2017年03月02日

ウェブ・スケール・ディスカバリー(WSD) #2017年の本棚の中のニッポン


 いわゆるウェブ・スケール・ディスカバリー、これこそ、海外の研究者や学生のふだん目にしているところであり、ひとつの”ポータル”と考えてそこを介して”情報発信”することの意味の大きさ、みたいのはあると思うのですが、それはアメリカの下記の調査でもわかってて、

・「Ithaka S+R US Faculty Survey 2015」
http://www.sr.ithaka.org/publications/ithaka-sr-us-faculty-survey-2015/

 研究者がどこから研究をスタートさせるかについて「図書館のサイトやカタログから」と答えている人の割合が、2015年にぐっと上昇してるという。

 ところが、海外の学生・研究者のみなさんがいつも目にしているというそのウェブ・スケール・ディスカバリーにおいて、日本製のコンテンツがヒットしない、という話については、これはまるごと飯野さんにおまかせしますという感じで。

・飯野勝則. 「CA1827 - ウェブスケールディスカバリと日本語コンテンツをめぐる諸課題―海外における日本研究の支援を踏まえて」
No.321 2014年9月20日
http://current.ndl.go.jp/CA1827
・飯野勝則. 『図書館を変える! : ウェブスケールディスカバリー入門』. 出版ニュース社, 2016.
・飯野勝則. 「海外日本研究に忍び寄る危機:学術情報サービスの視点から」. 『リポート笠間』. 2016, 61, p.94-96.

 2014年9月当時のカレントアウェアネスの記事においては、アリゾナ州立大学のWSDで「枕草子」を検索すると、上位を中国語コンテンツが占める。中国語コンテンツが76%、日本語コンテンツが13%。Googleで検索結果の上位にかからないことと同じ状況が、欧米のアカデミックな世界で起きている、と。
 同様の指摘についてヨーロッパから。

・Kamiya Nobutake, Naomi Yabe Magnussen. 「Case study : CiNii's Japanese language bibliographies in Primo Discovery system : at Zurich and Oslo University Libraries」(EAJRS2015年次集会). 2015.9. https://perswww.kuleuven.be/~u0008888/eajrs/happyo/Magnussen_Naomi_Yabe_15.pdf

 2015年チューリヒ大学では、「夏目漱石」で検索すると、中国の論文情報が上位にヒットする。同じく2015年オスロ大学では、「夏目漱石」で検索すると、日本の論文情報が上位にヒットする。

 この手のお話は時々刻々と状況が変化していくものなので、飯野さんのアラートによって改善はしていってるものと思うのですが、基本的な考え方としての、WSDは日本の大学図書館に導入が進みつつあるものの、日本製コンテンツにかかわる発信についての理解が進んでいない、というのは、知識情報を輸入はするが輸出はしないという根本的な日本側の考え方を問われているようなあれです。

 同志社のシンポジウムで北米ライブラリアンがあげた日本製の電子書籍プラットフォームは、EBSCO・NetLibrary、丸善eBook、JapanKnowledgeという感じで、数万冊近い電子書籍が入っていたりするようですが、”存在だけ”していてもどうやらダメなようで、メタデータやアブストラクトが弱かったり不足したりしているとディスカバリーで上位に表示されにくいとか、全文へのURLがあるのとないのとでは、強力な統合的e-resourceプラットフォームがあるのとないのとでは、存在はしていても流通が乏しい、目に触れない、的な話を聴いていると、これもうまんまSEOの話なんだな、っていう理解になるし、実際、「欧米を中心とした海外の出版社は、学術雑誌や図書、データベースの販促ツールとして、これらの項目を含んだ書誌レコードを熱心に作成する傾向にある」らしいので、もっと我々界隈こぞってSEO(Search Engine Optimization)ならぬWSDO(Web Scale Siscovery Optimization)を考えていかなあかんのだな、っていう理解になります。

 再掲します。

・東京文化財研究所、展覧会カタログ情報をOCLCで提供 (2016年10月)
「第7回美術図書館の国際会議(7th International Conference of Art Libraries)への参加」
http://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/240626.html
・奈良文化財研究所、全国遺跡報告総覧とWorldCatのデータ連携開始 (2017年2月)
https://www.nabunken.go.jp/nabunkenblog/2017/02/worldcat.html

 その他WSD対応関連。

・ディスカバリーサービスSummonに、JapanKnowledge搭載
(2013年6月7日)
・医中誌WebがSerials Solutions社のディスカバリサービスSummonで検索可能に(2012年10月30日 http://current.ndl.go.jp/node/22195
・ジャパンナレッジのメタデータがEBSCO社のディスカバリサービス“EBSCO Discovery Service”に提供へ(2013年8月7日 http://current.ndl.go.jp/node/24109
・Serials Solutions社、ディスカバリーサービスSummonの検索対象に丸善の日本語電子書籍コンテンツの追加を公表(2013年10月25日 http://current.ndl.go.jp/node/24675
・EBSCO社、EBSCO Discovery Serviceに丸善の日本語電子書籍のメタデータの追加を発表(2014年2月19日 http://current.ndl.go.jp/node/25509

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2017年03月01日

デジタル(e-resource)不足 #2017年の本棚の中のニッポン


 デジタル不足、特に、日本製e-resource(電子書籍・電子ジャーナル・データベース)の不足については、中国・韓国との対比で語られることが多いのですが。

・「北米大学図書館の日本研究司書の人たちの危機感を実感した話 - digitalnagasakiのブログ」(2016年1月)
digitalnagasaki.hatenablog.com/entry/2016/01/26/175249
台湾・中央研究院の学術書籍をデジタルで即座に入手できた経験から、「米国の研究者業界で、日本研究はおそらくそのような不利な状況におかれている」、と。

・川島真. 「新たなデジタル化時代の中国研究と日本」. 『東方』. 2016.4, 422, p.4-7.
「■情報へのアクセスと発信lまず日本語での発信を」
「中国のCNKIに相当するものを日本はもっているだろうか。CiNiiはもちろんあるが、そこで見られるコンテンツは限定的だ。英語での発信とか中国語での発信が問題になることが多いが、そもそも日本語でさえ情報発信ができておらず、日本国内の学術情報が「閉じた」空間に置かれていることがそもそもの問題で」
「海外の中国研究では、日本の研究が参照されなくなったと言う声を聴くことがあるが、その根本的な問題は日本の、日本語で書かれた中国研究の成果の利用の面で限界が有るからではないか」
「このままでは、日本の研究はそもそもウェブ空間に陳列さえされておらず、日本でも世界でも消賀されないまま検索エンジンにひっかからない空間に留まってしまう。そして、それどころかこちらから学術資源を提供しないということになり、海外の学術資源を得ていく機会をも喪失することにもつながろう」

 デジタルで生産していない、発信していない、というだけでなく、購入もしていない、と。

・金文京. 「中国古典文学研究と漢籍データベース検索」. 『日本語学』. 35(10), 2-9, 2016-09
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020947860
「日本では、『中国基本古籍庫』を契約している大学は全国で数校にすぎず、大部分の研究者や学生はアクセスすることができないのである。現在の研究状況から言えば、これでは中国の研究者と同じ出発点にさえ立てないに等しい」

 まず学術雑誌の電子化について言えば、紀要はかなり進んだものの、学会誌・協会誌が進んでいないという指摘。

・佐藤翔. 「ビジビリティの王国 : 人文社会系学術雑誌という秘境」. 『DHjp』. 2014, 4, p.18-24.
・佐藤翔他. 「日本の学協会誌掲載論文のオンライン入手環境」. 『情報管理』. 2016.3, 58(12), p. 908-918.

 日本の学協会誌とその論文が電子化されていない、特に人文社会系のそれがオンラインで入手できない様を「秘境」と表現した佐藤さんたちが、実際に日本の学協会誌を調査したところ、日本の学協会誌掲載論文のうちオンラインで入手可能なものは人文科学で43.7%、社会科学で51.5%。まだまだだなと見るか、あ、意外と増えたな、と見るかは人によって分かれるかもしれませんが、例えばIthakaの調査を見ると。

・「Ithaka S+R US Faculty Survey 2015」
http://www.sr.ithaka.org/publications/ithaka-sr-us-faculty-survey-2015/

 「電子ジャーナルがあったら紙はいりませんか?」の問いに、人文系でも6割近くがいらない、と答えてるくらいに整備されてるんだな、っていうことを考えると、その中にあって日本研究のためのリソースはこう、っていうのはやっぱり格差がかなりありそうだなという感じですね。

 電子書籍について、直近では、『情報の科学と技術』に、

・グッド長橋広行他. 「米国大学図書館における電子書籍サービス」. 『情報の科学と技術』. 2017, 67(1), p.19-24.

 この投稿論文はおおむね米国事情を伝えるものでしたが、最後の方に「日本の電子書籍への要望」とする章があって、読んでるとまあやっぱり、仕様とか、契約プランとか、内容云々において、売り手と買い手とがだいぶ噛み合ってないなという印象で、これたぶんどっちがどうというわけではなく、強いて言うなら日本の買い手側がきちんと買い手場所を耕せてないのが遠因だろうなと思うんですが、いずれにしろ満足には活用されていないなっていう様子がうかがえます。
 他方で同論文中で紹介されている米国のDDA/PDA事情について、このグッドさんは2016年6月の同志社でおこなわれたシンポジウムで、「米国の蔵書担当ライブラリアンはDDA/PDAで選書の仕事がなくなり、かわりにインストラクション活動に時間を使えるようになった」とご紹介になり、一方で日本の本はまだまだ紙を選書せんならんのでそれに時間を使う、っていうことなので、ここにも格差ができつつあるというか、格差の連鎖が起こってるんだなと思いました。(ライブラリアンが選書しなくていいのかどうか?という話はまた別の問題ですが)
 そのシンポでも先の論文でも言及されていましたが、日本の電子書籍をEBSCOでDDA導入してみたものの、年間で5冊しか購入実績がない、という。
 これは永遠の卵と鶏みたいな話で、使われないから供給されないのか、売られないから導入されないのかですが、まあでも卵鶏言うてる暇あったらどっちかがアクション起こさない限りはどうしようもないので、同志社シンポの今度はアンサーシンポのほうで日本側司書から発言あったように、日本の電子書籍を日本の大学図書館が買わなかったらどうしようもない、そこを我々が耕せてないから、めぐりめぐって、海外の日本研究ユーザに魅力ある電子書籍も提供できてないってことなんじゃないかと思います。

 これは丸善eBookでやった実験ですね。

・CA1874 - 大学図書館における電子書籍PDA実験報告〜千葉大学・お茶の水女子大学・横浜国立大学の三大学連携による取組み〜 / 山本和雄、杉田茂樹、大山努、森いづみ
http://current.ndl.go.jp/ca1874

 さてじゃあこの電子書籍の利用を促進するのに一役買ってくれるのが、ウェブスケールディスカバリの類なんだろうな、という感じですけど、それはそれでまた項をあらためて。

 学術書じゃないほうの一般的な電子書籍が海外に発信されていくかどうか、については、正直あまり詳しくは追えてないんですが、下記のニュース記事を追うだけでも、なんとなく、あ、これそろそろ時間の問題なんじゃないかな、っていう印象を持ちますね。


・メディアドゥ、OverDrive社と戦略的業務提携について基本合意(2014年5月)
http://current.ndl.go.jp/node/26119
「日本コンテンツをoverdrive経由で海外図書館に配信」

・「メディアドゥ、日本の様々な書物を英訳する官民連携のプロジェクト「JAPAN LIBRARY」で英訳された電子書籍を、米・OverDriveを通じて、海外の電子図書館へ」
Posted 2016年2月9日
http://current.ndl.go.jp/node/30690

・「株式会社メディアドゥ、米国OverDrive社と提携して実施している日本のデジタルコンテンツの海外電子図書館への配信について、配信館数が100館を突破」
Posted 2016年4月19日
http://current.ndl.go.jp/node/31386
「購入されたコンテンツの主なカテゴリーは、英語に翻訳されたマンガや日本語のマンガ、日本語の文学作品や、絵本とのことで、配信対象館としては、米国のロサンゼルス公共図書館、米国陸軍図書館、ハワイ州立公共図書館などのほか、カナダのカルガリー公共図書館やブリティッシュコロンビア図書館など」
・「メディアドゥ、海外電子図書館への日本コンテンツ輸出が加速。配信図書館数が100館を突破」(株式会社メディアドゥ, 2016/4/19)
http://www.mediado.jp/service/1340/

・「電子書籍取次のメディアドゥ、同業を買収 80億円で」
2017/2/28 0:01 日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13449860X20C17A2TI5000/
出版デジタル機構を買収。「取り扱う電子コンテンツの幅を広げる。海外に日本のコンテンツを配信する事業も強化したい考え」

・「講談社、ミリオンセラー無き増益 デジタルで稼ぐ」
2017/2/21 18:11 日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21HLH_R20C17A2000000/
「紙の不振をデジタルで補うという構図が鮮明になった講談社。だが、今回の決算で注目すべき点がもう一つある。海外版権ビジネスだ。売上高の絶対額こそ36億円と小さいが、前の期からの伸び率は16%に達した。」
「講談社は14年に米国に電子書籍の配信子会社「講談社アドバンストメディア」を設立した…「進撃の巨人」など日本でヒットした作品の英語版の配信」

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ポータル+情報発信 #2017年の本棚の中のニッポン


 日本のデジタルアーカイブについて海外の日本研究関係者からいつも定番のように指摘される、その代表的なののひとつが、たくさんあってあちこちに散らばっている、”ポータル”がない、というものです。日本に来て説明されてその存在をはじめて知ったと言われるのも、EuropeanaでJapanが検索されてるのも、日本の浮世絵を探すのに日本のサイトではなくUkiyo-e.orgやメトロポリタンがよく使われるのも、要はそれっていう。ポータルが待望されてる、日本版Europeanaが待望されているという。
 これもやはり日本のユーザにとっても同じ問題ではありますが。

 日本のデジタルアーカイブでその”ポータル”的な存在として知られているのが、NDLサーチさん、NihuINTさん、国文研さん、立命館ARCさん(浮世絵ポータルデータベース49万点(!)。古典籍ポータルデータベース8.7万点)、あたりでしょうか。CiNiiも入れていいですか、”デジタルアーカイブ”や”ポータル”の定義を取り立てて気にしなければいいですよね。

 ポータル同士の連携の例。

・CiNii Books、国立国会図書館デジタルコレクションとの連携機能を追加
Posted 2016年12月1日
http://current.ndl.go.jp/node/33024
「国立国会図書館デジタルコレクションの電子リソースのうちCiNii Booksとひも付けられた約76万件のデータへのリンクがCiNii Booksの検索結果画面に表示される」

・CiNii Books、HathiTrust Digital Libraryとの連携機能を追加
Posted 2016年11月4日
http://current.ndl.go.jp/node/32867
「HathiTrust Digital Libraryの電子リソースのうち、CiNii Booksと紐づけられた約28万件のデータへのリンクがCiNii Booksの検索結果画面に表示」

 それから、日中韓でポータル作ろうよ、ってまもなく(2017年9月)公開予定であるという国際連携なポータルがこれですと。

・E1885 - 第6回日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)会議<報告>
2017.02.09
http://current.ndl.go.jp/e1885
「メタデータ集約型の検索システムとして・・・3か国のデジタル化資料を統合的に検索可能とすることを目指している」「“CJK Digital Library”(β版)を2017年9月に正式公開する計画」

 ただ、これまでEuropeanaほどの決定打はなかった。
 というところへきて、いま現在具体的に検討が進められているのが、NDLサーチからの、ジャパンサーチ(仮)である、という感じです。

・デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会、実務者協議会及びメタデータのオープン化等検討ワーキンググループ(内閣府知的財産戦略本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/index.html
・「NDLサーチの歴史と今後」小澤 弘太
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/lff2016_forum_search1.pdf

 2015年から、この長い名前の実務者協議会で、まあものすごおおおくざっくり言えば「日本版Europeana」の構築の検討が進められているわけなんですが、まあ現実的な解として、NDLサーチが国内のデジタルアーカイブの統合ポータルサイトとしての役割をしてね、それを「ジャパンサーチ」と呼ぼうね、と。「世界に向けて我が国のメタデータを流通・発信」と、「多様な分野のコンテンツへのアクセス、所蔵情報をわかりやすく伝える」と、そして2020年がめどですよと。言うことなんで、あれですね、もう「できます」でいいんですよね多分。

 ただ、自分もここで何か話しろってお座敷がかかって、そのときに考えたことを言ったんですけど、

・「「野生のニッポンが飛び出してきた!」 -- デジタルアーカイブと海外の日本研究とをからめて考えたこと: egamiday 3」
http://egamiday3.seesaa.net/article/440674083.html

 海外のユーザが日本の資料にアクセスするということを考えたときに、「ここが日本のポータルです、だからここに来て下さい」って言って、それで客が来るかっていったらそうは来ないと思います。もちろんポータルないのは問題だし、あってほしいし、あったら来る人がいるにはいるだろうけど、それで来るのはやっぱり「わかってる人たち」であって、それだといまの状態とあんまかわんない。
 ひとつには、日本研究が退潮傾向とか日本経済と国際社会における存在感が低迷しつつあるとかジャパンパッシングだとかナッシングだとかの状態で、「ここが日本のポータルです」にそこまでの集客力があるとは思えない、それで、わーい日本だーっ、たのしーっ、って自分からわざわざそのサイトに足を運んでくれるフレンズは、世界の本当にごく一部の存在です。そこだけを相手にするの?という問題。
 もうひとつは逆に、日本資料・日本情報を必要としているユーザ(もしくはまだ必要という意識はないけど見つけたらうれしいと思ってもらえるかもしれない潜在的なユーザ)は、決して日本専門家だけではないし、日本リテラシーが高いわけでもないし、意識が日本に向いているわけですらない、他分野・他地域・他業種のユーザ、初学者・入門者、一般ユーザ、潜在的ユーザ、そういう人たちに届けようと思ったら、「ここに来い」って言って来るのを待ってても、来たくても行きづらいかもしくは来るつもりがないわけなので、こっちから向こうの視界内に届けていく、飛び込んでいかないとっていう。

 ポータルのデータを外にさらす。ユーザが目にするいつものところに送る。そのいつものところとは、Googleかもしれない、OCLC、Wikipedia、ウェブスケールディスカバリ、Amazon、各種SNSかもしれない、Europeanaその他の国際的なポータルかもしれない。そういうところに。

 たぶんジャパンサーチみたいなポータルを作るときって、技術的にそういう仕組みももちろん考えてはるんだろうとは思うんですけど、なんかその印象が薄かった印象があったので、念のためにそこ重視でお願いしときました。

 例えば、EuropeanaでJapanが4位とかHokusaiが6位とか言うじゃないですか。

・2013年にEuropeanaで最もよく検索された語の第4位に「Japan」
http://current.ndl.go.jp/node/25193
・2016年にEuropeanaでよく検索された語のランキング:第6位に“Hokusai”(葛飾北斎)
http://current.ndl.go.jp/node/33153

 じゃあ、Europeanaさんに平身低頭してどうかひとつとお願いして、Europeanaで何か検索したらその結果表示画面の横っちょに小さく「このキーワードでのジャパンサーチのヒット数は○件」って表示させてもらう、とかやったらいいんじゃないかっていう。

 これもJAL研修の提言で出てた話なんですけど、「Artstor」(http://www.artstor.org/)っていう美術教育のための国際的なポータルサイトがあって、大学さんとかで契約してると学生さんが検索して美術作品のイメージデータを見つけられるっていうシステムらしく、でもそこに載っている日本美術作品は日本の機関からの提供データじゃなくて大英博物館とかそういう海外の機関が所蔵する日本美術ばかり並んでるっていう話があって、届け先としてはそっちの方が先だなって、日本の美術作品を検索するときだけジャパンサーチのほうにわざわざ来いよ、っていうのはありえんよな、って思たです。

 ポータルから少しづつ離れていきますけど、そういうことをしてはるところの事例。

・JapanKnowledgeとJK BooksのメタデータをWorldCatで提供へ
Posted 2014年3月31日
http://current.ndl.go.jp/node/25797
「OCLCはネットアドバンス社と提携し、JapanKnowledge(ジャパンナレッジ)とJK Books(ジャパンナレッジ電子書籍プラットフォーム)のメタデータをWorld Catに追加する」「メタデータは、3月末にリリースされる、“WorldCat Discovery Services”で利用できるようになる」

・全国遺跡報告総覧、ProQuest社のディスカバリサービスSummonに対応
Posted 2015年9月8日
http://current.ndl.go.jp/node/29385

・CiNii Books、全国遺跡報告総覧とデータ連携開始
Posted 2016年3月23日
http://current.ndl.go.jp/node/31083

・東京文化財研究所、展覧会カタログ情報をOCLCで提供 (2016年10月)
「第7回美術図書館の国際会議(7th International Conference of Art Libraries)への参加」
http://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/240626.html
「東京文化財研究所は、本年度このOCLCに、日本で開催された展覧会の図録に掲載される論文情報を提供することになっており、来年度にはこうした当研究所のもつ情報が世界最大の図書館共同目録「WorldCat」や、OCLCをパートナーとする「Art Discovery Group Catalogue」で検索することができるようになります」

・奈良文化財研究所、全国遺跡報告総覧とWorldCatのデータ連携開始 (2017年2月)
https://www.nabunken.go.jp/nabunkenblog/2017/02/worldcat.html
OCLCのセントラルインデクスに奈文研がデータを提供して、WorldCatで全国遺跡報告総覧の検索・リンクができる。
「WorldCatの検索結果画面から奈良文化財研究所の全国遺跡報告総覧に画面遷移し、収録する発掘調査報告書の PDF をダウンロードできる」
(「「全国遺跡報告総覧」は、埋蔵文化財の発掘調査報告書を全文電子化して、インターネット上で検索・閲覧できるようにした“電子書庫”です。「総覧」は、全国遺跡資料リポジトリ・プロジェクトによって構築された遺跡資料リポジトリ・システムとコンテンツを国立文化財機構 奈良文化財研究所が引き継ぎ、運用しているものです」)

 最後の2つ、東文研と奈文研のOCLCとの連携の話なんかは、もっと大騒ぎに評価されてもいいのになって思いますね。best practice行きとして、うちとこもがんばらせていただきます。この流れ、来い、っていう。

 最後に。
 ”在外日本資料”と”ポータル”を絡めて言うと、日本資料のポータルがあれば、海外にある日本資料を日本のユーザが探しやすく/気づきやすくなる、という利点もあるわけです。いまだとそれをわざわざそのサイトかあるいは海外のポータルに探しにいかなきゃいけないんだけど、日本のふつーのユーザが日本資料探すのに海外サイトに行ってみようって思うかというと、それはなかなかないだろう、でも日本資料ポータルがあれば、在外日本資料がそういうユーザの目にも触れるようになる。ていう。


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デジタルアーカイブ #2017年の本棚の中のニッポン

 と言いつつ、デジタルアーカイブの問題は全般的にひろく影響する話なので、各論で追々、むしろこのような単体の項目で触れるようなことはごく少ない感じ。

 日本のデジタルアーカイブについて海外の日本研究関係者からいつも定番のように指摘されるのが、足りていない、わかりにくい、見つけにくい、たくさんあってあちこちに散らばっている、”ポータル”がない、”英語”がない、オープンでない(海外からアクセスできない)、云々。
その指摘のいくつかは、項をあらためつつ。

 例えばEuropeanaの検索語ランキング記事を、どこまで真に受けるかは別として、こういうのを見る限り「需要はある」はずなので。

・2013年にEuropeanaで最もよく検索された語の第4位に「Japan」
http://current.ndl.go.jp/node/25193
・2016年にEuropeanaでよく検索された語のランキング:第6位に“Hokusai”(葛飾北斎)
http://current.ndl.go.jp/node/33153

 それでもこれらの指摘っていうのは海外のユーザがどうっていうよりは、そもそも我々日本側だって不満は同じことのはず。
 例えば、海外から日本研究関係者に来てもらって”研修”をする、というようなことをやってるところに立ち会うことがよくありますが、その時にみなさんがうれしそうに、「日本に来て、話をきいて、はじめて、こんな素晴らしい役に立つデジタルアーカイブがある、っていうことを知った」っておっしゃるんだけど、それどうなんだろう、という話ですよね。なぜいままで知られてなかったんだと。
一方で日本側には、デジタルアーカイブの紹介はもういつもやってるはずなので、これ以上何を話したらいいかわからない、と悩む方もいらっしゃる。

 そういう意味では、Googleでヒットさせるという可視化はもちろんなんだけど、それだけではなく、生の資料そのものをアクセス可能化することに加えて、それがどういう資料で、どういう意味を持ってて、どういうシーンで意味を持つ・使えるものなのか、っていうのを解説・解題・キュレーションしないとなっていう。

・デジタルアーカイブの「Googleやさしい」は、実際どこまで効果ありなのか: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/446484829.html

 それは、NDL研修受講者の人が「授業で使えるデジタルアーカイブがあるとわかったので、日本関係の授業で教えるときに使う」とおっしゃったのとか、同じく「研究者の人がなぜこれを作ったのかやこれを使うとこういうことがわかると説明してくれた」とおっしゃったのとか、JALアンサーシンポでフロアの方が「かみくだいたかたちでの発信が必要」とおっしゃったのとか、情報メディア学会のパネルで紹介された下記のシリーズ、

・“それいけ! デジコレ探索部「第1回 知られざる桃太郎」”. ITmedia eBook USER. http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1406/20/news037.html.

 は、残念ながら終わっちゃってますけど、最近首都の大学のデジタルアーカイブな先生が、古写真を色づけするのを紹介するツイートを継続的にやってはって、

・「1945年3月19日の呉空襲。午前7時半ごろ、米軍機から撮影された複数の写真を合成しパノラマ化したもの。ニューラルネットワークによる自動色付け。元写真はこちらから。」
https://twitter.com/hwtnv/status/828730315656998912

 資料の内容や魅力や意味を人の手や目や言葉を介して、初学者や学部学生のような立場の多くの人たちに向けて。こういうのが、ていうのがこういうのこそ、そもそも我々がこれまでやってきたことだし、やるべきことをちゃんとやるということじゃないかな、って思たです。

 あと、がらっと話変わって、NDLの図書館向けデジタル送信サービスが海外向けにサービスできてないっていうのは、ちょっとづつ前進しつつあるらしい、っていうのが2017年2月末日現在の状態です。

・2/24開催「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(案)」でNDL送信サービスに「外国の施設を追加する法改正が求められる」と言及。
http://www.marumo.ne.jp/junk/culture_copyright_law_and_basic/2017_02_24_06th/04_doc02.pdf

 その他の問題は、各論で追々。

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2017年02月28日

在外日本資料 #2017年の本棚の中のニッポン


 在外資料、つまり、海外に所在する日本関係資料です。

 2016年夏、大坂の陣に関する記述がオランダのハーグ国立文書館所蔵の資料にあったと、それを日文研の研究者が見つけた(?)と、新聞等で報じられました。

「「秀頼に落とされ死んだ」大坂の陣、オランダで新文書」
朝日新聞デジタル 2016年9月21日
http://www.asahi.com/articles/ASJ9N5RT9J9NPTFC01H.html

 あまりセンセーショナルにとりあげられるのもどうかと思うようなあれではあったし、内容の検証はもちろん別問題なのですが、まあ話題にはなったということで。

 で、これが見つかった云々というのがどういう文脈の成果かというと。
 もともと、人間文化研究機構が「日本関連在外資料調査研究事業」というものをやっていました。
https://www.nihu.jp/ja/research/zaigai
https://www.nihu.jp/sites/default/files/plan.pdf
日本関連の在外資料を国際的な共同研究として、調査研究しましょう、という感じのやつです。できれば、ありがちな個別ばらばらにやるのではなく、複数機関の複数研究者が、共同で、複数のプロジェクトを同時並行的にがんばってやる、という形式の事業です。人間文化研究機構からだけじゃなくて、東京大学史料編纂所、東洋文化研究所、京都大学人文科学研究所、大分県立先哲史料館みたいなところも一緒にやらはるし、もちろん在外資料だから海外の各地各機関とも共同でやります。
 っていうのを、まずはH22年度からH27年度までやってました。

 そのH28年度からH33年度版が、人間文化研究機構の、ネットワーク型基幹研究プロジェクト「日本関連在外資料調査研究・活用事業」という位置づけでやってるやつです。
http://www.nihu.jp/sites/default/files/MasterPlan_Japan-relatedDocuments_CollaborativeUtilization.pdf

 このプロジェクトが4つあって、
・ハーグ国立文書館所蔵平戸オランダ商館文書調査研究・活用
・ヨーロッパにおける19世紀日本関連在外資料調査研究・活用―日本文化発信にむけた国際連携のモデル構築―
・バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ収集文書調査研究・保存・活用
・北米における日本関連在外資料調査研究・活用 ―言語生活史研究に基づいた近現代の在外資料論の構築―

 そのうちの1番目のやつが、さっきの大坂の陣関係のやつですね。

・「ハーグ国立文書館所蔵平戸オランダ商館文書調査研究・活用」プロジェクト
http://www.nihu.jp/ja/research/pj-holland

ハーグにある平戸オランダ商館文書を、ライデン大学の東インド会社が専門の先生と、日文研の日本関係洋書が専門の先生が、共同で研究して、っていうのをまあ言うともう20年近くじっくり関係持って”コラボ”でやってきてたのの、どこかのタイミングで見つかったどれかの資料のどこかの記述が、まあああいうふうに取り上げられましたな、真田丸効果で、っていう感じです。

 ところで、国文研さんがやってるバチカン・マレガ文庫の調査も、もともともっと前からやってはいたはずですけども、いまの事業としてはこれも同じく「日本関連在外資料調査研究・活用事業」に入ってるやつです。国文研×バチカン、もここの文脈ですね。

 それからイェール大学、2016年にwebサイトができ、目録と研究論文が合わさった書籍が出版され、カレントアウェアネスで紹介された、「イェール大学所蔵日本関連資料調査プロジェクト」、これも、人間文化研究機構「日本関連在外資料調査研究事業」一環であり、H22-27の期間で、東京大学史料編纂所さんと米側関係者・機関との”コラボ”で取り組まれたやつです。

・イェール大学所蔵日本関連資料調査プロジェクト
http://www.hi.u-tokyo.ac.jp/exchange/yale/top_page/index.html
・CA1885 - イェール大学図書館の日本資料コレクションに関する最近の研究動向 / 松谷有美子(2016年12月20日)
http://current.ndl.go.jp/ca1885
・『イェール大学所蔵日本関連資料 : 研究と目録』(2016刊)

 イェール×日本と言えば朝河貫一ですが、彼が収集した日本資料コレクションを、”コラボ”で共同調査・研究し、書簡をデジタル化し(”デジタル化”であり”デジタルヒューマニティーズ”であり)、学生教育に活用し、webサイトで情報編纂&情報発信した、ていう。
 ただしこれもやはり、人間文化研究機構の事業開始より以前(2006年から)に、ずっと関係持ってやってはったやつです。張交屏風の修復とかやってはった(2012年7月返還)し、2008年には日本資料調査に関するワークショップをやってはる。

 さて、このイェールのやつもそうだから、というつながりで、「海外にある日本資料のデジタル化が進んでいる」というネタを並べてみます。最近の。管見の範囲内で、ていうやつです。

・イェール大学図書館所蔵、朝河貫一書簡のデジタル化プロジェクト。
CA1885 - イェール大学図書館の日本資料コレクションに関する最近の研究動向 / 松谷有美子(2016年12月20日)
http://current.ndl.go.jp/ca1885

・CA1859 - 事例報告:北米の大学における日本古典籍の電子化事業 / 鈴木紗江子
2015年12月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1859
-ワシントン大学で、「Take Me There」という、日本古地図を中心とした、ハイブリッド展示(リアル+デジタル)。
-UBCで、モストウ博士による小倉百人一首に関する和本・カルタ史料のデジタルデータベース(One Hundred Poets Digital Collection)

・「米・図書館情報資源振興財団、「隠れた特別コレクションのデジタル化助成プログラム」の助成プロジェクトを発表:カリフォルニア大学バークレー校東アジア図書館による日本の古地図デジタル化プロジェクトも採択」(カレントアウェアネス 2017年1月5日)
http://current.ndl.go.jp/node/33202
「カリフォルニア大学バークレー校C. V. スター東アジア図書館による、1600年代から1923年までの日本の古地図(Japanese Historical Maps)約1,500点のデジタル化プロジェクト」

・「米・スタンフォード大学図書館、デジタル化した地図へのリンク機能を持つ索引図をオンラインで公開:最初の対象コレクションに外邦図」(カレントアウェアネス 2016年9月28日)
http://current.ndl.go.jp/node/32623
・スタンフォード大学マップコレクションでは外邦図を多数所蔵している。約10000枚、1940年代後半-1950年代前半。外邦図シンポジウムが大阪大学の小林先生のところの企画で2011年10月に開催された。(http://www.let.osaka-u.ac.jp/geography/gaihouzu/newsletter9/
・「離島を含む全国すみずみまで網羅、約100年前の日本の古地図をスタンフォード大が公開中」(INTERNET Watch 2016年8月8日)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1014219.html
「「五万分一地形圖」と題されたこの地図は、明治20年代から昭和10年頃にかけて大日本帝國陸地測量部が作成、修正したもの」
Japan 1:50,000
http://stanford.maps.arcgis.com/apps/SimpleViewer/index.html?appid=733446cc5a314ddf85c59ecc10321b41

・プランゲ文庫
-国立国会図書館デジタル化資料にプランゲ文庫が追加―約3,400点の図書を館内提供
Posted 2013年3月21日
http://current.ndl.go.jp/node/23127
-国立国会図書館デジタルコレクションに、米国戦略爆撃調査団文書、極東軍文書、プランゲ文庫等の資料を追加
Posted 2014年3月12日
http://current.ndl.go.jp/node/25684
-国立国会図書館デジタルコレクションに、GHQ/SCAP文書、プランゲ文庫等約14,200点を追加
Posted 2015年3月17日
http://current.ndl.go.jp/node/28169

 もちろんこれは氷山の一角で、浮世絵なんかは山ほど電子化されてるでしょう、それは、ukiyo-e.orgとかメトロポリタン美術館とかEuropeanaでもたくさんヒットしてるのがすぐ見てとれる。
 というふうに見ていくと、種類や場合によっては、在外日本資料の方が在日日本資料よりも電子化進んでるだろう、っていうような逆転現象も一部起こりつつあるわけです。なんていうかな、これが10年前とかだとどの欧米日本資料図書館に行っても「資料の電子化は進んでるもののそれは西洋文献の方が優先で、日本資料なんかまだぜんぜんあとまわし」みたいな話がメインで聞かれてたんですが、ああ、もうそのフェーズはとっくに経過したんだな、というようなある種の感慨深さがあります。いや、感慨深さってる場合じゃないんですけど。
 そしてこれら在外日本資料の電子化については、立命館アートリサーチセンターさんやいま綺羅星のごとき国文研さんこそが、というあれなんですが、これについては別途項をあらためて、という感じで。

 このペースだと〆切までに終わらんなっていうあれなんで、もっとさくさく、おしゃべり(笑)はほどほどに。
posted by egamiday3 at 21:29| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする