2022年12月31日

『アルコ&ピースの「妻、小学生になる。」に乾杯!』(2022年の「コンテンツ掘り」)


 今年これがすごかったというアルファコンテンツ(http://egamiday3.seesaa.net/article/495546013.html)の中から、特によかったのを別記事でというののその3、ドラマ部門です。

 今年もドラマをたくさん堪能させていただきました。
 無理ゲーパズルに三谷史観とドS脚本が炸裂する「鎌倉殿の13人」。
 ラジオをじっと聴く数分間をアップで演じ尽くした「カムカムエブリバディ」。
 おかしみとあたたかみ&緩と急&饒舌と寡黙のないまぜが心地よい「おいハンサム」。
 すこしふしぎ&ハートウォーミング&天才演技力子役が同居する「妻、小学生になる」。
 まさにそういう岸井ゆきのとそういう高橋一生が見たかった「恋せぬふたり」。
 ほんとにリノベしてるという信じ難い所業の「魔法のリノベ」。
 ほんとに男性化したかと見紛う役者魂の「個人差あります」。
 観劇分不足を満たすシットコム「ジャパニーズスタイル」。
 自分史と本人役と業界話が楽しい「拾われた男」。
 料理が過度に演出されないのがリアルな「作りたい女と食べたい女」。
 そして、これでもかというくらい丁寧に対話と情景を描く「silent」と、落としどころが最難の課題だった「エルピス」。

 ところがそんな中で、わざわざ別記事立てて掘ってみようとするのが、ドラマ本編をさしおいてTVerのスピンオフ動画・「アルコ&ピースの「妻、小学生になる。」に乾杯」です。
正直、今年のドラマ関連ではこれがダントツでおもろかったので、ちょっと掘ってみます。
 なおすでに配信終了してるので、下記記事あたりをご参照ください。

・アルコ&ピースがビール片手に『妻、小学生になる。』に乾杯!ミニ番組をTVerで配信!| TVerプラス - 最新エンタメニュース
 https://plus.tver.jp/news/tbstopics_110376/detail/

 ドラマ本編『妻、小学生になる』は、事故で亡くなった妻がなぜか小学生に生まれ変わって家族の前にあらわれる、というもので、すこしふしぎな設定に加え、家族やその周りの人々とのハートウォーミングなふれあい的なもの、そして何より、ほんとに大人の女性がのりうつったとしか思えない圧倒的な演技力の子役の人、いや、ほんとによかったんですよ。



 そのドラマ各話の放送後に、視聴者と同じくドラマを見た芸人コンビ・アルコ&ピースのふたりが、内容や見どころ、今後の展開などをああだこうだと駄弁りあい、それをもって番宣動画とする、という企画が今回掘ろうとしている『アルコ&ピースの「妻、小学生になる。」に乾杯!』という、KIRIN提供・TVer限定配信コンテンツです(「でした」)。

 こんなふうに書くとまあ、タレントが適当にコメントなりトークなりしてるくらいの、ありがちなバラエティ企画なんだろうな、というふうに思えるし、実際自分もそう思いつつなんとなく見る機会があってふわっと見てたのですが。

 そのアルコ&ピースのおふたりがドラマを見て語る内容が、たとえばこんな感じ。

 「第1話だけで完成された1本の映画のよう」
 「ファンタジーを日常のリアリティに落とし込む、役者の力」
 「堤真一の、(妻の生まれ変わりを)信じたい気持ちと信じられない気持ちがグラデーションをなす演技」
 「回り出す風車のカットが、家族の再生の始まりを表現している」
 「ハプニングで箸袋が落ちても、自然に受けてるし撮り直さず採用しているところから、撮影現場の雰囲気の良さが伝わる」

 ……えっ、これ、めちゃめちゃガチのドラマ評じゃないですか。
 このふたりってふつうの芸人さんじゃないの、何者??

 ってちょっとプロフィール確認しにいきたくなるくらい、演技や演出、人物描写、セリフやBGMや伏線らしき細かいところまで、観察眼が鋭く読みが深く、しかもそれをしっかり言語化して、親しみやすく分かりやすい感じでしゃべってくれるもんだから、一度堪能した各話の再堪能が始まるわけです。「ああそうそう、あれって自分もそう思った」から、「あーなるほど自分では言語化できなかったけど確かにそういうことだな」、果ては「え、マジか、そんなんぜんぜん気づかんかったぞ」まで。
 さらに言えば、そのコメントをしてるのが演者・スタッフのような中の人ではなく、自分と同じ鑑賞者サイドの人らっていうところがもうひとつ大きな肝で、急な展開や謎に心が揺さぶられる、人物に感情移入する、ちょっとしたことを深読みしようとする、次回が楽しみで仕方ない、そういったあたりを同じ高さの目線で駄弁ってる。映画ドラマのコメンタリー的なコンテンツってそこそこあちこちで見かけるけど、こんな贅沢かつしっかりしたコメントが、しかも鑑賞者サイドから聞けるのって、実はなかなか無いんじゃないかしら、っていう。

 それでいてじゃあ、本気深掘り一辺倒の話しかしてない、なんてことも全然なく、おふざけやまぜっかえしや脱線も同じくらいちゃんとあるし、ありがちなちょい役出演企画や、それをどっきり仕立てにするようなのもあるので、本気のドラマ評とおかしみなトークとが、
自分も観たドラマを、毎話ごとふまえて、たっぷり15分程度やってくれる(25分枠中、ダイジェスト10分、トーク15分くらい)。

 ですから、端的に言えば。
 すべてのドラマについて、見たあとで、このふたりとしゃべりあいたい。
 そういうコンテンツです。

 です、じゃない、「でした」。
 配信終わっちゃったのがすごく残念なだけでなく、いや、このふたりによるこの動画、これは毎シーズンどれかのドラマでやってくれたらよかったのになあ、と。
 またぜひお願いします。 

posted by egamiday3 at 20:52| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ヨーロッパ企画の生配信』「送り火中継」編(2022年の「コンテンツ掘り」)


 今年これがすごかったというアルファなコンテンツとしてリストアップ(http://egamiday3.seesaa.net/article/495546013.html)したものの中でも、これもうちょっと詳しく「よかった」と言いたい、というものを掘ってみた、その2です。

 ヨーロッパ企画の一愛好者としては今年も数多くのコンテンツを堪能させていただき感謝しかないのですが、『魔法のリノベ』、「藪の中の旅」、「俺のラジオ」、『あんなに優しかったゴーレム』京都公演、『合コンに行ったら女がいなかった話』第7話、等々と枚挙に暇がない中でも、これはとてつもなく秀逸だったなというかここ数年でも一番に推したいと極私的に思ったのが、Youtube生配信での五山送り火中継なので、ちょっと掘ってみます。

 【生配信】京都の夏の風物詩「五山の送り火」を特派員がリモート中継してみる夜 - YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=svGja1QDVDg




 コロナ禍以降にヨーロッパ企画がYoutubeで生配信をおこなってきていたそのコンテンツのひとつで、2022年8月16日、京都で五山の送り火(これも3年ぶり)がおこなわれるのを、大・妙法・舟形・左大・鳥居の5箇所にメンバーたちが出向いていって中継し、それをヨーロッパハウスのMC(上田・石田)2人がまわしていく、というもの。それだけ説明するとまあまあなんとなくそれっぽい中継動画のように思えてしまうのですが、さて、この当日京都にいらっしゃった方はご存知でしょう、当日点火直前に京都市内を突然の豪雨雷雨が襲ってきて、え、これやるの無理なんじゃないの?と思えるほど強烈だったのですが、それでも一部遅れで実施されることになり、結果どこが何時に点火するかが全然わからずツイッター頼りという、それだけでもなんとなくこの中継イベントはハプニング含みになってしまうのではと期待される(期待するのかw)わけです。
 それでもって実際に5箇所からの中継が始まってみると、中継者のキャラやスタンス・状況が見事なまでに5者5様、バランスよくバラけており、完成された「中継コント」合戦のようになっていて、最初のうちこそヘラヘラ見てたんですが、途中からこれヤバいぞ、今年の第1位コンテンツじゃないか、とちょっとビビリはじめたくらいだった、という。
 その5者5様っぷりが、以下。


「大」(中川・亀島)
屋根無しの路上だったため豪雨でずぶ濡れになり、府立医大のビルとビルの間から見える大の字(ていうか、他に場所あったろうに…)、しかも遠くて小さく、なぜかスマホのカメラの拡大もできないのを、一生懸命撮影しているという。
これは「悲惨な中継」パターン

「妙・法」(酒井)
少しでもよく見える場所を求めて、高野川べりや北山通をあちらへこちらへとアグレッシブに移動する。妙と法どちらもしっかり見える位置を探してるから、まあまあの距離のはず。
「アクティブな中継」パターン。

「舟形」(藤谷・ヒロシエリ)
山を望む高層階のベランダから、バッチリと決めた浴衣姿で、雨の心配もなく、映像も鮮明で、コメントもフリーアナウンサーかのようにわかりやすく安心感。
「フォーマルな中継」パターン

「左大」(角田)
なぜかカフェでコーヒーを飲んでて、ほぼ無言で、たびたびシュールにふざける。カフェにいるうちに点火が始まっている、道がちがう、横断歩道を渡る一瞬だけで映そうとする(西大路の感じわかるけど)。さらにふざけて無関係な看板を映す。
「終始なんかズレてるやつ」なパターン。

「鳥居」(中田)
鳥居が映る位置にスマホをセットし、自分は快適な自室にいて、映像をリモートで確認しながらリポートしよう、という技術を駆使した中継をおこなう。ただ、ずっと同じ位置に同じような種火らしきものが映ったままで、点火したはずの鳥居が映らず終わるというオチがついた。
「テクノロジー(失敗含み)」のパターン。


 あまりにも見事にきれいなバラけかたをしているので、台本あったんじゃないかとちょっと疑ってしまいたくなるくらい。またそれを受けるMC側も、ツイッターやチャットの情報を懸命に追って指示を出したり、逆に5箇所からの呼びかけに翻弄されたり間に合わなかったり、送り火の美しさをコメントしつつボケを拾ったりと、これもまたよくできたコントの様相を呈していて、なんというか、この人たちって20年前からこんな感じだったよなあという”ヨーロッパ企画らしさ”を堪能したアルファコンテンツでした。人さまに(DVDや番組以外で)おすすめするなら、このリンクかも。

posted by egamiday3 at 20:00| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『日米交流史の中の福田なをみ』(2022年の「コンテンツ掘り」)


 今年これがすごかったというアルファなコンテンツとしてリストアップ(http://egamiday3.seesaa.net/article/495546013.html)したものの中でも、これはもうちょっと掘りたいと思ったものを「コンテンツ掘り」メモとして。の、その1です。


 小出いずみ. 『日米交流史の中の福田なをみ』. 勉誠出版. 2022.
 https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=101275

日米交流史の中の福田なをみ: 「外国研究」とライブラリアン - 小出いずみ
日米交流史の中の福田なをみ: 「外国研究」とライブラリアン - 小出いずみ


 以降、「福田なをみ」については敬称略です。(お会いしてみたかった)

 本書については、お世話になっている方の博論由来のご著書でもあり、内容も自分の興味関心どストライクな上にこれまで得難かったものなので、たまさか書籍紹介の寄稿を依頼されはしたもののそうでなくたってがっつり読みます、それはそれは、という感じで、その書籍紹介文(下記)やメモブログだけでは吐き尽くせなかった思いをちょっと掘ってみます。

・江上敏哲. 「図書館員の本棚 日米交流史の中の福田なをみ : 「外国研究」とライブラリアン 小出いずみ著」. 『図書館雑誌』. 2022.9, 116(9), p.565.
 https://cir.nii.ac.jp/crid/1520293434332241792
・「本読みメモ『日米交流史の中の福田なをみ』:第1章 日本の中のアメリカ、アメリカの中の日本」(egamiday 3) ほか
 http://egamiday3.seesaa.net/article/489861940.html

 まず、時節柄「カムカムエブリバディだ」って思いましたよね、(1907-2007)だっておっしゃるから特にそう思ってしまう。しかも1人で。で、舞台は日米の図書館。この人の歩みをたどるように読み進めていくのが、ワクワクするんだけど、終わっちゃうのもつらいし、的な。時代や舞台からか、あの人やあの機関も出てくるし、あの出来事や時代背景も関わってくる。図書館学的に言うとあれがこうつながってくるのか、という気付きもたくさんある。福田なをみ自身、劇的に順調な活躍を見せるところもあれば、いいところで上手くいかなかったりもする。印象的な行動や発言もたくさん出てきて、すごく魅力的な人物に思える。(それひとつひとつ挙げてったら来年の鬼が笑いそうになるので、上記ブログメモに譲りますが。)
 と言いつつ、それは”福田なをみ”を軸に読んでいけばそうだ、ということで、本書は博論をもとにしつつ福田なをみを主人公にして書き直した、という説明があるので、じゃあこれ博論のほうの構成で読むとまた違って見えてくるのかしら、とそちらのほうも気になるところではあります。
 というのも、実際に本書を読んでみたら、福田なをみの足跡に沿いつつ、要所要所で”それに関連して言えば…”的な流れで個別トピックが登場し、それが全体として通史のようにありつつ主題史・個別史っぽくもなっているので、なんていうんでしょう、人物評伝としても魅力的な描き方だし、歴史物語としても読み応え充分だし、研究調査としてもがっつり勉強になるしで、こんな大部の文章の中でそんな多面性が同居して喧嘩せずまとまってるの、すごくない? っていう。文章、調査は言うに及ばずして、その構成が。

 その福田なをみについて、あたしも名前は存じておりましたが、じゃあ何を読めばその方のことがわかるんだろうというのもよくわかっておらず、というのも本書によれば、生い立ちや若い頃について知る人も少ない、さらにご本人が自分であまり文章を書き残さなかったらしく、「半ば伝説の人になっていた」とまで言われている。そういう人物のことを著者は、それでものこされた記録文献類から復元していくわけですが、じゃあその記録文献類ってどこにあるのといったら、アメリカ側の図書館やアーカイブの中にある膨大な資料群の中に点在しているわけですよね。それを丹念に拾い集めては、丁寧に(拝読した印象では、決して急いたりすることなく)復元していく。その、丁寧な”手つき”が、本書の見習うべき一番のポイントだな、って思たです。本書に載る大量のデータ・表なり、注の膨大な参考文献を目撃すると、最近ブログ書く体力落ちてきたなーなどとなまっちょろいこと言ってるの恥ずかしくなる。
 例えば、ロックフェラーアーカイブセンターに福田なをみの提出したレポートがのこされていて、そこには、「もっと大勢の日本の図書館員がアメリカに来てアメリカの図書館学の基礎を学び、効率よく組織された典型的な図書館をいくつか観察できれば、日本の図書館学に多大な貢献となるだろう」みたいなことが書いてあった、なんていうのは、研究調査面で言えばそんなん発掘してきてるのすげえなって思うし、かつ、え、それって戦後の研究調査団の”伏線”じゃないか、っていうのもまたすげえなっていう。

 さて、福田なをみの言動や業績、ひとつひとつを細かく取ればどれもすべて学ぶべきになってしまうのですが、大きく言えば(上記の書籍紹介文にも書いたことですが)やはりその「ぶれてなさ」かなと思うわけです(ご本人にしてみればぶれてることもあったかもですが、学ぶ側としてはそう学びたいということで)。
 100年のうちに、日本とアメリカ、つまるところこの世界は、揺れ動きもしたし緊張関係にもあったわけで、図書館だって資料だって海外研究だって安寧平和なきれいごとの中だけにいられたわけでもなく、異文化理解が敵情把握や占領政策にもなっていったわけですが、そんな中にあって福田なをみという人は、日本にいようが米国にいようがご時世がどうであろうが常に”ライブラリアン”然としていらっしゃるように見える、それってなんていうんでしょう、本質としての「知の交流」が持つ力を信じていたからなんだろうな、と。そこを絶対的に信じているから、ぶれずに、資料を収集し利用可能なように整理する、蓄積された情報の中から知を編纂したりパスをファインディングさせたりする。そこを絶対的に信じているから、制度や時勢の困難にもぶれないし、それどころか国や言語のちがいをまたいで案内役にすらなったりしている。
 ああ、そっか、そうだよな、ほんとに知・情報・図書館の力を信じてたら、それ、できるはずなんだよな。っていう、自己反省です、結果。福田なをみが対峙してきた100年の艱難辛苦を思えば、DXもコロナもカルトもフェイクも世界情勢も、まだ何か、立ち向かうべき余地はどっかにあるはず。はったりでも「ある」と思ってないと、なんか福田なをみさんに顔向けできんな、と。
 というふうに、最終的に敬称をつけてしまいつつ、思いを新たにする感じです。

 というのは多少大上段にしろ、本書に登場する話題はほんとに多種多様で、そのうちのどれかは刺さると思うので、もっと手軽にたくさんの人に読んでいただきたい、って思います。

 なお、参照すべき情報が満載の本なので、こういうのこそ電子書籍で全文検索可能にしておいていただきたいのです、これは勉誠さん宛て。

 なおなお、今年のもうひとつのアルファコンテンツ、『大東亜』については後日書評が出る予定なので、そちらで。

posted by egamiday3 at 19:59| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

極私的・egamiday十大ニュース 2022


 今年もやっぱり、何をやってたかという印象がこれといってなくなってしまってるのは、あれかな、不確実要素のせいで活動の軸が定まらないからなのかな、などと自己分析含みででも無理くり振り返ってみようという年末企画。なお”十”というのは抽象的概念のようなものです。


●egamiday氏、15年ぶりに炊飯器を購入

 コロナ禍の余波ですっかりお弁当作りが定着したegamiday氏。実はもう15年の間、自宅で炊飯器を持っていなかったのを、今年年頭にやっとこさ購入したとのことです。いわゆるプレミアムなタイプのものではない通常レベルのものですが、さすがに15年経つとそれなりの技術革新があったようで、高速炊飯がびっくりするほど速い、高速で炊いてもびっくりするほど美味い、高速で半合だけ炊いてもびっくりするほど美味い、さらには無洗米がびっくりするほど便利、といまさらのように感動しているようです。一方で、保温機能のほうはなぜか進化しておらずダメダメで、あれはなんでしょう、わからないもんですね。ちなみにブンブンチョッパーも導入して産業革命が起こっています。


●egamiday氏、朝一シェアサイクル生活の不思議

 コロナ禍でウォーキング付いていたはずのegamiday氏でしたが、今年に入ってなぜかにわかにシェアサイクルを活用し始めた模様です。徒歩ではさすがに通勤に間に合わない距離を、自転車ならコロナ禍の混み合うバスを避けることができ、かつ駐輪場契約料より安い、何より自宅まで乗って帰る必要がないのを良いことに、平日の通勤だけでなく、休日の早朝に京都市内を走ってはひと汗流す、といった具合で連日のサイクリング生活。そのせいで、自宅近くの拠点から資源が枯渇するという問題まで発生していますが、当の本人は呑気なもので「徒歩では気づかなかった高低差のエグさを思い知った」「サルスベリがこんなにあちこちに植わってるとはきづかなかった」などとのたまい、夏の終わりには亀岡の郊外を息を切らしながら駆けまわるなど、超無敵クラス気取りか、と言わんばかりの活用ぶりでした。ただし、残念ながら冬将軍の到来には勝てなかったようで、しばらくは室内のエアロバイクでちゃんと運動してください。


●egamiday氏、2年半ぶりの近畿脱出

 昨年は364日以上を京都市内で過ごしたegamiday氏でしたが、今年6月の波間を縫うようにして、2年半ぶりの近畿脱出に成功、吉備国某所に出没した模様です。これについてegamiday氏は「会ったらスッと日常に戻った。飲んだらすぐ体内に吸い込まれてなくなる生理食塩水みたいだった」とあいまいな証言を繰り返しています。


●egamiday氏、自宅のネット環境改善に成功

 かねてより、自宅のネット環境が貧弱、ていうか激遅、どこがハヤブサだ下手すりゃモバイル以下じゃないか、といった具合で、コロナ禍のオンラインミーティングもままならない風が吹く状態でしたが、今年に入って改善のメスを入れることに成功した模様です。きっかけは某ミカカ社からの一本の営業電話で、だいたいそういうのって無視してブチッと切るだけしかしないのですが、そういえば自宅ネットが遅いのでなんとかならないかとぽろっと相談してみたところ、後日、ルーターはこう、ケーブルはこう、プロバイダーはこう、と専門部署からの丁寧なアドバイスを受けるにいたったのでした。やっぱあれですね、専門家の意見をちゃんと聞くっていうのは大事だし、その専門家がこっちにわかるレベルの平易な説明をちゃんとしてくれるっていうのも大事ですね、自分の業務に活かします。結果、某ミカカ社に何か追加の契約をしたわけでもなんでもないのですが、某○○○ロが増えてるからという天パの人がそそのかすのにうっかり乗らなくて済んでよかったよかった、という意味では営業成功のようです。


●egamiday氏、Zoomで呼びかけガン無視事件

 クローズドなNDLミーティングやEAJRSリスボンでのリモート司会、なんで私がJPCOARにやなんで私が円卓会議にへの登壇、ニコニコ美術館での低音ボイスなど、ぼちぼちとしたオンライン活動のegamiday氏でしたが、年の瀬もおしせまりつつあった12月の「『闘う図書館』著者と語らう会」において、司会・著者その他の人々からの呼びかけを何故かガン無視し続けるという事件を引き起こした模様です。これについてegamiday氏は「バスの中でスマホで視聴していたら、途中でバッテリーが切れた。帰宅して充電後に再入室したら、急に指名されてふわっとコメントした。後日アーカイブ動画を見たら、いろんな人から名前呼ばれてたので、肝が冷えた」と弁明しています。まあそんなことはどうでもよくて、『闘う図書館』、たくさん勉強になるのでオススメします。


●節目の年のegamiday氏、ひっくるめて「自分なりに生きる」ということを考えてました

 絶対値としても、「15年周期」としても、「25年周期」としても、さまざまな意味で節目の年を迎えたegamiday氏。とはいえ、これといったことをモニュメントのように高々と掲げたわけではないのですが、なんというか、ひっくるめて「自分なりに生きる」ということをなんとなくずっと考え続けていた感じの2022年でした。街を歩くと思索が進むんです。
 これはぼんやりしたトピックなので、以下、それっぽいキーワードだけ羅列しておいて終わる。要するに自分のためのメモです。
 朝歩きで味わう町の人々の暮らし
 にわかにおうち時間づく
 水道クライシス
 めっちゃうらやましがられる
 縫い物
 レファレンス・カフェ
 お家さんプロジェクト
 ライブラリー(タグ)
 ライブラリアンやジャーナリストは“社会とどう向き合う“人か、を示すもの
 できることは、やったこと



 以下、次点です。

・egamiday氏、ハイブリッドが定着する。
・egamiday氏、定食写真の値段をあてる謎能力。
・egamiday氏、コンテンツの話をしようぜキャンペーン実施中。
・egamiday氏、15年ぶりの極私的“メタデータ”流通経路大改革中。
・egamiday氏、起きたらノートPCの上に溶けたパルム事件。
・egamiday氏のツイッター、○○○○氏、○○○○氏、○○○氏にフォローされてておののく。

posted by egamiday3 at 09:08| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

極私的流行語大賞 2022


・一隅を照らす
・ハイブリッド
・お家さんプロジェクト / ライブラリー(タグ)
・「図書館の究極の使命は、次の戦争を起こさせないこと」(メールマガジン「オルタ広場」)
 https://www.alter-magazine.jp/index.php?%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E3%81%AE%E7%A9%B6%E6%A5%B5%E3%81%AE%E4%BD%BF%E5%91%BD%E3%81%AF%E3%80%81%E6%AC%A1%E3%81%AE%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%82%92%E8%B5%B7%E3%81%93%E3%81%95%E3%81%9B%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%93%E3%81%A8
・「よぉし。心を動かそう。それが、僕らの仕事だ。」
 https://twitter.com/egamiday/status/1498256268829818882
・命が宿った。
・降り注ぐ巡航船
・剪定 / アジサイ
・朝一シェアサイクル / 超無敵クラスごっこ
・福田なをみ / 大東亜
・三谷さん
・「成果を求めるのではない。けど、我々は言葉で生きるのだ」
・「できることは、やったこと」
・江上ポエム
・コンテンツの話をしようぜキャンペーン
・wifi / nifty
・土井善晴
・クイズ鑑賞
・DEI
・「そういうデジタルアーカイブを目指さないんだったら、デジタルアーカイブ立国なんかやんなくていいって、わりと本気で思ってます。」

(次点)
・名ばかりDX


posted by egamiday3 at 08:58| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

極私的・今年のアルファコンテンツリスト 2022


 自宅の”アルファ本棚”と称する本棚に置いておきたい極私的アルファ級のコンテンツを、書籍メディアに限らずリストアップした、My Favorite Things。と毎年言いつつ、そんな本棚なんかほんとにあるのかという謎も含みながら。
 なお、注釈を付けているうちにもうちょっと掘りたい衝動に駆られたものについては、別途「コンテンツ掘り」メモとして記事立てされる予定のようです。良きものを良いと言う。


●『京都と近代 : せめぎ合う都市空間の歴史』《書籍》
 年末から年始にかけて。一番知りたいけど知らない時代の一番知りたい話が丁寧に書いてあって勉強になったの。カバンに入れて毎日バスの中でちびちび読んでて、ふと顔を上げると、そこで説明されているまさにその地をつぅーっと走ってる、っていう感じが、ものすごく贅沢で満たされた時間だったのでした。(なので、できれば電子書籍で出ててほしかった)
・京都と近代 中川 理(著/文) - 鹿島出版会 | 版元ドットコム
 https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784306073166

京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史 - 中川 理
京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史 - 中川 理


●『いきなり本読み!』の「来てけつかるべき新世界」編《演劇/動画》
 配信にて、昨年末に駆け込みで。舞台上でその場で配られた台本を、演者がその場で理解しその場で読んでその場で再現する、というもの。なので、すごい俳優ってまず読解力がすごいんだな、というのがよくわかっておもろかった、全体像がまだ見えてなかろうに口調・感情は確かにその通りっていう。
・岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京芸術劇場」
 https://www.ikinarihonyomi.com/
・"Ikinari Hon Yomi!” in TOKYO TATEMONO Brillia HALLOctober 2nd, 2021 - YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=EDI_63aanjc




●『鎌倉殿の13人』《ドラマ》
 言わずと知れた、言えば言うほど言い足りなくなるので、もう簡単にしか言いません。
 三谷史観とドS脚本が炸裂なのは毎度ながら、史実と創作の難解パズルが極まっており、史実で決まってることがあって、史実でわかってないこともあって、当時の思想風習もあって、その中で現代視聴者に無理なく届く人間心理と、悲も喜もある展開を、既出のキャラの人物像を壊さないように組み立て上げ、さらに数ヶ月尺の今後の展開への伏線も張らなきゃいけない、無理ゲー過ぎるだろいうと。そのうえで歴史にうるさい視聴者に向けて、これが自分の解答編だ、って開陳するの、パズルを創るのが上手い作家は何人かいるけど、この人はさらに加えてパズルを解くのが上手い人なんだな、と。
 参考文献『頼朝の天下草創』(講談社)を横に置きつつ。

頼朝の天下草創 (日本の歴史) - 山本 幸司
頼朝の天下草創 (日本の歴史) - 山本 幸司


●『おいハンサム!!』《ドラマ》
 特に気持ち入れずふわっと見てたんだけど、テンポ良く掛け合いや場面転換が進むかと思いきや、蕎麦屋のおかみさんの客さばきをびっくりするほど長々と映してるあたりとか、多く説明せずに居酒屋の別席の女性が礼を言って立ち去るのとか、おかしみとあたたかみ、緩と急、饒舌と寡黙がないまぜで、単におっさんが古い価値観を押しつけに来てるだけではなくなってるという感じにちゃんとなってて、存外によかったやつ。
・おいハンサム!!
 https://www.oihandsome.com/




●『恋せぬふたり』《ドラマ》
 まさにそういう岸井ゆきのとそういう高橋一生が見たかったんだ、という感じのやつ。
 またあの木造民家と陰影の感じがいいんですよね、良い木造民家が出るドラマはだいたい良い。
・恋せぬふたり
 https://www.nhk.jp/p/ts/VWNP71QQPV/

恋せぬふたり [DVD] - 岸井ゆきの,高橋一生, 吉田恵里香, 野口雄大, 押田友太, 土井祥平, 阿部海太郎, CHAI, 岸井ゆきの, 高橋一生, 濱正悟, 小島藤子
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●ニコニコ美術館「国際日本文化研究センター図書館で妖怪絵巻を味わおう」《動画》
 ええ声。
 まだ観られます、いまからでも。。
・国際日本文化研究センター図書館で妖怪絵巻を味わおう(出演:大塚英志、木場貴俊)【ニコニコ美術館】
 https://live.nicovideo.jp/watch/lv335305891




●『妻、小学生になる』《ドラマ》
 すこしふしぎの展開の妙と、ハートウォーミングなホームドラマに、天才子役の尋常じゃない演技力が覆い被さる、今年トップクラスのドラマ。年末一気放送するならこっちじゃなかったのかと。
・金曜ドラマ『妻、小学生になる。』
 https://www.tbs.co.jp/tsuma_sho_tbs/




●『アルコ&ピースの「妻、小学生になる。」に乾杯!』《動画》
 …という秀作ドラマの本編と同等かもはやそれ以上に、このスピンオフ動画がすごかったというのを、本編を差し置いてまで推したいので、別記事へ。
・『アルコ&ピースの「妻、小学生になる。」に乾杯!』(2022年の「コンテンツ掘り」): egamiday 3
 http://egamiday3.seesaa.net/article/495612835.html


●「ある子ども」《テレビ》
 ETV特集、ドキュメンタリー&再現ドラマをミックスして、SNSで性犯罪に巻き込まれる10代を取材したもの。10代が実際に参加したドラマパートのリハーサルで、シナリオに違和感を感じるというので思い通りのエチュードでやらせてみると、リアルでラストが変わってしまう、というところが観ていてゾッとする、でもあれが実際なんだろうなと。
 それに関して言えば、「演劇」って音楽図工並みに学校教育でやるべきかと思う、金田一さんも言ってはったけど。
・「ある子ども」 - ETV特集 - NHK
 https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/episode/te/8PQGMN2QMM/




●デスク付きエアロバイク《グッズ》
 酷寒むでウォーキングによる体調管理がままならなくなったので、自宅に導入。早朝でも、運動しながらドラマ見ながらメールがさばけて姿勢はうしろ体重、はかどる。
 なお、暖かくなってかつシェアサイクルを使うようになった頃から、とんとご無沙汰になりました。冬になったのでまたちゃんと使いましょう。

IRONMAN CLUB(鉄人倶楽部) デスク付 フォールディング バイク IMC-61 家庭用
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●『カムカムエブリバディ』《ドラマ》
 『カムカムエブリバディ』は昨年からずっと良かっただろう、ていう感じではあるのですが、その中でも特に最終局面、ラジオから流れる母親の告白をじっと聴く、という数分間をアップ長回しで表情だけで演じ尽くした深津絵里の人、加えてその横でもちゃんと演じ尽くしてたオダギリジョーの人、この数分間はドラマ史にのこしていいですよね。
・カムカムエヴリバディ
 https://www.nhk.jp/p/comecome/ts/8PMRWK3MGZ/

(109)「2003-2025」 - 藤本有紀, 川栄李奈, 深津絵里, オダギリジョー
(109)「2003-2025」 - 藤本有紀, 川栄李奈, 深津絵里, オダギリジョー


●『映像の世紀 バタフライエフェクト』の「モハメド・アリ」編《テレビ》
 その後いまも継続して放送されてる『映像の世紀 バタフライエフェクト』は、メルケル編もナチハンター編もあれこれどれも見応えあるんだけど、特に初回のこれは「スポーツの話?」とふんわり油断してしまってた分、心臓をぎゅっと握って来られた感あり。
・「モハメド・アリ 勇気の連鎖」 - 映像の世紀バタフライエフェクト - NHK
 https://www.nhk.jp/p/ts/9N81M92LXV/episode/te/2LQ7JGJ6M2/




●古川日出男訳『平家物語』《書籍》
 この訳は良い。良いですよ、これは。
・平家物語 :古川 日出男|河出書房新社
 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309728797/

平家物語 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 - 古川日出男
平家物語 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 - 古川日出男


●『日米交流史の中の福田なをみ : 「外国研究」とライブラリアン』《書籍》
 こちらは、別記事にて。
・『日米交流史の中の福田なをみ』(2022年の「コンテンツ掘り」): egamiday 3
 http://egamiday3.seesaa.net/article/495602838.html


●『週刊さんまとマツコ』の「若槻千夏が最新ママタレ事情を実名解説」編 《テレビ》
 なんてことない話の中で、ふと、タレントたちの活動を「この人たちは、何をやったかがわかっている人たち。そういう人じゃないと、オファーできない」と言い切ったところ。そう、「できること」というのは「すでにやったこと」なんだな、と教えられた一幕。




●「北米における日本研究とデジタル・ヒューマニティーズ」《ウェビナー》
 DH 2022東京記念レクチャーシリーズのひとつとしてオンラインで催された、Paula R. Curtisさん(UCLA)による講演。具体的な事例が豊富に紹介され、かつ課題や問題点も言及があったので、ここから出発しようという感じで。
・「北米における日本研究とデジタル・ヒューマニティーズ」 DH2022 Tokyo - Japanese_studies
 https://dh2022.adho.org/japanese_studies


●パシフィックIPA(パシフィックブルーイング)《ビール》
 今年一番美味かったようにメモしている。濁っているというほどではないくらいにちょうど良く濁り系で、濃いめの柑橘系なのに甘さ酸さはおさえめで、苦みが独特。メモを見返したら、1日置いて飲みに行ってるし、かつパイントの次にハーフを注文して再確認されてるという。なお、「スノーモンキーIPA」「無我霧中」もかなり気に入ってた。


●ビアリーIPAスタイル《ビール》
 ノンアルコールビールとしてビアリーは、まずビールをつくっていることやアセスルファムKのような人工甘味料を使ってないことなど、”飲める”ものと評価してちょいちょいいただいていましたが、IPAにいたっては、なにこれふつうに美味いじゃないか、という代物で休肝日がはかどってありがたいという。期間限定と言わず定番にしてほしい。(なお、ノンアルコールではない模様)
 https://www.asahibeer.co.jp/products/bialcohol/beery/

【アルコール0.5%】アサヒビアリーIPA STYLE缶 350ml×24本
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●『魔法のリノベ』《ドラマ》
 ミニチュアもいいなあと思いつつ、観てて、えっ、と思ったんだけど、各種記事なり読んでみると、ほんとにリノベしてるっぽい。ちょっと信じ難い。空間の考え方の勉強として。
・魔法のリノベ
 https://www.ktv.jp/mahorino/




●『個人差あります』《ドラマ》
 「異性化」というすこしふしぎとジェンダー/セクシャリティの議論に、ドラマとして違和感なく感情移入できたのも、ひとえに夏菜の人のほんとに男性化したかと見紛う役者魂のおかげだなあと。大浦龍宇一の人も。
・個人差あります
 https://www.tokai-tv.com/kojinsa/


●『ヨーロッパ企画の生配信』の「送り火中継」編《動画》
 こちらは、別記事にて。
・『ヨーロッパ企画の生配信』「送り火中継」編(2022年の「コンテンツ掘り」): egamiday 3
 http://egamiday3.seesaa.net/article/495602884.html


●「ほけんの窓口」《CM》
 (この企業の営業スタイルがどうなのかは別問題として)利用者へのアプローチとして重要な示唆を多く含んでいるのではないかと思って、極私的に注目しているCM。アンミカが「買い物帰りに来て、何でも聞いて」って言ってるんですよ、図書館も充分見習うべきところじゃないですかね。
・保険、勉強しに行こか。篇A - YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=G7YwYjSGW0Y




●『消滅集落の家族』《テレビ》
 NHKのドキュメンタリー。過疎地域で自給自足の生活をおくる家族、というとたまによく見る話のようにも思えるし、もともとあまり自分そういうの好むほうじゃなかったはずなんですけど、なぜかこれは良かったなと思ったのは、四季の映像美か、建物の具合か、子供のキャラか、迷いも自然に含んでるところか。他の似たようなドキュメンタリーといったい何が違うのかは、いまだに自分でも言語化できていませんが、とりあえずアルファ入り。
・「消滅集落の家族」 - ETV特集 - NHK
 https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/episode/te/884YGZ3NGK/


●『silent』《ドラマ》
 今冬話題その1。これでもかというくらい会話を丁寧に描く。情景を丁寧に映す。それらがほぼ無音の映像の中で、タイパ的なものに邪魔されることなくゆっくりと続く。ただただ、丁寧。その丁寧さに度肝を抜かれたのが第5話で、前回の最後で別れ話が出たので、そうかここでお別れか、じゃあ次はどうくっついたり離れたりするのか、みたいに思いながら見てた第5話で、次どころか、1時間まるまるつかってふたりがどうお別れするかを丁寧に丁寧に描くから、うわーそこで1話分使うのかー、と。これもうストーリー云々のドラマと思って見てたらあかんやつやな、と。(ストーリーだけなら、耳が聞こえなくなった元カレとわかりあえました、なので。)
 なおTVerで制作者がいろいろ語ってるので、そちらも。
・silent
 https://www.fujitv.co.jp/silent/
・最強の時間割 silent 村瀬健P 前編 | TVer
 https://tver.jp/episodes/epn6pyxyha

silent シナリオブック 完全版 - 生方美久(脚本)
silent シナリオブック 完全版 - 生方美久(脚本)


●『エルピス』《ドラマ》
 今冬話題その2。渡辺あやが粘り、制作者が転籍するくらいの野心作云々、という話はすでに各所で語られているので、それは置いておくとして。
 実際のところ、このドラマにとって開始以降の最大最難の課題は、"落とし所"をどうするかだろう、悪は一掃されましたよかったね、のようなご都合主義的な終わり方はもちろんできない、そんなことを言いたい話じゃないし。かと言って何も解決できずゼロ・カタルシスで終わっても視聴者が納得しない。この話ってもしかして、登場人物が延々怒り続けることでしか成立しない、そういう宿命なんじゃないか、って。でも最終話は必ず来てしまうわけで。
 と思ったら、最終話、長澤まさみと鈴木亮平がドラマ内でディスカッションし合いながら落とし所を作っていく、っていうのをやってて、なるほどこれか、と。このドラマのシナリオが、いままさにこのドラマ内で構築されていってる、そういうシーンじゃないかと。鈴木亮平は、なぜか影が薄めのヒール役かと思ってたら、落とし所要員という意味でむしろ救世主だったね、っていう。なので、グレー上等。
・エルピス −希望、あるいは災い−
 https://www.ktv.jp/elpis/

エルピス ―希望、あるいは災い― - 渡辺 あや
エルピス ―希望、あるいは災い― - 渡辺 あや


●『「大東亜」の読書編成 : 思想戦と日本語書物の流通』 《書籍》
 こちらは、後日書評がどこぞに出るので、そちらに渡します。
 ポイントは、文学作品研究が大事、というところ。
・ひつじ書房 「大東亜」の読書編成 思想戦と日本語書物の流通 和田敦彦著
 https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1129-8.htm

「大東亜」の読書編成−思想戦と日本語書物の流通 (未発選書 30) - 和田敦彦, 中垣信夫+中垣呉(中垣デザイン事務所)(装丁)
「大東亜」の読書編成−思想戦と日本語書物の流通 (未発選書 30) - 和田敦彦, 中垣信夫+中垣呉(中垣デザイン事務所)(装丁)


●『図書館総合展2022カンファレンス in 鳥取』『都道府県立図書館サミット2022』《イベント・ウェビナー》
 学校図書館が熱く、都道府県立図書館が頼もしい、と再認識したイベント。
 ここ数年の学校図書館の熱さと動向については、大学図書館側がいまのうちにちゃんとフォローしておかないと、さらに数年後には痛い眼をみることになるんじゃないかな、と思った。(注:うちとこは大学図書館ではないですが。)
 そのための↓アーカイブ公開ですよね、活用しないと。
・【動画・資料公開中】2022カンファレンスin鳥取 +都道府県立図書館サミット | 図書館総合展
 https://www.libraryfair.jp/forum/2022/518




●『作りたい女と食べたい女』《ドラマ》
 ちょっとドラマっぽくない感じで部屋が狭かったり暗かったり。料理ドラマっぽくない感じで、料理の描写が過度に演出されてない、むしろちょっと地味。そういうのが、リアルでなおさらよかった、安心して見ていられた要因かなという感じ。
 春日さんよく探してきたなあ。
・作りたい女と食べたい女
 https://www.nhk.jp/p/tsukutabe/ts/5NX1QRN3VM/

(1) - ゆざきさかおみ, 山田由梨, 比嘉愛未, 西野恵未, 森田望智, 中野周平, 野添義弘
(1) - ゆざきさかおみ, 山田由梨, 比嘉愛未, 西野恵未, 森田望智, 中野周平, 野添義弘


●『君のクイズ』《小説》
 これも別記事へ。
・『君のクイズ』(2022年の「コンテンツ掘り」): egamiday 3
 http://egamiday3.seesaa.net/article/496535739.html


 以下、手前味噌編です。

・これからのメタデータ収集・作成方針 (第6回月刊JPCOAR) - YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=ehQAR5Pl5Fg
・「後進への視線」. 『デジタルアーカイブ学会誌』. 2022, 6巻s1号, p.s45-s46.
 https://doi.org/10.24506/jsda.6.s1_s45
・(書籍紹介)「日米交流史の中の福田なをみ : 「外国研究」とライブラリアン」. 『図書館雑誌』. 2022.9, 116(9), p.565.
 https://cir.nii.ac.jp/crid/1520293434332241792
・(書評)「「大東亜」の読書編成 : 思想戦と日本語書物の流通」(予定)
・「やはり「誰でも」とは誰か? : デジタルアーカイブ憲章をみんなで創る円卓会議第2回登壇メモ」(egamiday 3)
 http://egamiday3.seesaa.net/article/492794845.html
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2022年12月29日

2.2.2.(続々) クイズの目的はクイズではなく、視聴者を楽しませること(「図書館×クイズ=アウトリーチ」試論 : 「99人の壁」を実践例として)


●出題者・制作者は、視聴者を楽しませたい。

 そして出題者や制作者が、解答者とならんで、というかそれ以上に意識し対峙しなければならない存在があります。観客である視聴者・お茶の間です。

図1.JPG

 本稿のはじめのほうで確認したように、2.1.1「クイズは“観客”のための“エンタメ”である」ということをふまえれば、出題者がどんな問題を出すのかも視聴者・お茶の間を楽しませたいという前提によるということになります。ただ単にクイズを出したい出題者と解きたい解答者との間だけでクローズドにおこなわれるのであれば2者間のみでの共通認識としての”楽しさ”で済むかもしれません。が、それにとどまらず、ごく一般的な共有範囲のリテラシーを前提とした不特定の一般人が何百万人という単位で観覧しており、そんな視聴者・お茶の間が「楽しい」と認識できるような、出題をしなければならないし、企画・番組にしなければならない。そこを満たすような、リテラシーのギャップという素材や、いい塩梅の逸脱の仕方、クイズとしてかっこうのつく範囲。

 視聴者・お茶の間を”ファースト”とするならば、その出題は解答者に向けてである以上に、不特定の一般人に向けてである必要があります。

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「番組を定着させるには、「わかる人だけが盛り上がってくれればいい」ということではダメなので、「どうやって一般の方にも面白がってもらえるようにするか」
「例えば「北海道」で勝負してきたお父さんは、ものすごく対策をしてきたらしいんだすけど、その方向性がいわゆるクイズの定番問題の中での「北海道」だったと思うんです。でも、僕らが出したのは「おたる水族館で人気の動物は?」「(インタビュアー)あくまでテレビ目線で面白い問題だったと。」
(「クイズ番組ソムリエ矢野了平の蔵出し1本! 第9回「99人の壁」」. 『Quiz Japan』. Vol.9)
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「テレビの前でお父さんと子供が「これ、○○○じゃない?」とかって考えられるような問題も出してあげないと、間口が広がらない
「セカンドステージの早書きって、最初は難しくても最後までいけば子供でもなんとなく答えがわかります」「多答クイズの問題も、出しているお題はそこまで難しくないので、子供でもいくつかはなんとなく答えられる」(「東大王特集 総合演出インタビュー」. 『Quiz Japan』. Vol.9)
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「『ヘキサゴン』で出される早押し問題っていうのは、「排他的経済水域」みたいに賢そうな問題、中継ぎの問題、おバカ解答を引き出す問題、という感じに3段階に分かれていたんです。特におバカ解答が出るようなクイズは戦いでしたね。できるだけわかりやすい言葉で、視聴者がわかる問題で、長すぎても短すぎてもいけない繊細な文章が求められました」
(「クイズ作家大解剖座談会」. 『Quiz Japan』. Vol.12)
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「日本最強のクイズ王の二人に、どんな問題を投げかけるか。難問を作るのは簡単です。でも、それをやっちゃうと二人とも答えられず、あまりにもそれが多いと番組でもカットされてしまう。ですから、二人のストライクゾーンという、それはそれは狭い幅を狙う」
(「日本のクイズ文化の源流を探る」. 『Quiz Japan』. Vol.12)
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 そして出題だけでなく、ていうかそれ以上に、その企画や演出は不特定の一般人に向けてということになる。

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「『東大王』をやるにあたっては、まずは「視聴者を置いてかない番組にしよう」と。あとは、とにかく「クイズの問題自体の面白さ」で魅せていけるような番組にしたいなと思いましたね」
(「東大王特集 総合演出インタビュー」. 『Quiz Japan』. Vol.9)
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「毎回ガチンコの真剣勝負をやっていると、ちょっと息詰まっちゃうんですよね。エンターテイメント性は、どこかにはないといけない」
「芸能人が楽しそうにやっているところなんかは、なんとなくちょっと食い付いたりするんですよ。だから、クイズに興味ない人でも、こういうところをきっかけに『東大王』という番組を観ていただけるようになったらいいな」(「東大王特集 プロデューサーインタビュー」. 『Quiz Japan』. Vol.9)
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 あくまでテレビ目線でどうおもしろいか、ということが前提になると、やはりその出題や演出は学力試験や資格試験、純粋な競技のようなものとは異なってくることになります(し、そもそも試験に演出はない)。
 それが「解答者に正答して欲しい」とかけあわさると↓こんな感じになるのでしょう。

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・(高校生クイズのアメリカ横断企画のロケ中の話)「できれば全チームに1問は正解してほしい…全員に見せ場を作るためには今この手元にある問題をどうアレンジすればいいのか、どういう順番にすればいいのかとか」
「問題のさじ加減で、料理の仕方によって、出場者の良さだったり、悔しい顔だったりを引き出せる」
「だから、地区予選から、高校生たちがどの問題を正解して、どこで押して、どういう風に間違えたかを僕なりにメモしておいて…得意ジャンル、不得意ジャンルとか…参考にしながら作ってましたね
(「クイズ作家大解剖座談会」. 『Quiz Japan』. Vol.12)
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 そして、逆に解答者側からの視点に立てば、「テレビ目線でどうおもしろいか」を前提にすることで、問題や解答の予測ができるのでは、という本稿の本題につながります。

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「目標が視聴者を楽しませることですからね。クイズやることが第一目標じゃないから、視聴者を楽しませるという第一目標に従って内容が決まるわけです。だから、その第一目標から逆算してクイズを推測できちゃう。」
(「殴り合いが好き!?伊沢拓司を虜にする“アマチュア”クイズとは?」(伊沢拓司インタビュー(1)). QuizKnock. 2021年4月11日. https://quizknock.com/izawa-interview-quiz-1
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「TVのクイズは番組として解答者だけじゃなく視聴者にも楽しんでもらう必要があるだろう? ただ難しいだけじゃつまらないし さっきの問題が「NO」じゃ出題した意図がわからない なにも面白くないからね」「だからTV的においしかったり意外性があったり 視聴者が「へえ」って驚けるような答えが正解になりやすいんだよ」
(杉基イクラ. 『ナナマルサンバツ』. 第56話.)
-----------------------------------------------------

 であれば。
 その出題者や制作者が”ファースト”に置き、解答者もそれがどうやら”ファースト”らしいという前提で問題・正答を予測しようとするという、クイズの大大大前提となるらしき「視聴者」という存在は、クイズの何をどう見ておもしろい、楽しい、と考えているのか。
 やはりそれは、クイズのどこに娯楽性があるか(2.1.4)に大きく関わってくる、ということになります。
 次節(2.2.3)の「視聴者はクイズの何を楽しんでいるのか」に続きます。



●付けたり、コストとセキュリティの問題

 付けたり、です。
 クイズが「娯楽/番組として成り立つ」のに、B視聴者にとっておもしろいこと、が必要らしいですが、加えて気にしなければならない”かせ”のようなものもあります。それがコストとセキュリティの問題です。
 セキュリティ、つまり、フェアさ・正確さが担保されなければならないということ。
 とは言え、コスト、つまり、問題作成や制作にどこまでも労力をかけられるわけではない、ということ。
 ああ、なんか一気にお仕事モードの話になってきそうな気配がしてきましたね。

 クイズをやってると、同じジャンルやトピックの中でも「クイズに出やすい」ものと「そうでないもの」とがだいたいなんとなく決まってくるような感覚がうまれてきます。それが極まると、既出の問題、過去問、”ベタ問”(手垢が付いたような繰り返し出題される定番問題)というかたちになり、最近ではそれが「データベース」というワードで表現されたりもするようです。
-----------------------------------------------------
「b.クイズ文化は、過去の出題などにより形成された暗黙的な「データベース」を持つ。」
「c.クイズ文化に特異な「出題者・作問者」の存在、さらにそのポジションが相互のギブアンドテイクで成り立っている。」
(伊沢拓司. 「クイズの持つ「暴力性」と、その超克 : いかにしてクイズ文化を理解してもらうか」. 『ユリイカ』. 2020.7, p.74-84.)
-----------------------------------------------------

 なぜそのような”ベタ問”がうまれるようになるのか。
 2.1.4をふまえて言えば、「リテラシー共有範囲をいい塩梅に逸脱する」ような興味をひく知識を選ぶと、出される問題はある程度しぼられてくるだろう、と考えられます。
 それに加えて言えば、裏取り可能、かつ正答の限定が可能である、つまり「フェアさ・正確さが担保される」問題に限ろうとすると、出される問題はさらに似たようなものになりがちです。
 さらに「コストをいくらでもかけられるわけではない」ことをふまえれば、既出の問題そのものを出すことははばかられるにもしろ、その派生や練り直しのような範囲にだいたい落ち着くだろう、と予想されます。

 興味をひいて、間違いがなくて、作りやすい。
 結果、うん、やっぱりクイズに出そうなのってだいたいこのへんだよね、というのは、自身が作問の経験を積めば積むほど暗黙のうちにだいたいわかってくるものだよな、という気がします。
-----------------------------------------------------
「新聞や本などに載っている情報からクイズに出題されそうな部分だけ取り出して(ここがミソ、ある程度クイズに慣れていなければわからない)問題を作る」
(長戸勇人. 『クイズは創造力〈理論編〉』. 情報センター出版局, 1990.)
-----------------------------------------------------

 あえて乱暴に言語化してみると、例えば、情報のソースがしっかり存在していて(高セキュリティ)、しかもその確認が容易である(低コスト)ような素材。
 辞書をひけばわかる、言葉や漢字の問題。
 統計や数値をふまえた、順位・ランキングを使った問題。
 教科書で統一された教科知識による、お勉強問題。
 成文化された法律や規則の、正誤。
 権威ある組織が認定済みでリストアップ可能な、文学賞、ノーベル賞、世界遺産。
 そう考えると、どれもこれもクイズ番組で見ない日はないくらいのネタですね。

 また、高コストを避けるという意味で考えれば、問題を作成しその情報を確認するために、各ジャンルやトピックスの専門家をいちいち頼るというようなことはしないわけです。つまり、クイズの出題者はそのクイズの内容の専門家では決してないし、そのジャンルやトピックについて深く知り尽くし極めているというわけではない、そういう意味では不特定の一般人とほぼ同じ視点から問題を作成している、ということが考えられます。
 端的にいえば、「99人の壁」で「図書館」に関するクイズを作るために、わざわざ図書館業界人を連れてきてるわけではなく、「図書館」についてのリテラシーで言えば視聴者とほぼほぼ同じ立場の人がつくっている、ということ。
 その同じ視点を持つことができれば、どんな問題・正答になるかの予測ができそうです。そして、「同じ視点を持つ」ことが、最終的に図書館におけるアウトリーチに相当する、という本稿のオチにつながります。



posted by egamiday3 at 23:53| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月28日

2022年12月のまとめ

●2022年12月のまとめ

・todoが滞り始めるが、早めにあきらめる。
・クリスマス前の休日の朝といえばスタバでジンジャーブレッドラテ。
・「The Digital Turn in Early Modern Japanese Studies」
・「アメリカの図書館は、州図書館局、地域資産、モデル事業のサイクルが熱い(今日の本読みメモ『 #闘う図書館 』)」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/494534538.html
・『闘う図書館』著者と語らう会。呼びかけガン無視事件が発生。
・図書館メール送信はやはり格差助長サービスか。
・「こんな仕事のしかたをしててはダメだ。腐る。やり方を根本的に変えなければ。」
・「わざわいと人々」展@龍谷ミュージアム
・プレzoom会議
・「料理をすることは自立につながる」
・カニササレアヤコ / 柴咲コウ
・連休5daysという名の年末清掃
・「地名標準化の現状と課題:地名データベースの構築と地名標準化機関の設置に向けて」。名付けと認知の問題、その統一化の問題、典拠コントロールやマッピングの問題、情報処理の問題、それぞれをどうつなぐのか。
・半兵衛麩、さがら。
・一期一会
・Hauptbahnhof「回復」(オンライン)

posted by egamiday3 at 17:12| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2.2.2.(続) クイズにおいて”出題”とは何なのか (「図書館×クイズ=アウトリーチ」試論 : 「99人の壁」を実践例として)

「図書館×クイズ=アウトリーチ」試論 : 「99人の壁」を実践例として
【目次】index(目次&参考文献)
【前項】2.2.2 出題者から見たクイズを考える


図8 出題者から見たクイズ
図8:出題者から見たクイズ.jpg

 クイズにおいて出題者が解答者に”出題”をする、とはどういうことなのか、という話です。
 それが理解できることで、最終的には、まだ出題されていない問題が何であるかを予測するための重要な手がかりになるだろう、と。


●出題者は、解答者に正答してほしい

 大仰な言い方ながらわりとマジメに、世のあらゆる「出題」というもの--クイズ、試験、論文審査、面接、法廷、世論調査から国会に至るまで--、それらは解答者および社会に対する「メッセージ」です。もちろんそこには正答があるようなものとあり得ないものとの違いが存在するにせよ、まずはメッセージである、と。
 クイズも「メッセージ」であるなら、受け手に受けとめてほしいし、理解してほしい、そしてリアクションしてほしい。その、受けとめて理解されたことの端的なリアクションのひとつが「正答」(注:正答が存在するならば)なわけで、出題者はやはり解答者に「正答してほしい」という前提で出題するし、作問もするわけです。

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「クイズ問題は正解されるために生まれている」
(杉基イクラ. 『ナナマルサンバツ』. 第6話.)
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「そもそもクイズの制作者は、解答者に正解させるために問題を作っています。自分の作った問題が誤答されるのは、クイズ制作者にとっても気持ちのいいことではないのです。」
(水上颯. 『水上ノート : 東大No.1頭脳が作った究極の「知力アップ」テキスト』. KADOKAWA, 2020.3)
-----------------------------------------------------

 ですので、解答者が確実に正答できるように、コスト(時間的にも精神的にも)をかけて問題の内容や日本語を精査する。そういう作業をおこなっている様子が「最高の一問」でも印象的に語られます。

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「一問に1時間かかるとかざらにあるんですよ」
「力を十二分に発揮できるような問題にしてあげたい」
「一生に一度の晴れ舞台かもしれないわけじゃないですかその人の」
「記憶に残る なおかつ正確な問題」
「肝はここの作業」
(「クイズ、最高の一問 : クイズ作家・矢野了平/日大介」(プロフェッショナル仕事の流儀 他). NHK, 2021.)
-----------------------------------------------------

 そしてその作業は、そう簡単ではないどころか至難の業である、ということも「最高の一問」内で描かれています。
 そもそもこの場合のクイズという「メッセージ」の受け手が、不特定の解答者であり、番組視聴者であり、万人である。(ある程度のリテラシーの共有範囲が前提であるとは言え)どんな人が受けとるかわからない。しかもその受け手に対して“正誤”までもを提示し”勝ち負け”の判定をしようとしている、それで100万円だかパリ挑戦権だかの生殺与奪、って責任重大じゃないですか。
 このことからクイズの問題は、万人向けのメッセージとして、難易度的にも、論理的にも、言語的にも、あらゆる人に受け入れてもらえること、フェアであることが必要になってきます。

-----------------------------------------------------
「問題は「答えてもらうように」作る」
「この「答えてもらうように」というのは、簡単そうで意外に難しい」
「ビギナーに問題を作らせると、やたら難しかったり、絞り込みが完全でなくて答えが一つに限定できなかったり、ルール(文法)がめちゃくちゃだったり」
(長戸勇人. 『クイズは創造力〈理論編〉』. 情報センター出版局, 1990.)
-----------------------------------------------------
「そもそもクイズは一般に、答えられるために作られる」
「いかに難問と言っても、出演者がまったく手も足も出ないような問題ばかり出していては、番組として成立しない」
(徳久倫康. 「国民クイズ2.0」. 『日本2.0 思想地図β Vol.3』. 2012, p.484-510.)
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 取り上げられている情報が正確で、裏取りがされていること。
難しすぎず、正答できる範囲内の出題であること(難易度の調整)。
正答がひとつに絞られ、別解があり得ず、あいまいでないこと(論理的な正しさ)、など。
 さらに、メッセージが言語を介して届けられる以上、日本語としての正確さやその意味するところのフェアさも求められるわけです。なんというか、推理小説では犯人が考え得る限り合理的な行動をとることが前提とされている中で推理が進められる、ような感じで、クイズとして出される文章は文法的にも意味的にも日本語として正確で過不足が無いということが大前提になってる(じゃないと正答へ導けない)、みたいな感じです。

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「作問者の日本語は正確で国語力は高いことが前提。(問題読み上げ者の発語発音も正確であることが前提)」
(日大介. 「クイズ作家の「作家性」はどこに宿るのか」. 『ユリイカ』. 2020.7, p.169-173.)
-----------------------------------------------------
(日高、問題文の日本語を精査している場面)
「濃厚な辛口が特徴って変?」
「濃厚で辛口な信州みそを味わえる」
「インスタント麺って調理するって言う? 何て言えばいい?(>奥さんに)」
「『あるインスタント麺を調理する映像』…」
ナレーター「誤解の無い表現や、答えがたった一つに絞られるかなど、確認を重ねる」
(「クイズ、最高の一問 : クイズ作家・矢野了平/日大介」(プロフェッショナル仕事の流儀 他). NHK, 2021.)
-----------------------------------------------------

 うんうんうなってコストをかけて問題を作成し、正答する見込みがあると思って出題する。それが、誤答どころかスルーでもされようものなら、あれ、出題したこっちの方がおかしかったのかな、と不安になってしまいます。逆に、正答してもらえれば「メッセージが通じた」わけですから。「最高の一問」では、「99人の壁」の収録中、高速で全問正解する解答者に、大喜びで拍手する2人の姿が映し出されます。あの気持ちって、一度でも出題側をやってみたことのある人にはわかるんじゃないかなって思います。

 で、さて本稿は再々申していますように解答者の立場で問題を予測しようとしていますが、このような前提をふまえた予測ができる、ということにもなります。
 すなわち、出題者は正答させようとして出題するわけだから、答えられそうにもない問題を出すことはないし、そのような造り方はしない。そのことを根拠にして、出る問題、求められる正答をある程度までしぼりこむことができる。

-----------------------------------------------------
「追いつ追われつの試合のこ……」
「クロスゲーム」!
「違います…問題文で(正答を)1個に絞ってるはずなんです。ってことは、絞りやすいような答えが答えである可能性が高い」
「あー、「シーソーゲーム」!」

「今回だと、問題文が「追いつ追われつの試合のことを公園にある遊具に例えて何というでしょう?」というふうにつづけることで、これで「クロスゲーム」って答えられたら絶対×になる」

「何でそこがいつもそこまで分かるんだろう、ってテレビ観てて思うじゃん? それは限定しやすい言葉が来なきゃいけない、ってみんな思ってんのか」
(「クイズ初心者がクイズ王に!早押しここで分かるのかクイズ【クイズ王への道】」. QuizKnock. 2018年3月15日公開. https://www.youtube.com/watch?v=FcQGEV-qWjU
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 また2.2.1で、問題文の途中であるにもかかわらず正答や問題文全体を予測する、ということを述べました。このような“言語的な分析による予測”が可能となるためには、問題文自体が日本語として自然で、無理なく、フェアであること、情報に過不足が無いこと、等がそもそも前提とされている。いわば解答者と出題者との信頼関係--ゲームがシビアになればそれだけ高度な信頼関係、のうえに成り立っているということが言えます。


●出題者は、解答者を苦しませたい。かつ、楽しませたい。

 しかし屁理屈を言えば、ただただ正答させたいだけだったら、正答可能な易問だけ出してればいい、ということになってしまいます。日本一高い山は、フランスの首都は、パンはパンでも食べられないパンは、はい正解、終了と。
 まあもちろんそんなことにはならないわけで、クイズの出題者は、解答者が知ってるかもしれないし知らないかもしれない問題、悩みそうな、間違えそうな、思い出せそうで思い出せないような、わかりそうでわからなそうな、そういう問題を出して、誤答させ、負けさせるようにも仕向けます。正答させたいはずの解答者をなぜか同時に苦しませもする、という。
 出題者は、解答者が正答"できないかもしれない"問題を、なぜあえて出題するのか。学力試験であれば、点差をつけて学力を測るため。資格試験であれば、知識の有無を確認するため。そして娯楽としてのクイズであれば、その苦しみ悩むこと自体が楽しいことだから、ということになるでしょう。
 わかりそうな、知ってそうで知らなさそうな、リテラシーの共有範囲をいい塩梅で逸脱しているくらいの問題。だからこそ、そこで解答者自身の実力を発揮することができ、苦しみを克服した末に正答できればそりゃ気持ち良かろう(カタルシス)し、正答できなかったときの未知への驚きや悔しさのような感情のゆらぎも、また楽しかろう。というのは、2.1.2「リテラシーのギャップ」や2.1.4「いい塩梅で逸脱」という言葉でクイズの娯楽性の所在について考えてきた通りかと思います。
 そう考えれば、出題者が解答者に正答させようとすることも、逆に苦しませようとすることも、要は「解答者を楽しませたい」でくくられる、という図1の通りの話になります。



 そして出題者や制作者が、解答者とならんで、というかそれ以上に意識し対峙しなければならない存在があります。観客である視聴者・お茶の間です。
 次に続きます。

図1
図1.JPG
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2022年12月11日

2.2.2 出題者から見たクイズを考える (「図書館×クイズ=アウトリーチ」試論 : 「99人の壁」を実践例として)


 途中でやめた、とかではないです。
 ちまちまと書き貯めていたんです。
 ただちょっと時間がかかって、その間に「99人の壁」がレギュラー放送でなくなったり、「アタック25」が復活したり、佐藤二朗が北条家に討たれたりした、というだけの話です。


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「図書館×クイズ=アウトリーチ」試論 : 「99人の壁」を実践例として
【目次】index(目次&参考文献)
【前項】2.2.1.(続々) よき解答者は、よき出題者である


 ここまでのあらすじ、です。
 クイズは観客のためのエンターテインメントであり(2.1.1)、リテラシーのギャップを素材としています(2.1.2)。というのも、そもそも社会には共有されるリテラシーの範囲や濃淡のようなものがあり(2.1.3)、その範囲をいい塩梅で逸脱するところに娯楽性があるからです(2.1.5)。
 本稿で筆者は、解答者(プレイヤー)の立場から「「99人の壁」のジャンル「図書館」で出題される問題を予想する」ことを実践しようとしています。解答者として事前に予想することで、効率的に予習して正解率を上げることができるからです(2.2.1)。出題前に問題を予測するためには、形式や難易度のようなメタな要素、より大きく言えば、「図書館」についてのこの社会のリテラシーの範囲・濃淡を地図として理解すること(2.2.1続)。その中からどのあたりがいい塩梅なのか、ひいては出題者・制作者が何を考えているかを理解すること(2.2.2続々)、が必要となります。
 なお、おそらくそれはクイズのどこに娯楽性があるか(2.1.4)に大きく関わってくるものと思われます。ここからはそういう話です。

 というわけで、出題者・制作者は何を考えているか、です。

 本稿のキーとなるモデル、図1を再掲します。

図1
図1.JPG

 クイズの出題者が何を考えているかなどというのは、よほどニッチな文献をひもとかなきゃだろうなと思っていましたが、近年になって多くの人の目に触れるところとなったドキュメンタリー番組が放送されました。

・「クイズ、最高の一問 : クイズ作家・矢野了平/日大介」(プロフェッショナル仕事の流儀 他). NHK, 2021.
(プロフェッショナル仕事の流儀のNHKオンデマンド版 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2021113203SA000/

 「クイズ、最高の一問」(以下「最高の一問」)は、クイズ作家として活躍する矢野了平氏・日高大介氏の2人に密着したNHKのドキュメンタリー番組(おおむね同じ内容を「ノーナレ」「プロフェッショナル仕事の流儀」の枠で放送)です。クイズ番組を制作し問題を出題する側の人々が、どのようなことを考えているのか、どんなふうに出題に取り組んでいるのか。それぞれの人生や苦しみやなんやかんやを経たうえで、最終的に人生最高の1問を考えてください、というようなお題に取り組む、という。
 例えば、学生の頃に2人が立ち上げたイベントの映像。
 商店街を歩きながら、問題のネタを探すシーン。
 問題文の日本語を推敲しながら、「インスタント麺って「調理する」って言う?」と家族に尋ねるシーン。
 実際の「99人の壁」収録現場で、高速で正答する解答者に、大喜びで拍手する2人。
 最高の1問を作問するため、「そもそもクイズとは何か?」を書き出したホワイトボード。

 テレビ番組で出題されるクイズなんてそれこそふだん意識しなくても大量に流れていくようにも見えるかもしれませんが、かたやそのクイズを出題する側の気持ちや考え方などというものは、ほぼほぼ表には出てこない稀少種的な話題のはずです。それが、一般の人にわかりやすく伝わるような描かれ方で、「プロフェッショナル」のような人気枠で公開され、その狙いが成功したんでしょう、その月のギャラクシー賞月間賞を受賞してます。
 私も何回も繰り返して、喰い入るように観ました。そりゃ観ますよね、だって、自分に「図書館」のクイズを出題したの、この人たちなんですから。実際に「99人の壁」の問題原稿を推敲してる様子が映し出されていて、がっつりした見応えでしたね。

 そしてこの番組の終盤で、最高の1問を作れとお題を出された2人が、そもそもクイズってなんだろう?ということからあらためて確認し始め、それをブレスト的にホワイトボードに書き出していく、というシーンがあるわけです。
 つまり、クイズ作家が考える「クイズ」とは。クイズとは何をやる営みで、何がおもしろいのか、何を要素・素材としているか。
 画面から読み取れた範囲で文字起こしすると、だいたいこんな感じでした。

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問題・答えがある
ためになる
解いて気持ちいい、優越感
悩める
知識いる?いらない?
ドキドキ(ワクワク)
解きたくなる、知りたい
種明かし、解説の面白さ(補足)

自分のポジションを確認
実力を知りたい
人に言いたい
くだらない、ユーモア
分からなすぎてビックリ/面白い
知っているはず
盲点

納得感
裏切り、ドンデン
インパクト
リズム
シンプル、短い、ムダがない
何を問うかの深さ
ジャイアントキリング
トレンド⇔普遍・身近
手掛かり、取っ掛かり、よすが
見たことない、ある
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 繰り返しになりますが、クイズ研究会の類での活動では自分でクイズ問題を作る”作問”もかなり大きなところを占めていて、自分としてはむしろこっちのほうが好きだったり性に合ってたなと思います。もちろん、本業の方のプロフェッショナルな流儀のお仕事と比べものになるようなことではない、にもしろ、こうやってホワイトボードに書き出された「クイズとは何か」を眺めてみると、自分自身でもなんとなく感じていたこと、言語化できたりできなかったりしていた考え方の類が、そう大きくハズレてもなかったんだな、というのがわかって極私的になぜかホッとしたりもするわけです。

 さて、その書き出された“クイズ思考”を俯瞰し、ざっくり分類のようなことをしてみると、おおむねこのように整理できるのではないかと考えます。

図8 出題者から見たクイズ
図8:出題者から見たクイズ.jpg

 @解答者に正答してほしい、A解答者を苦しませたい、B視聴者を楽しませたい。これらに加え、補足的に(大前提として)競技/娯楽として、要はテレビ番組として成り立つこと、それからC「コスト」と「セキュリティ」の問題にも触れておきたいと思います。

 なお、ここまでぼんやり併記していましたが、そもそも「出題者」と「制作者(番組制作者・企画者等)」という立場があるわけです。両者は厳密に言えばちがうだろうし、とはいえ役割はかぶっているところもあるだろうしなのですが、まずは上記番組+各種文献をふまえつつ「出題者」目線として整理してみます。

 続く。
posted by egamiday3 at 13:29| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

今日の「CA読み」メモ: 母屋化するデジコレ、7万アイテムのウィンドウショッピング、闘うったって限度もある 他


●CA2025 - 再現性・複製可能性と研究図書館 / 西岡千文
https://current.ndl.go.jp/ca2025

 すごくよくわかる解説。

「研究の再現性・複製可能性の定義とともに、再現性・複製可能性において研究図書館が果たす役割」
「米国情報標準化機構(NISO)は、出版関係者が中心となって、「再現性に関するバッジについての推奨指針」(7)(2021年1月公開)の策定を行った。出版者は、再現性やオープン性等のステータスを示すために、論文等へバッジの付与を行っている」
・Open Research Object(ORO)
リポジトリに永久的にアーカイブされていること
・Research Objects Reviewed(ROR)
定める条件に沿ってレビューされたこと
・Results Reproduced(ROR-R)
RORに加えて、同じ条件を使用して計算結果を再生成できること
・Results Replicated(RER)
同一の科学的質問に対する独立した研究が、同一の結果を導く結果を得たこと(複製可能)
「再現性の危機の要因として、データやコードが公開されないこと、計算環境や依存するソフトウェア等の詳細についての記録の不足、デジタルリソースの陳腐化など」
「複製可能性の危機の要因…出版バイアスは、仮説を支持する結果や統計的に優位な結果が得られた場合に偏って研究成果が出版されること」
「情報技術の発展により、再現性や複製可能性の検証に必要となるデータ共有を容易に実現できるプラットフォームが整備されるようになった」「米・ニューヨーク大学はReproZip(26)というソフトウェアを開発している。ReproZipは、必要なデータファイル、ライブラリ、環境変数、オプションとともに、研究のバンドルを作成する。共有されたバンドルは、ReproZipを介して、実行することができる。」「国立情報学研究所が研究データ管理基盤GakuNinRDM(E2409参照)上で研究データを解析するプログラムとその実行環境をパッケージ化し、共有・再利用を可能とするサービスの開発を行っている」


●CA2026 - サービス案内としての大学図書館バーチャルツアー / 野和彰, 小野永貴
https://current.ndl.go.jp/ca2026

 できれば、絵がほしい&リンクが本文中にほしい。

「ガイダンス機能は初年次学生を中心とする初回利用者には必須の機能となるが、図書館利用法を一度習得してしまえば重要度は下がり、その後日常的に繰り返し利用される可能性は低いためである。大学図書館が持続的に整備するコンテンツとして位置づけるには、日常的な教育・研究に資する継続的な利用へいかに貢献できるか、という視点も不可欠であろう。」


●CA2028 - 動向レビュー:「完全参加と平等」から「合理的配慮」へ―聴覚障害者サービスの動向― / 松延秀一
https://current.ndl.go.jp/ca2028

 自分語りが多めなのは語れる人が多くないという問題なのかも。
 海外動向ももっと知りたい。

「『大学の図書館』2020年12月号に「日本の大学図書館における障害学生支援の現状」という、質問紙調査報告が掲載されている(15)。全般にサービス自体が低調で、「存在の見えにくい障害学生」に対し「何を支援してよいのかわからない」というのが大方の現状らしい。そこで、研修が必要ということである。文部科学省による予算支援が望まれる。」


●E2534 - すべての人に情報を:アジア・オセアニアの図書館とSDGs
https://current.ndl.go.jp/e2534

 アジア・オセアニア、というよりは世界、ていうか基本。

「図書館と最も関係する課題は,目標16(平和と公正をすべての人に)のうち,ターゲット16.10「国内法規及び国際協定に従い,情報への公共アクセスを確保し,基本的自由を保障する。」であろう。つまり,「すべての人に情報を」提供するために,図書館は主導的な役割を担うことができる。」「 ターゲット16.10がSDGsに盛り込まれた背景には,国際図書館連盟(IFLA)による働きかけがあった。IFLAはSDGsにおける図書館の意義を主張し,その取り組みを支援している。」
「情報アクセスの確保に限らず,求職者の技能訓練,女性への起業支援,文化遺産の保護など,各館の取り組みは多岐にわたっている。そこには,「誰一人取り残さない」というSDGsのスローガンが通底している」


●E2535 - 英国の公共図書館における延滞料廃止に関する議論
https://current.ndl.go.jp/e2535

 桁が。

「英国全体の公共図書館における延滞料の収入は年間768万596ポンド(約12億4,000万円)に上る。これは自治体の予算を除いた図書館の収入のうち,9.4%にあたる金額である」


●E2536 - 欧州連合理事会採択のオープンサイエンスに関する政策指針
https://current.ndl.go.jp/e2536

「2022年6月,欧州連合(EU)理事会は,オープンサイエンス政策の推進を目的とした指針“Research assessment and implementation of Open Science”(以下「本指針」)を採択した。」「欧州研究領域(European Research Area:ERA)全体で共同行動を取ることが提案されている」「ERAとは,欧州委員会の提案のもとEU理事会の承認で2000年に設立された,欧州全域における研究者の交流,研究成果や知識・技術の自由な流通を目指し,各国がより効果的に連携できるようにする構想で,オープンサイエンス,研究評価,研究者のキャリア開発を促進している」
「本指針では2023年末までに進捗状況の報告を欧州委員会に対して求めている(指針32)ことから,2024年以降EU理事会はオープンサイエンスに関してまた新たな指針や提言を示すのではないか」


●E2537 - 欧州における文化遺産3Dの動向:欧州委員会の報告書をもとに
https://current.ndl.go.jp/e2537

 何を調査するか、何のための調査か、的な。

「2022年4月,欧州委員会は『有形文化遺産3Dデジタル化における質に関する研究』(Study on Quality in 3D Digitisation of Tangible Cultural Heritage: Mapping Parameters, Formats, Standards, Benchmarks, Methodologies, and Guidelines,以下「報告書」)と題する報告書を公開」
「報告書は全体として,「質」を論じる前提となる「複雑性」の問題やそのドキュメンテーションのあり方を中心的な課題としている」「どのような環境で,どのような条件のもと,どのような機材・ソフトで,どのような資料に基づいて,誰によって作成されたのか。これらの情報を明示・検証可能な環境を構築することが3Dデジタル化の「質」の確保・評価につながる」
「専門家へのインタビューでは選択式アンケートの結果のみならず,「あなたにとって『複雑性』とは何を意味するか」という質問に対する記述式の回答を数多く掲載しており,3Dデジタル化の「現場の声」を知るうえで非常に意義深い


●E2538 - 国際学術会議Digital Humanities 2022<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2538

 全部重要。


●E2539 - ブックフェスタしずおか:私設図書館と県立図書館の協働事例
https://current.ndl.go.jp/e2539

 待て次号、的な。

「本稿では,当館が私設図書館主催のイベントに対し協力をするに至った背景や経緯,協力の内容について記述する。なお,本稿はあくまで当館側の意図や意見を記述するものであり,イベント自体の目的や各内容の詳細は,「ブックフェスタしずおか」のウェブサイトを参照されたい。」


●E2540 - 石川県立図書館のリニューアルオープンについて
https://current.ndl.go.jp/e2540

 7万アイテムのウィンドウショッピング。
 あと、視察報告(小石宗明. 図書館大国が集う北欧を訪ねて: 石川県立図書館の新たな船出に向けたヒントを探す旅. 石川県県民文化スポーツ部文化振興課新図書館整備推進室, 2019, 179p)なんかはオンライン公開があれば。

「今回,「本と出会う12のテーマ」という独自の分類を新設し,円形書架に並ぶ7万冊は同分類に基づいて配架した。12のテーマは「好奇心を抱く」,「世界に飛び出す」,「暮らしを広げる」など,身近で親しみやすい分類で構成され,細分化された小分類は約700に及ぶ」「さらに,1階の中心部には各テーマを代表する本を集めた「本との出会いの窓」のコーナーがある。スロープ沿いに装飾を施した本のショーケースが並ぶ。ウィンドウショッピングのように本の世界へと誘う小径だ」
「当館利用推進課長の小石宗明は,整備の過程において北欧の図書館30館を視察した。その報告書によれば,日本と北欧で最も差を感じた点の一つが「閲覧席へのこだわり」だという」


●E2541 - 日本発のプレプリントサーバ「Jxiv」運用開始について
https://current.ndl.go.jp/e2541

 議論も課題ものこるけど、それでも早よ出したい、というところが肝っぽい。

「最後に,プレプリントの質を懸念する意見への対応を検討した。プレプリントは査読前論文であり,専門家の査読を経ずに原稿が公開されるため,データの信頼性,信憑性について保証することはできない。そこで投稿者を研究者に限定し,投稿原稿に対してはJSTが最低限のスクリーニングを行い,一定の品質を運営面で担保することを図った。なお,最低限のスクリーニングは,論文の体裁や論理的・法的リスク,既出版論文との類似度等に関する基本的な確認であり,査読とは異なる」「プレプリントとして公開した論文をジャーナルに投稿する際,投稿先がそれを受け付けるかについて,まだ多くの国内誌では議論が進んでいない」


●E2542 - IAPによるハゲタカジャーナル・学会についての調査報告書
https://current.ndl.go.jp/e2542

 劣勢模様。

「ハゲタカジャーナルが主要な索引サービスや文献データベースに掲載される場合があるなど,ハゲタカジャーナルと質の保たれたジャーナルの判別が難しくなっている」
「ハゲタカジャーナルは1万5,500誌以上にのぼり,ハゲタカ学会に至ってはその開催件数が通常の学会の開催件数を上回っている可能性」
「研究者の中には,キャリアアップや周囲からのプレッシャーのため,意図的にハゲタカジャーナル・学会を利用する者もいる。このように,ハゲタカ行為が個人や機関の研究評価を有利にするための行動として位置づけられ,研究文化に根付きつつある。」
「オープンアクセス化のための著者の支払いモデルの悪用」


●E2543 - 電子書籍のメタデータに関するNISOの推奨指針
https://current.ndl.go.jp/e2543

 議論には時間がかかる。(←E2541)

「2022年2月,米国情報標準化機構(NISO)は,「電子書籍の販売・出版・発見・配信・保存のサプライチェーンにおけるメタデータに関する推奨指針」(“E-Book Bibliographic Metadata Requirements in the Sale, Publication, Discovery, Delivery, and Preservation Supply Chain”,以下「指針」)を公開した。」
「指針を策定したワーキンググループは,出版者,アグリゲーター,ベンダー,図書館,保存機関等の様々な団体で構成され,検討を通じて相互理解の不足が認識された点,それを踏まえてメタデータのワークフローや,各関係者のニーズの把握・調整に紙幅を割いている点は特筆される。電子書籍メタデータの標準化にむけた第一歩として,関係者間における実践的な事例の共有や合意形成に,指針は重要な役割を果たす」


●E2545 - 米国都市部の図書館員のトラウマに関する研究報告書
https://current.ndl.go.jp/e2545

 アメリカも(こそ)いろいろ厳しいとわかる、闘うったって限度もあるでしょう。

米国では図書館員はソーシャルワーカーの役割も果たしており(CA2023参照),ソーシャルワーカーによくみられる二次的外傷性ストレス(secondary traumatic stress, トラウマを持った相談者に接することで感じるストレス)を感じ,燃え尽き症候群(burnout)に陥ることもある。しかし,ソーシャルワーカーほどには支援体制が整っていない」
「多くの回答者が,図書館の組織としての対応もトラウマの一因となっていると回答した。 特に,現場の同僚は助けてくれるが上層の管理者たちは助けてくれないという意見がみられた。例えば,管理者が理不尽な利用者の味方をして現場の職員を叱る,銃や刃物を持った利用者に当然のように現場職員に対応させ警察を呼ばせないという事例」


●E2546 - 第1回デジタルアーカイブ憲章をみんなで創る円卓会議<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2546

 待て、次号的な。(2、3も出すの?)


●E2547 - デジタルアーカイブフェス2022-ジャパンサーチ・デイ<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2547

 本サイトを参照。

「アナログな調査活動とデジタル化された情報が結びつくことの威力,知の交流・交換や融通が,社会の発展・国の発展の原動力となる」


●E2548 - 国立国会図書館によるオンライン資料の収集範囲拡大について
https://current.ndl.go.jp/e2548

 母屋化するデジコレ。

「今回の法改正により,2023年1月1日以降に発行された民間の有償等オンライン資料が新たに収集の対象となる。発行者がDRMのない状態とし,メタデータを付したものを収集する」
「収集したオンライン資料は,国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)で提供する。原則としてNDLの館内でのみ利用が可能で,図書館送信(E1540参照)や個人送信(E2529参照)は行わない。」



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2022年12月06日

アメリカの図書館は、州図書館局、地域資産、モデル事業のサイクルが熱い(今日の本読みメモ『 #闘う図書館 』)


豊田恭子. 『闘う図書館 : アメリカのライブラリアンシップ』(筑摩選書). 筑摩書房. 2022.10.


●序章 図書館がつくる民主主義

・アメリカの公共図書館は、分断化された社会、排斥し合っている人々、崩壊しそうなコミュニティ再建しようとしている。地域のファシリテーターとなる。子供たちに議論の作法を教える、など。
・図書館活動の背景には、公的資金のバックアップ、図書館協会などによる組織的な研修、研究機関や民間資金の支援などがある。
・アメリカの場合は、何かを新しく始めようとすれば、すぐに制度の変更や追加予算の主張が始まり、関係者間で論争が沸騰する。実現しなければさっさと撤退する。←<e>実はこれが重要では。
・日本の公共図書館を見てみると、活動の発展を支える業際的議論や政策的連携がまだまだ弱く、持続させていくための体制が整えられていない。
・「博物館・図書館サービス機構(IMLS)」。1996、設置。国の博物館・図書館政策のビジョンを描いて政権に提言するだけでなく、連邦資金を原資とした助成活動を通じて、全米の博物館・図書館のモデル事業を戦略的に育成・推進してきた。


●第1章 地域変革の触媒としての図書館

・2016年「地域触発構想」の発表
・2017報告書「地域触発社としての博物館・図書館」
・2018戦略的5カ年計画「地域変革」(2018-2022)
・地域に根ざした博物館・図書館、および多くの地域組織が幅広くネットワークを組んで、地域のニーズやビジョンに応える。その際、地域にある資産を最大限に活かす。
・背景にあるのは、地方紙の衰退(ニュース砂漠)など、地域の対立、分断、共通基盤の喪失。
・「資産ベースの地域発展」(イリノイ州デポール大学ABCD研究所)。その土地の地域資産をつなげることによってコミュニティに化学反応をおこす。地域資産は、施設、機能、組織、活動、住民の営み、産業・歴史文化などすべて。(図「CommunityAssetsMap」
・博物館や図書館が日ごろから地域とのネットワーク形成によって知的刺激をもたらしてきたことを、さらにすすめてつなぐことそのもので地域を触発する。
・ALAが、図書館の役割を情報のハブから地域づくりのハブへ発展させている。その地域をつなぐのに、図書館は、親しみやすさ、中立性、住民からの信頼を得ていることが重要。
・とはいえ、図書館が単独で活動することや、リーダーになることを求めているわけではない。地域のアンカー機関として、人々と地域をむすびつけること。
・そのモデル事業について。地元の大学の研究室(専門分野の教授)と、課題を抱える市民をつなげるプログラムが多い。大学はまたの資産として認知度が高く図書館との親和性も高い。
・住民と行政をつなぐプログラム。ライブラリアンは基本的にヘルパーなので、人の話を聞くことに長けており、住民と行政との仲介によってスムーズに接触できるようになる。
・特に周辺においやられたり行政サービスから取りこぼされたりした人たちに、図書館側からアプローチする。
ニーズとリソース(地域資産(大学・研究者、行政、その他))をつなぐことによって、すべてのひとにとっての公正な社会の実現を目指すんだと。それは、社会教育や地域経済へのコミットメントという、これまでの方針の延長線上にあるんだと。

・<e>大学サイドの地域資産としての自覚がもっと必要、と心得た。なんなら”L型”として。


●第2章 博物館・図書館サービス機構の誕生

・アメリカ公共図書館史から
・アイゼンハワー大統領による「図書館サービス法」で一部未発達地域に連邦の図書館助成が交付されるようになり、ジョンソン大統領による「図書館サービス建設法」で全国対象になった。
・移民に英語を教える場として図書館サービスが役割を果たしていた。
・1970年代頃から、町の情報拠点としての役割が意識されるようになった。コミュニティ情報、地域ファイル、案内紹介サービスなど。
・「アメリカの公共図書館で、なにか新しい事業にぶつかったら、それはしばしば図書館サービス建設法にもとづく連邦の補助金を得て開始した事業である」

・1990年改正図書館サービス建設法の「相互協力」カテゴリに通信技術の利用が含まれ、多くの公共図書館がネットワーク構築に乗り出した。
・1992年情報スーパーハイウェイ構想。
・この構想で図書館を無視されることが危惧された。情報ネットワークにおける図書館の役割を、図書館コミュニティの外に届けることが課題。
・あたらしい連邦図書館法において、図書館界が市民の電子情報アクセス窓口になろうとした。
・「図書館サービス技術法」のドラフト作成。日本では法案は所轄官庁が作成する意識が強いが、米国では基本的に議員が法案を作成する。よって図書館界は議員に働きかける。
・1996年「博物館・図書館サービス法」成立。博物館・図書館サービス機構(IMLS)を創設。すべての館種の図書館を1つの法律のもとに統合し、助成事業を展開する。博物館と図書館がともに地域活性化の役割を担う。
・図書館サービス技術法で、図書館がインターネット接続拠点として認識され、市民の情報アクセス保証の役割を得た。
・「三つ目の要因は、図書館界のロビー活動の成長だ。…そもそも図書館界は、全国津々浦々の組織を巻き込んだグラスルーツ運動が非常に盛んで、それに長けた組織だとされているのだが、「技術法」以降は、まさにその強みを最大限に生かし、「図書館に予算を」と掲げた業界統一運動が展開されるようになった」


●第3章 インターネット時代の図書館

・アメリカの図書館界は、早くから、デジタルネットワークへの安価・安定的な接続が公共に開かれ誰もがアクセスできる環境を整備する必要がある、その拠点・アクセスポイントに図書館はなる、と考えていた。
・民間に任せていては、格差が広がる。フランクリンの郵便制度からはじまるユニバーサルサービスの保障が必要。
・図書館界は、情報スーパーハイウェイ構想に積極的に関わること、市民の情報アクセスポイントとなることを、声明として発表。
・1994クリントン大統領「すべての学校・図書館・医療施設を情報スーパーハイウェイにつなげる」
・実証実験の結果等を経て、図書館のデジタル情報環境整備とユニバーサルサービスが、市民の情報アクセスの保障と格差縮小に繋がる、と周知されるようになった。
・1996年改正電気通信法のユニバーサルサービス条項により、学校・図書館へのインターネット接料金続割引(Eレート)が始まった。
・1996年NYPLのSIBL開館。
・2017年調査。信頼できる情報を得るために必要なこととして、アフリカ系・ヒスパニック系の六割が公共図書館を回答。


●第4章 博物館・図書館サービス機構の発展

・IMLSの助成事業のうち、連邦による公募事業を通じた図書館政策の推進について
・ALA「地域を変革する図書館」プロジェクト(2010年代)。IMLSによる地域触発者としての博物館・図書館構想による。(→第1章)
→成功事例のケーススタディが、ALA年次大会やwebサイトで広く共有された。
→プロジェクトのワークショップや研修を受けた図書館が、自館プログラムのためIMLS助成金に応募。

・↓<e>ここが超白眉。モデル事業がサイクルしてるから効果倍増になってる。
「つまりALAは、自分たちが推進しようとするプロジェクトについて、IMLSの助成金を使ってまず初期段階の検討と研修プログラムの策定を行い、その後、私的財団から、より大きな寄付を引き出してモデル事業をつくり、その成功事例を研修の形でさらに共有することで多くの図書館を刺激し、各各館が独自のプログラムでIMLSの助成を申請するのを後押しし、それによってさらなる事例を増やす、という流れを作った」
「モデル事業の難しさは、それが終了したときに、その成果をいかに普及させていくかにある。選ばれた図書館が潤沢な助成金を受け取り、プロによる研修と手厚いサポートを受けて成功事例を生んでも、後に続く図書館にはその恩恵が共有されないため、実践が広がっていかないのだ。しかしIMLSの公募事業を活用すれば、初めのモデル事業に選ばれなかった図書館にも道が拓ける。彼らは先行事例のノウハウを享受しながら、助成金も受け取ることができるのだ。」


・オバマ大統領の時、オバマケア(公的保険制度)への登録窓口として、図書館が役割を担った。
→その際OCLCが構築していた情報プラットフォームで、医療情報の提供や、図書館印向け研修ビデオ等を掲載した。
・行政関係のワンストップフロントとしての役割が強化されていく。

・「図書館側にしてみれば、図書館関係の助成事業が国や州、地域のレベルで常に複数行われている状況であり、プログラムを応募する機会が、次々とあちらこちらで生まれている」
・2017年からのIMLS助成事業採択は、「計画」「フォーラム」「実施」「調査」の4カテゴリ。
・「計画」では構想段階での調査や連携模索が可能。「フォーラム」は会合のための助成。実績のないアイデアでもトライすることが可能になり、小さな図書館でも助成に応募できる。トップランナーだけでなく、図書館階全体の底上げ。(←<e>ここも白眉)

・<e>まわっていく仕組みと、とりあえずやってみる、が大事。


●第5章 国と地方をつなぐ州図書館局

州図書館局なしにアメリカにおける今日の図書館の発展はなかった。
・IMLSから各州に交付された州事業への補助金を、州図書館局が采配する。それはIMLS予算全体の85%をしめる。
・連邦からの予算の受け皿、州内の図書館振興に責任を持つ、専門部局が設置される→連邦と州のつなぎ役としての、州図書館局。
・連邦は予算は出すが口は出さず、州図書館局が采配をとる。(5カ年計画が義務づけられる)
・全国基準ではなく、各州の事情をふまえた計画によって、独自の性格を色濃く持つ州立図書館の多様性が加速した。「二つとして同じものはない」。(ただし格差も懸念)
・IT化・ネットワーク化では、州域ネットワーク事業を担う。90年代後半の情報サービス拠点化においては、州の事情にあわせた計画で事業を実施。
州内の広域図書館ネットワークの構築→大学図書館と公共図書館の垣根を取り払う
・ステート・ライブラリアン。図書館学のほかに行政・財政・経営、資金調達、政治力などのスキルをもつ専門職業。
・州図書館局による商用データベースの一括購入など。
・「アメリカでは、連邦資金は「シード・マネー(元金)」だと言われ、それを元本にして、いかに地方自治体や民間から資金を引き出すか」「連邦資金が州や地域のマッチング資金を引き出し、新たな図書館サービスを生み出す。その有効性が実証できれば、それは翌年以降の地元自治体の予算に反映される。ひとつの成功事例は連邦の支援を受けながらモデル化され、州図書館局による研修によって広げられていき、それが各地域でさらに多くの成功事例を生んでいく。図書館サービス全体の認知度の向上につながり、それがまた大きな予算獲得に結実する」

・<e>州図書館局、頼もしすぎないか。それは、”機能”という州立図書館


●第6章 トランプvsアメリカ図書館

・トランプ政権下の四年間、ALAが得意とするグラスツールのアドボカシーがどのように唱導されたか。
・2018年度予算発表でIMLSが閉鎖対象とされた即日に、ALA会長が声明を発表した。
・「あなたの選挙区の選出議員に電話を」「選出議員の関心領域や活動歴を知ること、それらと自分が訴えたい問題との結びつきを見つけること、そして何をしてほしいのかを簡潔に語ること」「議員との初面談を怖がらないで。いったん話せるようになれば、その後は何より力強い味方になる」
・議員宛てのEメールや電話メッセージのドラフト。すべての選挙区の選出議員の一覧表。連邦図書館予算に賛成したかどうかと、今年、もう署名したかどうかが、ひと目でわかる。地元新聞の編集委員の連絡先。メディアの力を借りて、その地域の議員に呼びかける。
・「二〇一九年一月、ワシントン支局は、アドボカシーのためのウェブページをリニューアルした。それぞれの図書館員が、連邦、州、地元自治体に対し、何ができるかをステップ・バイ・ステップで解説。年間スケジュール、地元の有力者へのアプローチ法、メディアとのとの関係構築、多くの体験談、ビデオメッセージ、メールの文例集、SNSやポスターに使える画像など、新たなページには様々なツールが満載されている」
・「議員は地元で起きていることを知りたがっている。ライブラリアンほど地域で起きていることを的確に語れる人はいないのだと。日頃からアウトリーチ活動を行い、地域を知っているという自負があればこその発言だろう。」

<e>我々、アドボカシーは苦手でも、情報の編纂と共有は本来得意なはず。


●終わりに

・「彼らは一〇年以上の年月をかけて、連邦および州予算、さらには民間資金まで調達することで、商用データベースを含めたあらゆる情報アクセスをすべての利用者に無料で開放するという理念の実現にこぎつけたのだ。アメリカの図書館界は常に、現実と妥協するプラグマティズムをもちながら、理想主義の旗を降ろさない。社会の変化に即応し、柔軟に変容しながらも、現状を追認して終わらせることなく、あるべき姿を追い続ける。」
・(NYPLの映画)「「なんとも羨ましい限り」といった感想に終わりがちなことには、残念な思いが残った。」

posted by egamiday3 at 20:55| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月04日

本読みメモ『「大東亜」の読書編成』: 第三部「流通への遠い道のり」、そしてこの本は…


和田敦彦. 『「大東亜」の読書編成 : 思想戦と日本語書物の流通』. ひつじ書房, 2022.2.
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1129-8.htm


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第三部「流通への遠い道のり」
第8章 戦時期の日系人移民地の読書空間 --日本語出版情報誌から
第9章 戦争表象を引き継ぐ --『城壁』の描く南京大虐殺事件

■第8章 戦時期の日系人移民地の読書空間 --日本語出版情報誌から
ブラジル日系移民
雑誌(書籍情報)

・書物が拡がり、読者に働きかける、その仕組み・機能について、ブラジル・サンパウロ州の日系人移民地、日本語書籍情報雑誌『文化』(1938〜)に見る。
・雑誌『文化』: 書籍情報誌。1938.11-1939年、サンパウロ刊行。メインが縦組み日本語、裏表紙にポルトガル語数ページ。
・遠藤書店:日本語出版物をサンパウロで販売。『文化』を刊行。

・背景:ブラジルにおける移民同化政策(1937〜)。外国語教育禁止、日本語出版物のポルトガル語併記義務づけなど。→1940日米開戦後は、日本語は敵性外国語、公的使用は禁止。
・日本からブラジル移民数は1938年で20万人近く。ピーク時1933年で24000人。その後入国制限政策で減少。
・邦字新聞:日伯新聞、伯剌西爾時報、聖州新報、日本新聞など、日刊かつ大規模(日伯新聞で2万部近く)。
・当時のブラジルでの日本語書籍雑誌流通。遠藤書店。新聞社の販売ルート。日系人の協同組合、各地の日本人会・青年会。青年団が、その地域の新聞編集、書籍雑誌の取次販売をおこなっていた例など。
・日本からブラジルへの日本語書籍の流れ。日本力行会:海外移民の支援・教育をおこなう民間財団法人。国内によびかけて移民地へ図書雑誌を寄贈する活動。
・日本図書館: オフィシャルには無いが、小規模な図書室。地域や日本人学校父兄会などによる互助会的なもの。

・雑誌『文化』の特徴は、質の高い読書環境を作り出そうとしたところ。学術・芸術・専門知などホワイトカラー層のニーズあり。評価の高い書籍、教育学術関連の図書などの紹介。
総合雑誌・文芸誌から記事を選定して、転載する。オリジナルな文芸作品などはわずか。「創作は皆無」と評価されるしかない。(<e>通常の文学研究なら研究対象として不充分、だが、本書のポイントはその研究対象へのまなざしが違うこと)
・収録著作にしぼって評価すると「この雑誌全体が持っていた重要な特性が見落とされてしまう」。それは「この雑誌が日本の書物を伝え、教え、広げる雑誌となっていたという特徴」。
・『文化』は、教養を意識して選書している。(移民地読者の教育教養に役立つ図書)
・『文化』は、当地ブラジルにおける日本語出版・読書環境の整備を意識的に、論評、問題化する。(日本文化図書館の設置の必要性、など)→読書環境や、出版の思想的潮流に対し、批判的な距離をとっている。(日本文化・日本精神は移民地にとって自明不変ではない、等)
・例:田村俊子短編小説「侮蔑」(田村俊子全集9)を転載している。日本刊行の小説。日本に帰国した2人の日系米人二世を描く。ジミイは日本に憧れ日本に残る。万利子はアメリカに戻り二世として生きる。本編(文藝春秋)ではジミイに重点が置かれているが、『文化』掲載版からは全体の1/4が削除され、その結果、両者の対話・議論が拮抗している状態。←<e>文学作品研究。→移民地の読者に対して、自明な価値観(日本)の提示ではなく、疑問・議論・問いかけのような提示


■第9章 戦争表象を引き継ぐ --『城壁』の描く南京大虐殺事件
南京大虐殺事件(南京事件)
小説『城壁』

・書物の広がり、享受の様子を、国内で歴史的にとらえる(←→これまでは同時代で空間的な広がり)
・書物の、「戦争の記憶を引き継いでいく」機能について
・<e>本書の中では、唐突感ある。←→本書のアプローチの可能性のひろがり?(きれいにクローズでなくオープン)
←2020年復刊本『城壁』の解説「榛葉英治の難民小説」が初出。
・<e>ここで”阻む””忘却”を扱う(あるいは忌避、上書き(被害者→加害者)、資料改竄)

・南京事件(1937-1938)
・南京安全区国際委員会による証言・記述資料
→『戦争とは何か:中国における日本軍の暴虐』(H.J.ティンパーリー, 1938(英))
→中国語翻訳版
→日本語翻訳版『外国人の見た日本軍の暴行』(日)(軍部の極秘出版)
→榛葉英治が入手(1944、満州国外交部調査2科)
→捕虜→脱走→引き揚げ
→1964小説『城壁』を刊行

・榛葉英治(1912-
・小説『城壁』、自伝、日記(1945-1998@早稲田大学図書館)、自伝的小説『赤い雪』『極限からの脱出』
・日記によれば、1962年頃から具体的に構想・準備
→1963年、刊行を予定していた中央公論社から掲載を断られる。関係者から「文句がいって、取止めとなった」「つまり、日本には言論の自由はないのだ」
→原稿を掲載するあてがないまま書き続け、生活を犠牲にしながら、長編化
→1964年、完成(602枚)→河出書房新社から刊行。

・『城壁』
・複数の視点で南京事件を描いたもの。
・日本軍のある小隊からの視点と、南京安全区国際委員会からの視線とを、交互に配置する。
・『戦争とは何か』(当時まだ一般に刊行されていない)から直接大幅に引用して構成されている。(創作としてふくらませている)
・当時の朝日新聞南京支局員の回想記や、当時南京を訪れた評論家の朝日新聞記事をベースに、架空の人物として登場させる。
・出来事やその時系列は記録にもとづいている。人物の背景等は創作している。(「この作品は、その記録の部分は以上の資料を基にしているが、これは純然たる小説であり、構成も、主要人物も、すべて作者の創作である」)
記録『戦争とは何か』からの引用部分にも変更・追加が6箇所ある。なぜ記録自体を改変したのか。
・例:作中の異なる視点だった、南京安全区国際委員会と、日本軍小隊が、避難所(金陵女子文理学院)で対峙する、という創作出来事が登場する。それに沿った形で、委員会の事件報告を作り替えている。→これによって、複数の視点が交差する・結び付くという場面が作られる
・例:複数の恋愛エピソードが描かれる。それにあわせて、委員会報告や書簡の引用が修正される。
・和田「創作だからと言う理由でその資料自体を改変して示す行為は…配慮と尊重を欠いている」
・(日記や著述から)、特に1970年代以降、抑留者の方に関心が高まり、戦争被害者としての感情が加害者としての記憶を圧倒していく。
・『城壁』は1964年刊行後、現在までほぼ知られず研究も評価も無い。「いったい刊行から今までに、この小説に何が起こったのだろうか。」
・堀田善衛『時間』(1955):日記・一人称・モノローグで事件を描写、文学小説の話術で騙らぬ、小説的な記述を故意に拒否
・『城壁』:物語として描く。全体像をわかりやすく、異なる人々の視点からうかびあがらせる。
=南京事件を歴史知識に基づきながら創造可能な物語にして広く発信していった小説として重要。にもかかわらず、かえりみられてこなかった。

・南京事件は、物語化すらされない状態が長く続く。歴史認識として定着しない。事件を否定する言説が登場する。忌避・抑圧が生じる。
・近代文学研究者の、著名作家作品を扱う慣習、が忘却の原因。中間小説・大衆小説が広く読者にどう作用したかも重要。

・『職業作家の生活と出版環境 : 日記資料から研究方法を拓く』和田敦彦編 ; 須山智裕 [ほか執筆]. -- 文学通信, 2022.6.
・榛葉英治の日記・自伝等を使って、新しい文学研究方法をさぐる。タイトルにその作家名を掲げない。「特定の作家を研究する」というスタイル自体を問い直すという問題意識から。生活や出版環境、読み書きの行為をとらえる。
・榛葉英治にとって、「南京事件を描く」ことと「引き揚げ体験を描く」こととがどう結びつきあっていたのかを、日記・小説を通して明らかにする。(=日記資料の可能性・有効性)



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■この本は…

序章
終章
その他


・書物が国境を越え、時を超えて拡がり、残されていった過程=書物(情報や知)の読者への広がりをとらえる。[#序章]
・書物の読者への広がりをとらえることで、国内については文化統制を、海外へは文化工作を、その両者の連続性を、解明する。[#終章][#序章]
・<e>戦争は発火のずっと前から静かななりをして書物を介しておこなわれていたことがあらためてわかる。

●対外文化事業を所管する行政組織(序章)
・本書の対象は第二次世界大戦期。日本の価値を海外に知らせアジアに広げようとする活動+その価値付けを国内で国民に浸透させていく活動が活発化していた。[#序章]
・海外との学術文化交流に関心が高まるのが、1930年代[#序章]
・外務省に国際文化局(対外的に文化事業を展開する部署、1933年設置)[#序章]
・財団法人国際文化振興会が設立される(1934年)[#序章]
・文部省に思想局を設置(1934年)。日本文化の集約・発信。[#序章]
・文部省主導で官民による機関・日本文化協会を設置(1934年)。日本文化精神を国民に浸透させる。雑誌『日本文化』『日本文化時報』刊行。[#序章]
・1936年、情報委員会を設置。各省庁にまたがって、国外への情報宣伝・対外文化事業、国内への情報統制をとりしきる。→のちに内閣情報部→情報局。[#序章]
・1938年興亜院を設置する。
・1940年「大東亜共栄圏構想」の公表[#序章]
・日本を中心とした大東亜というあたらしいパッケージの文化工作へ。[#序章]
・東南アジア各地に日本文化会館を設置する。

対外的な文化外交文化工作が、日本国内への文化統制と結びつき会う
←<e>本書はここに注目。=発信するに値する日本文化の対外的価値・意味の創出。具体的なコンテンツを教え伝える。「我が国の精神文化」「本邦固有の思想」。この時期の対外文化事業構想は日本文化の振興+その国内統制&組織化への強い指向性をもつ。[#序章]


●@文化の発信・宣伝を、著者・書物(の内容?)自体からだけでなく、以下から、とらえる。[#終章]
 「教える」「紹介する」「翻訳する」「広げる」人や組織
 「仲介者」
 広げていく「技術」、広げていく「仕組み」を明かしていく
・<e>本書ではそれを「技術」「仕組み」と表現しているところ。
・<e>とらえかたを多角的にする
・こうした役割はこれまでの研究で見落とされてきた。文学研究では、作家や作品の研究が主であり、それを広げる人々の活動に目が向けられない。[#序章]
・書物を紹介し・・・に眼を向けるのが、こうした役割がこれまでの研究で見落とされてきたからである。[#終章]
(←<e>それはたぶん「文学研究において」。図書館史・書物史研究から見ると、むしろ作品の内容に踏み込んだ分析が文学研究だな(城壁、講談、山田長政)という意味で、文学研究と図書館史研究両者の”融通”がポイントか。)
・<e>逆に言えば、(大方の本誌読者の立場から見れば)そういった研究は図書館史・出版史でおこなわれてきた。はたしてそこでは作品の内容・表現や創作性、作家・文学史といったものにどこまで踏み込んで考察されているか、ということも問われるべきではないだろうか。肝要なのは両者のあいだを往復する、その”融通”だろう。
・<e>『読書の歴史を問う』より。「雑誌の内容を検討しても、それがどのような経路をへて、どれだけの範囲で広がり、どういう場で読まれていたのかが分からなければ、その雑誌の果たした役割は実際にはっきりしない。」「そしてまた、読者への具体的な働きかけを問うことなく出版史や流通史を記しても意味はない


・第一部では、「大学」「読書指導運動」「読書傾向調査」「図書選定」「読書会」=読書を統制する「技術」=「仲介」[#終章]
・第二部では、現地にのこされた戦時下の日本語資料から、
 -仲介者による文化工作をとらえる。
 -「資料そのもの」からではなく、「その資料があることの意味」を問う
・<e>この研究手法は、『読書の歴史を問う』ほか読書の歴史を研究するという和田氏のこれまでの問題意識とつながるし、実践編っぽい。


●A国内の文化統制と、対外的な文化工作とは、連続性がある。[#終章]
 -日本の価値を教え、広げていく営為。日本での統制が、海外へ拡がる。
 -学術
 -のこされた蔵書
 -岡倉天心
 -講談
 -山田長政


●「これからの」書物の広がりへの問い
・これからの日本の書物の広がり、日本についての知や情報の広がりを、どう考えていくのか[#終章]
現在そしてこれから、私たちが日本をどう発信し、海外の文化とどう関わり合っていくのか[#終章]
・日本語の書物を集めて外国に届ける、という発想や意義自体を見直す必要がある。
日本に永続的で自明の価値を見出し、それを一方的に押し広げていくのは、日本を中心として都合良く作り出されたもので、日本文化の正確なコピーを世界に広げることに価値はない。[#終章]
・ひろがっていった先で享受され、新たな表現、文化をうみだす。可能性。(例:日本人コミュニティの活動。現地で生まれた読書空間、ネットワーク。)[#終章]
・<e>日本のママを輸出して押しつけるのではなく。×日本を、○日本も。



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■『読書の歴史を問う』

○遠くの読書から、自身を知る
「そこに日本の書物があることも、それを読む人も、読む理由も当たり前ではなく、すべてが「なぜ」という問いをともなわざるをえない。」
「私たちの読書の過去も、現在も、当たり前でも自明でもない。読書の歴史を問うのはそれゆえだ。」
「読書について、このような不自由さを意識するには…「いま・ここ」での読書以外の事例と比較・対照するのが、もっとも効果的」「「遠くの読書」について知らねばならない」「

○本書はマニュアル
「読者、あるいは読書の歴史をどうやって調べ、学んでいけばよいのだろうか」
「主に近代以降の日本を対象として、できるだけ実践的に、そして体系的にこのことを説明していくこと、それが本書のねらい」
「読者をめぐる多様な問題への糸口を、具体的な資料を通して見いだしていくことができるよう本書は構成されている」
読書と読者の歴史について調べる方法、研究する方法を、できるだけ整理し、順序立てて示すようにしている」
「具体的に読書を研究する方法や事例をあげながら」
「いわば実践的なマニュアルのようなもの」

○「たどりつくプロセス」をとらえること
「本書ではこのように、読書を…書物が読者にいたる経路、流れとして捉えていく」
「読者にいたるこの書物の流れや、それに対する制約がどのように生まれ、広がり、変化してきたのかの歴史」
(読書のプロセスを2つにわけると)「物理的に書物が運ばれ、読者にまでたどりつくプロセスと、その書物を読者が読み、理解していく読者の内なるプロセス
<e>実際には、本書では特に「たどりつくプロセス」に焦点をあて紙面を割いている。
「読書の問題としてこの「たどりつくプロセス」…の研究が十分なされてきたとは言いがたく、むしろ読書とは別に、それぞれの組織や機関の歴史として(例えば出版史、図書館史といった形で)研究されてきているのが現状である。」
「雑誌の内容を検討しても、それがどのような経路をへて、どれだけの範囲で広がり、どういう場で読まれていたのかが分からなければ、その雑誌の果たした役割は実際にはっきりしない。」「そしてまた、読者への具体的な働きかけを問うことなく出版史や流通史を記しても意味はない


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■著者のブログ
http://a-wada.blogspot.com/

・2022年2月4日 新刊『「大東亜」の読書編成』刊行
「この本にまとまった調査は2013年から」
「調査して出会った資料や見つかったことが、自分の予想や想像を越えていたこと、そして自分の構想そのものがそれによってかわっていった」
「楽しいのは、それが想像通りになることではなくて、自身の想像の仕方をかえてくれるから」

・2022年8月20日 図書館の戦前業務文書の調査
 現在は長野県内にある公共図書館の戦前・戦中の業務文書を調査中

posted by egamiday3 at 17:04| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年9月・10月・11月のまとめ

●総評

 成果を求めるのではない。けど、我々は言葉で生きるのだ、と思う。

●2022年9月・10月・11月のまとめ

・Code4lLib Japan
・高校生クイズ2022
・突貫掃除week
・自宅宴
・「たまにフォローしてくださってる人が誰かを確認しにいって、のけぞりのたうつことがある。過度な期待はしないでください。」
・EAJRSリスボン
・オンラインミニシンポ。「我々はもっと、ちょこまかとディスカッションしていい。」
・笑の内閣
・朝から謎会議。地頭というか地リテラシー。結論、痩せる。
・ゴーレム逡巡、からの、結局感激。
・最高の座席。「えらべるんですか?」「えらぶんですか?」
・数年前の大阪地震で民博ヘルプに行った際、使おうと入手した防塵マスクDS2、謎の日の目を見る。
・今日の「クイズ鑑賞」メモ。「クイズを観るクイズを観ると言っているがクイズを観て何がどう楽しいのか、ということをたまに問われるので、クイズを観て何をどう楽しんでいるのかを言語化したメモです。」
・落ち着いてからもバンガロー。
・国立大学図書館協会シンポジウムは内輪の会か。
・秋季寄席がスタート。ハイブリッドの効果覿面説。
・インバウンド来客が急増(というか復帰)
・愛と哀しみの高雄〜清滝ルート。
・「消えたローマ字とわかりやすさについて」
・マイルクライシス
・ほけんの窓口
・置き配クライシス
・どんとこい鎌倉殿
・デジタルアーカイブ憲章円卓会議に登壇。議論の国際化と、DEIについて。
・「そういうデジタルアーカイブを目指さないんだったら、デジタルアーカイブ立国なんかやんなくていいって、わりと本気で思ってます。」
・「silent」
・「拾われた男」
・「ジャパニーズスタイル」
・「エルピス」
・『大東亜の読書編成』書評執筆
・方舟4艘目駆け込み。副反応ほぼ無し、むしろ体温下がるの謎。
・『闘う図書館』
・「図書館に向けた図書館等公衆送信サービス説明会」。現場パンクするわ。
・平家物語、読了。灌頂の巻よ。
・充実した一日は充実した朝食に宿る。
・鯖、カツカレー、そしてカキフライが映える風景。
・フィフティ・フィフティ
・関西文脈の会・読書会『大東亜の読書編成』編。文学と図書館史の融通について。
・寒くなって朝一シェアサイクルがしぼむ
・ジェットウォッシャー
・「#NDL全文使ってみた〜「次世代デジタルライブラリー」&「NDL Ngram Viewer」」
・「学校はいま、図書館の支援を求めている〜地域資料のデジタル化が拓く図書館の未来〜」
・清滝〜高雄、紅葉とメタバース
・「あんなに優しかったゴーレム」オンライン配信
・月がこっちに出てる、月蝕。
・メタデータトワイライト
・越境シンポジウム
・日本語の歴史的典籍国際研究集会
・デジタルアーカイブ学会第7回研究大会一般研究発表 (オンライン)
・香る膳
・突如始まる解答編
・『闘う図書館』
・謎御所ミーティング
・日図研セミナー「図書館における電子媒体資料の活用について」
・博覧展@龍谷ミュージアム
・ガスファンヒーター点火の儀
・格差拡大装置としての図書館サービスについて
・血圧クライシス
・格差拡大装置としてのデジタルアーカイブについて
・第3回円卓会議。成否は?
・「図書館総合展2022カンファレンス in 鳥取」「都道府県立図書館サミット2022」。学校図書館が熱く、都道府県立図書館が頼もしい。
・浄住寺・地蔵院
・御所・哲学の道ルート
・『君のクイズ』


posted by egamiday3 at 08:35| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする