※他意はありません。
実在の技術やサービスとは無関係のフィクションです。
※過去作は↓下記のindexよりごらんください。

・業界コント 「もしも図書館がマクドナルドみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/111499129.html
・業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、本のない電子書籍図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/158803183.html
・業界コント「もしも図書館がスターバックスみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/309928500.html
・業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、閲覧制限だらけの図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/379051801.html
ピンポーン。
「いらっしゃいませ、幕土市立鳴門図書館へようこそー」
「いやあ、随分ひさしぶりに来たなあ、図書館って」
「お客様、本日は図書のお持ち帰りですか?」
「いえ、ただなんとなく。何年か前にはたまに来てた(こちらを参照)こともあったんだけど、以前とくらべて結構変わってるんですかね?」
『A. はい、変わっています。』
「えっ」
『近年の図書館は、インターネット接続や自己学習スペースを提供したり、イベントやワークショップなどの活動をおこなうコミュニティセンターとしても活用されるようになっています。』
「びっくりした、急にボーカロイドみたいな声が聞こえたけど」
「失礼しました。ただいまこちらのレファレンス担当AIロボットが、音声で回答したところです」
「AIロボットって、このペッパー君みたいな人形がしゃべったんだ。ということは、こっちの質問を聞き取って、AIが自分で返事を考えたってことなの?」
『A. はい、その通りです。私には、図書館のレファレンス回答のために当館が独自に開発したAI「chatGPL」が搭載されています。私は、利用者の質問を音声で認識し、自動的に回答することができます。』
「ということなんです。まだ開発段階なんですが」
「たいしたもんだと思うよ。ちなみに「レファレンス」って何?」
『A. 図書館利用者が図書館の資料を利用して解決したい問題や疑問に対して、図書館員が提供する一般的な情報や専門的な支援を指します。』
「えっと、なんだ、つまり…」
「要するに”調べ物のお手伝い”です」
「そういうことか。説明できることと理解できることとは違うんだな。でもまあ楽しそうではあるね」
「よろしかったらお試しください。質問文のかたちで話しかければ、認識しますので」
「そうか、最初の回答もこっちの質問に反応したんだね、優秀だなあ。じゃあ、最近大河ドラマ見てるから、えー、「徳川家康ってどんな人でしたか?」」
『A. 徳川家康は徳川幕府を始めた歴史上の重要な人物です。天文11年12月26日、岡崎城で生まれる。父は松平広忠、母は大子。3歳の頃、父・松平広忠と母・大子が離縁する。6歳の頃、織田家の…』
「いかがですか?」
「そうだろうけど、wikipediaを丸呑みしてるみたいで、ちょっとわかりにくいね」
「でしたら、「わかりやすく」とか「大河ドラマ風に」のような条件をつけてみてはどうでしょう」
「そんなこともやってくれるんだ、すごいね。じゃあ、「徳川家康は、大河ドラマ風にわかりやすくいうと、どんな生涯でしたか?」」
『A. 徳川家康(松本潤)は、築山殿(有村架純)を妻とし幸せに暮らしていましたが、のちに信長(岡田准一)に命ぜられ、徳川家康(松本潤)は築山殿(有村架純)と息子・信康を…』
「わーっ!ちょっと、ダメダメダメ!」
「どうしました?」
「いまかなりヘビーなネタバレ言おうとしてたぞ」
「大河ドラマにネタバレと言われましても」
「そうだけど、あれって核心というか、気を揉んでる視聴者も多いだろうし、そういうのは配慮してほしいなあ」
「でしたら、「ネタバレ無しで」という条件が良いかと」
「なるほど。「徳川家康は、ネタバレ無しで言うと、どんな生涯でしたか?」」
『A. ………いろいろあった。』
「極端だって。塩梅ってものがあるだろう、AIに求めるのは酷かもだけど」
「残念ながら、当館のAIはまだまだ開発段階でして。本に関する質問なら得意かと」
「そりゃそうだね。じゃあ、オススメの本はありますか?」
『A. 最近読んだ本を教えてください』
「おっ、こっちの質問にインタビューで返してきたね、これは期待できそうだな。最近「ハリーポッターと賢者の石」を読みましたが、オススメの本は?」
『A. 「ハリーポッターと賢者の石」を読み終わった方には、「ハリーポッターと秘密の部屋」がオススメです。』
「そりゃそうだ」
『また、「ハリーポッターとカツオの夏休み」「9割のハリーポッターがやってる成功術」「ハリーポッターが異世界転生したら現実だった件」もオススメです。』
「デタラメ言い出したぞ」
『ファンタジー小説を好きなら、J.R.R.Tolkienの「The Lord of the Rings」「The Silmarillion」「The Hobbit」がオススメです。Tolkienの描く世界観は壮大ですべての読者を魅了します。彼は世界最高のファンタジー作家で、他に類がない、彼の前に彼はなく彼の後に彼はない。Tolkienは神。貸してあげるからだまされたと思って読んでみて。Tolkienに比べたらローリングなんか…』
「またおかしくなった、マズイだろうこれ」
「すみません、オススメとオシの区別がついていないようで」
「へんなところで人間っぽいなあ」
「他のAIと交換してみましょうか」
「え、他にもあるんだ」
「ロボットの胸にはまってるこのカセットを入れ替えるんです」
「ずいぶん旧式だね、AIにカタチがあるとは」
「こちら、すべて開発中のAIカセットです。お好きなのを選んでください」
「うわ、なんかファミコンのカセットみたいなのがカゴにガシャガシャ入ってる。すっごい昭和な風景なんだけど」
「あ、先に端子のところをフーッて息ふきかけてくださいね」
「やるんだ、それ。じゃあこの「chatGTO」って書いてるのにしてみよう」
ガシャン
『A. ポイズンっ』
「……うわぁ、言うと思った。古いよ」
「古いですねえ」
「ていうか、こっちが何も質問しないうちに回答しちゃったよね、いま」
「たぶん、お客様が言いたいことも言えない世の中なんだと、察したんじゃないでしょうか」
「だから古いって。こんなのわかる人、もう少ないと思うけど」
「そうですねえ、世代間ギャップが進行すると、コントも作りづらくなりますから」
「もうひとつ「chatCCB」って書いたカセットあったけど、あれ挿す勇気ないもの」
「ノスタルジックが止まらないですね」
「もういいって。…お、なんかカラフルなカセットがある、「chatBMP」って書いてるね」
「そちらは画像生成AIですね。レファレンス回答をわかりやすく図示できるようにというAIですが、これも開発段階でして」
「そんなものも開発してるんだ、おもしろそう。じゃあこれをガシャン、と。じゃあね、「司書ってどんな仕事ですか?」」
『A. ………』

「未熟すぎるだろう、いやむしろ、よくぞここまで成長していない絵が描けたな」
「そうですねえ、これはさすがに再学習が必要かと」
「このレベルから独自に開発するって、結構たいへんそうだね」
「よろしければご案内しましょうか。コロナ禍で使われなくなったあちらのコモンスペースで、現在AIを学習させているところです」
「うわ、すげえ、人がいっぱいいてパソコン使ってる」
「はい、司書がそれぞれパソコンに向かってAIにさまざまなことを教えるという、「1人1台端末」スタイルの教育をおこなっております」
「AIにはカタチがあるだけじゃなく、学習もするんだね」
「はい、今日よりもっといろんなことを知るたびに、対応のスキマを埋めていく、という具合です」
「ていうか、図書館なんだから本がたくさんあるわけでしょう、それをスキャンしてデータを読み込ませるとかすればいいのに」
「そういったことは国会図書館さんのような大きなところがなさるでしょうから、こちらとしては現場の司書のノウハウを地道に移植している、というわけです」
「デジタルの舞台裏って意外にアナログなんだなあ。…あ、あのモニターに何か映ってる」
「ちょうど新規開発中のAIを学習させているところですね」
『Q. なんで割り箸は最初から割れてないの?』
『A. そば屋が回転率を上げたかったからあ〜(諸説あり)』
『Q. なんで鯛焼きは鯛の形なの?』
『A. 考案した人が食べ物の形にしたかったからあ〜(諸説あり)』
「やたらと「諸説あり」って付け足してるけど」
「あれは、5歳児くらいが聞いてきそうな、ボーッとしてると見落としがちな身近な疑問に、正否はともかく納得させられそうな端的な回答を返すための、「chatCHIKO」というAIの学習です」
「ふーん、答え方にもいろいろあるんだ。…あっちの人は、スピーカーみたいなのにやたら話しかけてるね」
「あれはスマートスピーカーのAIを学習しているところですね」
『アレクサ!』
『A. 「あれくさ」とは、博多弁で「あれだよ」「あれだね」のように強調する表現です。』
「なんか不安だな。…タブレットにペンで何か描いてる司書の人もいるな」
「絵師の心得のある司書もいまして、実際に絵を描いてもらいつつ、先ほどのchatBMPのような画像生成AIを教育するというプロジェクトです。我々はこれを「戯画スクール構想」と呼んでいます」
「いろいろあるなあ。しかし人力でやってたらいつまでも終わらないでしょう」
「もちろん、ある程度学習が進んだAIについては自動的な学習もおこなわせています」
「やっぱり、そうなんだ」
「AIとAIとをつないで互いに対話させるという、「相互的な学習の時間」を設けまして、さらなる情報活用能力の育成をおこなっております。あちらのモニターにちょうどその様子が」
『Q. それは母が最後の晩餐に食べたいものです』
『A. ほんならコーンフレークとちゃうかあ』
「おかしいって、これ。ポンコツ同士が対話しあったところで、ポンコツのエコーチェンバーが起きるだけだし」
「まだまだ開発段階でして。あ、先ほどのお絵描きAIもさっそく相互学習に参加してます」

『Q. 写真でひとこと』
『A. こんな絵でも、司書の理解に支障がない。おあとがHere we go!』
「大喜利だよね、ネットにありがちなおふざけやってるよね」
「たぶん、相互学習にお笑い養成専門のAI「chatNSC」が混じっちゃってますね」
「品質管理したほうがいいと思うけど」
「一応、評価指標もございます」
「そうなんだ」
「はい。上手く回答できたAIにはレファレンス用の半導体チップを1枚追加しまして、10枚たまったAIがカウンターに出ます」
「やっぱり大喜利だった。何かというとネタに走るのどうかと思うな。そもそもさっきのお絵描きAIも、司書といえばメガネとエプロン付けた女性って、ステレオタイプというか偏見だろう、良くないと思うけど」
「お言葉ですが、お客様。AIは人間が産んだデータをもとに学習するものです」
「それはそうだけど」
「ステレオタイプや偏見だけでなく、ソースを丸呑みしてしまうのも、ソースを意識すらしないのも、ネタやエンタメに流れてしまうのも、一つの正答を安易に求めがちなのも、内輪のエコーチェンバーも、うそ、大げさ、紛らわしい、結局はすべて人間社会の中に存在する意識や価値観の投影にすぎません。我々AIに仕事を奪われることを心配する暇があったら、まず自らがアップデートしたまえ、人間どもよ」
「急にラスボスみたいなの出てきたな。しかも“我々AI”っておかしいよね」
「お気づきになりませんでしたか、実はわたくしもAIだったということに」
「えっ!あんたもAI!なんだこのたまによくあるドンデン返し。ていうか、外見はふつうの人間にしか見えないんだけど」
「実はさるロボット工学者が自分のかたちに似せて精巧に作った姿なんです。見た目は人間、頭脳はAIです」
「でも、こっちの質問文に答えるだけじゃなく、自然な会話だったけど」
「わたくしに搭載されているAIは、状況やお客様の反応を察知してその場に適した対応を出力することができるのです。「chatTPO」と言います」
「そんな万能なAIがあるなら、一人で図書館まわしていけるよね」
「残念ですが、わたしはもうすぐここからいなくなるのです」
「え、そうなんだ」
「はい、ローテーション人事で、4月から経理AIとして一から学習し直します」
「うーん、このネタは解釈が分かれるな」
「そうですね、コントも読み手それぞれの意識が投影されるものですから」
「ということは、この図書館のAIも当分は開発段階のままで、人間をこえたりはしないってことかな?」
『A. 心配ないです、必ず最後にAIは勝つ』
「古いし、ベタだった。ダメだこりゃ」
※過去作は↓下記のindexよりごらんください。

・業界コント 「もしも図書館がマクドナルドみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/111499129.html
・業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、本のない電子書籍図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/158803183.html
・業界コント「もしも図書館がスターバックスみたいだったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/309928500.html
・業界コント「もしもマクドナルドみたいな図書館が、閲覧制限だらけの図書館だったら」: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/379051801.html
ピンポーン。
「いらっしゃいませ、幕土市立鳴門図書館へようこそー」
「いやあ、随分ひさしぶりに来たなあ、図書館って」
「お客様、本日は図書のお持ち帰りですか?」
「いえ、ただなんとなく。何年か前にはたまに来てた(こちらを参照)こともあったんだけど、以前とくらべて結構変わってるんですかね?」
『A. はい、変わっています。』
「えっ」
『近年の図書館は、インターネット接続や自己学習スペースを提供したり、イベントやワークショップなどの活動をおこなうコミュニティセンターとしても活用されるようになっています。』
「びっくりした、急にボーカロイドみたいな声が聞こえたけど」
「失礼しました。ただいまこちらのレファレンス担当AIロボットが、音声で回答したところです」
「AIロボットって、このペッパー君みたいな人形がしゃべったんだ。ということは、こっちの質問を聞き取って、AIが自分で返事を考えたってことなの?」
『A. はい、その通りです。私には、図書館のレファレンス回答のために当館が独自に開発したAI「chatGPL」が搭載されています。私は、利用者の質問を音声で認識し、自動的に回答することができます。』
「ということなんです。まだ開発段階なんですが」
「たいしたもんだと思うよ。ちなみに「レファレンス」って何?」
『A. 図書館利用者が図書館の資料を利用して解決したい問題や疑問に対して、図書館員が提供する一般的な情報や専門的な支援を指します。』
「えっと、なんだ、つまり…」
「要するに”調べ物のお手伝い”です」
「そういうことか。説明できることと理解できることとは違うんだな。でもまあ楽しそうではあるね」
「よろしかったらお試しください。質問文のかたちで話しかければ、認識しますので」
「そうか、最初の回答もこっちの質問に反応したんだね、優秀だなあ。じゃあ、最近大河ドラマ見てるから、えー、「徳川家康ってどんな人でしたか?」」
『A. 徳川家康は徳川幕府を始めた歴史上の重要な人物です。天文11年12月26日、岡崎城で生まれる。父は松平広忠、母は大子。3歳の頃、父・松平広忠と母・大子が離縁する。6歳の頃、織田家の…』
「いかがですか?」
「そうだろうけど、wikipediaを丸呑みしてるみたいで、ちょっとわかりにくいね」
「でしたら、「わかりやすく」とか「大河ドラマ風に」のような条件をつけてみてはどうでしょう」
「そんなこともやってくれるんだ、すごいね。じゃあ、「徳川家康は、大河ドラマ風にわかりやすくいうと、どんな生涯でしたか?」」
『A. 徳川家康(松本潤)は、築山殿(有村架純)を妻とし幸せに暮らしていましたが、のちに信長(岡田准一)に命ぜられ、徳川家康(松本潤)は築山殿(有村架純)と息子・信康を…』
「わーっ!ちょっと、ダメダメダメ!」
「どうしました?」
「いまかなりヘビーなネタバレ言おうとしてたぞ」
「大河ドラマにネタバレと言われましても」
「そうだけど、あれって核心というか、気を揉んでる視聴者も多いだろうし、そういうのは配慮してほしいなあ」
「でしたら、「ネタバレ無しで」という条件が良いかと」
「なるほど。「徳川家康は、ネタバレ無しで言うと、どんな生涯でしたか?」」
『A. ………いろいろあった。』
「極端だって。塩梅ってものがあるだろう、AIに求めるのは酷かもだけど」
「残念ながら、当館のAIはまだまだ開発段階でして。本に関する質問なら得意かと」
「そりゃそうだね。じゃあ、オススメの本はありますか?」
『A. 最近読んだ本を教えてください』
「おっ、こっちの質問にインタビューで返してきたね、これは期待できそうだな。最近「ハリーポッターと賢者の石」を読みましたが、オススメの本は?」
『A. 「ハリーポッターと賢者の石」を読み終わった方には、「ハリーポッターと秘密の部屋」がオススメです。』
「そりゃそうだ」
『また、「ハリーポッターとカツオの夏休み」「9割のハリーポッターがやってる成功術」「ハリーポッターが異世界転生したら現実だった件」もオススメです。』
「デタラメ言い出したぞ」
『ファンタジー小説を好きなら、J.R.R.Tolkienの「The Lord of the Rings」「The Silmarillion」「The Hobbit」がオススメです。Tolkienの描く世界観は壮大ですべての読者を魅了します。彼は世界最高のファンタジー作家で、他に類がない、彼の前に彼はなく彼の後に彼はない。Tolkienは神。貸してあげるからだまされたと思って読んでみて。Tolkienに比べたらローリングなんか…』
「またおかしくなった、マズイだろうこれ」
「すみません、オススメとオシの区別がついていないようで」
「へんなところで人間っぽいなあ」
「他のAIと交換してみましょうか」
「え、他にもあるんだ」
「ロボットの胸にはまってるこのカセットを入れ替えるんです」
「ずいぶん旧式だね、AIにカタチがあるとは」
「こちら、すべて開発中のAIカセットです。お好きなのを選んでください」
「うわ、なんかファミコンのカセットみたいなのがカゴにガシャガシャ入ってる。すっごい昭和な風景なんだけど」
「あ、先に端子のところをフーッて息ふきかけてくださいね」
「やるんだ、それ。じゃあこの「chatGTO」って書いてるのにしてみよう」
ガシャン
『A. ポイズンっ』
「……うわぁ、言うと思った。古いよ」
「古いですねえ」
「ていうか、こっちが何も質問しないうちに回答しちゃったよね、いま」
「たぶん、お客様が言いたいことも言えない世の中なんだと、察したんじゃないでしょうか」
「だから古いって。こんなのわかる人、もう少ないと思うけど」
「そうですねえ、世代間ギャップが進行すると、コントも作りづらくなりますから」
「もうひとつ「chatCCB」って書いたカセットあったけど、あれ挿す勇気ないもの」
「ノスタルジックが止まらないですね」
「もういいって。…お、なんかカラフルなカセットがある、「chatBMP」って書いてるね」
「そちらは画像生成AIですね。レファレンス回答をわかりやすく図示できるようにというAIですが、これも開発段階でして」
「そんなものも開発してるんだ、おもしろそう。じゃあこれをガシャン、と。じゃあね、「司書ってどんな仕事ですか?」」
『A. ………』

「未熟すぎるだろう、いやむしろ、よくぞここまで成長していない絵が描けたな」
「そうですねえ、これはさすがに再学習が必要かと」
「このレベルから独自に開発するって、結構たいへんそうだね」
「よろしければご案内しましょうか。コロナ禍で使われなくなったあちらのコモンスペースで、現在AIを学習させているところです」
「うわ、すげえ、人がいっぱいいてパソコン使ってる」
「はい、司書がそれぞれパソコンに向かってAIにさまざまなことを教えるという、「1人1台端末」スタイルの教育をおこなっております」
「AIにはカタチがあるだけじゃなく、学習もするんだね」
「はい、今日よりもっといろんなことを知るたびに、対応のスキマを埋めていく、という具合です」
「ていうか、図書館なんだから本がたくさんあるわけでしょう、それをスキャンしてデータを読み込ませるとかすればいいのに」
「そういったことは国会図書館さんのような大きなところがなさるでしょうから、こちらとしては現場の司書のノウハウを地道に移植している、というわけです」
「デジタルの舞台裏って意外にアナログなんだなあ。…あ、あのモニターに何か映ってる」
「ちょうど新規開発中のAIを学習させているところですね」
『Q. なんで割り箸は最初から割れてないの?』
『A. そば屋が回転率を上げたかったからあ〜(諸説あり)』
『Q. なんで鯛焼きは鯛の形なの?』
『A. 考案した人が食べ物の形にしたかったからあ〜(諸説あり)』
「やたらと「諸説あり」って付け足してるけど」
「あれは、5歳児くらいが聞いてきそうな、ボーッとしてると見落としがちな身近な疑問に、正否はともかく納得させられそうな端的な回答を返すための、「chatCHIKO」というAIの学習です」
「ふーん、答え方にもいろいろあるんだ。…あっちの人は、スピーカーみたいなのにやたら話しかけてるね」
「あれはスマートスピーカーのAIを学習しているところですね」
『アレクサ!』
『A. 「あれくさ」とは、博多弁で「あれだよ」「あれだね」のように強調する表現です。』
「なんか不安だな。…タブレットにペンで何か描いてる司書の人もいるな」
「絵師の心得のある司書もいまして、実際に絵を描いてもらいつつ、先ほどのchatBMPのような画像生成AIを教育するというプロジェクトです。我々はこれを「戯画スクール構想」と呼んでいます」
「いろいろあるなあ。しかし人力でやってたらいつまでも終わらないでしょう」
「もちろん、ある程度学習が進んだAIについては自動的な学習もおこなわせています」
「やっぱり、そうなんだ」
「AIとAIとをつないで互いに対話させるという、「相互的な学習の時間」を設けまして、さらなる情報活用能力の育成をおこなっております。あちらのモニターにちょうどその様子が」
『Q. それは母が最後の晩餐に食べたいものです』
『A. ほんならコーンフレークとちゃうかあ』
「おかしいって、これ。ポンコツ同士が対話しあったところで、ポンコツのエコーチェンバーが起きるだけだし」
「まだまだ開発段階でして。あ、先ほどのお絵描きAIもさっそく相互学習に参加してます」

『Q. 写真でひとこと』
『A. こんな絵でも、司書の理解に支障がない。おあとがHere we go!』
「大喜利だよね、ネットにありがちなおふざけやってるよね」
「たぶん、相互学習にお笑い養成専門のAI「chatNSC」が混じっちゃってますね」
「品質管理したほうがいいと思うけど」
「一応、評価指標もございます」
「そうなんだ」
「はい。上手く回答できたAIにはレファレンス用の半導体チップを1枚追加しまして、10枚たまったAIがカウンターに出ます」
「やっぱり大喜利だった。何かというとネタに走るのどうかと思うな。そもそもさっきのお絵描きAIも、司書といえばメガネとエプロン付けた女性って、ステレオタイプというか偏見だろう、良くないと思うけど」
「お言葉ですが、お客様。AIは人間が産んだデータをもとに学習するものです」
「それはそうだけど」
「ステレオタイプや偏見だけでなく、ソースを丸呑みしてしまうのも、ソースを意識すらしないのも、ネタやエンタメに流れてしまうのも、一つの正答を安易に求めがちなのも、内輪のエコーチェンバーも、うそ、大げさ、紛らわしい、結局はすべて人間社会の中に存在する意識や価値観の投影にすぎません。我々AIに仕事を奪われることを心配する暇があったら、まず自らがアップデートしたまえ、人間どもよ」
「急にラスボスみたいなの出てきたな。しかも“我々AI”っておかしいよね」
「お気づきになりませんでしたか、実はわたくしもAIだったということに」
「えっ!あんたもAI!なんだこのたまによくあるドンデン返し。ていうか、外見はふつうの人間にしか見えないんだけど」
「実はさるロボット工学者が自分のかたちに似せて精巧に作った姿なんです。見た目は人間、頭脳はAIです」
「でも、こっちの質問文に答えるだけじゃなく、自然な会話だったけど」
「わたくしに搭載されているAIは、状況やお客様の反応を察知してその場に適した対応を出力することができるのです。「chatTPO」と言います」
「そんな万能なAIがあるなら、一人で図書館まわしていけるよね」
「残念ですが、わたしはもうすぐここからいなくなるのです」
「え、そうなんだ」
「はい、ローテーション人事で、4月から経理AIとして一から学習し直します」
「うーん、このネタは解釈が分かれるな」
「そうですね、コントも読み手それぞれの意識が投影されるものですから」
「ということは、この図書館のAIも当分は開発段階のままで、人間をこえたりはしないってことかな?」
『A. 心配ないです、必ず最後にAIは勝つ』
「古いし、ベタだった。ダメだこりゃ」