2017年03月04日

立命館大学アートリサーチセンター(ARC) #2017年の本棚の中のニッポン

 ”在外資料””デジタルアーカイブ””コラボ”っていうと、立命館大学アートリサーチセンター(ARC)さんが思い浮かびますね。

・立命館大学アート・リサーチセンタ一
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/
・立命館大学大学院 文学研究科 行動文化情報学専攻「文化情報学専修」(2014年新設)
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/lib/gslbunkajyoho/
・赤間亮. 「立命館大学アート・リサーチセンタ一の古典籍デジタル化 : ARC国際モデルについて」. 『情報の科学と技術』. 2015.4, 65(4), p.181-186.
 
 2002年のヴィクトリア&アルバート博物館での浮世絵コレクションデジタル化事業をきっかけとして、ARCでは海外の美術館・博物館・図書館などへ出向いては、そこで所蔵されている“在外資料”、日本美術・古典籍について、撮影・デジタル化・アーカイブ構築を進めていく、という活動を行なってはります。
 それは単なるデジタル化工場として働いているというだけではなくて、資料のデジタル化に欠かせない機材・システムまわりのスキルとか、デジタルアーカイブの知見とか、資料に対する専門知識とか、資料の保存修復技術も必要になってくるわけなんで、そういう人材を育成していこうという。長年の活動で蓄積されてきた実践的・総合的なノウハウを、「ARCモデル」と称して、ワークショップなんかを国内外で開いては、レクチャーしていく。それを、たとえばデジタル化しに行った先の海外機関やそこに関わる学生さんなり若手研究者の人なりを集めて、共同研究なり共同プロジェクトとして、最初にレクチャーをすればあとはその流れでもって現地でデジタル化作業が進められる。そういうふうに学生や若手研究者をプロジェクトに巻き込むことが、若い世代の育成や知見の継承につながる、っていう意味での国際的なコラボレーションの理想的な事例だなって思いますね。

 現在ARCさんのデジタルアーカイブですが、海外に在する資料も含め、浮世絵ポータルデータベースで49万件、古典籍ポータルデータベースで8.7万点だそうです。

posted by egamiday3 at 13:10| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

コラボレーション #2017年の本棚の中のニッポン


 これまでたびたび出てきてた”コラボレーション”というキー概念について。
 ”和本”のためのくずし字講座やくずし字学習アプリ開発もそうだし、「みんなで翻刻」もそう、”在外資料”のデジタル化もそうだし、それを使ったデジタルヒューマニティーズもそうだな、っていう流れで。

 海外の日本専門家や日本司書を日本に招いて”研修”するという研修企画についても、たとえば、JAL2016のワークショップでは日本の美術司書がピッツバーグへ出向いていって研修的なことと情報交換的なことをしたんだけど、お互いにフラットな立場で情報交換したほうのほうがよさそうで、っていうことになってくると、それもう授受的な研修じゃなく相互なワークショップ・情報交換・ネットワークづくり、という意味の広義のコラボレーションのほうが良くね?ってなると思うので、そのへんはたぶん「研修」という別項が立つでしょう。

 海外の日本研究や在外資料、そのデジタルアーカイブ構築やweb展示に関連して、ああこれいいな、best practiceだな、っていうコラボ的なプロジェクトをいくつか挙げると。

 まず、琉球大学附属図書館とハワイ大学マノア校図書館による合同プロジェクト「ハワイ大学所蔵阪巻・宝玲文庫デジタル化プロジェクト事業」。翻刻・書誌調査、保存処置、デジタル化作業、英訳、コンテンツ・webサイト作成や広報など、様々な課題を、両大学の図書館司書や研究者・学生等が、インターナショナルにチームを組み、取り組んだ、というもの。
 これについては、2016年6月AAS in Asia 2016京都で開催したラウンドテーブル「The Digital Resource Landscape for Japanese Studies」の中で、ハワイ大学マノア校図書館のバゼル山本登紀子が報告してくださいました。あと、2015年ライデンのEAJRSやカレントアウェアネスでも。

・Tokiko Yamamoto Bazzell(University of Hawaii at Manoa Library)
「The Digital Resource Landscape for Japanese Studies: Spaces for Change and Growth Collaboration & Collective Solutions @ the University of Hawaii at Manoa Library」
http://egamiday.sakura.ne.jp/MyFiles/pptBazzell.pdf
・「越境する沖縄研究と資料U−「阪巻・宝玲文庫」のデジタル化プロジェクトを通して−」
https://perswww.kuleuven.be/~u0008888/eajrs/happyo/Tomita_Chinatsu_15.pptx
・琉球大学附属図書館、ハワイ大学マノア校図書館所蔵の阪巻・宝玲文庫デジタル公開
http://current.ndl.go.jp/node/26924
Posted 2014年9月2日
「2014年9月1日、琉球大学附属図書館が、ハワイ大学マノア校図書館との連携事業により、マノア校ハミルトン図書館が所蔵する、阪巻・宝玲文庫(The Sakamaki/Hawley Collection)のデジタル公開を開始したことを発表しました。今回公開されたのは阪巻・宝玲文庫全902件の内、琉球・沖縄に関する古典籍・古文書その他110件とのことです。今年度中にはさらに110件の公開を予定しているとのことです。」

 うん、やっぱカレントアウェアネスに記事がひとつあると、ペッと貼って紹介や説明がしやすいので、すごくいいんですよね。インフラですね。

 もうひとつbest practice。アジ歴とBLのコラボ。

・E1630 - ウェブ展示「描かれた日清戦争」:アジ歴とBLの共同企画
http://current.ndl.go.jp/e1630
カレントアウェアネス-E
No.271 2014.11.27
BL所蔵版画コレクションと公文書のウェブ展示を日英版で同時制作するという共同企画。
2012年、自館資料を世に出したいと考えたBL日本部スタッフと、EAJRSでネットワークづくりをしていたアジ歴が、共同で企画。「歴史的資料の公開について専門的な知見を有する機関の協力が必要であり,近現代の公文書のデジタル公開とそれを用いたコンテンツ制作という実績を持つアジ歴は,BLにとって最適なパートナーとなった」。
https://www.jacar.go.jp/jacarbl-fsjwar-j/
http://eajrs.net/files-eajrs/ohtsuka.pdf

 あと、「NDLとフランス国立図書館とで締結された包括的協力協定(2013)にもとづき、2014年両館による共同電子展示サイトが公開された」っていうのは、どこまで実際のコラボレーションがおこなわれているのかよくわかんないんですけど、とりあえず挙げておきます。

・フランス国立図書館の電子展示“France-Japon: Une rencontre, 1850-1914”が公開
http://current.ndl.go.jp/node/27638
Posted 2014年12月15日
BnFの“France-Japon: Une rencontre, 1850-1914”は、NDL「近代日本とフランス―憧れ、出会い、交流」と、相互補完的な機能を持つ。NDL側は日本がフランスに抱いている情熱を、BnF側はフランスから見た日本の魅力を、とのこと。
"France-Japon, une rencontre, 1850-1914"(BnF)
http://expositions.bnf.fr/france-japon/
近代日本とフランス―憧れ、出会い、交流(国立国会図書館)
http://www.ndl.go.jp/france/

 そういう海外に日本研究や日本司書とのコラボレーションを志向するんだったら、日本の司書が積極的に海外に出かけていって、ていうことが必要になってくるので、そうしましょう、っていうことも良く言われています。

 たとえば国際会議に参加してそこで何かしら発表・情報提供をすること。AASやCEALやEAJRSでパネルやワークショップを申し込んで開催したり、何なら同じ会場で別途部屋を借りて人を呼んでやったっていい、という考え方もあるので、っていうのをJAL2016ワークショップでグッドさんに教えてもらったので、企画力と人さえそろえばっていう感じですね。

 それから、インターンなり在外研修・在外勤務なりで長期にわたる派遣を積極的にやるという活動。
 例えば、最近ニュースになったワシントン大学の話。

・2017 Tateuchi Visiting Librarian Program
http://www.lib.washington.edu/east-asia/2017-tateuchi-visiting-librarian-program/view
・「ワシントン大学図書館、日本のライブラリアン招聘プログラムを開始、志願者募集」
Posted 2016年10月7日
http://current.ndl.go.jp/node/32697
研修者は、ワシントン大学東アジア図書館での6ヶ月のプログラム中に、プロジェクトもしくは自らの調査を完成させるなど。開始は2017年3月〜5月頃から。

 これにどんだけ手が挙がってどんだけ定着してくれるかがすごくワクワクしますね。
 こういう海外図書館への司書派遣は慶應さんがわりと積極的にやってはる印象があるなと思ってて、なんか海外出張とか行くとしょっちゅう慶應の人に会うんですよね、すげえなと思って。なんかこの件については中の人からもっと話をききたいです、あんまこのことが表に語られてるのを見ることがない気がする。

・イズミ・タイトラー. 「英国・欧州の日本研究図書館との関わりにおいて」. 『専門図書館』. 2014.11, 268, p.2-7.
JLG(Japan Library Group・英国内日本語資料コレクションのための学術図書館コンソーシアム)と慶應義塾大学による職員英国派遣プログラムがあって、日英交流強化のメリットがあった、と評価している。
・関秀行. 「慶應義塾大学メディアセンターにおける国際交流活動」(EAJRS2016)
http://eajrs.net/sites/default/files/uploads/seki_hideyuki_16.pdf
「国際的な視野を持つ人材を育成していく方法の一つとして、図書館員を欧米の図書館に長期派遣する制度の継続に力を入れている」
最初の派遣はハワイ大学へ1965年。1985年から継続的に。過去、シカゴ大学、UCLA、バークレーなど。現在は、トロント大学、シアトル大学、セインズベリーと継続中。

 これによってコラボレーションが進むというのももちろんだし、そもそもこういうことができるのも先方のライブラリアンの人たちの尽力と日本側との連携があってこそだよな、って思いますね。

 JAL2016のアンサーシンポジウムで、「日本のデータベースやデジタルアーカイブに関するリンク集やパスファインダーや解説集のようなものを、海外向けに、各主題の専門家同士の共同で作成できたらいいのではないか」というのが話題にあがりました。たぶんそれも、日本の人らだけでやるよりは海外の専門家・司書らとのコラボレーションでやっていくのがいいのだろうと思います。そういうのって、成果物としてのリンク集・パスファインダー・webサイトもそうなんだけど、そうやって寄り集まってコラボ活動している過程によってうまれる空気感の形成、みたいなところにこそ、本質的な意義があるんじゃないかなって思いますね。

 ていうか、日本側で海外日本研究に関わっている機関や部署や人があちこちにあると思うんですけど、なんというか、その連携が目に見えてとれてないところがあるんじゃないかな、っていうのは思ってます。

 2014年に試行版が、2015年に現在の版が公開されている、下記のリンク集を事例として挙げておきます。

・「日本研究と日本における人間文化研究情報の国際リンク集」
http://www-e.nihu.jp/sougou/kyoyuka/japan_links/index_ja.html
人間文化研究機構の資源共有化事業の一環として作成されたもの。日本研究と日本における人文系研究情報について、国内外を問わず、英語のリソース中心に、国際的に発信する目的で。

posted by egamiday3 at 12:19| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月03日

国文研・歴史的典籍NW事業 #2017年の本棚の中のニッポン

 
 というわけで、”国文研さんのやつ”です。

 ”国文研さんのやつ”のまとめ再掲。
・”和本”という日本資料を、大量にデジタル化して、オープンに公開する。
・”在外資料”としての和本、つまり海外各大学・図書館・機関にあるものも、その対象の予定。
・古典籍総合目録その他のデータベースとともに、構築される”デジタルアーカイブ”が”和本”の”ポータル”となるであろう。
・”デジタルヒューマニティーズ”界隈のいろんなコラボやツールも活用されるであろう。
・デジタル化事業だけでなく、研究活動も含め事業全体が、国内外・多分野で、国際共同研究ネットワークを構築するという“コラボレーション”を目指している。

・「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画(略称:歴史的典籍NW事業)」
https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/
・増井ゆう子, 山本和明. 「国文学研究資料館・日本語の歴史的典籍のデータベース構築について」. 『情報の科学と技術』. 2015, 65(4), p.169-175.
-その名の通り、日本語の歴史的典籍をもって、国際的な共同研究ネットワークの構築を目指すプロジェクト。
-平成26年度から平成35年度までの10年間の予定。
-30万点の歴史的典籍のデジタルアーカイブ構築。『国書総目録』50万のうち30万。国文研所蔵だけでなく、複数の機関が所蔵する古典籍を含むポータル。
-拠点大学国内20大学、海外の大学・研究機関等と連携の予定。
(海外の連携相手には、欧米中韓の13機関が挙がっている。)
-人文社会科学分野として初めての大規模学術フロンティア事業。

 ひと言で言えば、日本古典籍、和本のプラットフォーム、ポータルサイトが出来ると。
 それも、単に和本をデジタル化しますよ、という話ではなく、国内外の大学・機関と連携して事業をおこなうこと。国内外・他国他地域との国際共同研究をおこなうこと。異分野融合であること。
 そういうことがうたわれているので、海外関係者からの期待の視線も熱いです。トロントで開かれた2016年3月のNCCでも即席ミーティングが開かれるほど注目でしたし、EAJRSでもそう。そもそも、このプロジェクトの発端にあたる話、まだ目鼻もまったくついてなかったころにその話をあたしが初めてきいたのも、2011年イギリスでのEAJRS会議の時でした、正直、あまりにでかすぎる話で実感がわかなかったんですが、いまもうすでにやってるわけだからなあ、と。

・「拠点大学の画像公開について 【 2015(平成27)年度の拠点デジタル化資料 】
https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/database.html

 この文章を書いているいまはまだ9大学分の公開みたいですが、2017年4月には新たな画像データベースが公開される計画です、ってこのページには書いてあるので、これもワクワクですね。
 そして、画像、からの、オープンデータです。”デジタルヒューマニティーズ”です。

・「ホーム > 歴史的典籍に関する大型プロジェクト > オープンデータセット 」
http://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/data_set_list.html
2017年2月現在、日本古典籍データセット、日本古典籍字形データセット、江戸料理レシピデータセットを公開中。700点の画像データ約16万コマとその書誌データ。

・日本古典籍字形データセット
http://codh.rois.ac.jp/char-shape/
所蔵古典籍の文字座標データなど8点の資料に書かれた86000文字。

・日本古典籍データセット活用例
https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/data_set_use.html

 和本カテゴリの第一党として期待しかしてないです。

posted by egamiday3 at 22:42| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

和本 #2017年の本棚の中のニッポン

 
 海外の日本研究・日本図書館の動向を見ていて、ある程度はもちろん以前からあったんだけど、それにしてもここ最近とみに、”和本”まわりのトピックスや盛り上がりが多いよな、っていう印象があります。
“和本”と“海外の日本研究”と“デジタル”と、これら3点セットで相性がいい、親和性が高い、という感じなんだろうなって思いますね。それは、これまでに挙げてきたデジタル関連のトピックスにも“和本”界隈の話題がしょっちゅう顔を出してた、っていうところからもわかると思います。

 そもそも”和本”との接触が、特に西洋における日本研究の出発点だった、みたいなところも歴史をひもとけばあるんじゃないかと。
 これは”在外資料”がらみの話題としてもですが。

・国文学研究資料館、「北米日本古典籍所蔵機関ディレクトリ」(日・英)を公開
Posted 2011年12月27日
http://current.ndl.go.jp/node/19825
・国文学研究資料館、北米日本古典籍所蔵機関ディレクトリに所蔵機関情報を追加し、「在外日本古典籍所蔵機関ディレクトリ」に改称
Posted 2014年3月20日
http://current.ndl.go.jp/node/25737

 この話題で言うと国文研さんではもともと「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」(http://base1.nijl.ac.jp/~oushu/)を長年メンテ・提供してはって、web公開は2001年にさかのぼるという老舗なんですが、そこへ加えてディレクトリ、これは北米の東アジア図書館協議会(CEAL)の日本資料委員会・日本古典籍小委員会の調査によるものですが、これが国文研さんのサイトにのっかる、加えて欧州・オセアニアものっかる、という非常にありがたい基本的レファレンスツールになってます。

 ていうか、”国文研”さんの名前を出すんだったらこの話題ではまちがいなくトップなのが、例の大規模事業なんですけども、それは別項で独立させる予定なのでいったん置いておきますね。ただ、エッセンスだけ言うと、
・”和本”という日本資料を、大量にデジタル化して、オープンに公開する。
・”在外資料”としての和本、つまり海外各大学・図書館・機関にあるものも、その対象の予定。
・古典籍総合目録その他のデータベースとともに、構築される”デジタルアーカイブ”が”和本”の”ポータル”となるであろう。
・”デジタルヒューマニティーズ”界隈のいろんなコラボやツールも活用されるであろう。
・デジタル化事業だけでなく、研究活動も含め事業全体が、国内外・多分野で、国際共同研究ネットワークを構築するという“コラボレーション”を目指している。

 現状として、”在外資料”としての和本が海外のあちこちで公開されるようになってきたために、諸本比較は海外でもふつーにできます、という話も聞ける、分野種類によっては海外デジタルの方がやりやすい場合もあり得るだろう逆転現象も考えられますね。
あたしが下記の講演を聴きに行ったときにベルリンの方からうかがったことには、

・立命館大学大学院 文学研究科 行動文化情報学専攻 「文化情報学専修」設置準備企画連続講演会 第2回〈文化資源情報を考える〉
2013年6月28日
立命館大学アートリサーチセンター
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/lib/GCOE/info/2013/06/post-97.html
1.「早稲田大学古典籍総合データベースの場合」藤原秀之氏(早稲田大学図書館特別資料室調査役)
2.「古典籍画像データベースを利用して−併せて、ベルリン国立図書館のデジタル化の現状の報告−」クリスティアン・デュンケル氏(ベルリン国立図書館東アジア部日本担当司書)
3.「対談 日本古典籍デジタル化と日本研究の行方」(司会・赤間先生)

 この方は都名所図会を40から50点ほどのレベルで比較研究したらしいのですね、それは、現物を来館閲覧なんてとてもできなくて、デジタル化された画像を利用したわけですから、海外でもこうやってデジタル画像を活用した和本研究が行なわれる、日本と海外の差がなく研究できるようになってるという一例です。

 で、そうやって和本の電子化公開がどんどん進むようになって、どうなったか、っていうことについて面白い話を、ミシガンの横田さんがしてはります。

・「デジタル化と大学図書館の未来──横田氏講演の感想メモ - 日比嘉高研究室
http://hibi.hatenadiary.jp/entry/2016/03/24/085054
2016/3/22、名古屋大学にての講演「Digital Humanities と北米大学図書館の現在〜ミシガン大から見る」について。
「日本の古典籍の電子化が進んだことによって、海外でもそれを容易に読めるようになってきた。その結果何が起こったか。「くずし字」で資料を読まなければならないと考える古典研究者たちが海外に現れた、と横田さんは言った。これまでは活字化された資料をもとに主に研究してきたが、活字化されていない資料…にも取り組もうということである」

 確かに海外でくずし字ワークショップがおこなわれましたっていうニュースは、昨今正直、枚挙にいとまがないくらいよく聞きます。たぶん多くは国文研さん。

・「「くずし字」解読に挑戦 日バチカン共同講座」
東京新聞 2017年2月10日
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017021001000877.html
国文研とバチカン図書館による“在外資料”調査事業「マレガ・プロジェクト」の一環で、バチカン図書館でくずし字共同講座。これも“コラボ“。

・「NIJL / EAJRS Kuzushiji workshop in Norwich」
http://eajrs.net/news/nijl-eajrs-kuzushiji-workshop-norwich
・国文学研究資料館のツイッター
https://twitter.com/nijlkokubunken/status/829255490270089216/photo/1
「当館と欧州の図書館司書組織EAJRSとの共催による第七回「くずし字講習会」が、2月1〜3日、英国の古い都市ノーリッチにある、セインズベリー日本芸術研究所で開催されました。英国はもとより、アメリカ、北欧、フランスから日本典籍担当司書が参加し、講師は当館の今西館長がつとめました」

 最近『書物学』にケンブリッジのモレッティさんが寄稿してた「総合的和本リテラシー教育」の講座のやつは、ガチでマジだったので脱帽しましたけど。

・ラウラ・モレッティ. 「「総合的和本リテラシー教育」 : ケンブリッジ大学イマヌエル・カレッジの試み」. 『書物学』. 9, 2016.10, p.50-55.
-ケンブリッジ大学イマヌエル・カレッジで、二松学舎大学東アジア学術総合研究所との共催により、2014年から「総合的和本リテラシーを学ぶサマー・スクール」を開講。8月に2週間。Graduate Summer School。大学院生、研究者、司書、学芸員等を対象とする。毎年ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、日本等から20名参加。
-くずし字に限らず、「書体・文体・媒体(書籍形態)を総合的に」学ぶ。
-漢文訓読体担当の山邊進は、二松学舎大学21世紀COEプログラム「日本間文学研究の世界的拠点の構築」等で、「長年にわたり海外の大学院生を対象とした漢文訓読教育に携わってきた。そのため、日本人対象の従来の教育法とは異なった外国人に馴染みやすい教え方をマスターしている」
・他に、アメリカの研究者、ロンドンの書道家などと協力して実施。(“コラボ”)

 そうか、みんなそんなにくずし字を勉強したいか。
 というわけでの、アプリですよねと。

 その1、早稲田×UCLAの”コラボ”によるアプリ

・「早稲田大学文学学術院、「変体仮名」をゲーム感覚で身につけられる無料スマートフォンアプリを公開」
Posted 2015年11月4日
http://current.ndl.go.jp/node/29862
・「源氏物語から蕎麦屋の看板までマスター 変体仮名あぷり・The Hentaigana App 早大・UCLAで共同開発」
Mon, 02 Nov 2015
https://www.waseda.jp/top/news/34162
-英語版は共同開発者のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)によって米国・ヨーロッパなどに向けて近日リリースされる予定です。
-早稲田・UCLAの「柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト(The Tadashi Yanai Initiative for Globalizing Japanese Humanities)」の一環として開発したもの。

 その2、KuLA。

・「くずし字学習支援アプリ「KuLA」が公開開始」
Posted 2016年2月18日
http://current.ndl.go.jp/node/30780

 「諸事情あってスマホを英語設定で使っているためにGoogle Playで同じく英語設定ユーザーのレビューが表示されるのですが、このappは英語ユーザーにも「くずし字の学習に最適」と大変な人気で、すごいです。」(https://twitter.com/MB13/status/796709350551195649)だそうです。

 からの、「みんなで翻刻」につながりますね。

 学習だけでなく、”デジタルヒューマニティーズ”的に文字を扱ってはる例としては、Unicodeで変体仮名が登録予定(高田智和, 矢田勉, 斎藤達哉. 「変体仮名のこれまでとこれから : 情報交換のための標準化」. 『情報管理』. 2015, 58(6), p.438-446.)と言うほかにも、こんなのがあります。

・山本純子, 大澤留次郎. 「古典籍翻刻の省力化 : くずし字を含む新方式OCR技術の開発」. 『情報管理』. 2016, 58(11), p.819-827.
-くずし字をOCRでテキストデータ化する実験と開発。
-凸版印刷,公立はこだて未来大学,国文学研究資料館の3者の協力の下,原理検証実験を実施し,特定の条件下ではあるが,精度80%以上で翻刻が可能であることを実証

・文字画像データセット(平仮名73文字版)を試験公開しました
2016/09/27
NDL Lab http://lab.ndl.go.jp/cms/hiragana73
NDLデジタルコレクションから平仮名の文字画像を切り出したデータセット、計8万画像。

 そして、文字を読むだけでなく日本古典籍の書誌学をがっちり授業してくれるということで最近話題になったのが、慶應の佐々木先生のMOOCsのやつでした。

・「Japanese Culture Through Rare Books - Free online course」 (“FutureLearn”)
https://www.futurelearn.com/courses/japanese-rare-books-culture/

・「慶應義塾大学、英国のMOOCs“FutureLearn”で、講座(「Japanese Culture Through Rare Books」)を初提供」
Posted 2016年4月28日
http://current.ndl.go.jp/node/31472
-斯道文庫の佐々木孝浩教授と一戸渉准教授による講義
-7月18日公開、全3回。
-日本語+英語字幕。受講者同士でのディスカッションは英語。

 第2弾は堀川先生。

・公開オンライン講座FutureLearnにて新コース「Sino-Japanese Interactions Through Rare Books」の受講登録を開始いたしました
2017/01/18
http://www.sido.keio.ac.jp/info/index.php#66
-開講期間:2017年3月6日(月)から3週間(予定)
-日本語+英語字幕、受講者同士のディスカッションは英語
-斯道文庫の堀川貴司教授(代表)、住吉朋彦教授、橋智教授.
-主に中国大陸から影響を受けた日本文化を、貴重書の側面から考察

 デジタル動画だからこその強みであるのが”英語字幕“かなって思いますね。
 コンテンツの安定したのと、デジタルの利点と、英語、っていうこの3点セットかなと、ここは。
 コメント見るとわりと日本語学習者が見に来てるっていうのもあるらしいので。

 それにこの日本古典籍英語MOOCs動画のもうひとついいのが、NDL研修に来てはったアメリカの司書の方に聞いたんですけど、あちらの大学でも特にレアブックのヒストリーの授業は学生に人気があるんだけど、そこで扱われているレアブックや歴史っていうのは主に欧米のそれがほとんどなので、そこに日本やアジアもがっつり含まれるようになってくれるとほんとはいいと思うんだよね、って言って、英語で和本を教えるのに適した本みたいなのをいろいろ調査してはる。そういう現状があるんだったら、そこへあのMOOCs動画が人気出るのもそりゃ当然だろうな、という感じです。

 その佐々木先生は海外でも日本古典籍ワークショップを開いてはりますし、もうひとつ言うと、2016年6月に出版なさった『日本古典書誌学論』について、推薦文をプリンストン大学の日本研究司書の方が書いてはります。

・佐々木孝浩『日本古典書誌学論』(笠間書院)2016年6月刊行
推薦文
http://kasamashoin.jp/2016/07/pdf_19.html
「世界の研究者、司書に向けて書誌学の重要性を啓発
野口契子 アメリカ・プリンストン大学東アジア図書館日本研究司書
「北米に所在する日本の古典籍においても、近い将来デジタル化が進み、国際的なプロジェクトに繋がる可能性も高い」
「巻末に英文の目次と抄訳もある。国内はもとより、海外の研究者、司書にも推薦したい。」

 1600年代初頭の古活字本の時代から、21世紀のデジタルヒューマニティーズの時代まで、脚光を浴びるのは、そう、「古典」なんだなって思い知った、春先の2017なのでした。
 メディア変換と古典ってどんだけ相性いいんだよ、っていう。

posted by egamiday3 at 22:25| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

#2017年の本棚の中のニッポン のindex

 #2017年の本棚の中のニッポンは、「○○×海外の日本研究」という感じで、2017年3月時点でなんとなく自分に見えている風景をスケッチしてる、スケッチ集です。


近年の関連文献その他
http://egamiday3.seesaa.net/article/447466756.html

在外日本資料
http://egamiday3.seesaa.net/article/447469480.html

デジタルアーカイブ
http://egamiday3.seesaa.net/article/447479420.html

ポータル+情報発信
http://egamiday3.seesaa.net/article/447499819.html

デジタル(e-resource)不足
http://egamiday3.seesaa.net/article/447501063.html

ウェブ・スケール・ディスカバリー(WSD)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447516953.html

デジタルヒューマニティーズ
http://egamiday3.seesaa.net/article/447532162.html

和本
http://egamiday3.seesaa.net/article/447565661.html

国文研・歴史的典籍NW事業
http://egamiday3.seesaa.net/article/447566034.html

コラボレーション
http://egamiday3.seesaa.net/article/447581503.html

立命館大学アートリサーチセンター(ARC)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447582397.html

国際日本研究コンソーシアム(日文研)
http://egamiday3.seesaa.net/article/447582639.html

研修事業
http://egamiday3.seesaa.net/article/447588883.html

アジア
http://egamiday3.seesaa.net/article/447611104.html

英語/ローマ字
http://egamiday3.seesaa.net/article/447686045.html


posted by egamiday3 at 12:55| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする