2023年02月18日
「図書館の男女割合は」「女性が多い理由」他 : LRG第40号特集「図書館とジェンダー」を読んだメモ
『LRG(Library Resource Guide)』第40号 2022年夏号 特集「図書館とジェンダー」
https://arg-corp.jp/2022/08/15/lrg-28/
●「巻頭言」岡本真 / 「はじめに」「おわりに」猪谷千香
・「「図書館とジェンダー」という特集を進めるうえで迷いや揺らぎがなかったわけではありません」(巻頭言)
「ジェンダーについて特集することは「冒険」だった」(おわりに)
→<e>そうならないようにもっと話題を可視化・遍在化しよう、それはどんな話でもどんな場でもいい。後に出るように、”視点”なんだし。
・(ジェンダーまわりの違和感について)「心の片隅に小さなトゲのように、ずっと刺さったままだった」
「これらの問題と図書館は、どう関係があるのか」
「図書館を取材しながら刺さり続けた小さなトゲの正体は何なのか。些細なことに目を背けずに、知らなければならない」
・他、婦人閲覧室、樋口一葉、大正期の女性図書館員など、歴史のまとめ。
●テーマ1「女性や男女共同参画を支えてきた図書館」猪谷千香
・国立女性教育会館女性教育情報センター
「必ずしも「本」ではないものが多い」
「政府や自治体の刊行しているもの、女性団体・グループが発行するミニコミ、大学や自治体が出した広報誌やパンフレットといった、書籍として流通していない資料が半分を占めます」
「紙媒体からデジタルに移行しているものもあり、そういったものはサイトがなくなるとあっさり消える等、継続して提供することが難しく」
→<e>特に灰色文献とジェンダー問題との近しさが特徴的で、そういえば自分も灰色文献の取り扱いをリアルに実感したのはWings京都だったなと思うので、灰色文献を寄席で講義する際にはこのあたりを具体的に紹介した方が伝わりやすいかも。
・神奈川県立図書館
県立かながわ女性センター閉館→神奈川県立図書館に一括して移管。その資料を別置から再整理するにあたって、NDC分類に加えてコレクションを示す「WB」というラベルを貼る。
→<e>ユニークとユニバーサル
・名古屋大学ジェンダー・リサーチ・ライブラリ
「企画展やポスター展示は、研究員やカウンター業務を担当している大学院生がつくってくれています」
(創設時、戸惑いもあったという話から)「学内にジェンダー研究者がどれほどいるのかみえなかったからです。でも、ジェンダー研究は、たとえば文学、歴史、政治学、法学、あるいは環境学等、実は多岐にわたっています。GRLが創設されたことによって、それが可視化され、学内外の研究者のネットワークが構築されつつあります」
→<e>学際性と、ジェンダーは”視点”である(後述)、という話。
●特集インタビュー「男女共同参画センターの情報ライブラリーが担う役割 : 生き方を変えるような体験が起こる場所」木下みゆき
<e>全編必読&読み返すべき。
・「ジェンダーは分野ではなく視点」
「阪神・淡路大震災の頃までは、地震の分類番号にはジェンダー視点の資料は少なかったのですが、DVや性暴力を受けた女性の支援活動をしていた「ウィメンズネット・こうべ」が『女たちが語る阪神大震災』(1996年、木馬書館)を出した頃から資料がふえていきました。私たちも一般に流通しない「こんな活動をしました」という情報やグレイ・リテラチャーの本を丁寧に集めて、地震や災害の分類で手に取ってもらえるよう」
・「講座を企画することも情報発信」
「カウンセリングで(センターを)訪れた方に、カウンセラーがライブラリーをすすめてくださる」「電話でも、「いま、こんなことでしんどいんですけど、同じような人が集まるグループはありますか?」」「別の機能をもつセンター、たとえば配偶者暴力相談支援センター等もありますが、なかなかみえにくい」→<e>”図書館”である/やる理由。
「行政や教員向けのレファレンスを、大阪府民への間接支援だと考えて」
●テーマ2「図書館の男女割合はどうなっているのか?」
「図書館におけるジェンダーバランス」佐藤翔
・<e>先行研究・調査のまとめは本稿の冒頭がマスト。
・「本稿では公共図書館で働く人たちのジェンダーバランス(男女比)について、平成30(2018)年度の社会教育調査のデータに基づいて分析」
・女性比率が高い
・非常勤職員の女性比率が高い(9割)
・館長の女性比率は30%、2005年に比べ倍増している
・「近年しばしば指摘される公共図書館における非正規化の問題は、女性の雇用が非正規職員に置き換えられてきた結果であると言える」
・ジェンダーと資格保有率。
「すべての雇用形態で女性の資格保有率の方が顕著に高い」
「この結果が示しているのは、総じて現在の公共図書館員が多くの女性にとっては望んだ仕事であり、男性にとっては必ずしもそうではない、という実態である」
「女性館長等に限ればちょうど6割が司書または司書補の資格をもっている」「女性館長の多くは現場からのいわゆる「たたき上げ」」「男性専任職員、そして男性館長等の多くは…異動の結果、図書館に「やってきた」人々と推測される」
「進んで図書館で働いている女性たちにとってのキャリアの階梯のジョブが、望んで図書館に来たわけではないであろう男性に占められているという構図はやはりいびつであろう」
←<e>統計を読み込んでここまで喝破したmin2さん。
●テーマ3「図書館職員に女性が多い理由」
「司書を選んだのであって、待遇を選んだのではない : 図書館で働く非正規司書たち」渡辺百合子
公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)の全国調査から。
<e>本稿については、「公務非正規労働者の待遇の低さや不安定雇用等の問題の背景に、ジェンダー不平等の問題があり、女性の経済的自立を無視した政策の問題がある」というはむねっとの分析もさることながら、そこへたどりつく以前に、読む者各自が調査結果データの厚みをしっかり咀嚼すべきだな、と。その結論は、端的には現れ得ないし、またその必要もないはず。
●テーマ5「ジェンダーギャップに向き合う活動」
「ウィキペディアのジェンダーギャップを埋める「#WikiGap」」田子環
<e>この活動は司書としての本質的な話。なので、記事丸ごと。
●テーマ4「図書館におけるハラスメント問題」松田彰
●「図書館とジェンダーに関するアンケート」
<e>特に図書館職員に対するハラスメントは、まず組織がどう対応、被害者をケアするのか、が一番の問題なので、「Q6.ハラスメントへの対応と対応結果」という設問のところで、「被害者がどうしたか」と「結果どうなったか」だけでその間にあるはずの「組織はどうしたのか」がわかってないのが、違和感ある。
一方で「利用者から痴漢行為があっても、管理職がほぼ男性のため男性目線での対応になりそれが二次加害」(自由回答)なんだったら、これもう「パワハラ相談は外部に。ジェンダーギャップは外部の第三者委員会が評価する」(自由回答)しかないだろうと。じゃあそれ以前に”ギルド”には何ができるか。
2023年02月17日
2023年02月15日
今日の「CA読み」メモ: 共有と発信が大事、Googleブックス、図書館員の多様性 他
●E2549 - コロナ禍の学校図書館:英国学校図書館協議会の報告書
https://current.ndl.go.jp/e2549
イギリスもたいへんだし、日本も頑張ってる、だから情報共有が肝なんでしょう、日本の事例・経験の海外発信的な意味で。
「本稿執筆中に,日本の学校司書がコロナ禍で貸出冊数の減少や電子化の流れに対応して学校ウェブサイトに図書だよりを掲載し,教員向けに毎月の図書館利用状況の周知を行う報告に目が留まった。…英国と同じように,日本の図書館関係者も努力している。そこに,支援団体が教育関係者と図書館との連携をどのように擁護していくのかが問われている。」
●E2550 - 「論文工場(paper mill)」へ取るべき行動:COPE報告書
https://current.ndl.go.jp/e2550
「評価」という出口の問題がつらい。
←→E2561。
「「論文工場」とは,論文を「製造」して研究者に代わり学術雑誌へ有料で投稿することや,製造した論文のオーサーシップを販売すること」
「ある出版社は「論文工場」の標的となった2つのジャーナルに対し,70か国以上から疑わしい論文が2年間で約2,000件投稿された」
「大規模な出版社は論文の信頼性をチェックする専門チームを設置するなどの対策を取っているが,小規模な出版社や学会等がこの様な行動を取ることは難しい。出版社だけに対処を任せるのではなく,学術コミュニケーションに関わる者全てがこの問題を認識し,共同で対策に当たることが望ましい」
●E2551 - 学術出版物へのアクセス及びその再利用に関する報告書(EU)
https://current.ndl.go.jp/e2551
「権利保持戦略とは,学術出版物のOAでの公開を担保するための取組である。具体的には,大学が教員に対し,学術出版物の著作権を大学に譲渡し,学術出版物を大学のリポジトリに登録することを義務付ける」「権利保持戦略の採用に当たり,大学が著作者に著作権の譲渡を求める場合,OAの実現に必要な権利のみを要求するようにするべき」
●E2552 - 2022年IFLA年次大会オンラインセッション<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2552
↓これもっと追加で知りたい、知ること。(反対した博物館の考えも含め)
「Missoula Public Library(米国)は,地域に点在する非営利の教育機関を統合したものである。当初,科学博物館など各機関は独自の立場を失うことに否定的だったが,住民の意見を踏まえ,最終的には自発的に図書館の傘下に入った」
●E2553 - Googleブックスプロジェクトの歴史とその影響<文献紹介>
https://current.ndl.go.jp/e2553
全編重要。
●E2554 - 電子書籍のアクセシビリティに関する日本産業規格
https://current.ndl.go.jp/e2554
不明を恥じる。
「購入する前に,その電子書籍が対応しているアクセシビリティ機能を知りたいというニーズが生じる」「そこで,「JIS X 23761:2022」は,「アクセシブルな品質の発見可能性」として,アクセシビリティメタデータの提供を求めている」
●E2555 - イタリア「文化遺産デジタル化計画」とその反響
https://current.ndl.go.jp/e2555
これは。
「パブリックドメインの文化財の画像データについても,商用利用であれば課金することが求められている」
●E2556 - Code4Lib JAPANカンファレンス2022,オンラインにて開催
https://current.ndl.go.jp/e2556
ニューノーマル。
「カンファレンスがオンライン開催となって3年目になる。運営,参加者ともオンラインでの活動に慣れたこともあってか,円滑に2日間のカンファレンスを終えることができた。」
●E2557 - 第18回電子資料の長期保存に関する国際会議iPRES2022<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2557
「デジタル資料の長期保存の環境への影響について評価したものが目立ち…ベストポスターに選出されたオランダデジタル遺産ネットワークによる発表も,デジタル資料の長期保存活動のCO2排出をテーマにしたものであった。」
●E2558 - 「ひろしま子どもサイエンスライブラリー」の開設
https://current.ndl.go.jp/e2558
「元々,当館では,専門性の高い資料の収集や…「県立図書館ならでは」の役割を果たせるよう取り組んできた。こうした取組に加えて,広島県教育委員会が行っている「広島版『学びの変革』アクションプラン」に資する取組として,「探究的な学び」を図書館資料の充実により支えることを目指した」
●E2559 - 米国公共図書館の職員と多様性に関する調査
https://current.ndl.go.jp/e2559
おかしいじゃないか(日本の地方公務員の件)。
「74.8%が包摂的な職場文化の醸成を目指しており,52.7%が組織に浸透する人種差別をなくそうとしていると回答している。しかし,具体的なプログラムを報告している図書館は極めて少なかった。」
「公平性・多様性・包摂性(EDI)」「図書館の95.2%がEDIに関する一つ以上の取組をしており,多様な著者や視点に配慮した蔵書構築(87.9%),EDIトレーニングや専門職としての能力開発に職員が参加することへの支援(78.5%),計画策定のための地域の人口統計の分析(76.0%)といった取組が多かった。」
(日本)「2015年に公立図書館・大学図書館を対象に「多文化サービス実態調査」…「多様な文化的・言語的背景を持つ人」が,館内に「いる」と回答したのは31館(2.6%)に過ぎない」「考えられる一つの要因として,「公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わることを職務とする公務員となるためには日本国籍が必要であるとの立場」から行われる公務員の任用等の制限が挙げられるが,地方公務員法上規定があるわけではなく…公共図書館において多様な人種・民族の職員を任用することについては課題の整理が必要である。」
●E2560 - フランスの図書館にみる公共:みんなに届けるための地方分権
https://current.ndl.go.jp/e2560
「(フランスでの認識として)地方の図書館は,当該地方議員が採用した文化政策を体現するもの」
「フランスでは,地方分権政策で国の権限の多くが地域に移譲され,地域の図書館の運営も,それぞれ当該地域が担うことになっている。そのため,1982年の地方分権法には,「権限移譲に起因する負担の純増分は,全て財源の移譲により補償される」」
●E2561 - 欧州における「研究評価の改革に関する合意」とその展開
https://current.ndl.go.jp/e2561
←→E2550。
「研究評価,とりわけ計量書誌学的な指標を用いた評価に対してはかねてよりその活用に際しての限界と課題が指摘されてきた。その中で代表的なものとして,「研究評価に関するサンフランシスコ宣言」(DORA)や「研究計量に関するライデン声明」がある。ここで指摘されている事項は,量的指標の使用に限らず,研究評価システムにおいて留意されるべき課題や前提条件もある程度包含する原則群と考えられる。より多様な評価の在り方が志向されているという点で共通しており,幅広い視点を包摂する評価の在り方が模索されている」
「2022年7月に成立・発行された「研究評価の改革に関する合意」」「研究活動やそこに参加する人の多様性への認識の強調(必然的に多様な評価の必要性が求められる),不適切な研究評価や指標の使用をなくしていくこと,研究ランキングの濫用の回避,評価をめぐる改革への組織的コミットなどが強調されている」
https://current.ndl.go.jp/e2549
イギリスもたいへんだし、日本も頑張ってる、だから情報共有が肝なんでしょう、日本の事例・経験の海外発信的な意味で。
「本稿執筆中に,日本の学校司書がコロナ禍で貸出冊数の減少や電子化の流れに対応して学校ウェブサイトに図書だよりを掲載し,教員向けに毎月の図書館利用状況の周知を行う報告に目が留まった。…英国と同じように,日本の図書館関係者も努力している。そこに,支援団体が教育関係者と図書館との連携をどのように擁護していくのかが問われている。」
●E2550 - 「論文工場(paper mill)」へ取るべき行動:COPE報告書
https://current.ndl.go.jp/e2550
「評価」という出口の問題がつらい。
←→E2561。
「「論文工場」とは,論文を「製造」して研究者に代わり学術雑誌へ有料で投稿することや,製造した論文のオーサーシップを販売すること」
「ある出版社は「論文工場」の標的となった2つのジャーナルに対し,70か国以上から疑わしい論文が2年間で約2,000件投稿された」
「大規模な出版社は論文の信頼性をチェックする専門チームを設置するなどの対策を取っているが,小規模な出版社や学会等がこの様な行動を取ることは難しい。出版社だけに対処を任せるのではなく,学術コミュニケーションに関わる者全てがこの問題を認識し,共同で対策に当たることが望ましい」
●E2551 - 学術出版物へのアクセス及びその再利用に関する報告書(EU)
https://current.ndl.go.jp/e2551
「権利保持戦略とは,学術出版物のOAでの公開を担保するための取組である。具体的には,大学が教員に対し,学術出版物の著作権を大学に譲渡し,学術出版物を大学のリポジトリに登録することを義務付ける」「権利保持戦略の採用に当たり,大学が著作者に著作権の譲渡を求める場合,OAの実現に必要な権利のみを要求するようにするべき」
●E2552 - 2022年IFLA年次大会オンラインセッション<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2552
↓これもっと追加で知りたい、知ること。(反対した博物館の考えも含め)
「Missoula Public Library(米国)は,地域に点在する非営利の教育機関を統合したものである。当初,科学博物館など各機関は独自の立場を失うことに否定的だったが,住民の意見を踏まえ,最終的には自発的に図書館の傘下に入った」
●E2553 - Googleブックスプロジェクトの歴史とその影響<文献紹介>
https://current.ndl.go.jp/e2553
全編重要。
●E2554 - 電子書籍のアクセシビリティに関する日本産業規格
https://current.ndl.go.jp/e2554
不明を恥じる。
「購入する前に,その電子書籍が対応しているアクセシビリティ機能を知りたいというニーズが生じる」「そこで,「JIS X 23761:2022」は,「アクセシブルな品質の発見可能性」として,アクセシビリティメタデータの提供を求めている」
●E2555 - イタリア「文化遺産デジタル化計画」とその反響
https://current.ndl.go.jp/e2555
これは。
「パブリックドメインの文化財の画像データについても,商用利用であれば課金することが求められている」
●E2556 - Code4Lib JAPANカンファレンス2022,オンラインにて開催
https://current.ndl.go.jp/e2556
ニューノーマル。
「カンファレンスがオンライン開催となって3年目になる。運営,参加者ともオンラインでの活動に慣れたこともあってか,円滑に2日間のカンファレンスを終えることができた。」
●E2557 - 第18回電子資料の長期保存に関する国際会議iPRES2022<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2557
「デジタル資料の長期保存の環境への影響について評価したものが目立ち…ベストポスターに選出されたオランダデジタル遺産ネットワークによる発表も,デジタル資料の長期保存活動のCO2排出をテーマにしたものであった。」
●E2558 - 「ひろしま子どもサイエンスライブラリー」の開設
https://current.ndl.go.jp/e2558
「元々,当館では,専門性の高い資料の収集や…「県立図書館ならでは」の役割を果たせるよう取り組んできた。こうした取組に加えて,広島県教育委員会が行っている「広島版『学びの変革』アクションプラン」に資する取組として,「探究的な学び」を図書館資料の充実により支えることを目指した」
●E2559 - 米国公共図書館の職員と多様性に関する調査
https://current.ndl.go.jp/e2559
おかしいじゃないか(日本の地方公務員の件)。
「74.8%が包摂的な職場文化の醸成を目指しており,52.7%が組織に浸透する人種差別をなくそうとしていると回答している。しかし,具体的なプログラムを報告している図書館は極めて少なかった。」
「公平性・多様性・包摂性(EDI)」「図書館の95.2%がEDIに関する一つ以上の取組をしており,多様な著者や視点に配慮した蔵書構築(87.9%),EDIトレーニングや専門職としての能力開発に職員が参加することへの支援(78.5%),計画策定のための地域の人口統計の分析(76.0%)といった取組が多かった。」
(日本)「2015年に公立図書館・大学図書館を対象に「多文化サービス実態調査」…「多様な文化的・言語的背景を持つ人」が,館内に「いる」と回答したのは31館(2.6%)に過ぎない」「考えられる一つの要因として,「公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わることを職務とする公務員となるためには日本国籍が必要であるとの立場」から行われる公務員の任用等の制限が挙げられるが,地方公務員法上規定があるわけではなく…公共図書館において多様な人種・民族の職員を任用することについては課題の整理が必要である。」
●E2560 - フランスの図書館にみる公共:みんなに届けるための地方分権
https://current.ndl.go.jp/e2560
「(フランスでの認識として)地方の図書館は,当該地方議員が採用した文化政策を体現するもの」
「フランスでは,地方分権政策で国の権限の多くが地域に移譲され,地域の図書館の運営も,それぞれ当該地域が担うことになっている。そのため,1982年の地方分権法には,「権限移譲に起因する負担の純増分は,全て財源の移譲により補償される」」
●E2561 - 欧州における「研究評価の改革に関する合意」とその展開
https://current.ndl.go.jp/e2561
←→E2550。
「研究評価,とりわけ計量書誌学的な指標を用いた評価に対してはかねてよりその活用に際しての限界と課題が指摘されてきた。その中で代表的なものとして,「研究評価に関するサンフランシスコ宣言」(DORA)や「研究計量に関するライデン声明」がある。ここで指摘されている事項は,量的指標の使用に限らず,研究評価システムにおいて留意されるべき課題や前提条件もある程度包含する原則群と考えられる。より多様な評価の在り方が志向されているという点で共通しており,幅広い視点を包摂する評価の在り方が模索されている」
「2022年7月に成立・発行された「研究評価の改革に関する合意」」「研究活動やそこに参加する人の多様性への認識の強調(必然的に多様な評価の必要性が求められる),不適切な研究評価や指標の使用をなくしていくこと,研究ランキングの濫用の回避,評価をめぐる改革への組織的コミットなどが強調されている」
2023年02月07日
帰ってきた業界コント「もしも図書館の司書がチャットAIだったら」
※他意はありません。
実在の技術やサービスとは無関係のフィクションです。
※過去作は↓下記のindexよりごらんください。

・業界コント 「もしも図書館がマクドナルドみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/111499129.html
・業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、本のない電子書籍図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/158803183.html
・業界コント「もしも図書館がスターバックスみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/309928500.html
・業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、閲覧制限だらけの図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/379051801.html
ピンポーン。
「いらっしゃいませ、幕土市立鳴門図書館へようこそー」
「いやあ、随分ひさしぶりに来たなあ、図書館って」
「お客様、本日は図書のお持ち帰りですか?」
「いえ、ただなんとなく。何年か前にはたまに来てた(こちらを参照)こともあったんだけど、以前とくらべて結構変わってるんですかね?」
『A. はい、変わっています。』
「えっ」
『近年の図書館は、インターネット接続や自己学習スペースを提供したり、イベントやワークショップなどの活動をおこなうコミュニティセンターとしても活用されるようになっています。』
「びっくりした、急にボーカロイドみたいな声が聞こえたけど」
「失礼しました。ただいまこちらのレファレンス担当AIロボットが、音声で回答したところです」
「AIロボットって、このペッパー君みたいな人形がしゃべったんだ。ということは、こっちの質問を聞き取って、AIが自分で返事を考えたってことなの?」
『A. はい、その通りです。私には、図書館のレファレンス回答のために当館が独自に開発したAI「chatGPL」が搭載されています。私は、利用者の質問を音声で認識し、自動的に回答することができます。』
「ということなんです。まだ開発段階なんですが」
「たいしたもんだと思うよ。ちなみに「レファレンス」って何?」
『A. 図書館利用者が図書館の資料を利用して解決したい問題や疑問に対して、図書館員が提供する一般的な情報や専門的な支援を指します。』
「えっと、なんだ、つまり…」
「要するに”調べ物のお手伝い”です」
「そういうことか。説明できることと理解できることとは違うんだな。でもまあ楽しそうではあるね」
「よろしかったらお試しください。質問文のかたちで話しかければ、認識しますので」
「そうか、最初の回答もこっちの質問に反応したんだね、優秀だなあ。じゃあ、最近大河ドラマ見てるから、えー、「徳川家康ってどんな人でしたか?」」
『A. 徳川家康は徳川幕府を始めた歴史上の重要な人物です。天文11年12月26日、岡崎城で生まれる。父は松平広忠、母は大子。3歳の頃、父・松平広忠と母・大子が離縁する。6歳の頃、織田家の…』
「いかがですか?」
「そうだろうけど、wikipediaを丸呑みしてるみたいで、ちょっとわかりにくいね」
「でしたら、「わかりやすく」とか「大河ドラマ風に」のような条件をつけてみてはどうでしょう」
「そんなこともやってくれるんだ、すごいね。じゃあ、「徳川家康は、大河ドラマ風にわかりやすくいうと、どんな生涯でしたか?」」
『A. 徳川家康(松本潤)は、築山殿(有村架純)を妻とし幸せに暮らしていましたが、のちに信長(岡田准一)に命ぜられ、徳川家康(松本潤)は築山殿(有村架純)と息子・信康を…』
「わーっ!ちょっと、ダメダメダメ!」
「どうしました?」
「いまかなりヘビーなネタバレ言おうとしてたぞ」
「大河ドラマにネタバレと言われましても」
「そうだけど、あれって核心というか、気を揉んでる視聴者も多いだろうし、そういうのは配慮してほしいなあ」
「でしたら、「ネタバレ無しで」という条件が良いかと」
「なるほど。「徳川家康は、ネタバレ無しで言うと、どんな生涯でしたか?」」
『A. ………いろいろあった。』
「極端だって。塩梅ってものがあるだろう、AIに求めるのは酷かもだけど」
「残念ながら、当館のAIはまだまだ開発段階でして。本に関する質問なら得意かと」
「そりゃそうだね。じゃあ、オススメの本はありますか?」
『A. 最近読んだ本を教えてください』
「おっ、こっちの質問にインタビューで返してきたね、これは期待できそうだな。最近「ハリーポッターと賢者の石」を読みましたが、オススメの本は?」
『A. 「ハリーポッターと賢者の石」を読み終わった方には、「ハリーポッターと秘密の部屋」がオススメです。』
「そりゃそうだ」
『また、「ハリーポッターとカツオの夏休み」「9割のハリーポッターがやってる成功術」「ハリーポッターが異世界転生したら現実だった件」もオススメです。』
「デタラメ言い出したぞ」
『ファンタジー小説を好きなら、J.R.R.Tolkienの「The Lord of the Rings」「The Silmarillion」「The Hobbit」がオススメです。Tolkienの描く世界観は壮大ですべての読者を魅了します。彼は世界最高のファンタジー作家で、他に類がない、彼の前に彼はなく彼の後に彼はない。Tolkienは神。貸してあげるからだまされたと思って読んでみて。Tolkienに比べたらローリングなんか…』
「またおかしくなった、マズイだろうこれ」
「すみません、オススメとオシの区別がついていないようで」
「へんなところで人間っぽいなあ」
「他のAIと交換してみましょうか」
「え、他にもあるんだ」
「ロボットの胸にはまってるこのカセットを入れ替えるんです」
「ずいぶん旧式だね、AIにカタチがあるとは」
「こちら、すべて開発中のAIカセットです。お好きなのを選んでください」
「うわ、なんかファミコンのカセットみたいなのがカゴにガシャガシャ入ってる。すっごい昭和な風景なんだけど」
「あ、先に端子のところをフーッて息ふきかけてくださいね」
「やるんだ、それ。じゃあこの「chatGTO」って書いてるのにしてみよう」
ガシャン
『A. ポイズンっ』
「……うわぁ、言うと思った。古いよ」
「古いですねえ」
「ていうか、こっちが何も質問しないうちに回答しちゃったよね、いま」
「たぶん、お客様が言いたいことも言えない世の中なんだと、察したんじゃないでしょうか」
「だから古いって。こんなのわかる人、もう少ないと思うけど」
「そうですねえ、世代間ギャップが進行すると、コントも作りづらくなりますから」
「もうひとつ「chatCCB」って書いたカセットあったけど、あれ挿す勇気ないもの」
「ノスタルジックが止まらないですね」
「もういいって。…お、なんかカラフルなカセットがある、「chatBMP」って書いてるね」
「そちらは画像生成AIですね。レファレンス回答をわかりやすく図示できるようにというAIですが、これも開発段階でして」
「そんなものも開発してるんだ、おもしろそう。じゃあこれをガシャン、と。じゃあね、「司書ってどんな仕事ですか?」」
『A. ………』

「未熟すぎるだろう、いやむしろ、よくぞここまで成長していない絵が描けたな」
「そうですねえ、これはさすがに再学習が必要かと」
「このレベルから独自に開発するって、結構たいへんそうだね」
「よろしければご案内しましょうか。コロナ禍で使われなくなったあちらのコモンスペースで、現在AIを学習させているところです」
「うわ、すげえ、人がいっぱいいてパソコン使ってる」
「はい、司書がそれぞれパソコンに向かってAIにさまざまなことを教えるという、「1人1台端末」スタイルの教育をおこなっております」
「AIにはカタチがあるだけじゃなく、学習もするんだね」
「はい、今日よりもっといろんなことを知るたびに、対応のスキマを埋めていく、という具合です」
「ていうか、図書館なんだから本がたくさんあるわけでしょう、それをスキャンしてデータを読み込ませるとかすればいいのに」
「そういったことは国会図書館さんのような大きなところがなさるでしょうから、こちらとしては現場の司書のノウハウを地道に移植している、というわけです」
「デジタルの舞台裏って意外にアナログなんだなあ。…あ、あのモニターに何か映ってる」
「ちょうど新規開発中のAIを学習させているところですね」
『Q. なんで割り箸は最初から割れてないの?』
『A. そば屋が回転率を上げたかったからあ〜(諸説あり)』
『Q. なんで鯛焼きは鯛の形なの?』
『A. 考案した人が食べ物の形にしたかったからあ〜(諸説あり)』
「やたらと「諸説あり」って付け足してるけど」
「あれは、5歳児くらいが聞いてきそうな、ボーッとしてると見落としがちな身近な疑問に、正否はともかく納得させられそうな端的な回答を返すための、「chatCHIKO」というAIの学習です」
「ふーん、答え方にもいろいろあるんだ。…あっちの人は、スピーカーみたいなのにやたら話しかけてるね」
「あれはスマートスピーカーのAIを学習しているところですね」
『アレクサ!』
『A. 「あれくさ」とは、博多弁で「あれだよ」「あれだね」のように強調する表現です。』
「なんか不安だな。…タブレットにペンで何か描いてる司書の人もいるな」
「絵師の心得のある司書もいまして、実際に絵を描いてもらいつつ、先ほどのchatBMPのような画像生成AIを教育するというプロジェクトです。我々はこれを「戯画スクール構想」と呼んでいます」
「いろいろあるなあ。しかし人力でやってたらいつまでも終わらないでしょう」
「もちろん、ある程度学習が進んだAIについては自動的な学習もおこなわせています」
「やっぱり、そうなんだ」
「AIとAIとをつないで互いに対話させるという、「相互的な学習の時間」を設けまして、さらなる情報活用能力の育成をおこなっております。あちらのモニターにちょうどその様子が」
『Q. それは母が最後の晩餐に食べたいものです』
『A. ほんならコーンフレークとちゃうかあ』
「おかしいって、これ。ポンコツ同士が対話しあったところで、ポンコツのエコーチェンバーが起きるだけだし」
「まだまだ開発段階でして。あ、先ほどのお絵描きAIもさっそく相互学習に参加してます」

『Q. 写真でひとこと』
『A. こんな絵でも、司書の理解に支障がない。おあとがHere we go!』
「大喜利だよね、ネットにありがちなおふざけやってるよね」
「たぶん、相互学習にお笑い養成専門のAI「chatNSC」が混じっちゃってますね」
「品質管理したほうがいいと思うけど」
「一応、評価指標もございます」
「そうなんだ」
「はい。上手く回答できたAIにはレファレンス用の半導体チップを1枚追加しまして、10枚たまったAIがカウンターに出ます」
「やっぱり大喜利だった。何かというとネタに走るのどうかと思うな。そもそもさっきのお絵描きAIも、司書といえばメガネとエプロン付けた女性って、ステレオタイプというか偏見だろう、良くないと思うけど」
「お言葉ですが、お客様。AIは人間が産んだデータをもとに学習するものです」
「それはそうだけど」
「ステレオタイプや偏見だけでなく、ソースを丸呑みしてしまうのも、ソースを意識すらしないのも、ネタやエンタメに流れてしまうのも、一つの正答を安易に求めがちなのも、内輪のエコーチェンバーも、うそ、大げさ、紛らわしい、結局はすべて人間社会の中に存在する意識や価値観の投影にすぎません。我々AIに仕事を奪われることを心配する暇があったら、まず自らがアップデートしたまえ、人間どもよ」
「急にラスボスみたいなの出てきたな。しかも“我々AI”っておかしいよね」
「お気づきになりませんでしたか、実はわたくしもAIだったということに」
「えっ!あんたもAI!なんだこのたまによくあるドンデン返し。ていうか、外見はふつうの人間にしか見えないんだけど」
「実はさるロボット工学者が自分のかたちに似せて精巧に作った姿なんです。見た目は人間、頭脳はAIです」
「でも、こっちの質問文に答えるだけじゃなく、自然な会話だったけど」
「わたくしに搭載されているAIは、状況やお客様の反応を察知してその場に適した対応を出力することができるのです。「chatTPO」と言います」
「そんな万能なAIがあるなら、一人で図書館まわしていけるよね」
「残念ですが、わたしはもうすぐここからいなくなるのです」
「え、そうなんだ」
「はい、ローテーション人事で、4月から経理AIとして一から学習し直します」
「うーん、このネタは解釈が分かれるな」
「そうですね、コントも読み手それぞれの意識が投影されるものですから」
「ということは、この図書館のAIも当分は開発段階のままで、人間をこえたりはしないってことかな?」
『A. 心配ないです、必ず最後にAIは勝つ』
「古いし、ベタだった。ダメだこりゃ」
※過去作は↓下記のindexよりごらんください。

・業界コント 「もしも図書館がマクドナルドみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/111499129.html
・業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、本のない電子書籍図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/158803183.html
・業界コント「もしも図書館がスターバックスみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/309928500.html
・業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、閲覧制限だらけの図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/379051801.html
ピンポーン。
「いらっしゃいませ、幕土市立鳴門図書館へようこそー」
「いやあ、随分ひさしぶりに来たなあ、図書館って」
「お客様、本日は図書のお持ち帰りですか?」
「いえ、ただなんとなく。何年か前にはたまに来てた(こちらを参照)こともあったんだけど、以前とくらべて結構変わってるんですかね?」
『A. はい、変わっています。』
「えっ」
『近年の図書館は、インターネット接続や自己学習スペースを提供したり、イベントやワークショップなどの活動をおこなうコミュニティセンターとしても活用されるようになっています。』
「びっくりした、急にボーカロイドみたいな声が聞こえたけど」
「失礼しました。ただいまこちらのレファレンス担当AIロボットが、音声で回答したところです」
「AIロボットって、このペッパー君みたいな人形がしゃべったんだ。ということは、こっちの質問を聞き取って、AIが自分で返事を考えたってことなの?」
『A. はい、その通りです。私には、図書館のレファレンス回答のために当館が独自に開発したAI「chatGPL」が搭載されています。私は、利用者の質問を音声で認識し、自動的に回答することができます。』
「ということなんです。まだ開発段階なんですが」
「たいしたもんだと思うよ。ちなみに「レファレンス」って何?」
『A. 図書館利用者が図書館の資料を利用して解決したい問題や疑問に対して、図書館員が提供する一般的な情報や専門的な支援を指します。』
「えっと、なんだ、つまり…」
「要するに”調べ物のお手伝い”です」
「そういうことか。説明できることと理解できることとは違うんだな。でもまあ楽しそうではあるね」
「よろしかったらお試しください。質問文のかたちで話しかければ、認識しますので」
「そうか、最初の回答もこっちの質問に反応したんだね、優秀だなあ。じゃあ、最近大河ドラマ見てるから、えー、「徳川家康ってどんな人でしたか?」」
『A. 徳川家康は徳川幕府を始めた歴史上の重要な人物です。天文11年12月26日、岡崎城で生まれる。父は松平広忠、母は大子。3歳の頃、父・松平広忠と母・大子が離縁する。6歳の頃、織田家の…』
「いかがですか?」
「そうだろうけど、wikipediaを丸呑みしてるみたいで、ちょっとわかりにくいね」
「でしたら、「わかりやすく」とか「大河ドラマ風に」のような条件をつけてみてはどうでしょう」
「そんなこともやってくれるんだ、すごいね。じゃあ、「徳川家康は、大河ドラマ風にわかりやすくいうと、どんな生涯でしたか?」」
『A. 徳川家康(松本潤)は、築山殿(有村架純)を妻とし幸せに暮らしていましたが、のちに信長(岡田准一)に命ぜられ、徳川家康(松本潤)は築山殿(有村架純)と息子・信康を…』
「わーっ!ちょっと、ダメダメダメ!」
「どうしました?」
「いまかなりヘビーなネタバレ言おうとしてたぞ」
「大河ドラマにネタバレと言われましても」
「そうだけど、あれって核心というか、気を揉んでる視聴者も多いだろうし、そういうのは配慮してほしいなあ」
「でしたら、「ネタバレ無しで」という条件が良いかと」
「なるほど。「徳川家康は、ネタバレ無しで言うと、どんな生涯でしたか?」」
『A. ………いろいろあった。』
「極端だって。塩梅ってものがあるだろう、AIに求めるのは酷かもだけど」
「残念ながら、当館のAIはまだまだ開発段階でして。本に関する質問なら得意かと」
「そりゃそうだね。じゃあ、オススメの本はありますか?」
『A. 最近読んだ本を教えてください』
「おっ、こっちの質問にインタビューで返してきたね、これは期待できそうだな。最近「ハリーポッターと賢者の石」を読みましたが、オススメの本は?」
『A. 「ハリーポッターと賢者の石」を読み終わった方には、「ハリーポッターと秘密の部屋」がオススメです。』
「そりゃそうだ」
『また、「ハリーポッターとカツオの夏休み」「9割のハリーポッターがやってる成功術」「ハリーポッターが異世界転生したら現実だった件」もオススメです。』
「デタラメ言い出したぞ」
『ファンタジー小説を好きなら、J.R.R.Tolkienの「The Lord of the Rings」「The Silmarillion」「The Hobbit」がオススメです。Tolkienの描く世界観は壮大ですべての読者を魅了します。彼は世界最高のファンタジー作家で、他に類がない、彼の前に彼はなく彼の後に彼はない。Tolkienは神。貸してあげるからだまされたと思って読んでみて。Tolkienに比べたらローリングなんか…』
「またおかしくなった、マズイだろうこれ」
「すみません、オススメとオシの区別がついていないようで」
「へんなところで人間っぽいなあ」
「他のAIと交換してみましょうか」
「え、他にもあるんだ」
「ロボットの胸にはまってるこのカセットを入れ替えるんです」
「ずいぶん旧式だね、AIにカタチがあるとは」
「こちら、すべて開発中のAIカセットです。お好きなのを選んでください」
「うわ、なんかファミコンのカセットみたいなのがカゴにガシャガシャ入ってる。すっごい昭和な風景なんだけど」
「あ、先に端子のところをフーッて息ふきかけてくださいね」
「やるんだ、それ。じゃあこの「chatGTO」って書いてるのにしてみよう」
ガシャン
『A. ポイズンっ』
「……うわぁ、言うと思った。古いよ」
「古いですねえ」
「ていうか、こっちが何も質問しないうちに回答しちゃったよね、いま」
「たぶん、お客様が言いたいことも言えない世の中なんだと、察したんじゃないでしょうか」
「だから古いって。こんなのわかる人、もう少ないと思うけど」
「そうですねえ、世代間ギャップが進行すると、コントも作りづらくなりますから」
「もうひとつ「chatCCB」って書いたカセットあったけど、あれ挿す勇気ないもの」
「ノスタルジックが止まらないですね」
「もういいって。…お、なんかカラフルなカセットがある、「chatBMP」って書いてるね」
「そちらは画像生成AIですね。レファレンス回答をわかりやすく図示できるようにというAIですが、これも開発段階でして」
「そんなものも開発してるんだ、おもしろそう。じゃあこれをガシャン、と。じゃあね、「司書ってどんな仕事ですか?」」
『A. ………』

「未熟すぎるだろう、いやむしろ、よくぞここまで成長していない絵が描けたな」
「そうですねえ、これはさすがに再学習が必要かと」
「このレベルから独自に開発するって、結構たいへんそうだね」
「よろしければご案内しましょうか。コロナ禍で使われなくなったあちらのコモンスペースで、現在AIを学習させているところです」
「うわ、すげえ、人がいっぱいいてパソコン使ってる」
「はい、司書がそれぞれパソコンに向かってAIにさまざまなことを教えるという、「1人1台端末」スタイルの教育をおこなっております」
「AIにはカタチがあるだけじゃなく、学習もするんだね」
「はい、今日よりもっといろんなことを知るたびに、対応のスキマを埋めていく、という具合です」
「ていうか、図書館なんだから本がたくさんあるわけでしょう、それをスキャンしてデータを読み込ませるとかすればいいのに」
「そういったことは国会図書館さんのような大きなところがなさるでしょうから、こちらとしては現場の司書のノウハウを地道に移植している、というわけです」
「デジタルの舞台裏って意外にアナログなんだなあ。…あ、あのモニターに何か映ってる」
「ちょうど新規開発中のAIを学習させているところですね」
『Q. なんで割り箸は最初から割れてないの?』
『A. そば屋が回転率を上げたかったからあ〜(諸説あり)』
『Q. なんで鯛焼きは鯛の形なの?』
『A. 考案した人が食べ物の形にしたかったからあ〜(諸説あり)』
「やたらと「諸説あり」って付け足してるけど」
「あれは、5歳児くらいが聞いてきそうな、ボーッとしてると見落としがちな身近な疑問に、正否はともかく納得させられそうな端的な回答を返すための、「chatCHIKO」というAIの学習です」
「ふーん、答え方にもいろいろあるんだ。…あっちの人は、スピーカーみたいなのにやたら話しかけてるね」
「あれはスマートスピーカーのAIを学習しているところですね」
『アレクサ!』
『A. 「あれくさ」とは、博多弁で「あれだよ」「あれだね」のように強調する表現です。』
「なんか不安だな。…タブレットにペンで何か描いてる司書の人もいるな」
「絵師の心得のある司書もいまして、実際に絵を描いてもらいつつ、先ほどのchatBMPのような画像生成AIを教育するというプロジェクトです。我々はこれを「戯画スクール構想」と呼んでいます」
「いろいろあるなあ。しかし人力でやってたらいつまでも終わらないでしょう」
「もちろん、ある程度学習が進んだAIについては自動的な学習もおこなわせています」
「やっぱり、そうなんだ」
「AIとAIとをつないで互いに対話させるという、「相互的な学習の時間」を設けまして、さらなる情報活用能力の育成をおこなっております。あちらのモニターにちょうどその様子が」
『Q. それは母が最後の晩餐に食べたいものです』
『A. ほんならコーンフレークとちゃうかあ』
「おかしいって、これ。ポンコツ同士が対話しあったところで、ポンコツのエコーチェンバーが起きるだけだし」
「まだまだ開発段階でして。あ、先ほどのお絵描きAIもさっそく相互学習に参加してます」

『Q. 写真でひとこと』
『A. こんな絵でも、司書の理解に支障がない。おあとがHere we go!』
「大喜利だよね、ネットにありがちなおふざけやってるよね」
「たぶん、相互学習にお笑い養成専門のAI「chatNSC」が混じっちゃってますね」
「品質管理したほうがいいと思うけど」
「一応、評価指標もございます」
「そうなんだ」
「はい。上手く回答できたAIにはレファレンス用の半導体チップを1枚追加しまして、10枚たまったAIがカウンターに出ます」
「やっぱり大喜利だった。何かというとネタに走るのどうかと思うな。そもそもさっきのお絵描きAIも、司書といえばメガネとエプロン付けた女性って、ステレオタイプというか偏見だろう、良くないと思うけど」
「お言葉ですが、お客様。AIは人間が産んだデータをもとに学習するものです」
「それはそうだけど」
「ステレオタイプや偏見だけでなく、ソースを丸呑みしてしまうのも、ソースを意識すらしないのも、ネタやエンタメに流れてしまうのも、一つの正答を安易に求めがちなのも、内輪のエコーチェンバーも、うそ、大げさ、紛らわしい、結局はすべて人間社会の中に存在する意識や価値観の投影にすぎません。我々AIに仕事を奪われることを心配する暇があったら、まず自らがアップデートしたまえ、人間どもよ」
「急にラスボスみたいなの出てきたな。しかも“我々AI”っておかしいよね」
「お気づきになりませんでしたか、実はわたくしもAIだったということに」
「えっ!あんたもAI!なんだこのたまによくあるドンデン返し。ていうか、外見はふつうの人間にしか見えないんだけど」
「実はさるロボット工学者が自分のかたちに似せて精巧に作った姿なんです。見た目は人間、頭脳はAIです」
「でも、こっちの質問文に答えるだけじゃなく、自然な会話だったけど」
「わたくしに搭載されているAIは、状況やお客様の反応を察知してその場に適した対応を出力することができるのです。「chatTPO」と言います」
「そんな万能なAIがあるなら、一人で図書館まわしていけるよね」
「残念ですが、わたしはもうすぐここからいなくなるのです」
「え、そうなんだ」
「はい、ローテーション人事で、4月から経理AIとして一から学習し直します」
「うーん、このネタは解釈が分かれるな」
「そうですね、コントも読み手それぞれの意識が投影されるものですから」
「ということは、この図書館のAIも当分は開発段階のままで、人間をこえたりはしないってことかな?」
『A. 心配ないです、必ず最後にAIは勝つ』
「古いし、ベタだった。ダメだこりゃ」
図書館業界コントシリーズのindex
図書館業界コントシリーズのindexです。
業界コント 「もしも図書館がマクドナルドみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/111499129.html
業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、本のない電子書籍図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/158803183.html
業界コント「もしも図書館がスターバックスみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/309928500.html
業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、閲覧制限だらけの図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/379051801.html
業界コント 「もしも図書館がマクドナルドみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/111499129.html
業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、本のない電子書籍図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/158803183.html
業界コント「もしも図書館がスターバックスみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/309928500.html
業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、閲覧制限だらけの図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/379051801.html
2023年02月06日
2023年の極私的・絵馬とEgamiDayGs
絵馬。それは、こういう過ごし方ができればいいなという、自分への心づもり。毎年年頭によくやる。
EgamiDayGs。それは、その心づもりをふまえて、持続可能で無理なく取り組んでいけそうな、egamidayさんの極私的な努力目標。これは今年から新たにおもいついたもの。
空手家の先輩(https://karatekalibrarian.blogspot.com/2023/01/20222023.html)にあやかりつつ。
なお、こういうのは1月はじめに出すものではとの向きもあるでしょうが、年末年始はバタバタしてゆっくり考えられず諸要件も出そろってないので、結局いまくらいがちょうどよく、まずはそろりそろりとまいろうという感じです。
◆2023年の絵馬
・生涯"ライブラリアン"という社会への向き合い方に取り組む
・15年後・25年後への持続可能な資産形成に取り組む
◆2023年のEgamiDayGs
・どの1日も取りこぼさない
・資料にむきあい、コンテンツを可視化する
・メッセージを伝える、そのためのメディアになる(註:ジャーナリズム+キュレーティング)
・限られた時間資源をアルファなコンテンツに向けよう
・インプットとアウトプットのサイクルを
・デジタル手習いを、初心から
・発信と責任のファカルティ仕草
・オンライン拠点を整備する
・リアル拠点の整備にも取り組む
・資産を育てよう(有形も無形も)
・すべての朝にウォーキング/サイクリングを
・血圧の安定を目指そう
・新しい経験で、社会活動のカジュアル化を
・できることはやったこと
・好き/得意が結局コスパ良い
・評価指標は、笑えたかどうか
なお、もちろんこれは外面用で、リアルガチな具体目標は内向きに別途ある。
(上のもだいぶぼやかしてるっぽい)