2017年03月28日

国会図書館送信サービスの海外対応について、日本の図書館こそがパブコメ(3/29〆切)を送るべきちょっとした理由。


 文化庁の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会によって公表されている中間まとめ(2017年2月24日)にて、いろいろな検討&コメントがなされてますがそのひとつとして、国立国会図書館の図書館送信サービスを海外図書館にも拡げたほうがいいんじゃないの、という言及がされています。これについてパブコメも募集中です。
 このパブコメに、日本の図書館も、というか日本の図書館こそが、送ってください、そうしたほうがいい理由がちょっとありますよ、というお話です。


・「文化庁文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会、中間まとめを公表:パブリックコメントも募集中(-3/29)」. カレントアウェアネス. 2017.3.21.
 http://current.ndl.go.jp/node/33686

・「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の実施について」. e-Gov. 2017.2.28.
 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000892&Mode=0

 ※パブコメを送るときは章・ページとして「第4章著作物等のアーカイブの利用促進 第2節著作物等の活用に関わる著作権制度上の課題 1)国立国会図書館による資料送信サービスの拡充について(p. 123-124)」を記入する。



●国立国会図書館の図書館送信サービスとは何か?

 国立国会図書館さんが「国立国会図書館デジタルコレクション」(http://dl.ndl.go.jp/)サイトで公開しているデジタル化資料には、大きくわけて3種類あります。
 (1) 「インターネット公開」=”オープン”(著作権切れ・許諾済み等で、オープンに公開されている)
 (2) 「図書館送信資料」=”半開き”(著作権が切れていないけど、絶版等。国内の図書館にあるパソコンまで行けばそこで見られる)
 (3) 「国立国会図書館内限定」=”クローズ”(国会図書館まで行かないと見られない)

 今回言及されているのは(2)「図書館送信資料」で、いま多くの国内図書館がこのサービスに参加しているので、わざわざ国会図書館まで行かなくても近所や所属大学の図書館で、デジタル化された絶版書を見ることができるのですね。これがいま約150万点あるって言うから、これが使えるのと使えないのとでは相当なレベルの差が出るという感じです。


●国会図書館送信サービスの”海外対応”とはどういうことか?

 その(2)「図書館送信資料」ですが、いま現在このサービスに参加できるのは日本国内の図書館だけに限られています。これがサービス開始当初から国外の関係者に不評でした、せっかくデジタル化して、まあまあ著作権切れてないからフリーでオープンにできないのはもちろん仕方ないとしても、国内の図書館で受けられるサービスと同じことが海外でできない。海外にも日本のことを研究して日本について調査している人、資料の閲覧を求めている人は少なからずいますが、それらの海外ユーザにせっかくのデジタル150万点を提供できない、という状態にずっとあったわけです。
 しかも悪いことに、ですが。国会図書館さんは「デジタル化が済んだ本は、ILL・現物貸借で図書館に貸し出さない(デジタルで見なさい)」という運用をとっている。でも海外図書館はデジタル送信に参加できない。結果どうなったかというと、この図書館送信サービス開始以降、デジタル化済み図書をデジタルで見ることもできないし、ILLで借り出すこともできないしで、資料へのアクセスがシャットダウンされてしまっている、という状態にあります。これ、明らかに設計ミスってるだろう、っていう。ていうか、この問題って早いうちから認識されていたはずなんですけど、これについてじゃあ海外にはデジタル化済みでも貸すことにしましょう、的な運用でカバーするような動きも特に見られなかったのって、なんだろうなって思いますが。
 そんなこんなもあって、送信サービスに海外図書館も含めるということがずっと求められてて、で、今回の委員会でそれに言及されたので、みんなでパブコメ送ってこの件を実現させてもらいましょう、というところです。

 本件についての反応記事いくつか。

・「パブリックコメントを」. 『忘却散人ブログ』.
 http://bokyakusanjin.seesaa.net/article/448181654.html
・「国立国会図書館による資料送信サービスの拡充について」. 『ゴードン W. プランゲ文庫ブログ』.
 https://prangecollectionjp.wordpress.com/2017/03/27/%e5%9b%bd%e7%ab%8b%e5%9b%bd%e4%bc%9a%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e8%b3%87%e6%96%99%e9%80%81%e4%bf%a1%e3%82%b5%e3%83%bc%e3%83%93%e3%82%b9%e3%81%ae%e6%8b%a1%e5%85%85%e3%81%ab/

 ちなみに、海外(非日本語)の方がこのパブコメを送るための、簡単ガイド的なのが、こちらにあります。
 https://pitt.app.box.com/s/e2l1karpa3d9pjgw9h0pjrxkpfn5up83
 ていうか、あたしにも参考になってうれしいくらいの。


●国会図書館送信サービスの海外対応に、日本の図書館がパブコメ送ったほうがいい理由?

 本題です。
 海外対応するかどうかの話だから、海外図書館や海外ユーザがコメント送ったらいいんでしょう?みたいに他人事おっしゃらずに、日本の図書館業界のみなさんにもぜひ積極的に、この件で「海外にも対応を」的なコメントを送っていただきたいと思っています。
 そうしていただきたいという理由が、2つあります。

 1つは、大きな話になりますが、そうやって日本資料・日本情報を積極的に海外からアクセス可能にしていくこと、それがめぐりめぐって最終的には我々日本サイド自身に影響が及ぶ問題だからです、という話。海外に発信し使ってもらえれば、海外の日本研究が盛り上がる、そうでなければ盛り下がる、そういう問題ですということ、これはこのブログでも『本棚の中のニッポン』()でも再々言ってる、いつもの話ではあります。

 それとは別にもう1つ、もうちょっと現実味を帯びた現場レベルの理由がありまして。
 先ほど説明しましたように、国会図書館はデジタル化済みの絶版図書をILLとして海外図書館に貸し出してくれません。デジタルでも見れない、現物貸借としても借りられない、という本を必要とする海外図書館は、じゃあどうするかというと、同じ本を持っている日本の他の図書館にオーダーすることになるでしょうと。せっかく国会図書館さんが大枚はたいて作ってくれたデジタル画像があそこにあるのに、それにアクセスできさえすれば済む話なのに、それと同じ本を我々日本の(国会以外の)図書館が、コピーしたり発送作業したりをしなきゃいけなくなる。無駄な労働力がかかります、時間もかかります。対象図書は古い時代のが多いですから、コピーしたり発送したりするごとに傷みも増します。(注:うちは海外ILL対応してないよ、とおっしゃる場合は、そのこと自体をご検討し直していただければ幸いです)
 そういった労働力や時間や傷みリスクを、国会以外の我々日本の図書館が背負わないといけないのは、無駄なんじゃないの、せっかくあそこにデジタルあるんだし。こういう理由については、日本側の図書館こそが申すべき、っていうか言っても罰あたんないんじゃないかな、っていう。


 そういった意味も含めまして、3/29〆切のパブコメ送ってみてはどうでしょう。ていう話です。

・「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の実施について」. e-Gov. 2017.2.28.
 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000892&Mode=0

posted by egamiday3 at 21:05| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする