5月5日、16時前。
無事にロカ岬にたどり着いたわけなので、ここからは帰路の話ということになります。
とりあえず、リスボンに戻らないと。
今夜はリスボンに泊まって、明日早朝出発、飛行機でリスボン→アムステルダム→翌日上海→関空、です。
【egamidayさん、大航海時代に帰去来辞を思う】 
ロカ岬からリスボンに帰るのに、単純にシントラに逆戻りしてもいいのですが、あえて別ルートを通って南へ向かいます。
バスの行き先はカスカイスという海沿いの町です。

なお、バスは激混みで、数十分立ち乗りでした。
カーブの多い山道で立ち乗りはつらいよね・・・。
途中、名物のローカルな路面電車が走ってるところにも遭遇できたはずなんですが、写真を撮る余裕も特になく。



カスカイスから海沿いを走る近郊鉄道で、リスボンに戻ってきました。

リスボンの中でもこのあたりはわりと西の方、港に面したエリアになります。
もう午後6時近く、リスボン観光の余地などはほとんど無い中で、せめてここは行っておこうと立ち寄ったのが、こちら。


「発見のモニュメント」。
ウォーターフロントに建つでっかい彫像で、大航海時代の歴史上の人物が多数登場するというやつです。

↑先頭のあいつがエンリケ航海王子。(コロンブスと間違えてた)

↑この中にバスコダガマやマゼランやバーソロミューなんちゃらがいると聞いています。

↑この宣教師がザビエルですね。


このモニュメントの足下には世界地図もあります。
ご丁寧にというか(おせっかいにもというか)”西洋からの発見年”が書いてある。

日本の「1541」は、ポルトガル船が豊後国に着いた年、らしいです。Wikipedia調べ。
その日本に、私が到着するのは明後日です。
目的のルート踏破は果たして、もう旅も終わり、10連休も終わる。
帰ろう。帰去来辞。
そんな中、地図のあちこちを眺めてると、そのヨーロッパ部分。

egamidayさんは今回の旅行で、この地図上の丸いポールが置いてあるあたりから、三角コーンが置いてあるあたりまでを旅してきたわけです。ていうか、なんという奇遇でしょうか(笑)。
【egamidayさん、ポルトガル料理にありつけない】 さて、もう午後7時近いわけなので、ホテルにインする前に夕食にしようと思うわけです。
ネットでいろいろと検索してみると、とある日本人のブログでやたらその料理を褒めてる町の食堂(Freixo)を発見。ポルトガル料理の名物のひとつに、豚肉とアサリを混ぜて炒めるという、どう考えたって美味いに決まってるような奇跡のレシピがあるのですが、それが美味い店だとおっしゃる。そもそもポルトガル料理自体、魚介類と肉その他を上手に使って、日本人好みにしあがってるものが多いらしく、食材もタコや米やアサリや豚を使い、調味料もニンニクやスパイスやオリーブオイル等等、ほお、そうか、これは旅の最終日に何が何でもポルトガル料理を堪能せなあかんな!と気合いがグッと入るわけですね。
とりあえず、Googleマップ頼りにその町食堂に向かってみます。
ローカルな番号のバスに乗り、地図上でズレズレの位置に記されてるバス停で降り、道の形をマップとリアルでにらめっこしながら、人影もまばらなネイティブな町の道をおそるおそる歩いてると。
・・・・・・通り過ぎたな。
戻って、このあたりのはずだという建物を注意深く。
・・・・・・え、この
廃業してるらしき店舗のことじゃないか(涙)。
窓はホコリや貼り紙あとの糊で汚れ、店内は土気色で壊れた椅子が転がってるだけ。ポルトガル語の張り紙が貼ってあるのをがんばってGoogle翻訳してみると、2月まで工事だの、場所を移動するだのということなんだろうか、わかんないけどとにかく書いてある。
まあ、わかろうがわかるまいが、閉店してるわけです、これはもうしょうがない。
その移転先というのがわかるだろうか、あるいは別の店でも、とブックマークしてたいくつかの候補を確認していると、これはなんだろう、パティスリーなんだけども食事もだしていて、シーフードのリゾットが美味いよ、ということらしい。さすがポルトガル、米と魚を食わせてくれるなら充分ですよ。
ちょっとここからは遠いけど、よく見ると、現在地からオリエント駅(注:ここのロッカーに今朝荷物を預けたままになっている)までのちょうど通り道にあたる、なるほど、どのみちそっち方面にこれから向かわなきゃいけないわけですから、そういう意味からも都合がいい、と向かうことにします。

港湾地区の軽く荒れた道ばたをとぼとぼと歩き、ていうか”豚肉とアサリ”を逃した時点でだいぶ失意ではあったのですが、レトロなトラムに乗ると窓からの風がさわやかで、ちょっとだけ元気になる。

で、トラムと地下鉄を乗り継いで数十分。
なんか名古屋大学にそっくりな街並みしてるなあ、と。
店の前まで来てみたところが。
シャッターが半分下りていて、おっさんが拭き掃除してる。
・・・・・・あ、これ明らかに
片付けに入ってるやつやな。
時計を確認する。
午後8時。
あ、まだ明るいから気づいてないけど、もう夜8時なのか。
さすがにパティスリーが開いてるわけもないな。
ここへ来てにわかに、あれ、これちょっとなんかマズイぞ、という気になってきます。
よく考えると、今日は朝からちゃんとした食事はとってないわけです、駅のコーヒー屋でつまめるサイズの小さなパイとさつま揚げ、あと、シントラで十何世紀だかいうスイーツ。それだけ。ていうか、もっとさかのぼれば、ほぼ24時間前にマドリッドの駅でホットサンドひとつ食べたのが最後。
それで今日は午前中からシントラだの王宮だの、モンセラート宮殿の高低差豊かかつ広大な庭園だのを歩きづくめで、挙げ句にユーラシア大陸最西端まで歩いてる(注:一部に誇張があります)。なんかこう、さっきから”心地よい疲れ”に身体が満たされてるな、という気分でいましたが、いやちがう、これはおそらく「ただただ疲れている」だけであり、そしてたぶん食料摂取してないから「脳に糖が行かずに判断力がにぶってる」んだな、自分。(そもそもパティスリーで食事出すって、せいぜいランチとかじゃないか)
そう、いまやっと気づいた。疲れてるんです、私。
しかもこのぶんだと、
海外旅行あるある代表格のひとつ「食べそびれる」に見舞われるおそれがある。
これはとりあえず、なんでもいいからいったん食物をしなければならない、食って、セリヌンティウスを、じゃない、食って血糖値を上げて脳にも糖を送るのだ。

というわけで、すぐ近くの店がチャイニーズのパティスリーだったらしく、一皿いくらで好きにアジアフード食べれる的な感じだったので、もうなんでもいいですとばかりに、食物摂取行動を実行したのでした。かろうじてバカリャウの煮たのはあった、バカリャウを半中半欧で煮るとああなるんだなという感じ。あとはだいたいインターナショナルな中華、バナナのフライとかあった。
しかも席についてわかった、自分、座りたかったんだ。相当疲れてたなあれは。
で、じゃあポルトガル料理はあれだ、ビールのあて的にもらえればそれでいいや、と。
せめてビールは、ポルトガルのクラフトっぽいよさげなやつ、どっかでもらおう。
今夜のところはそれで納得しよう、って。
思ってたんです。この時までは。
【egamidayさん、ビールにもありつけない】 そもそもいまになって大ミスに気づいたことには、今朝シントラに着いたときに、「ロカ岬で大西洋を見るのに逆光にならないように、午後に行こう、だから午前中はシントラ観光にしよう」、って、いやいや、ロカ岬から大西洋は西を向くわけだから、逆光を防ぐには午前中に行くべきだったわけです。そして、午後に行って、そのことに気づいてすらいない。
どうかしてる、判断力低下どころの騒ぎじゃない。これはもはや一週間の旅の疲労が相当たまっていると言ってよい。帰去来辞。
というわけで、まずはオリエント駅でロッカーから荷物をピックアップして、宿にいったんチェックインしに行こう。
ビール・ハンティングは落ち着いてからだ、と。
地下鉄でオリエント駅に向かいながら(註:さっきから地下鉄の便はわりといい街)、ちまちまとネットでポルトガル・ビール情報を探してたところ。
向かってる先に、「All Beers」という名前のバーがある。
オリエント駅はリスボン中心部からだいぶ距離はあるものの、空港近く、新しく造りつけたような土地で、そこにイオン帝国さながらのでっかいショッピングモールが併設してあるのです、H&Mやなんやがうわーっと入ってるタイプの、しかも名前が「バスコ・ダ・ガマ・センター」。そのレストランフロアにビアバーがあって、ポルトガルどころか世界各地のクラフトビールが、買えるし飲める、という店らしい。
何ですか、ここへ来て夢の国ご登場じゃないですか。

ただいま、午後9時。
というわけでここがそのショッピングモール。
「All Beers」は何棟の何階、とネットに書いてあるので、行ってみてうろちょろするんだけど、なかなかそれらしいサインが見つからない。
あれーどこだー、とフロアマップを念入りに見る、端から端まで歩いてみる。フロアもわりと広くて、ショッピングモールにありがちなわざと歪曲で分け入るような造りになってるのか、分け入っても分け入っても他の店に当たるばかり。
ヘンだなーと思って、デッキで違う店の食器を片付けてるおじさんをつかまえて、仕事中申し訳ないんだけどと思いながら。
この「All Beers」っていう店なんだけどね。
「・・・あー、クローズ」
え、クローズ!? でもまだ9時でしょ、一応ビアバーなんだし。
と、怪訝に思ってると、自分の職場らしきレストランを指して。
「チェンジ」
…チェンジかぁーっ。 …。
………。

ん、ああ、ホテルにチェックインしました。
あまり遅れてノーショー扱いになっても困るなと思って、わりと時間ギリギリに駅のロッカー荷物(注:ここでも追加コインが無くて困ってた、そばにいた紳士が恵んでくれた)をピックアップして、空港駅までやってきて、車道をガラガラ荷物ひいて、格安でファーストなホテルのせいか明らかにフロントスタッフ手薄で何十分か待たされたけど、まあ、あれです、ここが最後の宿です。
壁の絵にツッコむ余裕もあまりない。
軽く湯浴みして、気を取り直し、あらためてビールにありつくために外に出ます。

もう何度目かの地下鉄に乗り込みますが、現在もう夜10時半です。
え、ロカ岬出たの4時とかじゃなかったっけ? 一体どこで時間がこんな押せ押せになったんだろう、さっぱりわからない。
しかも明日リスボン空港発って、朝5時ですよ。チェックインは4時20分〆切で、荷造りその他を考えると3時過ぎには起きたい。
なのに、あろうことか地下鉄に数十分乗って酒場にビールのみに行こうとしてる、おかしいだろうと。
それでもなお、スマホでいろいろ探していたところ。
候補その1、リスボン中央駅すぐ近くに有名なビアバーがあるらしい、と。ただ間違いなく混んでそう、ネットで写真探しても店先で人が押せ押せになってるようなのしか見かけないんだもの。
候補その2、オリエント駅に戻ってイオンモールのスーパーで地元惣菜を買い込んで、部屋のみ。それは最後の手段だなあ、時間遅いとろくに品物のこってなさそうだし。
候補その3、海近くに老舗の市場(Mercado Da Ribeira)があり、近年改装して新しいフードコートができた、と。市場の食材を使ったポルトガル料理やその他の各国料理を出すたくさんの店が並び、大勢収容する席もある、と。
ははあん、なるほど、フードコートってそういうことか。思い返せば数日前、行きはしなかったけど、デンマーク・コペンハーゲン中央駅のすぐ隣りに新しいフードコートが確かにできてた(
http://egamiday3.seesaa.net/article/470485028.html)し、もっと言うと3年前、イタリアに行ったときもローマのテルミニ駅に併設して、わりと使い勝手のいい、しかもローカルな料理も無くはないくらいのフードコートが新設されてた(
http://egamiday3.seesaa.net/article/445407391.html)。もっと言えば、京都タワーの下にあるのもそうで、いまどきの流れであちこちにできてるそういうのって、不慣れかつ忙しい観光客をそこそこの感じで大量にさばいてくれるという意味では、時と場合によって上手に使うと捗るな、っていう。
2択に悩んだ末、選択肢が多そうな市場のほうへ行ってみました。

午後11時。
すげー賑わってる(笑)。
中央に席が大量にあって、周囲にぐるりと各店舗が並んでる、という造り。
これだけ店が並んでれば、良さげなビールも見つかるにちがいない。
と、思うじゃないですか。
1店1店ローラーのようにのぞいて行くのですが、ビールを置いてるところが一向に見つからない。
ていうか酒を、ドリンクを置いてる店がないのか??

で、どうやら中央に1店舗あるでっかいビール会社のブース。
ここがこの市場でビールを集中的に提供する、という構造らしい。ワインやコーヒーの集中提供所もあった。セントラルヒーティングみたいですね。
…ということは、この大手企業らしきビール店のビール一択しかないわけね。(誰だ、選択肢多そうとか言ったの)

と、デジタルサイネージが切り替わると、なかなか良い色合いのビールが並んでるじゃないですか。
テムズ(イギリス)のポーター、バーバリアン(南ドイツ)のヴァイツェン、ベンガル(インド)のIPA、そしてミュンヘンのデュンケル。
うん、わかる、大手企業さんがクラフトビールっぽく作った各種スタイルのビールっていうパターンのやつですね。グラスもなんかチャラくて内容量少なそうではありますが、でも、もはや何の文句もありません、ここへ来てまさかデュンケルが呑めるとはもっけの幸いじゃないですか、ガツンと飲ませてほしい。
と思って、お店の娘さんに声をかけます。
「デュンケルを!」
「OK!」
と快諾のうえ、厨房にオーダーを通す娘さん。
よかった、呑める。
ヘルシンキからリスボンまでの長旅、いろんな土地のいろんなビールを渡り歩いて、最終日はあちこちの店が閉まりまくってたけど、美味いビールが呑みたいと歩き回り、最後の最後にミュンヘンスタイルのビールが呑める。
ありがとうミュンヘン、ありがとうリスボン。
「******!」
「******!?」
…なんかもめてるな、娘さんと厨房。
「ソーリー、デュンケルが出せない」
えっ、そうなの。
参ったな。じゃあヴァイツェンでもIPAでもいいんだけど。
「ごめんなさい、ポーターもヴァイツェンもIPAも出せない。出せるのは、一番左のオリジナルビールだけ、あれも美味しいよ」
え、いやいや、あれふつーのラガーっぽいやつじゃん、そうじゃなくて。
「え、何、こっちのクラフトビールはソールドアウト?」
これだけの人混みのせいで、もう売り切れたという悲劇なのか?と思いきや。
娘さんのコメント。

「ごめんなさい、↑これを出すためのグラスが全部出払ってて、もう用意できない」
グラスが…無い……。
美味かったですよ。どこかの何かのビール。


ポルトガルと言えばタコでしょう、と思って、タコのシチューももらいました。
アリファナ海岸というところがポルトガルにあって、それ風だそうですが、よく見たらこの料理、”いも・たこ・なんきん”なんですよね。
なるほど、日本人好みと言われるだけのことはある。
ビールと食事をいただいて、地下鉄でホテルへ戻りました。
戻ったのは0時半頃だったかな。Googleマップの地下鉄時刻も違ってたしね。
正直、
ビールの恨みは根に持つよ。