2020年07月23日
今日の「CA読み」: メモデザイン図書館というデザイン、資料系同人誌 他
しかしこうやってみると、なんだかんだでオンライン視聴したイベントが少なくなく、コロナ前からオンライン化はちゃんとやってくれてはったんだなと思たです。ありがとうございます。
●E2216 - 北海道立図書館を研究拠点にした資料系同人誌製作<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2216
資料のユニーク性について興味が引かれるものの、このイベントがどういうもので図書館がどう関わったのかについてが、なんだかいまいちよくわからなかったので、他に言及された記事類を探す。
●E2217 - 図書館総合展2019フォーラムin大阪<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2217
「今回のフォーラムで紹介された各活動・事業の中には莫大な資金や人員・労力,特別な技術を用いずに行われていたものも多かったということ」
●E2218 - 第24回情報知識学フォーラム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2218
「地域資料に意識を向ける人を増やすために一度でも原資料に触れる経験が必要であること
地域資料の継承・活用のためには原資料とオープンデータのどちらか一方だけでなく,両方をともに保存・運用することが重要」
●E2219 - 社会科学領域における研究データの公開と共有<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2219
全般的に今後注目していくべき話題ということで。
「データのライフサイクルにおける図書館員(データライブラリアン)の関与として,法的な問題に関わる支援,メタデータやDOIの付与といったデータマネジメントが挙げられ,データの保存と共有に関わる支援を専門職として担うことへの可能性と期待が示された」
●E2221 - 島根大学附属図書館デジタルアーカイブのライセンスの改定
https://current.ndl.go.jp/e2221
よく整理された例として。
「原本所有者による違い」
「公開範囲による違い」
「著作権の状態による違い」
●E2222 - 第67回日本図書館情報学会研究大会シンポジウム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2222
いま読み返してみても、各発表者がワンセッションレベルで(実際1人は雑誌の1特集を組んだわけだし)、”1日がかり”でやっていい内容とメンツだったな、という気がする。これを「サミット」と言うよな、ていう。
●E2223 - 第1回SPARC Japanセミナー2019<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2223
全体を読むと、理念と実践のバランスがすごくいいイベントだったんだなあ、と。
ただ↓これは、分野・テーマ、特に時代によるなあ、という感はある。
「多彩な事例により「人社系はオープン化が遅れている」という固定観念を変えるものであった」
●E2224 - デザイン図書館というデザイン<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2224
え、ちょっとまって、このめっちゃ『パブリック』な議論ちゃんと聞きたいor読みたい。
「ひとりひとりが善く生きようとすれば,その活動は当然のことながら人々が住む都市(ポリス)へと波及するだろう…だとすれば都市における図書館の任務とは,デザインの試行錯誤を支え,その成功と失敗の過程を記録し,次の試行錯誤に対して準備を整えること,つまり人々の「イマジネーションの誘発」の連鎖を維持すること」
市川 文子(株式会社リ・パブリック共同代表)
増井 尊久(丸善雄松堂株式会社Research & Innovation 本部ソリューション開発部企画開発担当課長)
●E2225 - 図書館に関する意識:2014年,2019年の調査結果から
https://current.ndl.go.jp/e2225
「利用したいと思わなかったので、利用しなかった」(40%),「利用したいと思っていたが、利用できなかった」(18%)
2020年07月22日
"おらほ"と海外をつなぐ図書館 その1: 日本の地域資料が世界の共有財産になる?
前説です。
「おらほ」とは。

〈写真はイメージです。イマジネーションです〉
長野のクラフトビールに「オラホビール」という銘柄がありまして、この「おらほ」は長野方言で「私たち」「私たちの地域」というような意味らしいのですが、ちょっと調べてみるとこの「おらほ」は主に東日本のわりとあちこちの地域で(それこそ)「うちの地域の方言」扱いされているらしく、まあ「俺の方」ってことだろうから一般名詞レベルだろうなとは思うのですが、それはさておき、日本の各地域・都道府県・市区町村、それぞれのローカルなエリアの個々としての存在を、ざっくり指すものとして「おらほ」という言葉でここでは認識しています。
本題です。
以前、京都と奈良で、各地域で文教に携わる地方自治体の方々、地域の公共図書館とか文化財や歴史資料に携わるとかいうような人たちの前で、一席おつきあいをいただくということがありましたので、そのときのことをここにざっとまとめたものです。
一席おつきあいを、と言いましてもあたしみたいなもんが人前で披露できるとしたら、”海外の日本研究”だの”日本資料の海外発信”だのという話でしかないわけで、まあご多分に漏れずそういう話だったわけなんですが、もう何度も同じことを言い尽くしちゃったよ、などという気になっているのは実際には自分自身だけで、何度やった噺でも手を変え品を変え、言葉を変え相手を変えてして、粘り強くいろんな人に届けると言うことをしなきゃいけないんだな、とこのときあらためて悟ったものでした。
というのも、海外に資料情報を届けましょうという噺、これを例えば大学図書館界隈に向けてしゃべるのはまだ通りやすいです。
ところが問題は、
・各地域・自治体の公共図書館員
・各地域・自治体の文化財・史資料担当者
というようなお客層だということで、そうなるともうひと説得して越えなきゃいけないハードルがあるな、と感じます。
すなわち、
「おらほ(各地域・府県・市区町村)の資料・情報と、世界とに、何の関係があるのか?」
というところです。
そこを引っぱり上げるために、まず「地域資料と海外日本研究」の関係をわりと丁寧めに紹介する、という感じになります。
その、1です。
【その1:日本の地域資料が世界の共有財産になる?】
まずは、「海外日本研究における地域資料」の具体例です。
というのも、「何の関係があるのか?」というのはイコール「関係ねえだろ」と思われているということで、いや、関係なくはないんだよ、それが証拠に、ほれ、こんなにもたくさん、こんなふうに意外なところでも、日本のローカルな地域資料が使われてる、っていうのを現の証拠としてつきつけましょう、ていう感じです。
例えば、具体例の中でも「ダイレクトな地方研究」の成果を探すのは難しい話ではないです、KyotoとかHakataとかSuye muraとかで検索したらいいし、LC分類だとDS894〜897あたりが日本地方志的なので、うちとこにはたくさんあります。

それから、具体的に「どんな地域資料が使われているか」の事例がいい感じで紹介できないかな、といろんな本をあたってたのですが、例えばこんなんがありました。
Brett L. Walker. 『The lost wolves of Japan』. University of Washington Press, 2005.

The Lost Wolves of Japan (Weyerhaeuser Environmental Books) - Walker, Brett L., Cronan, William
ここの「レファレンスリスト」を見ると、日本の各地方地域の資料がたんまりと使われていましたので、これはわかりやすいなと思ってたんまり紹介しました。
↓こんな感じです。
-----------------------------------------------------
・地方の文書館の所蔵文書 (北海道立文書館、多数)
・地方の歴史史料 (荘内史料(1912)、開拓史事業報告(1885))
・市史・県史(部門史含む) (北海道警察史、奈良県史・動物植物編)
・教育委員会の出版物 (東吉野の民話(東吉野村))
・地方出版の学術雑誌 (神奈川県立博物館研究報告・自然科学編、北海道開拓記念館調査報告)
・地方出版社の書籍 (まぼろしのニホンオオカミ福島県の棲息記録(1994、会津若松市・歴史春秋出版)、北方動物記(1977、北海道ライブラリー))
・地方紙 (高知新聞)
・「Mitsumine-san(Mount Mitsumine) 144 (April 1994): 6-7」
-----------------------------------------------------
地方出版社ものだの教育委員会ものだのといった豊かなバリエーションが並んでるのを眺めると、各地の図書館や文教関係の方なら馴染みのあるカテゴリだろうし、何ならご自分でも探したり入手するのに苦労したことのある類のもので、琴線に触れてくれるんじゃないかなって。
加えて、最後に「」書きでローマ字そのまま載せてますけど、これについては「レファレンスリストにこういう地域資料っぽいものが載ってたんですけど、三峰山がある秩父や埼玉の図書館にもないし、どこを探してもどうしても見つかんなかったんですよねー。でも、こういう日本の司書ががんばって当該地域で探しても見つからない地域資料ですら、海外の研究で使われてるっていうことなんですよー」っつって、軽く煽ります。(なお、その後NDLに見つかりました、参考まで)
もうひとつダメ押しで紹介するのが、拙著『本棚の中のニッポン』にも登場した、地方の「校史資料」を調査したい留学生の話、です。

本棚の中のニッポン 海外の日本図書館と日本研究 - 江上敏哲
中国からの博士課程留学生が、明治大正期におこなわれていた中国大陸・台湾・朝鮮への修学旅行について研究していて、そのために日本各地の伝統校に眠っている当時の記録・文書を調査する必要がある。でもダンボールに未整理のままつっこまれていたり、あるかないかもわからなかったり、あっても対応してもらえなかったりハードルが高かったりする、ていう話。
これはわりとテッパンなエピソードで、海外からのニーズという話だけでなく、どの図書館や機関にもあるような「未整理ダンボール資料」にあるはずのニーズについても思い出してもらう、という感じでわりと耳を傾けてもらえます。
あと余裕があれば、ミシガン大学の岡山のフィールドワークステーションの話も紹介します。
これは一般の図書館員向けというより歴史・文化財専門家向けに刺さるかなっていう。
さらに、これまでの例だと、いやまあ言うても歴史・文化関係の郷土資料ってことでしょ、みたいに限定的にイメージされてもこまっちゃうなと思うので、いやそうじゃない、と。
これもここ数年テッパン扱いにしてるのが、岐阜市の行政資料の話です。
Min Guo, Fumitaka Kurauchi. 「Changes in Land use, Transport System and Traffic Mobility in Gifu City During the 1980s and 1990s」. 『Procedia - Social and Behavioral Sciences』. 2014, 138, p.537-547.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S187704281404155X

岐阜大学に留学しておられた方で、のちに中国の理系大学の研究者になられたらしいのですが、岐阜市における交通政策と公共交通利用の変化を分析した、という論文が、英文の、工学系の、国際学会の雑誌に載っていて、そこに当然ながら岐阜市の交通統計や行政資料がたんまりと使用されている、という例です。レファレンスリストに「Gifu City云々」というのが挙がってるわけなんで、これを見てもらいまして、海外の日本語もわからない理系の研究者が、この論文を見て岐阜市の行政資料をたどりに来るかもしれないわけですよ、と。日本の地方の統計や行政資料が、別に日本のことを専門にしてるような人じゃなくても、海外からリクエストされるかもです、みたいな感じで煽ります。

なお時間に余裕のある時用の小ネタとしては、↑このレファレンスリストに載ってる「The Second Urban Master Plan for Gifu City(1980)」とかっていう文献名は著者が自前で英訳したパターンのやつなんで、素人さんが探すのムリゲーなやつです、と。しかも1980年のなんかネットにもないし、何なら岐阜市図書館あたりに実際に行くしかないんちゃうか、あーこれ、海外から英文メールで問い合わせ来ますね市立図書館さん宛てに、的な感じで、検挙スレスレくらいに煽ります。
その他の例、メモ。
・「Living on the edge: Buraku in Kyoto, Japan.」という、リュブリャナ大学の研究者が書いた論文には、京都の部落・在日コリアン地域の“まちづくり”政策が論じられている。使われている地域資料としては、部落解放同盟京都市協議会「部落の実情を把握すべきは誰なのか」(2008年5月・第2回京都市同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会 配付資料@京都市webサイト)、など。
・「Japanese Rural Revitalization: The Reality and Potential of Cultural Commodities as Local Brands.」という論文、分野的には政治・経済で、日本の地域ブランド化政策に伝統工芸品がいまいち活かされていない様子が分析されている。使われている地域資料として、陸奥新報・東奥日報といった地方紙の経済面。あと、「Sat?, Takeji (2001): Tsugaru urushi k?hin no kosh? ni tsuite. Hirosaki-shi Shikenky?. 10, p.123?133」というのが挙がってるんですが、ローマ字だからまだ見つけやすいはずとは思うんですけど、見つけきれてないんですよね、地方雑誌探すの意外と難しい。
というように、探してみるといい例はわりとよく見つかります。
ありがたいですね。
こんなん、なんぼあってもいいですからね。
…え、でも、じゃあなんぼ事例があったから言うて、使われてそれが何になんの?
という流れで次回に続く。
「おらほ」とは。
〈写真はイメージです。イマジネーションです〉
長野のクラフトビールに「オラホビール」という銘柄がありまして、この「おらほ」は長野方言で「私たち」「私たちの地域」というような意味らしいのですが、ちょっと調べてみるとこの「おらほ」は主に東日本のわりとあちこちの地域で(それこそ)「うちの地域の方言」扱いされているらしく、まあ「俺の方」ってことだろうから一般名詞レベルだろうなとは思うのですが、それはさておき、日本の各地域・都道府県・市区町村、それぞれのローカルなエリアの個々としての存在を、ざっくり指すものとして「おらほ」という言葉でここでは認識しています。
本題です。
以前、京都と奈良で、各地域で文教に携わる地方自治体の方々、地域の公共図書館とか文化財や歴史資料に携わるとかいうような人たちの前で、一席おつきあいをいただくということがありましたので、そのときのことをここにざっとまとめたものです。
一席おつきあいを、と言いましてもあたしみたいなもんが人前で披露できるとしたら、”海外の日本研究”だの”日本資料の海外発信”だのという話でしかないわけで、まあご多分に漏れずそういう話だったわけなんですが、もう何度も同じことを言い尽くしちゃったよ、などという気になっているのは実際には自分自身だけで、何度やった噺でも手を変え品を変え、言葉を変え相手を変えてして、粘り強くいろんな人に届けると言うことをしなきゃいけないんだな、とこのときあらためて悟ったものでした。
というのも、海外に資料情報を届けましょうという噺、これを例えば大学図書館界隈に向けてしゃべるのはまだ通りやすいです。
ところが問題は、
・各地域・自治体の公共図書館員
・各地域・自治体の文化財・史資料担当者
というようなお客層だということで、そうなるともうひと説得して越えなきゃいけないハードルがあるな、と感じます。
すなわち、
「おらほ(各地域・府県・市区町村)の資料・情報と、世界とに、何の関係があるのか?」
というところです。
そこを引っぱり上げるために、まず「地域資料と海外日本研究」の関係をわりと丁寧めに紹介する、という感じになります。
その、1です。
【その1:日本の地域資料が世界の共有財産になる?】
まずは、「海外日本研究における地域資料」の具体例です。
というのも、「何の関係があるのか?」というのはイコール「関係ねえだろ」と思われているということで、いや、関係なくはないんだよ、それが証拠に、ほれ、こんなにもたくさん、こんなふうに意外なところでも、日本のローカルな地域資料が使われてる、っていうのを現の証拠としてつきつけましょう、ていう感じです。
例えば、具体例の中でも「ダイレクトな地方研究」の成果を探すのは難しい話ではないです、KyotoとかHakataとかSuye muraとかで検索したらいいし、LC分類だとDS894〜897あたりが日本地方志的なので、うちとこにはたくさんあります。

それから、具体的に「どんな地域資料が使われているか」の事例がいい感じで紹介できないかな、といろんな本をあたってたのですが、例えばこんなんがありました。
Brett L. Walker. 『The lost wolves of Japan』. University of Washington Press, 2005.

The Lost Wolves of Japan (Weyerhaeuser Environmental Books) - Walker, Brett L., Cronan, William
ここの「レファレンスリスト」を見ると、日本の各地方地域の資料がたんまりと使われていましたので、これはわかりやすいなと思ってたんまり紹介しました。
↓こんな感じです。
-----------------------------------------------------
・地方の文書館の所蔵文書 (北海道立文書館、多数)
・地方の歴史史料 (荘内史料(1912)、開拓史事業報告(1885))
・市史・県史(部門史含む) (北海道警察史、奈良県史・動物植物編)
・教育委員会の出版物 (東吉野の民話(東吉野村))
・地方出版の学術雑誌 (神奈川県立博物館研究報告・自然科学編、北海道開拓記念館調査報告)
・地方出版社の書籍 (まぼろしのニホンオオカミ福島県の棲息記録(1994、会津若松市・歴史春秋出版)、北方動物記(1977、北海道ライブラリー))
・地方紙 (高知新聞)
・「Mitsumine-san(Mount Mitsumine) 144 (April 1994): 6-7」
-----------------------------------------------------
地方出版社ものだの教育委員会ものだのといった豊かなバリエーションが並んでるのを眺めると、各地の図書館や文教関係の方なら馴染みのあるカテゴリだろうし、何ならご自分でも探したり入手するのに苦労したことのある類のもので、琴線に触れてくれるんじゃないかなって。
加えて、最後に「」書きでローマ字そのまま載せてますけど、これについては「レファレンスリストにこういう地域資料っぽいものが載ってたんですけど、三峰山がある秩父や埼玉の図書館にもないし、どこを探してもどうしても見つかんなかったんですよねー。でも、こういう日本の司書ががんばって当該地域で探しても見つからない地域資料ですら、海外の研究で使われてるっていうことなんですよー」っつって、軽く煽ります。(なお、その後NDLに見つかりました、参考まで)
もうひとつダメ押しで紹介するのが、拙著『本棚の中のニッポン』にも登場した、地方の「校史資料」を調査したい留学生の話、です。

本棚の中のニッポン 海外の日本図書館と日本研究 - 江上敏哲
中国からの博士課程留学生が、明治大正期におこなわれていた中国大陸・台湾・朝鮮への修学旅行について研究していて、そのために日本各地の伝統校に眠っている当時の記録・文書を調査する必要がある。でもダンボールに未整理のままつっこまれていたり、あるかないかもわからなかったり、あっても対応してもらえなかったりハードルが高かったりする、ていう話。
これはわりとテッパンなエピソードで、海外からのニーズという話だけでなく、どの図書館や機関にもあるような「未整理ダンボール資料」にあるはずのニーズについても思い出してもらう、という感じでわりと耳を傾けてもらえます。
あと余裕があれば、ミシガン大学の岡山のフィールドワークステーションの話も紹介します。
これは一般の図書館員向けというより歴史・文化財専門家向けに刺さるかなっていう。
さらに、これまでの例だと、いやまあ言うても歴史・文化関係の郷土資料ってことでしょ、みたいに限定的にイメージされてもこまっちゃうなと思うので、いやそうじゃない、と。
これもここ数年テッパン扱いにしてるのが、岐阜市の行政資料の話です。
Min Guo, Fumitaka Kurauchi. 「Changes in Land use, Transport System and Traffic Mobility in Gifu City During the 1980s and 1990s」. 『Procedia - Social and Behavioral Sciences』. 2014, 138, p.537-547.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S187704281404155X

岐阜大学に留学しておられた方で、のちに中国の理系大学の研究者になられたらしいのですが、岐阜市における交通政策と公共交通利用の変化を分析した、という論文が、英文の、工学系の、国際学会の雑誌に載っていて、そこに当然ながら岐阜市の交通統計や行政資料がたんまりと使用されている、という例です。レファレンスリストに「Gifu City云々」というのが挙がってるわけなんで、これを見てもらいまして、海外の日本語もわからない理系の研究者が、この論文を見て岐阜市の行政資料をたどりに来るかもしれないわけですよ、と。日本の地方の統計や行政資料が、別に日本のことを専門にしてるような人じゃなくても、海外からリクエストされるかもです、みたいな感じで煽ります。

なお時間に余裕のある時用の小ネタとしては、↑このレファレンスリストに載ってる「The Second Urban Master Plan for Gifu City(1980)」とかっていう文献名は著者が自前で英訳したパターンのやつなんで、素人さんが探すのムリゲーなやつです、と。しかも1980年のなんかネットにもないし、何なら岐阜市図書館あたりに実際に行くしかないんちゃうか、あーこれ、海外から英文メールで問い合わせ来ますね市立図書館さん宛てに、的な感じで、検挙スレスレくらいに煽ります。
その他の例、メモ。
・「Living on the edge: Buraku in Kyoto, Japan.」という、リュブリャナ大学の研究者が書いた論文には、京都の部落・在日コリアン地域の“まちづくり”政策が論じられている。使われている地域資料としては、部落解放同盟京都市協議会「部落の実情を把握すべきは誰なのか」(2008年5月・第2回京都市同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会 配付資料@京都市webサイト)、など。
・「Japanese Rural Revitalization: The Reality and Potential of Cultural Commodities as Local Brands.」という論文、分野的には政治・経済で、日本の地域ブランド化政策に伝統工芸品がいまいち活かされていない様子が分析されている。使われている地域資料として、陸奥新報・東奥日報といった地方紙の経済面。あと、「Sat?, Takeji (2001): Tsugaru urushi k?hin no kosh? ni tsuite. Hirosaki-shi Shikenky?. 10, p.123?133」というのが挙がってるんですが、ローマ字だからまだ見つけやすいはずとは思うんですけど、見つけきれてないんですよね、地方雑誌探すの意外と難しい。
というように、探してみるといい例はわりとよく見つかります。
ありがたいですね。
こんなん、なんぼあってもいいですからね。
…え、でも、じゃあなんぼ事例があったから言うて、使われてそれが何になんの?
という流れで次回に続く。
2020年07月19日
今日の「CA読み」メモ: 名詞から動詞へ、メディアドクター 他
●E2191 - IFLA“The 10-Minute Library Advocate”の紹介
https://current.ndl.go.jp/e2191
「アドヴォカシーに取り組むうえでの心理的ハードルを段階的に引き下げることに重点が置かれている」
●E2192 - 第9次地方分権一括法による図書館法等の改正
https://current.ndl.go.jp/e2192
「条例を定めることにより,特例として,公立図書館を教育委員会ではなく地方公共団体の長が所管することができる」
「政治的中立性の確保について…首長部局が図書館を所管する場合,首長に対して教育委員会が意見を述べることができるとされた。一方、有識者や図書館協議会の関与といった制度設計はない」
●E2197 - 独・Library of the Year受賞のベルリン中央州立図書館
https://current.ndl.go.jp/e2197
「大規模な資料のデジタル化を進めた。その成果として,専用のアプリを取得すれば,館内で日刊紙・雑誌類を含む各種デジタル資料を,タブレットやスマートフォンで閲覧することができる」
●E2198 - Code4Lib JAPANカンファレンス2019,大阪にて開催<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2198
セルフコンテンツなので割愛。
●E2199 - 都道府県立図書館サミット2019<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2199
「島根県は実質図書館設置100%を実現した都道府県のひとつである。全市町村に図書館があれば県立図書館の役割が減少するのではなく,それぞれの市町村のキーパーソンを支える必要がある」
●E2200 - 組織内でデジタル保存の重要性を説明するためのガイド
https://current.ndl.go.jp/e2200
「保存に取り組むべき動機の網羅性,保存しなかった場合のリスクだけでなく保存により生じるチャンスまで示していること,そして,組織類型にあわせたリスク・チャンスの書き分け」
●E2203 - 第30回日本資料専門家欧州協会(EAJRS)年次大会<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2203
●E2204 - 環太平洋研究図書館連合(PRRLA)2019年総会<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2204
「2019年現在,日本からPRRLAへ加盟している機関は東北大学のみである。日本における最新の取り組みの積極的な発信につとめているが,会期中に日本の状況について聞かれることが度々あった」
●E2206 - 国際図書館連盟(IFLA)の新たな戦略
https://current.ndl.go.jp/e2206
「名詞から動詞へ」「前戦略計画では戦略方針が名詞で表現されていた。新戦略では各戦略方針が動詞で表現されており,行動を意識していることが感じられる」
●E2215 - 大図研京都セミナー「メディアドクター研究会 in京都」開催
・メディアドクターとは。
「医療・保健記事を書く際に,その品質を向上させようとする活動であり,医療の専門家とメディア関係者とがチームを組んで,社会に発信された医療・保健記事を臨床疫学などの視点から「採点」,「評価」し,その結果をインターネット上に公表する」「記事を評価するだけでなく,記事のABC (Accuracy: 正確さ,Balance: バランス,Completeness: 完全さ) を高める」
・メディアドクター指標日本版(以下「MD指標」)
利用可能性(Availability)
新規性(Novelty)
代替性(Alternatives)
あおり・病気づくり(Disease mongering)
科学的根拠(Evidence)
効果の定量化(Quantification of Benefits)
弊害(Harms)
コスト(Cost)
情報源と利益相反(Sources of Information/Conflict of Interest)
見出しの適切性(Headline)
(メディアドクター研究会作成)
・「考え方としては医学系に限らず,理工学,人文系へ様々に応用できると思う」
いや、これって↑このコメントに尽きる気がする。あらゆる分野・業界でやるべき。というより、メディアドクターの「ドクター」は”医療保健”分野を指すというよりは、メディアの記事を”診察する”営みを言うってことでいいんじゃないか。
●E2214 - 佛教大学図書館デジタルコレクションのリニューアルと目的
https://current.ndl.go.jp/e2214
「コンテンツを,その魅力や価値を「再発見」できるような環境で提供する」
「アクセス数などを基にした「ランキング」」「マスコミへの画像提供や博物館・美術館などへの出陳記録を視覚化した「貸出・放映紹介」「「書体」は,数多くのコンテンツの書体のみにフォーカスし,それを一覧できるように設計」「「マッピング」では,さまざまなコンテンツに含まれる名所旧跡等の画像のみにフォーカスし,それを現在の地図上に落とし込む」
「初学者や一般の利用者が,作品名の入力などを行わずとも,何らかの「気になる」コンテンツに出会える環境」
2020年07月07日
今日の「CA読み」メモ: 統計不正(附たり勝手随想)、EU司法裁判所と電子書籍 他
●CA1974 - 読書バリアフリー法の制定背景と内容、そして課題 / 野口武悟
https://current.ndl.go.jp/ca1974
・計画策定を努力義務とし、財政措置を明示している。
・視覚障害者等以外の困難のある人(言語等)については、読書バリアフリー法ではカバーできていない。
・民間の出版者に義務づけはないが、出版者による出版拡大と販売促進が欠かせない。
・(参考)野口武悟. 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」の内容と今後の展開. 図書館雑誌. 2020, 114(4), p. 184-186.
←これのバリアフリーは。
●CA1975 - オルタナティブな情報を保存する:統計不正問題からこれからの図書館を考える / 福島幸宏
https://current.ndl.go.jp/ca1975
「Aである」と言う仕事じゃなくて、「「A」と『B』に書いてある」と言う仕事だ、という情報サービス論の基礎を思い出す感じ。
↓一読して、これに尽きるな、と思った。
「その時点時点の「正確さ」には留意しつつも、後生も含めた多様な眼の検証に耐えるために、オルタナティブの数字を遺す、処理の過程を遺す、データを捨てずに保存しておく、という機能を社会のどこかが担わなければならない」
「冊子体にまとまったものを紙や電子で収集するという従来の発想を改め、収集範囲を広げて関係資料をごっそりと収集する」「その蓄積のためにデジタル技術を正面から導入する」「意思決定の過程は必ずしも公的文書に残るとは限らない」
以下、勝手随想です。
この論プラス、ネット/デジタルであれ冊子であれ、何であれ、常に但し書きというか警鐘というかそういうもんだ的なマインドをリマインドし続けることや、鷹野さんの言う”タグ付け”を更新し続けるべく検証と議論の”場”的なものをセッティングすること、これはリテラシー云々というよりもディスカッションベースで考える姿勢を維持するんだ(それは「信用ならない」というネガティブな意味だけでなく)、と。そういうメッセージを発信する施設としての図書館、でもいいだろうし、実際それに近いこといくらもやってきてるわけだし。
図書館が蓄積しようとしてるものは、統計であれ写真であれ映像であれ言語であれデジタルアーカイブであれどれだけ生に近い生資料であれ、いったん何かの”コード化”と”編集”が施されているもの、に変わりはないはずだし、”コード化”から逃れる術は基本ないと思うので、ということは検証と議論をし続ける=世界に対する真摯な態度を維持すること、からも逃れられるわけがない、という感じかしら。
我々の仕事は、太鼓判を押すこと、ではなくて、押させないこと、的な。
少なくとも「しのごの言わずに、黙って従え」では絶対にない。
「Don't Trust Library」的な。
事務連絡。物足りないので(主に文量的に)、オルタナティブなディレクターズカットをどこぞにアップしてください。
あと、これどっかでひとイベントやっていいと思う。
●CA1976 - 組織IDの動向: RORを中心に / 中島律子
https://current.ndl.go.jp/ca1976
・Research Organization Registry(ROR)
・オープンで持続可能な組織PIDとして、2019年1月にMVR(Minimum Viable Registry)の提供を開始。現在約9万8,000件のユニークなROR IDが登録されている。
・主要なリポジトリやジャーナル、データベースサービス等に導入されている。
・2017年にORCID内にWGができた。
・既存のIDには、例えば国際標準識別子(International Standard Name Identifier:ISNI)があり、個人及び組織を対象とし、組織は約93万件ある。VIAFなどをソースとする。
・ここがちょっとのみこめない>「以上のように組織IDがすでに様々に存在し、相応の役割を果たしているにもかかわらずRORが検討された理由は、大学・研究機関や図書館等において研究成果を捕捉するために、研究成果とその著者の所属機関をつなげるリンクとして働くIDが必要とされたことである。またさらに、オープンな学術情報インフラとして提供され、活用されることが求められていた。報告書において、上記に挙げた既存IDのサービスは、「オープンに利用可能か」「メタデータ記述が標準的であるか」「持続的に運営可能か」「運用プロセスが透明であるか」「研究成果のリンクに必要な機能を備えているか」等の観点から検証され、全てを満たすものは存在しないと結論された。」
●CA1977 - 動向レビュー:学術雑誌の転換契約をめぐる動向 / 尾城孝一
https://current.ndl.go.jp/ca1977
・転換契約(Transformative Agreements):学術雑誌に係る出版社への支払いを購読料からオープンアクセス(OA)出版料に移行。
・学術雑誌の多くは、著者が論文処理費用(APC)を払った論文はOAで出版されるが、他の論文は購読者のみが利用できるというハイブリッドモデル→APCと購読料の二重取り→マックスプランク談「図書館が出版社に支払っている学術雑誌の購読料をOA出版料に転換すれば、全ての論文を即座にOAで出版することができる」→OA2020 イニシアティブ
・JUSTICE『購読モデルからOA出版モデルへの転換をめざして〜JUSTICEのOA2020ロードマップ〜』(2019.3)
・英国のJiscとWiley社、JUSTICEとケンブリッジ大学出版局など。
・転換契約について出版社との交渉を進めるためには、機関に所属する研究者による論文公表数やOA率、さらにはAPCの支払い額などの基礎的データを正確に把握し、それを分析する必要がある。しかしながら、とりわけAPCの支払い額を正確に把握するのは容易ではない。
・潤沢な研究資金を持たない研究者から見ると、これまでの「購読の壁」が「出版の壁」に置き換わるだけであり、論文出版の局面において新たな格差が生じる
●CA1978 - 動向レビュー:米国での電子書籍貸出をめぐる議論 / 井上靖代
https://current.ndl.go.jp/ca1978
・著作権者や出版エージェント、出版社にとっていかに収益を上げるかは大きな課題…電子書籍社会における米国著作権法の図書館での利活用を念頭においた整備が不十分である
・出版社側は利益を守るべく、図書館側に厳しい利用条件を強く求めてきた(2年間のライセンス契約)
・提供する電子書籍のタイトルが異なるため、出来るだけ多様な資料の提供を行うなら、複数のプラットフォームと契約する必要があり、図書館側と利用者側双方にとって煩雑になっていく
・(別問題として)新型コロナウイルス感染症の蔓延により、オンライン授業に切り替わる学校が続出する中で、安易なデジタル資料作成・提供を危惧して、大学図書館等で勤務する著作権担当図書館員のグループが、著作権遵守とフェア・ユースについての声明を出している
●CA1979 - 動向レビュー:欧州の図書館と電子書籍−従来の公共図書館よ、安らかに眠れ? / ベンジャミン・ワイト,井上靖代(翻訳)
https://current.ndl.go.jp/ca1979
・(EU司法裁判所(CJEU))消費者向け・図書館向けのいずれのライセンスであるかにかかわらず…市場に出回っている電子書籍を図書館が合法的に入手した上で人々に貸し出すことへの許可を与えている…この判決は、公共図書館が積極的に活用すれば、“controlled digital lending”と呼ばれる技術的保護手段を用いてインターネット・アーカイブが米国で行っているようにデジタル化により作成した電子書籍を「1部1ユーザー」の原則で貸出する
→しかし、実際には実現していないようである…図書館向け電子書籍数が増加した要因のほとんどは、出版社が自らのビジネスモデルへの自信を深めるにつれ、公共図書館で利用できるタイトルを増やしてきたことに帰することが出来る。本稿で扱う他の国々すべてで明らかにこの同様の動きが見られる。
・図書館はいまや出版社の選択、すなわち、何を、いつ、どうやって図書館向けの電子書籍として提供することを認めるかに依存している…図書館の使命とは異なる出版社のビジネスとしての決定にほとんど完全に支配されている
・電子書籍「問題」のもう一つの重要な側面は図書館相互貸借にあった。…書籍がアナログであったかつては必要とされなかったにもかかわらず、インターネットの時代に電子書籍へのアクセスを求めて、その図書館へ出向いていく必要が生じてしまう。
(もったいない…)
2020年07月05日
2020年6月のまとめ
■2020年6月のまとめ
●総評
リハビリはできた。
コロナ後の答えを京都に求め過ぎ。
オンラインイベントが多過ぎて耳だけ忙しい、という想定外。
●まとめ
・「ドロステの果てで僕ら」web上映会
・ダンボール移動with便利屋が瞬殺で終了し、別宅引き上げ完了
・日本図書館情報学会(オンライン)
・「コロナ後の荒れ果てた世界を我々は如何に生きるべきか。その答えを求めて…」シリーズ
・銀閣寺
・パブリックヒストリー研究会第6回公開研究会(オンライン)
・「the mission of the Library−to educate, welcome and respect all perspectives, convene safe and productive conversations, and offer opportunity to all−directly combats divisiveness, ignorance, hate, and racism」 https://www.nypl.org/blog/2020/06/01/tony-marx-reflections
・苅谷吉見対談(https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/movie/9334)。 学生、地球人、時間、エモーショナル。
・『創発する日本へ : ポスト「失われた20年」のデッサン』 「文化にせよ地方にせよそれを担うのは一人ひとりの国民であり、住民であり、個人である。「文化と地方の時代」を担い得る自律的な個人のあり方」
・3コマ一気録画
・「座長」
・大原・三千院、貴船口
・二年坂スタバという新拠点(時限)
・高台寺
・Code4Lib Japan
・急遽のライトニングトーク
・#c4ljp #読書案内。この春に図書館員として就職したけどコロナで戸惑っている新人さんのために、「デジタル」について勉強できる読書案内を、諸先輩から。 / https://htn.to/3AqbT8cwLa
・Spatial Chatによるweb飲み会
・「信長のリモート」「本能寺のzoom」「麒麟が来ぬ」
・「「レポート」に何を求めるかを考える」(egamiday3)
・高雄・西明寺、龍安寺
・「#c4ljp を聞きながら、ヨシモトさんを100人育成して世に出すのに、自分みたいなもんにできることはなんだろう、と考えている。」
・今日の「CA読み」メモ
・『南方熊楠のロンドン : 国際学術雑誌と近代科学の進歩』志村真幸
・浪曲デジタルアーカイブ。サーチとブラウズ。
・『学校で地域を紡ぐ』発刊記念オンライントークイベント第一夜「文化運動としてのこども風土記」。以下、シリーズ。12夜連続講義で聴きたい。
・健康診断
・善峯寺・紫陽花
・アートドキュメンテーション学会(オンライン)
・「いま日本の特に人文系各種研究会・学会は、オンライン開催の学会やイベントについて、海外のコミュニティへの開催情報発信をどれくらいできてるんだろうか、とちょっと気になった。というか、やるようにします。」
・関西デジタルヒストリー研究会(オンライン)
・デジタルアーカイブを扱う授業においての、あつまれどうぶつの森、について
・エア夏越祓、エア茅の輪くぐり
・統計・写真・言語のエンコードについて。
●7月の月テーマ
・エア祇園祭
・オンラインイベントツールの操作に慣れる
・過去コンテンツの文字化&可視化
なお、積み残しtodoはすべて継続でよろしくです。
●総評
リハビリはできた。
コロナ後の答えを京都に求め過ぎ。
オンラインイベントが多過ぎて耳だけ忙しい、という想定外。
●まとめ
・「ドロステの果てで僕ら」web上映会
・ダンボール移動with便利屋が瞬殺で終了し、別宅引き上げ完了
・日本図書館情報学会(オンライン)
・「コロナ後の荒れ果てた世界を我々は如何に生きるべきか。その答えを求めて…」シリーズ
・銀閣寺
・パブリックヒストリー研究会第6回公開研究会(オンライン)
・「the mission of the Library−to educate, welcome and respect all perspectives, convene safe and productive conversations, and offer opportunity to all−directly combats divisiveness, ignorance, hate, and racism」 https://www.nypl.org/blog/2020/06/01/tony-marx-reflections
・苅谷吉見対談(https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/movie/9334)。 学生、地球人、時間、エモーショナル。
・『創発する日本へ : ポスト「失われた20年」のデッサン』 「文化にせよ地方にせよそれを担うのは一人ひとりの国民であり、住民であり、個人である。「文化と地方の時代」を担い得る自律的な個人のあり方」
・3コマ一気録画
・「座長」
・大原・三千院、貴船口
・二年坂スタバという新拠点(時限)
・高台寺
・Code4Lib Japan
・急遽のライトニングトーク
・#c4ljp #読書案内。この春に図書館員として就職したけどコロナで戸惑っている新人さんのために、「デジタル」について勉強できる読書案内を、諸先輩から。 / https://htn.to/3AqbT8cwLa
・Spatial Chatによるweb飲み会
・「信長のリモート」「本能寺のzoom」「麒麟が来ぬ」
・「「レポート」に何を求めるかを考える」(egamiday3)
・高雄・西明寺、龍安寺
・「#c4ljp を聞きながら、ヨシモトさんを100人育成して世に出すのに、自分みたいなもんにできることはなんだろう、と考えている。」
・今日の「CA読み」メモ
・『南方熊楠のロンドン : 国際学術雑誌と近代科学の進歩』志村真幸
・浪曲デジタルアーカイブ。サーチとブラウズ。
・『学校で地域を紡ぐ』発刊記念オンライントークイベント第一夜「文化運動としてのこども風土記」。以下、シリーズ。12夜連続講義で聴きたい。
・健康診断
・善峯寺・紫陽花
・アートドキュメンテーション学会(オンライン)
・「いま日本の特に人文系各種研究会・学会は、オンライン開催の学会やイベントについて、海外のコミュニティへの開催情報発信をどれくらいできてるんだろうか、とちょっと気になった。というか、やるようにします。」
・関西デジタルヒストリー研究会(オンライン)
・デジタルアーカイブを扱う授業においての、あつまれどうぶつの森、について
・エア夏越祓、エア茅の輪くぐり
・統計・写真・言語のエンコードについて。
●7月の月テーマ
・エア祇園祭
・オンラインイベントツールの操作に慣れる
・過去コンテンツの文字化&可視化
なお、積み残しtodoはすべて継続でよろしくです。
2020年07月04日
今日の「CA読み」メモ:Europeanaのショーケース、ALAジャパンセッション、DPLA戦略計画 他
● E2179 - AI技術を取り入れた「くずし字翻刻学習・指導システム」
https://current.ndl.go.jp/e2179
「「みんなで翻刻」では,あくまでも翻刻文字の「示唆」を行うのみであるが,立命館ARCシステムは,翻刻者のシステムの呼び出しや「示唆」文字の入力がワンクリックで直接行われるなど,作業効率を上げる工夫」
●E2181 - カタログ・レゾネ:国立西洋美術館国際シンポジウム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2181
「カタログ・レゾネとは,特定の芸術家や美術館,コレクションの全作品を網羅した書物を指す。」
「自宅に居ながら資料にアクセスできる利便性の向上が挙げられる一方で,情報の真正性を担保するための相互参照が重要となるという発言があり,情報量の増大に伴い裏付けを取るための作業は,これまで以上に大変になるのでは」
●E2183 - 公開10年となるEuropeanaの動向:2018年年次報告書を中心に
https://current.ndl.go.jp/e2183
ははあん、違いは↓ここかあ。
「Europeanaはデジタルアーカイブの専門家などが参加する人的なネットワークであるEuropeana Network Association(ENA)を構築している。2018年時点で2,100人以上のメンバーからなる組織へと成長」
↓ここも。ツールを”ツール”としてでなく、”○○界隈へのアプローチ”として。
「テーマ別コレクションは…ファッションや第一次世界大戦に関する独立サイト(E1535参照)との統合も含め種類を増やしている。これらは,より閲覧しやすく,特定のテーマに関心のあるユーザーを引き付けるショーケースとしての役割を果たす」「参加型キャンペーンに関しては…移民をテーマに開催された」
↓今後必須となっていくであろう流れ。
「クラウドソーシングのためのプラットフォームTranscribathonである。TranscribathonではEuropeana1914-1918で収集され,デジタル化された資料の翻刻やタグ付けを行うことができる」
●E2185 - 2019年ALA年次大会におけるジャパンセッションの開催<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2185
世界に出て行く行為がもっとコモディティ化するといいなって思っている。
「日本のビジネス支援サービスは,米国の図書館事例をモデルとしてBL協議会が推進してきたものだが,日本の実践でも「本家」をしのぐレベルにあるものが生まれている」
「1つは,日本の公共図書館の多様で高レベルなサービスを,米国はじめ世界の図書館関係者にアピールすることができたことである。2つめは,日本の公共図書館員自身が,国際的な会議での発表を体験し,米国の図書館や図書館員たちと実際に交わったこと」
●E2187 - IAML日本支部40周年記念シンポジウム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2187
「音楽史研究に必要な貴重資料は,日本では所蔵機関の部外者によるアクセスが難しい傾向にあり,特に日本伝統音楽の資料を所蔵する社寺等はこの傾向が強い。こうした現状に対し,音楽図書館員は資料を広く利用に供することの社会的意義を啓蒙し,資料と利用者の結びつきを促進する役割を担うべき」
「所蔵機関側が資料を所蔵すること自体に大きな意義を見出し,利用環境の整備への意識が薄い場合がある…資料を資産と捉え,価値を高く保つ目的で秘匿してしまうケースもある」
●E2188 - 米国デジタル公共図書館(DPLA)戦略計画2019-2022
https://current.ndl.go.jp/e2188
さすが、自分らが何のためにそれをやってるかがちゃんとわかってはるなあ、と思たです。
「その目標として,米国中の全ての文化施設が,とりわけ歴史的に周縁化されてきたような文化に光を当てる地域共同体ベースの取り組みに役立つようになること」
「以下の三つの信念に基づいて活動していくとしている。
積極的協働
平等と包摂
テクノロジーの持つ可能性への期待」
https://current.ndl.go.jp/e2179
「「みんなで翻刻」では,あくまでも翻刻文字の「示唆」を行うのみであるが,立命館ARCシステムは,翻刻者のシステムの呼び出しや「示唆」文字の入力がワンクリックで直接行われるなど,作業効率を上げる工夫」
●E2181 - カタログ・レゾネ:国立西洋美術館国際シンポジウム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2181
「カタログ・レゾネとは,特定の芸術家や美術館,コレクションの全作品を網羅した書物を指す。」
「自宅に居ながら資料にアクセスできる利便性の向上が挙げられる一方で,情報の真正性を担保するための相互参照が重要となるという発言があり,情報量の増大に伴い裏付けを取るための作業は,これまで以上に大変になるのでは」
●E2183 - 公開10年となるEuropeanaの動向:2018年年次報告書を中心に
https://current.ndl.go.jp/e2183
ははあん、違いは↓ここかあ。
「Europeanaはデジタルアーカイブの専門家などが参加する人的なネットワークであるEuropeana Network Association(ENA)を構築している。2018年時点で2,100人以上のメンバーからなる組織へと成長」
↓ここも。ツールを”ツール”としてでなく、”○○界隈へのアプローチ”として。
「テーマ別コレクションは…ファッションや第一次世界大戦に関する独立サイト(E1535参照)との統合も含め種類を増やしている。これらは,より閲覧しやすく,特定のテーマに関心のあるユーザーを引き付けるショーケースとしての役割を果たす」「参加型キャンペーンに関しては…移民をテーマに開催された」
↓今後必須となっていくであろう流れ。
「クラウドソーシングのためのプラットフォームTranscribathonである。TranscribathonではEuropeana1914-1918で収集され,デジタル化された資料の翻刻やタグ付けを行うことができる」
●E2185 - 2019年ALA年次大会におけるジャパンセッションの開催<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2185
世界に出て行く行為がもっとコモディティ化するといいなって思っている。
「日本のビジネス支援サービスは,米国の図書館事例をモデルとしてBL協議会が推進してきたものだが,日本の実践でも「本家」をしのぐレベルにあるものが生まれている」
「1つは,日本の公共図書館の多様で高レベルなサービスを,米国はじめ世界の図書館関係者にアピールすることができたことである。2つめは,日本の公共図書館員自身が,国際的な会議での発表を体験し,米国の図書館や図書館員たちと実際に交わったこと」
●E2187 - IAML日本支部40周年記念シンポジウム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2187
「音楽史研究に必要な貴重資料は,日本では所蔵機関の部外者によるアクセスが難しい傾向にあり,特に日本伝統音楽の資料を所蔵する社寺等はこの傾向が強い。こうした現状に対し,音楽図書館員は資料を広く利用に供することの社会的意義を啓蒙し,資料と利用者の結びつきを促進する役割を担うべき」
「所蔵機関側が資料を所蔵すること自体に大きな意義を見出し,利用環境の整備への意識が薄い場合がある…資料を資産と捉え,価値を高く保つ目的で秘匿してしまうケースもある」
●E2188 - 米国デジタル公共図書館(DPLA)戦略計画2019-2022
https://current.ndl.go.jp/e2188
さすが、自分らが何のためにそれをやってるかがちゃんとわかってはるなあ、と思たです。
「その目標として,米国中の全ての文化施設が,とりわけ歴史的に周縁化されてきたような文化に光を当てる地域共同体ベースの取り組みに役立つようになること」
「以下の三つの信念に基づいて活動していくとしている。
積極的協働
平等と包摂
テクノロジーの持つ可能性への期待」
2020年07月02日
「レポート」に何を求めるかを考える その3:文献探索はM-1のように
その1:リテラシーはミニマリストのように http://egamiday3.seesaa.net/article/475846941.html
その2:論述は孔子のように http://egamiday3.seesaa.net/article/475890278.html
-----------------------------------------------------
@「すでにある事実や他人の見解が書かれた文献」を正確に理解したうえで、
↓
Aそれにもとづいて「自分の考察や見解」を論じる。
-----------------------------------------------------
・課題(1):考察に役立ちそうな参考文献を探し、リストアップする。(文献探索)
・課題(2):考察の根拠とできる文献2点を読んで、内容を要約する。(要約)
・課題(3):この問いについて、自分はどう回答するか考えて、論じる。(考察)
-----------------------------------------------------
課題(1)、つまり、考察の前提として必要な「すでにある事実や他人の見解が書かれた文献」を、まずは探して提示してもらう、ということについてだけ、もうちょっと掘ります。
文献探索の方法については、おそらく他の授業や図書館の講習などで学んだ経験があるかと思うので、いかにも図書館員ぶって楽しげに講釈たれることはできれば避けたいのですが、とはいえ、それすらいままでなぜかスルーしてきてしまった(いまどきそういうカリキュラムでもないのかしら)学生さんのために、最低限の手順は例としてコラムっぽく提示します。まあそれも、ググればいくらも出てきそうなやつなのと似たり寄ったりなので割愛。
問題は、ここでもなぜかさらに「3段階」で枝分かれしてるという。うぜえ。いやでも、結局論文やレポートって文献探索が8割じゃないですか(当社比)。
-----------------------------------------------------
●課題(1):考察に役立ちそうな参考文献を探し、リストアップする(文献探索)
1.1 文献を探索して、計10点以上選ぶ。
1.2 選んだ10点以上の参考文献をリストにして、その書誌事項を記す。
1.3 リストの中から、自分のレポートの根拠として使える重要そうな文献を3点選び、選んだ理由を示す。
(※注:実際には図書館で文献探索を実行できない事態を考慮して、候補を10点から6点に、選ぶのを3点から2点に減らしています)
-----------------------------------------------------
また鬼のようなことを、最終3点を選ぶんだったら最初から3点選ぶだけで済むじゃん、と文句が出そうなところはもちろん承知の上で、いやでもそうじゃない、ふだん我々がやってるリアルな文献探索はそんなふうじゃないよってことは、善き大学人、善き図書館人のみなさんならご理解いただけると存じます。この世界中にある多種多様な、良く言えばダイバーシティ、悪く言えば玉石混淆、悪態つけば有象無象の掃きだめのような文献群の中から、いきなり適切な文献だけを首尾良く選び出すなどというそんなハリウッド映画のヒーローのようなご都合主義な芸当ができるわけがない。けど、どんなときも省エネで暮らしたいのが学生時代の性だというのは自分でもよくよく覚えがありますから、初手から2-3点だけええもんつかもうとして、結果、なんかぼんやりした文献をつかんでしまいそのままレポート書きにしちゃうっていう危険性があるわけです。
そうではなく、CiNiiなりGoogleなりディスカバリー的なのの大量の検索結果の中から、候補になりそうな文献をいったん多めに選んでおいて、そのうえでその候補の中身をひととおり簡単に確認していく。そういう、投網→仕分け、的な段階をふむことで、例えば、なるほどこのテーマの文献にはこういう傾向があるんだなとか。このへんの文献は技術のこと言ってるけど、このあたりは抽象的なこと、このあたりは社会への影響みたいなことを言ってるなとか、全体像が把握できる、脳内になんとなく”文献の世界地図”のようなものが描けるわけです。
世界地図が手に入れば、あ、そうか、自分は今回のレポートでテクノロジー大陸じゃなくて政策制度大陸のほうを探検したかったんだな、みたいに、ぼんやりしてた自分の考えがなんとなくクリアになったり、歴史面と教育面と費用対効果面と3点攻めで行こう、みたいに自分のレポートの地図に転用したりできるわけですね。さらに地図があると、ズームイン・ズームアウト(焦点を狭める・拡げる)もできるようになりますから、そうすると、おなじ技術面の文献でもこれとこれとこれを比較したらこっちのほうが詳しいなとか古いな新しいなとかいう、文献同士の比較ができるようになる。その上で、本当に有用で必要な文献だけを選び出すことで、ハズレをひく危険を避けることができます。
それが、いったん10件くらい候補を選んでおいたうえで、そのあとで2-3件を選ぶ、ということの効用じゃないかなって思うんです。
この話を学生さんにするときには、M-1を引き合いに出します。
何千組ある芸人からいきなり1位決めたりしますか?と。そうじゃないでしょう、何回か予選やって、ああだいたいこのへんから候補選んだら間違いなさそうだな、っていう10組が候補として残って、そこからひととおりネタ見せすることでやっと3組なり優勝なりが決まるわけじゃないですか。そういうことですよ、と。どういうことかはしりませんが。
でもまあ、そこまでやって選び出した2-3点の文献には、それなりに「選んだ理由」というのが出てくるはずですから、それを言語化していただければ、ていうか言語化するつもりで選んでいけば、かなり意識的に良い感じの2-3点が選べるんじゃないかなっていう。理由が明確でない、あるいは適切でなければ、選び方に問題があるということだし。
よくある、それおかしくない?の例。
・論題に対して、文献の出版年が古い。
・商品・サービスの売買に関わる企業のサイトに掲載されている。
・論題に対して、文献の扱うテーマが広すぎる/限定的すぎる。
・ていうか、その理由なら10件の候補内にもっといいのあったよ。
で、ここまで来てお気付きのように、その文献がweb記事か紙メディアかを問うていませんが、あまり問いたくありません、だって論題によってはweb記事使わずに論じる方が無理あるだろうっていう。
文献世界全体を俯瞰するリテラシーは、メディアやデバイスの差によって左右されるようなものではなく、上記のような整理や判別を意識的に作業できるかどうか、じゃないかなって思います。
…とかいうようなカッコイイことを言って終われればよかったのですが、残念ながらそうともいいきれない。
「候補10点のうち、学術論文以外のweb記事は5点までとする」という条件をつけてしまってるのも事実です、いやまあ、そうしないとそりゃwebからしか探さないし、でもいまの現状だと学部生が使える日本語で書かれた人文・社会系の文献なんてまだまだ限られてるから、ほんとに幅広く目配せしようと思ったら紙メディアに意識的に目を向けてもらうという誘導をせざるを得ない。でもいいんです、紙メデイア込みで候補を選考したうえで、勝ち残りが全部webならそれはそれで問題ない。
…とかいうような自己弁護的なことを言っていられればよかったのですが、さらに残念ながら、ここに来ての「コロナうぜえ」ですよ。困ったな。
そう、この課題って図書館で実際に複数の文献をブラウジングして内容を吟味する、というのが前提となっているところを、図書館には行けないわ、デジタルは整備されてないわでは、図書館に行かないのが悪いんじゃなくて、デジタルになってないのが悪いとしかあたしには思えません。これはもうおっちゃんらが謝るしかない。
ということで、とりあえずの対策として以下に挙げる4つの学術雑誌のオープンアクセス版を紹介しておきました。
ていうか、出題した論題候補もこの4誌に寄せときましたんで、ご笑納ください。
-----------------------------------------------------
「情報の科学と技術」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jkg/-char/ja/
「日本図書館情報学会誌」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jslis/-char/ja
「大学図書館研究」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcul/-char/ja/
「デジタルアーカイブ学会誌」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsda/-char/ja
-----------------------------------------------------
「要約」と「考察」については、それこそ特にオリジナリティーのある要件はありませんから、よそさんとだいたい一緒です。なので尻切れ割愛します。
ただ、いまの学生世代のみなさんってどうやら小中高あたりでやたら「オリジナリティーのある自分の意見を言え」と矢継ぎ早に求められるような授業を受けてきたらしく、それっぽい見解を述べること(A)そのものについてはわりと長けていらっしゃるようにお見受けするのですが、いや、それ以前の@のところがあってのAだし、と思うので、どうしても@メインにはモノを言う感じになりがちです。あとは、その2で言及した「検証可能性」のあたり。
そんな感じです。
なおコンセプトだけで言うと、「論証はミルクボーイのように」っていうのも思いついたのは思いついたんですが、あまり練りきれてないしよそさんで既出かもなので、小瓶に詰めて流します、誰か書いてください(投げる)。
その2:論述は孔子のように http://egamiday3.seesaa.net/article/475890278.html
-----------------------------------------------------
@「すでにある事実や他人の見解が書かれた文献」を正確に理解したうえで、
↓
Aそれにもとづいて「自分の考察や見解」を論じる。
-----------------------------------------------------
・課題(1):考察に役立ちそうな参考文献を探し、リストアップする。(文献探索)
・課題(2):考察の根拠とできる文献2点を読んで、内容を要約する。(要約)
・課題(3):この問いについて、自分はどう回答するか考えて、論じる。(考察)
-----------------------------------------------------
課題(1)、つまり、考察の前提として必要な「すでにある事実や他人の見解が書かれた文献」を、まずは探して提示してもらう、ということについてだけ、もうちょっと掘ります。
文献探索の方法については、おそらく他の授業や図書館の講習などで学んだ経験があるかと思うので、いかにも図書館員ぶって楽しげに講釈たれることはできれば避けたいのですが、とはいえ、それすらいままでなぜかスルーしてきてしまった(いまどきそういうカリキュラムでもないのかしら)学生さんのために、最低限の手順は例としてコラムっぽく提示します。まあそれも、ググればいくらも出てきそうなやつなのと似たり寄ったりなので割愛。
問題は、ここでもなぜかさらに「3段階」で枝分かれしてるという。うぜえ。いやでも、結局論文やレポートって文献探索が8割じゃないですか(当社比)。
-----------------------------------------------------
●課題(1):考察に役立ちそうな参考文献を探し、リストアップする(文献探索)
1.1 文献を探索して、計10点以上選ぶ。
1.2 選んだ10点以上の参考文献をリストにして、その書誌事項を記す。
1.3 リストの中から、自分のレポートの根拠として使える重要そうな文献を3点選び、選んだ理由を示す。
(※注:実際には図書館で文献探索を実行できない事態を考慮して、候補を10点から6点に、選ぶのを3点から2点に減らしています)
-----------------------------------------------------
また鬼のようなことを、最終3点を選ぶんだったら最初から3点選ぶだけで済むじゃん、と文句が出そうなところはもちろん承知の上で、いやでもそうじゃない、ふだん我々がやってるリアルな文献探索はそんなふうじゃないよってことは、善き大学人、善き図書館人のみなさんならご理解いただけると存じます。この世界中にある多種多様な、良く言えばダイバーシティ、悪く言えば玉石混淆、悪態つけば有象無象の掃きだめのような文献群の中から、いきなり適切な文献だけを首尾良く選び出すなどというそんなハリウッド映画のヒーローのようなご都合主義な芸当ができるわけがない。けど、どんなときも省エネで暮らしたいのが学生時代の性だというのは自分でもよくよく覚えがありますから、初手から2-3点だけええもんつかもうとして、結果、なんかぼんやりした文献をつかんでしまいそのままレポート書きにしちゃうっていう危険性があるわけです。
そうではなく、CiNiiなりGoogleなりディスカバリー的なのの大量の検索結果の中から、候補になりそうな文献をいったん多めに選んでおいて、そのうえでその候補の中身をひととおり簡単に確認していく。そういう、投網→仕分け、的な段階をふむことで、例えば、なるほどこのテーマの文献にはこういう傾向があるんだなとか。このへんの文献は技術のこと言ってるけど、このあたりは抽象的なこと、このあたりは社会への影響みたいなことを言ってるなとか、全体像が把握できる、脳内になんとなく”文献の世界地図”のようなものが描けるわけです。
世界地図が手に入れば、あ、そうか、自分は今回のレポートでテクノロジー大陸じゃなくて政策制度大陸のほうを探検したかったんだな、みたいに、ぼんやりしてた自分の考えがなんとなくクリアになったり、歴史面と教育面と費用対効果面と3点攻めで行こう、みたいに自分のレポートの地図に転用したりできるわけですね。さらに地図があると、ズームイン・ズームアウト(焦点を狭める・拡げる)もできるようになりますから、そうすると、おなじ技術面の文献でもこれとこれとこれを比較したらこっちのほうが詳しいなとか古いな新しいなとかいう、文献同士の比較ができるようになる。その上で、本当に有用で必要な文献だけを選び出すことで、ハズレをひく危険を避けることができます。
それが、いったん10件くらい候補を選んでおいたうえで、そのあとで2-3件を選ぶ、ということの効用じゃないかなって思うんです。
この話を学生さんにするときには、M-1を引き合いに出します。
何千組ある芸人からいきなり1位決めたりしますか?と。そうじゃないでしょう、何回か予選やって、ああだいたいこのへんから候補選んだら間違いなさそうだな、っていう10組が候補として残って、そこからひととおりネタ見せすることでやっと3組なり優勝なりが決まるわけじゃないですか。そういうことですよ、と。どういうことかはしりませんが。
でもまあ、そこまでやって選び出した2-3点の文献には、それなりに「選んだ理由」というのが出てくるはずですから、それを言語化していただければ、ていうか言語化するつもりで選んでいけば、かなり意識的に良い感じの2-3点が選べるんじゃないかなっていう。理由が明確でない、あるいは適切でなければ、選び方に問題があるということだし。
よくある、それおかしくない?の例。
・論題に対して、文献の出版年が古い。
・商品・サービスの売買に関わる企業のサイトに掲載されている。
・論題に対して、文献の扱うテーマが広すぎる/限定的すぎる。
・ていうか、その理由なら10件の候補内にもっといいのあったよ。
で、ここまで来てお気付きのように、その文献がweb記事か紙メディアかを問うていませんが、あまり問いたくありません、だって論題によってはweb記事使わずに論じる方が無理あるだろうっていう。
文献世界全体を俯瞰するリテラシーは、メディアやデバイスの差によって左右されるようなものではなく、上記のような整理や判別を意識的に作業できるかどうか、じゃないかなって思います。
…とかいうようなカッコイイことを言って終われればよかったのですが、残念ながらそうともいいきれない。
「候補10点のうち、学術論文以外のweb記事は5点までとする」という条件をつけてしまってるのも事実です、いやまあ、そうしないとそりゃwebからしか探さないし、でもいまの現状だと学部生が使える日本語で書かれた人文・社会系の文献なんてまだまだ限られてるから、ほんとに幅広く目配せしようと思ったら紙メディアに意識的に目を向けてもらうという誘導をせざるを得ない。でもいいんです、紙メデイア込みで候補を選考したうえで、勝ち残りが全部webならそれはそれで問題ない。
…とかいうような自己弁護的なことを言っていられればよかったのですが、さらに残念ながら、ここに来ての「コロナうぜえ」ですよ。困ったな。
そう、この課題って図書館で実際に複数の文献をブラウジングして内容を吟味する、というのが前提となっているところを、図書館には行けないわ、デジタルは整備されてないわでは、図書館に行かないのが悪いんじゃなくて、デジタルになってないのが悪いとしかあたしには思えません。これはもうおっちゃんらが謝るしかない。
ということで、とりあえずの対策として以下に挙げる4つの学術雑誌のオープンアクセス版を紹介しておきました。
ていうか、出題した論題候補もこの4誌に寄せときましたんで、ご笑納ください。
-----------------------------------------------------
「情報の科学と技術」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jkg/-char/ja/
「日本図書館情報学会誌」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jslis/-char/ja
「大学図書館研究」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcul/-char/ja/
「デジタルアーカイブ学会誌」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsda/-char/ja
-----------------------------------------------------
「要約」と「考察」については、それこそ特にオリジナリティーのある要件はありませんから、よそさんとだいたい一緒です。なので尻切れ割愛します。
ただ、いまの学生世代のみなさんってどうやら小中高あたりでやたら「オリジナリティーのある自分の意見を言え」と矢継ぎ早に求められるような授業を受けてきたらしく、それっぽい見解を述べること(A)そのものについてはわりと長けていらっしゃるようにお見受けするのですが、いや、それ以前の@のところがあってのAだし、と思うので、どうしても@メインにはモノを言う感じになりがちです。あとは、その2で言及した「検証可能性」のあたり。
そんな感じです。
なおコンセプトだけで言うと、「論証はミルクボーイのように」っていうのも思いついたのは思いついたんですが、あまり練りきれてないしよそさんで既出かもなので、小瓶に詰めて流します、誰か書いてください(投げる)。