2021年07月17日

0. 序論 -- 「図書館×クイズ=アウトリーチ」試論 : 「99人の壁」を実践例として

(目次(仮))
「図書館×クイズ=アウトリーチ」試論 : 「99人の壁」を実践例として
 index
 0. 序論
 1. 図書館にとってアウトリーチは本質的な概念である



0. 序論


 長い話です。

 本稿のタイトルは、「「図書館×クイズ=アウトリーチ」試論 : 「99人の壁」を実践例として」、です。
 このタイトルのもと、本稿では、
  ・ クイズ番組「99人の壁」においてジャンル「図書館」で出題される問題を予想する
 というある種の思考実験を実践し、またそのことを踏まえて、
  ・ 図書館の本質であるアウトリーチと、クイズとの関係性について、考察する
 ということを試み、ひいては、
  ・ クイズを通して、図書館のアウトリーチ活動の意義確認とその拡大発展に寄与する
 ことを企図しています。

 なんのこっちゃ、と思われるでしょうが、本人は存外にマジメです。
 異なる2ジャンルの話を無理くりつなげてるようにも見えますが、だからこそ本稿は、「図書館」のことも「クイズ」のことも基礎からあらためて考え直して言語化することを目標にしています。

 本稿の筆者(egamidayさん)は、2019年6月、フジテレビの素人参加型クイズ番組「超逆境クイズバトル!! 99人の壁」(本稿では「99人の壁」と称する)の収録に参加し、ジャンル「図書館」として出題されるクイズの問題に答えるという、図書館業界人の中でもわりと希有なほうの部類に入る体験をしてきました。(なお結果としては、まあまあなところまで手がかかったかに思えたものの、巨大な壁を前に目立った活躍も見せられず放送では順当にカット、というていたらくに終わっています。が、本稿の焦点はそこにはありません。そう、そこじゃないんです。)

・超逆境クイズバトル!! 99人の壁- フジテレビ
 https://www.fujitv.co.jp/99wall/

 その収録参加が決まってから実際の収録日までの間に、どのような問題が出るだろうかということを予想し、対策を練る、ということを結構がんばってやってたわけですが、あんな問題だろうか、こんな問題だろうか、と考えているうちに、ふと、そうか、こうやって図書館についてのクイズ問題を予想しようとしていろいろ考えていること自体が、図書館におけるアウトリーチ活動の一環であるのだな、と思うに至ったわけです。「図書館×クイズ=アウトリーチ」、です。本稿の焦点はここにあります。

 というわけで本稿で論じるのは、なぜ「図書館のアウトリーチ」と「クイズ」などという本来であれば出会うことのないような、ひとつの数式内に記述されることがあるとは思えないような、日本の牛丼チェーン店とジョージア料理くらいかけ離れたもの同士がどうマッチングするのか、というようなことについての考察と言語化を試みたものであります。
 またそれを論じるべく、ていうかさっきからこいつ何言ってんの、と思ってらっしゃるでしょうなので、図書館業界人でこの記事を読みに来たけど「クイズ」がどうの「99人の壁」がなんのことかさっぱりわからんという方のために、また、クイズや99人の壁目当てで記事を読みに来たが「図書館」の「アウトリーチ」などという業界用語をちらつかされて困惑してる方のために、それぞれについての概要と、前提となる基礎的な考察を、たぶんわりと丁寧めに書くでありましょう。なので、章節番号はかなり増えます。
 そしてそのうえで、じゃあ筆者は実際どんなふうにジャンル「図書館」の問題を予想したんだ、それはどういう考えにもとづいてなんだ、という、思考実験というか思考実体験を文字化してみる、という予定です。

 本稿の構成です。
 前編が、概論・考察編。後編が、詳論・実践編です。

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(前編)
1. 図書館にとって本質的なアウトリーチという概念について
2. クイズでは何がおこなわれ、何が求められているのかについて
3. 「図書館×クイズ=アウトリーチ」について
(後編)
4.以降 「99人の壁」の特徴分析と、問題予想の実践
※追々アップデート予定
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 前編では、「図書館×クイズ=アウトリーチ」という数式がいかに成立するかを考察します。まず1.では、図書館業界のことをご存じない方のために、「アウトリーチ」という図書館にとって本質的な概念を説明します。一方続く2.では、クイズ問題を予想するとはどういうことか、なぜそのようなことをするのか、またどう予想できるのかを考察するために、そもそもクイズとはいったい何なのかというところまで遡って考えます。その結果として、ジャンル「図書館」の「クイズ」を予想して考えるという行為が、図書館における「アウトリーチ」にどのように結び付くのかを、3.で考察します。

 前編の世界観を、1枚の図で描いてみました。
 本稿ではこういうことを言おうとしてるらしいということの、先行チラ見せです。

図1.JPG

 解答者とクイズ問題とその出題者が、リテラシーとかいう謎の赤い枠をはみ出しているあたりが、味わい深いと思っていただければ。

 そののち後編においては、主に2.で示されたクイズについての概論をふまえ、本稿が実践の対象とするテレビ番組「99人の壁」の企画やルールの特質をふまえながら、「図書館」というジャンルでどのような問題が出題されると予想できるか/予想したか、を実践的に示す予定です。
 予定ですっていうか、たぶんそうなるんじゃないかなというボンヤリとしたものです、この構成を仮設定してから1年以上前編書いててまだ終わらないので、書いてるうちにどうなるか、ていうかもう書き終わらないんじゃないかなってちょっと思ってます、極私的サグラダ。

 なお本稿においては上記のことを論じるにあたり、いくつかの前提を設けています。
 本稿の主に後編(実践編)において、実際に存在しかつ現在進行形で製作・収録・放送がおこなわれているテレビ番組を題材にしてはいますが、ここで論じることや述べることはすべて「おおやけに放送された番組内容」や「刊行されている文献類」のみにもとづいて考察したものであり、かつ「自分が予想したこと」を述べるにとどまるものです。時間軸で言えば”収録前””出題前”です。なので、実際の収録現場やその他の密室で個人的に見聞きしたような、おおやけになっていない情報については、まったく考察に加えませんし、述べることはありません。収録での進行やバックヤードの様子がどうだったのかとか、実際にどんな問題が出たのかとか、それにどう答えてどういう結果が出たのかとか、そのときの佐藤二朗MCのリアクションがどれくらい微妙だったのか、などといった、番組収録・進行や実際の問題にかかわる話題についても、ここではいっさい触れません。ただただ、収録開始直前まで、ていうか牧原さんや小坂さんの口から問題が読まれる0コンマ数秒前までの間に、これからどんな問題が出されるのだろうかということを懸命に予想していた、自分の脳内での思考の過程”だけ”について、語っているものと思ってください。なお本稿が考察の対象とする「おおやけに放送された番組内容」は、スペシャル版初回から、2019年6月22日放送分、森昌子がジャンル「森昌子」で100万円獲得とかいうなかなか渋めだった回、までとなります。なぜなら、私が実際に収録参加する前に放送されたのがそこまでであったからです。
 2019年6月、だいぶ前ですね。文献を参照しつつ考察を整理するのに、2年かかりました。2年の間に番組の様相もルールも出題傾向もすっかり変わってしまいました。ですが、本稿は「番組出場者の対策」が目的ではなく、それを素材とした「アウトリーチ」や「リテラシー」に関する考察がメインですので、特に問題とはなりませんし、問題にはしません。

 …ああそうか、そんなことを長々と考察していったい何の意味があるのか、ですね。
 本稿のねらいです。
 本稿では、図書館についてのクイズ問題を予想すること自体が、図書館のアウトリーチ活動の一環である、ということをけっこう乱暴なかたちで証明しようとしています。しかもそのアウトリーチ活動は、図書館業界において典型的と見なされているそれとは多少ズレているおそれがあります。ですが、ていうかだからこそ、それが証明され実現されるに至れば、いままでリーチしなかったクラスタにリーチしてこなかった方法でリーチできる、新しいアウトリーチを考える糸口が見える、ということになります。そう、新しい層へのアウトリーチの道を開くことこそが、真のアウトリーチなんじゃないでしょうか、これはマジで声を大にして言いたい日本語です。
 しかもその層は、本稿で論じられるような”テレビの前のお茶の間の人々”、つまり、ふだんは図書館などというものについて特に気にしたことも考えたこともなく興味もないし理解もざっくりとしている、世の中の大多数、あーそうです、まさに100人中の99人にあたるような人たちです。図書館は日々そのような人々に向き合い、寄り添い、理解を得つつ、その社会的機能を果たそうと努めています。そういう意味で図書館業界は、リアルに「超逆境」の中で「99人の壁」に囲まれていると言えるでしょう、ていうか言っちゃいたい、言いましょう。
 そのような層へのアウトリーチの道が開けるかもしれない、そう考えれば、このネットの片隅でビット・バイトを食い潰しながらでもどこまで書けるか書いてみたい、って思うじゃないですか。
 というわけで、本稿でおこなう思考実験によって、図書館における実際のアウトリーチ活動とその意義・考え方の拡大・発展に寄与したい、そうなってほしい。と、願っています。

 もちろん、「え、趣味や酔狂の類でしょ?」と言われれば、いっさい否定はしません。


 最後に、主な参考文献(特にクイズ面)です。
 これ以外の文献も随時参照・言及しますが、おおむねこれらにすっかりお世話になっていますということを提示することで、本稿はその世界観をふまえてるんだな、ということがわかっていただけるんじゃないかと思います。
 ていうか近年とみに文献が増えてきてて、あ、そういう流れなんだな、というのもなんとなく感じますね。
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・長戸勇人. 『クイズは創造力〈理論編〉』. 情報センター出版局, 1990.
・石田佐恵子, 小川博司編. 『クイズ文化の社会学』. 世界思想社, 2003.
・杉基イクラ. 『ナナマルサンバツ』. KADOKAWA. 2010-2020.
・黄菊英, 長谷正人, 太田省一. 『クイズ化するテレビ』. 青弓社, 2014.
・『Quiz Japan』(セブンデイズウォー). 主にvol.9 (2018)〜vol.13 (2021).
・「QuizKnock」(YouTubeチャンネル). https://www.youtube.com/channel/UCQ_MqAw18jFTlBB-f8BP7dw
・「特集 クイズの世界」. 『ユリイカ』(青土社). 2020.7.
・「クイズ、最高の一問 : クイズ作家・矢野了平/日大介」(プロフェッショナル仕事の流儀 他). NHK, 2021.
(その他、実際のクイズ番組多数)
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 なお、現時点で書き終わりの目処が立ってないため、予定は未定です。発端から2年経って全体の3分の1程度しか書けてない。既出の「牛丼屋とジョージア料理」のネタとかそこそこ古いし(だいぶ前に書いた)。
 でもいいんです。図書館のこと考えてる時と、クイズのこと考えてる時が、めちゃめちゃ楽しいので。

 旅行も当分行けそうにないし。


posted by egamiday3 at 13:23| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする