
5日目・5月1日(水)、午後3時半。
6ヶ国目、イタリア・ジェノヴァに到着しました。
【ジェノバってこういうことかあ】
気温17度らしいですが、日射しが強いせいか充分に暑い、早くも南国の空気を感じます。


↑ジェノヴァ駅の駅舎、特にその正面は非常に古めかしく、いやそれは様式がというより歴史的な”汚れ”を感じさせ、そしてその汚れなど意にも介さない風で歴史遺物を遠慮無く現役で使い倒してる、という感じがします。ガラスドームで全体を覆ったストラスブール駅とはだいぶノリがちがいますね。
とりあえず、今朝ほどネットで予約したホテルへ向かおうと、駅前のニューススタンドでバスチケットを購入し、路線バスに乗り込みます。道案内はGoogleマップさんではありますが、チケットを売ってくれる人、その場所を教えてくれる人、バスを運転する人、みなさんいちいち人当たりが良いから、さすがイタリア、イタリア大好きって思いますね。

ジェノヴァは海と山に挟まれた港町で、ひとことで言えばシアトルや神戸のイタリア版という感じ。横に長いからか、高低差があちこちでちょっかいかけてくるせいか、歩くのちょっとしんどいかな、という印象があったりしますね。徒歩のみの路地や歴史通りもあるかと思えば、車道は歩きづらかったり、自動車しか通るの無理だろうというような山裾トンネル的なものもあったりして、がんばってバスを乗りこなしたほうが得なんだろうな、という印象。ただしそのバス停も間隔が広かったり、中途半端だったり、本数が少なかったり番号がさっぱりだったりして、旅先のバスってただでさえ難易度高いのに、ここはさらに上級者コースのような気がします。観光客多そうな町ですが。

ホテルにイン。
フロントのマダムが、これもやはり人当たりが良くて親切で、しかも有能。「お部屋、ご予約のよりも広いのにしときましたんで」とかさらっと言わはる。あと、地図でおすすめのローカルフードレストランもちゃちゃっと教えてくださる。ホテルのフロントさんが有能だと、旅がはかどるんだなあ。
というわけで、ジェノバ町歩きです。
ジェノバとは。
(註:このあたり、アタック25で児玉さんが最終問題のあとである都市の名はの問題を解説する時のノリで)
コロンブスの生地でもあり、ガリバルディがシチリア遠征の拠点にした土地でもある海運の街・ジェノバは、イタリアの北西部、長靴が大陸にくっついた付け根あたりにあります。地中海に面した港湾都市で、前は海、うしろは山。ヴェネツィアやアマルフィのような古くからの海洋都市国家で、地中海では相当ぶいぶい言わせてた土地柄なので、中世近世当時の豪邸がいまも街の中心部にならんでるし、その後も港と海運の機能は近代以降現在に至るまで現役なので、後述の山の上から眺めると港自体がやぱりデカい。
とはいえ、いまはどちらかというと古い時代の町並みや港を古いまま残して古いまま経済を続けている、というレトロ感がある。中世近世当時のぶいぶいした裕福さがずっと保たれていたわけでもなく、そりゃ衰退もするだろうし、だからマルコのお母さんは南米まで出稼ぎに行っちゃったんだな、とかなんとか。
あとこの街にはキオッソーネ美術館という、東洋・日本の文物コレクションではイタリアでも有数の重要施設があるんですが、えーと、労働者の日は祝日ですね、はい、縁があったらまた来れるでしょう。
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まずはストラーデ・ヌオーヴェと呼ばれる、歴史的目抜き通り。
この通りのそこかしこにどっしりと建っている邸宅群が、中世近世のはぶりの良かった時代の貴族的な建築物たちであり、バロックやあロココやあルネッサンスやあ、ファサードやあ漆喰やあ天井装飾やあと、まあかまびすしいところ、だという理解。

残念ながらひとつひとつ見ていくほどの時間はさすがにないので、外見だけをざっと味わって、ジェノバってこういうことかあ、という気になってる。


細く入り組んだ路地や高低差が奥行きを生み出すダンジョン感も魅力です。開発・破壊もさほどされてない。
【egamidayさん、ケーブルカーで高台に登る】
街中にケーブルカーの駅があって、そこから背後の高台に登っていけるらしいので、上からの眺めを求めて行ってみました。
Zecca-Righi線、できたのは19世紀末らしいです。
観光客と地元民のミックス的な感じ。
途中カルボナーラ駅等を通る。
上から下りてくる車両と、駅ですれちがう。
ぎこぎこと登っていく途中、最初のころは岩を掘ったトンネル坑内のようなところを延々のぼっていくんですけど、そのトンネル内でしばしば立ち止まって、じーっと待ってるという時間が発生し、え、これいま何待ち?と不安になるのですが。要は、この立ち止まってる時間帯は、下り車両が途中駅に停車して地元民のお客が乗降してはるというやつですね。上の方と下の方とで駅が同じ距離の位置にあるわけでもないので、そうなる。
全長1.4キロ、高さ300m弱、まあまあの時間をかけて、終点。
その展望台からの眺めが、↓こう。
神戸だなあ、と思いますね。神戸大学に来たみたいになってる。
神戸大学さんもケーブルカー作ったらいいのにね。
あと、地中海の穏やかさと晴れ渡った感じの空が、絵になる。
下ります。
↑初夏の緑まばゆさと、トンネルの近代遺産感が、車窓を際立たせてる感じ。
以上、ケーブルカーでした。
【egamidayさん、ジェノヴェーゼの布パスタを堪能】
次に、港方面へ向かおうと↓路地に入りこんだところ、
あまりの路地の狭さとそれに比べての建物の高さで、もはやこの入り組んだ路地エリア一帯がアーケード街かのようにすら思えるという。しかも高低差がある。見通しが悪い。暗くて人がいないし、労働者の日のためか商店ほぼ全部閉まってるので、もはやリアルに物騒なダンジョンに来たな、というビクビク感。
これほんとかな、だってホテルでもらった地図にはわりと太めの道路っぽく書いてあったんですよこの道。
そしてそこを抜けて港そばに出ると、一気にリゾート感。
ホテルのフロントさんに、リグーリアのパスタとシーフードが食べたいんだけどと相談したところ、教えてくれた店「Trattoria Vegia Zena」がこのあたりにあるので、夕食をいただきに行ってきました。
食レポです。

特にこれといった高級感も観光地感もキャラ立ち感もなく、地元民がふらりと食事しに来そうな感じしかしない、大衆食堂っぽい見た目ですが。
注文は、せっかくのリグーリアなのでシーフードのミックスプレート的なものと、ジェノバと言えばジェノヴェーゼパスタ、しかも、ネットの写真で見つけてた、ラザニア生地みたいな布状の平べったい生パスタを、奥さんにわざわざ写真を見せて念を押すという慎重さを見せています。どんだけ失敗したくないんだと。
出てきたシーフードのプレートが↓こちら。
いやもう、「速報:美味い」が出るでしょう、これは。
食材自体は見てわかるものであり、味もお酢をしてあるかしてないかの差があるくらいでだいたい予想つくものではあるんですが、ともあれ、そのいちいちが美味い。
中でも美味かったのがイカで、イカはそりゃイカの味ですけど、ゆでたてでほんのりあったかくて、ふわっとやわらかい、つまりイカによくある固くてグッと噛まなきゃいけないという感じがない。イカってこんなにふわっとしてんだー、という喜び。あと、ああイカだよなあというような臭みもない。なので、イカを食べることを想像したときに思い出す”嫌さ”が全部なくて、”良さ”だけがある、っていう。当時のツイートで「イカすごいよなあれ」としみじみ繰り返してる、そんな感じ。
他の食材も、おおむね嫌さがない。
そして、↓パスタがこちら。

調べたところによると、ジェノヴァ地元のパスタでジェノヴェーゼソースに合わせられるという、「Mandilli de sea」(またはfazzoletti di seta)、「絹のハンカチ」という名前のラザニア生地状パスタらしいです。ジェノヴェーゼで使われる代表が、こいつと、もうひとつネジネジのパスタらしい。
まずこの麺、あえて麺と言ってしまいますが、まず見た目のつやつや感でもうすでに期待がふくらんでしまい、口にふくんだらこれが期待をさらに越えてくる感じで、つるっ・くにゅっ・もちっの最高のやつじゃないですか。食感の触感が官能的なんだもん、なんかもう、永遠に口に含んだままでいたい、っていう。これをナイフで切るときのちょうどいい弾力な手触りが、またすごく心地いい。あ、手触りも味なんだな、って思った。
そしてバジルのソース。実は白状すると、ジェノベーゼソースのパスタってそんなに好きじゃないんだよな、バジルくどいしな、でも本場だから食べとかないとしょうがないよね、っていうくらいのノリで注文してたのですが、こってりしてるのにバジルが青臭くない、これもバジルから思い出す”嫌さ”がここにはまったくなくて、さっぱりしてる。バジルはさっぱり、松の実はこってり、ああそうか、豆なり実なりは潰してなんぼなんだな、と。だからもこうれは、バジルのソースではなくて松の実のソースですね、そりゃ美味いわ。

「デンマークの豚」に続く、今回の旅行で得られた食のトップ3、「ジェノヴェーゼの布パスタ」。ペロリアンです、ごちそうさまでした。
【egamidayさん、イタリアでも無慈悲にビール】
街歩きその2、もうちょっと東側のフェッラーリ広場付近です。

↑サン・ロレンツォ教会。
白黒のファサードが随分オシャレな男前じゃないですか、どうしたことだ。

↑コロンブスの生家(復元)。


それなりに現代都市なのに、こうもあれこれ古いのが街中にちゃんと置いてあるのは、さすがだなって思う。
そして、宵闇と街灯りがちょうどいい具合にとけあう頃合いになって、通りを行き交ったり店先で飲み合ったりしてる街の人たちの、幸せそうな様子。それが観光客であっても地元住民であっても、幸せそうだからいいじゃないですか。
イタリアのそういうところが好き。
自分も幸せになりたい。
というわけで、今夜のビールです。

イタリアでも無慈悲にクラフトビールを求め、見つけたのが↑「Scurreria Beer & Bagel」という名前のお店。イマドキ流行りっぽい感じで、まあまあ混んでて、カウンターの末席にちょこんとお邪魔する感じで。誰かのでっかい飼い犬が足下をふぁさふぁさするんですが。


↑おわかりいただけるだろうか。欧米のいろんなところの良さげなのを集めましたよ、という感じで、全14種類、小さめのグラスで3.5ユーロ。通わざるを得ないじゃないですかこんな店、なぜ京都じゃなくてジェノヴァなんだ。京都であれよと。

Brasseria Della Fonte というところの↑Assassin Fogという名前のビールで、セッション・ニューイングランドIPAという造りらしい。アルコールが低めなのはありがたいんだけど、でもセッションでも酵母感はもうちょっとがっつり欲しかったけどな、と感じたらしい。

Fyne ales, Sour friendsという名前で、ベルリーナヴァイセでマンゴーがどうのと書いてある。オーダーすると、マスターが念のためという感じで「酸っぱいんだよ」とアラートしてくれる、ベルリーナヴァイセだしねえ。そして、案の定サワい。マンゴー感的な甘み香りはわかる。あと、スイカ汁みたいなちょっと瓜感があって、それが意外とサワいのとちょうど合ってる気がする。
そんなふうにダラダラ飲んでると、次に飲もうかと思ってた11番ドイツのラガーが消えてしまいました。もちろん、続いて新しいビールが書き込まれます、同じくドイツのメルツェンです。メルツェンかあそうか、どうしようかなー。

Extraomnesというところのトリペル。トリペルなんて強いの飲んだら、一段と酔いがまわってしまうではないですか。泡がもこもこしてて、その泡がさすがに甘くて美味い。そして、泡の時点で早くも酔いがまわりそうになるっていう。

明日はどっちだ。いや、ホテルはどっちだ。
結果的になんとか無事に帰り着きましたが、ジェノバにも行きつけになる店が出来てしまいました。次にこの街に来るときは、この店の最寄りで宿をとってください。>申し送り事項