小出いずみ. 『日米交流史の中の福田なをみ : 「外国研究」とライブラリアン』. 勉誠出版, 2022.2.
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=101275
・生い立ちや若い頃について知る人も少なく、半ば伝説の人になっていた。片鱗が取り上げられながら全貌が明らかでない福田なをみをとりあげ、日米に跨がる彼女の仕事の文脈を解明しつつ評価を試みた(342)
■序章
・外国研究と資料や情報資源を考えるにあたって、本書では一人の人物、福田なをみを参照軸において観察する。[3]
・福田なをみ(1907-2007)[4-]
・第二次大戦前、戦中・戦後の時代を通して活動した、日本研究ライブラリアンの草分け
・アメリカ合衆国と日本の両国の多様なライブラリーにおいて仕事をしたという、希有な経歴
・1930年代から1970年代までの期間、ミシガン大学、米国議会図書館、東京帝国大学図書館、外務省、GHQ、国立国会図書館、国際文化会館、メリーランド大学図書館、ミシガン大学図書館など
・福田の活動は、戦時期と占領期を挟む期間、とりわけアメリカで日本研究が学術研究として形をなしていく時期
・福田自身は記録や資料を手元に残さない人であった…本人が直接書いたものが少ない[5]
・現在までに評伝ないし研究はない…日米にまたがって所在する資料を発掘する必要がある。[5]
■終章
・ライブラリアンとしての福田は、「図書館員」あるいは「司書」で連想される静的・受動的なイメージではなく、ライブラリーにおいて必要とされるサービスを積極的に繰り広げ、調査や出版のプロジェクトを企画し、財団から資金を引き出し、各地を歩き回る能動的なライブラリアンであった。[331]
・外国研究の二面性とライブラリーの情報資源
・アメリカでも日本でも外国研究は異文化理解にもなれば緊張の中で敵国研究になる。研究主体国と対象国を交流によって結びつけるだけでなく、研究主体による解釈によって離反させる機能もあわせもつ。(333)
・福田はそれを理解していただろう。それでも需要を把握し、資料の利用可能性を高め、情報資源化にとりくみ、ライブラリアンとしての責務を果たした。(334)
・アメリカでは、地域研究は対外政策を立案し、遂行するのに不可欠とされ、国防関係予算を含む資金がつぎ込まれてきた。つまり、地域研究を政策科学として取られている。それに対し日本は「日本理解促進」を目的とした対外文化政策の一環として奨励し、資金を投入している。日米の政策意図は異なる。(339)
・外国研究(としての日本研究)と自国研究(としての日本研究)の特性にはどのような違いがあり、それが研究結果にどう反映されるか。この点は、日本が外国における「日本研究」に積極的に取り組むようになった、福田より後の時代の「日本研究」を俯瞰することで何らかの解が得られる可能性がある。[339]
・福田が経験した国際間の史料アクセスの問題はデジタル時代の現在でもまだ解決されていない。相手国への関心、研究体制の違い、言語、資料提供制度、記録資料の残し方などの差異が障碍としてのこる。
2022年09月25日
本読みメモ『日米交流史の中の福田なをみ』:第5章 アメリカの日本研究とライブラリー
小出いずみ. 『日米交流史の中の福田なをみ : 「外国研究」とライブラリアン』. 勉誠出版, 2022.2.
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■第5章 アメリカの日本研究とライブラリー
●アメリカの日本研究通史、日本語教育通史
・アメリカの日本研究は1920年代ころからさかんになるにつれて、日本語教育が必要になってきた。
・日米戦争に向かうにつれて、日本に関する学術研究体制も整えられていく。
・1925年、太平洋問題調査会。
・1941年、FarEastern Associasion→戦後、AAS
・1930年、ACLS(アメリカ人文系学会協会)内に日本研究促進委員会が設置される。
・1930年代、ハーバード大学やミシガン大学で日本教育の夏季セミナー
・アメリカ陸軍は1908年以来毎年在日大使館に将校を送り、日本語学習と軍事情報収集を課していた。
・1923年米国大使館の日本語教官に就任した長沼直兄、学習者の必要に応じた教科書を作成して自費出版。
・1941年、大学の日本語教員をあつめ、日本語教育の現状に関する会議。エリセーエフ、E・ライシャワー、ヤマギワなど。そこでわかったのは、非日系人の日本語学習者は全米で60-70人ほど、文学。言語学的興味により、教授法は確立していない。→実用的な通訳者・翻訳者が必要.→海軍・陸軍がそれぞれで対応。(254)
・国際関係が緊密になり、外国への関心は経済・社会分野に広がった。(259)
・外国における実質的な日本研究は、日本語資料を読みこなす語学力無しには成り立たない。[311]
・外国語能力は当該国で生成される一次資料へのアクセス手段[312]
・当時のアメリカでは外国語教育の一般的方法が普及する以前で…日本語の教科書や教授法の開発が模索された。ところが戦争に向けて軍事的必要性を満たすレベルの日本語能力を有する人材が緊急に大量に必要になり、日本語教育は国家的プロジェクトとして強力に推し進められた。[311]
・戦争中の数年で日本語教育の方法も教材も開発され、日本語を理解できるアメリカ人が二万人を超える規模で養成された。[258]
・戦争と占領を経て、アメリカにおいて日本語を読める人は急増した。かつ、様々な形で来日した。
・研究材料となる日本語資料が占領と接収で飛躍的に増加した。(263)
・アメリカ生まれの極東研究者が増加した。(263)
・戦中、交戦国について総合的に知る必要があったにもかかわらず知識情報の蓄積がなかった反省から、戦後には外国を対象とする地域研究に注力され始めた。(264)
・1968年、福田は国際文化会館を休職し、1年刊の予定でメリーランド大学図書館に出向
・1970年、ミシガン大学東アジア図書館に副館長として就任(-1978)
●メリーランド大学とプランゲ文庫
・メリーランド大学の歴史学教授・ゴードン・プランゲ。GHQで戦史の仕事にあたる。
・同部署に民間検閲支隊(CCD)があり日本国内のあらゆる出版物を検閲していた。その終了を知ったプランゲが、収集資料をメリーランド大学に送った。木箱500分。
・長らく利用態勢が築かれなかった。(270)
・1960年代の外国研究強化にともない、1960年代初め、学内にプランゲの資料を利用を検討する委員会ができた。
・1963年、金子英生が着任した。資料的価値、保存、マイクロ化、目録作成などを提言。
・1968年、福田なをみ着任。
・東アジア研究委員会を組織した。図書館の枠をこえ、学内に散在する日本研究関連者の連携をうながすため。(273-274)
・福田は日本語資料の整理が進まない問題を図書館だけに任せないよう、日本語資料の利用者である教授陣を加えたグループを組織した。[312]
・資料の状態が劣悪であった。→リスト作成・マイクロフィルム化を企図。
1969年、福田退任。1970年、シギンズ着任。
・日本側にとっては、接収された納本出版物。
・1974年、奥泉栄三郎。検閲資料の整理とマイクロ化にたずさわる。
・1978年、プランゲ文庫と命名。
・1992年、NDLが大規模マイクロ化を開始。
●ミシガン大学
・1970年、福田なをみミシガン大学アジア図書館に着任。
・ミシガン大学は、アメリカで初めて日本研究センターを設置、1950年岡山にフィールドステーションを設置。
・所蔵資料が多く、目録整理が追いついていない。日本語文献を扱える人材の不足、まとまって安定した財源がない、コピーカタロギングとオリジナルカタロギングの併用。(285)
・1970年当時で、日本語資料10万冊。
・マイクロフィルムが多い。政府統計など、一次資料の利用を可能にする。(292)
・就任以降、毎年のように日本を訪問し、資料収集・資金集めなどに奔走した。[298]
・絶版書を古書店で。古い資料をマイクロ化して。非売品の政府刊行物や団体刊行物を寄贈依頼で。
・1970年代のミシガン大学図書館は、アーカイブズ的資料のマイクロフィルムによる収集に特徴が見られた。福田任期中は、明治期観光新聞雑誌、戦前の政府資料など。(313)
・CEAL、日本研究図書館ネットワークでの活動。
●退職後
・1978年、ミシガン大学を退職。日本研究センターの準研究員。
・「Bibliography of Reference Works for Japanese Studies」(1979年刊)
・「Survey of Japanese Collections in the United States, 1979-1980」
・「Japanese History: A Guide to Survey Histories」
・2007年、死去。
本読みメモ『日米交流史の中の福田なをみ』:第4章 国際交流から日本研究へ
小出いずみ. 『日米交流史の中の福田なをみ : 「外国研究」とライブラリアン』. 勉誠出版, 2022.2.
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■第4章 国際交流から日本研究へ
●国際文化会館図書室
・国際文化会館図書室長は、福田が最も長く務めた仕事
・国際交流団体として
・アメリカ型図書館のモデルとして
・国際文化会館は、ロックフェラー氏(アメリカ側の対日文化政策の顧問)の報告書で提案された「文化センター」「インターナショナルハウス」がもと。
・1951年、文化センター準備委員会が発足。
・計画の当初から図書館機能が低減されている。
・東京に既にある国会図書館や東京大学図書館と重複した蔵書をゆうするものではなく、それらの蔵書にくわしいライブラリアンを配置して基本的な必要性を満たすものとする。(176)
・1952年、財団法人国際文化会館が誕生する。
・図書室の活動方針は、最新刊図書雑誌5000冊をそろえる。文化交流と知的協力。日本に関して書かれた外国書。司書を配置してレファレンスライブラリーとする。外国の新しい学術研究や文化を紹介するために。(177)
・当初…海外思潮を表す書物を日本人学者に提供する役割が期待され[223]
・1953年、福田、図書室長としてつとめる。彼女の仕事はハウス自身のコレクションの範疇をこえ、他機関・NDLとの間に必要なコンタクトをつけるかたちで来訪する学者を支援する。(178)
・当時の日本にはない、アメリカ型の図書館だった。[179]
・当時の日本図書館にはなかった「雑誌」があった。(179)
・書誌的なサービスと日本の資料利用のために図書館間貸借を進めること[180]
・初年度に、NDL、上野図書館、KBS図書館、アメリカ文化センター、ブリティッシュカウンシルなどからILLで150冊借り出している。(181)
・国際文化会館自身の国際文化交流機関としての機能から、情報を求めて来る人がおおかった。(182)
・当初想定されていた蔵書提供(特に日本人に)だけでなく、国内国外の学者へのレファレンスサービス、情報サービスの重要さが明らかになった。(182)
・日本研究の専門図書館として確立していく[224]
●研究会
・アメリカ型の図書館のモデルとなったため、NDLや大学図書館などの図書館員が福田の下に集まって研究会を[224]
・この図書室は日本の図書館人にとっては図書館活動に関する知識を学ぶところでもあった。
各図書館の有志を招いて2つの研究会を主宰。「図書館建築と機能」「図書館間の協力」(184)→その後、「日本における綜合目録」「科学技術資料に関する情報交換センター創立の検討」
当時建築計画が進められていたNDL本館建築プランについて、意見を求められるなどした。
・研究会のテーマが図書館の運営とサービス全般に及ぶ中、アメリカの図書館におけるレファレンス・サービスについて、いくら文献を読んでも理解できない…アメリカの図書館員はなぜ、どのようにレファレンスサービスを提供しているか、文献では断片的で表面的な理解しかできない…日本の図書館に定着しているサービス(ではなかった)[186]
●アメリカ図書館研究調査団
・中堅図書館人グループをアメリカに派遣して図書館間協力やレファレンスサービスの実地施設をする計画。それによって、日本の図書館のレファレンスサービスを向上する。(188)
・1959年準備開始
・メンバーは、国立図書館、公共図書館、専門図書館、大学図書館から。(190)
・図書館がどうのように利用されているか、レファレンスサービスの現況、図書館間協力。(191)
・文献を読む。訪問先で日本図書館のプレゼンを英語でする準備。(191-192)
・1959年10月から2ヶ月。アメリカ全土80館を訪問。(195)
・1960年、報告書『アメリカの図書館』を刊行(197)
●成果
・『日本の参考図書』の刊行。
・レファレンスサービスにはレファレンスブックが必要で、かつそのガイドブック(ツール)が必要。(198)
・福田は帰国後すぐに参考図書ガイドの出版プロジェクトを立ち上げた。約2900点の参考図書の解題。1962年刊行。
・これは日本の図書館のみならず、世界中の図書館・研究者による日本に関する調査の基本書誌の第一歩となった。[199]
・JLA、NDLに引き継がれ、第四版は2002年。
・団員たちはレファレンスサービスを学んだところから、そのレファレンスを成立させている貸出、目録の機械化、図書館施設、などのインフラの構築にも目を向け取り組んでいった。
●日本研究支援
・日本研究の専門図書館として定まっていく。
・情報資源の編纂・出版→海外日本研究への寄与
・『日本の参考図書』英訳版『Guide to Japanese Reference Books』アメリカの日本研究図書館で、基本参考図書コレクション構築や質問への回答手引きに。(214)
・『Books on Japan』1971年刊、英語で書かれた日本関係の主題書誌。
・『Union Catalog of books on Japan in Western Languages』、国際文化会館蔵書では足りないため、都内主要図書館の綜合目録として編纂。1967年。(215-216)
・全米日本研究図書館調査(1962-1963)。福田、アメリカの日本研究図書館の調査に出かけた。4ヶ月。アメリカの日本研究プログラムの拡充前夜で、小さな日本語コレクションが各大学でどのような問題に直面しているか、日本からどのような支援が望まれているか。(218-219)
・問題は、資料があっても目録作業が遅れていること。(219)
・そこから、国際文化会館図書室が提供可能なサービスとは。発注の世話。著者書名のローマ字化などの目録の基本的情報。資料のマイクロ化。
・UCバークレーの日本蔵書の調査、購入方針計画、
●Books on Japanについて
・外国人による日本研究書
・当時Books on Japanを収集していた図書館は日本国内に…
・NDL。創立以来、収集方針の中に日本に関する外国語資料の収集が明記されている。
・東洋文庫、国際基督教大学、上智大学国際学部など。
・国際文化振興会(KBS)の図書室。
・国際交流基金(1972)、「日本に対する諸外国の理解を深め、国際相互理解を増進する」[227]
・アメリカ文化センター。占領終結後CIE図書館を引き継いだ。日本人にアメリカの情報と文化を届けるアメリカの広報センター(227)
・外国研究は外国との関係の中で行われる。…ある時台にある国で出版される外国研究書、外国に関する情報資源は、その時代におけるその国の外国に対する関心の有り様を反映している。日本の図書館でありながら外国人による日本研究書を収集していた国際文化会館図書室は、外国という鏡に映し出された日本が見える場所だった。[228]
2022年09月20日
今日の「クイズ鑑賞」メモ: 東大王2022年9月7日放送回
クイズを観るクイズを観ると言っているがクイズを観て何がどう楽しいのか、ということをたまに問われるので、クイズを観て何をどう楽しんでいるのかを言語化したメモです。
なお、本記事すべて敬称略で記述します。
「東大王」2022年9月7日放送回。
Tverにて視聴、関西は放送ないので。
https://tver.jp/episodes/epjdyp00vq
●第1ステージ「教養カルタ」
第1ステージ「教養カルタ」は、今回初登場の企画。
それぞれの解答者の前のテーブルのようなところに1〜9の番号が付いた早押しボタンが3×3に並んでいて、各番号に対応する解答の選択肢が最初に提示されており、出題された問題の正答にあたるボタンを早押しで押す、というもの。
対戦は、東大王1名×2と芸能人2名×2が交替(各問題で負けた方が交替)で、1回中4問先取(または8問終了時に得点の多い方)で勝ち、これを3回やるんだけど、(少なくとも今回は)各回で出題内容や形式が異なる、↓こんな感じ。
1回目 3ヒント形式で、該当する都道府県を選ぶ
2回目 音楽イントロ形式で、歌詞に登場する生き物を選ぶ
3回目 3ヒント形式で、該当する戦国武将を選ぶ
カルタとクイズはもともと相性がいいわけだし、違和感がない、作問がちょっとめんどくさいかもしれないけど。あと、コロナじゃなかったらボタンじゃなくて紙の札を取り合うこともできたかもですが、紙の札じゃなくてボタンが9個ある、しかも両チームで共有じゃなくて2台個別に用意されているところが、後述するとおり、戦略に影響する可能性がある。これもコロナ対策か、芸能人チームの解答者2名のあいだには身長以上の高さのアクリル板があって、これも後述するとおり影響が大きいと思われる。
解答すべき選択肢9個が最初に提示されているので、百人一首のように場所を覚えておけるか、少ない手がかりのうちにいかに正答を絞り込めるか、いや、たぶんそれよりも、提示された選択肢からあらかじめ出題をどれだけ予測できているかのほうが、戦略としては大きく勝敗をわけそう。
第1回戦(東大王鶴崎(1人のみ)対 芸能人伊沢・森迫+冨永・中間)は、3ヒントで該当する都道府県(秋田、福井…等)を選ぶ。3ヒントなので、1ヒント目はかなりマイナーで解説時に視聴者がへぇーっと思えるもの、2ヒント目で答えられる人は答えられるレベル、3ヒント目で視聴者の小中学生でも正答できそうなレベル、という段階を踏むだろうなと予想されるので、2ヒント目で絞り込めるか絞り込めないかが肝という感じ。
1問目は芸能人中間が「ペンギン」(長崎ペンギン水族館)をヒントに長崎を正答、「そこでお世話したことある」と言ってるのでロケに行ったことあるから勝てたという、芸能人あるあるなんでしょう。
3問目の2ヒント目で「幸福度ランキング1位」が出たとき、知識がはっきりしていれば「2福井」を押せたんだろうけど、東大王鶴崎は自信がなかったのか確実な3ヒント目を待ったのか、手を「2福井」の上にふわっと持って行きつつもまだ押さない、という動きをしていて、3ヒント目の「カニ」で確信してボタンを押した。たぶん福井だろうなと思いつつも全集中で3ヒント目を待ったという感じなんでしょう。
ただこれをほんとのカルタでやると、対戦相手に自分の手の動きがバレバレなので、「2福井」のうえに手を置いて準備しておくなんてことできないんだけど、前述のようにボタンは両チームで共有じゃないので、そこまではバレない、その上で可能な手の動き、ということになるのかなと。対戦時の各チームの配置上、相手の動きがどこまで見えるか見えないかも、左右することになりそう。
第2回戦(東大王後藤+河野 対 芸能人藤本黄皓+後上影山)は、音楽のイントロ〜本編が流れるので、その曲の歌詞に登場する生き物がわかったら早押し、という、楽しいやつ。選択肢は、ツバメ、ネズミ、ネコ、キリン、白馬、カモメ、カラス、ヒツジ、スズメ。
これでまず必要なのはイントロ強さに加えて歌詞内容をいかに早く思い出すことができるかで、例えば1問目の星野源「恋」なら、イントロ数秒で「カラスと人々の群れ」を素早く正答できた東大王後藤が勝つ、といった具合。
上手くできていたのが3問目で「手のひらを太陽に」が流れるも、選択肢にミミズもオケラもアメンボもないというところ。つまり、認知度の低い2番・3番の”あの部分”に登場する生き物が、選択肢の中にある、ということになる。ここで両チームの手の動きを見ていると、芸能人藤本黄皓がどちらも手をぼんやり浮かせていただけだったのに対し、東大王河野は「僕の血潮」の部分で両手を9個のボタン全体をカバーするように配置して、「血潮〜スズメ(3番)」が登場した瞬間にボタンを押す、というふうに、手をちゃんと用意していたのがわかる。芸能人チームはぼーっとしていたので、そりゃ年下の芸能人影山に「おいっ」とつっこまれるだろうっていう。
ただ、このボタン全体をカバーして何が読まれてもいいように用意しておく、というやり方は、1人でやってる東大王チームはできるけれども、間にアクリル板をはさんで2人でやってる芸能人チームにはかなり不利なんじゃないか。そうでなくても自分と逆サイドにあるボタンを押しに行くのはだいぶしんどそう。この2人態勢が「場所を分担できて有利」と言えるようになるにはそれこそ高校生クイズのチームばりの阿吽のチームワークがないと難しいんじゃないかなと思った。
その後の4問目・5問目・6問目はカット、このカットが尺の都合なのか、音楽の権利の都合でTverだけカット(なので音楽問題は鬼門)なのかは不明。このカットされた3問中で消えた選択肢が「ヒツジ」「ツバメ」「キリン」なんですが、どんな問題だったかはある程度予測できるといえば予測できる。「ヒツジ」はメリーさんの羊くらいでいいんじゃないかなと思うし、「ツバメ」はたぶん中島みゆきの「地上の星」じゃないかな、イントロも有名だし、歌詞の思い出させ甲斐がある感じの問題だと思う。「キリン」ってなんだ!?と思ったけど、「キリンが逆立ちしたピアス」一択くらいなんじゃないかしら(キリンが食べ残したピラフでもいいけど)、だとするとジェネレーション的に東大王チームはだいぶ不利な気がする。
こういうふうに選択肢から出題曲の予測もできるので、「カモメ」は「津軽海峡冬景色」一択で準備しておいてもよかったんじゃないかと思う。
第3回戦(東大王東+伊藤 対 芸能人原西中野+山本宇治原)の3ヒントで戦国武将を選ぶのがさらにうまくできていて、9人の武将の名前と肖像画が選択肢として出るんだけど、そのうち3人の名前が「???」になってる、つまり、肖像画で人物を特定しなきゃいけないという二重構造になってて、こんなんわかんのか?、と思ってたけど、この第3回戦は芸能人中野が一人勝ち状態でむべなるかなと思った。
芸能人チーム中野亨。今回の放送から導入されたという「クイズ猛者枠」なるもので、アタック25に4回出場、獲得パネル数歴代1位というクイズ業界では有名な実力者が、招へいされて芸能人チームの一員としてクイズに参戦するという。そういう趣向で今後いろんな人が登場するという感じらしい、松江の人とか栄東の人とかが出るのかしら。
閑話休題。その芸能人中野が出題5問中3問を正答して圧倒的な強さを見せたんだけど、戦国武将に関するエピソード(俗説含む)などというものは、日本で出題されるクイズジャンルとしては典型中の典型のひとつで、かつ新しい情報がそうそう増えないものであるから、こんなものはクイズというものを長年やっていればいるほど有利なので、東大王相手に従来型クイズ猛者にとって無双な舞台が用意されたな、という感じ。逆にいえば、その後の第3ステージ早押しは、従来型の読み上げクイズとは勝手が相当ちがったんじゃないかという気がする。
●第2ステージ「難問オセロ」
芸能人影山の人が同チームの他の人の解答に要所要所でこまかく「ドンマイです」「ナイスファイトです」などの声かけをしていたのが印象的だった。芸能人影山の人は、日向坂云々のアイドルながら高校でクイズ研に入ってたというガチ勢クイズキャラ(注:少なくとも自分はクイズ番組でしか見たことない、すみません)で、その文化が集団芸能活動のものなのか部活動文化のものなのかはわかんないけど、同じ頃に放送された高校生クイズでも栄東高校の人が同じように要所要所でこまめにチームにポジティブな声かけをしてたので、ああ、これってチームマネジメントとして大事なことなんだな、ということを教わりました。教わってます。日々是精進です。
同じくしてかどうかはしりませんが、このあとの第3ステージで芸能人チーム大将伊沢の人も、これまで特にやってきてたような覚えのないこまかい声かけをしてたのも印象的で、なるほどそういうのがあるのとないのとでは端で見ててもだいぶちがうなあ、と。
●第3ステージ「全員一斉早押しバトル」
東大王各者の早押しレベルが尋常じゃない(何故か、や、その良し悪しはともあれ)様子が見られる。
2問目の時事画像から国名を答える問題で、チリの鉱山近くで発見された巨大な陥没穴、を答える問題では、穴の一部とか遠景とかではなく、その付近のなんちゃない地味な草むらや地味な土壌を見るだけで正答している(注:収録時の画像と放送時の画像が同じであれば)、しかも東大王チームの複数人が同時に押している、ということは、対策としては、ニュース画像の脇のイメージを見て覚えてた、ということなので、これが”推理”ではなく”事前対策”ならなかなか極まってるな、という感じ。リテラシーに汎用性がないので。
4問目。芸能人影山が惜しい誤答をする。その直後に芸能人チーム大将伊沢が正答する。その際、同チームであるはずの芸能人影山が全身を使って悔しがる。というのを見ると、あ、ガチ勢なんだな、と思う。
5問目。調理工程の動画から料理の名前を答えるという問題で、開始数秒、卵だけで東大王後藤が「ボンボローニ」を”時事”として正答。ボンボローニは、マリトッツォの後継的流行りものスイーツで確かに時事問題として妥当な出題なんだけど、注目すべきは出題時に「料理の名前は? ※空欄を埋める形で解答」→「カタカナ6文字 ??????」という表示がなされていたこと。
このように正答の文字数等をあらかじめ示しておくことのクイズ上のはたらきを2つ挙げると、1つには正答を限定するためで、そもそもボンボローニ自体が見た目そこまで特徴的ではなく完成形見せられても「ホイップクリームドーナツ」「クリーム揚げパン」と解答されれば明確に誤答にはできない、正答が一意に定まらないのを、いやこれはいま話題のボンボローニなんだよと限定することが「カタカナ6文字」でできるということ。
もうひとつは、ていうか逆にいえば、映像を見なくても「カタカナ6文字」でわざわざクイズに出すような食品があるだろうか、というふうに候補を挙げることで正答が推測できる。というのも、そもそもボンボローニ自体調理工程の大半はただのドーナツだし完成形もドーナツなので正答しようがなく、実はこの問題自体、マリトッツォの後継とされるスイーツがあるという時事性(出題時または本放送時)無しには正答できない代物とも言えるので、東大王後藤が生卵とカタカナ6文字と時事性だけで正答したのは実は十分に理に適ったものと言える。しかし見た目には早押しがインフレしてる魔術のように見える。出題者側が「カタカナ6文字」を添えたのが、正答を限定するためか早押しを促すためかその両方かは、わからない。
関西MBSでは2022年9月に2021年5月本放送の回を放送するという謎のことをしてたけど、そこでも似たような調理工程の動画でスイーツを当てさせる問題で、芸能人富永が数秒で「マリトッツォ」を正答していて、MCの反応がへーそんなんあるんだーみたいな感じだったので、時事問題というのはほんとに時の徒花という感じがするし、そこがおもしろいところである。テロップで丁寧に「関東で2021年5月に放送されたものです」って出てたし。
最終問題のGoogleアース映像から世界遺産をこたえる問題では、東大王河野が地球押し(詳細略)で「フォントネーのシトー会修道院」を正答。正答後の解説で「標高から見てる」という謎のワードが出て、あれどういう意味だったんだろう。たしかに山間の修道院らしいけどそこまで珍しいとも思えず。明確には説明されなかった(放送されなかった)けど、「落ちる中心の位置を測れた」「対角線で」と言ってるからには、平面状の位置を数学的に割り出すのだけでなく、高さの要素もそこに加わってくるんだろうかとも思うんだけど、もうこのへんの魔術は魔術のままにしときたい気もして、ググって調べるまではしてない。
こんなふうにして観てます。
あえて言語化してみるとそれまで気づかなかったことにも気づいたりするので、言語化はすると良いですね。
2022年09月19日
2022年7月・8月のまとめ
■2022年7月・8月のまとめ
●総評
全件少なくとも端緒を、と思ってたら、端緒はつけられたけど端緒だけで終わった、という感じ。
●まとめ
・祇園祭月間がスタート。
・朝一シェアサイクルがすっかり定着。たびたび資源が枯渇する。
・朝一シェアサイクル、河原町〜祇園。
・「学術野営2022」。「レファレンス・カフェ」。
・「京都ニュースアーカイブ公開記念シンポジウム」。コンテンツ編だけでも3日いける。
・wifi電話相談室。専門家のアドバイス大事。
・折りたたみパズル・初三郎地図編。
・「「これからどうするんだ」って、これまでと同じです。対話する。議論する。そのために事実と文献を参照し合う。それを全力で支える」
・「福田なをみ自身のやってることは全然ブレてるように見えないの、あれすげえなって思いますね」
・「司書資格の有無、所属の有無(図書館員)どころか、専門性を云々する必要もなく、ライブラリアンやジャーナリストは“社会とどう向き合う“人か、を示す、ということになるんじゃないか」
・朝一シェアサイクル、柊野。
・人がいない場所だけを狙う宵山チャレンジ。(例:御手洗井)
・越境シンポ
・早朝ならすいてるかも宵山チャレンジ(失敗)。長江家を堪能。
・早朝ならすいてるかも巡行当日チャレンジ(それでも多い)。四条麸屋町等。
・帰路ならすいてるかも巡行チャレンジ(失敗)新町御池、新町姉小路の混み合い。
・「北米における日本研究とデジタル・ヒューマニティーズ」@DH2022
・朝カレー朝食
・宵山後半。京町家作事組で町家の勉強。
・パシフィックブルーイングのパシフィックIPA、これ今年の優勝。
・コロナクライシス。悔しいです。
・和田敦彦『「大東亜」の読書編成−思想戦と日本語書物の流通 (未発選書 30)』
・高めのwifiルーター設置でネット環境改善に成功。
・「情報教育と学校図書館の結びつき:GIGAスクール構想を背景として」
・「「図書館」(仮称)リ・デザイン会議」
・コンテンツの話をしようぜキャンペーン・夏。外邦図から。
・「デジタルアーカイブ憲章をみんなで創る円卓会議」第1回
・一期一会の会。動画リテラシーについて。
・「フェイクバスターズ」。顔見知りの司書なら伝わる、は、”知の人治主義”が自称医療助手や謎講演会からスライドしただけのような気もするが、それが人情だしなあとも思う。
・朝一シェアサイクル、下鴨〜一乗寺。
・ツイッターで流れてきた定食写真の値段をあてるという、偏った謎能力。
・知らん洋楽が延々流れるだけでなんも邪魔してこないFM。
・夏の連休6days。
・およそ15年ぶりの極私的“メタデータ”流通経路大改革。
・朝一シェアサイクル、御前通。
・「大学設置基準」「学術情報マネジメント」と「図書館資料のメール送信」
・朝一シェアサイクル、東大路〜豊国神社〜東福寺道。
・朝一シェアサイクル、六軒町〜太子道〜西大路。
・朝一シェアサイクル、松ヶ崎。
・ヨーロッパ企画の生配信「京都の夏の風物詩「五山の送り火」を特派員がリモート中継してみる夜」 https://htn.to/2RQd18wRkL
・パルムクライシス、ノートPC受難。→mouse2の導入。
・2022年に至ってまさかのニフティ。
・百日紅
・腰をいためる。
・亀岡で、超無敵クラスごっこ&いざたまへ出雲拝み。
・名残の比叡山。
●総評
全件少なくとも端緒を、と思ってたら、端緒はつけられたけど端緒だけで終わった、という感じ。
●まとめ
・祇園祭月間がスタート。
・朝一シェアサイクルがすっかり定着。たびたび資源が枯渇する。
・朝一シェアサイクル、河原町〜祇園。
・「学術野営2022」。「レファレンス・カフェ」。
・「京都ニュースアーカイブ公開記念シンポジウム」。コンテンツ編だけでも3日いける。
・wifi電話相談室。専門家のアドバイス大事。
・折りたたみパズル・初三郎地図編。
・「「これからどうするんだ」って、これまでと同じです。対話する。議論する。そのために事実と文献を参照し合う。それを全力で支える」
・「福田なをみ自身のやってることは全然ブレてるように見えないの、あれすげえなって思いますね」
・「司書資格の有無、所属の有無(図書館員)どころか、専門性を云々する必要もなく、ライブラリアンやジャーナリストは“社会とどう向き合う“人か、を示す、ということになるんじゃないか」
・朝一シェアサイクル、柊野。
・人がいない場所だけを狙う宵山チャレンジ。(例:御手洗井)
・越境シンポ
・早朝ならすいてるかも宵山チャレンジ(失敗)。長江家を堪能。
・早朝ならすいてるかも巡行当日チャレンジ(それでも多い)。四条麸屋町等。
・帰路ならすいてるかも巡行チャレンジ(失敗)新町御池、新町姉小路の混み合い。
・「北米における日本研究とデジタル・ヒューマニティーズ」@DH2022
・朝カレー朝食
・宵山後半。京町家作事組で町家の勉強。
・パシフィックブルーイングのパシフィックIPA、これ今年の優勝。
・コロナクライシス。悔しいです。
・和田敦彦『「大東亜」の読書編成−思想戦と日本語書物の流通 (未発選書 30)』
・高めのwifiルーター設置でネット環境改善に成功。
・「情報教育と学校図書館の結びつき:GIGAスクール構想を背景として」
・「「図書館」(仮称)リ・デザイン会議」
・コンテンツの話をしようぜキャンペーン・夏。外邦図から。
・「デジタルアーカイブ憲章をみんなで創る円卓会議」第1回
・一期一会の会。動画リテラシーについて。
・「フェイクバスターズ」。顔見知りの司書なら伝わる、は、”知の人治主義”が自称医療助手や謎講演会からスライドしただけのような気もするが、それが人情だしなあとも思う。
・朝一シェアサイクル、下鴨〜一乗寺。
・ツイッターで流れてきた定食写真の値段をあてるという、偏った謎能力。
・知らん洋楽が延々流れるだけでなんも邪魔してこないFM。
・夏の連休6days。
・およそ15年ぶりの極私的“メタデータ”流通経路大改革。
・朝一シェアサイクル、御前通。
・「大学設置基準」「学術情報マネジメント」と「図書館資料のメール送信」
・朝一シェアサイクル、東大路〜豊国神社〜東福寺道。
・朝一シェアサイクル、六軒町〜太子道〜西大路。
・朝一シェアサイクル、松ヶ崎。
・ヨーロッパ企画の生配信「京都の夏の風物詩「五山の送り火」を特派員がリモート中継してみる夜」 https://htn.to/2RQd18wRkL
・パルムクライシス、ノートPC受難。→mouse2の導入。
・2022年に至ってまさかのニフティ。
・百日紅
・腰をいためる。
・亀岡で、超無敵クラスごっこ&いざたまへ出雲拝み。
・名残の比叡山。
2022年09月17日
今日の「CA読み」メモ: SNSハラスメント、Youtube、クラウドソーシング 他
●CA2018 - デジタルアーカイブの教育活用をめぐる可能性と課題―実践を例に― / 大井将生 | カレントアウェアネス・ポータル
https://current.ndl.go.jp/ca2018
「「デジタルアーカイブを教育現場で日常的に活用する」…実践例の概説を通してデジタルアーカイブの教育活用をめぐる可能性と課題を明らかにする。」という記事。
「各実践をフォーカスした対象ごとに整理し」たというのが、わかりやすくてありがたい。(2章では「児童生徒」、3章では「学校教員と資料公開機関の関係者」、4章では「データ」)
ただ、「多様な地域資料のデジタルアーカイブ化が十分に進展していない」「「問い」や「発問」に紐づく資料がウェブ上に存在しない」という課題については、だからこそハイブリッドな存在としての学校図書館の役割、みたいにつながっていくと、最後に前向きな大風呂敷がひろげられてよかったかもな、という気はしたのです。
「S×UKILAM(スキラム)連携」「学校関係者とMLA(博物館・図書館・文書館)関係者らが協創的に資料の教材化を行うワークショップ」
「二次利用可能なデータセットとして「教材アーカイブ」を構築・公開している」
●CA2019 - 学術界とソーシャルメディア―Twitter活用の功罪と希望― / 横山広美 | カレントアウェアネス・ポータル
https://current.ndl.go.jp/ca2019
「こうした現状を、科学技術社会論の観点から整理している、科学者の社会的責任論に当てはめてみたい(1)。1つ目は研究に不正がない「質管理」、2つ目は、ゲノム編集や人工知能(AI)などの科学技術が作ったもの・作ろうとしているものの未来世代にわたる影響に責任を担う「製造責任」、そして3つ目は、専門の知見を社会に分かりやすく説明する責任を含む「応答責任」である。」
「ソーシャルメディア上には悪意あるグレーゾーン攻撃が多く存在しており、フェイク情報という形で様々な媒体で拡散されている。こうした情報を適切に排除するのに、ソーシャルメディア上で活動する研究者個人は尽力すべきだろうか。放置はできないが、研究者個人が担うのがはばかられる分量と内容であることも多い。あまりに問題が大きいときには、学会等からの発信を検討することが適当な場合もあるであろうし、何よりテレビや新聞などのマスメディアがこうした際には大きな役割を担うのが重要であろう。」
「女性研究者に対する、Twitterをはじめとしたソーシャルメディア上でのオンラインハラスメントは、世界的に大きな問題となっている(5)。これは切実な問題である。プレゼンスを発揮したい研究者が、女性であるという理由だけで男性よりも意見を発しにくいソーシャルメディア上の環境が確かにあると筆者も感じる。男性を含むアカデミアにおけるオンラインハラスメントも指摘されているが、日本ではやはり女性へのハラスメントが厳しく、改善が必要である。」
ただラストで、分断を融和し、安心して議論ができる場にする、まではよくわかるのですが、その手段が「ユーモア」というのは、あまりちゃんとした根拠が示されていなかったところからも、議論が急にふわっとしたな、という感じでちょっと惜しかったのです。
●CA2020 - 私立大学等改革総合支援事業に対する大学図書館の関与可能性 / 池宣彦 | カレントアウェアネス・ポータル
https://current.ndl.go.jp/ca2020
「「補助がもらえるような対応を脈絡なく進めるだけでは真の改革は実現できないだろう」(54)という指摘がある。さらに、設問に対する実施率の上昇に伴い、結果として合計得点による選定ラインがあがることや、毎年評価対象の項目が変わることにより私立大学は対応に疲弊しているという指摘もある(55)。一方、「補助金で促している改革の方向性は、教育関係者の間で一般に望ましいもの」」
どのくらい俯瞰で対処できるか、ということなんでしょう。
●CA2021 - 動向レビュー:公共図書館によるYouTubeを用いた動画の公開 / 水沼友宏 | カレントアウェアネス・ポータル
https://current.ndl.go.jp/ca2021
「本稿は、こうした状況において動画の公開を検討する公共図書館の参考に資することを目的として、国内外の公共図書館によるYouTubeを用いた動画の公開(4)に焦点を当て、その動向を紹介するものである」との最初の宣言通り、具体的かつとても豊富な事例が、とてもよく整理されていて、これは確かにこれから公開どうしようかと考えている図書館さんには現世利益的に直で役に立つよなあ、と思いました。
「方法や手順の解説動画としては、電子書籍のダウンロード方法やコードカッティング(9)(=ケーブルテレビや固定電話サービスへの加入をやめる)の方法」
「田原市図書館(愛知県)のように、団体等との協働により紙芝居動画を作成し、これを許諾無しに利用可能なオープンデータとして公開する」
●CA2022 - 動向レビュー:デジタルアーカイブにおけるクラウドソーシング:海外の事例から / 菊池信彦
https://current.ndl.go.jp/ca2022
こちらも前のCA2021とまったく同様に、具体的かつとても豊富な事例が、とてもよく整理されていて、これは確かにこれからどうしようかと考えている図書館さんには現世利益的に直で役に立つ、というものでした。研修・教材にも吉なんじゃないかしら。
「光学文字認識(OCR)や手書き文字認識(HTR)等の技術的進歩に伴い、わざわざクラウドソーシングのプロジェクトを行う必要がなくなる日が来るのかもしれない」
「しかし、文化機関が地域住民のみならず広くユーザに対して資料を提供し、ユーザとのコミュニケーションに意義を見出すのであれば、クラウドソーシングという手法を採用する意義は大いにある」
●CA2023 - 動向レビュー:欧米の図書館における精神障害者向けサービス / 鈴木尊紘
https://current.ndl.go.jp/ca2023
「障害者の権利に関する条約第30条1(c)では、精神障害者を含めた障害者が、健常者との平等を基礎として、他の文化施設と同様に図書館を利用する機会を有することが規定されている」
2022年09月16日
消えたローマ字とわかりやすさについて ( #本棚の中のニッポン 補遺) →追記あり
「海外の日本研究と日本図書館」に関する2022年7月・8月の動向レビューの補遺です。
特にローマ字に関する2題になります。
その1です。
2022年8月、eastlib*のメーリングリストに投稿されたところによれば。
ALA-LC Romanization Tables(ALA-LCローマ翻字表) Review Boardが、Japanese Romanization Table(日本語のローマ翻字表)の改訂版を、正式に承認したとのこと。
この改訂版での変更点について、旧版とがっつり見比べたりしたわけではないのですが、関連文献や投稿をざっくりさらったところでは、大文字の用法を英語に沿わせたり、単語分割についてNDLを参考に改訂したり、というようなことのようです。詳細は下記リンクの特に3つめにまとまってました。
ALA-LC Romanization Tables
https://www.loc.gov/catdir/cpso/roman.html
Japanese (2022)
https://www.loc.gov/catdir/cpso/romanization/japanese.pdf
2018年にまとめられた改訂の概要
https://www.eastasianlib.org/ctp/Subcommittees/sub_JpnRT/Summary_RT_Changes_2018Feb-2.pdf
2018年にいったんまとめられ提出されたのが、2021年に再提出となり、承認に至ったとのことで、それだけでも充分時間がかかったように見えますが、そもそもの検討は2011年から始まっていた、という経緯がやはりeastlibに投稿されていました。検討グループは3代にわたったようで、関係の皆さまのご努力に心から脱帽という感じです。
参考:CTP/CJM Joint Task Force on the LC Proposal for Japanese Romanization
https://www.eastasianlib.org/ctp/Subcommittees/sub_Japaneseromanization.htm
その2です。
そのローマ字に関し、同じく2022年8月にリニューアル公開されたOCLCのWorldCat.orgにある異変が起きていました。
OCLC、WorldCatをリニューアル:ユーザーエクスペリエンスの改善等 | カレントアウェアネス・ポータル
https://current.ndl.go.jp/node/46722
WorldCat.org puts the world's libraries at people's fingertips(OCLC, 2022/8/24)
https://www.oclc.org/en/news/releases/2022/20220824-worldcatorg-puts-libraries-at-peoples-fingertips.html
WorldCat
https://www.worldcat.org/
より使いやすく、より直感的に、よりモバイルフレンドリーにという三方よりのリニューアルだったようですが、よくよく見ると、旧版にはあったはずの「タイトルのローマ字表記」…言わば"a transliterated title in addition to the native vernacular title"…が、新版では表示されていません。
●旧版のWorldCat.org

●新版のWorldCat.org

●参考:FirstSearch

私自身はふだんOCLCをひくときはもっぱらWorldShareILLのほうを使ってしまってて、WorldCat.orgはご無沙汰だったので、指摘されるまで気付きませんでした。リニューアルのときちょっと見たけど、(自分の端末では)やたら全面日本語化がされてて、デフォルトで表示される書誌事項も以前に比べてさらに減ったっぽいなあ、それが素人さん向けってことなんだろうかなあ、という印象はありましたが、まさかローマ字が消えてるとは気付かなかった。
そしてこれは日本語書誌だけの問題ではなく、韓国語、アラビア語、その他の非アルファベット言語にとって同様、かつ深刻です。
このこともeastlibの投稿等で指摘されていて、実際にはFirstSearchをふだん使ってるから気付かなかった、という人も少なくなかったようなのですが、FirstSearchは高いし、やはりオープンで利用のハードルが低く手軽に使えるほうのWorldCat.orgで、非アルファベット言語の国際融通にとっては必要不可欠なローマ字表記が、無い、というのはかなり痛いですよね。まるっきり、我々日本人が日本語書誌を見るときにヨミが振られてない、のと同じなわけでして、それ、我々日本人だって即詰みますからね。
さらに、他の非アルファベット言語に輪をかけて日本語にとって困ることは、日本語ってひとつの漢字に複数のヨミ・発音が存在しますね、いくつもいくつも、だからネイティブであるはずの我々も「発音(=ヨミ/ローマ字)」の付記無しにはそれを読めない、固有名詞(人名・地名)はさらに読めない、なんなら文学系書名に使われがちな造語(「鬼滅」が例示されててなるほどと思いましたが)なんか読むべくもなければ辞書にすらない。この、ひとつの文字に複数の発音があり得る、という日本語特有の事情が国際会議等では特に理解してもらえづらい、というような話をかつて別の情報組織化系の話題で教わったことがありますが、ここでも同じ問題起こってるだろうなと思います。
本件はすでに関係者からOCLCの中の人にコメントが行っているようなので、そのうちどうなるかについては要後追いという感じです。
で、さておき、さらにここから極私的に思いを巡らすことには。
我々は日々、情報ツールをなんとかより使いやすくよりわかりやすくしようとしています。それは今回のOCLCさんのリニューアルも同じ事で、綿密なユーザー調査によるモバイルフレンドリーで直感的なユーザーエクスペリエンス、それってとても大事。その一方で、というか、だからこそ、削られていくものもあります。大きくわけて2つ言えば、新しいエクスペリエンスに譲る場所が必要、というのと、いやそもそも情報が多すぎるとわかりづらくなるから削るんだ、という考え方。
このよく見かける(ていうか私もまあ同意する)、ふつーの人にとっては情報が多すぎるとわかりづらい、だから情報や機能・サービスが過剰にならないように削る、というの、ほんとに大丈夫か?というのはどっかでちゃんと留保しておかなきゃなって思いました。たとえばNDLオンラインとかでも、なんか情報がぜんぜんなくてよくわかんないんだけど、と利用者さんに言われて、ああすみません、ここをクリックすると詳細情報がぶわっと出るんですよ、みたいなことがよくあります。難しいですよね、多かったら多かったで文句言われますしね。
でも、情報が少なめのほうがわかりやすい、ということは、たとえばじゃあ何か特定の文脈で補っているとか、その文脈が成り立っているから少なくてもわかるとか、ある特定の利用者層・利用シーンを想定している(してしまっている)から削ることができるんだ、ということなんだったら、じゃあそれってシワ寄せはどこかに行ってるんじゃないのかと。そしてそれは結局のところマジョリティ目線じゃないのかと。そこにDEI**はあるのかい、と。いうことは、削る削るに草木もなびきがちな昨今、ちょっと気をつけて考えるようにしておこうかなって思います。
* eastlibはアメリカの東アジア図書館協議会が運営しているメーリングリストで、時間差でアーカイブも見られるようなので、しばらく待てば参照していただける、かもです。https://www.eastasianlib.org/newsite/about/mailing-lists/
** DEIは、 「Diversity(ダイバーシティ、多様性)」「Equity(エクイティ、公平性)」「Inclusion(インクルージョン、包括性)」
・・・あー、書誌と場合とユーザにあわせて表示項目を変えてくるAI、とかできないかしら。
(追記 11/12)
→その後10月中旬頃に、ローマ字がWorldcat.orgに復活しました。
ユーザの声がちゃんと届いてスムーズに改善されるところが良いなと思います。
2022年09月14日
今日の「CA読み」メモ: 慶應Hathi、個人向け送信サービス 他
●E2524 - 戦争・紛争・災害とその復興期に図書館ができること<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2524
「2022年6月11日にJICA地球ひろば(東京都新宿区)とオンラインのハイブリッド形式でシンポジウム「戦争・紛争・大規模災害、そして復興期において子どもたちに図書館ができること」」
「エファは2004年の設立以来,長期にわたる戦争を経験したカンボジア,ラオス,ベトナムで教育・福祉支援事業を行い」
「図書館の運営だけでなく,図書館に置く教材を作っていく人材を同時並行で育てることの重要性」
「復興期の図書館において,その土地に失われることなく残されたリソース(図書,民話,人々の体験など)を探しだし,その土地に暮らす人たちと一緒に復興に向けた取り組み」
●E2525 - 慶應義塾大学のHathiTrustへの加盟
https://current.ndl.go.jp/e2525
これ、全文大事なやつ。
●E2526 - BOAIが20周年を記念して新たな推奨事項をリリース
https://current.ndl.go.jp/e2526
「「ゴールドOA」という文言がほぼ消滅しており,その代わり「ダイヤモンドOA」が多く用いられている。ダイヤモンドOAとは購読料も投稿料も不要であり,外部ソースからの資金援助等によって成り立つコミュニティ主導のOAモデルのこと」
●E2528 - パンデミック下の図書館と著作権法に関するIFLAの研究報告書
https://current.ndl.go.jp/e2528
「パンデミックの初期には,多くの出版社が一時的にサービスやコンテンツへのアクセス拡大を実施したが,図書館側がそれらを研究や教育活動に組み込むのに十分な期間が設けられていなかった。」
●E2529 - 個人向けデジタル化資料送信サービスの開始
https://current.ndl.go.jp/e2529
「2022年6月末現在,個人送信のユーザー数は約3万3,000人に上る」、国内公共・大学ざっくり5000館くらいとして、1館あたり6-7人の登録?
これを少ないと見るか少なくないと見るか(注:決して多いとは見えない)は、んー、あのデジタルコレクションって結局は”近代史”にとっての旨味にどうしても大きく偏ってる感はあるので、そりゃ近代史にそこまで親和性の高い人は利用者にしろ司書にしろ一部にすぎないだろうからなあとは思うものの、だとしてもやはり少ないのでは、桁レベルで。
「個人送信の実施にあたっては,文化庁とNDLの共催で,権利者団体・出版団体・図書館関係者・有識者をメンバーとする「国立国会図書館による入手困難資料の個人送信に関する関係者協議会」を設置し,送信対象資料や,利用規約・登録などの事項,提供方法について議論を行った」
「2022年6月末現在,個人送信のユーザー数は約3万3,000人に上る」
「2022年6月の個人送信の閲覧数は約35万回であった。これは,2021年度の図書館送信の1年間の閲覧数,約30万回を上回る」
●E2530 - 成人教育戦略に図書館を組み込むためには:IFLAレポート
https://current.ndl.go.jp/e2530
IFLAの意見ではないかもだけど、大いに同意↓。
「(筆者の意見として)「各国の各種図書館や国際的な図書館界が有機的につながり,全地球的な「生涯学習システムとしての図書館」をインターネット空間に構築することが必要」
「地域内の公共図書館,学校図書館が共に連携して生涯学習基盤としての情報プラットフォームをインターネット上に構築することと,実社会の図書館でさまざまな文化体験を提供する場を提供すること」
●E2531 - Data Citation : A guide to best practiceについての所感
https://current.ndl.go.jp/e2531
「一般に,論文執筆にあたって参照されるのは,こうした手引書ではなく,投稿先となる学術雑誌の執筆要項やテンプレートである。したがって,本ガイドの推奨事項や表記方法が各学術雑誌の執筆要項やテンプレートに反映されない限り,本ガイドが高い実効性をもつことは難しく」
今日の「CA読み」メモ: オンライン勉強会、学術書OA化モデル、中之島美術館アーカイブズ 他
●E2504 - 学生が自作する利用者用パソコン:高専における学生協働の例
https://current.ndl.go.jp/e2504
図書館を”自分事”と理解してもらうための協働。
「図書館の利便性向上とともに,学生の図書館に対するイメージの更新が期待できる。…自作パソコンなどの高専らしい活動も図書館と関わりがあることを学生に認識してもらいたい」
●E2505 - 国内4大学とWiley社との電子ジャーナル転換契約の締結
https://current.ndl.go.jp/e2505
勉強会、大事。
焦点を明確にし、具体的実効的に、小規模でフットワーク。
「東北大学,東京工業大学,総合研究大学院大学,東京理科大学の4大学(以下「4大学」)とWiley社は,2022年4月から2024年12月までの2年9か月にわたる電子ジャーナル転換契約パイロットプロジェクトを開始した。」
「ジャーナル購読料をAPCに段階的に移行させることによりOA出版の拡大を目指す転換契約」
「今回の転換契約の直接の契機となったのは,自然科学研究機構の小泉周特任教授・統括URAと科学技術・学術政策研究所の林和弘データ解析政策研究室長が中心となり,複数大学の図書館長や図書館職員とで「なぜ日本ではOA出版モデルの契約が進まないのか,進めるためには何が必要か」をテーマとして2021年10月に開始したオンライン勉強会であった」
「本プロジェクトでは当初から,4大学が先行することにより,他の大学ができるだけ参画しやすい形態・内容となるように意識してきた。」
●E2506 - 学術情報システムのメタデータ収集・作成方針案の作成
https://current.ndl.go.jp/e2506
これは全部大事なやつ。
「効率的なメタデータ流通を実現し,利用者が必要とする情報を統合的に発見できる環境を構築すること」
●E2507 - 図書館の今後を作る20のトレンド:IFLA Trend Report 2021
https://current.ndl.go.jp/e2507
どこで何をやるにしても常にこれを意識した言動をとるべき、という訓話。
「20のトレンド…多くが,人々の意識に問いかけ,特に不平等の深まりを危惧していたこと」
「バーチャルへのシフトにより,図書館が単なる知識管理だけではなく知識創造のセンターとしての潜在能力を発揮すること」
「公平性,多様性,包摂性の促進をより優先していくことが重要であり,様々なニーズを効果的に特定することを可能にするツールやスキルを開発し続けていく」
「図書館を最も必要とする人々が排除されることを許さぬよう,利用者にとっての障壁や偏見を生まないようにすること」
●E2508 - 米国議会図書館の新たなデジタルコレクション戦略
https://current.ndl.go.jp/e2508
「新しい」は「新しくない」に必ずなる、という訓話。
「ボーンデジタルコンテンツの収集等に関する2022年度から2026年度までの戦略“Digital Collections Strategy”」
「前計画の期間中には,オープンアクセス(OA)の単行書の収集パイロットプロジェクトの実施,データセットの収集に関するガイドラインの策定等,ボーンデジタルコンテンツの収集が進歩し,デジタル収集に関する活動が組織内で確立され,日常化し始めた」
「本戦略では「どのように収集するか」や,提供までを視野に入れた収集を支えて継続させる」
●E2509 - 2021年度第2回関西館ライブラリーカフェ<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2509
想ったようなイベントにするのって難しいですよね。
「専門家による話題提供に,専門家と参加者を交えた懇談,関西館で利用できる関連資料の展示・紹介を加えた催し…「サイエンスカフェ」にならったもの…懇談と資料紹介を通じて,参加者に更なる情報探索・知的思考へと進んでもらうこと」
「熊楠はかねてより「在野研究者」としても著名で,図書館の活用を含む「独学」の技法がその活動を支えていたと考え,今回は「熊楠」に「独学」という切り口を加えた」
「参加者と志村氏の双方から,「情報交換の部」はもう少し活発なものにできたのではとの指摘もあった」
●E2510 - 地域資料収集としての自治体資料自動収集システムの開発
https://current.ndl.go.jp/e2510
やはり要所要所で”目録”が肝になるあたり、図書館は、いや世界は”目録”でできているんよなあと実感する。
「地域資料収集の一環として,静岡県内の自治体ウェブサイトにアップロードされた要項・要領,広報誌,行政資料等(以下「自治体資料」)のPDFを自動収集するシステム」
「「どこから」,「いつ」収集したPDFか判別しやすいことである。これは収集元のドメインと同じディレクトリ構造かつ世代で管理している…ウェブサイトの更新や非公開化に伴い閲覧することができなくなる恐れがある自治体資料を,網羅的に収集し構造的に保存・管理できること」
「収集した自治体資料を用いたサービスの開発及びそれを実施する前提となる目録作成に関して課題がある。膨大な自治体資料に対し,適切な目録を作成することは容易ではない」
●E2514 - 鳥取県立図書館,IFLA公共図書館分科会セミナー参加<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2514
「今回の参加のきっかけは,IFLAの国内常任委員が同パネルの企画にあたって日本国内で医療健康・福祉分野で優れた活動を行っている図書館を探している中で当館を推薦したことであった。」
●E2515 - 大阪市立城東図書館「懐かしラノベ」関連イベントを振り返る
https://current.ndl.go.jp/e2515
「図書展示では,「#懐ラノ」で紹介された本を展示するだけではなく,「#懐ラノ」と,それを読んできた人との関係性が垣間見えるツイートを合わせて展示することで,展示された本を手に取った人が共感を覚えたり,自身の記憶を追想したりすることを期待」
●E2516 - 米国における延滞料廃止の動向:ニューヨークの事例を中心に
https://current.ndl.go.jp/e2516
「利用停止を受けた青少年の利用者カード保有者のうち80%は低所得地域に属するものだった。つまり,図書館を必要とするはずの貧困層と若年層の利用を延滞料が妨げている」
NYPL館長のマークス(Anthony W. Marx)氏「パンデミック下において,最も傷つきやすい人々があまりにも頻繁に置き去りにされていることがこれまで以上に明らかになった」
●E2518 - D2O:大学出版局と図書館の連携による学術単行書のOA化モデル
https://current.ndl.go.jp/e2518
そう、図書館はもっと”生産拠点”という自覚を持っていい。
これはすばらしい。やろうやろう。
「2021年3月,米・マサチューセッツ工科大学出版局(MIT Press)が開始」
「D2Oは,図書館の共同出資により学術単行書の持続可能なOA化を実現するモデル」
「図書館が自館のコレクションのために単行書を購入するモデルから,単行書を「世界のために」OA化するべく共同出資へ参加するモデルへ転換した」
「大学出版局と研究図書館(research libraries)が協力し,新しい学術出版のエコシステムを作り上げる大胆な実験」
「著者,読者,図書館等,どのステークホルダーにも公正な形で,十分かつ安定した資金を確保し,専門的な学術単行書をOA化するもの」
「経済的な合理性だけに依らず,多くの大学図書館が持つ2つのモチベーション,つまり自機関へのベネフィットと,より広い知のコモンズ構築への貢献の両方に応えるデザイン」
「共同出資に参加した図書館は,MIT Pressの過去出版物へのアクセスと電子書籍の割引購入が可能になる。出資額が目標に達した場合,年間約90冊の新刊専門書のOA化が実現する
何より,これまでになかった出版社と図書館のパートナーシップが築けたことが大きい」
●E2519 - 長期保存を視野に入れた学術資料の出版ガイドライン(米国)
https://current.ndl.go.jp/e2519
「米・ミシガン大学のMichigan Publishing,ミネソタ大学出版局等の大学出版局,電子ジャーナルのアーカイブプロジェクトCLOCKSS,電子学術情報アーカイブPortico等の電子情報の保存サービスに関わる組織が参加している」
「9つのキーワードとは,「埋込みリソース」「出力パッケージ」「EPUB」「計画」「出版プラットフォーム」「権利」「ソフトウェア及びデータ」「外部サービスやプラットフォームへの依存関係」「ウェブベースの出版物」」
「既存の標準等の使用を推奨していることである。例えば,書誌データではONIXやダブリンコア,フルテキストにはTEIやEPUB,引用形式ではMLAやBibTeX」
●E2521 - 地域とつながる図書館:荒尾市立図書館の新たな試み
https://current.ndl.go.jp/e2521
まず図書館が地域とつながる、なるほど確かに。
「市立図書館を市の中心拠点に位置する商業施設(あらおシティモール)へ移転し,図書館の質的向上やあらおシティモールの活性化を図ることを目的とし,荒尾シティプランは新規テナントの誘致等を,紀伊國屋書店は施設内への書店出店の検討および図書館の移転整備について市への助言を行う」
「紀伊國屋書店から,従来の公共図書館では前例のない,本格的なデジタルライブラリー設置の提案があった。」
「図書館から教育ICT化を積極的に支援していく」
「各団体や関係者からの協力や助言を取り入れた整備を行っており,前述した展示什器のデザイン及び製作は有明高専建築学専攻の学生,「デジタル学習スタジオ」については,同校情報システムコースの教職員から設置とその後の活用についての提案を受けた。他にも前述の陶板の製作を「小代焼窯元の会」,返却ボックスの製作を「少年少女発明クラブ」に依頼」
●E2522 - 大阪中之島美術館アーカイブズ情報室について
https://current.ndl.go.jp/e2522
これ、全文大事なやつ。
「海外の日本研究と日本図書館」に関する2022年7月・8月の動向レビュー -- DH2022、絵葉書・絵本、韓国図書館支援 他 ( #本棚の中のニッポン )
■デジタルアーカイブ/デジタルヒューマニティーズ
●「北米における日本研究とデジタル・ヒューマニティーズ」
https://dh2022.adho.org/japanese_studies
DH 2022東京記念レクチャーシリーズのひとつとしてオンラインで催された、Paula R. Curtisさん(UCLA)による講演。具体的な事例が豊富に紹介され、かつ課題や問題点も言及があったので、文字化・アーカイブ公開等がなんらかのかたちでされるとかなり効果的だと思うのです。
「この講演でCurtis博士は、北米における取り組みに焦点を当て、デジタル日本研究の現状を概説します。日本/日本語を対象とした学術研究とデジタル的方法論・デジタル技術が交差する場において、近年どのようなイベント、プロジェクト、出版、雇用、またコミュニティ構築がなされてきたのかを議論します。」
●京都大学・プリンストン大学共同事業による、「駿河伊達文書(中世)」の公開
・駿河伊達文書(中世)(プリンストン大学との共同事業) | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/collection/museum/surugadate-chusei
・Suruga Date Collection: The Kyoto Princeton Project
https://komonjo.princeton.edu/suruga-date/
・京都大学とプリンストン大学の共同による「京都大学総合博物館蔵古文書デジタル発信事業」において「駿河伊達文書(中世)」を公開しました
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2022-06-30
・京都大学貴重資料デジタルアーカイブ、「駿河伊達文書(中世)」56点や『御産七夜次第覚』等を公開:「駿河伊達文書」は同大学とプリンストン大学の共同事業による | カレントアウェアネス・ポータル
https://current.ndl.go.jp/node/46440
・岡田一祐「京都大学・プリンストン大学が共同で駿河伊達文書(中世史料)を公開」(「Digital Japanese Studies 寸見」第88回, 『人文情報学月報』第132号【前編】)
https://w.bme.jp/bm/p/bn/htmlpreview.php?i=dhm&no=all&m=59&h=true
駿河伊達氏に伝わる中世期の古文書を電子化公開したもの。京都大学とプリンストン大学東アジア研究部とが2020年から京大総合博物館所蔵の古文書の研究・電子化公開を共同でおこなっている(京大総合博物館の淡輪文書)。なお、プリンストン大学Thomas Conlan氏の学生が翻訳したと、プリンストンのサイト(Komonjo)にあり。
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■日本研究・教育
●Global Japan Lab
https://gjl.princeton.edu/
現代日本(人口、国際関係、環境など)に関する研究、教育、研修を分野横断的に推進する、プリンストン大学に新設されたセンター。東京大学現代日本研究センターと連携する。
要注目。
●NCCのCDDP Videoシリーズから
・The ARC Kuzushiji Transcription Support and Archiving System
https://www.youtube.com/watch?v=HuH7HcCpkHM
・Finding Premodern Japanese Primary Texts: How to Use the NIJL Database Part I - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9cSlKoyz7Gg
国文学系が依然盛ん。
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■図書館サービス・資料提供
●国際ILL/DDS
・九州大学附属図書館、韓国・ソウル大学校図書館とのドキュメントデリバリーに関する協力協定を締結 | カレントアウェアネス・ポータル
https://current.ndl.go.jp/node/46555
NII-KERISの日韓グローバルILL終了後、「職員交流等を行ってきたこれまでの信頼関係を活かし、個別にソウル大学校図書館と新たなドキュメントデリバリーの協力関係を結んだ」とのこと。複写の相互無償。
・ハワイ大学マノア校図書館との文献コピー・図書貸借無償サービスについて | 琉球大学附属図書館
https://www.lib.u-ryukyu.ac.jp/info/9787/
2011年から両館間で無償としてきた文献複写・図書貸借を、今後も継続する再締結、とのこと。
しかし、こうやって個対個でやらなくて済むためのグローバルなフレームワークだったと思うのですが…。
●電子書籍サービス
・Japan House Los Angeles - OverDrive
https://japanhousela.overdrive.com/
・The Japan Foundation - OverDrive
https://jf.overdrive.com/
・Japan Foundation Los Angeles | JOIN JFUSA DIGITAL LIBRARY
https://www.jflalc.org/libby
・「日本の資料への無料アクセス」
https://rno.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%B3%87%E6%96%99%E3%81%B8%E3%81%AE%E7%84%A1%E6%96%99%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9/
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■日本資料
●「在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究」
https://collectionresearch.hatenablog.com/
「世界各地の日本関連文物史資料についての所蔵状況(内容、調査状況など)についての基盤情報」を紹介するブログ、とのこと。2021年から、現在48記事。
●ハワイ大学マノア校の絵葉書コレクション
・「Bringing Life to Historical Postcards: The University of Hawaiʻi at Mānoa Library Japan Collection」
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-Bringing-Life-to-Historical-Postcards
2017年にハワイ大学マノア校図書館に収蔵された日本の絵葉書コレクションについて、来歴、電子化公開、メタデータ作り(というか内容研究)について詳細に解説。熱意オブ熱意という感じで、やる気の違いを見せつけられる。
●「The World of the Japanese Illustrated Book」
・The World of the Japanese Illustrated Book: The Gerhard Pulverer Collection | F|S Pulverer Collection
https://pulverer.si.edu/
・Resource: The World of the Japanese Illustrated Book | What can I do with a B.A. in Japanese Studies?
https://shinpaideshou.com/2022/08/24/resource-the-world-of-the-japanese-illustrated-book/
17世紀〜20世紀(近世・近代)の日本の絵本古典籍2000冊以上からなる、スミソニアンPulverer Collectionのデジタルアーカイブ。
画像公開はもちろん、リッチなメタデータ、研究者による研究エッセイ、豊富な解説動画コンテンツ、他に用語集、関連書誌など。充実オブ充実という感じで、本気の違いを見せつけられる。
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■ツール、レファレンス
●「Bibliography of East Asian Periodicals (Colonial Korea 1900-1945)」
・Bibliography of East Asian Periodicals (Colonial Korea 1900-1945) - The University of Chicago Library
https://www.lib.uchicago.edu/collex/collections/bibliography-of-east-asian-periodicals-colonial-korea-1900-1945/
占領期朝鮮半島(1900-1945)で刊行された雑誌の書誌データベース。
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■コミュニティ
●「Specialist Spotlight: Izumi Koide」
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Specialist-Spotlight-Izumi-Koide
●「International Network for Korean Studies Librarians (INKSLIB)」
https://inkslib.nl.go.kr/IN/main/index.do
世界の韓国学図書館・司書を支援するリソースやネットワークのためのwebサイトを、韓国国立図書館が整備している、というもの。
webzine(https://inkslib.nl.go.kr/IN/contents/I50406000000.do)もあり。
これは学ぶべき。
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■社会問題
●「我が国の立場と相容れない、又は我が国に関する事実誤認に基づく記述についての情報提供」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/pds/page22_003885.html
寒い。
●技能実習制度
・技能実習制度、本格見直しへ 政府、有識者会議で議論|全国のニュース|京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/845831
・日本の技能実習で「強制労働」 米報告書、政府対応を批判 | 共同通信
https://nordot.app/922244075339120640
これは要後追い。
●コロナ入国問題
・Japanese Studies Threatened in the Pandemic Era
https://www.nippon.com/en/in-depth/d00818/
・人文科学の衰退とパンデミックがもたらす “知日派人材” 育成の危機(nippon.com) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/9288afc0a9a9b8280700d14ff084787c905abac4
・72% of survey respondents blame border controls for not visiting Japan
https://www.japantimes.co.jp/news/2022/08/23/national/survey-entry-controls/
・Survey about Japan's border restrictions and the state of Japanese studies
https://networks.h-net.org/node/20904/discussions/10664907/survey-about-japans-border-restrictions-and-state-japanese
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■文化・エンタメ
●動画「日本のマンガ文化 / MANGA Culture in Japan」
https://www.youtube.com/playlist?list=PLR82S6MFHeImd9oTLVvQgfdZM3XWdKRFL
国際交流基金作成の、日本のマンガ文化を紹介する動画5点。音声は日英、字幕は英仏、中韓からアラビア語まで。
内容は、編集者と雑誌、制作現場、ミュージアム、二次創作と活用、少女マンガなど、一歩踏み込んだトピックスという感じで、もうちょっと詳しく知りたいという方に吉な感じ。