ハーバードにいた頃の話。
文化風習のちがいを強く感じたことのひとつとして、この国の人たちの「人にプレゼントを贈る」ということに対するテンションの昂ぶり様、これは、ちょっとひとステップちがうな、という印象を受けましたよ。
ちょっとした記念日、誕生日、歓迎会、送別会、年中行事、宗教行事。何かにつけて、何かしらを、贈る。こまめに、頻繁に、そして楽しげに。
楽しげにっていうのがわりとキーで、そりゃもちろん、どんなものを相手に贈ろうか、相手にこれを贈ったらどんなに喜んでもらえるか、そういう贈る行為について贈り手側が楽しむ、ということ、これは日本でだってアメリカでだって同じくあると思うんですよ。ただ、同じ”ある”にしても、その”強さ”についていえば、アメリカさんのそれはだいぶ強いなどうも、ていう。例えば逆に、これを贈ったら逆に迷惑かしら、もう持ってるかしら、ちょっと高すぎて/安すぎてふさわしくないと思われちゃんわないかしら。そっちの感情だって、日本にもアメリカにも同じくあるとは思うんだけど、その強弱を比べ眺めてみると、アメリカさんのそれは言うほど強くないように見える。
贈り手側”も”楽しい・嬉しいではなく、贈り手側”が”楽しい・嬉しい。自分が贈りたいから、贈る。自分が、相手の驚き喜ぶ顔を見たいがために、贈る。しかも贈る品だってたぶん、「自分がこれを贈りたい」から、贈る。そっち方面のベクトルが存外に強いお国柄なんだな、というふうに感じておりましたよね。
加えて、そのこと↑の”裏っ返し”じゃないかと思えるのが、贈り物についての意外なまでのドライさ、というか合理主義的なところがあるなあ、ていう。
「ギフト・レシート」だかなんだかいうシステムがあちらにはある。これどうなんだろう、日本にもあるところにはあるのかな、あまりよくわかんないんだけど、たぶん日本よりはずっと浸透度がちがうんでしょう。例えば江上が誕生日か何かのタイミングで、Tシャツをプレゼントされて、当り前のようにレシートを渡されて、きょとんと見ていると、これをもってこのお店へ行けば、いつでもちがうものと交換してもらえるから、とおっしゃる。これが、例えば「サイズが合わない」という理由で同じもののサイズ違いと交換してくれる、ていうのなら納得できるのだけど、いや、贈られた側がそれを既に持ってるとか、他の人からのとかぶっちゃったとか、ていうかその贈り物自体そもそも気に入らないとか、理由一切関係なく、そのお店の商品で同額以下のものとだったらどれでも交換してもらえる、とおっしゃるので、これにはちょっと驚いたのですよ。
これってもうさ、贈る側が一切のノイズに悩まされずにすむってことですよね。相手の趣味はどんなんだろう、サイズや好きな色をそれとなく聞き出すにはどうしたらいいだろう、いや、あの人のことだからもう既に持ってるんじゃないか、そういえば仲の良いナンシーも(註:誰だよ(笑))プレゼントするってゆってたから、同じのになっちゃうんじゃないか。そういうことを木っ端微塵ひとかけらも考慮することなく、ただただ純然に、自分が贈りたい、贈った相手の喜ぶ顔を見たいという、贈り手側の気持ちだけを快く昇天させることができる、ていう。
だから、半年くらい前ですか、Amazonさんの「wishlist問題」が日本で浮上したとき、あ、これはもう単純に文化の違いから発生したズレだな、とふつーの目で見てましたよね。人によっては激しく、個人情報の流出の問題として、システム設計の甘さの問題として、公開がデフォルトとか頭おかしいんじゃないの、不祥事以外の何物でもない、みたいな勢いで、叩いたり叩かれたりしておられたのだけど、Amazonさんがアメリカから来た企業であり、そのサービスがアメリカ発信のものであり、そして、アメリカさんのプレゼント文化における”贈る側中心目線”と”ドライな合理主義”とを考えれば、なるほどこの「wishlist」というwebサービスは、贈答シーンのためのものであり、贈る側が、ミシェルの(註:だから誰?(笑))誕生日が近いんだけど、何を贈ったら喜ぶかしらと思ったときに、当人からそれとなく聞き出すとかをせずに、Amazonさんのサイトでミシェルの名前を検索してみると、うまい具合に当のミシェルが「あたしは**が欲しいと思ってるの」と情報発信してるわ、ヤフー!じゃあこのリンクをぽちっと押してお買い上げすれば、当日ミシェルの驚き喜ぶ顔が見られること請け合いね!となる、そういうことのための機能であって、決して、日本人の大半が思ってたような”ブックマーク”機能なんかではない、ということは、たぶんこれはあちらの人にとっては理解云々以前に肌で理解してはることなんじゃなかろうか、と思うたのでしたよ。
そういう機能だからこそ、デフォルトが「公開」なのは当然だし、本名なりメアドなりで不特定多数の人が検索できるようになってるのもまた当然なんだけども、残念ながらそういう文化のなかった、というかズレのあった日本では「自分がこれから買うことをwish(註:ていうか、自分が買いたいときに英語でwishは使わないんじゃなかろうか)するリスト」として使っている人が続出していた、と。なので、この問題が顕在化したときに、「Amazonがこんな実装をしているとは夢にも思ってなかった」とか「なぜ注意を促す文言のひとつもないんだ」とかになってしまう。
註:先の日本での問題化が、そのことをわかった上で、なおこれこれの問題がある、ということもあったんだろうとは思うけれども。
ていうかさ、その、アメリカの贈答文化を知ろうと知るまいと、この機能使う前にちらっとヘルプ的なところを見たら、ああ、こういう機能なんだねってのはわかるはずでし、実際自分もそう理解したうえで使ったり使ってなかったりしたから、そのへんは、せめて書いてあることくらいは確認しようよね、各自でね、と。
このことから得られる教訓として。
アメリカの大学図書館で、最新かつ成功をおさめているサービスなり制度なりがあるからといって、安易に直輸入とかできるわけじゃないよ、ていう、江上お得意のパターンに落ち着く。その好例ですよ、たぶん。ラーニング・コモンズ、とかね。
で、ここから先がこの記事でもっとも肝心なところなのですが。
江上がいまwishなのは、以下の通りです。よろしくね、っと。
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