引き続き、バンベルクからお届けしています。
前の記事では18世紀の宮殿跡までやってきて、バラ庭園から美しい中世の町並みを一望できますよなどと、文字通りお花畑なことを書いてましたが、そんなとこにわざわざ足を運んだのにはちゃんと理由がありまして。

↑宮殿内に州立図書館(Staatsbibliothek Bamberg)があるのでした(だからわざわざ来た)。
わりとがっつりした数量の稀覯書展示エリアがあって、あと閲覧室にも入れた。宮殿内に設けてあるから天井がバロック装飾だったりするんだけど、あとはまあ、ふつーの静かな大人向け(おそらく歴史系)図書館という感じで、参考図書類があって、書見台があったりマイクロリーダーがあったりオーバーヘッドスキャナがあったりという感じ。宮廷なり修道院なりの蔵書が資産として受け継がれてきて、ここで州立図書館として運用してるというパターンなんでしょう。
そして、ここもやっぱり誰でもふらっと入れるんだね。さすがドイツ3B(bibliothek)。
さらにもうひとつ。今度は駅に近いあたりまでだいぶ戻ったあたり、新市街エリアに↓市の公共図書館(Stadtbucherei Bamberg)もちゃんとありました。

ここはもう、絵に描いたような市の公共図書館であり、明るくて入りやすくてデザインも調度もわりと新しく、開架に貸出用図書あり、児童書エリアあり、参考図書エリアや視聴覚資料ありといった見慣れた装いのところですが、縦に数フロアあって、人口7-8万人くらいだったと思うけどそれにしてはかなり充実してるほうなんじゃないかな、って思いました。リューベックも開架書庫に蔵書充実してたけど、やっぱ本には手厚いお国柄なのかしらと。

↑もうひとつ見つけたこれは・・・あ、ビールのbibliothek、でした(笑)。ドイツ3Bのうち2Bを兼ねる。
それはさておき、その市立図書館の数軒お隣にあるのが、この町伝統のラオホビールを提供する2大老舗のもうひとつ「Brauerei Spezial」です。
せっかくというかもうとっくにお昼時なので、昼食をここでいただくことにしました。




創業1536年の老舗ブロイハウス。
燻製のにおいと歴史的建造物の香りがしっかり漂う。
昨夜の店「Schlenkerla」と似たサイズの食堂っぽいフロアに、木の長机が何本かぼてぼてと並んでます。まあ平日の昼間だからでしょうか、観光客っぽい人はあまりおらず、ジャージ姿のおっちゃんなどといったネイティブ感がだいぶ色濃い、ちょっとそわそわします。
しかもと言うか、フロアのおばさんがつっけんどんで愛想無しのパターン。これどうしたらいいのかなとおたおたしてると、そばの机で昼から呑んでるおっちゃん(注:ていうか、みんな昼から呑んでますが)がドイツ語で(たぶん)「その辺に座れ」的なことを言ってくれる(註:ドイツではカフェでもビアハウスでもたいてい勝手に席についていい習わしになってる)ので、あ、そうすか、それじゃあ、とそのおっちゃんのはす向かいあたりに腰を下ろすと、今度はドイツ語で(たぶん)「そこには座るな」と、理不尽にも追い払おうとする。
え、何、どうなってんのこの老舗。怖いんですけど。
註。これ、あとから思い当たったのですが、ドイツにはStammtischという”常連席設定”が伝統的にあるらしく、地元のお客がいつでも好きなときに来ては顔見知り同士で酌み交わせるように、コミュニティ用のスペースを確保してる、というのを物の本で読んだことがあって、それがあの机だったんじゃないかな、という気がします。じゃあまあ、アカンって言われてもしゃあないのですが。
そんなこととはつゆ知らず、別の席におたおたと腰かけて、とりあえずの注文はこちら。

すばらしい、この、見た目は非常にどっしりとした紛うことなきヘーフェヴァイツェン(酵母無濾過の小麦ビール)。しかもお客さん、これでアルコールフリーなんですよ。さすがドイツ、さすがバンベルク、純粋令を先取りしてたビール王国、ビールの足腰がちがう、このアルコールフリーのヘーフェヴェイツェンがまともに”ビールとして美味い”わけです。これ日本でも頼みますよ、こういうのあれば休肝がはかどって、国民の健康維持につながる。
本旅行での最大の学びのひとつ、「ドイツの美味いアルコールフリーは、美味い」。
で、食事はとりあえず軽めに、しかもここへ来てさらにアスパラガスをということで、メニューからシュパーゲル(ホワイトアスパラガス)のサラダを注文しました。
しかしやっぱりなんとなくそわそわして落ち着かない。フロアのおばさん(命名「愛想なし」)や理不尽なおっちゃん(命名「常連」)もそうなんだけど、今座ってる机のちょっと離れたところにいる若いご婦人、ひとりでビール呑んではるんですけど、あっちの客の様子見てはフフフと笑い、向こうの客の動きを見てはクスクスと笑い、こちらがスマホでビールの写真撮ったりすると、そりゃまあそんな日本人観光客の様子も確かにネイティブさんから見たらアレでしょうけど、クツクツと笑ってきては、だらだらとひとりでビール呑んではるので、えっと、とりあえず命名「笑い猫さん」でお願いします。
ていうか、なんか登場人物がそろいもそろってちょっとづつしんどい、っていうドラマみたいになってる。

↑シュパーゲルのサラダ、こんなふうな装いで来ました。
もっと野菜野菜してるかと思ったら、冷たいドレッシングソースにしゃぶしゃぶ漬かっててマリネっぽい感じでしたね。
というのを実食。
・・・・・・酸っぺぇ〜。
えっ、何これ、酢漬けなの?
シュパーゲルって、昨日のお昼にライプツィヒで食べたじゃないですか、ライプツィヒ風温野菜盛りみたいなの、あのシュパーゲルはふつーにゆでただけで素朴な野菜の甘みがあったと思いますよ。
でも、このシュパーゲルにはそういう甘みみたいなんがない、わりとキンキンに冷えて、キンキンに酸っぱい感じ。
んー、なんだろう、これはこういう料理ですっていうことなんだろうか、とも思うし。
保存食的な加工として酸っぱくしてある、ってことかな?、とも思うし。
いやこれ、もしかして、もしかしたら、缶詰か瓶詰めで酢漬けにしてあるやつを出してきとるってこともあり得るぞ、とも。疑惑の念。
何にしても、酢漬けのつもりにしろマリネのつもりにしろ、この酸味にはちょっと慣れないかなあ、アスパラの味殺してるもんなあと、もそもそといただいておるわけです。物の本によれば、バンベルクって中世から美食で有名な町だったらしいんですけど、これは「?」だぞと。
で、まあこんなもんかと、不機嫌に忙しそうな愛想無しおばさんを呼び止めて、お会計にしてもらおうとする。手書きのお代を見て、財布の手持ちから現金(註:ドイツではカード不可の店が存外に多い)を出す、キリのいい払い方をすると若干チップ多めの状態になっちゃうな、なんだかな、まあいいや、と、「じゃあ、これ全部どうぞ」と差し出すと。
現金、ってのはこういうことを言いますね、愛想無しおばさんがくるっと「あら、どうも」と微笑んでくるわけです。なんだ、きみ笑えるじゃん、と。
しかもさらに「どうでした、美味しかった?」とお愛想で問うてくる、そこまでかよ笑、と思いつつ、答え。
「あー、良かったけど、リトルサワーかな」
すると。
まわりにいたネイティブなお客の人たち、愛想無しさんも笑い猫さんも含め、そろって「ふふふっ」と軽くなごやかに笑うわけです。
・・・え、なんだろう、このふわっとそよ風が吹き込んで来た感じ。
すると、ちょうど新たに入店してきたばかりの一人の紳士が、近くの空いた席に座ろうとしながら、「あー、それはね」的にしゃべりかけてくるわけです。
この新キャラの紳士、恰幅がよくて丸顔で髭面で、ビジネスマンか大学教授かのような出で立ち、ネクタイこそないけどクールビズ姿で、汗をぬぐいながら、暑い中やっとこの店まで来たぞという様子。えっと、極私的に「ウシ先生」と命名します。
ウシ先生の解説によれば。
「それはねー、ローカルフードなんだよー、この土地ではティピカルなんだよねー」と。
あ、そういうことなんだ。
そういえばメニューにFrankischer(=フランケン地方)と書いてあったかなと。
(註:ここバンベルクは、ドイツ南部のバイエルン州の中でも、フランケン地方と呼ばれる地域にあります。)
のちに調べました。日本語はおろか英語でも情報がなくてなかなか難渋しましたが、がんばってドイツ語で見つけました。
この料理「Frankischer Spargelsalat」、すなわち「フランケン地方のホワイトアスパラガス・サラダ」という名前がついたもので、ネットにあがってるレシピをいくつか見てみると、多少の砂糖やバターも使ってはいるものの、基本は大さじ何杯かの酢とそれと同量のオイル。これにアスパラを漬けて冷やす、と。なるほど、そう聞くと納得いく料理だし、確かにああいう味になるよな。で、一度にたくさんつくって冷蔵庫で冷やして置いておけば、注文が入る都度出してこれるでしょう。そういえば、とある日本人の旅行ブログに「(別の店で食べた)アスパラガススープの具がやたら酸っぱかった」ことを書いてあったのですが、これも酢漬けのアスパラを刻んで具にしたと考えればうなづける話ではある。
ていうか、缶詰瓶詰めじゃなかったんだね、疑ってごめんなさい。m(_ _)m
ウシ先生、「どこから?」
あ、日本です。
「あーそう、バンベルクは初めて?」
はい、いいところですね。でもこれからミュンヘンに行きます。
「ミュンヘン行くの。僕はいまミュンヘンから来たところなんだよ。でもねー、ミュンヘンなんかよりバンベルクのほうがいいよー。断然バンベルクがいい。僕は好きだね」
うん、そうですね。あたしもそう思います。
常連さんも笑い猫さんもなんだかんだいっておもろかったし、ウシ先生がそうおっしゃるならいいところなんだろうなって思うし、トルコの兄ちゃんもそう言ってたし。実際もうちょっとゆっくりして町歩きしたりビール飲んだりもしたくなる町だな、って。
でも、今日はこれからミュンヘンまで移動したうえで、もうひとつエクスカーションを稼がないといけないので、にわかに後ろ髪ひかれる感じになりつつもおいとましますね。
さようなら、バンベルク。
egamidayさんはバンベルクを愛しました。
だいぶ小さな町だけど。
あと行けてない醸造博物館もまた行かなきゃ。

バンベルク発→ミュンヘン着。
ていうか、もう当たり前のように遅延してるので、時刻書く意味もあんまない。だいたい13時前にバンベルクを出発して、14時半過ぎにミュンヘンに着いた感じです。


というわけで、ついにラスボス、ビールの底無し沼・ミュンヘンに到着しました。
ミュンヘンには2泊の予定です。

駅近でキッチン付きの宿が安売りで予約できたので、遠慮無くビールが呑めます。
そして、ここを拠点に今日・明日・明後日と動きます。
で、15時半ですが、さっそくこれからまた別の町へお出かけします。
次のビアライゼは、ヴァイエンシュテファンです。