2020年08月21日
非対面授業の実践についてのまとめメモと、受講者の反応から (2020年度前期)
↓ここまでのあらすじ。
「非対面授業のための動画作成の経緯・メモ (2020/3/29現在)」
http://egamiday3.seesaa.net/article/474296776.html
「非対面授業のための教材作成の経緯・メモ (2020/4/5現在)」
http://egamiday3.seesaa.net/article/474493049.html
●前提
・科目は「図書館情報資源概論」
・受講者は30-40名程度、2回生が多い。
・通常時の授業はパワポ投影+書画カメラ投影+ホワイトボードを併用。
・通常時の授業形式は、講師が口頭でしゃべる講義、学生の提出物を書画カメラで投影しながらの応答、等。
・なお前期は上記1科目しかないので、手間をかける余地があった、ということはメモしておくべき。
●課題
・15回のすべてを非対面でおこなう。
●進行の方針
・結果として、講義の内容と構成は基本的に通常時とほぼ変わらないものとした。メディアが変わるだけでも負担なので、内容と構成に無闇に手をつけるとやっていけないと判断した。
・本科目は、課題に取り組ませることが多いとは言え、基本的には”講義型”のやつなので、その方針でもよかった、というところはある。
・授業形式は、
-パワポ・PDF等のレジュメを配布する
-動画で「パワポ・PDF等を投影+ホワイトボード代わりのワープロ画面を投影」を視聴させる
-webフォームで課題・質問を提出させる
-次回講義冒頭で、課題回答の紹介+質問の回答
●動画の作成
・zoomで1人画面共有のパターン。↓下記を参照。
「非対面授業のための動画作成の経緯・メモ (2020/3/29現在)」
http://egamiday3.seesaa.net/article/474296776.html
●教材・動画の提示
・主たるプラットフォームは、大学提供のポータルを使用した。少なくとも最初の入口としてはこのポータルから始められるようにしておくのが、受講者にとって一番便利なはず。
・各講義の教材類は、各講義日にアップロードした。メディアは変わっても、修業リズムはリアルと同じでいいはず。
・各回の冒頭に「今回の学習要領(最初に読んでください)」という件名の文章を提示して、どの教材とどの動画をセットで学習するのか、どの課題を出すのか等と、とりこぼしてほしくない連絡事項等を提示した。要はreadmeファイル。毎回同じことの繰り返しが含まれたとしても、毎回ちゃんと要領を書く、じゃないと山ほどあるオンライン授業の要領いちいち覚えられるわけないし。
・レジュメは、PDF化したパワポ(投影と同じもの)、word・参考資料等のPDFなどを提示。パワポのPDFは、スマホ画面でもちゃんと読めるように、1コマ1ページのかたちでPDF化した。
・動画は、リアルタイムではなくオンデマンドで提示。講義型だし、せっかくのオンライン授業ならタイムシフトできなきゃ旨みないでしょ、ていう。
・動画は、当初youtubeを採用(多くの人が使い慣れていると判断して)していたものの、制約が多くてなんかいちいちめんどくさかったので、途中で不採用。大学提供のポータルにアップロードして見てもらうのがわりとカンタンだというのがわかったので、結局そちらを採用することになった。
●課題解答の受付
・各回の課題回答・質問の受付方法は、わりと変遷した。
・(1)メール・word等で提出。→受けとったあとの整理・処理がめんどうすぎて、毎回全員は無理。
・(2)大学提供ポータルの小テスト機能で提出。→操作も閲覧もアウトプットもごちゃごちゃしすぎててまったく使い物にならない。
・(3)Googleフォームで提出。→作成も、受付も、あと処理や保存もめっちゃラク。圧勝。
●課題と評価
・パワポ投影動画と、同じパワポのレジュメを提示したうえで、これもうぶっちゃけて言っちゃったんだけど、「余裕のない人はレジュメで学習」「余裕のある人や詳しく学びたい人は動画で学習」、どちらでもいいので自分で学習してね、ということにした。「教室」というある種の平準化装置がない以上、各自の環境や状況や熱意に応じて、自分で判断して講義に臨んでもらうしかないし、ていうかこれもオンライン授業の旨みでしょう、と。まあ、リアルの教室だって、明らかに聞いてない人とがっつり聞いてる人とまちまちなので。
・ただし宿題・課題は同じものを出してもらい、成績評価の対象と条件は同じものとする。インプットではなくアウトプットで評価します。(これは通常時も同様)
・なお大学提供ポータルの講師サイド画面では、誰がどの動画を何分再生したかまでわかるので、出欠代わりになるかもですが、上記のような趣旨で評価の対象とはしませんし、それしたらたぶんエラいことに(略
・あとレポート。↓下記参照。
「大学でのレポート課題に何を求めるかを考える その1:リテラシーはミニマリストのように」
http://egamiday3.seesaa.net/article/475846941.html
●できなかったこと
・受講者自身に口頭で課題回答を発表させること。
・図書館の現場で実際に資料を生で見たり触ったりすること。(図書館情報資源概論でこれができないのはかなりイタイ)
●受講者の反応
いろいろあった受講者の反応コメントのうち、非対面における講義進行や形式にかかわるものについて。
・「レジュメ(パワポ)と講義動画の両方が提示されているので、レジュメを読んだあと、詳細を知りたいところだけ選んで動画を視聴できた」という趣旨の反応があって、これ言っちゃうんだ、なかなかぶっちゃけたな(笑)、と思いますが、まあそれでいいですっていうか、そういうあり方をある程度想定して設計してましたよね、っていう。
最初から最後までの数十分を、抑揚なくうつらうつらしながら聞くくらいだったら、自分で「あ、ここ聞こう」と思って選んで聞いたほうが、少なくともその箇所についてはちゃんと理解してもらえたんじゃないかな、って思いますし、度々言いますがそれこそオンライン&オンデマンドの旨みじゃないかなって思いますね。リアル講義だと、どこが自分にとって重要そうかを見積もることも、そこを重点的に聞き逃さないようにすることも、一気に難しくなるし。
・通常時は講義終了時に質問を紙に書いて提出してもらい、その中から全体に共有すべきものをいくつかピックアップして、翌週回の講義冒頭で全員に向けて回答する、ということをやってました。
非対面の今回も同様にやっていたのですが、テキストベース&教材とともに提示、というやり方だと、そうか時間がないから一部をピックアップして共有、という必要がなくて、必要なだけ答えたらいいんだと気付き、途中からほぼ全員の質問をできるだけ紹介&回答、というかたちをとりました。
すると、こんな反応がありましたというのが、「他の人の質問と回答も聞けるので、他の受講者のいろんな意見や考え方を知ることができた」、と。
講師一人の説明を聞くだけじゃなく、自分が1つ質問ひねり出す”質問力養成”だけじゃなく、30人40人分の多種多様な”他人の質問”を知ることが多角的な見方を得ることにつながる、ということであれば、これ、対面授業が復活しても全問共有したらいいな。
なお、非対面授業の進行・形式がどうだったかを尋ねてコメントしてもらったところ、非対面云々以前のあり方についてのほうがいろいろ多かったので、また別途まとめるかもです。
2020年08月14日
(Q&A)「司書にならない(なるつもりはない)としても司書科目を勉強する意味は?」「利用者として図書館に貢献できることは?」
学生さんから質問を出してもらってそれに答える、という三題噺のような企画を授業でよくやるのですが、毎年出てくる似たようなFAQはもちろんあって、そういう質問と自分なりの回答を、ボカシのため一部改変して載せるやつです。
なお参考まで、科目は「図書館情報資源概論」という、資料・情報に特化した内容ではあります。
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質問その1「特に司書を目指すつもりはないんですが、それでもこの科目を勉強する意味はありますか?」
質問その2「利用者の立場として、図書館を手伝えることは何かありますか?」
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この2つの質問は異なるものに見えますが、司書課程科目を履修するすべての方に共通する問題を含んでいると思いますので、まとめて考えます。
(なお、まず公共図書館が公共的な存在である以上すべての市民住民はそれに関与・貢献できる/するべきものではありますが、そういう直接的な話はたぶん別の文脈の科目でとっくりやるはずなので、ここでは置いておきます、たぶんもうちょっと間接的な文脈の質問だと思うので)
司書資格を取得しても実際に図書館で司書として勤めることができる人というのは、人数的にとても少ない、という現実があります。このことについては、他の授業などで聞いたことがある人も多いと思います。募集人員が少ないことに加えて、司書という職業を希望する人が多いためでもあります。
では、実際に司書にならなかったとしたら、あるいは司書なるつもりがなかったとしたら。図書館情報資源概論や司書課程の他の科目で取り扱っていることは学んでも無駄なのか、というと、決してそんなことはないと思います。
この科目「図書館情報資源概論」では、大きく分けて2つのことを解説しました。1つは「資料・情報資源の類型と特質」、どれだけ多様なものがあるかというヨコの広がりです。2つめは「資料・情報資源の管理と取扱い」、資料情報をどのように集めてどのように利用者に届けるのかというタテの流れです。
このヨコとタテを描いた、図書館情報資源の世界図のようなものが、手書きで雑ですが実際に講義で示した以下のようなものになります。

この図の中央に「司書」がいます。では、「司書以外の人」はこの世界図の中にいないのか、と言うとそんなことはありません。司書でない人々(ならなかった人々)もそのほとんどは皆、この図の左上のほうにたくさんいる「利用者」の一人であり、この社会の一員として存在しています。あるいは、司書課程を履修した人たちの中には、出版業界やマスメディアや書店などの業界に就職する人も多いと思います。そういう人たちは、この図の中央の縦のラインにある「生産・出版流通」のあたりに存在しています。教員・研究者になる人は、「知的活動」や「知のサイクル」の関係者です。美術館・博物館や公務員になる人たちは右下のMLAや専門機関のあたりにいて、地域資料や学術資料と関わることになります。そして何らかの形でインターネットに関わる仕事をする人は、左側の「web」のあたりにいます。
そもそも社会が情報を中心にして活動するようになった「情報社会」において、本と文書と情報の取り交わしとまったく関わりなく社会生活を送るというのは、まずあり得ないでしょう。そう考えていただければ、みなさんは将来社会の中の一個人として、何らかの形で図書館情報資源と接点を持つ存在となり得るわけです。
社会のさまざまな業種・業界の中に、図書館の資料や内部事情について大学でひととおり学習したことがある、司書資格を持っている人が大勢いる、というのは、図書館にとっての良き理解者・味方が社会の中に大勢いる、ということと同じです。一利用者として、一社会人として、各業界の関係者・専門家として、卒業後も図書館のことを考えて活用していってくださることを期待したいと思います。
これは言ってみれば「図書館にとって吉」です。
また、みなさんが今後司書にならなかったとしても、仕事でもプライベートでも大なり小なり何かしらの”課題解決”にあたることになり、その時に”賢明で公正な判断”をするために”確かな情報源”が必要になります。企業運営や営業活動のための経営業績や統計資料、病気を予防したり克服するための治療や薬の情報、より良い社会のための公文書や議会の議事録などです。その資料(情報資源)の入手・探索がうまくできるかできないかが、みなさんの”課題解決”の成功・失敗を左右する、というのが高度情報化社会と呼ばれる現代の現実です。だから図書館の資料提供という機能が社会に必要である、ということもすでに講義で説明したと思います。
ということは、図書館情報資源概論や他の司書課程科目で学ぶことができる、資料(情報資源)のヨコのひろがり、知的サイクル、資料提供の流れのことを学び理解するというのは、かなり強力な”武器”(=リテラシー)になり得ます。これは言ってみれば「個人にとって吉」です。
そもそもそのような”課題解決”のための”確かな情報源”が必要となる場面、まあさほどシリアスでなくても本や情報がいまここにあってよかったねと思える場面というのは、図書館という特定の施設に限らず、また個々人のプライベートな問題に限るわけでもなく、この社会や街のあちこちに存在しているはずなんです。学校や病院とか、商店街や銀行とか、カフェや公園の片隅とか、駅や通りの人が一瞬行き交うようなところとか。
そこに”課題”が存在し、”情報源”が求められるような社会・街のあちこちに、図書館職員ではないけど司書的なリテラシーとマインドを身につけた人々が、隠れキャラのように「あ、実はあたしもです」なんて感じでユビキタスに遍在しているとしたら。それって、小さくて即席でお手軽な”図書館っぽい”シチュエーションが、街のあちこちに必要なときに必要な分だけ出現する、し得る、ってことなんじゃないかなって思うんです。
この「社会にとって吉」な姿っていうのは、施設・機関としての図書館がその本質的な機能の全うのために本当は為したかった、けども為し得ることの決してない理想の姿、だろうと私は思います。そのインフラはいま、スマホとインターネットというテクノロジーでほぼ実現しかけてるわけですから、あとはみなさんのリテラシー&マインド待ち、ていう感じじゃないですかね。
以上のことから、司書課程科目を履修することは、司書以外の職業に就く人にとっても、一利用者になる人にとっても、社会にとっても図書館にとっても、有益なものであるはずだと考えます。将来万万が一、図書館という施設がこの世から滅び去る時代が来たとしても、リテラシーとマインドを忘れないでおいていただければそれで十分です。
少なくとも私は、そういうつもりでホワイトボードの前に立ってます。
おかわり。
この話に関係あるか関係ないかわかりませんが、書きながらこの記事のこと(中でもイリノイ大学案)を思い出しましたので、参考までに貼っておきます。
「オバマ大統領図書館建設計画、市全域の公共インフラとなるか」(ギズモード・ジャパン、2015.01.12)
https://www.gizmodo.jp/2015/01/post_16251.html
2020年08月13日
"おらほ"と海外をつなぐ図書館 その2: なぜ日本の地域資料を(わざわざ)海外に発信するのか?
各地域・自治体の公共図書館・文化財・史資料担当の方向けに、”おらほ”(各地域・府県・市区町村)の資料・情報を海外に届けましょう、ということを説くんだ、という話の「その2」です。
「その1「日本の地域資料が世界の共有財産になる?」」(http://egamiday3.seesaa.net/article/476452905.html)では、ほら、こんなふうに各地の地域資料が海外でも実際に使われてますよ、あんなものからこんなものまで、あんなふうにこんなふうに、ていう実例を花咲か的に紹介するという感じでした。地方都市の交通統計だったり、地元の公共図書館が収集していないような逐次刊行物だったり、こんなものも使われるくらいですから、ってちょっと煽り気味にですが。
それはわかった、と。
でも、じゃあなんぼ実際に使われてまっせと言うたところで、使われてそれが何になんの?、と。
すなわち、国内ですらよそさんから使われることがあるかないかのローカルな地域資料を、わざわざ海外にまで発信し、世界の共有財産とするとかいう、その意義というか大義というか、そういう感じのことを納得してもらうにはどうしたらいいんだろうか、ていう。
これも大学図書館界隈でお話しするときだと、「地域研究」「研究の国際化・学際化」「共同研究」というようなアカデミックの潮流というか文脈から説いていけば、わりと届くかなって思うのですが。お客層が地域の公共図書館・自治体の方だと、研究が研究がってところで押していっても、あんまうまいことハマってくれないことがこれまでもちょいちょいあって、アプローチを変えてこれも丁寧めに噺を組み立ててみなきゃいけないのかな、なんてことを模索してました。
とりあえずそれをやってみた、「その2」です。
【その2:なぜ日本の地域資料を(わざわざ)海外に発信するのか?】
その意義というか大義のようなものをざっくり言うと。
(1) 外の目から客観的に見てもらえる。 (日本側に吉)
(2) 海外側が自身や世界全体を理解し直すのに、日本の事例が貢献できる。 (海外側に吉)
(3) そもそも資料情報の「公共財化」と「アウトリーチ」が図書館の本質じゃないか。 (図書館に吉)
無理くりな「三方良し」みたいになりましたが。
《(1)日本を外から客観的に見てもらえる》
日本側に吉というのは、『本棚の中のニッポン』の語り直しっぽいのであまり新出の話も多くないのですが、ちょうど直近のニュースでこれいいなっていう事例がありましたので紹介してみました。
講演「日本における貧困問題の認識とその変遷」
(メラニー・ウルス氏 2019.12.16)
https://www.mfj.gr.jp/agenda/2019/12/16/melanie_hours/index_ja.php
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201912170158472
「貧困」をめぐる社会政策は日本とフランスで大きく異なる。日本では「何が貧困なのか」の定義が社会的に共有されておらず、それが貧困対策の遅れに影響している。というようなことを、フランスサイドからの目で指摘されていますよ、外からの目で比較されると違う見方を教えてもらえますね、的な類の話です。
より現代的なテーマ・課題に寄り添った事例の方が、伝わりやすいかな、とも思います。
《(2)海外側が自身や世界全体を理解し直すのに、日本の事例が貢献できる》
日本側に吉なだけじゃない、そもそも海外側に吉なところがなけりゃ好き好んで研究してくれるわけがないじゃないか。
ということで、同じく直近の新聞記事にこれも非常にいい事例がありました。
「グローバル化する日本研究」(上)
『日本経済新聞』2020.1.6
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53877000X21C19A2BC8000/
記事自体はなんとなく正月特集っぽいなというにおいはするのですが、その中で紹介されていた英・ウェールズのビッグピット国立石炭博物館の話を興味深くとりあげました。この博物館が福岡・筑豊の炭鉱記録画(山本作兵衛)のパネル展示をしてたというのですが、まあ世界記憶遺産でメジャーどころではあるにせよ、だからなんとなく展示してみたというだけでもない。その記事で紹介されていたところによれば、ウェールズにおける炭鉱の歴史を見つめ直すのに、同じ炭鉱の町である日本の筑豊をあえてとりあげたんだ、とのことです。
「近代化にともなう社会の変化は、世界の人々にとって普遍的な経験だった。そのことを実感させる展示は、地域の生活史をグローバルな文脈につなぎ、新しい視点を得る契機となる」(引用)
つまり、単に共通点がありましたよー似てるーつってるだけじゃなく、他国の地域資料に目を向けることが、ウェールズ人がウェールズの歴史をグローバルな視点で考えるにあたって有用である、そういう価値を見出している、ということです。
私はこの記事を読んで、ああ、恥ずかしながら、自分はいままで地域資料のことを、っていうか”地域”というものを完全に誤解してたなと、とっくりとっぷり反省させられました。
地球上のあらゆる場所が何らかの”地域”である以上、すべての”地域”は世界全体とつながっているし、ということは、この世界のどの任意の他地域ともつながっていることになるわけです。そして同じ人間世界である以上どの地域とも共通項でつながり得るし、それでいてユニークな価値を披露することもできる。ということは、個々の地域が持っているのは、無限大の普遍性であり、際限の無い固有性である、ってことなんだなと。それは決して「地理的に狭い範囲」とか「中央と対極」に終わるような存在ではない。普遍性で世界とつながり、固有性でその価値を披露する。いや、それができるようにつとめよう、あゆみよろう、そういう営みが行われるところにこそ”地域”と”地域資料”の醍醐味があるんだな、と。
そのとき、「地域…、マジ尊い…」って思えるんじゃないか、っていう。
「日本の地域が世界とつながる」っていうのは、本来そういうことなんじゃないかなって思うんです、世界遺産とかインバウンドとかクールジャパンとか鵺のようなお題目は別物として。
そしてそれは、「日本」という一地域を世界に発信する「海外日本研究支援」も同じことですし。
ですが、その地域の固有性も普遍性も”おらほ”だけしか見てなかったらわからない。自分のことは鏡よ鏡さんって自分だけを見つめてたところで理解できるわけがなくて、よそさんを知って初めて認識できることなので、あの地域さんもこの地域さんもみなさん総出で、地域資料を世界様にガンガンアピっていきましょう、と。”おらほ”が世界一だってことはおらがよくわかってるし、おらがわかってさえすればいいんだ、などとひきこもってる場合じゃないぞと。「井の中の蛙」や「部分最適化」なんかに陥ってては普遍性&固有性の持ち腐れでしょう、と。
ということで、その「地域資料を世界様にガンガンアピる」のが、図書館の役目というかそもそも本質なんじゃないの?っていうのが、次の《(3)》です。
《(3)そもそも、資料情報の「公共財化」と「アウトリーチ」が図書館の本質》
世界だ海外だとたいそうなことを言ってるように聞こえるかもしれませんが、要は資料を届けるべきユーザを限定してしまわず、幅広く想定しましょうねって言ってるだけなんで、これは単純に図書館における「アウトリーチ」の問題です。
「アウトリーチ」として考えるということなら、まともな図書館業界人の方ならスルッと納得していただけると思います。どんな人であれ資料情報を必要としている人に障壁なくそれを届ける、というのは、図書館の本質であるとして疑う余地はないでしょう、じゃなきゃそもそもストレージである必要ないんだし。
加えて、図書館は資料情報を「公共財化」するところなんだ、ということも、特に公共図書館や地方自治体の方であればご承知いただけると思います。ていうか、それご承知いただけないパブリックサーバントってアリなのか、と思うし。
ただ、この「地域資料の海外発信」の話が仮にすんなり納得されないとしたら、問題の所在は、その「公共財化」のベクトルというか方向性あたりかな、ってちょっと思いました。思いながら描いたのが、この図です。

思いっきり単純化した図であるあたりはご容赦ください。
世にある資料・情報、特に出版物・刊行物(日本ではとりわけ東京を中心とする”中央”発信の)類を、奉仕対象となる誰でもが読書できるように、購入し配架し貸出する、という「地域住民への配信」とも言うべき方向の矢印は、これはおそらくどの公共図書館さんもが等しく汗してやってらっしゃる「公共財化」でしょう。
問題はもう片方、反対側矢印のほうです。つまり、その図書館の”地域”に在する資料・情報、その中でも他地域には無い固有性を持ちかつ普遍的に活用し得る(と既にウェールズの例で確認できた)類の資料を、地域の枠を越えて(=アウトにリーチして)届けるという「地域資料の発信」。こっちだって、方向は逆かもしれませんけど「公共財化」ですし、”おらほ”=”地域”を発信することによってその地域に利益が還元されることが見込めるわけですから、地域の公共図書館さんにとっての本質的活動であることには変わりないわけです。まさか、貢献先が当該地域であるからといって、届け先を当該地域に限定するなどという履き違え、必要ないし。
しかも、「資料」「情報」などというメディア的には遠くに届けやすいタイプのリソースを取り扱い、あまつさえいまどきデジタルとオンラインが整備されまくってる(はずの)環境下という、端から見たらアドバンテージが御膳の上に雁首並べてるような業界にあって、です。デジタルアーカイブというプラットフォームでそのお得意の地域資料というリソースを海外に、届ける?届けない? いや届ける一択でしょう、迷う余地なんかないじゃないですかね。
というのが、「日本の地域資料を、海外に発信するために、デジタルアーカイブを構築することは、公共図書館にとって当然為すべきこと」への道というストーリーかなっていう感じです。

https://arg-corp.jp/2020/06/30/lrg-17/
この話、『LRG(ライブラリー・リソース・ガイド)』第31号にて図書館機能を偉大にも再定置した論考「図書館機能の再定置」(さく・福島幸宏)が、はからずも通じるようなことを言うてはりましたので、ご紹介しておきます。
「図書館の持つリソースを、…デジタルリソースの効率的な提供、地域情報の集約、博物資料・アーカイブ資料等新しい情報源の発掘等といった資料の発見・整理、それらの電子化に振り分けることを提案する」(引用)
この号に書いてあることはほぼ全部同意なので、ぜひ買って読んでください。

http://jslis.jp/wp-content/uploads/2019/10/JSLIS_20191020_Symposium_slide_1.pdf
あたしがわざわざ蛇足しようとした要素があるとするなら、↑この図の「地域外からの利用者」のことをなめとったらあかんぜよ、それってニコイチなんちゃうん、ていうことくらいです、たぶん。
(注:図はLRG31掲載の「図書館機能の再定置の試案図」と、ほぼ同じものを、日本図書館情報学会研究大会シンポジウム発表資料(http://jslis.jp/wp-content/uploads/2019/10/JSLIS_20191020_Symposium_slide_1.pdf)から)
2020年08月03日
zoomでのライブ動画をyoutubeから配信するための、マニュアル(2020年8月2日現在)
メディアを制する者が世界を制する、とわりと本気で思っているので、zoom→youtubeというライブ配信が自力でできるようになってなあかんななどと思いはしてたのですが、いざやってみるとやっぱりまあまあ込み入っている。というか、ググるともちろんいろいろとやり方を書いてくれてるweb記事は見られるのですが、そこはそれ、さすが人気のwebサービスであるためかあるいはログイン者のステータスで事情が違うのかはたまた昨今のコロナ的わちゃわちゃでの日進月歩という名の朝三暮四・朝令暮改のためか、わりと最近書かれた記事であっても、何か書いてあることと画面表示とが全然勝手違うんですけど、みたいのが多いので、これは自力でマニュアル作るくらいのつもりでちまちまメモしていかなしゃあないな、と。それはさしずめ、いにしえのファミコン時代RPGのこまめなセーブくらいのノリで。
というようにして書かれたメモを下記のように公開することで、自分以外の1人2人でも誰かの参考になれば、自分が読んだweb記事を書いてくれた人たちへのペイフォワード的恩返しになるんじゃないかな、っていうやつです。ただ、もちろんこのメモもまたじきに「全然勝手違うんですけど」状態になるとは思うので、タイムスタンプとしては「2020年8月2日現在」ですあくまで、ということで。
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zoomでのライブ動画をyoutubeから配信するための、マニュアル(2020年8月2日現在)
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0.
・前提: zoomのプロアカウントを持っていること。
・準備: 配信動画の「タイトル(トピック名)」と「開始日時」を決定しておくこと。
・なお開始日時については、これまでのいくつかのライブ配信動画を視聴した経験から、ある程度の”前説”時間を手前に設けておくのがよさそう。
1. zoomでスケジュール設定&ライブストリーム設定をする
・zoomのwebサイトにログイン
→「設定」>「ミーティングのライブストリーム配信を許可」で、「facebook」「youtube」「カスタムライブストリーム配信サービス」等にチェックする。
※「カスタム云々」にチェックするのが肝要らしい。
※「設定」>「画面共有」で「共有できる=全参加者」「他の人が共有云々=ホストのみ」とする。
↓
・「ミーティングをスケジュールする」
→「トピック名」「開始日時」などを入力する。
→「ミーティングID=自動的に生成」
→「保存」
→保存の次の画面で「招待状のコピー」をしておく。
→保存の次の画面>「ライブストリーム配信」>「カスタム云々」>「ライブストリーム設定」をクリックする。
→「ライブストリームサービスを追加」画面が表示される。ここでいったん保留。
2. youtubeでライブ配信の設定をする
・前提: ライブ配信用のアカウントとチャンネルを作り、ライブ配信が可能な設定にしておくこと。(youtube側の認証を待つのに24時間かかったりする)
・youtubeのwebサイトに、配信用のアカウントでログイン。
・「ライブ配信を開始」
→「ライブ配信をスケジュール設定」
→「新規作成」
→「タイトル」「開始日時」「カスタムサムネイル」などを入力する。
→「エンコーダ配信を作成」
↓
・ライブ配信の管理画面(配信コンテンツの一覧リスト)に戻る。
→今回配信動画のタイトルのリンクをクリック
→この配信動画の管理画面が表示される。
→「自動スタート=オン」「自動ストップ=オン」
↓
・youtubeの配信動画の管理画面で取得できる以下のデータを、zoomの「ライブストリームサービスを追加」画面に転記する。
-「ストリームURL」をzoom側にコピペ
-「ストリームキー」をzoom側にコピペ
-右上の矢印マーク(「共有」)でコピーできるURLを、zoom側の「ライブストリーム配信ページのURL」にコピペ
3. 待機
4. zoomで配信を開始する
・zoomアプリを起動する。
・zoomで配信を開始する。
→zoom画面下>「詳細」>「カスタム云々にてライブ中」をクリック
→youtubeで配信されるはず。
これで、いけるはず。
2020年7月のまとめ
●総評
長雨ではからずも蔵書整理が進む
祇園祭を返せ。
●7月のまとめ
・#祇園祭2020
・『南方熊楠のロンドン』
・「ダウンタウンの番組での広瀬香美の話、思ってた以上にかなりぐっと来た。果たして自分は、本当の自分の人生を生きているだろうか。」
・藤森神社・伏見稲荷大社
・バーミリオンカフェ https://t.co/YoiSgzpNOS
・デジタルアーカイブ学会・オンライン。座長を務める。再度spatial chatと低速度自宅回線に苦しめられる。
・ずっと雨。
・「『パブリック 図書館の奇跡』公開記念 映画を通し考える、日本の公共性を持つ空間のあり方と未来」第1夜&第2夜。隔靴掻痒、戦争を起こさせない、どうもしない、等。
・「祇園祭 −京都の夏を彩る祭礼」展@京都文化博物館
・『酒場の京都学』
・#祇園祭2020 #エア宵山(前祭編)
・祇園祭を返せ。
・#もしも祇園祭が
・配信練習(zoom→Facebook)
・野木脚本
・自宅スキャナ導入
・伏見稲荷・竹の下道編
・祇園祭デジタル・ミュージアム座談会「デジタル人文学による地域のデジタル・アーカイブの有効性や可能性」。オンラインライブ配信はほんとに怖い
・別宅ゴザにカビ生え問題→清掃&廃棄、からの資料レスキュー&仕分け
・オンライン会議「Zoomで繋がる専門図書館」。事情が様々に異なるからこそ聞いてみたい、非来館の間の利用実績を入館者数以外の何で評価するか。
・夏の連休4連発、その1・連休4days
・映画『パブリック:図書館の奇跡』。「いつまでも あると思うな パブリック」。
・#祇園祭2020 #エア宵山(後祭編)
・映画『ドロステのはてで僕ら』@出町座
・「なんと、いまやっと理解した。世の中の皆さんは「ひとりで誰ともしゃべらず過ごすこと」が苦痛なのか。」
・後祭の町衆巡行&御神霊渡御祭
・ヨーロッパ企画生配信劇シリーズ「京都妖気保安協会 ケース1・嵐電トランスファー」
・#move2020 別宅保存資料の箱詰め替え&納庫、非保存資料の仕分け&廃棄準備、自宅本棚インストール、分類配架態勢が整う。
・テイクアウト→昼食兼ビール、へ。
・配信練習(zoomからyoutubeへのライブ配信テスト)
・『四畳半タイムマシンブルース』
・縮減、再び。
・本棚、再び。
・zoom飲み会再び。ツイードのジャケット。
●7月テーマの進捗
・エア祇園祭 → なんだかんだで楽しんでた
・オンラインイベントツールの操作に慣れる → ぼちぼち地道に
・過去コンテンツの文字化&可視化 → 積み残し
●8月のテーマ
・休日が多いので、休日も業務日も充実で埋めること。
・(コロナ進行を見積もると)年末が近いので、今年執行すべきことを執行すること。
・新規案件: AAS神戸の準備
の、3本です。
細かいことは気にするな。
長雨ではからずも蔵書整理が進む
祇園祭を返せ。
●7月のまとめ
・#祇園祭2020
・『南方熊楠のロンドン』
・「ダウンタウンの番組での広瀬香美の話、思ってた以上にかなりぐっと来た。果たして自分は、本当の自分の人生を生きているだろうか。」
・藤森神社・伏見稲荷大社
・バーミリオンカフェ https://t.co/YoiSgzpNOS
・デジタルアーカイブ学会・オンライン。座長を務める。再度spatial chatと低速度自宅回線に苦しめられる。
・ずっと雨。
・「『パブリック 図書館の奇跡』公開記念 映画を通し考える、日本の公共性を持つ空間のあり方と未来」第1夜&第2夜。隔靴掻痒、戦争を起こさせない、どうもしない、等。
・「祇園祭 −京都の夏を彩る祭礼」展@京都文化博物館
・『酒場の京都学』
・#祇園祭2020 #エア宵山(前祭編)
・祇園祭を返せ。
・#もしも祇園祭が
・配信練習(zoom→Facebook)
・野木脚本
・自宅スキャナ導入
・伏見稲荷・竹の下道編
・祇園祭デジタル・ミュージアム座談会「デジタル人文学による地域のデジタル・アーカイブの有効性や可能性」。オンラインライブ配信はほんとに怖い
・別宅ゴザにカビ生え問題→清掃&廃棄、からの資料レスキュー&仕分け
・オンライン会議「Zoomで繋がる専門図書館」。事情が様々に異なるからこそ聞いてみたい、非来館の間の利用実績を入館者数以外の何で評価するか。
・夏の連休4連発、その1・連休4days
・映画『パブリック:図書館の奇跡』。「いつまでも あると思うな パブリック」。
・#祇園祭2020 #エア宵山(後祭編)
・映画『ドロステのはてで僕ら』@出町座
・「なんと、いまやっと理解した。世の中の皆さんは「ひとりで誰ともしゃべらず過ごすこと」が苦痛なのか。」
・後祭の町衆巡行&御神霊渡御祭
・ヨーロッパ企画生配信劇シリーズ「京都妖気保安協会 ケース1・嵐電トランスファー」
・#move2020 別宅保存資料の箱詰め替え&納庫、非保存資料の仕分け&廃棄準備、自宅本棚インストール、分類配架態勢が整う。
・テイクアウト→昼食兼ビール、へ。
・配信練習(zoomからyoutubeへのライブ配信テスト)
・『四畳半タイムマシンブルース』
・縮減、再び。
・本棚、再び。
・zoom飲み会再び。ツイードのジャケット。
●7月テーマの進捗
・エア祇園祭 → なんだかんだで楽しんでた
・オンラインイベントツールの操作に慣れる → ぼちぼち地道に
・過去コンテンツの文字化&可視化 → 積み残し
●8月のテーマ
・休日が多いので、休日も業務日も充実で埋めること。
・(コロナ進行を見積もると)年末が近いので、今年執行すべきことを執行すること。
・新規案件: AAS神戸の準備
の、3本です。
細かいことは気にするな。