2020年06月23日

今日の「CA読み」メモ: Queer Japan Web Archive、Archive-It

●E2177 - 米・アイビー・プラス図書館連合のQueer Japan Web Archive
 https://current.ndl.go.jp/e2177

 「2019年5月,米国の13の大学図書館で構成されるアイビー・プラス図書館連合は,日本の性的マイノリティに関するウェブサイトを収集保存するプロジェクト,Queer Japan Web Archiveを発足させた」。

 この記事は、以下の複数の重要な要素を含みます。
  海外の日本研究
  LGBTQ資料
  灰色文献の収集
  webサイトの保存
  多機関連携
 その中でも特に「webサイトの保存」についての実践例解説が、具体的で勉強になるなと思いました。

○灰色文献の収集
「LGBTQのコミュニティに関する情報の多くは,チラシやニュースレター,またはTwitterやブログなどの電子媒体での発信のみで,研究に有益な情報は保存されにくい」

○海外の日本研究
「日本のLGBTQトピックに対する関心は,世界の学術コミュニティのなかで高まっており,…今後日本のLGBTQに取り組む研究者の増加を見込み」
「オーストラリア国立図書館のJapan: Sex and Gender: LGBTQはトップページの階層のみの保存」

○多機関・専門職の連携
「Ivy Plusのうち5校(イェール,デューク,ハーバード,プリンストン,ブラウン大学)の日本研究専門司書は,共同で関連ウェブサイトをアーカイブすることに同意した」
「QJWAではサイトのアーカイブだけでなく,司書によるコレクション構築のための共同キュレーションにも尽力している。日々,作られては消える多様で膨大なサイトを,一個人でアーカイブすることは不可能に近い」
「日本研究専門司書が共同で対象サイトのURL,タイトル,言語,メタデータなどの情報を登録し,それを基にWeb Resources Collection Librarianがサイトの所有者に通知し,Archive-Itでクロールを行う」

○webサイトの保存
「Ivy PlusのWeb Collecting Program…このプログラムは,消滅しやすいウェブサイトをテーマ別に精選し,収集することを目指す」
Web Resources Collection Librarianと称する専門司書…この専門司書は,コロンビア大学を拠点として,Archive-Itのアカウントの維持,目録の作成,サイト所有者への通知,収集するサイトの選考をする司書のサポートを職務としている」
「研究価値の高いサイトのリスト作成のため,学術的知見と,LGBTQコミュニティと良好な関係を持つ日本の研究者2人から協力を得た」
「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)が対象とする政府機関のサイトは収集対象外」
「Facebookは有効性の高い方法での保存が困難なため対象外だが,Twitterは技術的に可能なため収集を検討している」
「日本研究専門司書が共同で対象サイトのURL,タイトル,言語,メタデータなどの情報を登録し,それを基にWeb Resources Collection Librarianがサイトの所有者に通知し,Archive-Itでクロールを行う」
「通知後は所有者からの返事を待たずにクロールを行うが,サイト所有者からクレームがあった場合はサイトを削除する。このような手順は“Notification-Only”と言われている」

○Archive-It
 「Archive-It」はInternet Archiveが作成したwebサイト保存サービス
・自組織のウェブアーカイブを簡単に行えるサービス“Archive-It”
 https://current.ndl.go.jp/node/6565
・E1832 - Internet Archiveによるウェブアーカイブの現状・課題等調査
 https://current.ndl.go.jp/e1832
・ウェブアーカイブを支える技術
 https://doi.org/10.18919/jkg.67.2_73
・億万長者からの圧力でニュース記事や文書を葬られないよう保存する「Archive-It」とは?
 https://gigazine.net/news/20180201-archive-it/
posted by egamiday3 at 22:03| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大学でのレポート課題に何を求めるかを考える その2:論述は孔子のように

 「その1:リテラシーはミニマリストのように」http://egamiday3.seesaa.net/article/475846941.html の続き。

-----------------------------------------------------
 @「すでにある事実や他人の見解が書かれた文献」を正確に理解したうえで、
 ↓
 Aそれにもとづいて「自分の考察や見解」を論じる。
-----------------------------------------------------

 この@→Aさえちゃんとできてりゃいいと思うので、それ以外のことはまあ、気にいたしませんというスタイルという話でした。

 但し、です。
 その最低限の@→Aだけはきっちりやってもらいます、っていうのが膏肓に入ってしまった結果、うちとこのレポート課題は「3段階」あるということになっちゃってます、逆に悲報。
 例えば「日本の図書館はなぜ電子書籍が普及しないのか」とか「電子ジャーナルが高騰しているのに、なぜ研究者は一斉にオープンアクセスにしないのか」とかいう感じのそれっぽい論題があったとして、その論題についてこの3段階で取り組んでそれぞれ提出してね、っていう。

-----------------------------------------------------
・課題(1):考察に役立ちそうな参考文献を探し、リストアップする。(文献探索)
・課題(2):考察の根拠とできる文献2点を読んで、内容を要約する。(要約)
・課題(3):この問いについて、自分はどう回答するか考えて、論じる。(考察)
-----------------------------------------------------
 
 ふつう先生方は「課題(3)」の部分しか求めません、そりゃそうだ、あたしも以前はそうでした。でも「課題(3)」だけ出題して待ってるだけだと、実際に提出されたものの出来不出来の差がすげえ激しいわけです。ガチ勢は、むしろあたしが教わりたい(あのーどちらで修行なさったんですか?的な)くらいなんでいいんですけど、不出来のほうって、これ困ったなどこまでさかのぼって指導したらよかったんだろう、というあれなのを、実際にさかのぼって検証してみるとあーなるほど、と。(1)(2)のステップをやってないなと。
 ていうか何も言わずに「○○について論じよ」って言われたら、そりゃ自分勝手に○○について書いて終わるでしょう、「電子書籍を実際に使ってみたら目が疲れたから、不向き」とか。それで終わろうとする向きには、文献探索なんかするべうもない、でもそれじゃ感想文かよくて随筆なので、大学のレポートとして最低限必要な(1)(2)をふまえてくださいよ、と。目の疲れをどうしても訴えたいなら、せめて「『○○』によれば**%が目の疲れを訴えた」とかでもいいから、いっぺん探してみてよ、じゃないと検証も否定もできないでしょう、と。
 仮にもアカデミックな場で書く文章のトレーニングだったら、検証可能性には意識的であってほしい、と思うわけです、司書という職業に就くというならなおさら。

 ただ、その「ふまえてくださいよ」を口でやれやれ言うだけだと、精神論に毛が生えた程度にしか聞こえないだろうなって思ったんで、うちとこでは「課題(1)」「課題(2)」という明確なステップとして要求した、っていう感じです。
 構造改革です。出題改革です。
 出題は大事です、出題のしかたを変えることによって回答どころか思考過程まで変わっちゃうんだ、っていうことを元クイズ研としては身に染みてわかってるので。

 だから学生さんには、3段階もあってウザい課題と思うかもしんないけど、リテラシーの「到達度を測る」ためじゃなくて「到達してもらう」ために書いてもらう目的でやってるんで、わざわざ言うしわざわざやってもらうし、かなりの割合で再提出指示が出ます。
 ていうか他の先生も、わざわざ言わないだけで本来は求めてるはずのことなんだから、黙っててもできてなかったら落とされるんやで、がんばったレポートなのにいまいち成績良くなかったなって思ったらそういうことやで、みたいに言います。言っちゃっていいのかしらんけど。

 あと余談ですが学生さんには、この「@→A」や「(1)(2)(3)」は大学のレポートだけじゃなくて、社会に出てどんな仕事するにしろ必要なリテラシーやし、なんならネットでクソリプ飛ばすやつは@や(1)(2)ができてへんからやで、って言います。ほとんどの学生さんが生涯学術コミュニティに属するわけではないにせよ、でもなぜこのリテラシーが一般人の知的活動にも必要なのか、無いと困ることなのかっていうことはちゃんとわかって卒業してもらう、ていうのが、大学学部教育のひとつの責任じゃないかなって思います。
 もうひとつ余談、@→Aの説明をするのに、論語の「学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」という誰もが一度は漢文の教科書で見たはずのフレーズを引き合いに出すと、わりと「あーなるほど」という顔をする学生さんが増えます。古典は本当に必要なのだ。

 ふだんですとこの(1)(2)(3)の3段階を、1ヶ月ごとくらいに順々に提出してもらい、授業内で数人ピックアップして簡単に発表してもらいながら、ここはこういう意味でいいやり方ですねとか、これはこういう理由でこう変えたほうがいいですね、これはどういうことに迷いましたか、みたいな感じでみなさんに共有していく、っていうやり方をやってたんですけど、まああれですね、コロナうざい。

posted by egamiday3 at 19:07| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。