2016年02月24日

(メモ)川北稔『世界システム論講義 : ヨーロッパと近代世界』

世界システム論講義: ヨーロッパと近代世界 (ちくま学芸文庫) -
川北稔『世界システム論講義 : ヨーロッパと近代世界』 (ちくま学芸文庫) -

・現代のアジアの発展は、古代のアジア諸帝国の価値観が復活したものでなく、本質的に近代ヨーロッパが生み出した物質的価値観でしかない。
・イギリスは進んでいるがインドは遅れているということはない。イギリスが工業化したために、その影響をうけたインドは容易に工業化できなくなった。世界の時計はひとつである。
・近代世界システムは、「世界帝国」ではなく、経済的分業体制=「世界経済」。

・ヨーロッパで人口が減少し生産が停滞し、パイを大きくするのに大航海時代へ。
・火薬によって騎士が弱体化し、権力が国家に集中し、国家機能が強化した西ヨーロッパが「中核」となり、弱体化した地域は植民地化される。
・ヨーロッパシステムは経済システムであり、政治的統合を欠く国家の寄せ集め。
・ポルトガルやスペインは、アジアでは既存の交易に寄生した。アメリカでは生産の組織化を展開した。アジアでは商業が発展を遂げ、ポルトガルもスペインも自ら新たな生産の組織化は必要なく参入するだけでよかった。ただし、アジアにはヨーロッパ商品のマーケットはなく、立場は脆弱だった。
・スペインはアメリカ植民地でみずから生産を組織化しなければならなかった。→「周辺」のプランテーションは、「中核」に銀・サトウキビのような世界商品を供給するシステム。
・日本の銀輸出量は年間20万キログラム。アメリカからの輸出のピークが27万キログラム。
・17世紀、「中核」からの経済的余剰が得られなくなり、ヨーロッパの世界経済が危機に陥り、パイの分け前をめぐる競争のため重商主義と呼ばれる保護政策がとられるようになった。
・オランダが世界経済のヘゲモニーを確立する。オランダは農業国でもあり、漁業国でもあり、造船業を確立した工業国でもあり、貿易の生命線だったバルト海を握り、商人貴族がうまれ金融市場となり、情報センターとなった。ヘゲモニー国家はリベラルな場所となった。
・イギリスは、貿易相手をヨーロッパ外に拡大し、ヨーロッパとアジア、アメリカ、アフリカをつなぐ交易のリンクの中心に座り、商業革命を成し遂げた。植民地のプランテーションで世界商品(タバコ、茶、砂糖、綿織物)を生産・輸入し、植民地側に購買力を与え、イギリス商品を輸出して生活をイギリス化させた(生活革命)。イギリスの商業革命によって、ヨーロッパにアジア・アメリカの商品が流入し、近代ヨーロッパ人の生活様式に変化が生じた。舶来品の紅茶に砂糖を入れるのがステイタスシンボルだった。
・コーヒーハウス。
・アジア・アメリカ・アフリカの物産を、輸入するだけでなく、国内で生産しようとして、産業革命が起こった。(綿織物工業)
・プランテーションによる世界商品のモノカルチャー地帯となった地域、サトウキビ生産のカリブ海地域などは、すべての仕組みが砂糖生産に向けられ、低開発地域となり、その影響が現在まで尾を引いている。/アメリカ東海岸・ニューイングランドは、ヨーロッパと同じ気候・産物でプランテーションはつくられず、森林資源を活かした造船が発達し、工業地となった。
・カリブ海では砂糖がとれたから奴隷制度があり、奴隷貿易を核とする三角貿易が、イギリスの産業革命の起源となった。
・植民地は、本国の社会問題(貧困・犯罪・家庭崩壊など)の解決の場とされた。
・すでに世界システムの中心にいたイギリスにとって、産業革命はそれほど大きな出来事ではなく、世界システム(中核と周辺からなるグローバルな分業体制)に構造的な変化をもたらしてはいない。
・フランス革命の「平等」によって、新しい差別がうまれた。低コスト労働の確保のために、人種・性別などによる差別がおこなわれた。それがイギリスによる世界システムに組み込まれた。
・アメリカは世界システムの「周辺」から脱却し「半周辺化」した。紅茶に代表されるイギリスからの投資・低開発化・生活様式・経済的従属からの脱却。
・産業革命はイギリス民衆の生活基盤を一変させた。店買いのパンやポリッジは朝食の時間を短縮させた。砂糖入り紅茶はカフェインとカロリー、熱。世界システムによって紅茶も砂糖も、下層民衆に普及し、工業化時代のイギリス都市労働者の象徴にまでなった。
・19世紀は移民の世紀だった。イギリスからアメリカ・オセアニアへ。東欧・南欧から南米・北米へ。サトウキビ生産の労働力はアフリカ系からアジア系移民へ。移民は、周辺労働力の再編成・配置転換。「周辺」での生産のための労働力の補給がおこなわれた。アジア内部でも世界商品プランテーションのあるところに近隣地域から大量の労働力移動があった。世界システムが全地球を覆った結果、システム外から労働力をもちこむということがなくなり、周辺同士で労働力を移動させた。
・逆に周辺から中核への移動もたえず発生し、スラムが発生した。ロンドンのイーストエンドに集まったアイルランド人やユダヤ人は縫製業のための安価な労働力となった。が、のちにアメリカのシンガーミシンが流れ込む。
・近代世界システムが地球全域を覆い、「周辺」開拓の余地がなくなり、成長できなくなり不況になり、アフリカ分割を契機に世界が「帝国主義」として、残された周辺化可能な地域をめぐる領土争奪を始めた。これがアメリカとドイツのヘゲモニー争いにつながる。

posted by egamiday3 at 21:56| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする