2010年07月07日

はてなブックマークを、司書の講義でとりあげたときのこと。

 昨年度から半期くらい、とある寄席の高座に上がるということをやらしてもらっていて、その高座で、インターネット上の情報というもののありかたを説明する講義(講義じゃんw)という回があって、その講義の中ではてなブックマークをとりあげる、ということをやってみたときの体験談。

 学校の司書の先生になるための資格をとろうとする人たちのための講義ではあるものの、学生さんたちの話を聞いていると、司書課程のほうをとってるわけではないし、そもそもほかの教科科目での教員免許をとってる人たちなもので、図書館情報学というもの自体にそんなにがっつり触れてないという感触であったので、それはじゃあもう、枝葉末節な実践的スキルを身につけさせるというよりもむしろ、図書館とかインターネットとか情報とかいうもののありかたの全般的な考え方から説明してあげないとよろしくないな、と思い、早速のその回は、比較的興味を持ってもらいやすいであろう、インターネットの近年的なトピックのほうをとりあげて、それをベースにこの分野のいろんなものの考え方に触れてもらおうという目論見だったわけで。

 インターネットのメリット・デメリット、サーチエンジン、wikipedia、flicker、ロングテール、次世代OPAC、NDC、タクソノミー、フォークソノミーの説明までしたところで、ソーシャルブックマークの話題にたどり着き、さてここで説明するとしたら「はてなブックマーク」をとりあげるべきだよなとなったところで、学生さんにこの「はてブ」なるものを知っておるか? と問うと、知っておる、とお答えになる。ああそう、ご存じかい、なら話は簡単、ソーシャルブックマークとフォークソノミーについては言うまでもなく理解できたね、と水を向けたところが、何のことだろうかというような低めの反応。
 あれ、おかしいな、と思いながらよくよく聴いてみると、どうもこの学生さんたちのご理解では、この「はてブ」なるものの”ソーシャルブックマーク”としてのソーシャルかつweb2.0(なつかしいなおいw)的な機能について、理解しているとか意識しているとかそういうものとしてツールとして使っておられるとかではない。なんか知んないけど、いま話題で人気のページはどれかというのが容易に見つけられる、まあちょっとした楽しいヘッドラインみたいなノリで接しておられるように見受けられた。ちょくちょく見てはいるけど、え、ソーシャル?フォーク?何?である。
 これはしたり、と。おっさん、若い学生さんたちのリアルな情報行動をわかってなかったよ、と反省して、つまりこの「はてなブックマーク」というサービスの持つこれこれこういう機能には、あそこに書いてある「タグ」というキーワードのようなものには、かくかくしかじかな意味があるのだよ、ということを多少換骨奪胎噛み砕いた言い方で説明してみると、え、なにそれ、初めて聴いた、というように反応の温度がちょっと上がる。我が輩の小咄もさらにつらつらと続く。といった感じ。

 考えてみれば我々だって、自分の守備範囲外のさまざまなモノやサービスやツールの本来的な意味を専門的な視点で意識理解しながら接しているわけでもなんでもないわけだから、図書館情報学にさほど馴染みのなかった学生さんが、はてブをなんとなくな情報サービス、いやどうかするとエンタメのひとつと触れていたとしてもなんら不思議はない。にしても、ふだんからそこそこに接し、ある程度はその存在が浸透している。
 すでにある程度浸透していながら、その機能は実際ちゃんと理解されてるわけではない。だとしたら、これほど寄席の、いや講義の教材としておあつらえむきのものはないのではないか、と思えてくる。はてブさん。ああ、はてブさん。

 とはいえ、じゃあいきなり何の前触れもなく、はてなブックマークというものがあってね、と話を始めてみたところで、ソーシャルブックマークのことだけを説明してみたところで、はてブのこと、ソーシャルブックマークのことをちゃんと理解してもらえたとも思えない。単体の説明では、あの、へぇ〜、は得られなかったであろう。図書館があり、wikiがあり、NDCがあり、タクソノミーとフォークソノミーがあった上での、その文脈の中でのあのはてブである。東京の収録スタジオの中で水無月を試食しただけで、京都の夏は迎えられないのと同じである。(←いやたぶんちがう)
 噺家仲間には実際授業中にこのツールをがっつり使わせるという演習をやっておられたりもする。それはそれで、そんなんできんのちょっとうらやましいなと思ったりもする、設備的な意味で。
 ただ、今回の寄席の場合で言うと、このツールの使い方を身につけてほしいのか。いやちがう、ここでは、インターネットをとっかかりとしてこの世の中にある情報というものの在り方の世界地図のようなものを、フリーハンドの白地図でもいいから、なんとなく脳内に拵えておいてもらいたい。そういう想いを乗せての説明だったから、今回はあのような取り上げ方になった。そして、それで良かったと思っている。
 そこのところの配分が、ライブの寄席というのはなかなか難しい。

 ちなみに、それから数週間後のまったく別の小咄、検索してヒットしたページを我々はどのように評価選別すべきだろうか、という文脈の中でも、このはてブを取り上げる一幕があった。ブクマ数多いと信頼できるかな?でも批判の意味で増えてる場合もあるよね?ブログ記事なら、ほかの記事に比べて不自然にブクマ数の多い記事ってどう思う?などである。
 おそらく今後しばらくは、はてなブックマークというものをおかずにして高座に上がる機会というのは、減ることはないような気がしている。
 はてブさん。ああ、はてブさん。四畳半のアニメにもちゃっかり登場しておったな。
posted by egamiday3 at 08:14| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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