先日、図書館情報資源概論の授業の一トピックとして、「図書と雑誌」というオンデマンド視聴用動画を作成しました。動画って言っても、zoomの画像共有機能でパワポやテキストを見せながら声だけで出演する、という感じのやつですけども。
ここでは、「図書と雑誌」などという地味なトピックで何をしゃべって、その背景に何を考えてたんだ、ということを書き記してみます。
ていうか、地味ですよね。「図書と雑誌」ですよ。でもいいんです、資格取得のための科目ですから。ていうかあたし図書館情報学を学んだことない、資格科目勉強しただけの身ですから、ハレの登壇ならともかく、ケの講義ならこんな感じです。
でもわりと、”言われないと気づかない”ような肝な概念を、これひとつだけでも理解して帰ってくださいって、ここでは強めに言ってあります。それが、
「図書館の現場では、資料を、まず「図書か雑誌か」で分けて判断する」
ということです。
これ重要です、これわかんなかったらCiNiiもひけないし、実際の図書館のフロアでも迷うことになっちゃうから。しかもわりと万国共通だし。
なので、これだけ理解して帰ってもらえたらいい。
と、「これだけ」といいつつ、でもこれを理解するには「雑誌」(逐次刊行物)とは何なのかを理解する必要があるわけなので、それもセットで持って帰ってもらう、ていう目論見ではあるんですけど。
でも実際そうですよね、図書館って。
紙かデジタルか、古いか新しいか。いやいや、そんなことよりも何よりも、まずはそれが「図書」なのか「雑誌」なのか、ですよ。デジタルだって、「図書」としてのデジタルか、「雑誌」としてのデジタルかでいきなり仕分けされてしまうという。
そして、その仕分けでは「雑誌」以外のその他はまあほぼすべて「図書」のほうに突っ込むことになるので、「図書か雑誌か」という二分法は畢竟「雑誌とは何か」に集約されるっていう。
しかしそもそも「図書」と「雑誌」の違いって何なんでしょうね。なんでそんなに図書館は必死こいて分断しようとするんでしょう、前世はモンタギューとキャピュレットか何かですか。
速報性だ、短い著作の集成だ、分野コミュニティだ、流通売買の違い、配架の都合、本棚の確保、いろいろあるでしょうけど、こうも図書館の現場が二分に執着する最大の理由は、結局のところは「書誌構造の違い」にあるんだろうなと思います。
逐次刊行物の定義を図書館用語集で示そうとすると、こうなりますけど、
「ひとつのタイトルのもとに、
終期を予定せず、
巻・号・年月次を追って逐次刊行される出版物」
@「ひとつのタイトルのもとに」とA「巻・号・年月次を追って逐次刊行」が書誌構造の違いの由来であり、A「終期を予定せず」が本棚の確保問題の由来かな、と。
そう考えると、図書館って、物理的なモノを扱う存在でありつつも、それを書誌という抽象的な概念でコントロールするところなんだなっていうのが、まあわかるかな、ていう感じですね。
で、この「図書か雑誌か」という概念を実感してもらうためにこのタイミングで出す宿題が、逆説的ではありますが、こういうやつです。
「ある図書館では図書として扱われている資料が、別の図書館では雑誌として扱われている、という実例を、CiNii Booksや同志社大学OPACを使って探す」
いやらしい出題ではありますけど、いきなり”グレーなやつがあるから、それを探してこい”と出題することで、え、何がグレーだって?と。つまりは何が白で何が黒なんだ、と。グレーを知ることで白黒を学ぶの術、という感じですね、結構なスパルタですけど、まあヒントとして「統計とか年鑑とか白書」ってわりとそのものなワード出してるので、だいたいみなさん上手に見つけてきはります。
ちなみにですが、あたしがよくやるやり方としては、講義のまず最初に↑この宿題を出題しておいて、なんのこっちゃわからんでしょう、どういう意味なのかをいまからの講義で説明します、ていう、なんだろう、ある種の人質を取ったような状態で講義に耳を傾けさせたりしますね。どれだけ効果あるかはわかんないですが。まあでも聞く方も、なんのためにこの話聞かなきゃいけないのかがわかってたほうが、モチベーションだいぶ違うだろうって思うんで。
あと、ほんとはもうひとつ重要な「雑誌単位か記事単位か」という問題を理解していただくべきかとは思うんですが、まあ、これはレファレンス系の科目でどうせやるかな、っていう。
そんな感じです。
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