2016年08月11日

(Q&A)「実家から出て来た古い時代の資料を、個人でできる範囲でどう保存したらいいですか?」


 寄席の常連さんから質問を出してもらってそれに答える、という三題噺のような企画をよくやるのですが、その時にいただいた質問のひとつ、一部改変して。

「実家の納屋から、戦前戦後の古い時代の小冊子や雑誌などが出てきて、それらをきちんと保存したいのですが、個人でできる範囲でどんなふうに保存したらいいでしょうか?」

 ここで言う「保存」にはいくつかの別のアプローチでの「保存活動」があると思うんです。
 例えば寄席でもよく話題にした「物理的劣化を防ぐ」という意味での保存活動。これはまあ、湿気と酸性紙に気をつける的な感じ。もうひとつは「公的機関に託す」という安住地探し的な意味の保存活動、図書館とか博物館とか、役場とか学校とか、どういうところに相談すれば任せることができるだろうか、みたいなのをがんばる感じ。でも、それをやろうとするとまず、その資料の価値評価をしないといけない、歴史的背景の正確な調査をしないといけない、他人様との交渉ごとをしないといけない、で、コストはかかるといえばかかります、個人レベルでできるかどうかはその人次第だし、決して誰にでもできるようなことではないかもしれない。

 で、ここではさらにもうひとつ別の、個人レベルでできる、とりあえずダンボールに入れて置いときたいくらいの人にも無理のない範囲の、そしてわりとその資料の将来を左右しかねない効き目もありそうな、「保存活動」をご提案します。

 その資料の山の「目録・解題を作る」をやってください。

 ごくごく簡単なものでいいんです、例えば目録って言っても、別に目録規則にのっとった図書館目録を、と言ってるわけではなくて、レポート用紙に一行づつ手書きでメモするんでもいいし、Excelに適当にパシャパシャ書き込んでいくんでもいい。要は、ダンボール箱か何かにごそっとその小冊子や雑誌が入ってるのをいったん取り出して、そこに入っているのが具体的に何なのかが、ひと目でぱっとわかるようなリストを作る、ということです。
 タイトルぐらいはわかるだろうからまあタイトルと、著者編者出版者なり刊行年がわかるようならそれと、それが何冊かとか巻号がどうだとか。中身の整理はしなくてもいいです、上から一冊づつ、パッパッと手にとってメモしていくだけでいい。で、やり始めておもしろくなってきたら、保存状態がいい悪いとかを書いてもいいし、リテラシーのある人なら所蔵館調査してもいい。
 あと解題と言っても、そうたいそうなのでなくていいので、まあざっくり言うとどういう内容のものかを手短に書いてみるっていうことです。毎日の暮らしの知恵を書いた手帖みたいなのだったとか、中に誰それが書いた記事があるとか、ホットケーキや直線裁ちの写真があるとか。それで興が乗ってきたら、タイトルでググってみて、ああこういう雑誌なんだねとかがわかれば、どうせ自分用だからコピペでもなんでもいいんで、ちょこちょこっと書いとくっていう。あとは来歴ですね、実家の納屋のどこそこの、たぶん何代前の爺様の誰それに関わる資料として一緒に出て来て、こうこうこういう経緯でいったん誰それが預かることにした、みたいな。
 そんなこんなを、無理なく書ける範囲でいいんで書いて、最終的に紙に印刷してホチキスなりで綴じて、その資料群が入ってるのと同じダンボール箱の中に、一番上にぽんっと置いておいてください。あるいは1枚で済むくらいだったら、ダンボールの横面に糊かなんかでペって貼っておいてください。

 資料の保存に失敗する、つまり失われてしまう、その原因にはもちろん湿気がどうのとかシバンムシがどうのとか酸性紙が中性紙がどうのとか寄席でもたらたら噺してましたけど、資料が失わせてしまう原因、その圧倒的存在は、「人」だと思います。「人が、棄てる」こそが、資料保存の一番の天敵だろう、ていう。

 その雑誌や小冊子が入ったダンボールを、将来、いつか誰かが、棄てようとします。
 いまはまだ、ご実家から出て来て、おもしろがってめずらしがってちやほやしたり気にかけたりしてて、捨てずにちゃんと保存しようよね、ていう感じになってるかもしれませんけど、そのいまの”興”なんか知らないよという人が、5年後だか10年後だか30年後だかに現れます。箱の中身を見ます。なんだこれ? 誰の何なの? 知らない、わからない、いるのいらないのどっちなの。
 私なんかには驚くべきことですが、この世の少なからぬ割合の人たちは、いるかいらないかどっちかよくわからないものを見つけたら、とりあえず棄てる、という選択肢をふつーにとります。何年かに一度のタイミングでそれが起こるので、かなりの高確率で、いつか誰かが棄てるでしょう。

 棄てられてしまう大きな原因のひとつは、「それが何なのかがわからない」ことです。いま引き取っていま保存しようと思っている、あなたの”興”が伝わらないことです。その正体もわからなければ価値もわからない、誰にとってどんな意義があるものかもわからない、そりゃ棄てます。
 なので、「わからないから棄てる」という気を起こさせないために、ダンボール箱の中の一番上に、そこに何が入っているのかがひと目でわかる「目録・解題」を置いておいてください。それを封入した今日の日付とあなたの名前を書いておいてください。それによって、未来の未知なるその箱の開封者に、「それが何なのか」を伝えることになりますし、あなたの”興”を伝えることになります。まあ、だったら、あなたの”興”的な気持ちをそのまま書いておけばいいっちゃいいんですが、開封者が、あなたの”興”に動かされる人か資料という物の価値に動かされる人かはわからないので、どっちも。

 もっと言うと、その未来の開封者というのは数十年後の自分自身かもしれません。不思議なもので、いまこうやってがんばって保存しようと思っているのと同じ自分が、数十年後には、あれ、これなんだっけ?って、すっかりぽんと忘れてしまっていて、ま、いっか、って棄てる人に簡単に転ぶ、そういうことはよくあります。
 なので、未来の自分自身へのアラートという意味でも、目録・解題、その他の説明メモは、ごくごく簡単でいいんで書いてのこしておくのがいいと思いますね。

 もし余裕ややる気があるなら、スマホででも表紙をパシャパシャ1冊づつ撮って、リストの脇に加えるといいと思います。というのも、棄てる派の未来の開封者というのは、中に何が入ってるかを取り出して確認する、というような自らの手を汚すようなことはたぶんしないので、取り出さなくても何が入ってるかがビジュアルにわかる、というのはひとつの手だと思います。
 それを紙かファイルで別に自分用に持っておけば、誰かに相談するときにパッと見せられるので、そういう意味でも。

 で、とは言え、開封者に「それが何なのか」が伝わったとして、その上でもまた棄てられるというのはあるので、まあできるだけ早めに公的機関に(結局そうなる)。

 とは言えとは言え、公的機関もまあ、棄てる時は棄てる。こういうのは賽の河原の合戦みたいなもんだと思います(最終、悲観的)。

posted by egamiday3 at 19:21| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月04日

(メモ)司書教諭科目のテキストの内容概観

 複数のテキストを(主に目次を)読み比べて、ざっくりまとめる感じ。

●学校経営と学校図書館
・理念・展望
・機能
・制度・行政・教育課程
・マネジメント・組織構成・評価・渉外
・施設・設備
・情報化
・会計
・資料全般
・活動全般


●読書と豊かな人間性
・読書の意義
・児童・生徒・成長・情操
・読書指導(ブックトークその他)
・読書材の提供
・行事・活動
・生涯学習


●学習指導と学校図書館
・教育課程・教科学習・学習指導
・リテラシー教育
・調べ学習
・情報検索・情報探索
・情報活用・情報編集・情報発信
・レファレンス
・情報サービス


●学校図書館メディアの構成
・資料論一般
・収集・選択・蔵書構築
・メディア/媒体
・組織論一般
・書誌・検索ツール
・目録実務
・分類件名実務
・整理実務・資料保存
・書架・施設


●情報メディアの活用
・情報史・情報化社会
・資料論一般・メディア/媒体
・視聴覚資料
・教育用ソフトウェア
・デジタル資料・インターネット
・情報発信・ホームページ
・データベースと著作権
・情報倫理
・構内情報か
・データベース・インターネット検索と情報リテラシー
・IT
・Word、Excel、PowerPoint、HTML


(所感)
・内容にもっとも揺れがあるのが「情報メディアの活用」。文科省の「ねらいと内容」(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1327211.htm)に明確に書いてあるワード以外の部分にかなり迷いがある感じがする。逆に言えば、自由度高い?
・とはいっても、他の科目同士にも移動・揺れはある。5科目しかないのに揺れがあるのはどうか。
・「学校経営と学校図書館」の理念・機能部分は、全科目で前提としていったん触れたほうがよくないか。
・(今後の課題)その揺れを検証・考察している論文類をチェックすること。

posted by egamiday3 at 20:17| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月02日

「野生のニッポンが飛び出してきた!」 -- デジタルアーカイブと海外の日本研究とをからめて考えたこと


 NDL月報さんにお声がけいただき、2016年8/9月号に「「海外のユーザに日本資料・情報を届ける」ということ」というお題で寄稿させていただきました。

 江上敏哲. 「「海外のユーザに日本資料・情報を届ける」ということ」. 『国立国会図書館月報』. 2016.8, 664/665号, p.6-9.
 http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10133196_po_geppo1608.pdf?contentNo=1#page=8

 そしてそれとは別になのですが、ちょっと機会があって、下記の「中間報告」(デジタルアーカイブの連携に関する実務者協議会 中間報告(2016.3))と、それに至るまでの数回の会議の資料・議事録の公開分を、ひととおり読み通しました。

 デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会及び実務者協議会
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/index.html

 この件と、海外の日本研究とをからめて、いくつか考えることがあったので、ここに書いとくという感じです。

 海外の日本研究について、これまでの繰り返しは避けますのでその大方は上記NDL月報の寄稿をご参照いただければと思うのですが、特に下記あたりのポイントをピックアップしたいという感じです。

 ・日本を専門としない人も日本資料を使うことがある。(研究の学際化、国際化傾向)
 ・デジタル不足、デジタル環境の格差のひろがりが深刻。
 ・海外における日本離れが進行している。(退潮傾向、忌避傾向)
 ・デジタルアーカイブや電子資料の存在が知られていない、ユーザの目に触れない。

 特に「ユーザの目に触れない、知られていない」、discoverability・visibilityの低さについては、日本のデジタルアーカイブにとって深刻な問題ではないかと思います。例えば、
 ・海外司書を日本に招いて研修すると、「現地を訪問して説明を聞いて、はじめてそんなデジタルアーカイブがあるのを知った」と言われる。
 ・ディスカバリシステムで「枕草子」や「夏目漱石」を検索すると、中国語コンテンツが上位を占める。
 ・国際的な美術画像検索ポータルに収録されている日本美術作品は、大英博物館等の海外所蔵品ばかり。

 こういう状態にあって、日本のデジタルアーカイブのポータルを作ろう、というアンビシャス自体は我が友のように充分にわかるのですが、しかし、「ポータル」は「発信」ツールでしょうか、というと自分はそれは違うと思います。
 デジタルアーカイブだけでは「アクセス可能化」だし、そのポータルだけでは「探索効率化」であって、もちろんそれは国内外のユーザが喉から手が2,30本出てきそうなほどほしいんだけど、「発信」できてるわけではないんじゃないでしょうか。

 「ここが”日本”のポータルです」と。
 このwebサイトに、このストップに来て、この検索窓で検索すれば、”日本”のデジタルアーカイブがごっそり検索できます、と。ゲットだぜ!と。
 そう言って、海外のユーザがスマホ片手にわんさか集まるかというと、そんなことはない、それでお客は来ないんじゃないか、と思うんです。

 ひとつには、退潮傾向・忌避傾向が進行しつつある日本に、いま、それだけの集客力があるとはどうも思えない。わーい日本だあ、って言って、自分からわざわざそのサイトに足を運んでくれるのは、世界の本当にごく一部の存在です。
 逆に、「日本リテラシー」が高くない人たち。例えば初学者、若い院生や学部生、他分野・他地域が専門だけど学際化・国際化された研究において日本資料”も”必要としてくれるかもしれない人たち、というのが、人数的には圧倒的に多数で、世界の日本理解を下支えしてくれてて、でもリテラシー的にはサポートを要するので、デジタルの威力が頼りなんだけど、わざわざ日本オンリーのポータルサイトまで行くだろうかというとなかなか厳しい、そういう人たち。いやもっと言うと、世界の9分9厘を占めるであろう、日本になんか特に興味があるわけでもない人たち。
 そういう人たちに、ここが”日本”のポータルです、だからここに来てください、ではちょっと厳しいわけです。リテラシーが低いか、もしくは、それが日本かどうかなんか関係ないよ、ていう人たちが多数派なわけなんで。

 「発信」を、ていうか、もっと下手に出て営業努力をしようとするなら、そのポータルのデータを”外”に送り出すことのほうで、もう言い古されたことだと思うのですが、Googleでヒットするところにデータを出す。あるいは先ほどの例で言えば、ディスカバリシステムに対応させて、収録してもらう。国際的なポータルにも積極的に出す、連携する。
 これは海外に限らず、国内外ともに、ですけど。ユーザが見ている”いつものところ”、GoogleなりOCLCなりディスカバリなりWikipediaなりAmazonなり、そして各種SNSなり各種ポータルなり、そういうところにデータを送り込む、っていう。ユーザのメインな情報行動のルートというものがあるわけなんで、その路上に、ポケモンよろしく「野生のニッポン・コンテンツが飛び出してきた!」と、ポータルからデータを露出させに行く。そういう、こっちからのアグレッシブな働きかけがないと、「受信」はなかなかしてもらえないんじゃないかと思うんですね。

IMG_3620.JPG

 もちろんAPI的なものによってそれは成就するだろうし、私は技術的なことや制度的なことについては疎くて申し訳ないんですけど、ただ技術的に成就するとしても、先にみっちり検討すべきはユーザ理解・ユーザ考察のほうじゃないかと思います。発信者側・提供者側が発信したいしたいと言い募っても、もちろんその気持ちはいたく分かるのですが、ユーザの事情から逆算して組み立てていかないと、なかなかそれは成就しないんじゃないかなって。
 この世界は、受け手がいて、送り手がいて、君たちがいて僕がいて、そのトータルをデザインしてこその情報発信であり、情報流通じゃないかなって思います。

 情報をメインストリームへ合流させる、という意味では、どこがメインストリームなのかなっていう見極め品定めは必要になりますよね。
 聞くところによると、Europeanaの検索ワードランキングで「Japan」が4位に食いこんだらしいじゃないですか、すごいですね、需要あるじゃないですか、退潮傾向ってウソじゃないですかね。
 だったらそのEuropeanaさんと連携しましょうよと。さすがにEuropeanaさん側も日本のデジタルアーカイブのデータそのものを入れてくれるとは思えないし、それはちがうと思いますけども、例えばそうですね、Europeanaで○○と検索したその検索結果一覧の横っちょの欄にでも、「○○のニッポン・ポータルでの検索ヒット件数は**件です」ていうリンクがあって、クリックしたら日本のポータルに飛ぶ、くらいの連携は頭を下げてやってもらう価値あるんじゃないかなって思うんですけど。
 
 ってなってくるとそこで改めて必要になってくるのは、英語であり、ローマ字ですよね、ていう。ニッポン側が日本語でしか検索できないもん、Europeanaと連携のしようがないですしね。まあシソーラスか辞書かを噛ませばいいんでしょうけど。
 ユーザ側の事情もそれは同じで、日本研究者でもローマ字検索が主ですので、メタデータのローマ字対応は必須。教育研究の主戦場が英語であることを考えると、英語対応もできればほしい。インタフェースが英語なのはもちろん。
 できればコンテンツのほうも英語対応/ローマ字対応、というのはちょっとぜいたくかもしれませんが、それでもたとえば映像作品を大学の授業で使おうなんてときに、英語字幕があるかないかっていうのはものすごく重要になってきます。正規版に英語字幕がないなら、どっかよその国で買えるよくわかんないけどなぜか英語字幕がついてくれてるのを、まあ、ね、ってなっちゃいます。
 でも英語字幕みたいなコストかかるものそうそう作れないじゃないですか、商売になんないし、っていうのはわかりますけど、例えばですけど、映像デジタルアーカイブに収録されているファイルを、よそさんのプラットフォーム上でも柔軟に流用してもらえますよ、的な仕組みでオープンに公開すれば、ユーザが映像にクラウド的に字幕をつけられるサービス、なんていうのに活用できるんじゃないかなって思います。不勉強で恐縮ですが、たぶんそういうサービスあるでしょうどっかに。そういう、よそさんとの共有、ていう意味でのゆるいオープンさって、コスト低減という点でも大事だなって思います。

 あとは、翻訳って”言語”の問題だけでなく、意味というか文脈というか、「そのコンテンツっていったい何なの?」がわかんないと海外にアピールし難いと思うんで、それについては、MITさんにVisualizing Culturesっていうサイトがあって、日本資料の画像とそれに関係ある英語論文をリンクする、っていうのをやってはるらしいんですけど、そのアイデアをパクってOA論文とガンガンリンクさせるといいんじゃないかなって。OA論文に限らず、wikipediaや他のレファレンスツールとリンクさせることができれば、デジタルアーカイブ兼エンサイクロペディアみたいになりますね。21世紀の和漢三才図会というか、いい感じの百学連環になるんじゃないかなって思います。それっぽいワードを並べただけみたいになってますが。

 とりあえずはこんな感じです。

 あと、歩きスマホはやめましょう。

posted by egamiday3 at 18:45| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月07日

「外邦図」というものについて関西文脈の会(2016.6.26)で発表してきました、記録


 図書館史勉強会@関西 関西文脈の会: 第30回勉強会のお知らせ(協力:京都府立図書館)
 http://toshokanshi-w.blogspot.jp/2016/06/30.html

 第30回関西文脈の会つぶやきまとめ - Togetterまとめ
 http://togetter.com/li/992485

 関西文脈の会で、外邦図について、発表してきましたよ、という記録です。
 タイトルが「北米の外邦図、その発見と整理」とあるように、メインはあくまでワシントン大学のライブラリアン・田中あずささんのほうだったんで、私はその前のにぎやかしというか、客席をあたためるためにちょっとしゃべった、という、前座です。ドリフターズです。
 まあドリフはドリフなりにがんばったので、そのときにしゃべるために勉強したことを記録としてまとめるものです。つい一ヶ月ほど前から急ごしらえで勉強しただけのメモなので、多少の間違いや不足があったとしてもそのへんは、怒っちゃやあよ。

-----------------------------------------------------

●ソース
小林茂. 『外邦図 : 帝国日本のアジア地図』(中公新書2119). 中央公論新社, 2011.
・小林茂編. 『近代日本の地図作製とアジア太平洋地域 : 「外邦図」へのアプローチ』. 大阪大学出版会, 2009.
・小林茂. 「近代日本の地図作製と東アジア : 外邦図研究の展望」. 『E-journal GEO』. 2006, 1(1), p.52-66.
・山本健太. 「日本における外邦図デジタルアーカイブの構築と今後の展開」. EAJRS2015発表. 2015.9. https://perswww.kuleuven.be/~u0008888/eajrs/happyo/Yamamoto_Kenta_15.pptx
・外邦図(一覧) | 調べ方案内 | 国立国会図書館(リサーチ・ナビ)
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-601012.php
・外邦図 デジタルアーカイブ(東北大学附属図書館/理学部地理学教室)
http://chiri.es.tohoku.ac.jp/~gaihozu/
・『東北大学所蔵外邦図目録』. 東北大学大学院理学研究科地理学教室, 2003.
・西村三紀郎. 「岐阜県図書館世界分布図センターにおける外邦図の収集と整理及び利活用について」. http://www.let.osaka-u.ac.jp/geography/gaihouzu/newsletter3/pdf/n3_s2_5.pdf

●外邦図とは
・外邦図の定義には、狭義と広義がある。
・狭義の外邦図は、旧陸軍参謀本部陸地測量部(現在の国土地理院)が、主に軍事目的で作成した、台湾、朝鮮半島、満州、中国、東南アジア、太平洋地域、樺太南部などの地図、を言う。
・広義に言うと、陸軍陸地測量部に限らず、日本の植民政府や民間出版のものも便宜上含む
例:朝鮮総督府・臨時土地調査局による地図
例:市販され民間で使用されたもの
・その作られ方も、測量隊による測量もあれば、他国地図をぱくって複製したようなものもあれば、隠密が密命によって秘密裏に作製したもの(目測・歩測など)もあって、そんな調子だからそもそもその全体が把握されていない。軍事目的なもんでほとんどが機密扱い。

●戦後の経緯
・太平洋戦争終了
→日本軍による焼却処分(外邦図・空撮写真、命令だけでなく自主的・口コミ等で)
→連合軍による接収(→アメリカへわたる、これは田中さんの発表へ)/一部中国大陸に残される
→連合国軍による処分を免れようと、「兵要地理調査研究会」の研究者たちが参謀本部の外邦図を保存しようと各大学へ持ち出した。
(兵要地理調査研究会は、戦争終盤・連合軍の本土上陸を前に、陸軍少佐・渡辺正+各大学地理学者によって、連合軍との戦争に関する地理情報を収集するために組織された研究会)
→その後、日本軍解体により担当官庁がなくなってしまう

●現在の国内所蔵状況
・下記パワポの5枚目を参照すると一番わかりやすい。
 山本健太. 「日本における外邦図デジタルアーカイブの構築と今後の展開」. EAJRS2015発表. 2015.9
 https://perswww.kuleuven.be/~u0008888/eajrs/happyo/Yamamoto_Kenta_15.pptx

・ほとんどは、第二次世界大戦終結後に市ヶ谷の参謀本部から持ち出したもの
・上図には資源科学研究所からの分配経路の概要が示されている。
・資源科学研究所は、戦争時に大陸の資源調査を目的として文部省によって1941年設置。1971年国立科学博物館に吸収合併。

・現在の国内所蔵状況の概要は以下の通り。
東北大学 約7万点(1.2万種)
京都大学 約1.6万点
国立国会図書館 約1.5万点
お茶の水女子大学 約1.3万点
駒澤大学 約1万点
岐阜県図書館 約1.4万点
東京大学
広島大学
防衛省防衛研究所
陸上自衛隊中央情報隊 約23000種類

●戦後の経緯 パート2
・戦後の持ち出し→未整理が続く
・1960年代 学術利用が徐々に始まる
・1970-80年代: 布目潮フウ(大阪大学)『中国本土地図目録』刊行
・1994年: 東北大学地理学教室が外邦図の整理・目録作成を開始(現在まで更新)
・1990年代後半: 東北大と京都大とが交換・展示
・2000年代: 外邦図研究が本格化、目録刊行、デジタルアーカイブ構築
・2002年: 大阪大学が取得した科研費により研究プロジェクト組織
http://www.let.osaka-u.ac.jp/geography/gaihouzu/(人文地理学教室)
・2003年: 「外邦図研究ニュースレター」刊行開始
・2003年: 『東北大学所蔵外邦図目録』刊行
・2005年: 『京都大学博物館収蔵外邦図目録』刊行
・2005年: 外邦図研究会デジタルアーカイブ作成委員会によるデジタルアーカイブ構築が開始(@東北大学)
・2007年: 『お茶の水女子大学所蔵外邦図目録』刊行
・2014年: 各大学の外邦図目録が統合される(→東北大学のデジタルアーカイブへ)


●東北大学所蔵の外邦図
・占領期、約10万点の外邦図が搬入される
・占領期間中は公開がはばかられ、未整理
・1994年 本格的に整理分類が開始
・1995年 理学部自然史標本館に収蔵
・国土地理院や岐阜県図書館に重複分やコピー等を寄贈、京都大学文学部と交換
・2003年 『東北大学所蔵外邦図目録』刊行(地域名、図幅名、縮尺、緯度経度、備考、大きさ(縦横)、色数、測量機関、測量時期)
・現在約7万点(1.2万種類)
・うち、中国の地図が約40%、という特徴

●国立国会図書館所蔵の外邦図
・約1.5万枚
・台湾・朝鮮半島・樺太南部・満州は比較的よくそろっている。中国はそろっていない。
・主に5万分の一〜20万分の一
・NDLCではYG810〜YG837を「外邦図」(各地域分類あり)とする
・東京本館地図室で閲覧可能
・OPACのほか、索引図での検索が可能

●岐阜県図書館
http://www.library.pref.gifu.lg.jp/map/worlddis/mokuroku/out_japan/out_japan.htm
・外邦図約1.4万点
・1995年、岐阜県図書館世界分布図センターを設置。
・東北大に寄贈複製を依頼し、一般公開を条件として快諾を得て、東北大学理学部から本紙・複製含め約1万枚寄贈。(1997年から収集) 趣旨としては、「多くの方に気軽に利用していただくため」[#web]。

●陸上自衛隊中央情報隊 
・約23000種類
・戦後、地理調査所(現・国土地理院)にあったものが移管されたもの。
・『国外地図目録』(全4巻)+『国外地図一覧図』(全4巻)1953年頃作成のものがあるが、この目録は現物5部のみ(しかもカーボンコピーによる)しかない。国土地理院、国立国会図書館等にあり。
・大学のコレクションにみられない作製時期の早い外邦図はほとんどここにある。
・非公開

●外邦図デジタルアーカイブ
・外邦図 デジタルアーカイブ(東北大学附属図書館/理学部地理学教室)
 http://chiri.es.tohoku.ac.jp/~gaihozu/
例:http://chiri.es.tohoku.ac.jp/~gaihozu/ghz-dtl.php?lang=ja-JP&fm=m&fno=TH008433

・外邦図の画像と書誌情報を公開したもの。
・外邦図デジタルアーカイブ作成委員会による。
・2005年に、東北大学理学部地理学教室・図書館により公開
・目録データ 約20000件 / 電子化地図(公開) 約13000点

・「内容に高度な政治的判断を求められるものが含まれる資料もあり、すべてが公開とはされていない。」(山本)
・「中国大陸と朝鮮半島の地図については、まだ公開を開始していない」「中国の場合は、外邦図に秘密測量により作られた物が多いこと、南京事件などに際しての押収図を元図にするものが多いこと」「中華人民共和国では大縮尺の地図はなお実質的に軍の管理下にあり、市民や学生の自由な使用はゆるされていない」(小林)
・「これらの地域の外邦図は現地研究者と合意を作り、現地から発信することが望ましいという意見もあり」(小林)

・その書誌データは東北大学の目録に準拠している。(ちなみに、お茶の水大学や京都大学の外邦図コレクションの目録も、東北大学の目録に準拠して作製された(山本))
例:
地域名 インドネシア
記 号 ジャワ島389号
図幅名
縮 尺 1:50,000
サイズ(縦×横) 60cm × 48cm
色 4色(黒・青・赤・茶)
日本語表記 凡例のみ
測量機関国 オランダ
測量機関 旧蘭印測量局
測量時期(修正含む) 1924年調製
製版・印刷機関 陸地測量部・参謀本部
製版時期 昭和18年製版
発行時期 昭和18年発行
備 考 経度はバタビア基準
表示範囲 (グリニッジ基準に修正した緯度経度)

●日文研図書館の外邦図
・計約500枚。おおむね”広義”のほう。
・これらは日文研OPACにタグ「外邦図」で登録されている。
・天沼俊一旧蔵・寄贈の朝鮮総督府地図ほか(京都帝国大学の建築史学者)
・園田英弘・千田稔収集の外邦図(元日文研教授で、当時、京都の地図や外邦図などを集中的に集めていたらしい)
・このほか、未整理資料として、2010-2012年頃購入の「二十万分一帝國圖」(本土・台湾・朝鮮半島・北方領土等の地図、陸地測量部・大正-昭和)が約300枚ある。

-----------------------------------------------------

 今年1月に田中さんからお話をきいて、はじめて、そういえばうちにもある、っていうことがわかったくらいで。そこから小林先生の新書をざっと読んで、アメリカで勉強会に参加して(http://egamiday3.seesaa.net/article/436969984.html)、文脈発表が決まった1か月前くらいからまとめはじめて、いまにいたる、という感じです。

 で、連合軍が接収したものはアメリカにわたり、そこからまた紆余曲折の物語があるわけですが、それはまあ、また別の話ということで。(そっちが本編ですが)

posted by egamiday3 at 20:56| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月06日

(報告)近畿地区MALUI名刺交換会(2016.6.26)で、司会をしてきました。

 毎年一度、関西の善男善女が集まって友情と名刺を交わし合うという、この界隈、この業界でマストな名物企画、「近畿地区MALUI名刺交換会」が、今年もおこなわれました。

 近畿地区MALUI名刺交換会(2016年度)
 http://bit.ly/MALUI2016

 MALUIというのは、もうみなさんご存知かとおもいますが、
  Museum(美術館・博物館)
  Archives(アーカイブ・文書館)
  Library(図書館)
  University(大学)
  Industry(産業・企業)
 の略ですね。
 文化学術情報関係のあらゆる人々で集まり、シェア&コラボで協力し合い、全体でMALUIだけにまあるく環になって、その中心の穴から文化がうまれ出ずる、という多業種横断的ムーブメントです。

 その歴史(https://kinkimalui.wordpress.com/history/)をひもとけば、2011年頃からなんとなあく居酒屋で集まっては、適当に飲み会をやってだらだらしてる、という感じのあれだったのですが、まあいつのまにかでっかい集まりになりましたよねっていう。
 こんな感じです。

IMG_3254.JPG

 そこで司会をしてきました。何度目だ司会。某都府立の偉大なるアーキビストとのダブルMCです。正直、あんたしゃべんなさいよという感じで、一切何も考えず何も意識していませんでした。
 告知ある奴は手を挙げな、ていう感じのやつ。

IMG_3256.JPG

 それでも今年は、AAS in Asia京都大会@同志社大会のために来日中のアメリカのライブラリアンが多数いらっしゃってましたし、紀の書店さんの海外営業さんたちなどなども多数おいでになってたり、教員・研究者のみなさんも多数おいでになってたり、未就学児のみなさんの寄り合い所みたいになってるテーブルも一部あったりで、そんなみなさんがうら若い学生さんや某国立図書館の新人さんたちとめくるめく交流を広げていらっしゃる様子を遠巻きに見てると、まあ、これ、司会あってもなくてもいいよなっていう感じで、心地よくアイデンティティが崩壊していきましたよね。

 今年もありがとうございました。
 来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 2日の日程が終わった後のギネス&ベルギービールが、それはそれは美味かったこと。

posted by egamiday3 at 20:52| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする