2017年03月02日

デジタルヒューマニティーズ #2017年の本棚の中のニッポン


 デジタルヒューマニティーズ×海外日本研究、のことです。

 正直、いまどきの「デジタルヒューマニティーズ」という言葉が一過性のものになっていくのか、定着して不可欠な概念になっていくのかは、自分個人としてはまだわからずある程度の距離感で見てる感じではあるのですが、でも、それが持つ根本的な意義みたいなのはたぶん、流行ろうがすたろうが無関係に、がっつり見据えていくべきものだという確信はあります。
 ありますっていうか、この記事書いている過程で、得ました。

 Facebookの公開グループ「Digital Humanities in Japan」が立ち上がったのは、2015年。

・Digital Humanities in Japan
https://www.facebook.com/groups/758758500904522/
・「西洋史DHの動向とレビュー : 外国(史)研究者としてDHの情報にどのように触れるのか」
http://www.dhii.jp/DHM/dhm45-1/n2-weu_review/n1

 NDLの菊池さんが、2015年3月シカゴでのCEAL・NCCから帰国後に作成した、と上記『人文情報学月報』045の記事には書いてあります。「日本でどのようなDHの研究者がおり、どのような研究が行われて、そしてどのような浸透を見せているのかあるいはいないのか」、「国内外の日本研究とDHの情報共有」という所期の目的の通り、国内外の様々な人たちによる情報交換が行われるばとなっていますので、”デジタルヒューマニティーズ”×”日本研究”を云々するならまずこれ言及しなきゃだなって思たです。

 もうひとつの例、これは、「オープンサイエンス」という語で称されるものですが。

・「openscience.jp」
http://openscience.jp/
・オープンサイエンスに関する情報を海外へ発信するポータルサイト「openscience.jp」(記事紹介)
Posted 2016年3月30日
http://current.ndl.go.jp/node/31184

 筑波の池内さんが立ち上げたポータルサイトで、2016年。「日本のオープンサイエンスの取組みや情報を海外に向けて発信する」とのことで、「研究データのオープン化,オープンアクセス(OA),リポジトリ,オープンエデュケーション・トレーニングなどに関する英語の情報を中心に」というんですが、印象深いのがブログ記事のほうで、

・「日本のオープンサイエンス情報ポータル”openscience.jp”公開」. IKEUCHI UI
2016/03/29
http://oui-oui.jp/2016/03/osjp/

「これまで,自身の研究は国にかかわらず研究データ共有やオープンサイエンス全般を対象としてきました・・・しかし,2016年3月に東京で開催された研究データ同盟(Research Data Alliance)第7回総会に参加してみて,もっと日本の情報を海外に伝えなければと感じたためサイトを作成しました」

 日本から海外への”情報発信”について考えさせられるには充分なコメントだと思いました。それは1例目も2例目もマインドはざっくり同じことだと思います。

 2例目にして人文学じゃないじゃん、って思われるかもしれませんが、正直、そこはどっちでもいいじゃないかしら、というくらいには”デジタルヒューマニティーズ”のことをあんまちゃんとわかって、文理はともかく、学術とデジタルが(単なる媒体変換をこえて)掛け合わさったときに、どうなの、どうなるの、どうするの、ひるむのか立ち向かうのか乗っかるのか一足飛びに飛躍するのかパラダイムシフトするのか、ていうことが問われてるんだろうな、っていう理解でいます。

・日本デジタル・ヒューマニティーズ学会論文誌
『デジタル・ヒューマニティーズ』に関する規定
http://www.jadh.org/jjdh
「1.発行の目的
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会論文誌『デジタル・ヒューマニティーズ』(以下、本論文誌)は、デジタル技術をはじめとする情報学の成果を活用することで人文学の知見をより深め、さらにはそれを通じて情報学そのものに貢献することをも視野に入れつつ、これを以て人類文化の発展に寄与することを目指す研究のための議論の場とする。」

 デジタルヒューマニティーズとは。デジタル・情報学を活用して人文学を深める、からの、情報学へも貢献する、からの、世界人類のために寄与する、というのがたぶん教科書的な理解っぽいですが。

 これも手前勝手な理解ですが、”デジタルヒューマニティーズ”を大きく分けて2方面(いや多分もっとあるだろうけどとりあえず2方面として)で言うと、ツールとして資料を開放するよっていうのと、研究のあり方そのものを開放するよっていうのの2方面、じゃないかなって思ってます。もちろん両者はつねに交わり合うですが。

 デジタルがヒューマニティーズの資料を開放する例。
 ”在外資料”のデジタル化のところにもたくさんありましたが。
 まず資料・データ編。

・Japanese.gr.jp
近藤みゆきほかによる。近藤みゆき. 『王朝和歌研究の方法』. 笠間書院, 2015.は、古典文学作品のテキストデータをコンピュータ処理で加工整理して立論するという文学研究を実践。その研究で使ったテキスト、論文、研究データ、ツールなどをサイトでオープンに公開して、”エビデンス”を示している、というオープンサイエンスな感じ。

・コーパス・データベース@国立国語研究所
https://www.ninjal.ac.jp/database/
収集した言語資料・音声資料をコーパスやデータベースとして整備し公開するもの

・NIIデータセット
http://www.nii.ac.jp/dsc/idr/datalist.html

・国文研オープンデータ
http://codh.rois.ac.jp/char-shape/

・日本古典籍データセット@国文研
https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/data_set_use.html

 国文研の例はもちろん項をあらためることになるでしょう。

 テクノロジー&標準化(交換可能化?)編。

・・Unicode
・高田智和, 矢田勉, 斎藤達哉. 「変体仮名のこれまでとこれから : 情報交換のための標準化」. 『情報管理』. 2015, 58(6), p.438-446.
Unicodeに変体仮名が登録される見込み。

・・TEI(Text Encoding Initiative)
・永崎研宣. 「デジタル文化資料の国際化に向けて : IIIFとTEI」. 『情報の科学と技術』. 2017, 67(2), p.61-66.
・『人文情報学月報』 http://www.dhii.jp/DHM/dhm62-2
テキスト資料を効果的に共有するためのルール、ガイドライン。1987年から欧米で、デファクトスタンダード。そのTEIコンソーシアムにEast Asian/Japanese分科会が2016年6月設置され、日本語によるテキスト資料をデファクトスタンダード下で共有できるようにすることを目指す。

・・IIIF(International Image Interoperability Framework)
・「仏教関連の図像データベースがIIIF対応で公開されました。」 - digitalnagasakiのブログ
http://digitalnagasaki.hatenablog.com/entry/2016/05/19/033403
大正新脩大藏經図像データベースをIIIF対応で公開。
・・Mirador(IIIF対応ビューワ@ハーバード)
・2016年6月、AASinAsia京都ラウンドテーブルで、マクヴェイ山田久仁子が「Mirador」実演。(古賀崇. 「日本におけるデジタルアーカイブのゆくえを探る:国際的動向を踏まえた,「より深い利用」に向けての展望」. 『情報の科学と技術』. 2016, 67(2), p.48-53.)

 永崎さんによれば、「海外の機関から日本文化資料がIIIFに準拠して公開されている例は多く見ることができる」(永崎研宣. 「大学図書館とデジタル人文学」. 大学図書館研究. 2016, 104, p.1-10.)らしいので、矢印の向き方を問わずに資料を通わせ合えるデジタルヒューマニティーズって、いいね、って思いますね、その解放具合はやっぱり単なる媒体変換なだけでは起こらなかっただろうなと思うので。

 で、日本から解放/開放されたデジタルな資料を使っての、日本研究@海外での活用編。
 大量のかつ意味のあるテキストデータという意味では、青空文庫なんでしょうか。

・「Digital Japanese Literature: Aozora Bunko」
http://darthcrimson.org/digital-japanese-literature-aozora-bunko/

・「Aozora Search Site」
http://snort.uchicago.edu/philologic/aozora/
シカゴ大学のThe ARTFL Projectによる。

・イェール大学図書館Digital Humanities Lab
「The Kan'ichi Asakawa Epistolary Network Project」(朝河貫一書簡のデジタル化プロジェクト)
http://web.library.yale.edu/dhlab/asakawaproject

 活用のされ方@海外日本研究、を見ていくにつれ、先ほどの2方面でいうところの「研究のあり方そのものを開放するよっていうの」のほうがだんだん視界開けてくるな、ていう感じになります。
その1、それはたぶん、デジタルが単なる媒体面での解放/開放なだけでなく、デジタルによって”コラボレーション”が可能/容易になっていく様子なんじゃないかなって思います。

・エモリー大学「Japanese Language Text Mining: Digital Methods for Japanese Studies」
http://history.emory.edu/RAVINA/JF_text_mining/Japan_text_workshop_CFP.htm
日本語テキストのテキストマイニングを、デジタルヒューマニティーズ&学際的な共同研究でやるよっていう企画。関わってくるのは、青空文庫、コーパス、ウェブツール、OCR、古典文学などなどという感じ。

・「イベントレポート(2) シンポジウム「Digital Humanities & The Futures of Japanese Studies」」. 『人文情報学月報』 http://www.dhii.jp/DHM/dhm44-2/n3-event/n2
・Symposium: Digital Humanities & The Futures of Japanese Studies
https://www.si.umich.edu/events/201503/symposium-digital-humanities-futures-japanese-studies
2015年3月にミシガン大学アナーバー校で開催されたシンポジウムで、デジタル・ヒューマニティーズが「日米間の国際的な共同研究の実現に寄与する可能性」を論じようというもの。
「日米間の“long-distance collaborative enterprise”の実現は、今後のデジタル・ヒューマニティーズ研究の主要課題となり得る」
「日米の日本文学研究者が、Web上に構築された何らかのプラットフォームを利用して、式亭三馬や上田秋成の作品解釈について意見を戦わせ、共同で研究を進める−そうした状況を形作るための情報環境の構築が今後求められる」

 このミシガンのシンポジウムでも、立命館ARCの赤間先生がARCモデルを紹介してらしたみたいなんですが、”在外資料”のデジタル化事業もまたこの”デジタルヒューマニティーズ”×”コラボレーション”の申し子みたいなところのあるあれなんで、このへんはもう項というかキーワードがweb状にリンクし合いますね。(なのでほんとはこうやって項を分けつつ書いていくやりかた、正直むつかしいw)

 そして”活用”や”コラボ”の例をざっと見てきましたけど、なんとなく通底しているものがあるよなっていううふうに思うのが、「研究のあり方そのものを開放」のその2、でして、デジタルヒューマニティーズは資料を媒体的に開放するだけでなく、コラボという意味でオープンにするだけでなく。日本研究を「日本における日本研究」という特有の文脈やお作法から解放して、研究手法や手続きや前提やそういったもののないフラットなところで研究可能なものにしてくれる、んじゃないかっていう。

 これはたぶん、そのうち別項が立つ「日本研究とは」という問題そのものになるんだけど、でも繰り返しでもいいからこの流れでここにも書いちゃうんだけど。
 日本における、日本の文脈とお作法に従った、日本研究。というものがあったんだとしたら、おそらくデジタルヒューマニティーズはそれを、デジタル方面やコラボ方面や海外方面からの攻めによって、ぶんぶんと解放してくれるんじゃないかっていう。
 日本資料・日本情報がデジタル媒体になると、いろんなところに届く、その届き先のことをもはや、“日本研究”ってどっからどこまでですっけ?なんて線引きすることに意味はなくなる。たんに「遠隔地(海外)であるが日本研究」、ではなくて、どの分野どの地域のどのような研究手法・文脈であっても、日本語の/日本で生産された資料・情報が必要なところへ届き、日本の文脈とお作法とは関係のないところでそれを使った研究がおこなわれる、っていうかおこなうことが可能になる。
 デジタルヒューマニティーズって、そういうことなんじゃないかな、って思います。思いますっていうか、「そうじゃないよ」ってたとえ言われたとしても、今後の自分はそういうことだと思うことにします宣言です。思うことにします会見です。

 そこへいくと、さっき青空文庫を使った例がたくさんでてましたけど、国文研さんから古典籍のオープンデータが世界にガンガン出てったらいったいどんなロングシュートが決まるんだろう、ってすげえワクワクしてます、そこには期待しかない。

 だって国文研さんのあの事業は、単なる資料の大規模デジタル化じゃなくて、「国際共同研究ネットワーク構築計画」、しかも多分野融合の、ですし。

 最後に、永崎さんの論文より。

・永崎研宣. 「大学図書館とデジタル人文学」. 大学図書館研究. 2016, 104, p.1-10.
「特に米国ではデジタル人文学と図書館がかなり緊密に連携している」「これらの組織(NCC、CJM)が近年デジタル人文学に力を入れるようになってきており」「サブジェクト・ライブラリアンがデジタル人文学に取り組むという形は、日本研究においても徐々に広まりつつある」

 


posted by egamiday3 at 21:35| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする