2016年08月21日

(メモ)『アーカイブ立国宣言 : 日本の文化資源を活かすために必要なこと』からのメモ

『アーカイブ立国宣言 : 日本の文化資源を活かすために必要なこと』ポット出版(2014)
http://www.pot.co.jp/books/isbn978-4-7808-0213-9.html

アーカイブ立国宣言: 日本の文化資源を活かすために必要なこと -
アーカイブ立国宣言: 日本の文化資源を活かすために必要なこと -

■極私的感想
・課題も現状もユーザ像も価値観も将来性も優先順位も、これだけ多種多様・百花繚乱・百鬼夜行だと、全体をカバーしようとする仕組みにはできるだけふんわりとした寛容さというかふところの深さがいるなあ、という感じ。


●はじめに
・「問題は、技術力以外の分野での日本の著しい立ち遅れである。これまで技術力、経済力に頼って発展してきた国の驕りが、この立ち遅れの深刻さから目を背けさせてきた。」

●鼎談:アーカイブとは文化そのものである
青柳正規、御厨 貴、吉見俊哉
・「小説や文学、映画、建築、絵画などの中には、近代日本が西洋化・近代化の中で悩み、苦闘してきた痕跡がいっぱい残っています。・・・保持すべきものが、この19世紀末から1970年代前後までの日本にあると思うのですね。でも、現在はその価値が意外と認められていなくて」
・「個人的な記録はどんどん蓄積されているのに、それらが相互につながっていない」「東日本大震災では、被災地で膨大な記録が残されましたが、その大半がおそらくオーファン作品となるでしょう。でも、現在の日本ではそれらを共有する仕組みが整っていません」
・「全国各地で草の根的に生み出されてきた文化的資源がとてもたくさんありますが、それらは今、共有化されないままどんどん失われている」
・「大事なのは、共有化した記録が具体的にどのように役立つのか、そのプロセスを文脈化することです。」「「あなたが持っている記録は、公共の処に預ければこういうふうに役立つから、出したほうがいいですよ」って、目に見える文脈化を行なうことが重要であって、それを可能にするのが文化力だと思います。」

●(マンガ)「マンガ・アニメ・ゲーム文化のすべてを収蔵するミュージアムを」
東京国際マンガミュージアム/森川嘉一郎
・アーカイブを維持するためには、施設に集客機能を持たせて維持費をまかなうとともに、保存の意義を啓蒙普及していく。そのためにアーカイブ機能とミュージアム機能を併設する。→「東京国際マンガミュージアム」
・「保存のためのデジタル化」を可能にする制度が必要。複写請求の多い資料ほど複写不可に陥る。

●(ゲーム)「世界に通じる文化を国内で保存すべきである」
立命館大学ゲーム研究センター/細井浩一
・研究と開発の現場では、世界共通のIDを定めて同定可能にすることがポイントになる。
・「100年後、日本のゲームを研究しようと思った人が「スタンフォード大学に行かないとダメだよ」ってなってしまったら、嫌ですからね」

●(震災)「公開・共有のための仕組みづくりが必要だ」
311まるごとアーカイブス/長坂俊成
・震災前の生活を見たいというニーズ。地域の集会所で昔の地元小学校の運動会の映像を上映すると盛り上がる。コミュニティのアイデンティティの復活は「心の復興」。
・311まるごとアーカイブスを法人化し、法人が行政に代わって公開し、問題があった場合はオプトアウトする。

●(脚本)「映像の現存率が低いなか放送文化を残していくために」
日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム/石橋映里
・脚本アーカイブズでは、脚本・台本を収集し、データベースを作成したのち、複数の機関へ寄贈・移管している。作成した脚本データベースでは何がどのような内容でどこにあるかがわかり、ひとつのコレクションに見えるような形。
・全国の図書館102館に1万冊以上の脚本が所蔵されている。これらをひとつのフォーマットでデータベース化するには、これから協議が必要。

●(映画)「デジタルアーカイブは「保存」に役立つか」
東京国立近代美術館フィルムセンター/岡島尚志
・デジタルデータ保存の方法としての「式年遷宮」方式。一定の期間ごとに決められた新しいキャリアにデータを移し替えていく。
・「永代供養」方式。著作権者に一定の金額を負担してもらい、公的機関で保護する。
・フランスINA(国立視聴覚研究所)では、1000人の常勤職員がフランスのテレビ番組すべてを録画する。フランスという国はそういう事にお金を湯水のように使う。

●(放送)「テレビ番組とアーカイブ NHKの取組」
NHKアーカイブス/宮本聖二
・現在のNHK放送システムは、番組をファイルで完成させ、放送と同時にアーカイブされるという、一体的なシステムをとっている。

●(地域)「普通の人の話をきちんと残していく大切さ」
地域雑誌「谷中・根津・千駄木」/森まゆみ
・地域文化がない場所はない。ただ、それを記録として残しているところがほとんどない。
・地元の自治体とうまくいかない。町の記録をとる者は、行政には扱いにくい。
・「谷根千」のバックナンバーはエール大学、ハーバード大学で全号を保存している。

●(地域)「交流装置としてのアーカイブを作りたい」
小布施町立図書館「まちとしょテラソ」/花井裕一郎
・オーラルヒストリーとしてのこす「小布施人百選」
・「ワクワク通信」は説明責任とともに、図書館への来館を促すツールでもあった。普段来ない人に来館してもらうため、全戸配布にこだわった。
・町は交流産業。ほかに産業がないと、来訪者に小布施ファンになってもらうしかない。そういう町をどう作っていくか。交流装置としての、道具としての、アーカイブ。
・面白いと思えることを図書館が先導して行動すればいい。貴重な資料が地域にあるとわかっているなら、もらいに行く。そういう実績を積み重ねてはじめて予算がついてくる。実績がないところに予算はつかない。
・司書のキャパシティを越えていることには、外部の力を借りたらいい。いろんな角度のスキルを持った人を迎える。

●(地域)「地方の図書館で進める電子書籍の可能性」
札幌市中央図書館/淺野隆夫
・図書館が地域情報を積極的に集めていることに驚いた。だが、図書館は収集はするが、発信までは手が回らない。
・電子書籍サービスについて、インターネットで告知するだけではIT好きな人だけのものになりやすい。電子サービスをリアルな場所でPRすること。
・図書館をいろんな場につくるために、デジタルが必要。役に立つ事例を積み上げていくこと。

●(アニメ)「未来の日本のアニメーションアーカイブスを目指して」
日本・アニメーションアーカイブス/植野淳子
・1963年のテレビアニメ放映開始から2033年で70年になり、保護期間が切れる。そうすると、原版や中間制作物の保管コストを負担している所有者によっては、散逸・消失してしまうおそれがある。

●(音楽レコード)「タイムリミットが迫ってくる古い音源をデジタル化していく」
歴史的音盤アーカイブ/藤本草
・デジタルアーカイブは複製ではなく保全。原盤がなくなってしまえば権利者も権利主張できない。デジタルアーカイブ化してしまえば、これからもずっと権利を主張しつづけられる
・SP盤の総合カタログをインターネット上にオープンにし、収集機関やコレクターに所蔵品について書き込んでもらい、集大成できれば。

●(書籍)「既存の知的財産をいかにアーカイブしていくか」
植村八潮
・NDLの納本率。商業出版物は97%。行政資料は56.7%。
・電子書籍納本について、利用はしなくともデータの保存だけでも先行しておこなうダークアーカイブの実現を。

●「デジタルアーカイブ振興法制定の意義と今後の方向性」
福井健策、中川隆太郎
・国際的なプレゼンスの向上。適切な日本理解を促す外交戦略上の位置づけ。
・インターネットでアクセス可能なコンテンツの質・量。たどりつくための導線、一元的な検索窓口。多言語対応。
・多言語発信の例として、映像コンテンツに英語字幕を付与する字幕ラボの設置。
・国内外のデジタルアーカイブ間の相互接続の促進。アジア・ヨーロッパ・北米など諸外国のデジタルアーカイブとの相互接続を進めるべき。


posted by egamiday3 at 14:56| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする