2022年05月15日

縮小社会は"縮小社会"なのか : シンポジウム「縮小社会、文化はどうなる!?」のメモ


 京都国際マンガミュージアムでおこなわれている(注:2022年5月16日まで)企画展「縮小社会のエビデンスとメッセージ」、これは日文研の共同研究(縮小社会の文化創造)の成果公開の一環のような感じの企画なのですが、そのシンポジウム「縮小社会、文化はどうなる!?」(2022年5月14日)を拝聴する機会があったので、そのメモと感想。
 第1部、「トルコからみた、縮む日本」(マンガ家・市川ラク氏)。
 第2部、パネル「縮小社会展からのメッセージ」。
 番外企画、春画解説。

 なお、展示会は2022年5月16日で終了しますが、下記ホームページで見ることができるVR展示はのこされるらしく、なんなら更新するとかいう話も出てたりしたので、ご覧になるとよいと思います、”展示の構成”のあたりがなるほどとちょっと思った(後述)。


●第1部「トルコからみた、縮む日本」(マンガ家・市川ラク氏)

マンガ家・市川ラク氏
・わたし今、トルコです。 (ビームコミックス) | 市川 ラク |本 | 通販 - Amazon.co.jp
 https://www.amazon.co.jp/dp/4047349356
・イスタンブールには、なんで余裕があるのかな。 (ビームコミックス) | 市川 ラク |本 | 通販 - Amazon.co.jp
https://www.amazon.co.jp/dp/4047352519/

・トルコのマンガファンは、日本の作家を選んで好む傾向が強い(例:フランスでは日本かどうかは意識されていないし、何なら日本作と気付かれていない。)
・トルコのイスラム教は宗教と生活を切り離す考え方で、日本のアニメマンガに抵抗が生まれるようなことはない。
・トルコでは景色がいいところには必ずと言っていいほどちゃんとベンチがあるという。
・日本では世界のニュースはどこか他人事だが、トルコでは世界の動きがビビッドに生活に影響する(為替等)。
・旅行者以上、移民未満、という生活。


●第2部 パネル「縮小社会展からのメッセージ」

・共同研究の成果を学術論文ではなく展覧会という別の言語に翻訳した。

(服部圭郎氏)
・縮小問題は数字にされがちだが、数字の解決が人や地域の問題を解決するわけではない。統計解析をするにしろ、自分の想像力をこえる解析はできないので、数字の裏にある実態を知ること。そこに実際に住む人は何を考えているか。そのインタビュー動画を展示。

(高橋耕平氏・展示デザイン担当)
・展覧会の場で観客が何かに興味を持ったら、そこからリンクしていけるようにした。
・エビデンスと象徴する物(屋台など)、それらをキャプションでリンクしておく。
・順路や固定的ストーリーはなく、観客が自分で拾っていけるかたち。
対談動画、参加型展示としての付箋ボード、研究会を展示会場に持ち込む動画、書籍展示

(吉村和真氏)
・マンガと学術をぶつけた時に何が起こるかを試したかった。
・日本の諸問題は、実はすでにあらゆるマンガに描かれている。
・マンガミュージアムへの来客に学問のおもしろさを伝えられるか。
マンガ読者は世界に拡大増加しており、ここは縮小していない、つながっている、広がっている、発信力がある。開けていけるんじゃないか。

(フロアからのコメントとディスカッション)
・マーケットは縮小しても、文化はメディア、テクノロジー、環境によって拡大しうる。youtubeやamazonによる新たな冗長性の補填。
・日本でのBL研究・資料を持って帰国できない留学生からは、規制が緩いと思われている日本。一方で、何かをおそれてみずから自主規制してしまう余裕のない心理の日本。
・逆転じゃなく併存でいいのでは。拡大ではなく縮小ではなく、無限。
・染色職人など、縮小を迫られている伝統工芸等の職人のような人々も、共同研究に加えてはどうか。

(附:春画解説から)
・幕藩体制による文化情報は、独自の文化を持つ小さな地方社会(藩)がその全国ネットワークによって発展していった。(フィレンツェとシエナなどのイタリア都市国家もそんな感じ)


●感想
 縮小縮小と言うけれど、”あのころ”を基準(良し)とする数字を見れば縮小だろうけど、無批判に「”あのころ”を基準(良し)とする」でなくていいのだったら、それは”縮小”なんだろうか。(それは、日本に限らなければ縮小はしてない、にも通じる)
 縮小したとして、それでなお良しとする実態があったり、併行して冗長性・多様性が確保できる余地があるんだったら、べつにあきらめたり後ろ向きになったりする必要はないし、そうしなきゃいけないって決まってるわけでもないだろうし(困難はあるにせよ)、下り坂ってだけであきらめるのは早計ですね。
 とりあえず、イスタンブールにはなんで余裕があるのか、読んでみます。


イスタンブールには、なんで余裕があるのかな。 わたし今、トルコです。 (ビームコミックス) - 市川 ラク
イスタンブールには、なんで余裕があるのかな。 わたし今、トルコです。 (ビームコミックス) - 市川 ラク
posted by egamiday3 at 14:16| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年3月・4月のまとめ

■2022年3月・4月のまとめ

●総評
 ひっくるめて、自分なりに生きる、を考えてた。

●2022年3月・4月のまとめ
・3回目接種@雑居ビル。副反応はふわっと終わる。
・SNSハラスメントシンポ
「Academics Online: Best Practices for Social Media Safety - Association for Asian Studies」
 https://www.asianstudies.org/jobs-professional-resources/aas-digital-dialogues/academics-online-best-practices-for-social-media-safety/
・自宅をめっちゃうらやましがられて、人生観がプチ変わる。(→お家さんプロジェクトに拍車)
・たぶんほんとに最後の在宅勤務日。
・中華ガチャ
・フライング花見(祇園白川〜円山公園〜岡崎〜哲学の道)
・三谷大河が早くも遠慮なく牙をむきだしにしてきた感
・「なんで私がJPCOARに?」ふたたび
・「これからのメタデータ収集・作成方針」 (第6回月刊JPCOAR)
 https://youtu.be/ehQAR5Pl5Fg
・CEAL/CJM/NCC2022年大会。やっぱコレクションマップのやつがすごい。
 「Notable Japanese Collections in North America」
 https://datastudio.google.com/reporting/dfb70b3e-865d-4ca9-b2fa-75db65ab43e8/page/rGNTC
・慌てるボーナスはもらいが少ない。
・AAS2022年大会。ハイブリッドってそういうことか…。
・フライング花見。嵐山・嵯峨。
・庭のクチナシと椿の剪定。バッサバッサ切って丸裸になる。
・花見(沓掛山〜上桂〜府立植物園〜上賀茂神社)
・映像の世紀。モハメドアリ、メルケルなど。
・カムカムエブリバディ、深津絵里のアップ長回し。
・花見(岡崎〜北白川〜疏水〜上賀茂神社)
・西明寺〜高雄〜清滝〜保津峡
・「きょうの料理:平野レミ&和田明日香の特製だれとおかずの素」
・寄席初回が終了。あっというまにハイブリッドがデフォルトになる。教室2/3、zoom1/3という感じ。
・やっとこれらもバンガロー。
・スノーモンキーIPA
・松ヶ崎〜宝ヶ池越え
・紫陽花リベンジなるか
・三谷脚本のドSっぷり、たびたび
・妖怪探偵の助手仕事
・『日米交流史の中の福田なをみ: 「外国研究」とライブラリアン』
・ツーラビットのCITY GIRLS KVEIK IPA
・命が宿った。
・あきさみよー/降り注ぐ巡航船
・クエスチョン大事
・GW。京都市バスの激混みにドン引き、結果、外出が大幅に減る。
・2年以上ぶりに大阪府入境。クレープランチと庭と家。(→お家さんプロジェクトさらに)
・自分なりに生きる、を考える。
・散歩(上賀茂〜歴彩館明石博高〜シェアサイクル)
・「まあ私にとっては毎日が図書館記念日ですけどね。(謎アピール)」
・タケノコのキーマカレー
posted by egamiday3 at 13:25| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月13日

「海外の日本研究と日本図書館」に関する2022年3月・4月の動向レビュー -- NCC2022、ポッドキャスト、ジャパンナレッジワークショップ 他 ( #本棚の中のニッポン)

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■CEAL・NCC 2022年大会
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 AASはハワイ会場を拠点にハイブリッドでおこなわれたが、CEAL(NCC含む)はオンラインベースでおこなわれた。
 NCCのオープンミーティングは公開動画あり。

●CEAL
・Annual Meeting – CEAL: Council on East Asian Libraries
 https://www.eastasianlib.org/newsite/meetings/
・2022 CEAL Presidential Plenary: "The Path Forward: the New Post-Pandemic Normal" - YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=u6zIw6yhFC0

●NCC
・「2022 NCC Virtual Open Meeting」
 https://guides.nccjapan.org/2022-open-meeting/home
・「2022 NCC Annual Open Meeting - YouTube」
 https://www.youtube.com/watch?v=d1XWyxnolj0


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■日本研究
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●笹沼俊暁「日本文学研究は日本語で書くのが「正式」なのか?」昭和文学研究. 83.
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/showabungaku/83/0/83_202/_article/-char/ja
「国民国家論やポストコロニアル理論の角度からそれらを脱 構築しようとするのならば、「国文学研究=日本語限定…」という組み合わせの自明性にもまた、疑いの目が向けられてしかるべき」

●「Japanese Studies Spotlight: Listening to the Latest with the Japan on the Record Podcast」
 https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-Japan-on-the-Record
 ポッドキャストによる学術の発信について。
「At a time when scholarly expertise is met with increasing skepticism, it is incumbent on academics to embrace our roles as public intellectuals, to share our research, and to better inform the public about issues we study.」
(学問の専門性がますます懐疑的になっている現在、学術関係者は公的知識人としての役割を受け入れ、研究を共有し、私たちが研究している問題について一般の人々により良い情報を提供することが求められているのです。)

●「東アジア古典研究のグローバル化を目指して」
「開催報告: 国際ワークショップ 「東アジア古典研究のグローバル化を目指して―言語と文化の翻訳論」 – スーパーグローバル大学創成支援「Waseda Ocean 構想」」
 https://www.waseda.jp/inst/sgu/news/2022/03/22/14056/


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■デジタルアーカイブ・データベース
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●「Bodies and Structures 2.0: Deep-Mapping Modern East Asian History」
 Japanese Studies Spotlight: Bodies and Structures 2.0: Deep-Mapping Modern East Asian History
 https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-Bodies-and-Structures

●「Japan Past & Present」による活動
 Japan Past & Present - survey for users of Japanese sources in translation | H-Japan | H-Net
 https://networks.h-net.org/node/20904/discussions/9868699/japan-past-present-survey-users-japanese-sources-translation
「we are designing a comprehensive, up-to-date database of primary sources in translation related to Japan.」
(日本関連の翻訳一次資料の包括的で最新のデータベースを構築しています)

●Torii Around the World - Google マイマップ
 https://www.google.com/maps/d/u/0/viewer?mid=1RNaaTlz7U2FgjlvFARZQWHsMeWsTc2S1&ll=-3.81666561775622e-14%2C0&z=1

●稲葉あや香「「不正義の景観」デジタルアーカイブにおける日系カナダ人家族の記憶」
https://doi.org/10.24506/jsda.6.2_e11
「データ化の影響を受けながら、歴史学の史料、日系カナダ人の集合的記憶、家族の記憶と、順次新しい価値を付加されてきた」
「公的な記憶と個別民衆的な記憶が競合しない」

●Orange County Japanese Experience, 1900-1950
 http://ocjapaneseexperience.com/
「This website tells some of the stories of Japanese people who lived in Orange County, California in the first half of the 20th century. 」

●Manga Out Of The Box
・Manga Out Of The Box − Google Arts & Culture
 https://artsandculture.google.com/project/manga
・Google Japan Blog: Manga Out of the Box:日本のマンガを紐解く
 https://japan.googleblog.com/2022/03/manga-out-of-the-box.htm
「Google Arts & Culture は、マンガの歴史やその影響などを包括的に紹介する「Manga Out Of The Box」を本日公開しました。ストーリーや高解像度の画像、動画、ストリートビュー」
「The "Notable Japanese Collections in North America" dashboard…to help identify and promote notable Japanese Studies collections held in North American libraries」
・Google Arts & Cultureによる日本のマンガ特集「Manga Out of the Box」の作りについて - 宮本大人のミヤモメモ(続)
 https://hrhtm1970.hatenablog.com/entry/2022/03/27/180335


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■書籍・図書館
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●「Notable Japanese Collections in North America Dashboard」
https://guides.nccjapan.org/notable_collections
https://datastudio.google.com/reporting/dfb70b3e-865d-4ca9-b2fa-75db65ab43e8?utm_source=NCC&utm_medium=LibGuide
「The "Notable Japanese Collections in North America" dashboard…to help identify and promote notable Japanese Studies collections held in North American libraries」(北米の図書館に所蔵されている注目すべき日本研究コレクションを特定し、その普及に貢献する)

●国際子ども図書館、海外で翻訳刊行された日本の児童書に関するデータファイルの提供を開始 | カレントアウェアネス・ポータル
 https://current.ndl.go.jp/node/45916


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■文献
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●『After/Withコロナの「国際日本研究」 : ヨーロッパからの報告』
 http://doi.org/10.15055/00007791

●『世界の日本研究 : 2021』
 http://id.nii.ac.jp/1368/00007795/

●「Seeking Collaborative Instruction Models beyond the PandemicSeeking Collaborative Instruction Models beyond the Pandemic: Lessons Learned from the JapanKnowledge Workshop Series hosted by the Plains to Pacific Alliance」 by Michiko Ito, Tokiko Y. Bazzell et al.(Journal of East Asian Libraries)
 https://scholarsarchive.byu.edu/jeal/vol2022/iss174/4/

 こういうワークショップやってみました系報告は日本語でもいくつも出ているのかもしれませんが、これはざっと読んだだけでもすごく参考になったところが多かった(課題点やハードル含め)ので、各大学のご担当者様はぜひどうぞ。

「to present a workshop series on the JapanKnowledge database that would be open to Japanese studies researchers and students in North America and beyond」
「the WG decided to provide another program, a Researchers’ Talk room. Six researchers were invited to share their experiences in using JK」
「Making the workshop open access or not」
「The WG planned to record and make this workshop series available for those unable to attend the workshop」
「As a part of their presentations, many researchers used copyrighted materials, such as images taken from online」
「When organizing an online workshop, keeping the structure as simple as possible is recommended」

参照:
「NCC Outreach Working Group: PPA JapanKnowledge Workshop」
 https://guides.nccjapan.org/outreach/jkworkshop

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■社会問題
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・ウクライナ避難民は行けるのに……ミャンマーで広がる日本への失望
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00118/040600077/

・令和の鎖国:鎖国の日本「影響は2〜5年後」 信頼回復、緩和だけでは不十分 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220408/k00/00m/040/379000c


posted by egamiday3 at 05:33| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする