2015年11月07日

(メモ)電子書籍(あと主に公共図書館とのそれ)


●日本の現状
・「電子書籍ビジネス調査報告書2013」
 電子出版市場規模推移(確定分のみ)(億円)
 http://www.garbagenews.com/img13/gn-20130720-02.gif
・アマゾン
 iBooks
 楽天(kobo)
 紀伊國屋書店
 BookLive(凸版印刷)
 honto(大日本印刷)

●アメリカの現状
・電子書籍のシェア
 金額ベース 11%
 部数ベース 22%
・アマゾンのシェア
 冊子 40%強
 電子書籍 50%強 (iBooks 約15%)


●電子書籍の種類分け
・パソコンで、CD-ROM/DVDで閲覧する
・電子辞書
・ケータイ小説/ケータイコミック
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・パソコンで、オンラインで、ダウンロード/閲覧する
・携帯電話・スマホ・タブレットで、オンライン、ダウンロード/閲覧する
・専用端末で、オンラインで、ダウンロード/閲覧する

・スタンドアローン
・ダウンロード(オンラインで保存)
・ストリーミング(オンラインでリアルタイム)

・フィックス(画像方式)
 PDF、マンガ・ビジュアル雑誌・写真集、紙からのスキャン
・リフロー(テキストデータ、全文型)
 フォント変更、全文検索、書き込み、外部参照、読み上げ対応(障害者支援機能)

・一般的なブラウザ
・専用閲覧ソフト/閲覧アプリ
・専用端末
・電子書籍アプリ
(例:2010「もしドラ」電子書籍アプリ、10万ダウンロード)

・出版者が新刊書・近刊書(紙書籍)の電子書籍を販売する
・過去の紙書籍を遡及的に電子書籍化する
 例:日本出版インフラセンター「コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)」(→)
・電子書籍のみで出版・販売される
・個人が自己出版として電子書籍出版する
・個人が”自炊”する
・デジタルアーカイブとして構築する
 Google Books、NDLデジタルコレクション、各図書館・公的機関等の電子化事業、青空文庫/グーテンベルグ・プロジェクト、機関リポジトリ・オープンアクセスサーバ

・DRM(Digital Rights Management)
・コンテンツに鍵をかけて利用を制限する(ハードDRM)
・コンテンツに電子透かし/番号を埋め込んで追跡・識別可能にする(ソフトDRM)


●電子書籍の規格(ファイル形式)
・・国際標準
・PDF
 Adobe社開発→国際標準規格
 電子書籍に限らず幅広く普及
 ページレイアウトを固定する
 画像データ/テキストデータ
・EPUB3.0
 IDPF(International Digital Publishing Forum:国際出版フォーラム)(2011年から)
 HTMLコンテンツをzipでまとめ、拡張子を.epubとしたもの
 (HTML、CSS、XML、JPEGなど)
 仕様はオープン

・・デファクト・スタンダード
 企業=プラットフォーム提供者が、独自の規格を開発・採用し、市場シェアを確保する。
 コンテンツと、プラットフォーム、デバイス(機器)、ビジネスモデルなどのエコシステムを構築する。
・アップル(iBooks)
・アマゾン(kindle) KF8(拡張子.azw)


●電子書籍のエコシステム
・アップル(iBooks)
・アマゾン(kindle)
・大企業(プラットフォーム提供者)が、コンテンツ、プラットフォーム、デバイス(機器)、ビジネスモデルなどの大規模なエコシステムを構築する。
・コンテンツを管理し、ユーザを管理する。
・このエコシステム内では便利・快適(「檻の中の平和」)
・エコシステムが一部のプラットフォーム提供者により寡占化している。
 ↓
・(例)2009 アマゾンが、著作権的に問題のあった書籍を、強制的に遠隔操作により削除した。(『1984年』『動物農場』)
 ↓
・書籍データ(ユーザの書き込みデータも含む)が勝手に削除される。
・企業が、ユーザの購入・閲覧履歴等のデータを把握している。
・ユーザは、電子書籍を”入手”したのではなく、”アクセス権”を得ているだけ。(DRM、自力で保存不可)
・企業が”閉店”したら、ユーザは電子書籍へのアクセスができなくなる。
・以上のことを、ユーザは”同意”している。


●電子書籍の価格
・エコシステムが一部の大企業により寡占化している
 ↓
・電子書籍は物品ではないので再販売価格維持制度の対象ではない。(2011年 公正取引委員会)
・価格を自由に付けられる(割引、セール等)
・売る/売らない、いくらで売るか/いくらで買うかが、一部のプラットフォーム提供者に左右される
 例:無料セール・格安セールの実施


●電子書籍の歴史
・1985 『最新科学技術用語辞典CD-ROM版』
・1987 『広辞苑第4版CD-ROM』
・1988 日本電子出版協会「日本語対応CD-ROM論理書式に関する標準化案」
・1990年代 EPWING(辞書システムCD-ROMの標準規格)
・1999 電子書籍コンソーシアムが「ブック・オン・デマンド実証実験」
・2000年代 国内各者(パナソニック、ソニー等)が電子書籍端末を発売
・2006 GoogleがGoogle Books事業を開始
・2007 AmazonがKindleを発売
・2009 国立国会図書館が所蔵資料の大規模デジタル化事業を開始
・2012 日本出版インフラセンターが「コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)」
 (東日本大震災復興関連予算による。460社、6万タイトル。多くの出版者が電子書籍化を開始。運営・内容・効果に批判あり)


●公共図書館における電子書籍の導入
・2014年 アメリカの公共図書館の約95%が電子書籍を提供している
・2013年 日本の公共図書館では17館しか電子書籍サービスを導入していない(10万人以上の自治体、電子出版制作流通協議会調べ)
・大都市圏の公共図書館では関心が高いが、それ以外の市町村立図書館では反応が鈍い


●なぜ日本の公共図書館では電子書籍サービス導入が進まないのか
・予算が足りない
・導入費・維持費・電子書籍費が高い
・タイトル数が少ない
・新刊書が少ない
・利用者のニーズに合ったタイトルが少ない

・紙書籍よりも電子書籍のほうが販売時期が遅い
・同時貸出数に制限がある

・公共図書館向けの電子書籍サービス(販売用のビジネスモデル)が少ない、流動的
・有力なプラットフォーム提供者があらわれていない
・出版者側が無料貸出による販売圧迫を警戒している

・図書館・図書館員のスキル・考え方が追いついていない
・ユーザの利用がまだ定着していない
・ユーザからのニーズ、問い合わせが少ない
・むしろ日頃図書館に来館しない人へ向けての利用促進が必要


●出版者側と公共図書館側との見解の比較
・磯部ゆき江, 三輪眞木子. 「公共図書館への電子書籍サービス導入 : 公共図書館と出版社の視点」. 『日本図書館情報学会誌』. 2014.12, 60(4), p.148-164.

・・公共図書館
・電子の値段は、紙と同額かそれ以下をのぞむ
・電子の提供時期は早期をのぞむ
・電子の貸出回数に上限を求めない
・(公共図書館は)電子の所有権を重視していない(流通←→保存)
・主な対象者は、非来館者、障がい者、高齢者。期待する機能は文字拡大、音声読み上げ。
(電子書籍に関する公立図書館での検討状況のアンケート(2013))
・公共図書館のサービスで重要なのは、レファレンスサービスである

・・出版者
・電子の値段は、紙より高い価格をのぞむ
・電子の提供時期は、紙より遅くらせることをのぞむ
・電子の貸出回数に上限を求める
・公共図書館は貸出を重視している(と考えている)
・紙と電子をともに出版する
・一般消費者向けビジネスが優先

●公共図書館向け電子図書館サービス(日本)
・TRC「TRC-DL」
・紀伊國屋書店「NetLibrary」
・株式会社日本電子図書館サービス(2013、角川・講談社・紀伊國屋書店)
・Over Drive社(米国)

・OPACで紙書籍と同様に検索・アクセス可能なサービス
・電子書籍専用のサイトからアクセス可能なサービス
・専用の閲覧ソフトが必要か/不要か
・サービス終了後、購入した電子書籍を入手保存できるか/できないか

●公共図書館向け電子図書館サービス(日本)の課題
・タイトル数が少ない
 千代田区立千代田図書館 6200冊
 大阪市立中央図書館 5000冊(和書1500冊)
・導入費・維持費・電子書籍費が高い
・価格が紙書籍よりも割高である(TRC-DL:1.2-1.3倍)
・ライセンス(同時貸出数)ごとに料金が必要(3ライセンスなら3倍)
・奉仕対象人口に応じて価格が決まる
・NetLibrary: 電子書籍購入費用を一度支払えばよい(入手・保存可能)
 TRC-DL: 継続してシステム使用料・サーバ使用料などを支払う

●図書館における電子書籍の購入
・購買(買い切り)
・アクセス契約
・Pay per view
・Demand Driven Acquisition(要求主導型購入モデル)
 利用者が借りた分だけを、図書館が後払いで購入する
(例)米Over Drive社 20回までの貸出はPay per view料金を適用、それを越えると自動的に購入料金を適用

●公共図書館向け電子図書館サービス(アメリカ)
・2014「Ebook Usage in U.S. Public Libraries」
 公共図書館の約95%が電子書籍を提供している
 74%がフィクション、26%がノンフィクション
 タイトル数の中央値は約1万点 (3万点をこえる図書館は約17%)
 購入予算は全体の8%程度(5年後に14%と予想)

●Over Drive
・50言語・200万タイトルの電子書籍が、世界30か国の34,000の図書館や学校で利用可能
・Over Drive社の電子書籍サービスを9割以上の図書館が利用している
・図書館OPACまたは書店等のwebサイト、Amazon等で貸出手続き
 自分の機器(PC、タブレットなど)にダウンロード
 貸出できるのは1冊あたり1回に1人だけ
 貸出期間が過ぎれば、自動的に消去される
 貸出中の電子書籍には「購入」ボタンも出る
・多くがコンソーシアム契約によって他館と共有する
・電子書籍は、紙にとってかわるのではなく、補完サービス

●米国での課題と活動
・図書館界から出版会に対して積極的なビジネス提案をする
・サービス契約の終了と変更
 (例)カンザス州立図書館(書籍の一部は新システムへ移動、一部はアクセス権を失う)
・2012 ALA会長が図書館への電子書籍供給を拒否する出版社を批判
 「経済的に図書館利用しかない利用者への差別であり、出版社によるデジタルデバイドの拡大を傍観できない」

●日本での展望と課題
・2015年 株式会社メディアドゥが日本の公共図書館にOver Driveの電子書籍サービスを提供開始
 (龍ケ崎市立中央図書館・潮来市立図書館)
・2016年 国内の電子書籍タイトル数は100万点をこえる見込み(http://current.ndl.go.jp/node/28502
・電子書籍に最も出費する国は日本(平均86ドル)(米調査、http://current.ndl.go.jp/node/29072

・出版者によるビジネスモデル(図書館によるサービスモデル)の構築
・公共図書館、出版者の相互理解、協力関係



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■参考文献
・日本図書館情報学会研究委員会編. 『電子書籍と電子ジャーナル』. 勉誠出版, 2014.
・星野渉. 「電子書籍と出版産業」. 『情報の科学と技術』. 2012.6, 62(6), p.236-241.
・植村八潮. 「電子書籍の市場動向と図書館」. 『現代の図書館』. 2013.12, 51(4), p.197-202.
・磯部ゆき江, 三輪眞木子. 「公共図書館への電子書籍サービス導入 : 公共図書館と出版社の視点」. 『日本図書館情報学会誌』. 2014.12, 60(4), p.148-164.
・伊藤倫子. 「電子書籍貸出サービスの現状と課題 : 米国公共図書館の経験から」. 『情報管理』. 2015, 58(1), p.28-39.
・村上泰子, 北克一. 「電子書籍と知の公共性,図書館」. 『図書館界』. 2015.7, 67(2), p.96-104.
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posted by egamiday3 at 20:46| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする