2021年02月03日

「海外の日本研究と日本図書館」に関する2020年の動向レビュー【コロナ禍編】( #本棚の中のニッポン ) -- 電子資料の問題、ステートメント、記録・報告他


●電子資料の確保をめぐって
 2020年3月半ば頃から、学生・研究者への資料提供のために必要な日本の電子資料について、その確保・アクセスをめぐるさまざまな情報交換や試行錯誤がおこなわれました。日本でも同様の議論や動向はありましたが、コロナ被害がより強く、かつ、電子資料へのアクセス環境がより日常化していた海外では、これらの情報交換や議論はさらに”シリアス”だった印象があります。
 ・オープンアクセス資料について
 ・電子書籍プラットフォーム(丸善、紀伊國屋、EBSCO等)について
 ・電子書籍やデータベースのアクセス無償化やトライアルについて
 ・個人向けの電子書籍プラットフォームについて
 ・システムの妥当性や問題点について
 ・多読のためのリソースについて
 ・学生・研究者へのアウトリーチについて
 ・NDL図書館送信サービスの対応について

 参考:Information on Japanese e-resources https://lists.unc.edu/read/messages?id=9413938

 また参考までに、中止になったAAS2020ボストン大会で発表される予定だった電子書籍関連のプレゼンが、下記で公開されています。
・Japanese E-book Collection Development Resources - Librarian Professional Development Working Group (LPDWG) - LibGuides at North American Coordinating Council on Japanese Library Resources
 https://guides.nccjapan.org/lpdwg/ebookresources
 −Commercial E-Books of Japanese Language: an Approach to E-Book Collection Development | Keiko Yokota-Carter
−Demand-driven Acquisitions: An Approach for Japanese E-book Collection Development | Toshie Marra


●2020 NCC Virtual Open Meeting Presentations(2020/3-)
 https://guides.nccjapan.org/2020openmeeting
・NCC Updates and Initiatives
・Report of NCC Outreach Working Group Survey
・Report of NCC Comprehensive Digitization and Discoverability Program (CDDP) Survey
・Opening the Black Box: A behind the scenes look at the digitization of the University of Illinois' Hōrai no makimono
Steve W. Witt (Director of Global Studies, Head of the International and Area Studies Library, University of Illinois at Urbana-Champaign)
・Making a Resource More Usable after Digitization: The case of Kadenshū Manuscripts Held by the C. V. Starr East Asian Library, University of California, Berkeley
Toshie Marra (Librarian for Japanese Collection, University of California, Berkeley)

●ライブラリアンの情報提供活動(例)
・Home - Resources for Japan Studies While You Are Teaching and Learning from Home - Library Guides at University of Washington Libraries
 https://guides.lib.uw.edu/japanstudiesfromhome

●横田カーター啓子. 「米国ミシガン大学のITシフト : 遅れる日本の学術基盤強化」(2020/7)
 アメリカの大学と図書館が急速にリモートにシフトしていく様子と、電子資料の確保について、時系列で報告。
・横田カーター啓子. 「米国ミシガン大学のITシフト : 遅れる日本の学術基盤強化」. 『Journalism』. 2020.7, p.72-77.
 Beikoku Michigan Daigaku no IT shifuto - Okureru Nihon no gakujutsu kiban kyoka 米国ミシガン大学のITシフト遅れる日本の学術基盤強化
 https://deepblue.lib.umich.edu/handle/2027.42/156101
「図書館でも、遠隔利用が可能な図書館サービスと研究資料リストを準備…日本語オープンアクセス資料についてはすでにガイドがあり、主要な商業日本語データベースは遠隔利用が可能である」
「日本研究の学生は、博士課程院生を除いてほとんど英語資料を用いる。英語資料はフルテキストデータベースが各種契約されており、学生は遠隔利用にも慣れている。図書館に来ることなく課題をこなし卒業する学生も少なくない。後日図書館が行った調査では、人文系書籍は紙版しかないこともあり、図書館閉館で不都合を感じた利用者はいたものの、資料利用についてあまり不満はなかった」
「電子書籍は、海外の日本語学習者に役立つのでリストを作成し、北米の日本研究司書で共有した。日本の電子書籍はライセンスが厳しく、日本国内で利用できても海外アクセスは不可能なことが多い。幸運にもこれらの児童向け電子書籍は海外からもアクセス可能で、日本語学習の学生に喜ばれた」「日本の主要新聞社データベース、辞書データベース、二社の電子書籍とさらに他社のデータベースの無料試用が北米と欧州で、期限付きで利用できるようになった」
「日本の国立国会図書館と大学図書館からは、図書館間貸借で資料取り寄せは可能であるが不便だ。書籍の貸借は難しく、論文は複写を航空便で郵送。その航空便は現在停止中で、海外の図書館も閉館。日本の学術資料は電子資料が極めて少ないことは海外の日本研究に大打撃を与えている」

●「Equity and Access in Higher Education and Academic Libraries amid the COVID-19 Pandemic」が発表される。(2020/8)
 学術・高等教育に寄与する図書館が、コロナ禍下において、アクセスの保証と公平性に問題を抱えるようになった。その厳しい環境と条件の中で、どのような姿勢・対策をとっていくべきか、ということを述べたステートメント。多数のプロフェッショナル団体(CEALを含む)の合同タスクフォースによって作成されたもので、コロナ禍云々に限らず、そもそもの図書館・情報専門職/機関のあり方を再認識させるものになっています。
・Equity and Access in Higher Education and Academic Libraries amid the COVID-19 Pandemic – CEAL: Council on East Asian Libraries
 https://www.eastasianlib.org/newsite/equity-and-access-in-higher-education-and-academic-libraries-amid-the-covid-19-pandemic/

●「CEAL Statement on Collection Development and Acquisition Amid the COVID-19 Pandemic」が発表される。(2020/8)
 コロナ禍下における東アジア地域研究のための学術資源の確保・収集・提供について、電子資料・印刷資料ともにさまざまな課題があることをふまえ、どのような姿勢・対策をとっていくべきか、ということを述べたステートメント。「Equity and Access...」同様、図書館・情報専門職/機関のあり方を再認識させる重要なものです。
・CEAL Statement on Collection Development and Acquisition Amid the COVID-19 Pandemic (in collaboration with the NCC and the SCSL) – CEAL: Council on East Asian Libraries
 https://www.eastasianlib.org/newsite/ceal-covid19-statement/
・"A Report on Preparing the CEAL Statement" by Fabiano Takashi Rocha
 このステートメントがどのような背景・経緯で作成されたかのレポート。
 https://scholarsarchive.byu.edu/jeal/vol2020/iss171/5/

●『専門図書館』301-302合併号(2020.10) 特集「新型コロナウイルス感染症対策:図書館の記録」
 ドイツ、オーストラリア、フランスの日本図書館からそれぞれ報告。(抄録公開あり)
 オーストラリアの例では、ウェビナー開催によって従来の利用者とは異なる人々にリーチできたことが報告されています。
 https://jsla.or.jp/publication/bulletin/no301-302/
・蓮沼龍子. 「COVID-19禍による閉鎖から再開、そしてその後 ドイツの日本専門図書館の記録」. p.56-59.
・矢田浩文. 「ロックダウンを経験したオーストラリア日系図書館の記録 情報発信例を中心に」. p.60-63.
・杉田千里. 「パリ日本文化会館図書館 confinement からdéconfinementまで: 4 か月間の記録」. p.64-67.

●私立大学図書館協会主催オンラインセミナー 「ウィズ・コロナ時代の大学図書館サービス〜北米の現場から〜」(2020/12/10)
 北米の日本研究司書による、北米における大学図書館サービスの現状についての講演。
 イベントおよび動画は非公開ですが、パワーポイントが公開されています。いかに”デジタル化”できるかがネックだということがよくわかりました。
・【イベント】私立大学図書館協会主催オンラインセミナー 「ウィズ・コロナ時代の大学図書館サービス〜北米の現場から〜」(12/10・オンライン) | カレントアウェアネス・ポータル
 https://current.ndl.go.jp/node/42421
 − 事例報告@「コロナ禍における図書館とそのサービス プリンストン大学図書館の事例」野口契子氏(プリンストン大学東アジア図書館日本研究司書)
 https://www.jaspul.org/ind/asset/docs/noguchi_Jaspul%20Presentationdraft.pdf
 −事例報告A「コロナ禍のハワイ大学マノア校図書館」バゼル山本登紀子氏(ハワイ大学マノア校図書館アジアコレクション部日本研究専門司書)
 https://www.jaspul.org/ind/asset/docs/yamamoto_12102020.pdf
 −事例報告B「ウイズ・コロナ時代のトロント大学図書館」Fabiano ROCHA (ファビアノ・ロシャ)氏(トロント大学図書館日本研究司書)
 https://www.jaspul.org/ind/asset/docs/Rocha_ShidaiTokyoOnlineSeminar_2020.11.30_DRAFT.pdf
posted by egamiday3 at 05:39| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする