2012年12月24日

図書館がサンタクロース または、図書館は著作者にとって”脅威”かについて。

  
 せっかくのクリスマス・イブなので、今年自分がもらったクリスマス・プレゼントの話をひとつしますね。

 ちょっと前にこんなお話がありまして、

●文部科学省、2011年度社会教育調査の中間報告を公表 | Current Awareness Portal  http://current.ndl.go.jp/en/node/22221
●図書館の貸出数最多の5.4冊 10年度1人平均 :日本経済新聞   http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG31030_R31C12A0CR8000/

 そのことがNHKの「NEWS WEB 24」でも取り上げられてたらしくて、その様子がこちら(2012.10.31)らしいんですが、

●司書の目と耳 - NEWS WEB 24 を見ました   http://www2.aasa.ac.jp/org/lib/j/issues_j/metomimi/archives/2012/11/entry_68.html

 で、まあ、いつものようにという感じで、図書館の所蔵・貸出・予約が本の売り上げと出版者・作者への実入りを減らしているんじゃないか云々の話は出ることになるわけなんですけど、

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(司書の目と耳 - NEWS WEB 24 を見ました    http://www2.aasa.ac.jp/org/lib/j/issues_j/metomimi/archives/2012/11/entry_68.html
古市:ただ本を書く方としては、ちょっと困るって面もありまして、僕の本[『絶望の国の幸福な若者たち』]は、たまたま杉並区立図書館で検索してみたら、89件待ち、って書いてあったんですよ。
橋本:ツイートでありましたね。予約して半年くらいかかる。待つもんね[@ririkonnta]ーって。
古市:すごい有り難いんですけど、逆に言えばその89冊、本当は買っていただけるはずだったものが、買ってもらえないってことで。
橋本:うーーん。
古市:とくに僕はまあいいとしても、小説家の方とか本を書くことを商売にしている方にとっては、図書館が[貸し出す?=聞き取れず]ってのは、実は困っちゃう面もあるんじゃないかな。
・・・
古市:僕の本はじゃあ、お金を出して買う価値がないということですね?
橋本:そういうことは言ってないですよ。
・・・
古市:本当にそう。家で[図書館の]本が借りられてしまって、別に、本当に本屋さんに行くよりも[図書館の方が]便利、みたいなことが増えてくると、著者としてはちょっとツライかなあ、とかは思いますね。
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●Twitter / poe1985: 図書館の社会的意義は疑うまでもない。だけど専業作家にとって図書館が脅威なのも事実。CDのようにコレクターズアイテム化していくのか、中世みたいにパトロン保護モデルになるのか、今後が楽しみ。 #nhk24
 https://twitter.com/poe1985/status/263671360268689408

 わかりやすくするために切り取ったらちょっとイジワルな切り取り方になっちゃって申し訳ないんですけど、でもこの方のtwilogをちゃんと追えば、別に図書館を一方的にばしばし批判してるわけでもないのがわかるし、話が転がって↓こういう

●Twitter / poe1985: 違法DLを図書館の中だけとか、学校の中だけとか、ある制限を設けて合法化したらいいんじゃないのかなあ。
 https://twitter.com/poe1985/status/263679962010226688

 ↑こういうすげえワクワクするようなことも言うてはるので、ああ、いいなあ、って思うんですけど、それはそれとして。

 で、この手の話題でもって今回一番に小骨がひっかかったのは、著述出版を専業にしている立場の人には図書館の所蔵・貸出・予約は脅威脅威だと言うんだけど、そりゃ著述出版専業者からしてみればそうだということはもちろん理解できるんだけど、図書館にしろ、その資料・情報の保存・提供機能にしろ、そして出版流通にしろ、どれもこれも社会全体にとってのインフラのひとつであって、別に著述出版専業者の都合だけで存在してるわけではないよなあ、って。物流のインフラも医療のインフラも、食品生産者や物流業者や医療従事者のお給料を払うためだけに存在しているわけではなくて、もっとたくさんの消費者や仲介者やそれ以外の一般市民やなんやという存在があって、そういった人たち全体、社会全体がええ塩梅になるように、ってなってるわけで、それは出版物関係のインフラだって同じなんじゃないのかなあ、と。
 例えば、著述出版を専業にしている人だけが、本を書いて出版しているわけじゃなくて、もっとたくさんの”専業じゃない人たち”がいて、その人たちだって本を書いて、出版して、各種の媒(なかだち)な存在を通して、読者・消費者に届けている。届けよう、届けたい、想いよ届け、って祈り願っているわけです。出版物関係のインフラを使って。だったら、専業にしている人にとって都合が悪くても、専業じゃない人にとってはすごく好都合、読者にとってはさらに好都合、という何かしらについて、専業にしている人が困ることは理解できつつも、その都合だけでインフラの良し悪し決定されてもなあ、って。

 それにしても、図書館が脅威とおっしゃるけど、本当にそうなのかなあ。まあ、著述出版を専業にしている人にはそうだろうけど、専業にしていなくて本書いている人だっていっぱいいるはずだしなあ。専業じゃない人にとっての図書館が脅威か脅威じゃないか、何かわかるような数字でもあればいいけどなあ、そういう専業じゃない人がなんかわかりやすい数字をどこかに出してくれてないかなあ。

 ・・・・・・あ。
 それって、自分のことじゃん!(笑)

 というわけで、本題です。
 著述が専業じゃない人が書いた『本棚の中のニッポン』、今年5月発売なので、もうこれ以上図書館さんでの所蔵の増減は大きく変わらないだろうし、買ってくださった図書館さんでの目録登録もさすがに済まされてる頃だろう、というのを見はからって、出版部数と所蔵冊数を照らし合わせてみました。

 まず発行冊数(初版)が、2000冊。
 このうち、出版者側の献本等が約100冊。
 自分側の献本等で買い取ったのが約120冊。
 在庫2012年11月時点で約270冊。その後売れたかもしれない。
 ざっくり言えば、売れた本の冊数が約1500冊、ということになります。
 ありがとうございます!ありがとうございます!

 ではそのうち、図書館が購入してくださったのはどれくらいか、という話です。
 大学図書館関係なら、もちろんCiNii BooksやNACSIS-CATの所蔵件数でだいたいは知れますね。全国の大学で約170冊。
 次に公共図書館の所蔵ですが、NDLSearchは県立レベルとかまでで、全国の市町村やその他各種の図書館を全部知ることはできませんので、47都道府県の県立図書館webサイトから県内公共図書館横断検索を見つけて、それで検索して行きました。あとそれに、カーリルの検索も加えていきました。ひとつひとつ、北は北海道から南は沖縄まで、我々スタッフが一生懸命探しました、そしたらねお母さん、見つかりましたよ。公共図書館所蔵が約360冊。
 これに加えてですが、主題が主題だけにというので、一応OCLCやKVKなどの海外の総合目録・横断検索サイトもチェックしておきました。海外所蔵が、把握できた限りで約20冊。
 合計で、図書館が購入してくださったのは550冊になります。

 1500冊のうち、図書館の購入が550冊。
 実に全体の1/3以上が、図書館さんによって購入されたことになります。
 逆に言うと、図書館さんが購入・所蔵してくださらなければ、1000冊未満、初版部数の半分しかさばけなかっただろうということになります。

 ここで、「図書館が購入してなければ550冊以上売れてた」が”脅威論”のよりどころなのでしょうが、もともと1000冊未満しか売れてなかったであろうものがそんなことになろうとは、ちょっと思えません。それが、著述が専業じゃない者にとっての、本を書いて売る、ということだと思います。
 それでいいんです。お金を出して買うまででもないけど、読んでみてもいいかなくらいの、なかなかはじけきれないテーマ、トピックを、なんとかしてひとりでも多くの人に届けたい、伝わってほしい。それがかなうのが図書館の持つ機能だと思っています。

 そして、えっと、そうです、クリスマスの話です。

 つい先日、出版者様より本書の印税をいただきました!届きました!
 ありがとうございます!ありがとうございます!
 定価1900円×印税率×1900冊分(出版者側献本100冊を除いた)を掛けます。
 合計、約25万円強です。

 ・・・ですが。
 実際には、自分自身で買い取った約120冊の代金、まあ著者割引とは言え、いただく予定だった印税から引かれます。これが約18万円弱(消費税込み)。
 献本には送料もかかります。特に本書の性格上、海外にも送ってます・・・海外送料だけで約2万円><。国内と合わせて約25000円。
 えっと、あれ、源泉徴収もあるんですか><。10%で約25000円。
 計、23万円弱。

 差し引きで、わたくしが本書でいただいたお金が、25256円になりました。
 正直、プラスが出るなんて思ってませんでした!(笑)

 いや、それはいいんです。
 問題は、図書館さんの購入分が存在してなかったと仮定した場合です。

 図書館購入分550冊の実績が見込まれず、1900−550=1350冊が今回の初版部数であり、印税の対象であったとしますと。
 定価×印税率×1350冊=約18万円。
 自分買い取り冊数は変わらず、約18万円弱(!)。
 送料変わらず、約25000円。
 源泉徴収、約18000円。

 マイナス4万円・・・あぶなかった。
 確定申告あるにせよちょっと痛かった・・・。

 えっと、結論です。
 全国の公共図書館さま、大学図書館さま、海外の図書館さま。
 みなさまはわたくしのサンタクロースです。
 世界中の図書館に、メリー・クリスマス! 

 (だいじょうぶかな・・・計算まちがってないかな。算数苦手なんだけどな・・・。)

posted by egamiday3 at 21:17| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする