(前回までのあらすじ)
国境越え&デンマーク入りを目前にしながら、失意のもとにバスを降りたegamiday氏。
ドイツの果ての浜辺には、ただ生あたたかい風が吹くばかりであったという。


プットガルテンの港に降り立ってみたものの、ただ単に”国境いの浜辺”という以外に特に何かあるわけでもなく、防波堤と軽食を売る車と、あとはなまらでっかい免税ショップがあるばかり。そう、ここはどうやら、高税金のデンマークから酒やタバコやを大量に買い付けにドイツまで、わざわざ車&フェリーでやってくる、という人たちの目的地なわけですね。
さて午後の予定が一気にカラになりましたので、これからどうしよう、ハンブルクに戻って市内観光でもするか、もともと明日行く予定だった北ドイツの街・リューベックに前倒しで行っちゃうか、ああだこうだと作戦会議を立てながら。
とりあえずはとぼとぼと鉄道駅へ向かうべく、小ぶりなターミナルビルまで戻ってきました。

さて駅はどっちかしらと建物内をうろうろしてると。

なんか、この通路的なところからおっさんが一人、ふわっと出てきて、ふわっとどっか行ったわけです。
あれ、おっさん出てきたな。STOPて書いてあるけどな。
・・・ていうか「mit *** ticket」て書いてあるということは、「with *** ticket」ってことよな、あとのドイツ語はわからんけど。
と思いながら、あらためて周囲を注意深く観察してみると。


料金表?
自販機?
時刻表?「プリンセス」なんちゃらと書いてあるのは船の名前っぽい?
問題:これらの手がかりから導き出される推論は?
(Thinking Time......)
・・・・・・「自販機でこの料金のticketを買って、この通路を通れば、この時刻の船に乗れる」?
問題:そしてその行き先は?
「デンマーク」!
おおっ!(笑)

なるほどなるほど、で、置いてあるこのパンフがその案内というわけか。
そりゃそうだ、列車が載るフェリーというのは「列車”も”載る」というだけで、人だって単身で乗るでしょうよと。
しかも時刻表とその船の名前を見れば、3隻でピストン輸送、往復でもそれほど時間かからなそう、というのがわかりますね。

というわけで急遽、「単独・徒歩でフェリーに乗り、デンマークまで無意味に往復しに行く旅」、1名様にて催行決定であります!
よっしゃ、今度こそこのチケットでデンマークまで到達してやる!
(注:なおチケットは免税店でのタバコ割引クーポン付き)
ところで、自販機でチケットを買ってると、地元のおじいさんっぽい人が来て「買い方がわからない」的なことをこっちに訴えてくるんだけど、向こうもドイツ語しかわからないらしく、しょうがないからとりあえず身振り手振りで無理くり教えてチケット買わせる、なんてこともしてます。
チケット買う人がいるということは、やっぱり乗れるんだよな、うん。

とは言いつつも、ここに10人20人でも他のお客がいれば安心できるんですが、長い長い通路に人っ子ひとりいない。係員もいない。
その通路の端の端に、バーコードをかざして中に入れるようなゲートがあり、そのすぐ前にガラス扉があって、扉の向こうに警備スタッフがいる。
なんだろう、三途の川→ゲート→閻魔さま、かな、っていうような雰囲気ある。
まあいいや、とりあえず中に入れるかどうかやってみますね。
まずバーコードをかざす。ゲートが開く。ゲートを通ると、ゲートが閉まる。
よし、じゃあ次に目の前の扉を。
・・・・・・扉が開かない。
開かない扉をガタンガタンとやってると、警備スタッフに気づかれ、大儀そうに「そこであと何十分待ってろ」的なことをおっしゃる。しまった、ことを急いてしまったのか。
まあ、しかたがないので、ゲートと扉に挟まれたこの狭い空間でしばらく待ってます。
というと。
・・・あ、さっきのおじいさん来た。
あ、ゲートにバーコードかざそうとしてる。
まだこの扉開かないから、そこで待ってたほうがいいですよ。
(おじいさん)「***********」(バーコードをかざそうとする)
いや、だからね、まだ早いの、ね、ウェイト、ゲートのそっち側にチェアあるじゃん、チェア、座って待ってたらいいって。
(おじいさん)「***********」(バーコードを縦にしたり斜めにしたり)
(ゲート)「ピッ」
・・・・・・入ってきちゃった。
(おじいさん)「ガタンガタン」
うん、だから開かないんだって。
(おじいさん)「***********」
うん、わかんないけど。
というわけで、狭い空間でおじいさんとぼーっとふたりきりの図。
なにこれ(笑)。
で、このあと、ひょろっとした青年だの、缶ビールケース担いだ屈強なおっさんだのが続き、最終ベビーカー連れの若夫婦が来たところでなぜかほっとひと安心、ていう。
そうこうしているうちに。


デンマーク側の港・ロービュから来たフェリーが到着しました。
どうやらこいつに乗り込んで、そのまま折り返し、のようです。
それほど待つことなく出港し始める様子をみると、だいぶ人気というかよく働いてる路線なんだな、と思います。徒歩組こそ10人未満でしたけど、乗用車で乗って来た組が船内で大勢はしゃいでましたので。


というわけで、出港。
このプリンセス・ベネディクト号は、今度こそ、デンマーク方面行きです。
待ってろよ、デンマーク!
特に思い入れも目的も無いけど、その国境を飛び越えたるからな!

船は海峡をぐんぐん渡っていきます。
ていうかこの海峡、貨物船がかなりひっきりなしに横切ってる。交通の要衝的な土地柄だなとわかります。
ちなみに同じ路線のフェリー2隻ともすれちがいましたので、活用されてるルートなんだなとわかります。列車そのまま載せてでも走りたい気持ちはわかる。

ちなみに船内は免税天国でしたが、誰も買い物してる様子はありません。まあ、そりゃ、さっきまでドイツ本土でたんまり買い溜めしてきた人たちでしょうから。
やることといったら、家族でインスタントなフードコートに座ってむしゃむしゃ飲み食いするくらい、みたい。

そこまで長い船旅ではないので、しばらくすると対岸のデンマーク、フォルスター島がだんだん見えてきます。
山らしい山など何もない真っ平らな土地柄のよう。
で、iphoneが電波をキャッチするなどの段階を経て。




ついに着岸。
この旅で3ヶ国目のデンマークに入国であります!
自家用車組は待ちかねたぞとばかり、我れ先にと発進していきます。

徒歩組のこちらはといえば、示された通路を通って、なんとなあく入国です。シェンゲン協定内ですからもちろんパスポートコントロールもありません。



パスポートコントロールがない、というより、正味、何も無い。
ドイツ側には公園や岬や免税ショッピングモールなどの”滞在の余地”があったのに対して、デンマーク側にあるのは駐車場とバス停だけ。いや、ほんとに車で通過するだけの港、閑散としてます。
人がいない。
いるとして、フェリー乗り場の建物でスタッフらしい人らが仕事の話してるだけ。あと、申し訳程度のスナックの自販機があるだけ。
あと、ドイツ側のゲートにいたひょろっとした青年が、むこうのほうをぶらぶら歩いてるのが見えるだけ。

トリップアドバイザーによれば、ちょっと離れたところに近年の教会があるらしいんだけど、徒歩で行ける道があるかどうかもよくわかんないし、とにかく人がいなさすぎてうかつにここを離れるのが不安なレベル。



ただ、いまは一時的にでしょうが使われなくなっている、つまりまるで廃線かのようなロービュ港鉄道駅が、非常にワクワクする装いを見せていたことをここにご報告します。
いやー、このたたずまいは萌える。
ていうかヤバイな、”こっちの趣味”の扉も開いちゃうの、めんどくさくなるぞ、的な。

というわけで、特にこれと言ったtodoが何も無いので、入国から30分くらいしか経ってませんが、早くも帰りのフェリーに乗ろうとしてます。
このドイッチェランド号は、1500発、ドイツ方面行きです。


(あっさりと)さようなら、デンマーク。
デンマークっぽさは何も無かったけれども。

そういえばお昼も食べてなかった。


で、艱難辛苦(数十分の航海)を乗り越えて、遂に我々はドイツに帰還したのでありました。
ただいま、ドイツ。
デンマークはね、閑散としてたよ(風評)。

なお、帰りの鉄道まで待ち時間があったので、例の大型免税ショップを冷やかしに。酒とタバコとチョコレートその他が倉庫のように積んであり、それらを買うという行為しかできないように設計されている、欲望の館。一本通路を矢印に沿って歩く以外になく、その結果全フロアをくまなく連れ回され、出口ではレジを通るほかに脱出方法がないため、まあせっかくだから寝酒代わりにとウィスキーのミニ瓶を買ってきたのでした。なぜか「竹鶴」。

・・・やっと帰れる。この車両はハンブルク方面行きです。
帰りはローカル便なので2時間ちょっとかかる。
車内で、明日の宿を探してネット予約、などとしてるうちに。

19時35分、ハンブルク到着。
おつかれちゃん。
ちなみに。
行きのフェリーゲートで見かけたひょろっとした青年。デンマークの港でどこかへ歩いていった、かと思いきや、実は同じ帰りのハンブルク方面列車にも乗ってたんですよね。
・・・「無意味にデンマークまで往復の旅」は、どうやら催行人員2名だったらしい(笑)。
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