2023年05月12日
2023年3月・4月のまとめ
●2023年3月・4月のまとめ
・町家の日・ブックセンター編
・町家の日・織機編
・today’s lunch
・「ラストワンマイル制」の導入
・町家の日・建築家編
・CEALのpre-conference「Where do we stand? The Substantive Role of East Asian」
→「DEI(Diversity・Equity・Inclusion)と東アジア図書館 : CEALのオンライン講演聴講メモ」(egamiday 3) http://egamiday3.seesaa.net/article/498573524.html
・町家の日・実録編
・ブラッシュアップの4人がやっとそろって喋ってるの見て泣き、星降る夜にのディーンが妻のいない家を掃除するのと、ムロツヨシの号泣で泣き、再放送の三ツ星の給食で天海祐希がアレルギーの子に豆乳で料理作ったの見て泣いてた。
・『戦後京都の「色」はアメリカにあった!』@京都文化博物館
・ついに自宅にテレビ大阪とBSが来た日。(光経由)
・これが路線バス番組か…/BSってサブチャン?
・本気の座学を見せてくれる
・ネットのリデザイン(これまでとこれからの四半世紀)
・桜探し・御所−哲学の道編
・吉見先生最終講義
・切実に、ボストンに行きたい人生だった…
・『ネット情報におぼれない学び方』
・いえ屋が管理しています
・airtableの手習い
・ラオス料理を初体験。タイともベトナムともちがい、総じて塩気は極力薄いけどハーブとスパイスとレモンが効いてて美味いという感じで、これからの健康管理に参考になる。
・リアル「飲食店で会食」、3年ぶり。さまざまな違和感と不慣れ、文化の喪失について。
・Looker Studioの手習い
・某屋の某、ころもなり揚げ方なりが変わったのか、味が落ちた気がする。
・『民俗学入門』 (岩波新書)
・今年度ものこり5営業日。なんとかする。いや、なんとかなる。ていうか、できたところまでをもって「なんとかなった」ものとする、なので必ずなんとかなることになる(無敵)
・ケーキチャレンジ失敗の日
・桜探し・背割堤−伏見編
・桜探し・北白川−哲学の道−岡崎−祇園白川(黄金ルート)編
・twilogが終わった日
・「【ハートネットTV】虹クロ 人を“好き”にならない自分に自信を持ちたい」
・寄席開始。飛ばし過ぎて開始3分でキャラ設定を後悔。または、「波よ、聞いてくれ」を朝一で見てからの登壇がやばい。
・本格化する金勘定
・腹を割ってしゃべり倒そう、リベンジ
・希望の聴取、今度は忘れない
・桜探し・宗堂編
・干したタケノコ、穴子
・クライネガルテンののれん分け
・『謎解きとコミュニケーション : 語用論から西欧の知を考える』
・マッピングの日々
・メアド切り替えの日々
・『帝国図書館』
・「ほかにどんな資格とったらいいですか」ときかれたので、資格はあくまで最低限のペーパーに過ぎない(ここを大の大人でもなぜかかんちがいしてる人が多い)ので、とってもいいけどその先は資格を越える勉強を自力でやったほうがいい、とこたえました。
・「たぶんこれ銀河鉄道の夜」(配信)
・自分の食べるものを自分で作ることができる幸せと喜びを噛みしめつつ、ごちそうさま。
・ケーキチャレンジ成功の日
・「アリスの棘」
・スノーモンキーがあると聞いてやってきました
・連休9daysがスタート
・「日曜の夜くらいは」
「海外の日本研究と日本図書館」に関する2023年3月・4月の動向レビュー -- CEAL/NCC他@ボストン、図書館送信、Film Cycle Project 他 ( #本棚の中のニッポン )
■CEAL・NCC・DH会議@ボストン・2023年
切実にボストンに行きたい人生でしたが…ともあれ。
●CEAL
・Annual Meeting – CEAL: Council on East Asian Libraries
https://www.eastasianlib.org/newsite/meetings/
2023年3月開催の年次大会@ボストンの、パワポ・PDF等が掲載されている。
全体のテーマが「Diversity, Equity, Inclusion: the East Asian Library in a Changing World」で、DEI(Diversity, Equity, Inclusion)またはDEIA(+Accessibility)が各分科会でも基本テーマとなっている。
基調講演は「Increasing the Value of East Asian Library Collections: Differences are a Strength」。
ポスターセッションの共通テーマは「Diversity, Equity, Inclusion: the East Asian Library in a Changing World」で、「Promoting DEIA through Metadata and Beyond - Case Studies of Four Digital Collections at UC San Diego Library」「How Can Romanization Practices Reflect Library's Diversity, Equity, and Inclusion Efforts?」など。
●CJM(@CEAL)
CJM(日本資料委員会)のテーマは「Introducing Our New Colleagues via their DEI and Other Projects for Japanese Collections」で、プレゼンは以下の3点。
・Showcasing Underrepresented Voices: Building the Japanese Women Photographers Collection at the University of Pennsylvania Libraries
https://www.eastasianlib.org/newsite/wp-content/uploads/2023/04/Mendelson_Slides-for-CJM_2023.03.16_sans-images.pdf
・A meeting of many: Collaborative programming on the 80th anniversary of Japanese Canadian forced dispersal
https://www.eastasianlib.org/newsite/wp-content/uploads/2023/04/20230316_CEAL_CJM_Presentation_Gillis_fordistribution_FINAL.pdf
・Roadblocks on the Tōkaidō: Challenges in Cross-Institutional Collaboration
https://www.eastasianlib.org/newsite/wp-content/uploads/2023/04/Roadblocks-on-the-Tokaido_PPT.pdf
●「Improving Subject Description of an LGBTQ+ Collection」
Junjiro Nakatomi (Japanese Cataloging Librarian, University of Southern California)
https://www.eastasianlib.org/newsite/wp-content/uploads/2023/03/Improving-Subject-Description-of-an-LGBTQ-JNakatomi_CTP.pdf
CEALのテクニカルサービス分科会での、注目すべきプレゼン。LGBTQ+関係資料アーカイブ(約33,000点)のカタログ記録を調査し、多様性、公平性、包括性の観点から問題があると考えられる議会図書館の件名標目(LCSH)を特定。問題のあるLCSHを含む書誌によりふさわしい件名標目を組み込むことで、これらのリソースのより良い発見とアクセスを可能にする。
●「Where do we stand? The Substantive Role of East Asian」
オンラインでおこなわれたプレカンファレンス。
→「DEI(Diversity・Equity・Inclusion)と東アジア図書館 : CEALのオンライン講演聴講メモ」(egamiday 3)
http://egamiday3.seesaa.net/article/498573524.html
●NCC
・NCC Annual Open Meeting
https://guides.nccjapan.org/2023openmeeting/agenda
最近の活動について報告(プレゼン資料あり)。
●Beyond Covid: Preparing Next Generation Librarians for the Future of Japanese Studies (2023)
https://guides.nccjapan.org/nextgenerationworkshop2023
NCC主催の日本研究司書向けワークショップ。資料収集、e-book、ILLとNDL送信など。日文研も協力させていただきました。
以下、プレゼン資料あり。
https://guides.nccjapan.org/nextgenerationworkshop2023/presentations
●「Community Engagement and Gift Acquisition: Reflections on the "Nikkei South Side" Project」
https://guides.nccjapan.org/ld.php?content_id=71213537
NCCワークショップでの注目すべきプレゼン。地域の日系コミュニティと資料収集・蔵書構築。
●Tools of the Trade: The Way Forward Conference
https://sites.harvard.edu/tools-of-the-trade/
こちらでもプレゼン資料掲載がありますが、多すぎて一朝一夕にはちょっと無理。じっくり見ましょう。
https://fccs-dci.github.io/tott-projects/.
■コミュニティ
●Specialist Spotlight: Katherine Matsuura
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Specialist-Spotlight-Katherine-Matsuura
「Japan Digital Scholarship Librarian of the Fung Library’s Japan Digital Research Center (JDRC) at Harvard University」
「Matsuura has been a key figure in the development of their two core projects: the Japan Disasters Archives (JDA) and the Constitutional Revision Research Project (CR Project).」
●Journal of East Asian Libraries
・The Spring 2023 Issue (No. 176) of the Journal of East Asian Libraries
https://scholarsarchive.byu.edu/jeal/
「Tracing East Asian Librarianship in Correspondence: A Data Analysis of Eastlib Messages from 1995 to 2020」他
■デジタルアーカイブ&デジタルヒューマニティーズ
●「Film Cycle Project: Learning about Japan through Digital Archive Technology」(徳島大学)
NCCのCDDP video awardの2023年度受賞作品。
・Learning About Japan through the Digital Archive Technology - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=YpD8hb34L0k
・CDDP Award Program - 2022-2023 - Comprehensive Digitization and Discoverability Program - LibGuides at North American Coordinating
https://guides.nccjapan.org/cddp/award-program-2022
・2023 CDDP Awards Event - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=8Qqcw-LmRuc
●「Re-Envisioning Japan: Japan as Destination in 20th Century Visual and Material Culture」
・The Multidisciplinary DH Classroom: Material Culture meets Digital Curation in Re-Envisioning Japan – The Digital Orientalist
https://digitalorientalist.com/2023/03/21/the-multidisciplinary-dh-classroom-material-culture-meets-digital-curation-in-re-envisioning-japan/
「a DH project conjoining a personal collection of early-to-mid-twentieth century travel, education, and entertainment ephemera with a collaboratively built, interactive multimedia archive.」
●デジタルアーカイブワークショップ@プリンストン大学 https://labo.wtnv.jp/2023/04/blog-post.html
●コロナ禍と日本研究
・Post-COVID Japanese Studies: Digital Materials, Analog Dialogue - Discuss Japan https://www.japanpolicyforum.jp/society/pt2023032213053513031.html
コロナ禍間の日本研究とデジタル関連のまとめ。
「reciprocity is the power that drives exchanges」
■学術情報・情報発信
●NDL図書館送信
・CA2037 – 図書館向けデジタル化資料送信サービスへの北米からの参加の現状と今後への期待 / マルラ俊江, 原田剛志 https://current.ndl.go.jp/ca2037
必読。手続きもコストだと理解されてよい。デジタルアーカイブ類の「複写できなきゃ意味が無い」問題も、もっと焦点当てられてよい。
「申請に必要な提出書類の多さと複雑さ」「“Legality Checklist”において弁護士資格を有する者の署名が求められている」「韓国国立中央図書館(NLK)で提供されている同様のサービス(7)の申請書類はもっとシンプルで、“Legality Checklist”のような書類の提出は求められないのに、なぜ図書館送信の申請書類はこのように複雑なのか…申請準備が容易なNLKのサービスへの申請が優先され、複雑なNDLの図書館送信申請は後回しにされている」
●NACSIS-CATとOCLC
・New national cataloging platform for libraries in Japan is launched using OCLC's Syndeo | OCLC https://www.oclc.org/en/news/releases/2023/20230330-japan-national-cataloging-platform-launched-using-syndeo.html
・大学図書館等の目録所在情報サービス(NACSIS-CAT/ILL)新システムでメタデータの国際流通へ新たな一歩をふみだす - 国立情報学研究所 / National Institute of Informatics https://www.nii.ac.jp/news/release/2023/0330.html
「OCLC社製CBS(Controlled Bibliographic Service)を基盤として、システム全体の能力と機能を増強して再構築した」
「NACSIS-CAT/ILL内部では管理されるメタデータを、CATPではなく国際標準のメタデータフォーマットであるMARC21と相互運用性のある形式で保持」
●国立アートリサーチセンター
・国立アートリサーチセンターが設立。その機能と役割とは?|美術手帖
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/26891
4つの柱のうちの1つが「海外への発信・国際ネットワーク」で、「日本人アーティストの海外でのプレゼンスを高めるために支援」とのこと。
■日本資料&日本研究&日本語教育
・無料オンライン講座 FutureLearn「旅する書物:日本とヨーロッパの歴史のなかで」日本語版が開講中:[慶應義塾] https://www.keio.ac.jp/ja/news/2023/3/27/27-136728/
・edX新規講座『Uncovering the Voices of Japanese Literature』が2023年5月23日より配信開始!/ New edX course “Uncovering the Voices of Japanese Literature” will start from May 23 2023! https://www.waseda.jp/inst/ches/news/2023/04/12/4959/
「ロバート キャンベル先生監修の「Uncovering the Voices of Japanese Literature」を2023年5月23日〜2023年7月4日まで無料開講」
・ワークショップ「次世代の国際日本研究」を開催しました(2023年3月23日)|トピックス|国際日本文化研究センター(日文研) https://www.nichibun.ac.jp/ja/topics/news/2023/03/31/s001/
「人文学の現状と今後の展開について、総合研究大学院大学(総研大)の大学院生、人文知コミュニケーター、日文研の教員・研究員・職員など様々な立場から…他分野間の研究交流を促進し、大学院生たちの研究を発展・深化させるとともに、次世代の声を今後の国際日本研究の推進と研究成果発信活動に反映する」
・『世界の日本研究』2022年版
https://www.nichibun.ac.jp/ja/publications/data/seni/
・『早稲田大学国際文学館ジャーナル』(Journal of Waseda International House of Literature)が創刊
https://bungaku-report.com/blog/2023/04/journal-of-waseda-international-house-of-literature.html
・【4月より受付開始】2023年度 UCLA-早稲田 柳井リサーチフェローシップ・プログラム(5月28日締切) https://www.waseda.jp/flas/gjs/news/3391
「カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に1クォーター(3か月間)滞在し、UCLAをはじめとする米国大学の日本学研究者・大学院生との交流を通じて、国際的な日本学研究の視点を学ぶ機会を提供する」
・国際交流基金 - 2021年度 海外日本語教育機関調査 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/survey21.html
国際交流基金が2021年度に実施した「海外日本語教育機関調査」の結果報告書(全文PDF)。(結果概要は2022年11月に発表されている。)
■社会問題
・モスクワの「日本図書室」退去 国際交流基金、事業は継続:時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023031100385&g=int
・Japanese Military “Comfort Women” Knowledge Graph | Information Technology and Libraries https://ejournals.bc.edu/index.php/ital/article/view/15799
・技能実習制度を廃止へ 入管庁など方針示す 有識者会議に素案提出 | TBS NEWS DIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/425142
・日本:入管施設被収容者たちの人権侵害を訴える声を真摯に受け止め、 出入国管理及び難民認定法の国際人権基準に則った改正を求める : アムネスティ日本 AMNESTY https://www.amnesty.or.jp/news/2023/0414_9898.html
■海外の事例
・국립중앙도서관 https://inkslib.nl.go.kr/IN/contents/I10200000000.do?schM=view&id=45410&schBcid=inkslibNotice01
「2023 Overseas Korean Studies Librarian Workshop」
・ハノイ市立図書館がリニューアルオープン、韓国のODA事業で[社会]
https://www.viet-jo.com/m/news/social/230417212220.html
「韓国の政府開発援助(ODA)事業の一環として、2007年から海外にある小規模な図書館の造成を支援している」
2023年05月07日
正誤問題からのメッセージ -- 国立大学図書系採用試験問題を読んだメモ・2022年著作権&学術コミュニケーション編
出題は、メッセージです。
解答者は、そのメッセージを適切に受け取って、自分なりに返す。
そういうコミュニケーションです。
試験ですから知識理解の有無高低をまあ確かに問われはするのですが、それは一面的なことであって(というかそれで済むなら知識を獲得せよだけで済む話なので、いちいちブログ書いたりしない)、でもそうではなくそれ以上に、相手のメッセージを汲み取って、かつ自分なりの反応を返す、ということができてるかどうかが大事、だと思うです。
(なので本記事は、「解く」や「解説する」ではなく、「読む」です。なんなら正解が何かもさほど言及してない)
それはそれとして、話は変わりますが。
正誤問題という出題形式は、めちゃめちゃ難しい、できれば避けたいものです、作問も、解答も。
これ、もう一度同じことを言います。
正誤問題という出題形式は、めちゃめちゃ難しい。
「○×だから、50%で当たる」? そんなんで成田行けたら誰も苦労しません。
という話が、本記事です。
・採用の流れ・要項・採用予定数・過去の試験問題 | 東京大学附属図書館
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/contents/about/employment/howto
・令和4年度国立大学法人等職員採用(図書系)第二次試験問題
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/sites/default/files/2023-03/R4%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E7%B3%BB%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E8%A9%A6%E9%A8%93%E5%95%8F%E9%A1%8C.pdf
大問2は著作権、大問3は学術コミュニケーションに関する正誤問題です。
例えば、大問2はおっしゃいます。
「【No.2】 次は,著作権に関する記述である。正しいものには〇を,間違っているものには×を答えなさい。」
マジですか、と。
ということは、次に登場する文章が、確実に「○」である、または確実に「×」である、って言えるってことですよね。
なんというおそろしいことでしょう、そんな逃げ場のない判断が人の世にあり得るのでしょうか、神の所業ですか。
と、あまり煽ってもあれなんでそれはともかく。
大問2・大問3ともに、よくある正誤問題のようではありますが、よく見てみるとだいぶ出題の様相がちがうので、それぞれ別の1人(または1組)が作問したのかな、という気がするのですが、それはまあたいした話ではないです。
そして、たぶんこの両大問ともこの年度全体の問題の中でも難しいほうなんじゃないかと思い、そして、どういう意味で難しいのかはそれぞれでまったくちがうようです。
例えば大問2の(1)ですが、
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【No.2】
次は,著作権に関する記述である。正しいものには〇を,間違っているものには×を答えなさい。
(1)
2019年に読書バリアフリー法*が施行された。これにより視覚障害者等が利用しやすい書籍を充実させるため,図書館は障害者のための録音図書作成やテキストデータ化を許諾なしに行えるようになった。
*視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律
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ある新しい法律によって何かが改善向上した、というのはストーリーとしてわかりやすいものですから、雰囲気で「○」に導かれちゃう人も少なくはないでしょうし、特に軽く勉強して「2019年に読書バリアフリー法が施行」、あるいは確か同じタイミングで障害者サービスが改善されたはずという、ふんわりとした知識を得ていると、条件反射的に「○」を答えそうではあるのですが、本問はそんなゆるふわ解答を許してくれない。
知識ベースで言えば、2009年改正2010年施行の著作権法37条3項で、もっと言うならそのタイミングで発表されたガイドラインで、図書館は障害者のための録音図書作成やテキストデータ化を許諾なしに行えるように、すでになっているはずなんだけどな。という正確な理解があればこれを「×」と解答できる、ということになります。
著作権やそのサービスを、なんとなくではなく正確に理解しているかどうかを、遠慮なく突っ込んでくる。
そのあたりが、この大問2が難問かつ良問である所以だろうと思います。
ただ、この厳しさは実際どこまで求めてるのかなと思います、2022年現在でできているサービスが可能になったのは、2019年でしょうか2010年でしょうか、っていう一歩間違えば年号知識を求めるような。
↓これ読んで理解して来いとてか、と。ここ風間教場か、と。
・図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン(2010年)
https://www.jla.or.jp/portals/0/html/20100218.html
・図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン(2019年)
https://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/865/Default.aspx
なので、これに「×」と解答できるためには、もうひとつ「読書バリアフリー法により」それができるようになった、という言い草に違和感が持てるかどうかかな、と思います。読書バリアフリー法、大事だったかもだけど、許諾無し云々はさすがに「著作権法(の改正)により」だろう、ていう。あるいは、2022年受験者ということは2019年はたった3年前のころであり、許諾無しのテキストデータ化はそのずっと前、大方の受験者が小学生のころからできてたんだからさすがにわかるでしょう、ということなのかどうか。
どっちにしても、やっぱり雰囲気で理解してるだけでは正答できなさそうですね。
それは、(3)も同じです。
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(3)
TPP整備法*による著作権法の改正により,2018年から著作権の保護期間が著作者の死後50年から70年に延長された。著作者が亡くなった翌年の1月1日から起算されるため,1967年に亡くなった山本周五郎(本名:清水三十六)の著作物の保護期間は2038年の12月31日までとなった。
*環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律
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保護期間の50年から70年への延長についてだけ言えば、さすがに大方の受験者が知ってるでしょうし、司書関連科目での著作権講義内でもほぼまちがいなく触れられるでしょう。ていうか、あたしも毎回この話はします。
そしてこの話をすると、その回の質問コメントとしてたいてい2-3人程度の学生さんから「じゃあ、いったん50年で切れた人の著作権が復活しちゃうんですか?」と尋ねられます。
この問題(3)は、50年から70年という端的な知識を鵜呑みにしてボーッと聞いてるんではなく、そういう疑問を持てるかどうか、そしてそうじゃないんだという理解にたどり着けるか、そういうことを受験者に求めているかのように見えます。
にしても、そのことを確認するための出題として、これを作問・作文するのすげえしんどかったんじゃないかなと。「TPP」がどうのはともかく、「翌年1月1日から起算」とか「12月31日まで」とかの条件を文章に盛り込まなきゃいけないし、読み手が混乱する日本語にするわけにはいかない、ましてや誤りを書くわけにいかない。(「誤り」なのに。だから正誤問題ってできれば作りたくない。)
それをこんなに過不足も不自然さもない日本語文に仕上げられた、そのご苦労がいたくいたくしのばれます。読んでて胸がきゅうーっと締め付けられる試験問題、というのもなかなか無いかと。
というわけで、大問2・著作権は、総じて「雰囲気理解を許さない」というメッセージが大音量でガンガン伝わってきます、少なくともあたしにはそう読めます。
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(4)
日本ではフェアユースの規定に基づき,ニュース報道や教育,研究論文等目的上正当な範囲で行われる時には,自分の著作物に他人の著作物を許諾を得ずに引用することができる。
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フェアユース? なんか聞いたことある。 引用できる? それもなんか聞いたことある。
でも両者は、少なくとも「日本では」関係がない。ましてや「ニュース報道や教育,研究論文等目的上正当な範囲で行われる時には」といういかにもそれっぽい条件、”それっぽい”だけです。
なんか聞いたことある、や、それっぽい、は求められていないということなんでしょう。
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(2)
コロナ禍での図書館の休館等を受け2021年に著作権法が改正され,国立国会図書館はデジタル化した資料のうち,絶版等資料をインターネット経由で個人に送信できるようになった。
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NDLがなんかそういう送信をやってるらしいことは、なんかあちことで一生懸命言われてるのを聞いたことがある、でもそれって「図書館への送信」じゃなかったっけ? という2020年以前のままの理解の人も少なくないんじゃないかと思います、それくらい「図書館送信」ってわりとアピールされてきてましたので、そういう印象が強めにのこってるかもしれない。
ですが、やはりその程度では許してもらえなくて、近々の動向も適切にアップデートしておきなさいよ、というメッセージのようです。
いずれもわりとレベル高めのように見えるものの、とはいえ必要なことが求められている。しかも、あくまでここで問われているのは学修支援やデジタルアーカイブ、ILL、アウトリーチといった感じの、大学という場所、図書館という業務においてリアルガチなシーンで必要となる理解と姿勢が求められているわけです。生の図書館業務にとって著作権理解は、添え物でもトリビアルな受験知識でもないんだな、的な感じで、過去問としてこれを目撃した受験者はメッセージを受け取れるんじゃないかなって思いますね。
さて、同じように大問3・学術コミュニケーションも正誤問題であり、そして同じように難しいのですが。
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【No.3】
次は,学術コミュニケーションおよびそれに関連する記述である。正しいものには○を,間違っているものには×を答えなさい。
(1)
学術コミュニケーションは,研究者集団を基盤として成立する,研究者同士の専門的なコミュニケーションである。
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あたしはこの問題、ずっと悩んでます。
この正解が「○」なのか、「×」なのか、いまだにわかっていません。
一見すれば、確かに、「学術コミュニケーションは,研究者集団を基盤として成立する,研究者同士の専門的なコミュニケーションである」でしょう。
でも、そのコミュニケーションには”研究者”以外にも、異なる業種の専門家(それこそ”司書”とか)や、そうじゃない市民だって、参加の余地はあるわけじゃないですか。だから「×」なんですよ、って出題者に言われたら、そうだろうなあとも思う。
とはいえ、じゃあこの文章を「×」って断言しちゃうの?というとそれはそれで違和感が強い。「○」でしょ?と出題者に言われたら、まあ、そうですねと言うしかない。
でも、受験者は別に出題者への忖度のためにメッセージを受け取ろうとしてるわけじゃないだろう、とは思います。
そもそも、正誤問題というのは。
「○」か「×」かの2択で逃げ場のない判断を解答者に迫るからには、出題者側にもそれが「○」「×」と断言できる根拠が求められることになります。
なので、正誤問題で取り扱う知識・理解・概念には、何かしらの明確な基準・根拠がないと困るわけです。
例えば、これこれは何よりも多い、何よりも高い、という数値的な基準。
いつからである、いつまでである(orない)、という時間的な基準。
どこにある、どこにはない、内にある、外にある、のような位置的な基準。(物理的な位置に限らず、位置づけとして)
これはできる、これはできない、これはこうではあるがこうではないと何々で定められている、という規則・法律や科学的定義に関する問題。なので大問2のような著作権は正誤問題と相性が良かったと言えるかもしれません。
ですが「学術コミュニケーションとは何か」という概念について、こうではあるがこうではないという排他的な定義がないのであれば、まあだいたいこういうことを言いますよね、としか言えそうにないわけで、それをじゃあ正誤問題で問うのであれば、うーんどうしよう、明確に誤った命題を提示して「×」だと答えさせるしかないんじゃないかしら。
なので例えば、
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(2)
学術コミュニケーションは,フォーマルな方法とインフォーマルな方法に分けることができる。たとえば,フォーマルな方法には小規模な聴衆を対象とする講演会等があり,インフォーマルな方法には査読を経て学術雑誌に掲載された論文の流通等がある。
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であれば、正答は導き出せると思います。何がフォーマルで何がインフォーマルかなんてのはグレーなところだって山とあるでしょうが、少なくとも「査読」のようなフェアな審査(っぽい、くらいなら学生でも判断できそう)を経るものを「インフォーマル」とは言いそうにない、という判断はできるでしょう。
でも(1)については、これうんうん唸って考えてたんですが、やはりあたしには「○」とも「×」とも解答できそうにないです。
あまりに考えすぎて、「え、これって、それを答えさせることでどうしたいんだろう」という余計なことまで悩んでしまいましたが。「学術コミュニケーション」という言葉を知ってるかどうかを試す問題かしら。でも、その後に続く(2)はあきらかに「学術コミュニケーションとは何か」をわかってることが前提の問いだから、(1)で確認する必要はないんだけどな。じゃあやっぱり、明確に「×」だ、というメッセージなんだろうか。
やっぱりわからない。降参です。
正誤問題という出題形式についてもうひとつ言えば、基準・根拠の有無に加えて、それ以外の出題形式で出題することが困難な概念の理解をはかる時に採用する形式だな、という感じがします。そうじゃなけりゃ、やっぱりできれば避けたいくらいには、難しい。
そういう意味で、大問2・著作権の(3)保護期間の問題なんかは、確かに、ああいう概念を理解できているかどうかをはかろうとすると記述や用語穴埋めではうまくいかない、あれはやっぱり正誤問題向きだったな、と思えます。
それを踏まえると、(3)は、
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(3)
いわゆるハゲタカジャーナル とは,査読誌であることをうたいながら,著者から論文投稿料を得ることのみを目的として適切な査読を行わない,低品質のオープンアクセス形式のジャーナルのことをいう。
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文章として問題無さそうに思えるのですが、それでも、「いわゆる」で表されるようなワードについて定義の正誤を判断させるのは、やっぱり違和感がぬぐえません。
じゃあどうするかという意味では、(3)だけでなく大問3全体を通してこのようなことを知識・理解として問うんであれば、用語問題(選択式等)のほうがどちらかというと相性よかったんじゃないかな、というか、自分ならそうしたい。
同じ問題文で、「学術コミュニケーション」「フォーマル」「インフォーマル」「ハゲタカジャーナル」、追加で「査読」や「オープンアクセス」あたりを答えさせる、ということにすれば、ここに書いてある概念の全体的なことを不足なしに理解できているかどうか、という基礎をはかるのにちょうどいい出題になるんじゃないかなって、思いました。(なんなら、元々はそういう問題だったんじゃないか、と思えるくらい)
そのほうが相性が良い・良くない、などということをなぜいちいち考えるかというと、受験者に余計な迷いとか戸惑いとか不安・ストレスとか判断ミスのようなこと…仮に”思考的コスト”と称しますけど、そういうコストをかけさせたくない、かけさせるべきではない、と思うからではあります。
こんなのは所詮ペーパー試験でしかないといえばない、なので、受験者の力量をはかるのに部分的な効果・機能しかないということは重々承知のうえで、それでもなお、ある程度の知識・理解の有無は求めざるを得なくてこのような試験が存在する、んだろうと理解しています。そうであれば、せめて、本来求める必要がないはずの”思考的コスト”は極力排除して、あるいは斟酌、忖度、言葉の駆け引きや小手先のテクニックとは無縁のところで、フラットな状態でストレスなく受験者自身が解答を表現する=コミュニケーションがとれるような環境を整備してあげたい、あげるべき、って思うわけです。
じきに一緒に仕事する同僚になるわけですから。
そんな不要なはずの思考的コストのせいで、同僚になれるかなれないかが決まるとしたら、嫌だなっていう。
理不尽な○×問題で予選落とされた経験が何度もある身としては、そんなふうに思います。
ともあれ、受験者の方におかれては「そういうこともあり得る試験なんだな」くらいに思ってもらったらいいかな、と。