2017年03月01日

デジタルアーカイブ #2017年の本棚の中のニッポン

 と言いつつ、デジタルアーカイブの問題は全般的にひろく影響する話なので、各論で追々、むしろこのような単体の項目で触れるようなことはごく少ない感じ。

 日本のデジタルアーカイブについて海外の日本研究関係者からいつも定番のように指摘されるのが、足りていない、わかりにくい、見つけにくい、たくさんあってあちこちに散らばっている、”ポータル”がない、”英語”がない、オープンでない(海外からアクセスできない)、云々。
その指摘のいくつかは、項をあらためつつ。

 例えばEuropeanaの検索語ランキング記事を、どこまで真に受けるかは別として、こういうのを見る限り「需要はある」はずなので。

・2013年にEuropeanaで最もよく検索された語の第4位に「Japan」
http://current.ndl.go.jp/node/25193
・2016年にEuropeanaでよく検索された語のランキング:第6位に“Hokusai”(葛飾北斎)
http://current.ndl.go.jp/node/33153

 それでもこれらの指摘っていうのは海外のユーザがどうっていうよりは、そもそも我々日本側だって不満は同じことのはず。
 例えば、海外から日本研究関係者に来てもらって”研修”をする、というようなことをやってるところに立ち会うことがよくありますが、その時にみなさんがうれしそうに、「日本に来て、話をきいて、はじめて、こんな素晴らしい役に立つデジタルアーカイブがある、っていうことを知った」っておっしゃるんだけど、それどうなんだろう、という話ですよね。なぜいままで知られてなかったんだと。
一方で日本側には、デジタルアーカイブの紹介はもういつもやってるはずなので、これ以上何を話したらいいかわからない、と悩む方もいらっしゃる。

 そういう意味では、Googleでヒットさせるという可視化はもちろんなんだけど、それだけではなく、生の資料そのものをアクセス可能化することに加えて、それがどういう資料で、どういう意味を持ってて、どういうシーンで意味を持つ・使えるものなのか、っていうのを解説・解題・キュレーションしないとなっていう。

・デジタルアーカイブの「Googleやさしい」は、実際どこまで効果ありなのか: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/446484829.html

 それは、NDL研修受講者の人が「授業で使えるデジタルアーカイブがあるとわかったので、日本関係の授業で教えるときに使う」とおっしゃったのとか、同じく「研究者の人がなぜこれを作ったのかやこれを使うとこういうことがわかると説明してくれた」とおっしゃったのとか、JALアンサーシンポでフロアの方が「かみくだいたかたちでの発信が必要」とおっしゃったのとか、情報メディア学会のパネルで紹介された下記のシリーズ、

・“それいけ! デジコレ探索部「第1回 知られざる桃太郎」”. ITmedia eBook USER. http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1406/20/news037.html.

 は、残念ながら終わっちゃってますけど、最近首都の大学のデジタルアーカイブな先生が、古写真を色づけするのを紹介するツイートを継続的にやってはって、

・「1945年3月19日の呉空襲。午前7時半ごろ、米軍機から撮影された複数の写真を合成しパノラマ化したもの。ニューラルネットワークによる自動色付け。元写真はこちらから。」
https://twitter.com/hwtnv/status/828730315656998912

 資料の内容や魅力や意味を人の手や目や言葉を介して、初学者や学部学生のような立場の多くの人たちに向けて。こういうのが、ていうのがこういうのこそ、そもそも我々がこれまでやってきたことだし、やるべきことをちゃんとやるということじゃないかな、って思たです。

 あと、がらっと話変わって、NDLの図書館向けデジタル送信サービスが海外向けにサービスできてないっていうのは、ちょっとづつ前進しつつあるらしい、っていうのが2017年2月末日現在の状態です。

・2/24開催「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(案)」でNDL送信サービスに「外国の施設を追加する法改正が求められる」と言及。
http://www.marumo.ne.jp/junk/culture_copyright_law_and_basic/2017_02_24_06th/04_doc02.pdf

 その他の問題は、各論で追々。

posted by egamiday3 at 08:02| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月28日

在外日本資料 #2017年の本棚の中のニッポン


 在外資料、つまり、海外に所在する日本関係資料です。

 2016年夏、大坂の陣に関する記述がオランダのハーグ国立文書館所蔵の資料にあったと、それを日文研の研究者が見つけた(?)と、新聞等で報じられました。

「「秀頼に落とされ死んだ」大坂の陣、オランダで新文書」
朝日新聞デジタル 2016年9月21日
http://www.asahi.com/articles/ASJ9N5RT9J9NPTFC01H.html

 あまりセンセーショナルにとりあげられるのもどうかと思うようなあれではあったし、内容の検証はもちろん別問題なのですが、まあ話題にはなったということで。

 で、これが見つかった云々というのがどういう文脈の成果かというと。
 もともと、人間文化研究機構が「日本関連在外資料調査研究事業」というものをやっていました。
https://www.nihu.jp/ja/research/zaigai
https://www.nihu.jp/sites/default/files/plan.pdf
日本関連の在外資料を国際的な共同研究として、調査研究しましょう、という感じのやつです。できれば、ありがちな個別ばらばらにやるのではなく、複数機関の複数研究者が、共同で、複数のプロジェクトを同時並行的にがんばってやる、という形式の事業です。人間文化研究機構からだけじゃなくて、東京大学史料編纂所、東洋文化研究所、京都大学人文科学研究所、大分県立先哲史料館みたいなところも一緒にやらはるし、もちろん在外資料だから海外の各地各機関とも共同でやります。
 っていうのを、まずはH22年度からH27年度までやってました。

 そのH28年度からH33年度版が、人間文化研究機構の、ネットワーク型基幹研究プロジェクト「日本関連在外資料調査研究・活用事業」という位置づけでやってるやつです。
http://www.nihu.jp/sites/default/files/MasterPlan_Japan-relatedDocuments_CollaborativeUtilization.pdf

 このプロジェクトが4つあって、
・ハーグ国立文書館所蔵平戸オランダ商館文書調査研究・活用
・ヨーロッパにおける19世紀日本関連在外資料調査研究・活用―日本文化発信にむけた国際連携のモデル構築―
・バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ収集文書調査研究・保存・活用
・北米における日本関連在外資料調査研究・活用 ―言語生活史研究に基づいた近現代の在外資料論の構築―

 そのうちの1番目のやつが、さっきの大坂の陣関係のやつですね。

・「ハーグ国立文書館所蔵平戸オランダ商館文書調査研究・活用」プロジェクト
http://www.nihu.jp/ja/research/pj-holland

ハーグにある平戸オランダ商館文書を、ライデン大学の東インド会社が専門の先生と、日文研の日本関係洋書が専門の先生が、共同で研究して、っていうのをまあ言うともう20年近くじっくり関係持って”コラボ”でやってきてたのの、どこかのタイミングで見つかったどれかの資料のどこかの記述が、まあああいうふうに取り上げられましたな、真田丸効果で、っていう感じです。

 ところで、国文研さんがやってるバチカン・マレガ文庫の調査も、もともともっと前からやってはいたはずですけども、いまの事業としてはこれも同じく「日本関連在外資料調査研究・活用事業」に入ってるやつです。国文研×バチカン、もここの文脈ですね。

 それからイェール大学、2016年にwebサイトができ、目録と研究論文が合わさった書籍が出版され、カレントアウェアネスで紹介された、「イェール大学所蔵日本関連資料調査プロジェクト」、これも、人間文化研究機構「日本関連在外資料調査研究事業」一環であり、H22-27の期間で、東京大学史料編纂所さんと米側関係者・機関との”コラボ”で取り組まれたやつです。

・イェール大学所蔵日本関連資料調査プロジェクト
http://www.hi.u-tokyo.ac.jp/exchange/yale/top_page/index.html
・CA1885 - イェール大学図書館の日本資料コレクションに関する最近の研究動向 / 松谷有美子(2016年12月20日)
http://current.ndl.go.jp/ca1885
・『イェール大学所蔵日本関連資料 : 研究と目録』(2016刊)

 イェール×日本と言えば朝河貫一ですが、彼が収集した日本資料コレクションを、”コラボ”で共同調査・研究し、書簡をデジタル化し(”デジタル化”であり”デジタルヒューマニティーズ”であり)、学生教育に活用し、webサイトで情報編纂&情報発信した、ていう。
 ただしこれもやはり、人間文化研究機構の事業開始より以前(2006年から)に、ずっと関係持ってやってはったやつです。張交屏風の修復とかやってはった(2012年7月返還)し、2008年には日本資料調査に関するワークショップをやってはる。

 さて、このイェールのやつもそうだから、というつながりで、「海外にある日本資料のデジタル化が進んでいる」というネタを並べてみます。最近の。管見の範囲内で、ていうやつです。

・イェール大学図書館所蔵、朝河貫一書簡のデジタル化プロジェクト。
CA1885 - イェール大学図書館の日本資料コレクションに関する最近の研究動向 / 松谷有美子(2016年12月20日)
http://current.ndl.go.jp/ca1885

・CA1859 - 事例報告:北米の大学における日本古典籍の電子化事業 / 鈴木紗江子
2015年12月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1859
-ワシントン大学で、「Take Me There」という、日本古地図を中心とした、ハイブリッド展示(リアル+デジタル)。
-UBCで、モストウ博士による小倉百人一首に関する和本・カルタ史料のデジタルデータベース(One Hundred Poets Digital Collection)

・「米・図書館情報資源振興財団、「隠れた特別コレクションのデジタル化助成プログラム」の助成プロジェクトを発表:カリフォルニア大学バークレー校東アジア図書館による日本の古地図デジタル化プロジェクトも採択」(カレントアウェアネス 2017年1月5日)
http://current.ndl.go.jp/node/33202
「カリフォルニア大学バークレー校C. V. スター東アジア図書館による、1600年代から1923年までの日本の古地図(Japanese Historical Maps)約1,500点のデジタル化プロジェクト」

・「米・スタンフォード大学図書館、デジタル化した地図へのリンク機能を持つ索引図をオンラインで公開:最初の対象コレクションに外邦図」(カレントアウェアネス 2016年9月28日)
http://current.ndl.go.jp/node/32623
・スタンフォード大学マップコレクションでは外邦図を多数所蔵している。約10000枚、1940年代後半-1950年代前半。外邦図シンポジウムが大阪大学の小林先生のところの企画で2011年10月に開催された。(http://www.let.osaka-u.ac.jp/geography/gaihouzu/newsletter9/
・「離島を含む全国すみずみまで網羅、約100年前の日本の古地図をスタンフォード大が公開中」(INTERNET Watch 2016年8月8日)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1014219.html
「「五万分一地形圖」と題されたこの地図は、明治20年代から昭和10年頃にかけて大日本帝國陸地測量部が作成、修正したもの」
Japan 1:50,000
http://stanford.maps.arcgis.com/apps/SimpleViewer/index.html?appid=733446cc5a314ddf85c59ecc10321b41

・プランゲ文庫
-国立国会図書館デジタル化資料にプランゲ文庫が追加―約3,400点の図書を館内提供
Posted 2013年3月21日
http://current.ndl.go.jp/node/23127
-国立国会図書館デジタルコレクションに、米国戦略爆撃調査団文書、極東軍文書、プランゲ文庫等の資料を追加
Posted 2014年3月12日
http://current.ndl.go.jp/node/25684
-国立国会図書館デジタルコレクションに、GHQ/SCAP文書、プランゲ文庫等約14,200点を追加
Posted 2015年3月17日
http://current.ndl.go.jp/node/28169

 もちろんこれは氷山の一角で、浮世絵なんかは山ほど電子化されてるでしょう、それは、ukiyo-e.orgとかメトロポリタン美術館とかEuropeanaでもたくさんヒットしてるのがすぐ見てとれる。
 というふうに見ていくと、種類や場合によっては、在外日本資料の方が在日日本資料よりも電子化進んでるだろう、っていうような逆転現象も一部起こりつつあるわけです。なんていうかな、これが10年前とかだとどの欧米日本資料図書館に行っても「資料の電子化は進んでるもののそれは西洋文献の方が優先で、日本資料なんかまだぜんぜんあとまわし」みたいな話がメインで聞かれてたんですが、ああ、もうそのフェーズはとっくに経過したんだな、というようなある種の感慨深さがあります。いや、感慨深さってる場合じゃないんですけど。
 そしてこれら在外日本資料の電子化については、立命館アートリサーチセンターさんやいま綺羅星のごとき国文研さんこそが、というあれなんですが、これについては別途項をあらためて、という感じで。

 このペースだと〆切までに終わらんなっていうあれなんで、もっとさくさく、おしゃべり(笑)はほどほどに。
posted by egamiday3 at 21:29| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

近年の関連文献その他 #2017年の本棚の中のニッポン

 近年の関連文献その他で、総記的なのの、ざっくりした列挙。

 まず、最近の関連文献で、まとまったもの。

・・「(特集)外国から見た日本の専門図書館」. 『専門図書館』. 2014.11, 268.
・各国・各大学の日本研究・資料・図書館の様子、日本の学術図書館・専門図書館に望むことなど。
・イズミ・タイトラー. 「英国・欧州の日本研究図書館との関わりにおいて」. p.2-7. (イギリス・オックスフォード大学ボドリアン図書館附属日本研究図書館)
・バゼル山本登紀子. 「海外から見た日本の専門図書館 : 米国からも利用させてください。訪問を終えて思うこと」. p.8-14. (アメリカ・ハワイ大学マノア校図書館アジアコレクション部)
・マグヌスセン矢部直美. 「オスロ大学図書館より小規模国での日本学東アジア学支援」. p.15-21. (オスロ大学人文社会学図書館)
・蓮沼龍子. 「日本情報提供の最前線 : ドイツの日本専門図書館からの報告」. p.22-27. (国際交流基金ケルン日本文化会館図書館)

・・牧野泰子. 『日本古書通信』.
・2015年から2016年にかけて、元プリンストン大学日本研究司書の牧野泰子氏が記事を掲載。およそ半世紀にわたるアメリカでの日本研究司書としての活動の歴史をふりかえる。福田なをみ、甲斐美和ら日本研究司書の回想、NCCや日本研究司書研修開始時の様子など、アメリカにおける日本研究図書館と司書の歴史がわかる。
・「アメリカ図書館界に足跡を残した思い出の人々」. 2015.9, 80(9), p.2-5.
・「私が出会った在米日本語稀覯書たち」. 2015.11, 80(11), p.12-13.
・「私の駆け出し時代からテクニカルプロセス分科会時代まで」. 2015.12, 80(12), p.11-13.
・「北米全国日本雑誌総合目録作成と在米日本関係担当司書日本図書館視察旅行など」. 2016.1, 81(1), p.14-15.
・「フーヴァー会議前後」. 2016.2, 81(2), p.32-34.
・「ジュニアライブラリアンの為のワークショップとパブリックサーヴィス委員会結成まで」. 2016.3, 81(3), p.24-25.
・「日本研究・京都会議」. 2016.4, 81(4), p.20-22.
・「日本研究上級司書研修」. 2016.6, 81(6), p.15-17.
・「アメリカでの司書生活を振り返って」. 2016.8, 81(8), p.13-15.

・・「(特集)海外における日本研究への支援と図書館」. 『国立国会図書館月報』. 2016, 664/665.
・江上敏哲. 「「海外のユーザに日本資料・情報を届ける」ということ」. p.6-9.
・マルラ俊江. 「今なぜ、インターライブラリー・ローンなのか : 国立国会図書館主催「海外日本研究司書研修」に参加して」. p.10-14.
・総務部支部図書館・協力課. 「国立国会図書館の日本研究支援」. p.15-17.
・関西館図書館協力課. 「日本研究司書を支える研修の取り組み」. p.18-20.
・浜田久美子. 「海外の日本研究を知る : 英国・ドイツでの日本研究司書へのレファレンス研修を通じて」. p.21-24.


 次に、カレントアウェアネス&Eに掲載の、関連記事。

E1558 - 2014年CEAL年次大会・NCC公開会議<報告>
2014.04.24
http://current.ndl.go.jp/e1558

E1643 - JALプロジェクト2014:公開ワークショップ<報告>
2015.01.22
http://current.ndl.go.jp/e1643

E1671 - 2015年CEAL年次大会・NCC公開会議<報告>
2015.04.23
http://current.ndl.go.jp/e1671

E1728 - 英国・ドイツでの日本研究司書へのレファレンス研修を終えて
2015.10.29
http://current.ndl.go.jp/e1728

E1734 - 第26回日本資料専門家欧州協会(EAJRS)年次大会<報告>
2015.11.12
http://current.ndl.go.jp/e1734

CA1859 - 事例報告:北米の大学における日本古典籍の電子化事業 / 鈴木紗江子
2015年12月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1859

E1862 - 第27回日本資料専門家欧州協会(EAJRS)年次大会<報告>
2016.11.24
http://current.ndl.go.jp/e1862

CA1885 - イェール大学図書館の日本資料コレクションに関する最近の研究動向 / 松谷有美子
2016年12月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1885

E1881 - JALプロジェクトから得た3度の「提言」を考える
2017.02.09
http://current.ndl.go.jp/e1881


 イベント類(@日本)で、主なもの、というか自分が行ったもの。

・第14回図書館総合展フォーラム「クールジャパンから リアルジャパンへ」
2012年11月20日
主催:北米日本研究資料調整協議会(NCC)/図書館総合展運営委員会
第1部:ライブラリアンと語るわたくしの日本研究(ドナルド・キーン、エイミー・ハインリック)
第2部:リアルジャパンを世界に発信!クールジャパンを超える世界的MLAコラボレーションは可能か(ヨコタ=カーター啓子「北米での日本研究資料へのアクセスマップ」ほか)

・平成24年度「日本専門家ワークショップ」
2013年2月19・20日
@国際文化会館/国立国会図書館
1日目「日本専門家育成戦略会議」(非公開)
2日目シンポジウム「なぜ今、海外日本研究支援か?」(公開)
http://current.ndl.go.jp/e1408

・第1回EAJS日本会議
2013年9月28・29日
@京都大学
・第2回EAJS日本会議
2016年9月24・25日
@神戸大学

・シンポジウム「海外の日本研究に対して日本の図書館は何ができるのか」
2014年1月30日
@国立国会図書館
基調講演:「海外の日本研究と日本の図書館の役割 −北米、及び東南アジアの事例から」和田敦彦(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
パネルディスカッション:「海外の日本研究のために日本の図書館は何ができるのか」ウィリー・ヴァンデワラ(ルーヴェン・カトリック大学教授、EAJRS)、江上敏哲(国際日本文化研究センター)、篠崎まゆみ(オーストラリア国立図書館)、ジョ・ヘリン(韓国国立中央図書館)、マクヴェイ山田久仁子氏(ハーバード燕京図書館、NCC)
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/knssympo.html

・「MALUI Talk in Kyoto」
2015年6月7日
主催:近畿地区MALUI
テーマは”日本情報の海外発信”
https://kinkimalui.wordpress.com/maluitalk2015/

・第17回図書館総合展2015「海を渡る日本の学術書」
2015年11月12日
http://www.libraryfair.jp/forum/2015/1885
https://youtu.be/0ofZIN8J5kE
基調講演 : 野口幸生 コロンビア大学C.V.スター東亞図書館
パネリスト : 永ア研宣 人文情報学研究所
パネリスト : 田中政司 ネットアドバンス ビジネスセンター センター長
パネリスト : 井村寿人 勁草書房 代表取締役社長
コーディネーター : 橋元博樹 東京大学出版会営業局長


posted by egamiday3 at 19:46| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月30日

デジタルアーカイブの「Googleやさしい」は、実際どこまで効果ありなのか


 「Googleで検索したらヒットするようにする」、というのが、実際どこまで有効なんだろう、っていうのを、「外像データベース」というある事例をダシにしてちょっと考えてみた、っていう話です。

 なにかしらのデータベースやデジタルアーカイブの在り方について、あるいはもっと手広く情報発信というものについて、「Google(サーチエンジン)で検索したら、それがヒットするようになっててほしい」っていうのは、よく言われますし、自分自身もよく言うというかGoogleが世に出る前からそうなっててほしい派っていうまあモノグサ太郎で、日本情報発信のあり方についての議論をしてるようなところ(http://egamiday3.seesaa.net/article/444864713.html)でも毎回のように繰り言ととして出るし、某先生が某サーチ作るときのユーザインタビューでも「もうそれは言われなくてもわかってるから言うな」って言ったっていう都市伝説があるくらいに、ユーザ側のニーズとしては定番中の定番的な要件でしょう、まあこれは異論はない。実際にCiNiiさんがGoogleで検索したらヒットするようになった前と後のグラフ、みたいなんを見てもそれはわかる。

 えっと、こういう、「Googleのようなサーチエンジンで検索したらヒットするような在り方」のことを「Googleフレンドリー」とでも言うのかなと思ってたんですけど、なんかそれググったらSEO対策的な文脈ばっかり出てくるので、とりあえずこの記事では極私的にかつ仮になんですけど、「Googleやさしい」って言いますね。

 ていう言葉の定義に自信ないくらいに技術面に暗いんですけど、どういうのだとGoogleやさしくてどういうのだとGoogleやさしくないのかと。
 Googleやさしくないのは、いわゆる深層ウェブ的なやつで、サーチエンジンのロボットくんが巡回して索引集めをしに行けなくて(あるいは手渡ししてくれなくて)、そのサイトのその検索窓からそこのルール通りの方法で検索しないと情報が探せなくて、個々のレコードに固定のURLが配給されてなくて、っていうの。
 Googleやさしいのは、たぶんその逆で、個々のレコードに固定のURLが配給されてて、それがロボットくんの巡回OKになってて、だからそのサイトのその検索窓からでなくても、Googleで検索したらそのレコードを表示させるページに書いてあるテキストデータや画像データがヒットしてくれて、しかも同じ検索語で検索すれば(おおむね)同じレコードが同じURL先のものとしてヒットしてくれる、っていうの。
 これで合ってるかしら?

 で、データベースやデジタルアーカイブがGoogleやさしいになれば、アクセスも増えるしそのデータも見つかりやすくなり使われやすくなる、っていうことは、直感としてはそうだろうなとわかるし、一ユーザの無邪気な意見としても腹の底から同意するし、実際にCiNiiさんとかその他大手のデータベース・デジタルアーカイブさんの例を見ても確かにそうだとわかるんですけど。
 じゃあどんな種類のどんな規模のどんな造りのものでも、Googleやさしいにしさえすれば、圧倒的圧巻的に夢のようにアクセスが増えてそれさえ実現すればもう情報発信的にがっぽがっぽでうっはうはなんだろうか、いやがっぽがっぽのうっはうはは無いにしても、Googleやさしい化は実際どこまで効果があるものなんだろうか、っていうなんかこう、得体の知れない不審のかたまりみたいなのも一方では冷静になって感じてて、あ、そういえば、そのことを考えるのにちょうどいいデータベースが身近にあったな、って思ったんです。

 うちとこに、「外像データベース」っていう、画像のデジタルアーカイブ的なのがあります。

 外像データベース
 http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/

 これが2015年7月にリニューアルして、GoogleやさしくないからGoogleやさしいになりました。
 Googleやさしいになったあと、これはまあ青汁なみの個人の感想ですが、あ、外像データベースの使われ具合が変わったな、と思いました。そのことをちょっと考えます。

 まずそもそも「外像データベース」とはなんぞや、なんですが。
 うちとこ、すなわち国際日本文化研究センターは「海外における日本研究を支援する」というのを大きな柱にしているセンターです。
 その図書館において、できるだけ収集しようと力を入れているのが、「外国語で/外国人によって書かれた、日本に関する/日本を研究した本」の類です。これをうちとこでは「外書」と呼びならわしています。その定義で言えば、イエズス会の宣教師が日本について書いた報告書も、ケンペルやシーボルトも、御雇外国人の見聞録も、貿易摩擦やクールジャパンや領土問題の研究書も、まあそうだなっていうあれなんですけど、それらのテキストをもって「海外において日本がどう見られ/研究されてきたか」を描く、という感じです。
 で、その中でも特に、幕末・明治期の外書、そのころ欧米地域から西洋人がたくさん日本に渡航してきて、いろんな人が旅行記・見聞録の類を書いて出版したりしてましたけど、そのころの外書の中に収録されている挿画、版画とかスケッチとか古写真の類でもって日本の風景や人物や事物・風俗がいろいろと描かれている、その外書内の挿画を「外像」=「外国人の目からとらえた日本の姿」として、ピックアップし、ひとつの大きな画像データベースにした、というのが「外像データベース」です。
 こんなのとか、こんなのです。
 http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GM128/item/005/
 http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GH095/item/048/
 http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GQ012/item/035/
 これが、海外において日本がこう見られていた姿である、ていう解釈で集積してってるわけですが、最終更新日が2009年でそれ以降は増えてないんですけど、いまのところ画像点数が約57000ですから、結構大きいといえば大きいと思います。なんせ書籍の挿画を端からピックアップしてって全部載せした、みたいな、ある種雑駁な、でもそれが6万弱の大量あるからこその味が出てる、ていう感じのやつだと思ってください。

 外像データベース誕生の発端は、1987年にさかのぼります。これは、うちとこの創設年でもあります。
 そもそもうちとこですが、「海外における日本研究を支援する」「外書を収集する」のほかに「映像(ビジュアル)資料を重点的に収集する」という柱も一本、創設時点からあったそうで、当時の新興機関としてよそさんにないユニークさを出していこう、それには、(当時は)まともな大学図書館が集めもしないような画像、写真、動画、音声あたりが攻め処じゃないか、的な。しかも、高尚なアートというよりは、生活風俗的な。あと、やたらと地図があるのもビジュアル志向の一環っていう。
 もうひとつが、そうやって収集したビジュアルな資料を「データベース化して公開していく」という方針。そんなのを創設初期から、ていうか1987年当時に構想してたんだなって思うと、なかなかグッと来るものがありますけど、まあでもたぶんその頃はよその大学さんや民博さんなんかもそんな気炎だったんでしょう。
 そんなこんなで、1992年に大型計算機が導入されて、からの、外像データベース構築なんですけど、具体的には1991年や1993年当時の下記のドキュメントがあります。
・白幡洋三郎,園田英弘,小野芳彦. 「外像(外国人の見た日本イメージ)のデータベース化」. 『人文科学とコンピュータ』. 1991, 9(5). 
・白幡洋三郎,小野芳彦. 「日文研における外像データベースの構築」. 『情報の科学と技術』. 1993, 43(7), p.628-636.
 これは細かい話になりますけど、一応記録として。外像として考えられるのは、(1)外書に掲載されている挿画(版画、スケッチ、古写真)。(2)外国人が撮影・収集した写真、ポスター、絵ハガキ類。(3)外国人が撮影・編集したフィルム、ビデオ。の3種。そのうちいまの「外像データベース」は、外書中の挿画を整理分類してデータベース化するという、(1)に焦点をあてたかたちになります。しかも(1)の中でも幕末・明治期、1850年代から1900年くらいまでにかけて(日本における写真の伝来・普及の時代)を対象にしていて、それらをさらに分類すると、(1)日本の絵、版画をそのまま載せたもの。(2)日本の絵、版画を模写・加工したもの。(3)外国人が直接日本を見てスケッチしたもの(ハイネ(ペリー艦隊の記録画家)、ワーグマン(絵入りロンドンニュース特派員)、モースなど)。(4)写真、または写真を銅版に彫ったもの(ベアトなど)。(5)まったくの想像を描いたもの。
 「(5)まったくの想像」は近世には結構多かったんだけど、幕末以降も無いわけじゃないし、むしろその想像や誤解にこそ、「海外における日本のイメージ」が描かれるというか探り出せるという。まあ、イメージ資料によるイメージ理解をはかろう、っていう趣旨の画像データベースだと思うんで、それはもちろん重要ですよねって思います。
 想像や誤解、という意味では「キャプション」も重要で、ありがたいことに書籍中の挿画っていうのには多くの場合このキャプションがついててくれてて、これが生写真資料の整理・理解のしにくさとはずいぶんと違うところなんだろうなっていうのは、このデータベースをブラウジングしててあらためておもいますね。そしてここにも相応の誤解やズレがあって、イメージ理解につながるという。

 というわけでこの外像データベースには、丁寧に「キャプション」がデータとして入力されてて、これがのちほど問題のひとつになります。

 さて、Googleやさしい・やさしくないの話に戻りますが。

 この「外像データベース」は、2015年まではGoogleやさしいではありませんでした。どれくらいやさしくなかったかというと、まず申請を送って利用登録をしなければならない、IDとパスワードを得てログインしなければならない、で、ログインしなきゃいけない時点でGoogleやさしくないんですけど、さらにその後のデータベースのつくりとしても、固定URLが付与されていませんでした。キーワード検索機能はありましたが、検索結果のページ固定URLがないと、めざすレコードを保存・共有する術がないから面倒と言えば面倒ですし、あとから同じもの探せないし。
 ちょうど、下記のデータベースが、リニューアル前の外像データベースと同じ感じです。
 http://www.nichibun.ac.jp/cgi-bin/00009.pl

 この外像データベースがなんやかんやあって、2015年7月にリニューアルされました。
 キーワードの検索窓の提供その他は従来通りではあるんですけど、まず登録制を廃してログインを不要にしました、カレントアウェアネスさんにはこれを以て「一般公開」と紹介されてます(http://current.ndl.go.jp/node/28941)。それから、個々のレコードに固定のURLが付いてくれるようになりました。
 で、結果としてGoogleやさしいになってる、っていう感じです。
 例えば、「濤川惣助」でGoogle画像検索すると、トップに下記の画像が並ぶ、という具合になってます。(あくまで当日・私の使ってるGoogleで、の話ですが)
 http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GM019/item/001/
 namikawa.png
 なぜ「濤川惣助」を例に出したかっていうと、最近赤坂の迎賓館関連でちょくちょくテレビ局さんからお呼びがかかってたから、というあれなんですけど。

 で、えーとなんだっけ、Googleやさしいにすればどれだけ効果あるのか、っていう話でしたね。
 どれだけ効果あるかないかを考えようっていう時に、じゃあ何を見ましょうかっていう話なんですけど。こういうとき、アクセス統計を見ましょうっていう話になりがちじゃないですか、でも、それってどうなんでしょう。だって、Googleやさしいになればアクセス件数なんかどう逆立ちしたって上がるに決まってるじゃないですか。でも、それをもって、はい効果ありました、よかったね、おほほ、っていうのが不審だよ、ていうところから始まってるわけで、それだと図書館の入館者数や貸出冊数でもってその効果を評価しますよ、って言ってるのとあんまかわんない。もっと具体的にというか質的寄りに、なるほど効果出てるなって思いたいわけで。
 でもじゃあ何を見るんですか、っていうときに、自分が現場で勤めてて、あれ、あきらかに外像データベースさんの扱われ具合が変わったなあ、と気付いたのが、「出版物・映像等への掲載件数」です。
 というわけで、それを数字にしてみましたっていう下記をごらんください。

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 ●外像データベース収録画像の出版物・映像等への掲載件数
 2013年  1件
 2014年  3件
 2015年  0件
 2016年 37件
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 書籍に、論文に、新聞やニュース映像に、あるいはパネル展示や試験問題やクイズ番組や池上さんだの林先生だの解説やに、うちとこの外像データベース内の画像が使われました、っていうその件数を年間ごとにまとめました。
 それが、2015年7月のリニューアルから半年経って、あたしはよくわかんないですけどGoogleさんとこのロボット君が巡回するのにそんくらいかかったっていうことなのかな、2016年以降こうなりました、と。うん、まあこれだけ際立ってりゃそりゃ気付くでしょう、っていう。年に1-2回あるかないかが、週に1回弱のペースになってますから。端的な言い方をすれば、おっ、外像データベースやっと見つかったな、という感じ。
 念のため、これは件数です、画像点数ではないです、画像点数にすると1件の掲載に10点とか100点とかなって数字がくちゃってなっちゃうので、件数にしました。あと、これはうちとこに「これこれに使います」って連絡が来たあるいは「マスターください」って申請が来た件数なので、もちろんそれなしで使ってる件については把握外ですが、把握している範囲の件数でも傾向を知るにはこれで充分じゃないかなって思います。

 というわけで、うん、効果出ました。
 Googleやさしいにすれば効果あるんですよ。

 って、思うじゃないですか。ていうかそういう話を某所で言おうと思ってこれ調べてたんですよ。

 ところがです。
 うちとこの画像データベースにもいろいろあって(数十が乱立してる、いまわりと界隈で叩かれがちなタイプのやつですが)、そのひとつに「古写真データベース」というのがあります。同じく幕末明治期のモノクロ写真に手彩色をしたタイプの古写真を、全部撮影してデータベース化しましたっていうやつ。

 古写真データベース
 db.nichibun.ac.jp/ja/d/KSA

 なんと見た目そっくりなこの古写真データベースも、実は外像データベースとほぼ同じタイミングで、2015年7月にリニューアル公開し、その結果GoogleやさしくないからGoogleやさしいになりました。黙っててごめんなさい、外像はソロじゃなくてコンビだったんです。R-1じゃなくてM-1です。
 じゃあ、その相方の古写真データベースもリニューアル後の掲載件数さぞかし増えたんでしょうね、って思うじゃないですか。

 実際はこちらです。

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 ●出版物・映像等への掲載件数
 2013年 外像: 1件 古写真: 10件
 2014年 外像: 3件 古写真: 13件
 2015年 外像: 0件 古写真: 10件
 2016年 外像: 37件 古写真: 16件
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 ・・・え、やだ、なにこれ怖い。
 古写真データベースについて言えば、Googleやさしいになる前もなった後も、月1かそれに毛が生えたくらいかな、っていうくらいでほぼ横ばいでしかないっていう。これは、Googleやさしい効果があり?なし?で言えば、うーん、「ありとは言えない」だな、っていう。
 これ見てどう言ったらいいんだろう、こう言ったらいいのかな。

 Googleやさしい化は効果が出る可能性がある。
 但し、Googleやさしい化さえすれば効果が出るというわけではない。


 じゃあ、一見コンビに見えてたこのふたつのデータベースの、いったい何がちがってたんだろう、てなるじゃないですか、別にどっちがボケでどっちがツッコミっていう役割持ってたわけじゃないから。ほぼ同じタイミングで、ほぼ同じ構造のwebサイトで、扱ってるコンテンツもだいたい同じ時代の似たような感じの資料で、そもそも個別のデータベースに分けてあること自体が不自然といえば不自然なくらいの、ぐりとぐらみたいな。
 でも、ぱっと見で、あきらかにわかる大きな違いがひとつあって。

外像データベースの例
http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GL001/item/099/
外像四条.png

古写真データベースの例
http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/KSA/info/YA058/item/042/
古写真四条.png

 メタデータというかディスクリプションのリッチさ、です。
 そりゃそうですよね、Googleやさしいになって何がヒットしてるかっていうと、別にデータベースのトップページが見つかりやすくなったからじゃない、固定URLを持つ個々のページのテキストデータがロボットくんに採取されてそれがダイレクトにヒットしてるわけだから、そこに書かれているメタデータやディスクリプションがリッチであればあるほどヒットしやすく見つかりやすくそして使われやすいのは、当然と言えば当然っていう。

 古写真データベースに収録されている古写真は、「横浜アルバム」と呼ばれるものを撮影しています。これは、幕末明治期のモノクロ写真に手彩色したものを、アルバム帖に貼り混ぜて、お土産として来日した西洋人なんかに売ってたっていうやつです。アルバムなんで、まず書名なんかありませんし書誌データはほぼ採られません。各写真のキャプションも、皆無か、あっても隅っこに極々小さく簡単なローマ字表記があるだけです。で、この古写真データベースを作成するときに、その極小なローマ字表記くらいしか入力できてない。一部頑張って、キャプション皆無なのに入力者が[ ]補記で「中禅寺湖?」とか書いてるのもあるんだけど、まあギリギリくらいな感じなので、実を言うとこのデータベースって残念ながら、基本探せないんですね。だからあたし自身もこのデータベースの画像に問い合わせあったときはめちゃめちゃ苦労してました、いまでこそ固定URL付いてくれてたからいいけど、それすらなかった時はそれこそ端から全枚見ていくぐらいの勢い。上の古写真データベースなんか、見てください、「YOJIO, KIOTO」としか書いてない。入力者が頑張って「YOJO, KYOTO」まで補記してくれてますけど、「YOJO」で、四条河原の川床の芸者の写真探してる人がここまでたどり着けるの奇跡でしかない。

 一方で外像データベースの方は、書籍に掲載されている挿画ですから、まず書名その他の収録書籍の書誌データがあり、なおかつ挿画にキャプションがついています。簡単なものもあれば、かなりがっつり書き込んでくれているものまである。先述のようにもちろん誤解や誤り含みではあるものの、これをデータベース作成時に丁寧に入力してあるわけです。しかも、ですが、この外像は「外書」、すなわち西洋の言語で書かれた書籍から採っていますから、書名もキャプションも当然英語なりの西洋言語なんですけど、このデータベースはその書名・キャプションをすべて和訳した上で日本語(翻訳)/英語(原語)の両方を入力してあるんですね。
 ですから、↓この人物画像も、原典には「S. Namikawa, inventor of cloisonne without wires」としか書いてないんですけど、日本人が日本語で「濤川惣助」や「無線七宝」でGoogle検索してめでたくヒットする、っていう。
 http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GM019/item/001/
 namikawa.png

 これは特にGoogleやさしい化した暁にはかなり効果抜群じゃないかって、思えるんですね。
 じゃあこう言いましょうか。
 リッチなメタデータは効果がある。

 いや、言いたいんですけど、私はこれはちょっと保留にしたいと思います。
 リッチなメタデータは効果が出る可能性がある、くらいに。

 ひとつには、これがわかんなくてしかもやばいんですけど、「海外からの利用・問い合わせがほとんどない」、ということです。
 海外の日本研究関係者の要望の定番には、Googleやさしい化と同等かそれ以上に、ローマ字・英文のメタデータを入れてくれ、というのがあります(再び、http://egamiday3.seesaa.net/article/444864713.html)。で、先述のように、かつ見ていただいてわかるように、外像データベースの原典書籍は洋書であり、採用した書名書誌もキャプションも英文その他の西洋言語です。だったらそれを見つけた海外の人から、出版物に掲載する旨の連絡、そうでなくても問い合わせなり来るんじゃないかって思うんんですけど、それが来ない。
 これ、地味に愕然というか途方に暮れますね、英文記述たっぷりのデータベースを、Google検索でヒットするようにして、結果、海外ユーザからの反応が来ない、っていう。どうしたらいいんだ、っていう。
 考えられる理由はいくつかあって、資料自体が必要とされてない(それ言ったらもう終わり)、連絡問い合わせなしで自由に使ってる(ならめでたい話ですが、実際にはあちらでは日本以上にその事前確認をつぶさにシビアにしはる習わしみたいなので、これも不審)、海外ユーザが使うGoogleの言語設定が影響してる(あーありそう)、のほかに、多分大きいのが、それについて問い合わせしようとする時にハードルが高い。そうですよね、連絡先見つけようと思ったらだいぶwebサイトうろうろしなきゃいけないので、日本リテラシーの高低がそこで影響するっていう。
 ってなると、海外ユーザへのケアや反応の受け取りまで考えるなら、単にGoogleやさしい化・英語化・ローマ字化してほっぽり出すだけではなくて、周辺環境の整備もしておかないといけない。
 ただこれは、国別アクセス統計なりとかと組み合わせて総合的に判断しないと、メタデータのリッチ化・英語化に効果があるのかないのかはまだ何とも言えないな、という感じなので、まだ保留です。

 もうひとつの保留の理由なんですけど、じゃあメタデータの貧弱なほうの古写真データベースはどうなんだっていう話で、数字を再掲しますけど。

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 ●出版物・映像等への掲載件数
 2013年 外像: 1件 古写真: 10件
 2014年 外像: 3件 古写真: 13件
 2015年 外像: 0件 古写真: 10件
 2016年 外像: 37件 古写真: 16件
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 Googleでヒットできるメタデータやディスクリプションが少ないから、Googleやさしい化しても利用増えない、これはわかります。ところが、そもそもじゃあ、メタデータも貧弱でGoogleやさしい化もしてなかった2015年以前から、古写真がコンスタントに掲載利用されてたのは、いったいどういう理由なんだ、っていう話です。Googleやさしいなんかしなくても10件程度は使われてるじゃん、っていう。
 これを今頃言うのはずるいかもですけど、外像データベースの収録点数が6万点近いのに比べて、古写真データベースは5500行かないくらい、10倍の差があるんで、言っちゃうと古写真データベースのほうがよっぽど使われてる説もあるんですよね、それってどういうあれなんだっていう。
 「その画像/資料の存在をどうやって知ったか」問題。

 これについては、数字で示すことできないんですけど、多分これだなって心当たりはあって、例えば外像データベースのほうについて、「これこれに掲載したいんです、使いたいんです」的な連絡が来るじゃないですか、その応対で電話口で話をしたりメールで軽くやりとりしたりしてると、あ、この人、Googleで適当に検索して見つけはったんやな、っていうのが言葉の端々からふんわりとわかるんですね。外像データベースというものがあってそこから入って見つけた、的なことでもなく、ましてやこれこれという19世紀西洋の書籍にそれが載ってるという文脈をわかってる風でもなく、ただただ、濤川惣助や中禅寺湖のようなキーワードだけでこの画像の単片にたどりついて、断片的に話してはるな、っていう。
 一方じゃあ古写真データベースの画像について問い合わせてくる人はどうかというと、だいたいにおいて「〇〇という本に載ってたこの画像を自分も使いたい」「ネットのこのページに載ってたのを見て知った」というパターンです。Googleヒットどころか、それがうちの古写真データベースというものに載ってるということすら知らず、全然別ルートとして、どこか別のところで具体的な何かしらの使われ方・紹介され方・文脈付与され方をされてるのを見て、そこに「国際日本文化研究センター所蔵」って書いてあったから、その存在をご存知になった、という。

 なので、かどうか、年間10数件ある古写真の掲載利用ですけど、実はまあまあ同じ画像がかぶってたりしますね。
 よく使われるのがこちら。

 http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GJ008/item/009/
 奥平.jpg

 このお侍の写真が、wikipediaの「奥平昌邁」の項に上がってる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%A5%E5%B9%B3%E6%98%8C%E9%82%81)もんですから、そこ経由でいくつかの書籍にこの写真が掲載され、さらにその書籍経由でいくつかのテレビ番組に使用され、みたいになってます。ただ、よくわかんないんですけど、うちとこの原資料である横浜アルバムにはこれが奥平昌邁さんだよなんてことはひと言も書いてなくて、本人かどうかなんてこと当のこっちサイドとしては何の明言もできないんですけど、にもかかわらず、誰かがwikipediaにこれ載せてしまってるが故にいくつもの書籍やテレビ番組で「彼は奥平昌邁です」みたいな言われ方しちゃってて、あたしはその連絡が来る度に「うちとこの原資料には誰それとも書いてませんよ」ってアラートを告げるんですけど、まあ、実際どうなんですかね、いまとなってはもはやネットだけじゃなく書籍ベースで定着しちゃって抗いようもなく、そういうものであるとして下手すりゃそのうち権威ある参考図書なんかに載っちゃいかねないんだろうな、というふうに寒々しく見てます。

 同じく、よく使われる代表。

 http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/KSA/info/YA027/item/036/
三条川床.jpeg

 これなんかは毎年初夏の頃になると、京都・鴨川に床が出ました、ところで床の歴史ですが、みたいな感じでそこここで紹介してくれてはります。その多くが、どこそこの雑誌で、パンフで、webページで見たから、それ自分たちも使いたい、っていう方のルートです。これをGoogle画像検索なんかすると山のようにヒットします。
 そして、元をたどればなんですが、そもそもこの古写真データベース収載の画像の中でも特に京都関連のやつは、うちとこの先生の手によって下記の書籍でがっつり紹介されてるんですね。

 白幡洋三郎. 『京都百年パノラマ館 : 写真集成』. 淡交社, 1992.
 白幡洋三郎. 『幕末・維新彩色の京都』. 京都新聞出版センター, 2004.

 これがそもそものきっかけで随所で使われ、使われたのを見た人によって使われ、なので、古写真データベースに掲載利用のお座敷がかかる画像っていうのは、そのほとんどが京都関連のものだったりします。

 やっぱりあれですね、資料にしろ写真にしろ、ただある、見れる、っていうそれ単体を目の前にしたところで、それをどう使ったらいいか、どういう文脈の中で紹介したらいいか、っていうのをゼロから自分の手と頭で構築していくのって、それなりの専門家でない限りなかなかコストのかかる面倒ごとだと思うんですけど、それが、すでにどこかで誰か別の人がとある事例付きで、とある文脈中で、実際に掲載・紹介してくれてるっていう実例を目にすれば、あ、この資料・画像ってこういう意味合いのものなのね、そしてこうやって使えばいいのね、なるほどなるほど、じゃあ自分も、ってなるから結構いいショートカットになりますよね、それが利用のハードルを下げる、っていう。
 そういった意味では、データベースってデータのベースであり、デジタルアーカイブはアーカイブであって、そこにストーリーがあるわけではなく、でもストーリーがないと人には届きづらい、っていうことかなあと思います。

 こういうふうに、どこそこで具体的に使われてたのを見てその存在を知った、ていうパターンの人が、決して数多くはないとは言え、Googleやさしい化してるかどうかという要素とも、メタデータがリッチかどうかという要素とも、拮抗するか下手したら乗り越えてるんじゃないかっていう様相を見せてる、っていうのがあって、例えば上記の「外像データベースの例」と「古写真データベースの例」、どちらも同じ四条河原の川床と芸妓の写真、これも再掲しますけど。

外像データベースの例
http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/GAI/info/GL001/item/099/
外像四条.png

古写真データベースの例
http://db.nichibun.ac.jp/ja/d/KSA/info/YA058/item/042/
古写真四条.png

 メタデータもリッチでGoogleやさしい化され済みの外像データベースの方の写真(上)は掲載利用の連絡が来たことはありませんが、検索のしようもないメタデータしかない、見つけるのが奇跡の星のような古写真(下)のほうは、これ、Googleやさしい化される以前に何件かの掲載利用実績がありまして、これも、先述の古写真紹介本のおかげなんです。
 奇跡はGoogle経由ではなく、紙の本発信で起こってた、っていう。

 という実際を受けて、こういうふうに言えるかなって。

 具体的な実例・紹介が示されていれば、データベースやデジタルアーカイブのあり方とは関わり無く、効果が出る可能性がある。

 なんかこう、アナログ方面に話の水が引っぱられてきてて、なんかずるいなって思われるかもしれませんが、ひとつのヒントにはなると思います。

 で、アナログついでで申し訳ないですが、結局は中身だろう、っていう話もあって。
 ここで、外像・古写真以外のうちとこのデータベース類全体の中から、人気引く手あまたであちこちからお座敷のかかる、掲載利用四天王をご紹介しますと。

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 ●各種データベース別の、収録画像の出版物・映像等への掲載件数(2016年)
 古地図  85件
 怪異妖怪 74件
 名所図会 71件
 艶本   54件
 ---------
 外像   38件
 古写真  16件
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 なんていうんですかね、結局は妖怪・春画かよっていう敗北感はあります、どちらも件数ではおとなしいですが、実は画像点数(枚数)でいくと妖怪300・艶本400で圧倒的なもんで。
 ちなみに四天王のうちの古地図・名所・妖怪の3つがGoogleやさしいです、これをもってGoogleやさしいは効果ありでフィニッシュです、でも全然かまわないっちゃかまわないんですけど、ただ四天王の覆面大ボスこと艶本データベースはいまでも利用登録&ログインしないと使えませんし、メタデータもさほど整備されていません。でもこれだけ件数あるんで、なんていうんですかね、エロは深層webを越えるなんてこと言うのも癪に障るので、「資料・コンテンツそのものの魅力の有無が重要」という無理くりな一般化をさせておくことにします。

 光明があるとするなら、Googleやさしい化した外像データベースが、ほぼゼロ件から四天王の背中が見える位置までのし上がってきた、というところでしょうか。
 うん、やっぱり、Googleやさしいはしないよりもしておいた方がいいわ、って感じですね。
 だいぶ荒っぽく考えましたが、いまのところはそんな感じです。 

posted by egamiday3 at 19:30| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月10日

201611it イタリア・シチリア旅 3日目その1「まだ朝8時ですが、ここで1記事として区切っていい」

 おはようございます。3日目の朝です。
 早朝目が覚めて2時間くらい仕事してました。

 朝食を8時くらいに指定してあったので、その前にちょっと朝の散歩にでも出ようかなと思いました。がらの悪さが気になる街ではあったのですが、宿のマダムさんが昨晩観光地図を囲んでレクチャーしてくれたことには、「朝はこの道をこう海のほうへ行くといいよ」とおっしゃるんだけど、ほんまかいな、自分のリスニング違いちゃうか、と半信半疑でふらふら歩いていったら、海辺の様子がこれ、っていう。

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 実にすがすがしい浜辺の朝日、すっかり晴れ渡ってるし、ありがたい。
 ていうかさすがマダムさん、実にいいナビをしてくださったなと。

 最初まだ薄暗めだったのが、陽が徐々に昇ってきて、パレルモの古い石造りの建物をうっすらいい具合に染めていく感じ。

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 海もいいんだけど、この街を囲むまわりの山々の、個性的なというか、それぞれ趣深い感じで並んでるのが、気になるなと。たぶんこれ、飛行機でパレルモに近づくときに空から見たら、湾の感じも含めてすごいいい眺めなんじゃないかなって思いますね。その意味では、次は空路でいいかも。

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 このあたりは市民住民のみなさんの朝のジョギング&散歩コースの定番っぽくなってて、まあそれにふさわしい景色の海岸だよなあという感じです。

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 海岸沿い道路にある何らかの施設前の、ちょっと何かよくわからないもの。
 自分が勉強不足なだけでたぶんキリスト教の何かしらの祝い事のための何かしらの神輿的なものだと思うのですが。
 茶化して言うなら、祇園祭新参の「薔薇船鉾」か、タイムボカンシリーズの悪玉トリオ登場、みたいな感じ。

 そしてここから数十分、軽く遠回りして宿へ戻るのですが、この朝の路地裏感がまたすがすがしいという。

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バロック。バルコニー。廃墟。
迷宮のようなと形容される路地。
大学へ向かうらしき学生たち。
さらに行くと、地元バール。地元パン屋。オシャレバール。オシャレB&B。
そして、泉。
うん、アタリっぽいのはこの路地だな、という感じ。(Via Alloroと言う)
このへんの地元店やオシャレ店でまったりできたらいいんだけど。

 駅前のがしゃがしゃ感からまた宿に戻ると、地下階の食堂で朝番の青年が、簡単な朝食をサーブしてくださる。フライドエッグがあるのが、朝の塩分・脂肪分摂取できてうれしいです。明日朝は電車で早い時間に発つんだ、と話すと、じゃあ小さい朝食の包みを作って用意して置くから電車の中ででも食いなせえ、と。実にありがたくもあたたかいというか、家族っぽいというか。これで一泊4000円台というのは申し訳ないですね。

 まだ朝8時ですが、ここで1記事として区切っていいほど、いい感じの朝散歩でした。

 現在3日目。
 これからの予定はいまのところこんな感じです。

11/19 ローマ着
11/20 ローマ→パレルモ(鉄道)
11/21 朝 散歩(★いまここ)
午前 モンレアーレ
午後 パレルモ市内
11/22 午前 パレルモ→カターニア(鉄道)

 まずはパレルモ郊外の山の教会、モンレアーレへエクスカーションに行きます。

posted by egamiday3 at 23:16| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする