リスト」として、緊急用窓口、災害支援団体、WTC内の金融機関一覧、交通機関、その他各種相談窓口などが掲載された。[文献A p.97]
・インターネットにアクセスできない市民のためにプリントアウトしたものを用意した。[文献A p.98]
・精神的苦痛を抱える人が相談できる地元関連団体のリストを作成した。[文献A p.100]
-----------------------------------------------------

 ↑説明してないいろんなものが出現してますが、いくつか注意点があるわけです。

 まず、「要素」はできるだけ細切れに、箇条書きにします。あとから要点ごとに整理してまとめなおしたり並べ替えたりするためです。細切れにするので「要素」と言ってます。
 細切れにしてまとめ並べ替えるので、ソース・情報源がわからなくならないように、各要素の文末に出典を記しておきます。自分がわかるようにするためなので、略称にしてもいいし記号にしてもいいしフルタイトルでもいいしそのミックスでもいい。いまどきの言葉で言う”トレーサビリティ”、あとから自分で追跡可能にしておくこと、これは自分のためです。もちろんレジュメにも必要に応じて典拠として示すためでもあります、これは聞き手のためと同時に、この知的活動をフェアなものとするためです。その「要素」が、自分発信のものなのか、他人のどの文献発信のものなのかを、いつ如何なる時でも明確にできるように。もちろん、この文献の著者もまた別の文献からその「要素」を借りてきた、という場合もあり、じゃあそのソースは?、という問題になります。
 もうひとつ明確にしておくべきことが、その要素を筆者は「客観的事実」として書いているのか、主観的な「推測」「個人の意見」「個人の体験」なのか。これが区別されてないと正確な理解にならない、ちゃんと理解することと鵜呑みにすることとはちがうので。こういうのって、本文を精読してる最中は、あ、これ著者が自分で言うてるだけの話やな、ってすぐわかるんだけど、抜き書きのために細切れにしちゃうとその文脈が失われて、あとからわかんなくなっちゃう。なので、抜き書きするときにちゃんとメモしとくといいよなって思うです。
 で、そういう典拠とか、典拠が不明だよとか、主観だよとか、そもそもこの要素に書いてあること不審、とかいうようなことを気づいたら、気づいたその時に忘れないように付記しておきます。結構後ろにだらだらとそれが付いちゃうことにもなるんだけど、あとでわかんなくなるよりもそのほうがいいと思います。

●差し込み課題: レジュメ事例の解剖実習

 要素を抜き出すと、次はそれを整理・配列する「6.構成」というステップになるのですが、はい、じゃあひとつひとつ並べてみましょうっていきなり言っても手が出るわけじゃないと思うんですね。なぜ手が出ないかというと、完成形としての全体像がイメージできてないからで、じゃあ全体像をどうやってイメージしたら良いかというと、ここは手っ取り早く、他人様の作ったレジュメ事例を実際に見て、参考にすればいい、と。
 と言っても、ただぼんやり眺めてるだけで参考になるわけじゃないので、自分の手でその事例を「解剖する」、というのを経験してもらおうというのがこの差し込み課題です。

 幸いにしてweb上には、ボランティア精神あふれる奇特な人たちが、たくさんのパワポレジュメを公開してくれています。この中からいくつかの事例、例えば、
 「LibGuides: パスファインダーを超えて」(https://www.slideshare.net/amanoeriko/20131030-lib-guidesss) とか
 「越境する沖縄研究と資料U」(https://www.eajrs.net/files/happyo/tomita_chinatsu_15.pdf)とか
 「地域を編む図書館: 360 度方位のコレクション形成」(https://www.slideshare.net/arg_editor/nagoya20151022)とか
 に、おそれおおくもありがたくも実験台になっていただいて、この中から好きなのひとつ選んで、各コマで何が説明されているのか、そのコマは全体の中でどのような役割・位置づけなのか、コマ同士がどのようにまとまり・カテゴリ分けされているのか、どのような流れ・配列になっているのか、を自分なりに分析してみてください、と。

 他人様のレジュメだけを実験台にしてても申し訳ないので、もちろん、自分のレジュメも検体としてさしだします。
 こんなふうにして解剖してみてくださいね、というサンプル扱いです。

-----------------------------------------------------
「冷泉家蔵書」
1. 表紙 :メタデータ
2. 参考文献 :参考文献
3. 時代背景 :背景・歴史・概要 ←社会全体の前提知識
4. 冷泉家の概要 :背景・歴史・概要 ←対象の前提知識に焦点
5. 冷泉家の蔵書 :蔵書の貴重さ ←全体
6. 藤原定家の書写本 :蔵書の貴重さ ←焦点をあてて
7. 冷泉家住宅 :(?)
8. 土蔵による資料保存 :資料保存の重要性(物理・科学・施設)
9. 戦乱・散逸の危機 :資料保存の困難さ(歴史)
10. 戦乱・散逸の危機 :資料保存の困難さ(歴史)
11. 蔵書の学術調査 :資料保存の困難さ(現代)
12. 財団法人時雨亭文庫 :資料保存の重要性(制度・組織)+公開の重要性
-----------------------------------------------------

 ↑これは、実際にこの科目内の別の日に実際にやった講義のレジュメです。みなさん、キャンパス内のあの部分だけ大学じゃなくて別の古い家があるでしょ、でもあれが何か知ってますか? 知らない? ぼーっと通学してんじゃねえよ、っつって(注:これどこの授業かバレバレやな)、ひととおり説明したときのレジュメなんですけど、それを解剖してみるとこんなふうになります、と。

 例えば、このレジュメの要点は「蔵書の貴重さ」と「資料保存の重要性」と「資料保存の困難さ」の3つだって言えるんですが、かといっていきなり蔵書についてだけ語り出したってわけわかんない、背景となる歴史とか、概要とかいうような「前提の説明」がいるから、それが3コマ目とか4コマ目なんです、とか。
 その前提説明も、3コマ目は社会全体という大きなところから入り、次に4コマ目にじゃあ冷泉家はという具体的な対象に焦点をあてる、という「全体→個々」という流れがここにありますとか。
 「全体→個々」だけでなく、「抽象→具体」や「時系列」のような流れもあるし、「メリット←→デメリット」のような対比や、「物理的・科学的 / 社会的・制度的」というカテゴリ分けもありますね、とか。
 ところでそうやって分析してみると、「資料保存の重要性」の説明が8と12で泣き別れになってますね、これなんでしょうね、多分(ていうか自分は)時系列順に並べることを優先して、こういう配列になっちゃったんですね、とか。あと、7コマ目なんですけど、これがどうしてもなぜここに入るのか、自分でもあんまりよくわかんないんです、でもこれが7コマ目にないと8コマ目がうまく説明できなかったんです。ま、こういうことも、まれによくあります、だからみなさんも、必ずしもガチガチに論理的な構成にしなきゃいけないってわけでもないんです、とか。
 自分を検体にしてるから、恥も何もなく好き勝手論評しちゃえますね(笑)。

 ほかにも、章立てのナンバリングがしっかりしている例とか、要点が明確な例/不明確な例とか、要点以外の周辺的な説明が豊富な例とか、いろいろある事例を、みんなで解剖してそれを持ち寄って、ああだこうだと分析結果を言い合う。
 これをいったん経験してもらうと、あとで自分のレジュメを構成した途中経過を見せてもらったときに、ここは無理に時系列にしようとするからわかりにくくなってんじゃないですか、とか、ここの2.は、2.1と2.2にして、下のレベルで分割してはどうでしょう、ほら、あの時見たあのレジュメの例みたいに、とかが言いやすくなるんですね。

 なので、ここで(勝手ながら)事例提供してくださっているみなさまには心より御礼を申し上げます。
 次はあなたのレジュメを。


 続く。


posted by egamiday3 at 07:49| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月05日

「レジュメをつくる」演習はこんな流れ:その1「全体」「テーマ設定」「文献探索」


 ここ数年、とある大学のとある司書課程科目で非常勤講師として教えている(注:これを極私的に”寄席”と呼び慣わす)のですが、その科目が例年10人いるかいないかくらいの小規模選択科目なので、だったらせっかくなので単なるトーキングブルース的な講義よりも手作りワークショップ的なしつらえのほうが良かろう、と思い、とは言えじゃあ、しがない実務家教員司書の自分にもどうにかこうにか教えられるものなんかあるんだろうか、と考えた末の企画が、「レジュメをつくる」という感じのやつです。


●「レジュメ」って、何かね。

 ここで言う「レジュメ」とは、極私的&限定的に、「人前に立って、何かしらのテーマ/トピックについて、ざっくりひととおりの概要を説明しなきゃいけない、という立場になったときに使う、説明用のパワポとハンドアウト」というものを想定しています。
 また、ひととおりの概要を説明、なので、いわゆる「報告型」であって「論証型」ではない、と想定しています。

 そんな「レジュメをつくる」というものがアカデミックスキルと呼べるような代物なのかどうか、大学の授業でいちいちやるようなことなのかは、わかりません。
 ただ、なぜそんなことを演習としてやってもらうかについては、オリエンテーション的な説明としてこんなふうに言ってます。
 この科目は司書のための科目だけど、みんながみんな司書になるとは思えない(注:別問題として説明)。けど、これからどんな分野のどんな職業に就くことになったとしても、誰かに対して、何かしらのことについての概要なり調査結果を説明したり報告したりする、というような機会は仕事のうえで何度でも出会い得る。また、人に説明するためではないにしろ、自分の知らない何かしら新しいテーマ/トピックのことについて、ざっくりとでも一から理解しないといけない、というシーンもいくらでもある。ビジネスマンになった時にどこかの国の清涼飲料水マーケットについて調べて会議で報告しろと言われるとか、教員になって職員会議で修学旅行候補先のことを説明しなきゃいけないとか、雑誌編集者になって何か知らんクリエイターに微妙なテーマでインタビューすることになったとか。そういうときに自力でなんとかするための手順を、ここでひととおり体験してもらうんだ、と。

 学生さんたちに聞いたところによると、「レジュメをつくらされる」ことは他の授業でも無くはないんだけど、つくり方が示されるわけでもないので、なんか人のつくったのをベースに見よう見まねでやってる、ていう話だったし、そう言われてみればあたしだってこれと言って誰かしらから教えてもらったわけじゃないしな、と思うものの、それでもいつの間にか”自分なりの定番レシピ”みたいなのは暗黙知として身体の中にあったので、それをあえて自分なりに言語化して学生さんたちに伝えることが、できるかなできないかな、くらいの実験的なつもりでやってました。これが数年経ってまあまあできると言えそうだなという感じなので、文字化までしてみようと。

 ちなみに、なぜ論証型でないか、ですが。レポートでもなんでもそうですがアカデミックスキルと呼べそうなものをゴリゴリとナノレベルまで絞り削っていくと、畢竟、「他人の書いた文献を正しく理解する」ことと「それにもとづいて自分なりに考察する」の2段階だろう、と思うんですが、どうも最近の学生さんの書いたものを拝読してると、小中高大を通して後者の「自分の考え」を述べさせられる課題はやたら与えられてきたんだろうなと推し量られるものの、前者の「他者/文献の理解」なんか無視してすっ飛ばしてるという様相をやたら目にするので、いや、まずいったん自分を殺して、すでにある情報と文献に対峙して正しく理解することをやりましょうよ、という前提です。

 あと、じゃあそのレジュメで実際に発表させるのかというと、それはしません、と最初に宣言してます。実際に発表するスキルはまた別系統の筋肉を使う話になっちゃって、ブレるので。


●「レジュメをつくる」の流れ

 で、本演習では「レジュメをつくる」実際の手順として、以下のような流れで取り組んでもらってます。

ゴール: あるテーマ/トピックスについて、人前で発表・説明するための、レジュメ(報告型)を作る。 

1. 「テーマ/トピックス」を決める。
2. 素材となる「参考文献」を探索する。(調査/入手/評価)
3. 参考文献を通読して、そのテーマ/トピックスをざっくりと理解する。
4. そのテーマ/トピックスの「要点」(伝えるべきこと)を決める。
5. 参考文献を精読して、そこに書かれている情報を「要素」として抜き出す。
6. 抜き出した要素を整理・配列して、全体を「構成」する。
7. 要素の「追加調査」「補強」をおこなう。
8. 「完成原稿」ができる。
9. レジュメ本体の形に整形する。
10. レジュメを完成させる。(目次・参考文献・その他)

 これを一気にやるのではなく、数週に分けて説明しながら、ステップバイステップで取り組む、という感じです。
 15週のあいだで「統一テーマ」と「自由テーマ」の2巡やるんですが、実際の進行としては、
  ・1巡目「統一テーマ」は、全員に同じ文献をこちらから与えて、途中のステップ3から取り組む。
  ・2巡目「自由テーマ」は、1.設定と2.文献探索から、自力で取り組む。
 というように、1巡目で全員いっしょに手順をさらったうえで、2巡目は自力で、という流れでやってます。
 この、「1巡目は途中から、2巡目で最初から」という流れについては、シベリア少女鉄道という劇団の「キミ☆コレ〜ワン・サイド・ラバーズ・トリビュート」という作品からヒントを得た、と記しておきます。


 以下、ステップ1からさらってみます。

 なお、実際やってみるとわかることですが、ステップバイステップとはいえ、時に後戻りしたり、往復したり、同時進行したり、ということは当然起こりえることなんで、そのへんあんまり厳密に気にしないでいいです、やりやすさを自分で見つけてください、とは言ってあります。


●ステップ1. テーマ/トピックの設定

 完全自由にしちゃうと迷うし決められないのが実際だと思うので、一応、選択肢として10個くらいのトピックスを提示して、ここから選ぶか、それ以外のを自分で決めるかしましょう、ってしてます。(例:図書館蔵書としてのマンガ、マイクロフィルムの保存、WikipediaTownと図書館、のような)

 ここでのポイントは、テーマを決めてしまう前に、いったんそのテーマで図書館OPACやCiNii Articlesをざっくり検索してみて、これから取り組むのにふさわしそうな(ちょうどよさそうな)文献がある程度の数あるかどうか、っていう「下調べ」をしておきましょう、ということです。下調べしてみて、文献が多すぎるとか少なすぎるとか古すぎるとか同じ人しか書いてないとかだと、ちょっとテーマを変えるか微調整(概念レベルを上げたり下げたり)したほうがいいんじゃない?、っていう。


●ステップ2. 文献探索

 そのテーマについて、ざっくり理解し概要を人に説明するのに、ふさわしそうな文献を探し、選び、入手します。

 文献探索って難しいですよね、自分でもいまだにそう思う、いや日常なんとなくやっててそんなにハズしてるわけじゃないんだけど、どうやればハズさない文献探索ができるかなんてことを言語化しようとするとなかなか難しい。
 難しい中を、こういうふうにやってみて、と提示してます。

 文献探索ツールは以下の4カテゴリ。
 @参考/レファレンス: 百科事典/専門事典、JapanKnowledge、サーチエンジン、Wikipedia等
 A図書: 同志社大学OPAC、CiNii Books、NDL OPAC、Webcat Plus Minus、Amazon等
 B雑誌論文: CiNii Articles等
 Cインターネット: 公式サイト、公的サイト、そのテーマ・分野の基本/代表的サイト、サーチエンジン等

 手順は、こう。
 1. @を使って、短時間で、そのテーマ/トピックスについての基礎知識・基礎概念・キーワードを理解する。
 2. ABを使って、まずは候補となる文献を10点前後ピックアップする。(テーマによってはCを使う)
 3. 候補文献10点前後の内容を簡単にチェックしたうえで、2-3点程度の文献にしぼって採用する。

 文献探しの決め打ち的な方法なんて、説明できません。ケースバイケースで、テーマによっても人によっても用途によってもちがうとしか言えない。ただ、ひとつ確かに言えるとしたら、何の準備もなくいきなり思いつく単語で文献目録の類を検索しにかかっても、うまく見つかるかどうかは運次第でしかない。それよりもいったん立ち止まって、そのテーマに関する基礎知識・基礎ワードを入手する、そのテーマについての簡単な概念地図を頭の中に描き出す、リトアニアって地理的にはこの辺にあって歴史的にはこういう立場を経た国なんだなとか、マイクロフィルムはマイクロ資料とも呼ばれるしその一種類なんだなとか、そういうのがわかってて検索するのとわからずに闇雲に検索するのとでは、ちがってくる。そういう理解のために、事典類とか、言ってみればWikipediaなんかが使いものになるんだ、と。

 もうひとつは、選んだ文献を評価するなんてこと、とてもとても説明できません、ケースバイケースだし、読んで使ってみるまでわからない。ただ、これもひとつ確かに言えるとしたら、検索して膨大にヒットした検索結果の中から、いきなり1つ2つの最適なものを選ぼうなんて、そんなバクチみたいなこと成功するわけがない。そのバクチ的な文献選びをおそらく多くの学生さんがレポート書きの時にやってるから、なんかいまいち無理やりなこと言うてはるな、ということが多くなってしまうわけで。
 なので、まずはいったん10個選びましょう、まず予選です。M-1だっていきなり全員からチャンピオン決めようとしたらわちゃわちゃするだけで、ちゃんと実力測るために予選をやるわけです。で、10個選んでざっくり眺めてると、それぞれの文献の違いと全体の世界観がなんとなくわかってきます、同じ「図書館とマンガ」でも、このへんは選書の話だな、このへんは効用の話だな、このへんは資料保存、このへんは子供相手でこのへんは研究目的。それがわかると、その中でも自分が選ぶべきはこのあたりの2-3個だなとか、こことここを代表でひとつずつ、とかいうふうに選べるんじゃないかな、っていう。

 何度か別のところでも文献選びの課題やってみてますけど、この2段階をやるのとやらないのとでは、いや最終的にはケースバイケースであるにもしろ、2段階のほうがすんなり事が運ぶ感じがします。

 ちなみにこのステップの演習では、最初の候補10点と、そこから選んだ2-3点と、それぞれを選んだ理由とを、まるごと発表してもらい、その中からその理由でそれを選んだのって妥当だったかなというのをやいのやいの言いあう、という回にしてます。それによって、自分だけでなく他の人の選び方もわかる。
 「知の共有」が学校の基本、ということで。

 続く。あとはそのうち。


posted by egamiday3 at 00:15| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月02日

目撃せよ!フェイクシンポジウム「マジカル・ランドスケープ」@京都市北文化会館 ホール


 まず、”フェイクシンポジウム”という聞き慣れないワードのために二の足を踏んでいる、という関西のMALUI関係者の方がいらっしゃったとしたら、その心配はまったくいりませんので、安心してふつーのシンポのつもりで見に来てください、ていう。
 ふつー&非常に聴き応えのある、リアルシンポジウムです。少なくとも自分はそう理解してる。
 京都、民衆史・生活史、都市景観、地形などなどの話題をめぐるパネルディスカッション、このテーマに興味のある方なら聞くべしかと思います。

 遠山昇司 フェイクシンポジウム 『マジカル・ランドスケープ』
 http://circulation-kyoto.com/program/toyama
 2019年2月2日[土] 18:00開演、3日[日] 15:00開演
 会場|京都市北文化会館 ホール

 それにしてもすっかり”芝居”を見に行くつもりでいたせいで、最初、どこにフェイクがあるだろう、もしかして登壇者のプロフィールも、説明されている事例も創作なんだろうか、などなど、探り探り話を聴いてたんですが、途中から、あ、これふつーのシンポジウムのつもりで聴いてていいんだ、ってなって、それからは安心して内容に入りこんでふむふむとうなずきながら聴いてました。万一フェイクがあったとしても、話としてはうなずける話ばかりだったので、じゃあフェイクがあるならあったでもいいや、もし”ヒストリー”と”ストーリー”が融合するキワがこの世に存在するとしたらちょうどココなんだろうな、と。まあ、少なくともコーディネーターが披露したいくつかの話ネタは何度か本人から聞いたことあるやつなので、フルでフェイクということはないんでしょう。

 ただ、内容はフェイクじゃないにしても、しゃべってるのはどこまで”台本”なんだろうか、それとも台本無しのガチなんだろうか、というのは最後まで気になってたんですけど。
 例えば、このシンポはほぼ最後まで演者の姿や顔が表に出ずに進行するんだけど、それって言わば、「Youtube等でライブストリーミングされてる遠隔地のパネルディスカッションを、仕事中に耳だけで聴いてる」状態に似たものがあり、そうやって耳だけで聴いてるとパネルディスカッションの進行やコメントってやたらわかりにくくて訳わかんなかったりすることがよくあるパターンなんですけど、今回はそういう聴きづらさわかりづらさがあまりなくて、進行もコメント内容もスムーズに理解できる風だったので、あ、これある程度は台本あるやつなんだろうな、とも思ったり。
 その一方で、例えばコーディネーターが何故か自らしゃべり過ぎなところなんかは非常にリアルなので、これ素でやってるんだろうな、と思ったり。
 さらにその一方で、シメが近いのにふわふわしてるわりにやたら「校歌」について語らせたがるなこのコーディネーター、と不審に思ってたら、ラストのパフォーマンスがなるほど「校歌」をかたどったものだったので、あ、ちゃんと伏線のために仕事してたんだな、お役目ご苦労様です、と思ったり。

 ・・・というようなのは、”芝居”見るつもりで来てしまったあたしだけの極私的な取り越し苦労だと思うので、そういうのまったく関係なく、京都、民衆史・生活史、都市景観、地形などなどに関心のある方はふつーに行ったらいいと思います。
 岡崎に琵琶湖の在来種がのこる話とか、北大路周辺の不自然な路地とか、インドの公務員が公園につくったものとか、いろいろおもろかった。

 ちなみに、2ステしかないんですが、登壇者もテーマも違うみたいなので、なんだい、明日も行かなきゃだわ。
  1日目 「京の輪郭」惠谷浩子
  2日目 「北山の海」松田法子

 ※ネタバレ(するようなイベントでもないのですが、なんとなくしそうな)部分**は、後日追記します。
 ※2/4 **部分を追記しました。
 ※2/4 2日目は議論の様相がだいぶちがってたことだけ追記しておきます。


posted by egamiday3 at 21:55| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする